以下に、本発明に係る苗移植機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、苗移植機の側面図である。図2は、実施形態1に係る苗移植機の平面図である。なお、以下の説明においては、前後、左右の方向基準は、操縦席から見て、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。図1に示す苗移植機は、右側面を記載したものであるので、この図1を基本的な基準とする。
本件の苗移植機1は、作業者が搭乗して植え付け作業を行う、所謂乗用型の苗移植機1として構成されている。該苗移植機1の走行車体2は、左右一対で配設される前輪5と、同様に左右一対で配設される後輪10を有しており、走行時には各車輪が駆動する四輪駆動車としている。また、前輪5は、後輪10よりも前方側に位置し、操舵輪として設けられている。また、走行車体2の後部には、苗植付部昇降機構70によって昇降可能な苗植付部60が備えられている。
前記走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム3と、該メインフレーム3の上に搭載されたエンジン20と、該エンジン20で発生した動力を駆動輪と、苗植付部60、及び該苗植付部60が圃場に植え付けた苗に肥料等の粒状体(以下、肥料と呼称する。)を供給する左右の施肥装置200L,200Rに伝える動力伝達装置25を備えている。つまり、この苗移植機1では、動力源であるエンジン20の動力は走行車体2を前進や後進にさせるために用いるだけでなく、苗植付部60及び左右の施肥装置200L,200Rを駆動させるためにも用いられる。前記エンジン20は、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関を用いる。
また、前記エンジン20は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、機体の搭乗ステップであるフロアステップ40よりも上方に突出させた状態で配置されている。そして、該フロアステップ40は、走行車体2の前部とエンジン20の後部との間に亘って設けられており、メインフレーム3上に取り付けられており、その一部が網目状になることにより、靴に付いた泥が圃場に落ち、フロアステップ40上に溜まらない構成としている。さらに、該フロアステップ40の左右方向の両側で且つ下方には、作業者がフロアステップ40に乗り降りする際に足をかける乗降ステップ45が配設されている。
また、前記フロアステップ40の後方には、後輪10のフェンダを兼ねたリアステップ47が設けられている。該リアステップ47は、フロアステップ40よりも高い位置に配設されており、前記エンジン20の左右それぞれの側方から後方にかけて配置されている。そして、該リアステップ47の後端部から両側端部にかけて、手摺り48が配設されている。この手摺り48は、リアステップ47の左右両側に立設する、走行車体2の側方から乗り降りする作業者が手で掴む左右の側方手摺り48a,48aと、該左右の側方手摺り48a,48aの上部を連結する後部手摺り48bを組み合わせて構成する。なお、後部手摺り48bは、リアステップ47の後端部の上方に配置されると共に、前記左右の側方手摺り48a,48aよりも左右両側に突出するものである。
前記エンジン20は、これらのフロアステップ40とリアステップ47とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン20を覆うエンジンカバー21が配設されている。即ち、エンジンカバー21は、フロアステップ40とリアステップ47とから上方に突出した状態で、エンジン20を覆っている。
また、走行車体2には、エンジンカバー21の上部に操縦席55が設置されており、操縦席55の前方で、且つ、走行車体2の前側中央部には、操縦部50が配設されている。この操縦部50は、フロアステップ40の床面から上方に突出した状態で配置されている。
この操縦部50の内部には、各種の操作装置やエンジン用燃料の燃料タンク等が配設されており、操縦部50の前部には、開閉可能なフロントカバー51が設けられている。また、操縦部50の上部には、操作装置を作動させる操作レバー等や計器類、ハンドル52が配設されている。このハンドル52は、作業者が前輪5を操舵操作することにより走行車体2を操舵する操舵部材として設けられており、操縦部50内の操作装置等を介して前輪5を転舵させることが可能になっている。また、レバーとしては、走行車体2の前後進及び走行速度を操作する走行操作部材である変速レバーと、苗植付部60の動作状態を、少なくとも苗植付部昇降機構70による上昇状態を含んで切り替えることができる植付操作部材である植付昇降レバーとが配設されている。
図3は、図1に示す予備苗枠の説明図である。図4は、図3のA−A矢視図である。フロアステップ40における操縦部50の左右それぞれの側方に位置する部分、即ち、機体前側には、補充用の苗を載積する予備苗枠90が配設されている。この予備苗枠90は、外側端部が左右方向における機体のフロアステップ40の外側端部からはみ出さない位置となって設けられており、フロアステップ40の床面から突出した支持軸91によって支持されている。支持軸91は、予備苗枠90に対して、予備苗枠90の前後方向における中心付近に接続されている。
また、このように配設される予備苗枠90のうち、少なくとも左右一側の下部、具体的には図1から図4で示す通り、機体左側一側に予備苗枠90の前後方向における中心よりも機体後側に、苗移植機1が有する各電気装置で使用する電気を蓄電するバッテリ95が配設されている。即ち、バッテリ95は、フロアステップ40上における支持軸91の前後方向の中心位置を基準として、該前後方向の中心位置よりも後方側に配設されている。
また、動力伝達装置25は、エンジン20で発生した動力を変速する主変速機としての油圧式無段変速装置26と、この油圧式無段変速装置26にエンジン20からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構27とを有している。このうち、油圧式無段変速装置26とは、HST(HydroStaticTransmission)と云われる静油圧式の無段変速機として構成されている。このため、油圧式無段変速装置26は、エンジン20からの動力で駆動する油圧ポンプによって油圧を発生させ、この油圧を油圧モータで機械的な力(回転力)に変換して出力する。
この油圧式無段変速装置26は、エンジン20よりも前方で、且つ、フロアステップ40の床面よりも下方に配置されており、本実施形態1に係る苗移植機1では、走行車体2の上面から見て、エンジン20の前方に配置されている。
また、ベルト式動力伝達機構27は、エンジン20の出力軸に取り付けたプーリと、油圧式無段変速装置26の入力軸に取り付けたプーリと、双方のプーリに巻き掛けたベルトと、さらに、このベルトの張力を調整するテンションプーリとを備えている。これにより、ベルト式動力伝達機構27は、エンジン20で発生した動力を、ベルトを介して油圧式無段変速装置26に伝達可能になっている。
さらに、動力伝達装置25は、エンジン20からの出力がベルト式動力伝達機構27と油圧式無段変速装置26とを介して伝達されるミッションケース28を有している。このミッションケース28は、メインフレーム3の前部に取り付けられている。ミッションケース28は、ベルト式動力伝達機構27と油圧式無段変速装置26とを介して伝達されたエンジン20からの出力を、当該ミッションケース28内の副変速機で変速して、前輪5と後輪10への走行用動力と、苗植付部60への駆動用動力とに分けて出力可能になって
いる。
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース22(図12参照)を介して前輪5に伝達可能になっており、残りが左右の後輪ギヤケース23(図12参照)を介して後輪10に伝達可能になっている。一方、駆動用動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチ(図示省略)に伝達され、この植付クラッチの係合時に植付伝動軸(図示省略)によって苗植付部60へ伝達される。
また、左右の後輪ギヤケース23同士の間には、ローリングフレーム120(図12、図15、図16参照)が配設されている。ローリングフレーム120は、左右方向に延在すると共に、両端が左右の後輪ギヤケース23に連結している。また、ローリングフレーム120は、左右方向における中央付近に設けられるセンター軸連結部121が、前後方向に延在するセンター軸128(図12参照)に連結しており、ローリングフレーム120は、センター軸128を中心として回動可能に構成されている。これにより、後輪ギヤケース23は、センター軸128を中心して回動可能に設けられており、ローリングフレーム120と後輪ギヤケース23、及び後輪ギヤケース23に連結される後輪10は、圃場の凹凸等による走行車体2の左右傾斜に合わせてローリングすることが可能になっている。
また、走行車体2の後部に備えられる苗植付部60を昇降させる苗植付部昇降機構70は、昇降リンク装置71を有しており、苗植付部60は、この昇降リンク装置71を介して走行車体2に取り付けられている。この昇降リンク装置71は、略前後方向に向かって延在する2つの部材を有しており、相対的に上側に位置する上部リンク部材であるアッパーリンク73と、アッパーリンク73の下側に位置する下部リンク部材であるロワーリンク74と、を有している。これらのアッパーリンク73とロワーリンク74とは、共に左右一対ずつが設けられている。
昇降リンク装置71は、これらのアッパーリンク73とロワーリンク74とが、メインフレーム3の後部端に立設した背面視門型の後部フレームであるリンクベースフレーム75に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部60に回転自在に連結されることにより、苗植付部60を昇降可能に走行車体2に連結している。即ち、リンクベースフレーム75は、走行車体2の後部に上下方向に延在して配設されており、アッパーリンク73とロワーリンク74とが、リンクベースフレーム75から後方に向かって延在している。昇降リンク装置71は、アッパーリンク73とロワーリンク74とが共に、前端側がリンクベースフレーム75に対して回動可能に連結されている。
また、苗植付部昇降機構70は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ76を有しており、油圧昇降シリンダ76の伸縮動作によって、苗植付部60を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構70は、その昇降動作によって、苗植付部60を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(対地植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
また、苗植付部60は、苗を植え付ける範囲を複数の区画、或いは複数の列で植え付けることができる。つまり、苗植付部60は、複数の条で苗を植え付けることが可能な構成になっている。この苗植付部60は、植付装置61と、苗載置台65及びフロート81を備えている。このうち、苗載置台65は、圃場に植え付ける苗を載置することができるように構成されている。詳しくは、苗載置台65は、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面66を有しており、それぞれの苗載せ面66に土付きのマット状苗を載置することが可能になっている。これにより、苗載置台65に載置した苗が植え付けられて無くなるたびに、圃場外に用意している苗を取りに戻る必要が無く、連続した作業を行えるので、作業能率が向上する。
また、植付装置61は、苗載置台65に載置された苗を圃場に植え付ける装置である。この植付装置61は、2条毎に1つずつ配設されており、2条分の植込杆62を備えている。この植込杆62は、苗載置台65から苗を取って各条ごとに植え付けることができるように構成されている。また、フロート81は、苗載置台65の下部に配設され、走行車体2の移動と共に、圃場面上を滑走して均すことにより整地をすることができるように設けられている。
前記フロート81は、機体左右方向の中央部に圃場の凹凸を均しつつ回動角度を検知するポテンショメータ等の検知部材(図示省略)により圃場の深さを検知し、圃場の深さに合わせて苗植付部60を昇降させる機能を有するメインフロートと、該メインフロートの左右両側で苗を植え付ける圃場面を滑走して均す左右のサイドフロートで構成すると、圃場の深さの変化に合わせて自動的に苗の植付深さを合わせることが可能となり、苗の植付精度の向上が図られる。これに加えて、本件で示す8条植えの苗移植機や、それ以上の条数、例えば10条植えの苗移植機においては、サイドフロートとメインフロートの間に左右のサブフロートを設ける構成とし、メインフロートや左右のサイドフロートの形状を変えることなく圃場面の整地性を確保する構成とすると、大型化による機体コストの高騰を抑えることができる。
