以下、本発明の一実施形態を図1〜図28に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ1000の概略構成が示されている。
このレーザプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングユニット1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、排紙トレイ1043、通信制御装置1050、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置1060などを備えている。なお、これらは、プリンタ筐体1044の中の所定位置に収容されている。
通信制御装置1050は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAMなどを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、上位装置からの要求に応じて各部を制御するとともに、上位装置からの画像情報を光走査装置2010に送る。
感光体ドラム1030は、円柱状の部材であり、その表面には感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。そして、感光体ドラム1030は、図1における矢印方向に回転するようになっている。
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングユニット1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に沿って、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングユニット1035の順に配置されている。
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面を、プリンタ制御装置2090からの画像情報に基づいて変調された光束により走査し、感光体ドラム1030の表面に画像情報に対応した潜像を形成する。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着した潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングユニット1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置1010の構成について説明する。
この光走査装置1010は、一例として図2に示されるように、光源ユニット14、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、ポリゴンミラー13、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、及び走査制御装置(図示省略)などを備えている。そして、これらは、光学ハウジング30の所定位置に組み付けられている。
光源ユニット14は、一例として図3に示されるように、レーザモジュール500と光学モジュール600を有している。
なお、本明細書では、光源ユニット14からの光の射出方向をZ軸方向、このZ軸方向に垂直な平面内で互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。また、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
レーザモジュール500は、光デバイス510、該光デバイス510を駆動制御するレーザ制御装置(図示省略)、前記光デバイス510及びレーザ制御装置が実装されているPCB(Printed Circuit Board)基板580を有している。
光デバイス510は、一例として図4〜図6に示されるように、レーザチップ100、該レーザチップ100を保持するパッケージ部材200、及びカバーガラス300などを有している。
なお、図4は、光デバイス510の平面図であり、図5は、図4におけるカバーガラス300を除いたときの図である。また、図6は、図4のA−A断面図である。なお、図5及び図6では、煩雑さを避けるため、レーザチップ100とパッケージ部材200とを繋ぐボンディングワイヤの図示は省略している。
レーザチップ100は、複数の発光部を有している。各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。すなわち、レーザチップ100は、面発光レーザアレイチップである。
パッケージ部材200は、CLCC(Ceramic leaded chip carrier)と呼ばれるフラットパッケージであり、その+Z側には、周囲が壁で囲まれている空間領域を有している。
