以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の略左側面図であり、図2は、図1に示された苗移植機1の略平面図である。本明細書においては、図1および図2に矢印で示されるように、苗移植機1の進行方向となる側を前方(F)とする。
図1および図2に示されるように、苗移植機1は、走行車両2と、走行車両2の後部に取り付けられた苗植付部63と、圃場を整地するための整地ロータ67を備えている。
図1に示されるように、走行車両2は、走行車両2の略中央に配置されたメインフレーム3と、前輪8および後輪9と、圃場において走行車両2の駆動力を向上させるため、後輪9の左右方向外側に、後輪9と同軸に回転可能に取り付けられた補助車輪10を備えている。すなわち、苗移植機1の進行方向に対して左側の後輪9は、図1において、左側の補助車輪10の苗移植機1の進行方向に対して右側に位置している。
図1および図2に示されるように、メインフレーム3の上方には、メインステップ61とサイドステップ62を備えたフロアステップ60が設けられ、フロアステップ60の上方には、走行車両2の前部に配置されたフロントカバー47と、フロントカバー47の後方に配置された操縦部49と、フロントカバー47に覆われ、苗移植機1を制御する制御部(図1および図2には図示せず)と、操縦部49の後方に配置された操縦席48とが設けられている。操縦部49は、走行車両2の操舵を行うステアリングハンドル55と、苗移植機1を操作するための操作部54を備えている。また、操作部54の近傍には、圧電ブザーにより構成された報知装置(図示せず)が設けられている。
図1および図2に示されるように、苗移植機1のフロアステップ60の前端部には、苗移植機1の幅方向中央部の位置を示すセンターマスコット286が設けられている。
図1および図2に示されるように、操縦席48の後方にはリアステップ89が設けられており、リアステップ89の後端部には後方手摺り109が設けられ、さらに、リアステップ89の左右両側を囲うように側方手摺り110が設けられている。
図1および図2に示されるように、リアステップ89の左右には、苗植付部63において植え付けられる苗に肥料を供給する左右一対の施肥装置26が設けられている。
図1に示されるように、操縦席48の下方にはエンジン7が設けられており、エンジン7から出力された駆動力は、フロアステップ60の下方に設けられたベルト式動力伝達機構(図示せず)および油圧式無段変速機25を介してミッションケース(図示せず)に伝動された後に、ミッションケース内の副変速機(図示せず)で変速されて、前輪8および後輪9への走行用の動力と、苗植付部63を駆動するための動力とに分けて伝動される。
走行用の動力は、ミッションケース7の左右に設けられた前輪ファイナルケース(図示せず)を介して前輪8に伝動される他、左右の後輪ギアケースおよびシャフト(図1および図2には図示せず)を介して後輪9に伝動されることにより走行車両2が前進または後進可能に構成されている。ここに、作業者がステアリングハンドル55を切ると、ステアリングハンドル55の操舵操作が操縦部49内に設けられた伝動機構を介して前輪ファイナルケース13に操舵力が伝達され、前輪8の向きを変更可能に構成されている。また、ステアリングハンドル55のシャフトにはステアリングセンサ(図1ないし図2には図示せず)が設けられており、ステアリングセンサは、ステアリングハンドル55が切られた角度を検出し、検出結果を走行車両2の制御部に出力するように構成されている。
また、後輪ギアケースに伝動された駆動力の一部は、左右一対の施肥装置26に伝達される。
一方、駆動用の動力は、走行車両2の後部に設けられた植付クラッチ(図示せず)に伝動され、植付クラッチが入れられた際に苗植付部63へ伝動される。
図3は、図1に示された苗移植機1の油圧式無段変速機25の近傍の略左側面図である。
図3に示されるように、油圧式無段変速機25は、トラニオン軸147を備え、HSTサーボモータ150によってトラニオン軸147の開度を電動で制御可能な、いわゆる電動HST(Hydro Static Transmission)として構成されている。
図2に示された主変速レバー(HSTレバー)55が操作された場合などのように、走行車両2の走行速度を調整する必要がある場合には、制御部は、HSTサーボモータ150を駆動し、クラッチ機構285のギア軸148、ロッド152およびトラニオンアーム(図示せず)を介してトラニオン軸147の開度を大きく、または小さくすることにより、走行車両2の走行速度を加速し、減速し、または停車させることができる。本実施態様においては、図1に示された主変速レバー55とトラニオンアームとは機械的に直接接続はされていない。