また、フロート81は、苗植付部60で植え付ける苗の植付深さを調節する植付深さ調節装置80を構成しており、換言すると、フロート81は植付深さ調節装置80が有している。植付深さ調節装置80は、圃場に対する苗植付部60の上下方向における位置を調節することにより、苗の植付深さを調節することが可能になっており、上下方向におけるフロート81と苗植付部60との相対的な位置を調節することにより、圃場に対する苗植付部60の上下位置を調節可能になっている。
また、苗植付部60の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ85が備えられている。即ち、線引きマーカ85は、苗移植機1が圃場内における直進前進時に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場上に線引きする。この線引きマーカ85は、走行車体2が旋回するごとに、左右の線引きマーカ85が入れ替わって作動することができるように構成されている。
次に、左右の施肥装置200L,200Rについて説明する。
図1,図2及び図18から図20で示すとおり、前記リアステップ47の左右両外側で且つ左右のサイドステップ42,42の上方に、左右の基底フレーム201,201を設け、該左右の基底フレーム201,201の上方に正面視L字形状の左右の載置フレーム202,202を設ける。該左右の基底フレーム201,201の基部側は、リアステップ47の左右両側の下部に取り付ける。さらに、前記左右の載置フレーム202,202の上部に、左右の施肥フレーム203,203を各々上下方向に立設し、該左右の施肥フレーム203,203の上部に左右の繰出しケース204,204を各々設ける。
なお、図19及び図20で示すとおり、該左右の繰出しケース204,204は、機体前後方向に複数並べて配置するものであり、走行車体2の左右両側に配置される複数の繰出しケース204…の合計は、苗の植付条数と同数とするとよい。特に、左右に同じ数の繰出しケース204,204…を設けると、機体左右方向の重量バランスが安定する。
前記各繰出しケース204は、図21に示すとおり、左右の施肥フレーム203,203上に固定する固定ケース204aと、該固定ケース204aから着脱可能な着脱ケース204bで構成する。該固定ケース204aの上面には機体内側よりも機体外側が上方に向かう第1傾斜部を形成し、着脱ケース204bの下面には固定ケース204aの第1傾斜部と同じ傾斜角度の第2傾斜部を形成する。
そして、図18及び図19で示す通り、前記走行車体2の左右両側に機体前後方向に亘って複数設けられた繰出しケース204,204…の上方に、肥料を貯留する左右の貯留ホッパ205,205を載置し、該左右の貯留ホッパ205,205の機体外側端部に左右のホッパ蓋部206,206を各々回動自在に装着する。
該貯留ホッパ205の下部には、複数の繰出しケース204…に貯留した肥料を投下させる投下口205a…が繰出しケース204…と同数形成されており、該複数の投下口205a…が繰出しケース204…の着脱ケース204b…の上面と接触する構成である。
また、貯留ホッパ205の長手方向が、機体の前後方向を向く構成である。
上記のとおり、肥料を貯留する施肥ホッパ205,205を走行車体2の左右両側に配置したことにより、走行車体2の後部と苗植付部60の間を遮る部材がなくなると共に、リアステップ47上を作業者が移動することができるので、走行車体2の後部と苗植付部60の各条の苗載置台65…との間隔を狭めることができ、苗の補充作業の際に作業者が楽な姿勢で作業しやすく、作業能率の向上や労力の軽減が図られる。
また、苗の補充作業を行う際、施肥ホッパ205,205のホッパ蓋部206,206が開いた状態で苗植付部60を上昇させても、苗植付部60がホッパ蓋部206,206に接触することを防止できるので、苗の補充作業が円滑に行えて作業能率が向上すると共に、ホッパ蓋部206,206が苗植付部60と接触して破損することが防止される。
前記ホッパ蓋部206は、図18で示すとおり、機体外側方向に回動させると貯留ホッパ205の上方が開放され、機体内側方向に回動させると貯留ホッパ205の上方を覆うものである。上記の機体外側方向への回動操作を開操作、機体内側方向への回動操作を閉操作とする。
上記のとおり、左右のホッパ蓋部206,206を開くときは、機体外側方向に回動させる構成としたことにより、左右の貯留ホッパ205,205に肥料を投入する際に左右のホッパ蓋部206,206が作業者の動作を妨げることを防止できるので、作業能率が向上する。
なお、左右の貯留ホッパ205,205と左右のホッパ蓋部206,206の間には、左右のホッパ蓋部206,206を閉じたときにロックし、作業中に左右のホッパ蓋部206,206が開くことを防止するロック部材(パッチン錠)Rを設けると、作業中に左右のホッパ蓋部206,206が開き、肥料が外部に飛び出したり、雨水や圃場の水等が左右の貯留ホッパ205,205内に入り込み、肥料同士がくっついて塊になることが防止されるので、肥料の消費量の削減が図られる。
また、肥料が塊になり、後述する繰出しロール208の繰出し溝208a…に入り込めなくなり、肥料の圃場への供給量が設定と異なることが防止される。
前記各固定ケース204aの内部には、図21で示すとおり、繰出し軸207が機体前後方向に回転自在に装着され、該繰出し軸207には施肥ホッパ205の各投下口205a…から投下される肥料を受け、設定量の肥料を所定間隔毎に下方に送り出す繰出しロール208が設けられる。
なお、該繰出しロール208には、円周方向の所定間隔ごと、例えば60度ごとに肥料を受ける繰出し溝208a…が複数形成されており、投下口205aの直下に位置するときに繰出し溝208aが肥料を受け、繰出しロール208の回転によりこの肥料を受けた繰出し溝208aが機体下部側を向く位相になると、繰出し溝208aに貯留された肥料が放出される構成となっている。一つの繰出し溝208aに貯留され、所定位置で放出される肥料の量は、繰出し軸207の回転速度によって変動する。
また、前記各着脱ケース204b…の内部には、前記繰出し溝208a…内の肥料を均すと共に、繰出し溝208a…を覆って肥料が放出位置よりも前の位相から放出されることを防止する鎮圧部材209を設け、該鎮圧部材209の鎮圧作用面を、繰出しロール208の外周縁部に向けて配置する。
該鎮圧部材209は、合成樹脂または繊維で構成するブラシ式とすると、繰出しロール208の外周面や肥料に接触する際に強い抵抗がかかることが防止できるので、繰出しロール208の回転速度が抵抗で遅くなり、肥料の放出量が設定量と異なることが防止されると共に、抵抗で肥料が崩れて粉末状になり、繰出しケース204内等に粉末が残留することが防止される。但し、ブラシ毛が柔らか過ぎると繰出し溝208a…から出ようとする肥料を抑えられなくなるので、ブラシ毛は硬めに構成することが望ましい。
また、前記各着脱ケース204bの内部で、且つ機体内側には、前記貯留ホッパ205の投下口205a…から投下される肥料の通過を切り替える、投下シャッタ210を機体前後方向に移動可能に設ける。該投下シャッタ210を機体外側に向かって移動させて着脱ケース204bの上部開口部を塞ぐと、肥料は貯留ホッパ205内、特に投下口205a…に留まる。
これにより、貯留ホッパ205と着脱ケース204b…が繋がった状態で着脱ケース204b…を固定ケース204a…から外すと、貯留ホッパ205を肥料をこぼすことなく外すことができるので、貯留ホッパ205をメンテナンスの際に外すとき、残った肥料が周辺に散らばることが防止される。
さらに、各着脱ケース204bの内部で、且つ機体外側には、肥料を繰出しロール208に繰り出させるか、繰出しケース204の機体外側に各々上下方向に設ける落下排出口211から落下排出するかを切り替える、切替シャッタ212が各々回動自在に設けられる。作業終了後、繰出しロール208の回転を停止させ、切替シャッタ212を機体外側に回動させると、貯留ホッパ205に貯留された肥料は固定ケース204aの機体外側に形成された排出傾斜部213に沿って機体外側に移動し、落下排出口211から下方に落下して排出される。該落下排出口211の下方には、バケツ等の回収容器を設置して、排出される肥料を回収する。
そして、図19と図21で示す通り、前記各落下排出口211…の下端部には、各々排出蓋214…を着脱自在に設け、該排出蓋214…を外すと落下排出口211…から肥料が排出される構成とすると、排出される肥料の量が少なくなるので、排出される肥料の回収作業に要する労力が軽減される。
なお、排出蓋214は、ゴム等の弾性部材で構成すると、落下排出口211の下端部に押し込むと排出蓋214が装着され、引っ張れば排出蓋214が外れる構成とできるので、着脱作業が容易になり、作業能率が向上する。
前記各繰出しロール208…の下方には、図18から図20で示すとおり、放出された肥料を搬送する左右の送風ダクト215,215を機体前後方向に向けて取り付ける。該左右の送風ダクト215,215には複数の開口部が前後方向に複数形成されており、この開口部に各繰出しケース204…の固定ケース204a…の下端部を接触させている。なお、該左右の送付ダクト215,215は、前記左右の繰出しケース204,204…よりも走行車体2寄りとなる位置に配置する。
そして、各開口部の機体外側の下方で且つ左右の送風ダクト215,215に、肥料を前記複数の植込杆62…の苗の植付位置の近傍に案内する施肥ホース216…を、開口部と同数配置する。該複数の施肥ホース216…の肥料案内端部は、前記各フロート81…の前側の幅広部の後部に各々配置される。具体的に言えば、左右方向に突出する左右幅広部を有する左右のメインフロートは、この左右幅広部の後部側に施肥ホース216…の肥料案内端部を臨ませており、機体外側方向に片側幅広部を有する左右のサブフロートは、各々の片側突出部の後部側に施肥ホース216…の肥料案内端部を臨ませている。
そして、前記走行車体2の後方、詳細にはリアステップ47の後方で且つ下方に、左右の送風ダクト215,215を連結する中継ダクト217を、機体左右方向に配置する。
さらに、該左右の送風ダクト215,215の左右いずれか一側、機体右側の送風ダクト215の前端部に、肥料の搬送風を発生させるブロア218を取り付ける。(図1、図2参照。)
該ブロア218は、カバー218b内に設けられるブロアモータ218aで起風ファン部219に内装される起風ファン(図示省略)を回転させ、該カバー218bに形成されているスリットから取り込んだ空気を搬送風とするものである。起風ファン部219は、起風ファンを内装することにより、ブロアモータ218aを内装するカバー218bよりも大径となるものであり、ブロアモータ218aとカバー218bは、起風ファン部219の径内に配置する。
そして、機体右側の施肥ホッパ205の機体内側に、前記ブロアモータ218aの駆動を入切するブロアスイッチ220を設ける。ブロアスイッチ220は、苗の植付と同時に肥料を供給しない作業時や、圃場の一部に限って肥料の供給を停止させる作業時に、左右の施肥装置200L,200R全体を停止させるときに切操作することにより、余分な電力の消費が抑えられる。
上記の構成により、ブロア218が発生させた搬送風は、機体左右一側の送風ダクト215を通過して機体左右一側の施肥ホッパ205から投下される肥料等の肥料を機体左右一側の各施肥ホース216…に案内した後、中継ダクト217を経由して機体左右他側の送風ダクト215を通過して機体左右他側の施肥ホッパ205から投下される肥料を機体左右他側の各施肥ホース216…に案内することができるので、一つのブロア218で左右の施肥ホッパ205,205から投下された肥料を左右両側の各施肥ホース216,216…に案内する搬送風を発生させることができ、部品点数の削減が図られる。
また、中継ダクト217を走行車体2の後方で且つ下方を通過させて配置したことにより、作業者がリアステップ47上で苗の補充作業等をおこなうとき、中継ダクト217が作業者の移動範囲を制限することが無く、作業能率が向上する。
さらに、左右の送風ダクト215,215を左右の繰出しケース204,204…よりも走行車体2寄りに配置したことにより、左右の施肥ホース216,216…の一側端部は機体外側にのみ装着可能となるので、左右の施肥ホース216,216…がフロアステップ40及びリアステップ47上に位置することがなく、作業者が走行車体2上を移動しやすくなり、作業能率が向上する。
そして、重量物であるブロア218を機体右側で且つ後側に設けたことにより、機体左側で且つ前側の予備苗枠90の下方に設けた重量物であるバッテリ95による重量バランスの偏りを相殺することができるので、機体の重量バランスが安定し、走行性や操作性が向上する。