このパッケージ部材200は、図7及び図7のA−A断面図である図8に示されるように、セラミック201と金属配線203の多層構造となっている。
金属配線203は、パッケージ部材の周辺から中央に向かって伸びており、パッケージ側面の複数の金属キャスター207に1対1に個別につながっている。
空間領域の底面中央には、金属膜205が設けられている。この金属膜205は、ダイアタッチエリアとも呼ばれており、共通電極になっている。ここでは、4隅に位置する8本の金属配線が金属膜205に接続されている。
また、空間領域の壁は、一例として1段の段付構造になっている。
レーザチップ100は、空間領域121の底面のほぼ中央であって、金属膜205上にAuSn等の半田材を用いてダイボンドされている。すなわち、レーザチップ100は、周囲が壁で囲まれている領域の底面上に保持されている。
そして、空間領域の壁の段部に、空間領域を密閉するようにカバーガラス300がエポキシ樹脂系接着剤で接合されている(図6参照)。これによって、レーザチップ100を保護している。ここでは、カバーガラス300の表面は、XY面に平行である。
図3に戻り、前記光学モジュール600は、コリメートレンズ631、開口板632、集光レンズ612、及び受光素子613を有している。
光学モジュール600は、光デバイス510の+Z側であって、レーザチップ100から射出された光束の光路上にコリメートレンズ631が位置するように配置されている。
コリメートレンズ631は、レーザチップ100から射出された光束を略平行光とする。
開口板632は、開口部を有し、コリメートレンズ631を介した光束を整形する。開口板632の開口部を通過した光束が、光源ユニット14から射出される光束となる。なお、この光束を整形するとは、「感光体ドラム上に潜像を高精細に形成するのに適した光束の形状にする」ことを意味する。
この開口板632の開口部の周囲は、表面がアルミニウムあるいは銀でコーティングされており、高い反射率を有している。
また、開口板632は、開口部の周囲で反射された光束をモニタ用光束として利用するため、コリメートレンズ631の光軸方向に直交する面に対して傾斜して配置されている。ここでは、開口部の周囲に入射した光束は−Y方向に反射されるように設定されている。
集光レンズ612は、開口板632の−Y側に配置され、開口板632で反射されたモニタ用光束を集光する。
受光素子613は、集光レンズ612の−Y側に配置され、集光レンズ612を介したモニタ用光束を受光する。受光素子613は、受光光量に応じた信号(光電変換信号)を前記レーザ制御装置に出力する。
図2に戻り、シリンドリカルレンズ17は、光源ユニット14から射出された光を反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光する。
レーザチップ100とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、コリメートレンズ631と開口板632とシリンドリカルレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
ポリゴンミラー13は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面に6面の偏向反射面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、図2に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。従って、光源ユニット14から射出され、シリンドリカルレンズ17によってポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に集光された光は、ポリゴンミラー13の回転により一定の角速度で偏向される。
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光の光路上に配置されている。
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光の光路上に配置されている。そして、この像面側走査レンズ11bを介した光が、感光体ドラム1030の表面に照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、ポリゴンミラー13の回転に伴って感光体ドラム1030の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム1030上を走査する。このときの光スポットの移動方向が「主走査方向」である。また、感光体ドラム1030の回転方向が「副走査方向」である。
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bの間の光路上、及び像面側走査レンズ11bと感光体ドラム1030の間の光路上の少なくとも一方に、少なくとも1つの折り返しミラーが配置されても良い。
