JP6116019B2 - Cuろう付け時の耐Cu粒界浸透性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

Cuろう付け時の耐Cu粒界浸透性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼 Download PDF

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Description

本発明は、Cuろう付け時の耐Cu粒界浸透性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼に関する。Cuろう付けにより接合されたプレート式熱交換器等のような耐食性が必要とされるCuろう付け用途に適したオーステナイト系ステンレス鋼に関する。
プレート式熱交換器等の熱交換器は、水、温水、蒸気の流体が循環し、配管や壁を介して熱交換が行われる。例えば、プレート式熱交換器は、プレス加工により流路を形成したプレートを複数枚を重ね合わせて積層された構造を備えており、プレート壁を介して液相/液相又は気相/液相の間で熱交換が行われる。このような水を含む使用環境にあるため、熱交換器の構造材として従来から耐食性や加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が使用されている。
ステンレス鋼プレートの接合には、Cuろう、Niろう等の母材よりも低融点のろう材によるろう付け手段が用いられる。この接合方法は、ろう材をプレート基材の間に配置し、真空中またはArや水素の雰囲気ガス中で1120℃程度の高温に加熱することで溶融したろう材が基材間を埋めることによりプレート基材同士が接合される。オーステナイト系ステンレス鋼としては、SUS304系やSUS316系が用いられる。例えば、特許文献1は、ろう材で接合される構造物に用いられるオーステナイ系ステンレス鋼に関して、ろう付け性と耐食性を両立させるために、[Cu]×[Si]、2[N]+[Mo]の各範囲を規定している。
特開2012−207259号公報
製品において高耐熱性が不要なステンレス鋼のろう付けにはCuろう材を使用することが多い。オーステナイト系ステンレス鋼の基材にCuろう付け処理を施すと、基材およびCuろうは、所定の温度と時間で保持されて、溶融したCuろうは、基材同士の隙間を埋めるが、その際に基材との界面から基材の粒界に浸透(侵入)する現象が発生する(図4)。粒界に浸透したCuは、選択的に粒界と反応を起こしやすい。これは、Cuと基材界面の保護皮膜を生成できないので、粒界に浸透したCuが、粒界に析出した炭素(C)と結合したり、CuろうによりCを溶出させることによると考えられている。
この場合、基材粒界にCuろう材が混在した組織を有しているので、ろう付けされたプレート式熱交換器を組み上げた際、流路で発生する脈圧、ウォーターハンマーのような水圧変動や蒸気圧によりプレートに応力が付加されると、Cuろうが混在した粒界部分で応力集中が起きて、プレート基材に亀裂が発生し易くなり、そのことにより、内容物の漏れや熱交換器の耐久性を劣化させるといった不具合が生じる原因となり得る。
オーステナイト系ステンレス鋼を基材に用いたプレート式熱交換器は、従来から使用されているが、Cuろうの粒界浸透を抑制する手法は知られていない。特許文献1は、ろう付け性について、Si、Cuが一定量以上で添加されると、濡れ性が過剰に良好となり、被接合材同士の隙間からろう材が流出するという問題を記載しているが(段落0017)、ろう材の粒界浸透に関する課題は開示されておらず、具体的には銀ろうを用いたろう付け性試験によってろう付け性を評価している。
このように、オーステナイト系ステンレス鋼の基材を用いて、Cuろう材でろう付け接合する場合、Cuろうの粒界浸透を抑制可能なオーステナイト系ステンレス鋼が望まれていた。
本発明は、SUS304系やSUS316系等のオーステナイト系ステンレス鋼が備える本来の耐食性レベルを確保したままで、Cuろう付け時に発生するCuろうの粒界浸透が抑制された耐Cu粒界浸透性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、オーステナイト系ステンレス鋼の成分組成について鋭意検討した結果、フェライト形成元素であるSi,Cr,Moの含有量を調整することにより、オーステナイト系ステンレス鋼であってもCuろう付けをする際に、Cuろうとステンレス鋼基材のステンレス鋼側の界面にフェライト相からなる拡散層が形成され、Cuの粒界浸透抑制できることを見出し、当該拡散層の形成に適した成分組成を知見することにより、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)本発明は、重量%で、C:0.06%以下、Si:1.0〜5.0%、Mn:1.0%以下、P:0.045%以下、S:0.003%以下、Ni:8.0〜17.0%、Cr:16.0〜20.0%、Mo:0.5〜2.5%、Cu:4.0%以下、N:0.1%以下と、Al:0.2%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下のうちの1種以上を、Si+Cr+Mo≧20%で含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる、残部はFe及び不可避的不純物からなる、Cuろう付け時の耐Cu粒界浸透性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼である。