なお、前記ブロア218は、起風ファンの回転軸(図示省略)を機体左右方向に向けて配置し、搬送風の発生方向を機体左右方向とする。このとき、前記起風ファン部219よりも機体内側にブロアモータ218aとカバー218bを設けると共に、起風ファン部219よりも機体外側に送風ダクト215の機体前側端部を連結する構成とする。
これにより、ブロアモータ218aと空気が入り込むスリットを形成したカバー218bが機体内側を向くと共に、起風ファン部219が機体外側に位置することにより、走行車体2の走行に伴って飛散する泥土や水が付着することを防止できるので、ブロア218の破損が防止されると共に、ブロア218のメンテナンス作業に要する時間が短縮される。
前記左右の施肥ホッパ205,205の内側下部には、図23で示すとおり、通電抵抗値から肥料の有無を判定し、肥料との接触が途切れると、肥料の残量が僅かである、あるいは肥料切れであることを検出する残量センサ221…が設けられている。該残量センサ221…は、左右の繰出しケース204,204…の直上に、左右の繰出しケース204,204の配置数と同数設けることにより、どの条の植込杆62の植付位置近傍に投下する肥料切れ(または不足)を検出することができる。なお、該残量センサ221…のうち、一つでも肥料切れ(または不足)を検知すると、操縦部50の上部に設ける表示パネル部に、肥料切れ(または不足)が生じている情報を表示する。
しかしながら、表示パネルの情報表示だけでは、施肥用の肥料が不足しているということしかわからない。特に、本件構成は左右の施肥ホッパ205,205を走行車体2の後部の左右両側に設けているので、肥料が不足している部分がどこであるかがわからないと、肥料の補充作業に余分な作業時間と労力を費やすことになる。
この問題の発生を防止すべく、図20で示すとおり、左右の施肥ホッパ205,205のどちらか一側に、複数の表示ランプ223…を設けた、肥料切れ表示パネル222を装着する。該肥料切れ表示パネル222の複数の表示ランプ223…は、複数の残量センサ221…と各々ハーネス(図示省略)で連結され、残量センサ221…が肥料切れ(または不足)を検出すると対応する表示ランプ223…が点灯する構成とする。上記の残量センサ221…が発信する信号は、制御装置Uで受信され、表示ランプ223…に発信される。
なお、肥料切れ表示パネル222は、上記の配置に代えて、後部手摺り48に設けてもよい。補助作業者がリアステップ47に待機する、走行車体2上に搭乗者が2人以上の作業時において、補助作業者は待機位置で肥料切れ表示パネル222を監視することができるので、肥料切れ(または不足)を早急に知ることができ、圃場に供給される肥料が不足して苗の成育不良が発生することが防止される。
上記構成により、作業者は肥料切れ表示パネル222を目視し、点灯している表示ランプ223…から肥料が不足している部分を把握することができるので、肥料の補充作業位置に速やかに移動することができ、作業能率の向上や労力の軽減が図られる。
左右の施肥装置200L,200Rの駆動力の伝動について説明する。
図22で示す通り、前記左右の後輪ギヤケース23,23の左右どちらか一側に、該後輪ギヤケース23の施肥出力軸23fから駆動力を得て上下回動する出力カム224の基部を設け、該出力カム224の後側端部に第1施肥伝動ロッド225の下側の基部を設け、該第1施肥伝動ロッド225の上端部に揺動連結プレート226の基部を設ける。該揺動連結プレート226は、機体前後方向に設ける。
また、該揺動連結プレート226の前後方向の略中央部には、前記メインフレーム3の後部側に揺動連結プレート226を回動自在に装着する取付軸227を左右方向に装着する。該取付軸227の左右両側には、ベアリング等の軸受部材227a,227aを装着している。
そして、前記揺動連結プレート226の後端部に上下方向の第2施肥伝動ロッド228の基部を設け、該第2施肥伝動ロッド228の上端部に、機体前後方向を向いた揺動アーム229の基部を装着する。さらに、該揺動アーム229の前端部を、左右の施肥装置200L,200Rから圃場に供給される肥料の量を調節する施肥量調節装置230に装着する。
該施肥量調節装置230は、左右側面に長孔部231a,231aを形成した調節回動アーム231と、該左右の長孔部231a,231aの内部に前後方向に摺動自在に設ける回動位置変更ピン232と、該回動位置変更ピン232を前後方向に摺動させて肥料の供給量を増減調節する調節ハンドル233とで構成する。回動位置変更ピン232は、調節ハンドル233の操作によって前後回動する支持プレート(図示省略)に装着されている。
該調節ハンドル233を回転操作すると、回動位置変更ピン232が機体前側または後側に摺動することにより、調節回動アーム231の回動支点位置が変更され、調節回動アーム231の上下回動量が変更されるので、調節回動アーム231が一往復分上下回動するときの繰出しロール208…の回転角度が変わることで繰出し溝208a…が肥料の放出位相に移動する間隔が変更され、左右の施肥装置200L,200Rの肥料の供給量が変更される。
回動位置変更ピン232を機体後側に摺動させると、調節回動アーム231の上下回動幅が大きくなるので、繰出しロール208…の回転角度が大きくなり、繰出しロール208a…が肥料の放出位相に移動する間隔が短くなるので、左右の施肥装置200L,200Rによる肥料の供給量が増加する。
一方、回動位置変更ピン232を機体前側に摺動させると、調節回動アーム231の上下回動幅が小さくなるので、繰出しロール208…の回転角度が小さくなり、繰出しロール208a…が肥料の放出位相に移動する間隔が長くなるので、左右の施肥装置200L,200Rによる肥料の供給量が減少する。
なお、調節ハンドル233は、モータやシリンダ等の調節アクチュエータ(図示省略)の作動により、作業者が直接触れることなく回転操作される構成とし、作業者は調節アクチュエータをスイッチやダイヤルの操作で作動させる構成としてもよい。
調節アクチュエータによる操作は、手動操作よりも速く、しかも細かい調節を行うことが可能であるので、肥料の供給量の変更に要する時間が短縮され、変更調節に伴い肥料の供給量に過不足が生じることが防止されると共に、僅かな量の増減調節ができ、肥料の消費量が抑えられる。
また、上記構成において、施肥量調節装置230は、操縦席55及びエンジンカバー21の後方で、且つリアステップ47の上方に配置される。これにより、操縦席55から作業者が降りてリアステップ47に移動する際、作業者の移動を妨げることがないので、作業能率が向上する。
なお、前記第2施肥伝動ロッド228の上端部から駆動力を機体左右方向に切り替える切替伝動部材(図示省略)の基部を設けて機体左右両側のどちらか一方に駆動力を伝動し、左右の施肥ホッパ205,205の下方の空間部で揺動アーム229を該切替伝動部材の端部に設け、その後揺動アーム229の前側端部を施肥量調節装置230と連結する構成としてもよい。
上記構成により、施肥量調節装置230を左右の施肥ホッパ205,205のどちらか一側の下方に配置することができるので、リアステップ47上を移動する作業者の足元に接触することが防止され、作業能率が大幅に向上する。
前記調節回動アーム231の機体後側端部に前記揺動アーム229の前端部を装着し、調節回動アーム231の機体前側端部を上下方向の第3施肥伝動ロッド234の基部に連結する。そして、該第3施肥伝動ロッド234の下端部を、機体左右方向の施肥伝動シャフト235から機体前側下方に向かって突出する取付ステー236に連結する。
該施肥伝動シャフト235は、左右両側に設ける軸受部材237a,237aを前記左右の施肥フレーム203,203に装着して、回転自在に装着する。さらに、該施肥伝動シャフト235は、前記リアステップ47の下方で、揺動連結プレート226の下方で、且つ左右の後輪10,10の各駆動軸10a,10aよりも機体前側に配置する。
そして、前記施肥伝動シャフト235の左右両側で、且つ軸受部材237、237よりも機体内側に、機体前側下方に向かって突出する左右の伝動取付ステー236L,236Rを溶接して設け、該左右の伝動取付ステー236L,236Rに、左右の第4施肥伝動ロッド237L,237Rの基部を設けると共に、該左右の第4施肥伝動ロッド237L,237Rの上端部に、駆動力を伝動する左右の駆動伝動プレート238,238を、機体外側方向に向けて回動自在に取り付ける。
また、前記複数の繰出しロール208,208…の繰出し軸207,207…を繰出しケース204,204…の前後間で連結し、このうち機体後側に位置する繰出しケース204,204から機体前側に向かって突出する繰出し軸207,207と、この繰出しケース204,204よりも一つ機体前側に位置する繰出しケース204,204から機体後側に突出する繰出し軸207,207を、ワンウェイクラッチ239,239を備える左右の連結ボス240,240で各々連結する。
そして、該左右の連結ボス240,240に、前記左右の駆動伝動プレート238,238の機体外側端部を連結することにより、後輪ギヤケース23から出力された駆動力を複数の繰出しロール208,208…まで伝達し、前記施肥量調節装置230で調節した肥料の供給量に対応する回転角度ごとに、複数の繰出しロール208,208…が回転する左右の施肥装置200L,200Rの施肥伝動経路の構成となる。
上記構成により、左右の複数の繰出しロール208,208…に駆動力を伝動する施肥伝動シャフト235をリアステップ47の下方に設けたことにより、施肥伝動シャフト235が作業者の移動を妨げない位置に配置することができるので、作業能率が向上する。
また、一本の施肥伝動シャフト235で左右の複数の繰出しロール208,208…に駆動力を伝動することにより、左右別々に施肥伝動経路を構成する必要がなく、部品点数の削減が図られると共に、左右の繰出しロール208,208から供給される肥料の量が同じになるので、植込杆62の植付条ごとに肥料の供給量が異なることが防止され、苗の生育が全体的に安定する。
そして、施肥伝動シャフト235を、左右の後輪10,10の駆動軸10a,10aよりも機体前側に配置したことにより、施肥伝動シャフト235の取付位置を確保すべく苗植付部60を走行車体2から後方に離間させる必要が無く、走行車体2と苗植付部60との前後間隔が維持される。
加えて、施肥伝動シャフト235と左右の駆動軸10a,10aの上下間隔を広く取ることができるので、左右の後輪10,10が走行に伴い跳ね上げる泥土や水が施肥伝動シャフト235を含めた施肥伝動経路の各構成部材に飛散しにくくなるので、泥土や水を除去する掃除に要する時間が短縮されると共に、施肥伝動経路の各構成部材が腐食することが防止され、耐久性が向上する。
図5は、図1に示す後輪の回転軸上で上方から見た断面図である。図6は、図5に示す後輪と補助車輪の斜視図である。後輪10には、後輪10と同軸で回転可能な補助車輪100が取り付けられている。補助車輪100は、外径が後輪10の外径とほぼ同じ大きさの車輪として形成されており、後輪10と平行な向きで後輪10よりも機体外側に位置して、補助車輪取付軸110によって後輪10に取り付けられている。補助車輪取付軸110は、一端側に、後輪10に連結する後輪連結部111が形成されており、他端側に、補助車輪100に連結する補助車輪連結部112が形成されている。
この補助車輪取付軸110は、後輪連結部111側が機体内側に位置し、補助車輪連結部112側が機体外側に位置する向きで、後輪連結部111が後輪10に連結され、補助車輪連結部112が補助車輪100に連結されている。つまり、補助車輪取付軸110の後輪連結部111は、後輪10の機体外面側における回転の中心付近に連結され、補助車輪取付軸110の補助車輪連結部112は、補助車輪100の機体内面側における回転の中心付近に接続されている。また、補助車輪取付軸110と後輪10、及び補助車輪取付軸110と補助車輪100は、それぞれ相対回転が不可となって連結されている。これらにより、補助車輪100は、後輪10の機体外側に、後輪10と同軸で回転可能に装着されている。
図7は、図6に示す後輪の側面図である。図8は、図7のB−B断面図である。後輪10について詳しく説明すると、後輪10は、外周に位置するリム13と、後輪10の回転の中心に位置するハブ12と、を有し、リム13とハブ12とは、後輪10の径方向に延在する複数のスポーク11によって連結されている。このスポーク11は、本実施形態1に係る苗移植機1では、1つの後輪10に、3つが円周方向に等間隔で設けられている。
また、後輪10には、外周面にラグ14が備えられている。このラグ14は、後輪10の回転軸の方向における幅が、リム13の幅よりも広い幅の板状の形状で形成されており、後輪10の径方向に対して後輪10の周方向に傾斜する向きで、リム13の両側面から外周面にかけて設けられている。このように形成されるラグ14は、後輪10の周方向に等間隔で設けられている。補助車輪取付軸110の後輪連結部111は、このように形成される後輪10のハブ12に連結されている。後輪連結部111は、略円板状の形状で形成されており、円板状の後輪連結部111が後輪10のハブ12に重ねられた状態で、後輪側取付ボルト115によって連結される。