ところで、発明者らは、高速度カメラを用いて、面発光レーザアレイのビームパターンを観測した。これによって、他の発光部から射出された光束の戻り光によってノイズが発生するときに、瞬間的に干渉縞を形成することが確認された。しかも詳細な検証を重ねた結果、干渉縞の形成は頻繁に起こる現象ではなく極稀に発生するものであり、開口部を通過する光束の光量変動は、この干渉縞の形成に起因していることがわかった。これは干渉縞が形成されることによって、空間的な光の強弱が発生し、開口部によってその一部が切り取られることにより、非干渉時と干渉時とで開口部を通過する光束の光量に違いができるためである。仮に開口部がなければ、干渉が起きても全光量は変化しないため、光量変動も発生しない。なお、干渉縞は、書き込み光量が変動すると画像品質に大きく影響するため、濃度ムラが目に付くことになる。つまり、干渉縞は、画像品質に大きく影響し、その発生が極めてまれであっても、その発生を低減する必要がある。
一般的に、2つの光源による干渉縞の間隔x0は、ヤングの干渉実験でよく知られるように、2つの光源の間隔をd、発振波長をλ、光源と観測平面間の距離をLとすると、次の(1)式のように表される。
x0=L・λ/d ……(1)
干渉縞の強度は、正弦波の強度分布で周期的に分布するため、開口部で切り取られた光束の中に、山(光が強めあう点)が多いか谷(光が弱めあう点)が多いかで光量の大小が決まり、山の数と谷の数が等しいときには光量が変わらないこととなる。そこで、開口部を通過する光束の光量を一定にするには、面発光レーザアレイの射出面が含まれる平面上での開口部の正射影における干渉縞に垂直な方向の幅を干渉縞の間隔x0の整数倍の長さにすれば良いことになる。なお、以下では、面発光レーザアレイの射出面が含まれる平面上での開口部の正射影を、便宜上「開口射影」と略述する。また、レーザチップの射出面が含まれる平面を、便宜上「射出平面」ともいう。
ここで、具体的に開口部の寸法について説明する。
具体例1.開口板はXY面に平行で、開口射影は短辺がX軸方向に平行な長方形状であり、複数の発光部がX軸方向に等間隔dで一列に並んでいる場合(図9及び図10参照)。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
この場合、上記(1)式におけるLは、開口部の中心から射出平面に下ろした垂線の長さとなる。
d=80μm、L=100mm、λ=780nmとすると、L・λ/dは、0.975mmとなる。このときに、開口射影の短辺の長さRがL・λ/dの2倍である1.95mmになるように開口部を形成することにより、開口部を通過する光束の光量を一定にすることができる。
具体例2.開口板はXY面に平行で、開口射影は短辺がX軸方向に平行な長方形状であり、複数の発光部がX軸方向とY軸方向とに沿ってマトリックス状に並んでいる場合(図11及び図12参照)。図12におけるdxはX軸方向の発光部間隔であり、dyはY軸方向の発光部間隔である。また、Rxは開口射影における短辺の長さであり、Ryは開口射影における長辺の長さである。ここでは、開口部の形状と開口射影の形状は同じである。
dx=80μm、dy=40μm、L=100mm、λ=780nmとすると、L・λ/dxは0.975mm、L・λ/dyは1.95mmとなる。このときに、RxがL・λ/dxの2倍である1.95mm、RyがL・λ/dyの2倍である3.90mmになるように開口部を形成することにより、開口部を通過する光束の光量を一定にすることができる。
なお、一例として図13(A)に示されるように、複数の発光部が2次元的に配列され、2つの配列方向(図13(A)では、X軸方向とY’軸方向)が直交していない場合であっても、複数の発光部の配列における各配列方向に対応する開口射影の寸法が、対応する方向の干渉縞の間隔の略整数倍になるように開口部を形成することにより、開口部を通過する光束の光量を一定にすることができる。図13(A)の場合に、X軸とY’軸とのなす角度をαとすると、開口射影のY軸方向の長さが(Lλ/dy’)/sinαの略整数倍になるように開口部を形成する。
また、一例として図13(B)に示されるように、各配列方向における発光部間隔が等間隔でなくても良い。このときには、X軸方向における発光部間隔をdx1、dx2、nxを整数とすると、X軸方向に関する開口射影の寸法が、λL/dx1×nxと、λL/dx2×nxの間の値となり、Y軸方向における発光部間隔をdy1、dy2、nyを整数とすると、Y軸方向に関する開口射影の寸法が、λL/dy1×nyと、λL/dy2×nyの間の値となるように、開口部を形成することにより、開口部を通過する光束の光量を一定にすることができる。