(2)本発明は、さらに、重量%で、B:0.005%以下、REM:0.5%以下の1種または2種を含む上記(1)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼である。
(3)本発明は、Cuろうの粒界浸透深さを厚み方向で界面から10μm以下に抑制する耐Cu粒界浸透性を有する上記(1)または(2)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼である。
(4)本発明は、上記(1)〜(3)のいずれかに記載されたオーステナイト系ステンレス鋼のろう継手であって、粒界に浸透したCuろうが厚み方向で界面から10μm以下であるオーステナイト系ステンレス鋼ろう継手である。
(5)本発明は、Cuろうと前記ステンレス鋼基材との界面において、前記ステンレス鋼の基材側の界面に2μm以上のSi+Cr+Mo≧14mass%からなる拡散層を有する上記(4)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼ろう継手である。
(6)本発明は、Cuろうと前記ステンレス鋼基材との界面において2μm以上のフェライト層が生成されて、当該界面から10μm以内の前記ステンレス鋼基材側の粒界のCu濃度が50%以下に抑制された上記(5)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼ろう継手である。
(7)前記ステンレス鋼基材の体積の1/3以下となる量のCuろうを使用して接合された上記(4)〜(6)のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼ろう継手である。
本発明によれば、Cuろう付け時の耐Cu粒界浸透性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼が提供された。このステンレス鋼材を用いることにより、Cuろう付け時に、ステンレス鋼基材の粒界に対するCuろうの浸透が抑制されるので、Cu粒界浸透に起因する亀裂発生を防止することができる。エコキュート等に使用される熱交換器等のようにCuろう付け接合される製品のろう継手として広く適用できるものであり、製品の耐久性向上に寄与する。
本発明のステンレス鋼基材とCuろうとの界面組織を示す図である。 本発明の界面組織において成分分析した箇所を示す図である。 図2のB部をX線回折した結果を示す図である。 従来のステンレス鋼基材とCuろうとの界面組織を示す図である。 Cuろうを多量に使用した場合の界面組織を示す図である。
本発明者らは、オーステナイト系ステンレス鋼をCuろう付けする際、Cuろう付け時に発生するCuろうの粒界浸透を抑制してオーステナイト系ステンレス鋼本来の耐食性レベルを維持させる手段について鋭意検討を重ねてきた。その過程で、接合界面に形成された拡散層にCuろうの粒界浸透抑制効果があることを確認し、本発明に至った。
すなわち、本発明のSi,Cr,Moの含有量が調整されたオーステナイト系ステンレス鋼を用いることで、Cuろう付けの際に、Cuろうとステンレス鋼基材のステンレス側界面に2μm以上のSi+Cr+Mo≧14mass%からなる拡散層を有することを見出した。その拡散層をX線回折により解析したところ、フェライト相であることを確認した。この拡散層であるフェライト相を2μm以上生成することにより、界面より10μm以内のステンレス基材側粒界のCu濃度を50%mass以下に抑制することが可能である。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼が含有する各元素について説明する。各元素の含有量の「%」は、特に断らない限り「重量%」を意味する。
C:0.06%以下
Cは、その含有量が多くなると、ろう付け温度やろう付け温度からの冷却速度によってはCr炭化物の生成を招き、粒界にCr欠乏層を形成して粒界腐食の原因となることがある。また、粒界に浸透したCuろうとの反応により炭化物を生成して亀裂の原因となることがある。そのため、C含有量を0.06%以下に低減させる必要がある。
Si:1.0〜5.0%
