JP5757186B2 - 流体分離材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料改質等により生成した水素等を含む混合ガスから水素等を高純度に分離するための流体分離材料及びその製造方法に係り、特に、水素等を選択的に透過するシリカガラス分離膜層が多孔質ガラス支持体の表面に形成された流体分離材料及びその製造方法に関する。
水素エネルギー社会実現のために、水素製造技術や水素利用インフラ整備についての研究開発が進められるなか、自動車用燃料電池、家庭用定置型燃料電池、水素ステーション、そして将来的には大型の化学プラントなどで使用される高純度水素は、今後大きな需要が見込まれ、その製造には更なる高効率化が求められている。
現在、水素の製造は、炭化水素燃料を700℃程度の温度で水蒸気改質(CH+HO→CO+3H)した後、さらに数百度程度でCO変成(CO+HO→CO+H)する方法が価格競争力の点から広く利用されている。これらの反応を経て得られたガスの成分には、水素の他に二酸化炭素や一酸化炭素、さらには未反応の炭化水素や水が含まれる。近年、家庭への普及が始まった固体高分子型燃料電池システムでは、低コスト化を実現するために水素の高純度化は行わず、水素濃度60%程度の混合ガスをそのまま燃料電池の燃料極に供給しているが、燃料極の触媒を被毒する一酸化炭素については、供給前に二酸化炭素に酸化し(CO+1/2O→CO)、その濃度を10ppm未満まで除去している。しかしながら、混合ガスを用いる燃料電池は、純水素燃料電池と比較して発電効率が低いため、さらに純度の高い水素を省スペースで安価に製造する技術が求められている。また、自動車用燃料電池には、上記CO濃度の制限に加えて、99.99%以上の水素を供給する必要があり、安価な高純度水素を大量に製造する技術が求められている。
水素を含む混合ガスから高純度水素を取り出す方法としては、吸収法、深冷分離法、吸着法、膜分離法などが挙げられるが、膜分離法は高効率で小型化が容易であるという特徴を有している。また、水蒸気改質を行う反応容器内に水素分離膜を挿入したメンブレンリアクターを構成することにより、改質反応によって生成した水素を連続的に反応雰囲気から引き抜き、500℃程度の温度でも改質反応とCO変成反応を同時に促進させ、効率良く高純度水素を製造することが可能となる。さらに、メンブレンリアクターではCO変成に使用される白金等の高価な貴金属触媒も不要となり、コストの低減や設備の小型化が可能となる。なお、水素分離膜を通過した水素ガスの純度は水素分離膜の性能に依存するが、用途に応じてさらにCO除去や高純度化が必要な場合でも、これらの工程にかかる負荷を軽減することが可能となる。
以上説明したように、水素分離膜を用いた水素製造方法の有利さを背景に、いくつかの水素分離膜が提案されている。例えば、非特許文献1にはパラジウム合金膜をジルコニア多孔質基材で支持した水素分離膜が記載されている。この水素分離膜においては、水素はパラジウム合金に原子として溶解し、その濃度勾配で拡散して純水素のみを透過させる方法によって水素を分離するため、原理的に高純度の水素を得ることができる。非特許文献2にはシリカガラス膜をアルミナ系多孔質基材で支持した水素分離膜が記載されている。この水素分離膜は、シリカガラス膜が水素分子のみを通す大きさ(0.3nm)の孔を有していることを利用し、水素分子を選択的に透過させる分子ふるい機能により水素を分離するものである。
また、水素透過膜が外側に形成された水素分離筒を備えた水素分離装置として、一端が閉塞された試験管の形状の水素分離筒と、水素分離筒の開放端側が挿入された筒状の取付金具とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、酸化ニッケルとジルコニアと黒鉛粉を混合した混合材を押出成形して有底円筒管を形成し、それを焼成して多孔質支持管を作製し、その周囲を被覆したバリア層を覆うように、金属製の薄膜からなる水素透過膜を形成して水素分離筒を製造することが記載されている。水素分離筒は、その開放端側の端部がシール部材とともに取付金具に嵌められて、固定金具と取付金具との螺合により固定されることで、水素分離装置に組み付けられている。