具体例3.開口板はXY面に平行で、開口射影は長辺がX軸方向に対して傾斜(傾斜角度θ)している長方形状であり、複数の発光部がX軸方向とY軸方向とに沿ってマトリックス状に並んでいる場合(図14及び図15参照)。図15におけるR1は開口射影における短辺の長さであり、R2は開口射影における長辺の長さである。
dx=80μm、L=100mm、λ=780nmとすると、L・λ/dxは、0.975mmとなる。このときに、R1・sinθがL・λ/dxの2倍である1.95mm(R1=2.25mm)になるように開口部を形成することにより、開口部を通過する光束の光量を一定にすることができる。
この場合に、R2・cosθがL・λ/dxの整数倍になるように開口部を形成しても良い。
ところで、実際には、開口射影の寸法が上記条件を完全に満たすように開口部を形成することは困難であり、必ず微小な寸法誤差が生じて光量変動を抑制する効果が低減する。さらに、寸法誤差以外でも開口部の四隅にバリが残ったり、四隅にアールがつくと光量変動を抑制する効果が低減する。
これらへの対処として、長さをX軸方向における干渉縞の間隔の整数倍にする対象としてR1・sinθ及びR2・cosθの一方を選択する際に、干渉縞の山及び谷の数が少ない方を選択すると良い。これは、開口部を通過する干渉縞の山及び谷の数が少ない方が、光量に対する変動率が大きいためである。干渉縞の山及び谷の数が少ない方とは、光源の間隔が狭い方である。従って、開口部の幅は、干渉縞の山及び谷の数が少ない方に着目することが望ましい。
また、R1・sinθ及びR2・cosθの両方の長さが、L・λ/dxの整数倍になるように開口部を形成しても良い。
さらに、R1・cosθ及びR2・sinθの少なくとも一方がL・λ/dyの整数倍になるように開口部を形成しても良い。
具体例4.開口板とレーザチップとの間の光路上にコリメートレンズが配置され、開口板はXY面に対して傾斜して(傾斜角度φ)おり、開口射影は短辺がX軸方向に平行な長方形状であり、複数の発光部がX軸方向とY軸方向とに沿ってマトリックス状に並んでいる場合(図16及び図17参照)。
この場合、コリメートレンズ通過以降、光束は平行光となるので光路差はなく、干渉縞の間隔も変化しない。そこで、上記(1)式におけるLは、コリメートレンズの中心から射出平面に下ろした垂線の長さとなる。また、開口部の短辺の長さをrとすると、開口射影の短辺の長さRxは、r・cosφとなる。
dx=80μm、L=100mm、λ=780nmとすると、L・λ/dxは、0.975mmとなる。このときに、開口射影の短辺の長さRx(=r・cosφ)がL・λ/dxの2倍である1.95mmになるように開口部を形成することにより、開口部を通過する光束の光量を一定にすることができる。例えば、φ=45°であれば、r=2.75mmとなる。
この場合に、上述した具体例3のように、開口射影の長辺がX軸方向に対して傾斜(傾斜角度θ)しているときには、r・sinθ・cosφがL・λ/dxの整数倍になるように開口部を形成することにより、開口部を通過する光束の光量を一定にすることができる。
さらに、開口射影の長辺の長さが、L・λ/dyの整数倍になるように開口部を形成しても良い。
上記各具体例では、開口射影の形状が長方形の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図18(A)に示されるように平行四辺形であっても良い。また、図18(B)に示されるように凹多角形であっても良い。さらに、図18(C)に示されるように曲線を含む形状であっても良い。いずれにおいても、X軸方向に関する開口射影の長さがX軸方向における干渉縞の間隔の整数倍になるように開口部を形成することにより、開口部を通過する光束の光量を一定にすることができる。すなわち、開口部の形状は、長方形以外であっても良い。なお、これらの具体例では、光変動の要因となる方向をX軸方向として図示している。
また、上記各具体例において、前記開口板に代えて、複数の開口板からなる開口部材を用いても良い(図19参照)。この場合は、開口部の四隅を正確に所望の形状とすることができる。すなわち、1枚の開口板を用いるときよりも、開口部の形状を精度良く所望の形状とすることができる。
具体例5.開口板とレーザチップとの間の光路上にコリメートレンズが配置され、開口板は平板ではなく、開口射影は短辺がX軸方向に平行な長方形状であり、複数の発光部がX軸方向とY軸方向とに沿ってマトリックス状に並んでいる場合(図20参照)。
この場合、上記(1)式におけるLは、コリメートレンズの中心から射出平面に下ろした垂線の長さとなる。
dx=80μm、L=100mm、λ=780nmとすると、L・λ/dxは、0.975mmとなる。このときに、開口射影の短辺の長さRがL・λ/dxの2倍である1.95mmになるように開口部を形成することにより、開口部を通過する光束の光量を一定にすることができる。すなわち、開口板は、平板に限定されるものではない。