Siは、Cuろうの濡れ性の改善のために添加される。また、Cuろうとの界面にフェライト相を生成する作用を有する。1.0%未満であると、それら効果が十分に得られない。5.0%を超えると、濡れ性が過剰に発現されて流動が過多になるので、ろう付け性が低下する。さらにオーステナイト相の安定化に影響する。そのため、Si含有量は、1.0〜5.0%が好ましい。さらに、2.0〜4.0%が好ましい。
Mn:1.0%以下
Mnは、脱酸に有効な元素であるが、過剰に添加するとMn化合物を形成して耐食性を低下させる。また、Cuろうとの界面におけるフェライト相形成を阻害する。そのため、Mn含有量は、1.0%以下とする。
P:0.0045%以下
Pは、鋼の靭性の低下や加工性の低下を招く元素である。P含有量は、0.0045%以下に制限される。
S:0.003%以下
Sは、孔食の原因となりやすいMnSを生成して耐食性を阻害する元素である。また、ろう付け部の高温割れの要因にもなりやすい。S含有量は、0.003%以下に制限される。
Ni:8.0〜17.0%
Niは、オーステナイト相を安定化して耐食性を維持するに必須の元素であり、加工性にも効果的である。8.0%未満では、これらの効果が十分でなく、また、17.0%を超えるとその効果が飽和しコスト高となることから、Ni含有量は、8.0〜17.0%とした。
Cr:16.0〜20.0%
Crは、不働態被膜を形成して耐食性を付与する元素である。また、Cuろうとの界面にフェライト相を生成する作用を有する。16.0%未満では、それらの効果が十分でない。また、20.0%を超えると、フェライト相が内部でも形成されて加工性の低下を招くことから、Cr含有量は、16.0〜20.0%とした。
Mo:0.5〜2.5%
Moは、不働態膜を補修する作用があり耐食性を向上させる効果を有する元素である。また、Cuろうとの界面にフェライト相を生成する作用を有する。0.5%未満では、これらの効果が十分でない。また、2.5%を超えると、フェライト相が内部でも形成されて加工性の低下を招くことから、Mo含有量は、0.5〜2.5%とした。
Cu:4.0%以下
Cuは、固溶強化により強度の向上に寄与する元素であるが、多量のCu含有は、加工性や耐食性を低下させる要因となることから、その範囲を4.0%以下とした。
N:0.1%以下
Nは、Cr窒化物を粒界に析出させて、粒界近傍のCr固溶量の低減を招き、耐粒界腐食性を低下させることから、0.1%以下が好ましい。
Nb:0.2%以下
Nbは、炭窒化物を形成してCr炭化物の形成を抑制するので、Cr固溶量により低減するのを抑制し耐粒界腐食性に有効な元素である。過剰に含有すると、粒界からCr系炭窒化物の析出を促進して耐粒界腐食性や加工性に悪影響を招くことがあるので、0.2%以下とした。
Ti:0.2%以下
Tiは、Nbと同様に、炭窒化物を形成し、耐粒界腐食性に有効な元素であるが、過剰に添加すると、Ti窒化物により熱間加工性の低下を招き、また、表面酸化物の形成によりCuろう濡れ性を低下させることから、0.2%以下とした。
Al:0.2%以下
Alは、脱酸に使用される元素であり、高温酸化性を向上させる効果がある。過剰に添加すると、加工性の低下を招き、また、表面酸化物の形成によりCuろう濡れ性を低下させることから、0.2%以下とした。
B:0.005%以下、REM:0.5%以下
B、REMは、熱間加工性を向上に有効な元素である。過剰に添加すると、耐食性や加工性を損なう場合があるので、B含有量を0.005%以下、REM含有量を0.5%以下とした。
Si、Cr、Moの総量
Si、Cr、Moは、フェライト相を形成する元素であり、ステンレス鋼基材においてCuろうとの界面から2μm以上の厚みでフェライト相の生成に寄与し、当該フェライト相によってCuろうの浸透を抑制する効果をもたらす。この効果を発現させるには、基材におけるSi、Cr、Moの総量を20%以上にする必要がある。
Si、Cr、Moの総量をこのようにしておくと、ろう付け時にCuろうとステンレス鋼基材のステンレス鋼側の界面にSi、Cr、Moの総量が14mass%以上のフェライト相からなる拡散層が形成され、Cuの粒界浸透抑制効果を得ることができる。
本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、公知の製造方法により、溶製、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍等の各処理を行って、所定の形状および寸法の鋼材を製造することができる。
ろう付け時のCuろう材は、Cuを主成分とするろう材であればよく、無酸化銅(Cu濃度:約100mass%、固相温度1083℃)からなるものを使用できる。Cuろう材の形態としては、ペ一スト状のもの、シート箔状のものを使用できる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で適宜変更して実施できる。