図1に示されるように、苗植付部63は、昇降リンク装置182を介して走行車両2に連結されている。昇降リンク装置182は、上部リンクアーム85および左右一対の下部リンクアーム86を備え、苗植付部63を昇降可能に構成されている。上部リンクアーム85および下部リンクアーム86の一端はメインフレーム3の後部に設けられたリンクベースフレーム136に取り付けられ、他端は苗植付部63の下部に位置する上下リンクアーム137に取り付けられている。そして、制御部により制御される電子油圧バルブ(図1および図2には図示せず)によって、昇降油圧シリンダ(図示せず)を油圧で伸縮させることにより、上部リンクアーム85が上下に回動し、苗植付部63を、苗植付部63の下端がメインフレーム3の底部と略同一の高さとなる非作業位置まで上昇させたり、苗植付部63が接地し、圃場に苗を植付けるのに好適な作業位置まで下降させたりすることができ、苗植付部63が非作業位置にある場合には、苗植付部63が圃場に接地しないため、走行車両2の走行を妨げることを防止することができる。
苗植付部63は、その下端部に、苗の植付前に圃場を整地し、苗植付部63による苗の植付性能を向上させるために設けられた計5つのフロートを備えている。
具体的には、苗植付部63は、図1に示され、苗植付部63の左右方向中央に配置されたセンターフロート66と、図2に示され、センターフロート66の左右に1つずつ配置されたサイドフロート79(第一のフロート)と、さらにサイドフロート79の左右方向外側に1つずつ配置されたサブフロート80(第二のフロート)を備えている。サイドフロート79は、サブフロート80に比して苗移植機1の進行方向に対する左右方向の幅が広く構成されている。
各フロート66,79,80は、それぞれに対応して設けられるフロートアーム75(左側のサブフロート80に対応するもののみ図1に図示)の後端部に取り付けられたフロート軸76(左側のサブフロート80に対応するもののみ図1に図示)によって、その前部が上下に揺動可能に支持されており、苗移植機1の走行と同時に、圃場上で各フロート66,79,80を滑走させることによって圃場を整地可能に構成されている。また、センターフロート66は圃場の凹凸に合わせてその前部が上下するように構成され、センターフロート66の前部に設けられ、ポテンショメータによって構成されたフロートセンサ(図1および図2には図示せず)は、センターフロート66前部の上下位置を検出し、制御部に出力するように構成されている。
制御部は、フロートセンサからの検出信号にしたがって、電子油圧バルブを制御して、昇降油圧シリンダを伸縮させ、苗植付部63を昇降させることにより、圃場への苗の植付深さを一定に維持することができる。
ここに、昇降リンク装置182の上部リンクアーム85とリンクベースフレーム136との連結部分には、リンクセンサ(図1および図2には図示せず)が設けられており、リンクセンサは、リンクベースフレーム136に対する上部リンクアーム85の相対角度を検出して、制御部に出力し、制御部によって、苗植付部63の現在の高さ(上下位置)を算出可能に構成されている。
図2に示されるように、苗植付部63の後部には5つの植付装置64が設けられている。各植付装置64は、伝動ケース68と、伝動ケース68に設けられた植付ケース70と、各植付ケース70に2つずつ取り付けられた植付具69を備えている。
各植付ケース70に取り付けられた2つの植付具69は前後方向に並び、互いに苗移植機1の進行方向に対する左右方向における位置が一致するように構成されている。各植付具69は、各フロートにより整地された圃場に、以下のようにして、苗を植え付けることができる。
図2に示されるように、本実施態様にかかる苗移植機1の苗植付部63には植付具69が左右方向に8列に並べて設けられている。そして、各植付ケース70が走行車両2の左右方向に延びる回動軸周りに回転されることにより、各植付ケース70に取り付けられた(前後に並ぶ)2つの植付具69は、交互に、苗植付部63の上部に設けられた苗載置台65に載置された土付きのマット状の苗(以下、「苗マット」という。)から、図2に示された苗取出口71に位置する苗を、その先端部(最前部)で取り出して圃場に移植可能に構成されている。