本実施形態では、レーザチップ100は、一例として図21に示されるように、2次元的に配列されている32個の発光部、及び32個の発光部の周囲に設けられ、各発光部に対応した32個の電極パッドを有している。また、各電極パッドは、対応する発光部と配線部材によって電気的に接続されている。
32個の発光部は、図22に示されるように、全ての発光部をZ軸方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しく(図22では「c」)なるように配置されている。そして、X軸方向における発光部間隔dxは80μmである。
また、本実施形態では、上記具体例4と同様に、L=100mm、λ=780nm、φ=45°であり、開口部の短辺の長さrを2.75mmとしている。
そして、本実施形態では、光源ユニット14から射出される光束の光量は、変動が小さく、安定していた。
ところで、一般的に開口板を固定する場合、一例として図23に示されるように、開口板の4つの辺を支持部材にネジ止めや接着剤で取り付けていた。しかしながら、この固定の際に、支持部材と開口板との間に異物が入り込んだり、接着剤が流れ込んだりすることがある。
開口板は、一例として図24(A)に示されるように、射出平面に対して平行に設置されることを前提に開口部の長さRが設計されている。この長さRは、干渉縞間隔の整数倍となる長さである。そこで、一例として図24(B)に示されるように、支持部材と開口板との間に異物が入り込んで、開口板が射出平面に対して非平行に設置されると、開口部射影の長さR’は長さRよりも短くなってしまう。この場合、開口部を通過する光量が不安定になるおそれがある。
複数の発光部が1次元配列されている場合、開口部を通過する光が光量変動を起こさないためには、配列方向に関して、射出平面における開口部の射影の長さが正確に干渉縞間隔の整数倍となっていることが必要である。なお、配列方向に直交する方向に関しては、射出平面における開口部の射影の長さに制限はない。
そこで、異物等により射出平面における開口部の射影の長さが目的の長さからずれてしまうことを避けるために、支持部材に対する開口板の固定位置は、配列方向に平行となる部分を固定することが適切である。これにより、開口部を通過する光量を安定化することができる。
《固定例1》
支持部材に対する開口板の固定例1が、図25に示されている。ここでは、複数の発光部がX軸方向に沿って1次元配列されている。そして、発光部間隔をdx、X軸方向に関する射出平面における開口部の射影の長さをRx、Y軸方向に関する射出平面における開口部の射影の長さをRy、開口部の中心から射出平面に下ろした垂線の長さをLとする。
開口板及び開口部の形状はいずれも矩形形状であり、開口部の4つの辺は、それぞれ開口板の4つの辺に平行である。また、Rxは、干渉縞間隔(x0とする)の整数倍の長さであり、干渉縞の発生の有無にかかわらず開口部の通過光量が一定となるように設計した。なお、この開口板は、射出平面に対して平行に設置されることを前提にしている。
具体的には、λ=780nm、d=80μm、L=100mmとした。この条件での干渉縞間隔x0は0.975mmとなる。そして、Rxを、干渉縞間隔x0の2倍の長さである1.95mmとした。
この開口板を支持部材に固定する際に、開口板の+Y側の辺と−Y側の辺を接着剤で支持部材に固定した。なお、接着剤に代えて、ネジ止めなどによる固定法であっても良い。
この場合は、支持部材と開口板との間に異物が入り込んだり、接着剤が流れ込んだりするのを避けることができ、Rxの大きさが変化するのを抑制することができる。なお、干渉縞の発生に関連して開口部を通過する光量が変動する現象に寄与するのはRxだけであり、Ryは光量変動には関与しない。その結果、干渉縞の発生の有無にかかわらず、開口部の通過光量を一定にすることができ、従来構成の結果と比較しても光量変動が改善されていることが確認できた。
すなわち、固定例1では、開口板は、X軸方向に平行な部分が接着剤によって支持部材に固定されている。
《固定例2》
支持部材に対する開口板の固定例2が、図26に示されている。固定例2では、開口板を支持部材に固定する際に、開口板の+Y側の辺の一部と−Y側の辺の一部を接着剤で支持部材に固定している。なお、接着剤が塗布される領域は、開口板が支持部材に固定されるのに十分な大きさを有している。
この場合においても、干渉縞の発生の有無にかかわらず、開口部の通過光量を一定にすることができ、従来構成の結果と比較しても光量変動が改善されていることが確認できた。
すなわち、固定例2では、開口板は、X軸方向に平行な部分の一部であり、開口部を挟んで対向している2つの部分が、接着剤によって支持部材に固定されている。
なお、開口板の形状は、一例として図27に示されるように、円形であっても良い。この場合においても、干渉縞の発生の有無にかかわらず、開口部の通過光量を一定にすることができ、従来構成の結果と比較しても光量変動が改善されていることが確認できた。