また、ハブ12における補助車輪取付軸110が連結される面の反対側の面には、後輪10に駆動力を伝達する駆動軸10a,10aが連結される駆動軸連結部15が設けられている。この駆動軸連結部15は、略円筒形の形状で形成され、円筒形の軸心が後輪10の回転軸と一致する向きで、ハブ12に設けられている。該駆動軸10a,10aは、多角形の軸状の形状で形成されており、駆動軸連結部15の内側の形状は、駆動軸10a,10aの断面形状に対して相似となり、駆動軸10a,10aの断面形状よりも若干大きい程度の大きさで形成されている。後輪10は、この駆動軸連結部15が機体内側に位置する向きで、駆動軸連結部15に駆動軸10a,10aを入り込ませて駆動軸連結部15を駆動軸10a,10aに連結させることにより、エンジン20で発生した動力によって回転可能に走行車体2に取り付けられている。
図9は、図6に示す補助車輪の側面図である。補助車輪100は、後輪10と同様に、外周に位置する補助車輪用リム103と、補助車輪100の回転の中心に位置する補助車輪用ハブ102と、を有し、補助車輪用リム103と補助車輪用ハブ102とは、補助車輪100の径方向に延在する複数の補助車輪用スポーク101によって連結されている。この補助車輪用スポーク101は、本実施形態1に係る苗移植機1では、1つの補助車輪
100に、3つが円周方向に等間隔で設けられている。
また、補助車輪100には、外周面に補助車輪用ラグ104が備えられている。この補助車輪用ラグ104は、補助車輪100の回転軸の方向における幅が、補助車輪用リム103の幅よりも広い幅の板状の形状で形成されており、補助車輪100の径方向に対して補助車輪100の周方向に傾斜する向きで、補助車輪用リム103の両側面から外周面にかけて設けられている。このように形成される補助車輪用ラグ104は、補助車輪100の周方向に等間隔で設けられている。補助車輪取付軸110の補助車輪連結部112は、このように形成される補助車輪100の補助車輪用ハブ102に連結されている。
また、補助車輪用ハブ102における補助車輪取付軸110が連結される側の面には、補助車輪取付軸110が連結される取付軸連結部105が設けられている。この取付軸連結部105は、略円筒形の形状で形成され、円筒形の軸心が補助車輪100の回転軸と一致する向きで、補助車輪用ハブ102に設けられている。
補助車輪取付軸110の補助車輪連結部112は、取付軸連結部105に入り込むことが可能な多角形の軸状の形状で形成されている。取付軸連結部105の内側の形状は、補助車輪連結部112の断面形状に対して相似となり、補助車輪連結部112の断面形状よりも若干大きい程度の大きさで形成されている。
補助車輪100は、取付軸連結部105が機体内側に位置する向きで、補助車輪取付軸110の補助車輪連結部112が取付軸連結部105に入り込んで取付軸連結部105が補助車輪連結部112に連結されることにより、補助車輪取付軸110に連結される。これにより、補助車輪100は、後輪10の回転が補助車輪取付軸110を介して伝達され、後輪10と一体回転可能に後輪10に装着されている。
その際に、取付軸連結部105は、補助車輪連結部112が入り込んだ状態で補助車輪側取付ボルト116によって固定されるが、補助車輪連結部112には、補助車輪側取付ボルト116(図5参照)と螺合可能な孔が、軸方向に複数並んで形成されている。このため、取付軸連結部105と補助車輪連結部112とは、軸方向における相対的な位置を異ならせた状態で、連結することが可能になっている。
図10は、図5に示す補助車輪と後輪との間隔の変更状態についての説明図である。補助車輪100は、このように、取付軸連結部105と補助車輪連結部112との相対的な位置を変化させて連結させることにより、軸方向における補助車輪取付軸110との相対的な位置関係を、複数の位置に変化させて補助車輪取付軸110に連結することができる。従って、補助車輪100は、後輪10の軸方向における後輪10との間隔を調節自在に後輪10に装着することが可能になっている。このように、後輪10との間隔を調節可能に後輪10に装着される補助車輪100は、後輪10との間隔を最も小さくした場合でも、左右方向における補助車輪100の中心が、左右方向における最外側の植込杆62の植付条寄りに位置するように構成されている(図5参照)。
詳しくは、補助車輪100は、左右方向における位置が、最外側の植込杆62の植付条と、この植込杆62よりも機体内側方向に位置して、この植込杆62に隣り合う植込杆62の植付条との間に位置している。このように配設される補助車輪100は、最も後輪10寄りに位置させて機体内側に位置させた場合でも、補助車輪100の左右方向における中心が、最外側の植込杆62の植付条と、この植込杆62に隣り合う植込杆62の植付条との左右方向における中心よりも最外側の植込杆62の植付条寄りに位置するように配設されている。
さらに、補助車輪100は、補助車輪用ラグ104の外側端部が、左右方向におけるフロート81の左右幅内に位置するように構成されている(図5参照)。つまり、補助車輪用ラグ104は、補助車輪100を後輪10から最も離し、左右走行における最も機体外側に位置させた場合でも、左右方向における外側の端部が、左右方向におけるフロート81の外側の端部よりも、機体内側に位置する幅で補助車輪100に設けられている。
図11は、補助車輪を後輪に装着した状態における側面図である。後輪10に補助車輪100を装着した場合、補助車輪用スポーク101は、後輪10や補助車輪100の周方向における位置が、周方向における後輪10のスポーク11の位置とは異なる位置に配設されている。つまり、補助車輪100は、後輪10との間で互いのスポークが同一位相に位置せず、補助車輪用スポーク101は、後輪10のスポーク11に対して異なる位相で配設されている。
これに対し、補助車輪用ラグ104は、周方向における位置が、周方向における後輪10のラグ14の位置と同じ位置になって配設されている。つまり、補助車輪用ラグ104は、後輪10への補助車輪100の装着時に、後輪10のラグ14と同一位相に位置するように、補助車輪100の外周面に設けられている。
図12は、前輪と後輪との位置関係を示す説明図である。これらのように構成される後輪10に対し、前輪5は、車輪の幅方向における中心同士の左右間隔である、いわゆるトレッドが、後輪10のトレッドよりも広くなっており、且つ、左右方向における外側端部の位置が、後輪10のラグ14の左右幅内からはみ出さない位置に配設されている。つまり、前輪5は、左右方向における外側端部の位置が、後輪10のラグ14の外側端部の位置と同じ位置か、後輪10のラグ14の外側端部よりも機体内側に位置しつつ、左右方向において極力機体外側に位置するように配設されている。
なお、前記前輪ファイナルケース22には、前記前輪5を取り付けるフランジ22aを設けているが、該フランジ22aの外側端部は前記前輪5及び後輪10の外側端部よりも機体内側に位置する配置構成としている。これにより、前記フランジ22aが前記前輪5及び後輪10よりも機体外側にはみ出すことを防止できるので、フランジ22aが圃場の泥を押して走行抵抗を増やし、走行速度を落としてしまい、作業能率を低下させることが防止される。また、フランジ22aが泥を押し、この泥が苗の植付位置に寄ることを防止できるので、苗の植付深さが深くなり過ぎることが防止され、苗の生育が安定する。
図13は、図1に示す動力伝達装置の詳細図である。図14は、図13のC−C矢視図である。動力伝達装置25のベルト式動力伝達機構27が有するベルト30は、エンジン20で発生した動力を油圧式無段変速装置26に伝達する伝動無端帯として構成されており、エンジン20側のプーリであるエンジンプーリ32と、油圧式無段変速装置26側のプーリである変速機プーリ33との双方に巻き掛けられている。
また、ベルト式動力伝達機構27が有するテンションプーリ31は、ベルト30の張力を調節することにより、ベルト30での動力の伝達状態を確保している。換言すると、テンションプーリ31は、ベルト30の張力を調節することにより、ベルト30での動力の伝達状態を切り替えることが可能になっており、ベルト30を伝動状態と非伝動状態に切り替える切替装置としても構成されている。
具体的には、エンジンプーリ32と変速機プーリ33とは、上下方向の高さの変化が少なく、水平方向に離れて配設されており、テンションプーリ31は、このように配設されるエンジンプーリ32と変速機プーリ33とに巻き掛けられるベルト30の軌跡の、上側の部分に対して、上方から下方への付勢力を付与している。つまり、テンションプーリ31は、ベルト30の軌跡における外側から内側の方向へ付勢力を付与することにより、ベルト30に張力を発生させている。
これらのベルト30や、エンジンプーリ32、変速機プーリ33、テンションプーリ31は、全てフロアステップ40の下方に配設されている。詳しくは、フロアステップ40は、左右方向において機体中央に位置するメインステップ41と、メインステップ41の左右両側に位置するサイドステップ42と、で構成されており、メインステップ41は、サイドステップ42よりも上方に位置している。ベルト30や、エンジンプーリ32、変速機プーリ33、テンションプーリ31は、このフロアステップ40のうちのメインステップ41の下方に配置されている。
また、サイドステップ42の下方には、切替装置としても設けられるテンションプーリ31を操作する操作部材である操作レバー35が配設されている。即ち、操作レバー35は、メインステップ41の下方に位置するテンションプーリ31の近傍から、サイドステップ42の下方にかけて延在している。
このように、下方に操作レバー35が位置するサイドステップ42には、操作レバー35の上方に、前後方向に長い孔部43が形成されている。詳しくは、サイドステップ42は、多くの部分が網目状に形成されており、操作レバー35の先端付近の上方に位置する網目が、前後方向に長くなって形成されることにより、操作レバー35の先端付近の上方には、前後方向に長い孔部43が形成されている。
図15は、図12に示すローリングフレームの平面図である。図16は、図15のD−D矢視図である。図17は、図16のE−E矢視図である。左右の後輪ギヤケース23(図12参照)を連結するローリングフレーム120の左右側方には、サイドプレート122が配設されている。このサイドプレート122は、ローリングフレーム120の前後方向の長さよりも長くなっており、サイドプレート122は、前端寄りの部分がローリングフレーム120に連結されている。このため、ローリングフレーム120に取り付けられた状態のサイドプレート122は、ローリングフレーム120よりも後方に延びて形成されている。ローリングフレーム120は、このサイドプレート122が後輪ギヤケース23にボルトによって接続されることにより、後輪ギヤケース23に連結されている。
また、ローリングフレーム120の後方には、パイプ状の形状でローリングフレーム120と平行に左右に延在する連結部材123が配設されており、連結部材123は、両端が左右のサイドプレート122に連結されている。換言すると、連結部材123と、左右のサイドプレート122を連結している。詳しくは、連結部材123は、サイドプレート122における、ローリングフレーム120よりも後方に延びている部分に連結されており、このローリングフレーム120より後方に突出した部分の下端よりの位置に連結されている。
次に、植付装置61の詳細構成について説明する。
図26に、図24の植付装置61の植付回転軸300周辺の断面図を示す。図24、図25、図26に示す通り、植付回転軸300には角軸面300aが形成されており、回転ケース310のボス部380に植付回転軸300と直交させて挿し込んで通したテーパ状の固定部材390を上記角軸面380に接触させて、回転ケース310を植付回転軸300に固定する。更に植付回転軸300には、軸外周から角軸面300aに至る傾斜部300bを設けると共に、この傾斜部300bの半径方向に、固定部材390の一部を重ねて配置する。
前記傾斜部300bの半径方向に固定部材390の一部を位置させることにより、ボス380の左右幅を小さくすることができる。これにより、回動する植込杆62,620と前記ボス380との干渉が防止されると共に、植付装置61の左右方向をコンパクトにすることができる。
図27に、植付装置61の内部構造を示す。植付装置61を構成する回転ケース310の内部には、植付回転軸300の外周部に嵌合し、前記植付装置61と一体で非回転な偏心入力ギア400が配置されており、偏心入力ギア400に噛合する2つの偏心中継ギア410,410と、各偏心中継ギア410,410に噛合する2つの偏心出力ギア420,420とからなるギア機構が収納されている。