各植付ケースに取り付けられた(前後に並ぶ)2つの植付具69は、互いに苗移植機1の左右方向における位置が一致しているから、苗移植機1の進行方向に対する左右方向の位置が一致するように苗を1列に植え付けることができる。また、本実施態様にかかる苗移植機1の苗植付部63には植付具69が左右方向に8列に並べて設けられているから、走行車両2が圃場を走行する際、同時に8列分の苗を植付けることができる(このような苗の植え付け方法は「8条植」と呼ばれる。)。
図2に示されるように、苗載置台65は、その上面に苗送りベルト121を備えており、苗送りベルト121によって、苗載置台65に載置された苗マットを後方(下方)に移送することができ、苗載置台65は、走行車両2の左右方向に往復動することにより、苗取出口71に苗を一株ずつ供給可能に構成されている。さらに、左右方向に並ぶ各植付具69の先端部(いわゆる植付爪の機体幅方向中央部)から前方および後方に延ばした線(図2においては前方に延ばされた部分は図示せず)を94としたときに、互いに隣り合う線94同士の間隔は幅144に統一されているため、8列の苗を均等な間隔で植付けることができる。なお、本実施態様においては、幅144は通常の50cmよりも狭い25cmに構成されている。
図1に示されるように、左側の施肥装置26は、圃場上の各列に施肥する肥料を貯留可能で、前後方向に配置された4つの施肥ホッパ27a,27b,27e,27fを備えた施肥ホッパ群27と、各施肥ホッパ27a,27b,27e,27の下端部に取り付けられた4つの繰出装置34と、繰出装置34によって繰り出された肥料等を圃場面に移送するための4本の施肥ホース40と、左側の施肥装置26の前端部に設けられ、施肥ホース40によって肥料を移送するための搬送風を発生させるブロワ41と、ブロワ41に電力を供給するためのゼネレータ46と、各施肥ホース40の後端部に取り付けられた作溝器(図示せず)を備えている。施肥ホース40によって移送された肥料は、作溝器によって形成された圃場上の施肥溝に落とし込まれる。
図示されてはいないが、本実施態様においては、左側の施肥装置26の4本の施肥ホース40の後端部に取り付けられた作溝器はそれぞれ、センターフロート66、左側のサイドフロート79または左側のサブフロート80に固定されており、左側の施肥装置26は、苗植付部63の左側に位置する4列の植付具69によって植え付けられる苗の側方に肥料を供給可能に構成されている。
一方、右側の施肥装置26は、圃場上の各列に施肥する肥料を貯留可能で、前後方向に配置された4つの施肥ホッパ27a,27b,27e,27fを備えた施肥ホッパ群27と、各施肥ホッパ27a,27b,27e,27の下端部に取り付けられた4つの繰出装置34と、繰出装置34によって繰り出された肥料等を圃場面に移送するための4本の施肥ホース40と、各施肥ホース40の後端部に取り付けられた作溝器(図示せず)を備えている。施肥ホース40によって移送された肥料は、作溝器によって形成された圃場上の施肥溝に落とし込まれる。
図示されてはいないが、本実施態様においては、右側の施肥装置26の4本の施肥ホース40の後端部に取り付けられた作溝器はそれぞれ、センターフロート66、右側のサイドフロート79または右側のサブフロート80に固定されており、右側の施肥装置26は、ブロワ41から送られる搬送風を利用して、苗植付部63の右側に位置する4列の植付具69によって植え付けられる苗の側方に肥料を供給可能に構成されている。
左右一対の施肥装置26は、走行車両2における左右方向に離間して設けられており、したがって、作業者は、リアステップ89に乗って、苗マットを苗載置台65に容易に補給することができる。
ここに、従来の苗移植機1において、苗植付部63に、左右方向に並ぶ6列の植付具69が設けられ、走行車両2に、左右方向に離間して設けられた左右一対の施肥装置26が取り付けられている場合には、一対の施肥装置26はそれぞれ、3つの施肥ホッパおよび3つの繰出装置34を備えている。
一方、本実施態様においては、上述のように、苗植付部63には左右方向に並ぶ8列の植付具69が設けられ、一対の施肥装置26はそれぞれ、4つの施肥ホッパ27a,27b,27e,27fおよび4つの繰出装置34を備えている。そのため、苗植付部63が左右方向に並ぶ6列の植付具69を備え、施肥装置26が左右にそれぞれ3つの施肥ホッパ27および3つの繰出装置34を備えている従来の場合に比して、ブロワ41のファンの単位時間当たりの回転数が10%程度増加されるように構成されており、したがって、ブロワ41により発生される風量が10%程度増加されている。また、ブロワ41により発生される風量の増加に伴い、ゼネレータ46によって供給される発電量についても、左右にそれぞれ3つの施肥ホッパおよび3つの繰出装置34が設けられた場合のゼネレータの通常の発電量である60Aから75Aに増やして構成されている。