《固定例3》
支持部材に対する開口板の固定例3が、図28に示されている。ここでは、複数の発光部がX軸方向及びY軸方向に沿ってマトリックス状に2次元配列されている。
そして、X軸方向に関する発光部間隔をdx、Y軸方向に関する発光部間隔をdyとする。また、Rxは射出平面上の開口射影における短辺の長さであり、Ryは長辺の長さである。
具体的には、dx=80μm、dy=40μm、L=100mm、λ=780nmとした。この条件でのX軸方向に関する干渉縞間隔は0.975mm、Y軸方向に関する干渉縞間隔は1.95mmとなる。そして、Rxを、X軸方向に関する干渉縞間隔の2倍である1.95mm、Ryを、Y軸方向に関する干渉縞間隔の4倍である7.80mmとした。
固定例3では、開口板の形状を円形とし、開口板を支持部材に固定する際に、開口板の+Y側の円周の一部と−Y側の円周の一部を接着剤で支持部材に固定している。なお、接着剤が塗布される領域は、開口板が支持部材に固定されるのに十分な大きさを有している。
そして、RxとRyのうちRxの長さが正確に所望の長さとなるように開口板を設置した。これは、開口部が切り取る光束において、開口部の長さに対し干渉縞の数が少ないほど、干渉縞の位置が移動した際に、開口部を通過する光量の変動が大きくなるためである。
ここでは、干渉縞の本数が少ないX軸方向に関する開口部の長さRxを正確に所望の長さとなるように設置できた方が光量の変動を低減できるため、+Y側の円周の一部と−Y側の円周の一部の2部分で開口板を固定した。
この場合においても、干渉縞の発生の有無にかかわらず、開口部の通過光量を一定にすることができ、従来構成の結果と比較しても光量変動が改善されていることが確認できた。
すなわち、固定例3では、複数の発光部は、X軸方向とY軸方向とに沿って2次元配列されており、開口板は、X軸方向及びY軸方向のうち、開口部の寸法に対する干渉縞間隔が大きい方向に平行な部分が、接着剤によって支持部材に固定されている。
以上説明したように、本実施形態に係る光源ユニット14によると、レーザチップ100を含むレーザモジュール500、コリメートレンズ631及び開口板632を含む光学モジュール600を有している。
そして、開口板632の開口部は、X軸方向に関する開口射影の長さがX軸方向における干渉縞の間隔の2倍になるように形成されている。
そこで、開口部を通過する光束の光量変動を小さくすることができる。その結果、光源ユニット14は、光量変動の少ない安定した光を射出することができる。また、開口板632の設計の自由度を向上させることができる。
そして、本実施形態に係る光走査装置1010によると、光源ユニット14を有しているため、高精度の光走査を行うことができる。
また、レーザチップ100が複数の発光部を有しているため、同時に複数の光走査が可能となり、画像形成の高速化を図ることができる。
また、本実施形態に係るレーザプリンタ1000によると、光走査装置1010を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することが可能である。
ところで、レーザチップ100では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔cであるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム1030上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
そして、例えば、上記間隔cを2.65μm、光走査装置1010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチdxを狭くして間隔cを更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
また、この場合には、レーザプリンタ1000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
なお、上記実施形態では、光走査装置1010がプリンタに用いられる場合について説明したが、プリンタ以外の画像形成装置、例えば、複写機、ファクシミリ、又は、これらが集約された複合機にも用いることができる。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
例えば、媒体が、CTP(Computer to Plate)として知られている印刷版であっても良い。つまり、光走査装置1010は、印刷版材料にレーザアブレーションによって直接画像形成を行い、印刷版を形成する画像形成装置にも好適である。
また、レーザ光によって発色に可逆性を与えることができる媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