前記偏心入力ギア400の回転中心は、植付回転軸300の軸心と同じ、即ち偏心入力ギア400は植付回転軸300と同軸となる配置とし、偏心入力ギア400は、第3の軸受430によって回転ケース310に支持する。偏心中継ギア410は、偏心入力ギア400からの駆動力を偏心出力ギア420に伝動するもので、中継伝動軸440に取り付けられ、回転ケース310に対応して遊転する構成となっている。また、偏心出力ギア420は、植込杆62,620を回動させる回動軸340に一体回転する構成で取り付けられている。
前記植付装置61では、偏心中継ギア410の回転中心を、側面視で、偏心入力ギア400の回転中心と、偏心出力ギア420の回転中心とを結んだ線上以外に位置させる構成とする。更に、偏心入力ギア400の回転中心と、偏心中継ギア410の回転中心と、偏心出力ギア420の回転中心を結ぶと二等辺三角形が形成される配置とする。
また、偏心中継ギア410,410及び偏心出力ギア420,420は、偏心入力ギア400の回転中心を対称点として点対称として配置し、偏心入力ギア400の回転中心と、偏心中継ギア410,410の回転中心と、偏心出力ギアの回転中心420,420とにより、側面視でS字形状を描く配置構成とする。
上記構成により、植付装置61の形状が側面視でS字形状を描く構成となるので、植付装置61の重量バランスが植込杆62,62を装着する両端部に偏ることが防止され、植付装置61がフライホイールの役割を果たすことにより、植付装置61ギアの噛み合いによる振動と共振して苗の植付不良が発生することが防止される。
前記偏心出力ギア410,410を点対称として配置していることで、本実施形態では、偏心中継ギア410,410の回転中心は、偏心入力ギア400と偏心出力ギア420,420とを結ぶ線のいずれも回転上手側に位置する。ただし、これを回転下手側に位置する構成としても問題ない。
前記偏心中継ギア410の回転中心を、側面視で偏心入力ギア400の回転中心と、偏心出力ギア420の回転中心とを結んだ線上以外に位置させることにより、偏心入力ギア400の回転中心と偏心出力ギア420の回転中心との距離を短くすることができる。これにより、回転ケース310をコンパクトにし、固有振動数を上げることができるので、振動振幅を小さくすることができる。また、偏心入力ギア400と偏心中継ギア410との回転中心間距離等を任意に設定でき、各回転体の歯数を変更できるので、共振を避けて歯数を設計でき、共振による振動を抑えることができる。
回転ケース310の両端部に、植込杆62,62を各々設け、該一対の植込杆62,62に駆動力を伝動する偏心中継ギア410,410の回転中心を、偏心入力ギア400の回転中心を対称点として、点対称として配置することにより、重量のある回転ケース310のアンバランスを少なくでき、振動を抑えることができる。
前記植付回転軸300が駆動回転すると、回転ケース310が一定方向に回転し、偏心入力ギア400の周りを偏心出力ギア420が公転するとともに、偏心入力ギア400が1回公転する間に公転方向とは逆向きに偏心出力ギア420が1回自転する。図24、図27に示す左側面図では、回転ケース310が植付回転軸300と共に図面上で反時計回りに回転し、偏心出力ギア420が植付回転軸300を中心として反時計回りに公転するとともに、時計回りに自転する。
植込杆62,62は、偏心出力ギア420に装着されている回動軸340と共に回動するので、植付回転軸300が駆動回転するのに伴って、植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端が後述する苗植付具の先端軌跡190を描く構成で移動する。前記偏心出力ギア420が1回公転する間に、苗取フィンガ131の先端が苗植付具先端軌跡190上を一周する。尚、苗植付具先端軌跡190は、走行車体100が停止しているときの左側方から視た静軌跡である。
図25で示すとおり、偏心入力ギア400と、偏心中継ギア410と偏心出力ギア420とは、平面視で直線状に配置されるギア機構を構成している。「直線状に配置」とは、これら歯車である回転体の歯幅が同じで、回転体が互いに軸方向に突出していない状態を言う。そして偏心中継ギア410に嵌装した中継回転軸440の左右長さが、偏心入力ギア400と同軸の植付回転軸300の左右長さよりも短く、かつ偏心出力ギア420に嵌装した回動軸340の左右長さよりも短くする。
偏心入力ギア400と、偏心中継ギア410と、偏心出力ギア420とを平面視で直線状に配置することにより、回転ケース310の左右幅を広くする必要がなく、回転ケース310をコンパクトに構成することができる。
また、偏心中継ギア410に嵌装した中継回転軸440の左右長さが、偏心入力ギア400に嵌装した植付回転軸300の左右長さよりも短く、かつ、偏心出力ギア420に嵌装した回動軸340の左右長さよりも短くしたことにより、植込杆62,62が回動した際に中継回転軸440と干渉することが防止され、植込杆62,62の植付回転軌跡が乱れることがなく、苗の植付精度が向上する。
前記偏心入力ギア400と、偏心中継ギア410と偏心出力ギア420とは、各々ギア歯とギア歯の間隔、ならびに各ギア歯の長さの異なる非円形状とする。複数の非円形ギア同士が噛み合うことにより、回転ケース310が回転すると、図24、及び図28から図32に示す軌跡を植込杆62,62が描く構成としている。
図29(b)で示す通り、前記偏心入力ギア400と、偏心中継ギア410と偏心出力ギア420の外周縁部には、各々ギア歯の突端部が略平面状に並ぶ平坦部400f,410f,420fを各々形成し、各非円形ギアの各平坦部400f,410f,420f同士が噛み合うときは、ギア歯同士の隙間が小さくなるものとする。ギア歯同士の隙間を小さくすることにより、前記偏心入力ギア400、偏心中継ギア410及び偏心出力ギア420の噛み合いの負荷が強くなっても、ガタ(バックラッシュ)の発生が抑えられる。
そして、上記の各平坦部400f,410f,420fは、植込杆62,62の植付軌跡の下死点、即ち最下降位置で噛み合い始める、もしくは下死点通過後に噛み合い始め、前記苗取フィンガ131が土中から完全に離脱する位置で離間し始める。
なお、上記の各平坦部400f,410f,420fが離間する位置は、植込杆62,62が植付姿勢から苗取り姿勢に切り替わり始める位置でもある。
上記の植込杆62,62の植付軌跡の下死点から、苗取フィンガ131が土中から完全に離脱するまでの位置は、苗取フィンガ131を土中から速やかに離脱させるべく、植込杆62,62の移動速度を速くする必要がある。また、苗取フィンガ131が土中から完全に離脱する位置では、植込杆62,62が植付姿勢から苗取り姿勢に切り替わるので、偏心入力ギア400、偏心中継ギア410及び偏心出力ギア420の噛み合いの負荷によってガタが発生し、植込杆62,62が脈動を起こしたり、植込杆62,62の回転移動が遅れたりしやすい。
しかしながら、各非円形ギアの各平坦部400f,410f,420fが、植込杆62,62の植付軌跡の下死点、もしくは下死点通過後から、苗取フィンガ131が土中から完全に離脱するまでの位置に亘り、ギア歯同士の間隔が小さくなる状態で噛み合うことにより、前記偏心入力ギア400、偏心中継ギア410及び偏心出力ギア420の噛み合いの負荷が抑えられてガタの発生が防止されるので、植込杆62,62が脈動を起こしたり、回転移動が遅れたりすることが防止され、苗取りや苗植付のタイミングがずれることが防止される。
これにより、苗取フィンガ131を土中から速やかに離脱することができるので、苗の植付位置の周囲に孔部を形成することが防止され、苗がこの孔部に倒れ込み、植付姿勢が乱れることが防止される。
なお、各非円形ギアには20本から22本程度のギア歯が形成されており、ギア歯1本当たりの植込杆62,62の移動量は約16°〜18°となる。前述のとおりギア歯の幅、及びギア歯とギア歯の間隔は一箇所ごとに異なるので、上記の値は平均値である。前記平坦部400f,410f,420fは、同じ幅のギア歯を2本並べると共に、該2本のギア歯の間隔をこのギア歯1本分と略同じとすることによって形成される。
図29(c)で示す通り、前記偏心入力ギア400、偏心中継ギア410及び偏心出力ギア420の各平坦部400f,410f,420fの噛み合い部分が通過すると、前記植付回転軸30から偏心入力ギア400の外周部までの径が最大になる入力最大径部400m、前記中継伝動軸440から偏心中継ギア410の外周部までの径が最大になる中継最大径部410m、及び前記回動軸340から偏心出力ギア420の外周部までの径が最大になる出力最大径部420mが各々噛み合う配置構成とする。
具体的には、前記入力平坦部400fと中継平坦部410fが先行して離間し始める位置で、前記入力最大径部400mが中継最大径部410mと先行して噛み合わせる。入力最大径部400mと中継最大径部410mが噛み合うことにより、偏心入力ギア400と偏心中継ギア410の回転速度が速くなるので、植込杆62,62の回転移動速度を速くすることができる。この動作を、第1クイック動作とする。
そして、該入力最大径部400mと中継最大径部410mが離間し始める位置になると、前記中継平坦部410fと出力平坦部420fが離間し始め、前記中継最大径部410mと出力最大径部420mが噛み合い始める。中継最大径部410mと出力最大径部420mが噛み合うことにより、偏心中継ギア41と偏心出力ギア42の回転速度が速くなるので、第1クイックが終了しても植込杆62,62の回転移動速度を維持することができる。この動作を、第2クイック動作とする。
上記構成により、第1クイック動作が終わると同時に第2クイック動作が開始されるので、植込杆62,62を下死点から苗取フィンガ131が土中から完全に離脱する位置まで速やかに移動させることができるので、苗取フィンガ131が植え付けられた苗の周囲に孔部を形成することが防止され、この孔部に苗が倒れ込み、植付姿勢が乱れることが防止される。
第1クイックと第2クイックによる植込杆62,62の移動は、ギア歯約2本分、即ち植込杆62,62の苗植付軌跡の下死点を0度として32°から36°の範囲で行われる。
なお、前記中継平坦部41fと出力平坦部42fが先行して離間し始める位置で、前記中継最大径部410mと出力最大径部420mを先行して噛み合わせて第1クイック動作を行うと共に、前記入力平坦部400fと中継平坦部410fが離間し始めると前記入力最大径部400mと中継最大径部410mが噛み合い、第2クイック動作を行う構成としてもよい。
図27に示すとおり、回転ケース310の内部には、回動軸340に一体回転する構成で取り付けた、円周上の一点を突出させて突起部470tを形成した非円形状の制動カム470と、制動カム470の外周面に接触する制動アーム480と、制動アーム480を制動カム470に押し付ける制動スプリング490とからなる位相ずれ防止機構が設けられている。制動アーム480の接触面側は、円弧形状として、制動カム470の外周面に接触する構成としている。
前記制動カム470と制動アーム480と制動スプリング490は、各々一対回転ケース310の内部に設ける。該回転ケース310のうち、一対の偏心中継ギア410,410を設ける部分は、該一対の偏心中継ギア410,410を偏心入力ギア400及び一対の偏心出力ギア420,420よりも搬送方向上手側に配置すべく、各々回転方向上手側に突出する凸部310c,310cが形成されている。一方、該凸部310c,310cの反対側、即ち回転方向上手側には、各々緩やかに湾曲する凹部310d,310dを形成しており、回転ケース310は、側面視でS字形状に形成される。
前記凹部310d,31d0には、搬送方向上手側に突出する収容突起部310a,310aを各々形成し、該収容突起部310a,310aの内部には収容空間部310b,310bを各々形成する。そして、該収容空間部310b,310bの内部に前記制動スプリング490,490を各々配置する。該制動スプリング490,490は、前記偏心出力ギア420の回動軸340と、偏心中継ギア410の中継回転軸44の間に配置される。
なお、前記収容突起部310a,310aの突出量は、前記凸部310c,310cの突出量と略同じとする。
また、前記一対の制動スプリング490,490、及び一対の収容突起部310a,310aは、偏心入力ギア400に嵌装した植付回転軸300を中心として、線対称となる位置に配置される構成とする。
上記構成では、収容突起部310a,310aを回転ケース31の凹部310d,310dに形成すると共に、収容突起部310a,310aと凸部310c,310cの突出量を略同じとしたことにより、制動スプリング49,49の突出量が大きくなって回転ケース310が大型化することが防止され、植付装置61のコンパクト化が図られる。