図1および図2に示されるように、走行車両2の前部には、苗載置台65に補充する苗を載置するための左右一対の予備苗載台120が設けられている。本実施態様においては、予備苗載台120は4段の台で構成され、フロアステップ60の下部に取り付けられた支持フレーム149に支持されている。
また、図1に示されるように、左側の予備苗載台120の下方には、苗移植機1が有する種々の装置で使用される電気を蓄電するバッテリー50が設けられている。
図4は、図1に示された苗移植機1の制御系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
図4に示されるように、苗移植機1の制御系は、苗移植機1全体の動作を制御する制御部87と、制御プログラムなどが格納されたROM92および種々のデータが格納されるRAM91を備えている。
図4に示されるように、苗移植機1の検出系は、ステアリングハンドル55が切られた角度を検出するステアリングセンサ58と、後輪ギアケースに内装され、後輪9の回転数をカウントする後輪回転センサ52と、センターフロート66の前部に設けられ、センターフロート66前部の上下位置を検出するフロートセンサ59と、植付クラッチの入切の状態を検出する植付クラッチセンサ205と、昇降リンク装置182の上部リンクアーム85とリンクベースフレーム136との連結部分に設けられ、リンクベースフレーム136に対する上部リンクアーム85の相対角度を検出するリンクセンサ90と、左右の施肥装置26の繰出量検知センサ39を備えている。
図4に示されるように、苗移植機1の入力系は、操作部54を備えており、操作部54は、主変速レバー55と、苗植付部63を昇降させるための苗植付部昇降レバー57を備えている。
図4に示されるように、苗移植機1の駆動系は、操縦席48の下方に設けられたエンジン7と、苗植付部63を昇降させる苗植付部昇降手段として機能し、苗植付部63を昇降させる際に油圧シリンダを伸縮させる電子油圧バルブ88と、油圧式無段変速機25内のトラニオン軸147の開度を調整するためのHSTサーボモータ150と、施肥クラッチの状態を切換えるための施肥クラッチモータ123と、植付クラッチの入切の状態を切り換える植付クラッチモータ204と、圧電ブザーにより構成された報知装置の圧電振動板151を備えている。
また、本実施態様においては、以下のようにして、左側の後輪9に補助車輪10が固定される。
図5は、図1に示された苗移植機1の左側の後輪9および補助車輪10の略斜視図であり、後輪9への補助車輪10の取り付け方法を示す説明図である。
図5に示されるように、左側の後輪9は、その回転中心172に位置するハブ169と、外周部に位置するリム167と、ハブ169とリム167とを連結する3本のスポーク168と、ハブ169に取り付けられた略円筒状をなすシャフト連結部171と、後輪9による走行車両2の推進力を向上させるため、リム167に所定の間隔で取り付けられた複数のラグ170を備えている。
複数のラグ170は、後輪9の回転軸に平行な方向における幅が後輪9のリム167よりも広い幅に構成された略平板状をなす部材であり、後輪9のリム167に対して傾斜している。
ハブ169には、シャフト連結部171の長手方向と略平行にハブ169を貫通する複数の孔146が形成されている。
シャフト連結部171は、後輪9に接続されるシャフト(図1ないし図5には図示せず)を受ける中空部分196を内部に有している。
図5に示されるように、補助車輪10は、その回転中心173に設けられたハブ13と、外周部に位置するリム11と、ハブ13とリム11とを連結する3本のスポーク12と、ハブ13に取り付けられた略円筒状の取付軸連結部15と、補助車輪10による走行車両2の駆動力を向上させるため、リム11に所定の間隔で取り付けられた複数のラグ14を備えている。また、後輪9の外径と補助車輪10の外径は、ほぼ同じ大きさに構成されている。
複数のラグ14は、補助車輪10の回転軸に平行な方向における幅が補助車輪10のリム11よりも広い幅に構成された略板状をなす部材であり、補助車輪10のリム11に対して傾斜している。
取付軸連結部15には、中空部分128と、径方向に貫通する孔153が形成されている。