特開2009−234798号公報
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 燃料電池・水素技術開発シンポジウム平成20年度要旨集「高耐久性メンブレン型LPガス改質装置の開発」 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率高温水素分離膜の開発」(事後評価)分科会議事録(平成19年7月30日)
ところで、本発明者等は、シリカガラス膜を水素分離膜として機能させ、当該シリカガラス膜と熱膨張率が近い多孔質体をその支持体とする水素分離材料をPCT/JP2010/072201(平成22年12月10日出願)にて提案している。かかる構成によれば、熱衝撃に強く、水素分離膜と支持体との密着性が良く、水素分離特性に優れた水素分離材料が実現できる。
しかしながら、多孔質シリカガラスの支持体とシリカガラス分離膜から構成される水素フィルタ管は、開口端側を気密シール部でシールし、保持して水素分離材料として使用するが、シール部で締め付ける必要があるため、水素フィルタ管の保持部には機械的強度が必要であり、強度が不足していると破損するおそれがある。また、特許文献1のように金属製の水素分離筒を金属製の金具にねじ止めによりシールする場合には、材料の熱膨張率の差が大きく、シール部分に隙間が生じてしまうおそれがある。
また、多孔質シリカガラスの支持体とシリカガラス分離膜から構成される水素フィルタ管では、水素フィルタ管の閉塞端側は、凸曲面状になっているため、水素分離膜を形成してもピンホールが生じてしまい、水素分離膜としての十分な機能が得られにくい。
本発明の目的は、水素等の流体分離特性に優れつつ、シールするための強度を備えた流体分離材料及びその製造方法を提供することである。
上記課題を解決することのできる本発明の流体分離材料の製造方法は、ロッドの周囲にCVD法によりガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を作製し、
前記ガラス微粒子堆積体から前記ロッドを引き抜いて筒状の多孔質ガラス支持体を作製し、
前記多孔質ガラス支持体の表面にシリカガラス分離膜層を形成して流体分離材料を製造する方法であって、
前記多孔質ガラス支持体の軸方向両端部を緻密化する緻密化工程を含むことを特徴とする。
本発明の流体分離材料の製造方法において、前記緻密化工程の後、前記多孔質ガラス支持体の開口した軸方向端部に透明石英管を接合することが好ましい。
本発明の流体分離材料は、ガラス微粒子を堆積させてなるガラス微粒子堆積体からなる筒状の多孔質ガラス支持体の表面に、シリカガラス分離膜層が形成された流体分離材料であって、
前記多孔質ガラス支持体の軸方向両端部が緻密化されていることを特徴とする。
本発明によれば、多孔質ガラス支持体の軸方向両端部が緻密化されるので、多孔質ガラスの気孔率が小さくなり高密度化または透明化する。これにより、両端部は強度が増す。筒状の多孔質ガラス支持体における開口側端部では、シールをするために十分な強度が得られる。また、多孔質ガラス支持体が、その一端が閉塞している有底筒形状の場合には、閉塞端部が緻密化されることで気孔率の小さい流体透過性のない部分になるため、ピンホールにより分離したい流体以外の流体が透過して流体分離機能が低下してしまうことを防ぐことができる。
本発明の一実施形態である水素分離材料の例を示す縦断面図である。 図1の水素分離材料における各部の横断面図である。 本発明の製造方法の一実施形態である、(a)堆積工程、(b)引抜工程、(c)分離膜形成工程、(d)両端部の緻密化工程、を示す模式図である。 両端部の緻密化工程を詳しく示す模式図である。 図1の水素分離材料を適用した水素分離モジュールを示す図である。
以下、本発明に係る流体分離材料及びその製造方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、流体分離材料として水素分離材料を例示して説明するが、本発明は、シリカガラス分離膜層の孔径等を変更することで、水素以外の気体または液体を分離するものとしても適用可能である。また、流体分離材料の形状は、平面状等、任意の形状とすることもできるが、反応効率の点から流体との接触面積をより広くするために、本実施形態では管状としている。