そして、一対の制動スプリング490,490、及び一対の収容突起部310a,310aを、植付回転軸300を中心として線対称となる位置に配置したことにより、一方の収容突起部310aの突出端部が他方の凸部310cの突出端部と略同一直線上に並ぶ構成となるので、回転ケース310が大型化することが防止され、植付装置61のコンパクト化が図られる。
また、収容突起部310a,310aを、回転ケース310の回転方向上手側に各々設けたことにより、収容突起部310a,310aは植込杆62,62が圃場に苗を植え付ける際、圃場面または水面の藁屑等の夾雑物を掬い上げにくい姿勢となるので、夾雑物が植付装置61に絡み付くことが防止され、夾雑物が植付装置61の植付作業を妨げることが防止されると共に、植付装置61から夾雑物を除去する作業が不要となる。
さらに、植込杆62,62が圃場に苗を植えて上方に移動し、次の苗を取りに行く軌跡、及び苗を取って圃場に苗を植え付けに行く軌跡において、収容突起部310a,310aが各々下方を向く位置があるので、収容突起部310a,310aに引っ掛かった夾雑物が下方に落下しやすくなり、いっそう夾雑物の絡み付きが防止される。
前記制動カム470は、図27に示す通りの形状をしており、植込杆62,62が、苗取り口から苗を取る位置及び苗を圃場に植え付ける位置にある時に偏心出力ギア420の回転を制動し、各ギア間のバックラッシによる振動を抑制して、苗分離及び苗植え付けの動作が正確に行われる構成で作用する。
なお、図36には、植付装置61の、制動カム470の左方向からの側面図を示す。第二実施形態にかかる植付装置61では、制動カム470の全周を、第一接触部470aと、第二接触部470bとにより形成する。第一接触部470aは、植込杆62,62が苗を取る位置にあるときに、制動アーム48と接触する外周位置から、そこから回転前135°の回転位置にあるときに、制動アーム48と接触する外周位置までをいい、第二接触部470bは、それ以外の部分をいう。第一接触部470aでは、制動カム470の外周と回転中心との距離を、段階的に長くなる構成とする。
前記制動カム470の第一接触部470aを、植込杆62,62が苗を取るまで第一接触部470aの外周と回転中心との距離を、段階的に長くすることにより、振動を少なくする力を徐々に強くしながら、苗を取る部分で振動を抑える力を最も強くすることができる。これにより、急激な力の変動による振動を抑えることができると共に、苗の取得を確実に行うことができ、苗の植付精度が向上する。
なお、前記第一接触部470aと第二接触部470bの境界部分のどちらか一方に、前記突起部470tを形成する。
前記制動アーム480は制動スプリング490の付勢力によって常時制動カム470に押し当てられ、制動カム470に加えられる圧力は回動軸340を介して偏心出力ギア420に伝達され、偏心出力ギア420の回転動作に伴って生じる負荷を軽減する。該偏心出力ギア420にかかる負荷は、前記回動軸340に設けられる植込杆62,62の位置毎に変化するので、前記制動カム470は複数個所の径が異なる構成としている。
特に、図29(a)(b)(c)(特に記載が無い限りは図29とする)で示す、前記植込杆62,62が苗取り口から所定量の苗を取る位置では、苗の培地や根が強い抵抗になり、負荷がかかりやすく、偏心入力ギア400、偏心中継ギア41及び偏心出力ギア420の噛み合いの負荷によって植込杆62,62が脈動を起こしたり、植込杆62,62の回転移動が遅くなることがある。これにより、植込杆62,62が苗取り口を通過する位置がずれ、設定した苗とは異なる量の苗を取ってしまったり、苗を取らずに通過してしまったりして、苗の植付が位置毎に異なり、植付精度が低下する問題が生じる。
上記の脈動の発生を防止すべく、前記植込杆62,62が苗取り口から苗を取る位置よりも回転方向下手側の位置で、前記制動カム470の突起部470tが制動アーム480に接触し、該制動アーム480は制動スプリング490の付勢力に抗して苗取り口の直前まで突起部470tによって押し上げられる配置構成とする。そして、植込杆62,62が苗取り口を通過する際、前記突起部470tが制動アーム480を通過し切ると、前記制動スプリング490の付勢力によって押し出された制動アーム480が制動カム470に接触することにより、接触の衝撃が回動軸340を介して前記偏心出力ギア420に伝動されるので、前記偏心入力ギア400、偏心中継ギア410及び偏心出力ギア420の噛み合いの負荷が軽減されて、植込杆62,62が苗取り口から苗を取る際に脈動を起こしたり、回転移動が遅れたりすることが防止され、苗の植付精度が向上する。
前記植込杆62,62の押出フォーク135は、植付具ケース130に摺動自在に支持されたフォーク部136の先端部に苗取フィンガ131の裏面に近接させて取り付けられ、フォーク部136の作動により苗取フィンガ131の先端側へ突出、及び苗取フィンガ131の根元側へ後退する構成になっている。前記植付具ケース130内に収容されている押出フォーク135の作動機構により、苗取フィンガ131の先端が苗植付具先端軌跡190の下部へ移動していく際に押出フォーク135が突出して、苗取フィンガ131に保持されている苗を圃場へ押し出す。尚、押出フォーク135の作動機構については後述する。
本実施の形態にかかる植付装置61は、以上の構成で、植付作業時には次の通りに作動する。植付回転軸300が駆動回転することにより、植付具ケース130に取り付けられている一対の植込杆62,62が、苗取フィンガ131の先端が苗植付具先端軌跡190を描く同一軌道上を互いに1/2周期の間隔を保ったまま一定姿勢で移動する。
前記植込杆62,62の苗取フィンガ131が苗取り口を通過する際、苗載せ台22の苗を一株分離して取り出す。このとき、押出フォーク135は後退した状態にある。植込杆62,62が下動して苗取フィンガ131の先端が苗植付具先端軌跡190の下部まで移動すると、フォーク部136の先端に設けた押出フォーク135が突出し、苗取フィンガ131が保持している苗の土部を下向きに押すことにより、苗を苗取フィンガ131から押し出して圃場に植え付ける。その後、植込杆62,62が下動時よりも後方の軌道を通って上動するとともに、押出フォーク135が後退する。
図28は、本発明の第一実施形態にかかる植付装置61の、回動軸340の位置に対応する苗取フィンガ131の先端が描く苗植付具先端軌跡190を示す図である。図28は、走行車体10の左側から視た模式図である。
図28に示す公転軌跡510は、植付回転軸300が回転する際の回動軸340の公転軌跡を示している。また、図28では、偏心入力ギア400、偏心中継ギア410及び偏心出力ギア420は、回動軸340が最下点にあるときの各回転体の位置を示している。
又、従来の苗植付具の先端軌跡Pを一点鎖線で示している。
第一実施形態にかかる植付装置61は、図27に示す偏心入力ギア400、偏心中継ギア410、410及び偏心出力ギア420、420の構成により、苗取フィンガ131の先端が、従来の植付具先端軌跡Pとは異なる苗植付具先端軌跡190を描く。回動軸340が、公転軌跡510を一周する間に、苗取フィンガ131の先端は苗植付具先端軌跡190上を一周移動する。
以下に、第一実施形態の植付装置61における、苗植付具先端軌跡190の詳細について説明する。
図29(a)(b)(c)は、植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端が苗植付具先端軌跡190上の最下点にきたときの回転ケース310内の各偏心ギアの位置関係を示す図である。図29(a)(b)(c)は、走行車体2の左側から視た図であり、図29(a)(b)(c)以降の図では、走行車体2の前後方向をx方向、鉛直方向をy方向として説明する。
又、図29(a)(b)(c)以降の図では、図29(b)に示す通り、植込杆62,62の形状及び姿勢を、植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端及び回動軸340の中心を頂点とする三角形で表している。
図29(a)(b)(c)では、苗取フィンガ131の先端が苗取り口に達したとき、及び苗植付具先端軌跡190の最下点に達したときの植込杆62,62の位置を記載している。
回動軸340から苗取フィンガ131の先端までの長さLを、植付回動軸300の公転軌跡510の中心である植付回転軸300から回動軸340までの長さの2倍の長さ、すなわち植付回動軸30の公転軌跡51の直径φと同じ長さとしている。例えば、長さLを、従来の植付回動軸30の公転軌跡51の直径φと同じ約160mmとしている。
前記回転ケース31の端部に備えた、二つの植込杆62,62の回動軸340、340の軸心間距離φと、植込杆62,62の回動軸340の軸心から、この植込杆62,62に備えた苗取フィンガ131の先端までの距離Lと、が同一であることにより、苗取フィンガ131が他方の植込杆62,62に干渉しない構成とすることができる。これにより苗の植付位置や、植付深さが乱れることを防止でき、苗の植付精度が向上する。
更に、苗植付具先端軌跡190上の最下点(B点)の位置から、植付回動軸300の公転軌跡510の中心である植付回転軸300までのy方向の距離b2が、植付回動軸の公転軌跡510の直径φと略同じ長さとなる構成としている。
また、図29に示す通り、偏心入力ギア400の軸心である植付回転軸300と偏心出力ギア420の軸心である回動軸340を結ぶ直線を第1の直線としたとき、回動軸340の公転する回転方向(図29では左回り)を基準として、偏心中継ギア410の軸心である中継伝動軸440が第1の直線よりも前側に位置する構成としている。
そして、偏心入力ギア400の軸心である植付回転軸300と偏心中継ギア410の軸心である中継伝動軸44とを結ぶ直線を第2の直線としたときに、第1の直線と第2の直線がなす角度θ2が、18±2°となる構成としている。
さらに、図29(a)で示す通り、前記中継伝動軸440と回動軸340を結ぶ直線と第3の直線とすると、第1の直線と第3の直線がなす角度は、18±2°となる。そして、第2の直線と第3の直線の交点における角度θ3は、144±4°となる。これにより、第1の直線と第2の直線と第3の直線を各々結ぶ、即ち、植付回転軸300と中継伝動軸44と回動軸340を直線で結ぶと、三角形が描かれる構成となる。
また、本実施の形態では、図29に示す通り、回動軸340が公転軌跡510の最下点にきたときに、苗取フィンガ131の先端が、苗植付具先端軌跡190の最下点であるB点に達する構成としている。
そして、偏心出力ギア420の軸心である回動軸340と苗取フィンガ131の先端とを結ぶ直線を第4の直線とすると、苗取フィンガ131の先端が苗植付具先端軌跡190上の最下点(B点)に達したときに第1の直線と第3の直線がなす角度θ4が、128±2°となる構成としている。これに加えて、第4の直線と、苗取フィンガ131の先端と植込杆62の上側後端部を結ぶ第5の直線が為す角度θ5が、27.5±2°となる構成としている。
図30は、第一実施形態にかかる植付装置61の、植付回転軸300の軸心の位置と苗植付具先端軌跡190上の各通過点との位置関係を示す図である。
図30に示す通り、苗取フィンガ131の先端が通過する苗植付具先端軌跡190は、側面視で閉曲線を描く軌跡であり、苗植付具先端軌跡190の最上位となる位置をA点、最下位となる位置をB点、最前方となる位置をC点とする。
図30に示す通り、苗取フィンガ131の先端は、植付回転軸300よりも低い位置で、最前方点(C点)を通過する。
A点と偏心入力ギア400の軸心である植付回転軸300との間の、x方向の距離をa1とし、y方向の距離をa2とする。又、B点と植付回転軸300の間の、x方向の距離をb1とし、y方向の距離をb2とする。又、C点と植付回転軸300との間の、x方向の距離をc1とし、y方向の距離をc2とする。
本実施の形態では、a1の長さが、植付回転軸300から回動軸340までの長さの2倍の長さφの0.6倍以上乃至0.64倍以下となる構成とし、a2の長さが、長さφの0.76倍以上乃至0.8倍以下となる構成としている。
また、b1の長さが、長さφの0.7倍以上乃至0.74倍以下となる構成とし、b2の長さが、長さφの1.03倍以上乃至1.07倍以下となる構成としている。
そして、c1の長さが、長さφの1.29倍以上乃至1.33倍以下となる構成とし、c2の長さが、長さφの0.14倍以上乃至0.18倍以下となる構成としている。
苗植付具先端軌跡190上の最下点(B点)から鉛直上方30mmの水平面の位置を圃場面の位置と仮定し、この水平面と苗植付具先端軌跡190との交差する2点のうち、前方側の交差点をD1点とし、後方側の交差点をD2点とする。
そして、D1点とB点とのx方向の距離をd1、D2点とB点とのx方向の距離をd2としたときに、本実施の形態では、d1の長さがd2の長さの略2倍の長さとなる構成としている。
さらに、苗植付具先端軌跡190のうち、C点からB点に至る軌跡の形状が、側面視で、半径が長さφの0.85倍以上、0.9倍以下の真円の弧の形状に略一致する構成としている。