本実施態様においては、補助車輪10を後輪9に取り付けるために補助車輪取付軸16が用いられ、図5に示されるように、補助車輪取付軸16は、略円板状をなす後輪連結部17と、後輪連結部17の一方の面に固定された略軸状の補助車輪連結部18を備えている。
補助車輪連結部18は、補助車輪10の取付軸連結部15の中空部分128に挿入可能な外径を有しており、補助車輪連結部18を径方向に貫通する孔195が形成されている。
一方、後輪連結部17には、周方向に沿って、複数の孔194が形成されている。
左側の後輪9に補助車輪10を取り付ける場合には、まず、後輪9のハブ169に形成された孔146と、後輪連結部17の孔146に対応する位置に形成された孔194にボルト174を挿通させた状態で、ボルト174にナット190を螺合させて、後輪9に補助車輪取付軸16を固定する。
次いで、補助車輪取付軸16の補助車輪連結部18を補助車輪10の取付軸連結部15の中空部分128に挿入し、補助車輪連結部18に設けられた孔195と、取付軸連結部15に径方向に形成された孔153にボルト175を挿通させた状態で、ボルト175にナット191を螺合させて、補助車輪取付軸16に補助車輪10を固定することによって、補助車輪10を後輪9に取り付けることができる。
なお、図5を用いて左側の後輪9の構成と、左側の後輪9に補助車輪取付軸16を用いて補助車輪10を取り付ける方法について説明を加えたが、右側の後輪9も左側の後輪9と同様に構成されており、右側の後輪9に補助車輪取付軸16を用いて補助車輪10を取り付ける場合においても、同様の方法により取り付けを行うことができる。
図6は、図1に示された苗移植機1の左右の後輪9と、植付具69との位置関係を示す説明図であり、図6(a)は、図1に示された苗移植機1の左右の後輪9のトレッド幅が、左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ状態に設定された場合における左右の後輪9と植付具69との位置関係を示す説明図であり、図6(b)は、図1に示された苗移植機1の左右の後輪9のトレッド幅が、左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態に設定された場合における左右の後輪9と植付具69との位置関係を示す説明図である。
また、図7は、図1に示された苗移植機1の左側のシャフト19の近傍の略部分断面平面図であり、図7(a)は、図1に示された苗移植機1の左右の後輪9が、4列の植付具69を跨ぐトレッド幅に設定された場合における左側のシャフト19の近傍の略部分断面平面図であり、図7(b)は、図1に示された苗移植機1の左右の後輪9が、6列の植付具69を跨ぐトレッド幅に設定された場合におけるシャフト19の近傍の略部分断面平面図である。
従来の苗移植機においては、左右の後輪のトレッド幅(左側の後輪の接地面の左右方向における中心と、右側の後輪の接地面の左右方向における中心との距離)は、苗植付部の下部に機体幅方向に並べて設けられた4列の植付具を跨ぐ幅に構成されており、圃場の状態が悪い場合には、苗移植機が走行中に左右に傾倒してしまうという問題があった。
このような事態を防止するために、本実施態様にかかる苗移植機1は、左右の後輪9のトレッド幅を、機体幅方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ幅と6列の植付具69を跨ぐ幅に切換え可能なシャフトを備えている。
したがって、圃場の状態が悪い場合には、以下のようにして、左右の後輪9のトレッド幅を、4列の植付具69を跨ぐ幅から6列の植付具69を跨ぐ幅に切換えることにより、苗移植機1の機体幅方向のバランスを向上させ、走行中に左右に傾倒してしまう事態を確実に防止することができる。
図6には、左右の後輪9、補助車輪10およびシャフト19などを上方から見た状態が示されている(略平面断面図)。
図6(a)および図6(b)に示されるように、左右の後輪9はそれぞれ、左右の後輪ギアケース51から走行車両2の左右方向外側に延びるシャフト19の外側端部に固定されており、左右の後輪ギアケース51は、走行車両2の左右方向中央部に設けられたセンター軸93を中心に回転可能なローリングフレーム53の両端部に取り付けられている。
図7(a)に示されるように、左右の後輪9が4列の植付具69を跨ぐトレッド幅に設定された場合においては、シャフト19は車軸20を備え、図7(b)に示されるように、左右の後輪9が6列の植付具69を跨ぐトレッド幅に設定された場合においては、シャフト19は車軸20に加えて、延長車軸22を備えている。