(水素分離材料)
図1及び図2に、水素分離材料の一実施形態を示す。図1は水素分離材料の縦断面図であり、図2は各部の横断面図である。水素分離材料20は略円筒形状であり、その中心には長手方向に延びる略円形断面の中心孔24を有する。水素分離材料20は、中心孔24の外周上に管壁として多孔質ガラス支持体21を有し、この外周上にシリカガラス分離膜層22を有する。また、水素分離材料20の軸方向の一方の端部には、緻密化されたシリカガラスからなる緻密部38が形成され、他方の端部には緻密化されたシリカガラスからなる緻密筒部37が形成されている。緻密部38及び緻密筒部37は、透明化した状態であることが好ましいが、透明化していなくても水素以外のガスの透過速度が十分に小さくなる気孔率(例えば5%以下)となっていればよい。なお、その気孔率は、要求する水素の純度により変わるものである。なお、「気孔率」は、単位体積当たりの空気容積が占める割合として算出できる。
図2(a)は、水素分離材料20における緻密管部37の部分の横断面図であり、図2(b)は、水素分離材料20における多孔質ガラス支持体21及びシリカガラス分離膜層22を有する部分の横断面図であり、図2(c)は、水素分離材料20における緻密部38の部分の横断面図である。緻密筒部37は多孔質ガラス支持体21と連続した中心孔24を有し、緻密部38は中実である。多孔質ガラス支持体21及びシリカガラス分離膜層22を有する部分の外径Tは2mm〜50mmであり、内径(中心孔24の径)Pは1.6mm〜48mm、長さは200mm〜400mm程度である。中心孔24の一方の端部24aは塞がれていることが望ましい。また、水素分離材料20の表面積を大きくするため、外径Tおよび内径Pを長手方向に周期的に変化させても良く、機械的強度を補強するために厚さを部分的に変化させることもできる。また、緻密管部37の部分の長さは例えば250mm程度であり、緻密部38の部分の長さは例えば30mm程度である。
水素分離材料20は、シリカガラス分離膜層22が水素透過膜として使用されるが、それにより、水素脆性や原料不純物との反応による膜の劣化を抑制できる。シリカガラス分離膜層22の厚さは、特に限定されるものではないが、0.01μm〜50μmであることが好ましく、0.02μm〜10μmであることがより好ましく、0.03μm〜5μmであることが更に好ましい。厚さが0.01μm未満では、透過ガスの水素純度が低くなりすぎ、また、50μmを超えると水素透過速度が小さくなりすぎ、実用上十分な水素分離性能が得られにくくなる場合がある。
シリカガラス分離膜層22の支持体を多孔質ガラス支持体21とすることで、シリカガラス分離膜層22における水素の透過を干渉することなく該薄膜を支持することができる。多孔質ガラス支持体21の気孔率は、特に限定されるものではないが、機械的強度とガス透過性のバランスから20〜70%であることが好ましい。
また、多孔質ガラス支持体21の線熱膨張係数は、2×10−6/K以下である。線熱膨張係数が2×10−6/Kを超えると、発生する熱応力が大きくなり、所望の耐熱衝撃性が得られない場合がある。多孔質ガラス支持体21の形成材料は、耐熱衝撃性の観点からシリカガラス分離膜22と線熱膨張係数が近似するものが好ましく、多孔質シリカガラスであることがより好ましい。
該多孔質ガラス支持体21の厚さは、特に限定されるものではないが、機械的強度とガス透過性のバランスから0.2mm〜5mmであることが好ましく、0.5mm〜3mmであることがより好ましい。
シリカガラス分離膜層22の外周には、多孔質保護膜(図示省略)を設けてもよい。多孔質保護層を設けることで、シリカガラス分離膜層22における水素の透過を干渉することなく該薄膜を保護することができる。多孔質保護層の気孔率は、特に限定されるものではないが、機械的強度とガス透過性のバランスから20〜70%であることが好ましい。
また、多孔質保護層の線熱膨張係数は、多孔質ガラス支持体21と同様に2×10−6/K以下であることが好ましい。多孔質保護層の線熱膨張係数は、多孔質ガラス支持体21およびシリカガラス分離膜層22の線熱膨張係数と近似していることが好ましく、多孔質保護層の形成材料は、多孔質シリカガラスであることが最も好ましい。