図31は、本発明の第一実施形態にかかる植付装置61の、一方の植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端が植付回転軸300と同一の水平面上を通過する際の、偏心入力ギア400の軸心の位置と各植込杆62,62との位置関係を示す図である。
2つの植込杆62,62は、植付回転軸300を中心として点対称となる回転ケース31の両端部に配置された2本の回動軸340のそれぞれに固定されている。
図31に示す通り、本実施の形態では、一方の植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端が植付回転軸300と同一の水平面上を通過する際、もう一方の植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端も、植付回転軸300と同一の水平面上を上下逆方向に向けて通過する。
植付回転軸300と同一の水平面と苗植付具先端軌跡190との交差する2点のうち、前方側の交差点をE1点とし、後方側の交差点をE2点とすると、一方の植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端が下降しながらE1点を通過する際、他方の植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端は、上昇しながらE2点を通過する。
そして、E1点と最下点であるB点とのx方向の距離をe1、E2点と植付回転軸300とのx方向の距離をe2としたときに、本実施の形態では、e1の長さがe2の長さと略等しくなる構成としている。
図32は、走行車体10が停止しているときの苗植付具先端軌跡190に対応させて、走行車体10が走行しているときの第一実施形態にかかる植付装置61の植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端が描く動軌跡を示した図である。
植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端が苗植付具先端軌跡190を描きながら走行車体10が左方向へ走行したとき、植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端は、側面視で苗植付具先端動軌跡520を描く。
図32に示す通り、植付回転軸300を中心として、植付回動軸の公転軌跡510上の最下点の位置を0°の位置とし、回動軸340が公転軌跡510上の最も後方側にきたときの位置を90°の位置とし、回動軸340が公転軌跡510上の最上点にきたときの位置を180°の位置と規定する。
図32の苗植付具先端軌跡190上のF点は、回動軸340の公転軌跡510上の位置を上記の通り規定したときの、回動軸340が260°の位置にあるときの、植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端の位置を示している。そして、苗植付具先端動軌跡52上のF´点は、F点に対応する動軌跡上の植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端の位置を示している。
また、苗植付具先端軌跡190上のG点は、回動軸340が公転軌跡510上の90°の位置にあるときの植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端の位置を示しており、苗植付具先端動軌跡520上のG´点は、G点に対応する動軌跡上の植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端の位置を示している。
本実施の形態では、図27に示した各ギアの構成により、回動軸340が公転軌跡510上の260°の位置付近から苗取フィンガ131の先端の移動速度が加速し、90°の位置付近から苗取フィンガ131の先端の移動速度が減速する。
つまり、苗植付具先端軌跡190上において、苗取フィンガ131の先端は、苗を圃場に植え付けるF点からG点に移動する間は速く移動し、苗取り口から苗を取り出すG点からF点に移動する間は遅く移動する。苗植付具先端動軌跡520上では、F´点から苗取フィンガ131の先端が加速して苗を圃場に植え付け、G´点から苗取フィンガ131の先端が減速して苗取り口から苗を取り出す。
苗取フィンガ131の先端の移動速度を上記の通りに制御することにより、圃場に植え付けた苗に干渉することなく、苗の植え付け後に苗取フィンガ131の先端を急上昇させることができる。
図33に、第一実施形態にかかる植付装置61で、苗の前後方向の植付間隔、即ち株間を変化させたときの、植込杆62,62の苗取フィンガ131の先端の動軌跡を示す。
図33は、各植付け株数(37株、42株、50株、60株、70株、80株、90株)における動軌跡を示している。図33では、苗取フィンガ131の先端の軌跡の最下点の位置から鉛直上方30mmの位置を圃場面と仮定している。
従来の苗植付装置によって描かれる苗取り爪先端の軌跡では、疎の植付け側において振動の発生の生じにくい構成とすると、密の植付け側で株数を増やすほど苗同士の植付け間隔が乱れやすくなる問題があったと共に、密の植付け側において苗同士の植付間隔が一定になる構成とすると、疎の植付け側としたときに振動が発生しやすくなる問題があった。
本実施の形態の植付装置61は、走行車体2が停止している状態において苗植付具先端軌跡190を描く構成で動作することにより、苗同士の植付け間隔を乱すことや、振動の発生により苗の植付けが一時的に行われることなく、37株から90株までの広い範囲の植付け株数に対応できる。
第一実施形態にかかる植付装置61では、植付け株数に対応したギアの変更等が必要ないので、低コストで作業適応力が向上する。また、植付装置61は、従来と略同じ大きさで構成することができるので、コンパクト化が図られる。
図34に、本実施の形態の植付装置61が停止したときの植付装置61の側面図を示す。植付装置61を停止させたとき、すなわち植付クラッチを「切」に設定したとき、回転ケース31の両端部に装着されている2つの植込杆62,62は、図34に示す姿勢で停止する。
図34に示す通り、2つの植込杆62,62の苗取フィンガ131が互いに平行となる向きで停止することにより、植付装置61が停止したときに側面視で回転ケース310から前後にはみ出す面積が小さく、嵩張らない。これにより、苗移植機の倉庫等への収納や、軽トラックの荷台等への積載が容易になる。
また、苗取フィンガ131,131が互いに圃場の土中に侵入した状態で停止することを防止できるので、苗取フィンガ131,131に泥土が詰まり、苗植付部15から苗を掻き取れず、苗が植付けられない箇所の発生が防止される。これにより、作業者が手作業で苗を植える作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
次に、植込杆62,62の植付具ケース130内に収容されている押出フォーク135の作動機構の詳細について説明する。
図35(a)に、第一実施形態にかかる植付装置61の植込杆62,62の断面図を、図35(b)に、図35(a)のS1−S1断面を示す。
押出カム710は、植付具ケース130内に突出した回転ケース310の突出部に一体的に嵌合し、回動軸340及び植付具ケース130を基準として回転自在に設けられている。この押出カム710の外周面に摺接するカムアーム720は、アーム軸730に回動自在に軸支されている。押出カム710は、回転ケース310の外側で、後述する作動アーム740よりも回転ケース側に配置する。
又、アーム軸730には、カムアーム720と一体に回動する作動アーム740が軸支されていて、作動アーム740の先端部と、フォーク部136の植付具ケース130内部側の端部に固定されている押出ナット700と、が継手部材75を介して連結されている。そして、継手部材750を介してフォーク部136が苗取フィンガ131の突出側に付勢される構成で、作動アーム740の中間部分を付勢する押出スプリング760が設けられている。
前記回動軸340を基準として押出カム710が相対的に回転し、押出カム710とカムアーム720とからなるカム機構の働きで、作動アーム740が揺動する。
前記押出スプリング760を圧縮する位置に作動アーム740があるときは、押出フォーク135が後退した状態にある。その位置から作動アーム740が回動して押出スプリング760の圧縮が緩和されると、押出スプリング760の弾発力でフォーク部136が押し出され、押出フォーク135が突出する。
図25及び図35で示すように、第一実施形態にかかる作動アーム740は、回転ケース310の回転軌跡と平行となる平行アーム部740aと、回転ケース310から離れる傾斜姿勢の傾斜アーム部740bと、で構成し、押出スプリング760を、作動アーム740の平行アーム部740aで押圧する構成とする。
押出スプリング760を、作動アーム740の平行部アーム部740aで押圧する構成としたことにより、作動アーム740の回動案内の幅内で作動アーム740を押圧するので、作動アーム740の姿勢が乱れることがなく、押出フォーク135が押し出され、苗を確実に植付けることができる。
図35(a)上で、フォーク部136と作動アーム740の回動支点であるアーム軸730との上下間に保護部材77を設け、作動アーム740がフォーク部136を押し出す位置に回動した際に、作動アーム740が保護部材770に接触する構成とする。該保護部材770は、植付具ケース130の内側に設けられたクッションゴムであり、支持ボス780により支持されている。保護部材770は、押出スプリング760の弾発力によって回動する際の作動アーム740の衝撃を吸収し、フォーク部136をスムーズに突出させる。また、作動アーム740のフォーク部136との押圧部を、フォーク部136の前後方向における前側に突出させる。
なお、作動アーム740の平行アーム部740aには、押出スプリング760が接触する接触突起部740aaを形成し、該接触突起部740aaの基部に、接触突起部740aaよりも大径のワッシャ740wを設けることにより、押出スプリング760を二重にする、即ちダブルスプリング構成とすることができ、フォーク部136の押出がスムーズになり、苗の植付が確実に行える。
前記フォーク部136とアーム軸730との間に、押出位置に移動した作動アーム740を受け止める保護部材770を設け、作動アーム740のフォーク部136との接触部を前側に突出させたことにより、作動アーム740と保護部材770との接触面積を大きくし、フォーク部136を確実に作動アーム740で押すことができると共に、植付杆62,62をコンパクトにできる。これにより、苗移植機の前後幅が短くなる。
図35(a)に示す通り、押出ナット700の前方にオイル溜り800を設ける。押出ナット700の前方にオイル溜り800を設けたことにより、植込杆62,62の全長を長くすることなく、押出ナット700によって植付具ケース130内部のオイルが外部へたたき出されることを防止できる。
また、クッションゴム支持ボス780と押出ナット700との間に隙間を設ける構成として、オイルの押し出しを防止している。
さらに、図35(a)及び図35(b)に示す通り、フォーク部136が内部を摺動する植付具ケース130の筒状部分の内側の側面にオイルバイパス790を設けることにより、コンパクトな構成でオイルの押し出しを防止している。
また、フォーク部136が植付具ケース130から突出するブッシュ部分にはオイル溜りの空間を設けずに、グリスシールリップ部810に凹部を設けることによって、オイルバイパス790を通じてオイルを後方へ戻せる構成としている。これにより、植込杆62,62の全長を長くすることなく、オイルを戻すことができる。
また、図25、図34に示すように、植込杆62,62の回動量を調節する回動量調節部材500を設け、この回動量調節部材500を植込杆62,62と回転ケース310との間に配置する。該回動量調節部材500を植込杆62,62と回転ケース310との間に配置したことにより、植付装置61の左右方向をコンパクトにすることができる。
本件の苗移植機1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。苗移植機1の運転時は、エンジン20で発生する動力によって、走行車体2の走行と、苗載置台65に載せた苗の植え付け作業を行う。このうち、植え付け作業は、回転軸が左右方向になる向きで植付装置61全体が回転しながら、植込杆62も回転することにより、苗載置台65に載せられた苗を各条ごとに徐々に圃場に植え付ける。植え付け作業時は、このように植付装置61を作動させながら圃場内を走行車体2で走行することにより、複数条に苗を植え付ける。
このように苗の植え付けを行う苗植付部60は、油圧昇降シリンダ76が作動することにより、必要に応じて昇降する。例えば、作業者が植付昇降レバーを操作したり、植え付け作業中に走行車体2が圃場の端に到達して、作業者がハンドル52を回動させたりした場合等に、苗植付部60は昇降する。