図7(a)および図7(b)に示されるように、左右の後輪9が、4列の植付具69を跨ぐトレッド幅に設定された場合においても、6列の植付具69を跨ぐトレッド幅に設定された場合においても、図5に示された左側の後輪9の回転中心172に設けられたシャフト連結部171の中空部分196にシャフト19を挿入した後に、シャフト19を径方向に貫通する孔(図示せず)と、シャフト連結部171を径方向に貫通する孔(図示せず)とを周方向に位置合わせした状態で、ボルト176およびナット192を用いることにより、シャフト19に左側の後輪9を固定することができる。
図7(a)および図7(b)に示されるように、車軸20は、略円筒状をなす中空部材であり、中空部分(内部)21を備えている。また、図7(b)に示されるように、延長車軸22は、車軸20の中空部分21に挿入するのに適した外径サイズに構成された車軸連結部23と、後輪9のシャフト連結部171の中空部分196に挿入するのに適した外径サイズに構成された車輪連結部24を備えている。車輪連結部24の外径サイズは、車軸連結部23の外径サイズに比して大きく、車軸20の外径サイズと略同径に構成されている。
また、車軸連結部23には、径方向に貫通する孔(図示せず)が設けられており、車軸20の後輪9側の端部と、車輪連結部24の後輪ギアケース51側の端部とが接触するまで、車軸20の中空部分21に、延長車軸22の車軸連結部23を挿入し、延長車軸22を回転させ、車軸20に設けられた孔(図7(a)に示されたボルト176が挿通する孔に同じ)と、車軸連結部23に設けられた孔とを周方向に位置合わせした状態で、図7(b)に示されるように、ボルト177およびナット193を用いて車軸20に延長車軸22を固定することにより、シャフト19の長さを延長可能に構成されている。
ここに、図7に示されるように、延長車軸22の車輪連結部24の苗移植機1の左右方向の幅(長さ)は、左右方向に並ぶ各植付具69の先端部(最前部)から前方および後方に延ばした線94同士の間隔幅144(図2および図6参照)と同一の幅144に構成されている。
したがって、図7(b)に示されるように、車軸20に延長車軸22を固定した場合には、車輪連結部24の左右方向(機体幅方向)の幅144の分だけ、シャフト19の長さ(幅)が延長される。また、左右の車軸20および延長車軸22は同様に構成されており、図6(b)に示されるように、左右の車軸20にそれぞれ、延長車軸22が固定された場合には、左右の後輪9のトレッド幅は、幅144の2つ分だけ広げられるため、図6(a)および図6(b)に示されるように、左右の後輪9のトレッド幅は、4本の線94を跨ぐ幅(機体幅方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ幅)から、6本の線94を跨ぐ幅(左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ幅)に変更される。
なお、本実施態様においては、左右の後輪9のトレッド幅は、機体幅方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ幅に設定された場合には、100cmに構成されており、機体幅方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ幅に設定された場合には、150cmに構成されている。
一方、一対の後輪9のトレッド幅を、隣接する6列の植付具69を跨ぐ状態から、隣接する4列の植付具69を跨ぐ状態に切換える場合には、まず、図7(b)に示されたボルト176およびボルト177からナット192および193を取り外し、延長車軸22をシャフト連結部171および車軸20から引抜く。
次いで、図7(a)に示されるように、シャフト連結部171に車軸20を挿通した状態でボルト176およびナット192を用いてシャフト19に後輪9を固定することにより、一対の後輪9のトレッド幅を、隣接する4列の植付具69を跨ぐ状態に切換えることができる。
また、図5および図6(a)に示されるように、補助車輪10のハブ13は、機体幅方向において、リム11よりも外側に位置し、補助車輪10のスポーク12は、補助車輪10の回転中心173に向かって、後輪9から離間するように機体幅方向外側に湾曲した形状をなしている。換言すれば、補助車輪10のスポーク12の補助車輪取付軸16に近接する部分(図5に示された回転中心173に近接する部分)は、リム11に近接する部分よりも機体幅方向外側に位置している。