多孔質保護層の厚さは、特に限定されるものではないが、機械的強度とガス透過性のバランスから0.01mm〜1mmであることが好ましい。
上述のように、耐熱衝撃性の観点から多孔質ガラス支持体21はシリカガラス分離膜層22に線熱膨張係数が近似するものから選ばれることが好ましい。本実施形態の水素分離材料20においては、多孔質ガラス支持体21の材料を多孔質シリカガラスとすることが好ましく、その場合、シリカガラス分離膜層22、多孔質ガラス支持体21を構成する多孔質シリカガラスのいずれかに、希土類元素、4B族元素、Al、Ga、又はこれらの2種以上の元素を組合せて添加することができる。多孔質ガラス支持体21を構成する多孔質シリカガラス、あるいはシリカガラス分離膜層22の成分を調整することにより、所望の機械特性や、耐水蒸気性などが得られるからである。
例えば、水素分離材料20を炭化水素燃料の水蒸気改質に用いる場合、500℃以上の水蒸気に必然的に接触するため、このように他成分を導入することにより耐水蒸気性能を向上させることが好ましい。
多孔質ガラス支持体21を構成する多孔質シリカガラスは、スス付け法(CVD法)、射出成形法などの製法により製造できる。シリカガラス分離膜層22についてもその形成法は特に限定されないが、ゾルゲル法やCVD法の他、多孔質ガラス支持体21を構成する多孔質シリカガラスを表面改質することにより形成する手段を用いることができる。なお、「表面改質」とは、水素透過膜部分を作製するために、表面の膜となる部分、例えば、多孔質ガラス支持体21を構成する多孔質シリカガラスの表面近傍をある程度緻密化することによって、緻密質のシリカガラスの層にすることをいう。その一つの方法として、加熱によるものが挙げられる。具体的には、例えば、COレーザー、プラズマアーク、酸水素バーナーなどを単独で、又は複数組合せて照射する方法である。
上記のように、ゾルゲル法やCVD法でもシリカガラス分離膜層22を製造できるが、表面改質による形成法によれば、多孔質ガラス支持体21を構成する多孔質シリカガラスとシリカガラス分離膜層22を別々に製造して積層する製造方法よりも膜と支持体との接合強度を上げることができ、またシリカガラス分離膜層22の厚さや孔の大きさを緻密化の程度によって、簡単に制御することができる。シリカガラス分離膜層22の緻密化の程度は、分離する流体の分子サイズで設定される。水素透過の観点から、シリカガラス分離膜層22の孔径が0.3nm程度となるように緻密化されることが望ましい。
多孔質保護層は、シリカガラス分離膜層12の外周にスス付け法(CVD法)によって多孔質シリカガラスを堆積させることで形成することができる。
上記のように、水素分離材料20は、多孔質ガラス支持体21の軸方向両端部が緻密化されて緻密部38及び緻密筒部37を有している。これにより、水素分離材料20の両端部は強度が増す。例えば、緻密筒部37では、水素分離モジュールに使用される際にシールをするための十分な強度が得られる。また、その端部が閉塞している緻密部38では、緻密化されることで気孔率が小さくなって水素透過性のない部分になり、ピンホールの発生が抑制されるので、水素以外の流体が透過して水素分離機能が低下してしまうことを防ぐことができる。
また、水素分離材料20は、両端が開口していてもよい。すなわち、両端が開口した多孔質ガラス支持体21の軸方向両端部にそれぞれ緻密筒部37を有するようにしてもよい。
(水素分離材料の製造方法)
以下、上記水素分離材料の製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
(1)多孔質ガラス支持体形成工程
管状の水素分離材料20であって、その多孔質ガラス支持体21が多孔質シリカガラスである場合の製造方法の好適例として、ロッドの周囲にガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を形成した後(堆積工程)、該ロッドを引き抜いて(引抜工程)行う方法を挙げることができる。図3を用いて、当該方法の一実施形態を以下に説明する。