また、植え付け作業は、走行車体2で圃場内を走行しながら行うが、走行車体2を走行させるための駆動力は、エンジン20で発生した動力によって主に後輪10を回転させることによって発生させる。後輪10が有するリム13の外周面には、ラグ14が配設されているため、後輪10が回転した際には、ラグ14が圃場に入り込みながら回転する。このため、後輪10は圃場面で空回りをすることなく回転して駆動力を発生し、走行車体2は、この後輪10で発生する駆動力によって走行する。
この後輪10の左右間隔は、前輪5の左右間隔よりも狭くなっているため、走行車体2の走行時は、後輪10は前輪5の通過位置とは異なる通過位置で圃場面を移動する。このため、後輪10は、前輪5によって形成された轍に入り込むことが抑制されるため、圃場に深く入り込むことが抑制され、走行車体2は安定して圃場を走行する。
また、後輪10には、補助車輪100が装着されており、後輪10の回転時には、補助車輪100も後輪10の回転に伴って回転する。また、補助車輪100には、後輪10と同様に補助車輪用リム103の外周面に補助車輪用ラグ104が配設されているため、補助車輪100が回転した際には、補助車輪用ラグ104が圃場に入り込みながら回転する。このため、補助車輪100は圃場面で空回りをすることなく回転して駆動力を発生し、走行車体2は、この補助車輪100で発生する駆動力によって走行する。
その際に、後輪10のラグ14と補助車輪100の補助車輪用ラグ104とは、周方向における位置が同じ位置となって配設されているため、後輪10や補助車輪100の回転時は、後輪10のラグ14と補助車輪100の補助車輪用ラグ104とは同時に接地する。このため、後輪10と補助車輪100とで駆動力の発生タイミングが同じタイミングになるため、大きな駆動力を発生することができ、走行車体2は、この大きな駆動力によって走行することができる。
一方、後輪10のスポーク11と補助車輪100の補助車輪用スポーク101とは、周方向における位置が異なる位置となって配設されているため、圃場の泥は、後輪10のスポーク11と補助車輪100の補助車輪用スポーク101とに亘って大きな塊では付着せず、これらのスポークに対して別々に付着する。このため、後輪10や補助車輪100は、回転時に後輪10のスポーク11や補助車輪100の補助車輪用スポーク101が、圃場の泥の大きな塊を持ち上げることなく回転することができる。
また、走行車体2の後部に備えられる苗載置台65の下部には、フロート81が配設されており、走行車体2の走行時には、このフロート81が、圃場面上を滑走して圃場面を均しながら走行する。走行車体2の走行時には、後輪10のラグ14や補助車輪100の補助車輪用ラグ104が圃場面に入り込みながら走行するため、圃場には凹凸が発生するが、後輪10や補助車輪100の後方には、このフロート81が配設されているため、後輪10や補助車輪100の通過後の圃場の凹凸は、フロート81によって均される。
その際に、後輪10よりも機体外側に配設されている補助車輪100の補助車輪用ラグ104の外側端部は、左右方向におけるフロート81の左右幅内に位置しているため、後輪10のラグ14や補助車輪100の補助車輪用ラグ104による圃場の凹凸は、フロート81によって均される。これにより、圃場面は整地され、整地した圃場面に苗を植え付けることができる。
また、走行車体2の走行時に圃場の凹凸によって左右の後輪10の高さが変化する際には、センター軸128を中心としてローリングフレーム120が回動することにより、後輪10は、左右の後輪ギヤケース23と共に、上下方向の高さが変化する。
なお、走行車体2の前端寄りの位置には、予備苗枠90が設けられているが、この予備苗枠90は、左右方向における端部が、フロアステップ40の外側端部からはみ出さない位置となって設けられている。このため、作業者は、予備苗枠90が外部の障害物等に接触することをあまり気にする事なく走行させることができる。
このように圃場内を走行しながら行う植え付け作業を行う際における植付装置61の動作について説明すると、植付装置61は、植付装置61に備えられる植込杆62が回転しながら、植付装置61自身が回転する。これにより、植込杆62は、苗載置台65に載置されている苗を掻き取って保持し、保持した苗を圃場に植え付ける。
また、苗移植機1のエンジン20が停止している状態で、エンジン20を始動する際には、操作レバー35(図13、図14参照)を操作し、ベルト30による動力の伝達状態を切り替えて始動するのが好ましい。具体的には、エンジン20の始動時に、サイドステップ42に形成される孔部43に棒等を突っ込んで、孔部43の下方に位置する操作レバー35を下方に押す。
操作レバー35は、サイドステップ42の下方からテンションプーリ31の近傍にかけて配設されており、操作レバー35を下方に押した場合、操作レバー35は、テンションプーリ31を上方に移動させ方向に動作する。つまり、操作レバー35におけるテンションプーリ31側の端部側を下方に押す方向に操作をすると、操作レバー35は、ベルト30に対する付与力が小さくなり、ベルト30の張力が小さくなる方向にテンションプーリ31を移動させる方向に動作する。
これにより、エンジン20の始動時にエンジンプーリ32が回転しても、エンジンプーリ32はベルト30に対して空転し、エンジンプーリ32とベルト30との間で動力が伝達されなくなる。つまり、操作レバー35を操作し、テンションプーリ31を、エンジン20と油圧式無段変速装置26との間で動力が伝達されない非伝動状態に切り替えた場合には、エンジンプーリ32とベルト30との間で動力が伝達されなくなる。このように、エンジン20と油圧式無段変速装置26との間で非伝動状態になることにより、エンジン20の始動時における抵抗は小さくなるため、エンジン20は始動し易くなる。
エンジン20の始動時には、このようにサイドステップ42の孔部43から操作レバー35を操作した状態で、操縦部50でエンジン20の始動操作を行うことによって始動するのが好ましい。特に、寒冷地におけるエンジン20の冷間始動時は、潤滑油の流動性が低い事等に起因して、エンジン20は始動し難くなるため、このような状態でのエンジン20の始動時には、操作レバー35を操作し、テンションプーリ31を非伝動状態に切り替えてから始動する。これにより、容易に始動することができる。
エンジン20が始動したら、操作レバー35を操作していた力を除去する。これにより、テンションプーリ31は、ベルト30に対して付勢力を付与し、ベルト30の張力を大きくするため、エンジン20と油圧式無段変速装置26との間は、ベルト30によって動力が伝動される状態になる。このため、油圧式無段変速装置26は、エンジン20から伝達された動力により作動し、苗移植機1は運転可能な状態になる。
なお、エンジン20の始動時に、作業者が複数存在する場合は、一人がサイドステップ42の側方から操作レバー35を操作して、テンションプーリ31を非伝動状態に切り替えた状態で、他の作業者が操縦部50でエンジン20の始動操作を行ってもよい。
以上の苗移植機1は、補助車輪100と後輪10との間隔を調節可能としたことにより、泥の流動性の圃場条件に合わせて後輪10と補助車輪100の間隔を調節することにより、補助車輪100と後輪10とで泥を持ち運ぶことを防止することができる。これにより、圃場面に凹凸を生じさせることを抑制することができ、整地性を向上させることができる。また、補助車輪100を後輪10に装着する際に、後輪10のスポーク11と補助車輪用スポーク101とを同一位相に位置しないことにより、後輪10のスポーク11と補助車輪用スポーク101との間で、泥を持ち運ぶことを抑制することができる。このため、これによっても圃場面に凹凸を生じさせることを抑制することができ、整地性を向上させることができる。さらに、後輪10のラグ14と補助車輪用ラグ104とを同一位相に位置することにより、圃場面を掻くラグの面積を広くすることができるので、泥の粘度の高い圃場であっても、走行時の推進力を生じ易くすることができる。これにより、走行車体2を走行し易くすることができ、作業能率を向上させることができる。これらの結果、圃場を荒らすことを抑えつつ走行性能を向上させることができる。
また、補助車輪100の左右中心が、後輪10との間隔に関係無く最外側の植付条寄りの位置を通過するように構成することにより、後輪10と補助車輪100との間隔を常に確保することができる。この結果、より確実に後輪10と補助車輪100との間で泥を持ち運ぶことを抑制することができる。
また、補助車輪100と後輪10との間隔に関わらず、補助車輪用ラグ104の外側端部がフロート81の左右幅内に収まるようにすることにより、補助車輪100の走行跡の凹凸を、フロート81で均すことができる。この結果、苗の植付箇所に凹凸が生じることが防止することができ、苗の植付精度を向上させることができる。
また、前輪5のトレッドを後輪10のトレッドよりも広くしたことにより、前輪5の通過位置と後輪10の通過位置が完全に重なることを防止することができる。この結果、後輪10が圃場に大きく沈み込むことに起因して、走行車体2が過度に沈み込むことを防止することができ、湿田での走行性能を安定させることができる。
また、前輪5の外側端部や取付部材が、後輪10のラグ14の左右幅内からはみ出さないことにより、前輪5の走行跡も含む車輪の走行跡の凹凸を、フロート81で確実に均すことができる。この結果、より確実に苗の植付精度を向上させることができる。
また、予備苗枠90がフロアステップ40の外側端部からはみ出さない形状で形成することにより、予備苗枠90の接触を気にすることなく走行車体2を移動させることができるので、予備苗枠90、或いは予備苗枠90と接触したものが破損することを防止することができると共に、走行性能を向上させることができる。また、苗移植機1を収納するときや、苗移植機1をトラックの荷台等に収納する際でも、予備苗枠90が苗移植機1の外周からはみ出すことが無いので、苗移植機1の収納性や運搬性を向上させることができる。
また、バッテリ95を、予備苗枠90の前後中心よりも機体後側に寄せて配置してあるため、バッテリ95の着脱等のメンテナンス作業の際でも、予備苗枠90が邪魔になることなく作業を行うことができる。この結果、作業能率やメンテナンス性を向上させることができる。
また、ベルト30を切り替えるテンションプーリ31を設けたことにより、寒冷地での
冷間始動等にベルト30がエンジン20の始動抵抗になるときはベルト30を非伝動状態にすることができるため、苗移植機1の使用環境に関わらず、エンジン20の始動性を確保することができる。この結果、作業効率を向上させることができる。
また、フロアステップ40の下方に、テンションプーリ31を操作する操作レバー35を設けたことにより、操縦部50のフロントカバー51等を開けることなく、操作レバー35を操作してベルト30を非伝動状態にすることができる。この結果、作業能率をいっそう向上させることができる。この結果、作業能率やメンテナンス性を、より確実に向上させることができる。
また、メインステップ41をサイドステップ42よりも上方に配置し、テンションプーリ31をメインステップ41の下方に配置したことにより、テンションプーリ31を非伝動状態に操作したときにテンションプーリ31とメインステップ41が干渉することを防止することができる。この結果、より確実に非伝動状態にすることができるため、エンジン20の始動性を確保することができ、作業効率を向上させることができる。
また、網目状のサイドステップ42に、操作レバー35を操作する前後方向に長い孔部43を形成したことにより、エンジン20の始動時に、作業者はこの孔部43から、操作レバー35を操作することができる。この結果、エンジン20の始動時においてテンションプーリ31を非伝動状態にする場合でも、作業者は機体から下りることなく非伝動状態に切り替えることができ、作業効率を向上させることができる。
また、サイドステップ42の下方に操作レバー35があるため、操作レバー35は、機体外部の作業者が操作をする場合に、機体側方から操作することができる。この結果、操作レバー35を操作する作業者が機体上に上がる必要が無くなるため、作業能率を向上させることができる。
また、操作レバー35を操作する孔部43を大きな孔ではなく、前後方向に長い孔で形成したことにより、作業者がサイドステップ42上を移動する際に足を引っ掛け難くすることができる。この結果、作業者が機体上を移動し易くすることができ、いっそう作業能率を向上させることができる。
また、ローリングフレーム120の両端に配設されるサイドプレート122間を連結部材123で連結することにより、ローリングフレーム120の強度を向上させることができる。この結果、粘度の高い泥地の走行時にローリングフレーム120に抵抗がかかった場合でも、この抵抗によってローリングフレーム120が破損することを抑制することができ、耐久性を向上させることができる。