さらに、図6(a)に示されるように、補助車輪取付軸16の近傍(後輪9および補助車輪10の回転中心172および173の近傍)において、後輪9の各スポーク168と補助車輪10の各スポーク12との機体幅方向の距離145(換言すれば、後輪9のスポーク168における後輪9の回転中心172に近接する部分と補助車輪10のスポーク12における補助車輪10の回転中心173に近接する部分との機体幅方向の距離145)が、機体幅方向に隣り合った植付具69同士の間隔144よりも大きく構成されており、後輪9のスポーク168と補助車輪10のスポーク12との間に泥が挟まることの防止が図られている。
なお、本実施態様においては、補助車輪10のスポーク12におけるリム11に近接する部分の機体幅方向中央部と、後輪9のスポーク168におけるリム167に近接する部分の機体幅方向中央部との距離は、隣り合った植付具69同士の間隔144と同一の幅(25cm)に構成されており、後輪9および補助車輪10のリム167および11の近傍においても、後輪9のスポーク168と補助車輪10のスポーク12との間に泥が挟まることの防止が図られている。
図8は、図1に示された苗移植機1の左右の後輪9のトレッド幅が、左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ状態に設定された場合に、各フロートとの位置関係を示す略平面断面図であり、図9は、図1に示された苗移植機1の左右の後輪9のトレッド幅が、左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態に設定された場合に、各フロートとの位置関係を示す略平面断面図である。
図8に示されるように、左右の後輪9のトレッド幅が、左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ状態に設定されている場合には、左右の後輪9は苗植付部63のサイドフロート79の前方に位置するため、圃場上の左右の後輪9の走行跡の凹凸をサイドフロート79によって均すことができ、苗植付部63による苗の植付精度を向上させることができる。
また、補助車輪取付軸16を用いて、左右の後輪9における苗移植機1の進行方向に対する左右方向外側に取り付けられた補助車輪10は、苗植付部63のサブフロート80の前方に位置する。したがって、圃場上の左右の補助車輪10の走行跡の凹凸をサブフロート80によって均すことができ、苗植付部63による苗の植付精度を向上させることができる。
これに対し、図9に示されるように、車軸20に延長車軸22が連結されて、左右の後輪9のトレッド幅が、左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態に設定されている場合には、図8に示されたフロートの配置の状態では、後輪9は、サブフロート80の前方に位置することとなり、サイドフロート79に比して幅が狭く構成されたサブフロート80では、左右の後輪9の走行跡の凹凸を均すことができず、苗植付部63による苗の植付精度が低下してしまう。
ここに、本実施態様においては、以下のようにして、サイドフロート79とサブフロート80を互いに入れ換えてフロート軸76(図1参照)に取り付け可能に構成されている。
まず、各フロート軸76を各フロートアーム75から苗移植機1の幅方向に引抜くことにより、フロート軸76に吊るされていた一対のサイドフロート79と一対のサブフロート80を苗植付部63の下部から取り外す。
次いで、サイドフロート79とサブフロート80の位置を互いに入れ換えた状態(当初サイドフロート79が取り付けられていたフロートアーム75にサブフロート80を配置し、サブフロート80が取り付けられていたフロートアーム75にサイドフロート79を配置した状態)で、各フロート79または80の上部に形成された機体左右方向に貫通する孔(図示せず)と、各フロートアーム75に形成された機体左右方向に貫通する孔(図示せず)とを、機体左右方向から見て位置合わせする。
その後に、各フロート軸76をそれぞれの孔に機体幅方向に挿通することにより、各サイドフロート79および各サブフロート80をフロートアーム75に取り付けることができる。