図3(a)は、本実施形態に係る堆積工程を示す図であり、図3(b)は、本実施形態に係る引抜工程を示す図である。図3(a)において、ロッド30は、先端部が下になるようにして鉛直に配置される。また、水平に配置する形としても良い。ロッド30の素材としては、アルミナ、ガラス、耐火性セラミクス、カーボンなどを用いることができる。ロッド30は固定された後、中心軸を中心として回転される。そして、スス付け法(CVD法)により、ロッド30の側方に配置されたバーナー31により、ロッド30の外周にシリカガラス微粒子が堆積される。シリカガラス微粒子には、所望する機械特性や耐水蒸気性に応じて、希土類元素、4B族元素、Al、Ga、又はこれらの2種以上の元素を組合せて添加することができる。つまり、この製造法によれば、容易に成分の調整ができる。
ガラス微粒子の堆積に際して、バーナー31をロッド30の軸方向にトラバース、またはバーナー31を固定してロッド30を軸方向にトラバースする。そのトラバースの回数毎にバーナー31への供給原料の種類やガスの供給量を異ならせることもできる。これにより、ロッド30の外周に堆積されるシリカガラス微粒子は、径方向に所定の嵩密度と組成の分布を有することになる。また、ロッド30の先端部にもシリカガラス微粒子を堆積させることで、先端が閉じた管状のガラス微粒子堆積体25が作製される。
ガラス微粒子堆積体25は、シリカガラス微粒子を堆積させた後にその気孔率が20〜70%の範囲になるようにシリカガラス微粒子を加熱焼結し緻密化させてもよいが、シリカガラス微粒子を堆積させる温度を調整しながらその気孔率を制御しても良い。堆積後に加熱焼結させる場合の温度は特に限定されないが、1000℃〜1400℃とすることが好ましい。1000℃未満では焼結が十分に進行しない場合があり、1400℃を超えると気孔率が小さくなりすぎる場合がある。また、堆積温度により気孔率を調整する場合も特に温度の限定はないが、例えば1000℃程度〜1700℃とすることが好ましい。堆積温度が低すぎるとシリカガラス微粒子の焼結が十分に進行しない場合があり、1700℃を超えると気孔率が小さくなりすぎる場合がある。また、ガラス微粒子堆積体25の最外層におけるシリカガラス微粒子の堆積温度は高くしておくことが好ましい。最外層における堆積温度が1400℃未満では、シリカガラス微粒子の焼結が十分に進行せず、最外層において所望の耐衝撃性が得られない場合がある。
堆積工程の後の引抜工程を図3(b)に示す。図3(b)では、ガラス微粒子堆積体25からロッド30が引き抜かれる。引抜により形成される中心孔24は、貫通しておらず、下端側(先端側)24aが塞がれていて、上端側のみが開口している(図2参照)。なお、引き抜きを容易にするために、予めロッド30の表面にカーボンや窒化物等を塗布しておくことが好ましい。また、同様に引き抜きを容易にするという観点から、ロッド30は先細のテーパ形状を有することが好ましく、例えばその外径傾斜率を0.2〜2.0mm/1000mmとすることができる。更に、ロッド30は熱膨張率5×10−6/K以下であることが好ましい。ロッド30の熱膨張率が高いと堆積工程中においてバーナー31が接近する度にロッド30に伸縮膨張が生じ、ガラス微粒子堆積体25を破損する虞がある為である。また、熱膨張率を上記範囲とすることでロッド30自体の熱衝撃による破損を防止することができる。さらにロッド30は、例えばガラスとの親和性が低い窒化珪素等の非酸化物を材質とするロッドであることが好ましい。
(2)シリカガラス分離膜層形成工程
ガラス微粒子堆積体25からなる多孔質ガラス支持体21が形成された後、ゾルゲル法やCVD法、多孔質シリカガラスを表面改質する方法などにより、多孔質ガラス支持体21の表面にシリカガラス分離膜層22が形成される。図3(c)は、本実施形態に係るシリカガラス分離膜層形成工程を示す図である。ここでは多孔質ガラス支持体21の表面を表面処理装置により表面改質して、多孔質ガラス支持体21上にシリカガラス分離膜層22を有する形態とする方法について説明する。
上記多孔質ガラス支持体形成工程で得られた多孔質ガラス支持体21は、表面処理装置32によってその表面を緻密化することで、緻密質なシリカガラス分離膜層22となって表面改質される。表面処理装置32としては、例えば高温のエネルギー線を照射できるものであればよく、COレーザー、プラズマアーク、酸水素バーナーなどを単独で、又は複数組合せて用いることができる。こうして多孔質ガラス支持体21を表面改質することで、多孔質支持体21とシリカガラス分離膜層22とを有する水素分離材料20が形成される。