表1に示す成分を有するオーステナイト系ステンレス鋼について、30kgの真空溶解で溶製し、得られた鋼塊を30mm厚の板に鍛造した後、熱間圧延を行って4mm厚の熱延板を得た。次いで、焼鈍、酸洗および冷間圧延を行って0.3mm厚の冷延板を得た。その後、該冷延板に1050℃の焼鈍処理を施して冷延焼鈍板を製造し、これを供試材とした。
(ろう付け性試験)
板厚0.3mmの当該供試材から10mm×20mmろう付け試験片を各鋼種2枚ずつ切り出した。2枚の試験片の間に、70μm厚で200mmの初期面積のシート箔からなるCuろう材を挟んで、試験片/Cuろう材/試験片の3層からなる試験体を構成し、これを水平に保ったまま0.01MPa程度の面圧をかけて真空炉に装入した。そして、メカニカルブースターで真空引きし、初期真空度を1×10−2Pa以下に保持した。次いで、炉内に不活性ガスを100Pa程度充填させた後、加熱して昇温を開始した。昇温は、Cuろう材の固相温度(1083℃)に達する前の1050℃で一旦5分保持した。次いで、ろう付け温度の1120℃に昇温し、その温度で15分保持した。その後、炉内に不活性ガスを90kPa程度に充填して冷却を行った後、炉内から取り出すことで、Cuろう付けを施した試験体を作製した。なお、Cuろう材として無酸素銅(JISZ3263の100mass%Cu)を使用した。
(耐Cu粒界浸透性の評価)
Cuろう付け後の当該試験体は、板厚方向に切断し、樹脂に埋め込み、その断面を鏡面研磨した後、光学顕微鏡により5視野観察を行い、ステンレス鋼基材の粒界におけるCuろうの浸透深さを測定し、最大浸透深さを求めた。この最大浸透深さを平均化した数値に基づいて、Cuろうに関する耐粒界浸透性を評価した。評価基準は、浸透深さが10μm以下のものを合格と判定し、10μmを超えるものを不合格と判定した。
(ろう流れ性(ろう広がり性)の評価)
Cuろうの流れ性に関しては、Cuろう付けされた上記試験体の表面を観察し、表面のうちCuろう材で濡れ広がった面積を測定した。具体的には、板厚0.3mmの当該供試材から40mm×40mmろう付け試験片を作製し、当該試験片の表面に初期面積0.4cmのCuろうを置いて、加熱処理後に広がったCuろうの面積を測定した。この測定面積を加熱前のCuろう初期面積で除して、ろう広がり率(%)を求めた。ろう広がり率が300%以上のものを合格と判定し、300%未満のものを不合格と判定した。
(試験結果)
表2に示すように、本発明例No.1〜No.8は、基材界面からのCuろうの浸透深さが10μm以下であり、また、ろう広がり率が300%以上を示していた。このように、本発明例は、耐Cu粒界浸透性及びろう流れ性の両方において優れていることを確認した。
それに対し、比較例No.9〜No.12、No.14、No.16は、Cuろうの浸透深さが10μmを大きく超えており、耐粒界浸透性が本発明よりも劣っていた。
比較例9で用いた鋼Iは、SUS304の鋼組成に相当し、比較例10で用いた鋼Jは、SUS316Lの鋼組成に相当し、Si含有量がそれぞれ0.50%、0.51%であり、本発明よりも低い範囲にある。また、比較例No.10は、Mn含有量が1.76%であり、本発明よりも高い範囲にある。本発明は、従来のステンレス鋼に比べて、耐Cu粒界浸透性に優れることが分かる。
さらに、比較例No.11(鋼K)は、C、Mn含有量の点で、比較例No.12(鋼No.L)は、Si含有量の点で、比較例No.14(鋼N)は、Cr含有量の点で、比較例No.16(鋼P)は、Mo含有量の点で、それぞれ本発明の範囲を外れたものである。
比較例No.13、No.15は、浸透深さが10μm以下であったが、ろう広がり率が300%未満を示した。比較例No.13(鋼M)のAl含有量、比較例No.15(鋼O)のTi含有量は、本発明よりも高い範囲にある。そのため、Cuろう濡れ性の点で本発明のステンレス鋼よりも劣っていた。これらのCuろうの流れ性(ろう広がり性)が悪いステンレス鋼基材は、ろう接合が不十分であるため、Cuろう付けされた製品に不適合であると評価される。
(界面組織の組織観察と成分分析)
実施例の浸透深さが小さいことに関して説明する。図1に、本発明例1(鋼A)の鋼材について観察した界面組織を示す。図1に示すように、Cuろうとプレート基材との界面において、Cuの基材粒界浸透の発生が認められなかった。この界面には、12μm厚程度の基材と異なる層(拡散層)の存在が確認された。この拡散層を含む界面付近の表面について、図2に示す測定箇所で、EDX(エネルギー分散型X線分析)、EPMA(電子線マイクロアナライザー)による成分分析を行った。その結果、図2のB部には、表2に示すように、Si、CrおよびMoの各元素の含有量が多く、拡散層は、これらの元素が濃化した領域であることを確認できた。さらに、当該拡散層の構造をX線回折した結果、図3に示すようにフェライト相のステンレス鋼組織であることを確認した。また、界面から10μm以内のステンレス鋼基材側の粒界のCu濃度が50%以下であることを確認できた。それ以外の本発明例および比較例の鋼材についても同様に測定した結果を表2に示す。