例えば、媒体が、いわゆるリライタブルペーパーであっても良い。これは、例えば紙や樹脂フィルム等の支持体上に、以下に説明するような材料が記録層として塗布されている。そして、レーザ光による熱エネルギー制御によって発色に可逆性を与え、表示/消去を可逆的に行うものである。
透明白濁型リライタブルマーキング法とロイコ染料を用いた発消色型リライタブルマーキング法があり、いずれも適用できる。
透明白濁型は、高分子薄膜の中に脂肪酸の微粒子を分散したもので、110℃以上に加熱すると脂肪酸の溶融により樹脂が膨張する。その後、冷却すると脂肪酸は過冷却状態になり液体のまま存在し、膨張した樹脂が固化する。その後、脂肪酸が固化収縮して多結晶の微粒子となり樹脂と微粒子間に空隙が生まれる。この空隙により光が散乱されて白色に見える。次に、80℃から110℃の消去温度範囲に加熱すると、脂肪酸は一部溶融し、樹脂は熱膨張して空隙を埋める。この状態で冷却すると透明状態となり画像の消去が行われる。
ロイコ染料を用いたリライタブルマーキング法は、無色のロイコ型染料と長鎖アルキル基を有する顕消色剤との可逆的な発色及び消色反応を利用している。レーザ光により加熱されるとロイコ染料と顕消色剤が反応して発色し、そのまま急冷すると発色状態が保持される。そして、加熱後、ゆっくり冷却すると顕消色剤の長鎖アルキル基の自己凝集作用により相分離が起こり、ロイコ染料と顕消色剤が物理的に分離されて消色する。
また、媒体が、紫外光を当てるとC(シアン)に発色し、可視光のR(レッド)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとM(マゼンタ)に発色し、可視光のG(グリーン)の光で消色するフォトクロミック化合物、紫外光を当てるとY(イエロー)に発色し、可視光のB(ブルー)の光で消色するフォトクロミック化合物が、紙や樹脂フィルム等の支持体上に設けられた、いわゆるカラーリライタブルペーパーであっても良い。
これは、一旦紫外光を当てて真っ黒にし、R・G・Bの光を当てる時間や強さで、Y・M・Cに発色する3種類の材料の発色濃度を制御してフルカラーを表現し、仮に、R・G・Bの強力な光を当て続ければ3種類とも消色して真っ白にすることもできる。
このような、光エネルギー制御によって発色に可逆性を与えるものも上記実施形態と同様な光走査装置を備える画像形成装置として実現できる。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
また、一例として図29に示されるように、複数の感光体ドラムを備えるカラープリンタ2000であっても良い。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、ブラック用の「感光体ドラムK1、帯電装置K2、現像装置K4、クリーニングユニットK5、及び転写装置K6」と、シアン用の「感光体ドラムC1、帯電装置C2、現像装置C4、クリーニングユニットC5、及び転写装置C6」と、マゼンタ用の「感光体ドラムM1、帯電装置M2、現像装置M4、クリーニングユニットM5、及び転写装置M6」と、イエロー用の「感光体ドラムY1、帯電装置Y2、現像装置Y4、クリーニングユニットY5、及び転写装置Y6」と、光走査装置2010と、転写ベルト2080と、定着ユニット2030などを備えている。
各感光体ドラムは、図29中の矢印の方向に回転し、各感光体ドラムの周囲には、回転方向に沿って、それぞれ帯電装置、現像装置、転写装置、クリーニングユニットが配置されている。各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。帯電装置によって帯電された各感光体ドラム表面に光走査装置2010により光が照射され、各感光体ドラムに潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像装置により各感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写装置により、転写ベルト2080上の記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着ユニット2030により記録紙に画像が定着される。
光走査装置2010は、前記光源ユニット14と同様な光源ユニットを、色毎に有している。そこで、上記光走査装置1010と同様の効果を得ることができる。また、カラープリンタ2000は、この光走査装置2010を備えているため、上記レーザプリンタ1000と同様の効果を得ることができる。
ところで、カラープリンタ2000では、各部品の製造誤差や位置誤差等によって色ずれが発生する場合がある。このような場合であっても、点灯させる発光部を選択することで色ずれを低減することができる。