シリカガラス分離膜層22の表面改質の程度は、シリカガラス分離膜層22が水素透過膜として機能する範囲であれば特に限定されるものではないが、水素分子分離性の観点から、その厚さは0.01μm〜50μmであることが好ましく、0.02μm〜10μmであることがより好ましく、0.03μm〜5μmであることが更に好ましい。また、シリカガラス分離膜層22は水素分子のみを透過するように直径0.3nm程度の孔を有していることが好ましい。
(3)両端部の緻密化工程
続いて、シリカガラス分離膜層22が形成された多孔質ガラス支持体21の両端には、図3(d)に示すように、緻密化された領域(緻密部38,緻密筒部37)が形成される(両端部の緻密化工程)。
図4は両端部の緻密化工程を示す模式図である。図4に示すように、両端部の緻密化工程は、(i)多孔質ガラス支持体21の開口側の端部領域をバーナー34で加熱収縮させて緻密化することで緻密筒部37の少なくとも一部を形成する工程(図4(a)参照)と、(ii)多孔質ガラス支持体21の当該加熱収縮された領域に円筒状の透明石英管39をバーナー34で加熱接合して緻密筒部37を形成する工程(図4(b)参照)と、(iii)多孔質ガラス支持体21の閉塞側の端部領域をバーナー34で加熱収縮させて緻密化することで緻密部38を形成する工程(図4(c)参照)と、を有する。上記(ii)の緻密筒部37を形成する工程において、円筒状の透明石英管39はその中心孔が多孔質ガラス支持体21の中心孔と気密に連結するように接合される。図4(d)は緻密筒部37と緻密部38を付与された多孔質ガラス支持体21の模式図であり、図3(d)の状態に相当する。
上記の(i)の工程において、形成する緻密筒部37の長さは例えば30mm以下とする。そして、上記の(ii)の工程において、接合する透明石英管39の長さは220mm程度とする。透明石英管39は、後述する水素分離モジュールに取り付けられる寸法に合わせた長さ及び径のものを用いる。そのため、透明石英管39が長手方向に外径及び内径が変化するものであってもよい。
上記の(iii)の工程において、多孔質ガラス支持体21の閉塞側の端部領域を緻密化するので、緻密化前のその領域においてシリカガラス分離膜層22にピンホールが存在していたとしても、緻密化によってそのピンホールはなくされる。この緻密部38では、緻密化されることで気孔率が小さくなって水素透過性のない部分になり、水素以外の流体が透過することもない。すなわち、水素分離材料20の閉塞側の端部から水素以外の流体が透過して水素分離機能が低下してしまうことが防がれる。
なお、上記の(iii)の工程の後、シリカガラス分離膜層22の外周に、上記の多孔質保護層を形成しても良い。多孔質保護層を形成することにより、シリカガラス分離膜層22における水素の透過を干渉することなく該薄膜を保護することができる。
なお、上記の製造例では両端部の緻密化工程において透明石英管39を接合することを行っているが、透明石英管39を接合しない形態も取り得る。その場合には、図4(a)で示した多孔質ガラス支持体21の開口側の端部領域をバーナー34で加熱収縮させて緻密化する工程において、加熱収縮させる領域の長さを長くすればよい。それにより、透明石英管39を接合することなく、水素分離モジュールに使用される際にシールをするために十分な長さの緻密筒部37を形成することができる。但し、長い区間を緻密化する必要があるため、透明石英管39を接合する方が、作業時間と製造コストの面から考えると有利である。
また、両端が開口している水素分離材料20を製造する場合には、両端が開口した多孔質ガラス支持体21の軸方向両端部をそれぞれ加熱収縮させて緻密筒部37を形成すればよい。それにより、水素分離モジュールに使用される際に両端をシールする場合にも対応できる。なお、加熱収縮させた緻密筒部37に、さらに透明石英管39を接合してもよい。
なお、上記の製造例ではガラス微粒子堆積体25からなる多孔質ガラス支持体21の表面緻密化によってシリカガラス分離膜層22を形成しているが、シリカガラス分離膜層を形成する工程はゾルゲル法やCVD法によるものであってもよい。この場合、多孔質ガラス支持体形成工程(ロッド周囲へのガラス微粒子の堆積工程およびロッドの引抜工程)、両端部の緻密化工程、シリカガラス分離膜層形成工程の順に行うことが望ましい。