このように、本発明例は、Cuろうとステンレス鋼基材のステンレス鋼側界面に、Si、CrおよびMoが濃化したフェライト相からなる拡散層を有していた。この拡散層がCuの粒界浸透を抑制する保護皮膜の働きをしたものと考えられる。それに対し、比較例は、Cuろう付け時に、本発明例の拡散層のような保護皮膜が基材界面側に生成できないため、Cuが粒界に浸透したものと考えられる。
(参考例)
ところで、図5に、既存のSUS316を用いて、Cuろう材を通常の約4倍も多い量で使用し、ろう付けした場合の界面組織を示す。図5に示すように、ステンレス鋼基材とCuろうとの界面には、Cuろうが基材を浸食した現象が生じていた。
そこで、表1に示す鋼A、鋼B、鋼E、鋼Fを用いて、Cuろう材の使用量を通常よりも多くして、耐Cu粒界浸透性の評価試験を行った。具体的には、280μmのシート箔からなるCuろう材を使用した以外は、本発明例1と同様の条件でろう付けされた試験体を作製し、本発明例1と同様の方法で浸透深さを測定した。その試験結果を表3に示す。
表3に示すように、参考例No.17〜No.20は、浸透深さが10μmを超えていた。当該参考例の鋼材は、実施例の本発明例No.1、No.2、No.5、No.6と同じ鋼材であって、Cuろうによる粒界浸透の抑制が可能なステンレス鋼であるが、過多のCuろう材を使用した場合には10μm以上の浸透が起きた。界面組織を観察したところ、図5に示したものと同様の浸食現象が生じていた。
これは、Cuろう材の使用量が多いと、Cuろうが濡れ広がる前にその場で溜まって対流が起きると推測され、この対流によりステンレス鋼基材に溶融(エロージョン)が生じて、実施例の拡散層が浸食される結果、Cuろうの浸透を抑制する機能が低下したものと推測される。
それに対し、実施例で使用されたCuろう材(70μm厚)は、ステンレス鋼基材(0.3mm厚)に比べて1/3程度の量である。そのため、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼を、例えば熱交換器の構造材に使用してCuろうで接合する場合は、Cuろう材の使用量をステンレス鋼基材の体積の1/3以下にすることが好ましい。

Claims (7)

  1. 重量%で、C:0.06%以下、Si:1.0〜5.0%、Mn:1.0%以下、P:0.045%以下、S:0.003%以下、Ni:8.0〜17.0%、Cr:16.0〜20.0%、Mo:0.5〜2.5%、Cu:4.0%以下、N:0.1%以下と、Al:0.2%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下のうちの1種以上を、Si+Cr+Mo≧21.04%で含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる、Cuろう付け時の耐Cu粒界浸透性に優れたことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
  2. さらに、重量%で、B:0.005%以下、REM:0.5%以下の1種または2種を含むことを特徴とする請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 板厚0.3mmの2枚のステンレス鋼板の間に、70μm厚のCuろう材を挟んだ試験体を、不活性ガス雰囲気において、1050℃で5分保持した後、1120℃で15分のろう付けをした後に測定されたCuろうの粒界浸透深さを厚み方向で界面から10μm以下に抑制する耐Cu粒界浸透性を有することを特徴とする請求項1または2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載されたオーステナイト系ステンレス鋼のろう継手であって、粒界に浸透したCuろうが厚み方向で界面から10μm以下であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼ろう継手。
  5. Cuろうと前記ステンレス鋼基材との界面において、前記ステンレス鋼の基材側の界面に2μm以上のSi+Cr+Mo≧14mass%からなる拡散層を有することを特徴とする請求項4に記載のオーステナイト系ステンレス鋼ろう継手。
  6. Cuろうと前記ステンレス鋼基材との界面において2μm以上のフェライト層が生成されて、当該界面から10μm以内の前記ステンレス鋼基材側の粒界のCu濃度が50mass%以下に抑制されたことを特徴とする請求項4または5に記載のオーステナイト系ステンレス鋼ろう継手。
  7. 前記ステンレス鋼基材の厚みの1/3以下となる厚みのCuろうを使用して接合されたことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼ろう継手。
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