(水素分離モジュール)
次に、上記の水素分離材料20を適用した水素分離モジュールの一例について、図5を参照して説明する。図5に示す水素分離モジュール40は、水素分離材料20と水蒸気改質触媒41を反応容器42内に備えている。反応容器42は、原料ガス50を反応容器42内に導入する導入口43と、反応容器42から排ガス51を排出する排出口44と、水素分離材料20を反応容器42内に設置するための設置口45とを備える。水蒸気改質触媒41は、反応容器42内の水素分離材料20の周囲に詰められる。
原料ガス50は、都市ガス、プロパンガス、灯油、石油、バイオメタノール、天然ガス、メタンハイドレート等の燃料を燃焼することにより得られる。原料ガス50は、反応容器42内に導入された後に500℃程度で加熱され、水蒸気改質触媒41(例えばRu系触媒)により改質されて水素ガスを生成する。改質反応中、生成した水素ガスは管状の水素分離材料20によって選択的に引抜かれて内部の中心孔24まで透過され、反応容器42の外へ取り出される。そのため、化学平衡的に水素生成が促進され、反応の低温化を実現することができ、同時にCO変成反応も起こるため、CO変成触媒は理論的に不要となる。
このような水素分離モジュール40において、設置口45では、水素分離材料20との間がシールされて水素分離材料20の開口側の端部、すなわち緻密筒部37が固定される。緻密筒部37は、上記のように多孔質のシリカガラスが緻密化されているので、設置口45において気密にシールするための機械的強度を有している。また、水素分離材料20の閉塞側の端部は緻密部38とされているので、ピンホールから水素以外のガスが水素分離材料20内に取り込まれることがない。
なお、水素分離モジュールにおいて、両端が開口した水素分離材料を用いる場合には、水素分離材料の一端側から内側の空間に原料ガスを導入し、他端側から排ガスを排出するようにして、水素分離材料の周囲に水素を取り出すこともできる。
また、上記の水素分離モジュールを用いて、COメタン化触媒等を有するCO除去モジュールを更に備えた水素製造装置とすることもできる。その水素製造装置は、家庭用定置型燃料電池に用いることが可能である。また、圧力スウィング吸着(PSA)法を適用した水素高純度化モジュールを備えることで、自動車用燃料電池に用いる水素製造装置とすることが可能である。
20:水素分離材料、21:多孔質ガラス支持体、22:シリカガラス分離膜層、24:中心孔、25:ガラス微粒子堆積体、30:ロッド、31,34:バーナー、32:表面処理装置、37:緻密筒部、38:緻密部、39:透明石英管

Claims (3)

  1. ロッドの周囲にCVD法によりガラス微粒子を堆積させてガラス微粒子堆積体を作製し、
    前記ガラス微粒子堆積体から前記ロッドを引き抜いて片側が塞がれた筒状の多孔質ガラス支持体を作製し、
    前記多孔質ガラス支持体の表面にシリカガラス分離膜層を形成して流体分離材料を製造する方法であって、
    前記多孔質ガラス支持体の開口側の端部領域と閉塞側の端部領域とをそれぞれ緻密化して、前記開口側の端部領域に緻密筒部を形成するとともに前記閉塞側の端部領域に中実な緻密部を形成する緻密化工程を含むことを特徴とする流体分離材料の製造方法。
  2. 請求項1に記載の流体分離材料の製造方法であって、
    前記緻密化工程の後、前記多孔質ガラス支持体の前記緻密筒部に透明石英管を接合することを特徴とする流体分離材料の製造方法。
  3. ガラス微粒子を堆積させてなるガラス微粒子堆積体からなる片側が塞がれた筒状の多孔質ガラス支持体の表面に、シリカガラス分離膜層が形成された流体分離材料であって、
    前記多孔質ガラス支持体の開口側の端部領域と閉塞側の端部領域とがそれぞれ緻密化されることで、前記開口側の端部領域に緻密筒部が形成されるとともに前記閉塞側の端部領域に中実な緻密部が形成されていることを特徴とする流体分離材料。
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