したがって、左右の後輪9のトレッド幅が、左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態に設定された場合には、図9に示されるように、サイドフロート79とサブフロート80の位置を入れ換え、左右のサブフロート80の左右方向外側の位置にサイドフロート79を取り付けることにより、一対の後輪9の後方の位置にそれぞれサイドフロート79を配置し、圃場上の、左右の後輪9の走行跡の凹凸を均すことができる。
図10(a)は、図1に示された苗移植機1の左側に設けられた施肥ホッパ群27の作成段階を示す略右側面模式図であり、図10(b)は、図1に示された苗移植機1の左側に設けられた施肥ホッパ群27の略右側面図であり、図10(c)は、図1に示された苗移植機1の左側に設けられた施肥ホッパ群27の略平面図である。
図10(b)に示されるように、苗移植機1の左側に設けられた施肥ホッパ群27は、一体的に形成された4つの施肥ホッパ27a、27b、27e、27fと、各施肥ホッパ27a、27b、27e、27fを覆う蓋28と、施肥装置26を支持する施肥フレーム(図1ないし図10(b)には図示せず)に固定するための支柱33を備えたものであり、本実施態様においては、以下のようにして作成されている。
まず、図10(a)に示されるように、植付具69を左右方向に6列分備えた従来の苗移植機1に設けられる2つの施肥ホッパ群271、272を用意する。2つの施肥ホッパ群271,272は同一の構成であり、一方の施肥ホッパ群271は、一体的に形成された3つの施肥ホッパ27a,27b,27cと、各施肥ホッパ27a,27b,27cを覆う蓋281を備えている。
蓋281は、各施肥ホッパ27a,27b,27c同士の境界部付近において切れ目を有さずに連続的に形成されており、施肥ホッパ27aを覆う領域28aと、施肥ホッパ27bを覆う領域28bと、施肥ホッパ27cを覆う領域28cを備えている。
他方の施肥ホッパ群272は、一体的に形成された3つの施肥ホッパ27d,27e,27fと、各施肥ホッパ27d,27e,27fを覆う蓋282を備えている。
蓋282は、各施肥ホッパ27d,27e,27f同士の境界部付近において切れ目を有さずに連続的に形成されており、施肥ホッパ27dを覆う領域28dと、施肥ホッパ27eを覆う領域28eと、施肥ホッパ27fを覆う領域28fを備えている。
次いで、図10(a)にバツ印で示されるように、一方の施肥ホッパ群271の端部に位置する施肥ホッパ27cを、施肥ホッパ27bと施肥ホッパ27cとの境目の部分でカットし、さらに、蓋281における施肥ホッパ27cを覆う領域28cをカットする。
また、他方の施肥ホッパ群272の端部に位置する施肥ホッパ27dを、施肥ホッパ27dと施肥ホッパ27eとの境目の部分でカットし、さらに、蓋282における施肥ホッパ27dを覆う領域28dをカットする。
互いに端部に位置する施肥ホッパ27c,27dをカットした後に、2つの施肥ホッパ群271および272におけるカットした断面同士を当接させた状態(施肥ホッパ27bと施肥ホッパ27eを当接させた状態)で、施肥ホッパ27bと施肥ホッパ27eとの下面および側面における継ぎ目を、図10(b)に示されるように、外側から、鉄によって作られているステー29およびリベット(図示せず)を用いて連結させる。
さらに、内側の当接部分にガスケット材(図示せず)を塗布し、その上からゴムパッキン(図示せず)をあて、継ぎ目に隙間が発生しないように、施肥ホッパ27bと施肥ホッパ27eをつなぎ合わせる。これにより、施肥ホッパ27bと施肥ホッパ27eとの継ぎ目から肥料が漏れたり、肥料が継ぎ目(当接部分)に引っかかったりする事態を防止することができる。
一方、領域28cをカットした蓋281と、領域28dをカットした蓋282については、互いにカットした断面同士を当接させた状態で、外側表面における当接部分(継ぎ目)にガスケット材を塗布し、ゴムパッキンを当てた上から、図10(c)に示されるように、鉄によって作られているステー32およびリベット(図示せず)を用いてつなぎ合わせる。ガスケット材を塗布してゴムパッキンを当てることにより、領域28bと領域28eとの継ぎ目から雨水が施肥ホッパ群27内へ浸入することを防止することができる。
この作成方法により、大きな資金を必要とせずに、苗移植機1の左側に設けられた施肥ホッパ群27を作成することができる。
以上、走行車両2の左側に設けられた施肥ホッパ群27の作成方法について詳細に説明を加えたが、右側に設けられた施肥装置26の施肥ホッパ群27についても同様の方法により作成されている。
図11は、図1に示された苗移植機1の繰出装置34の近傍の略背面図である。また、図12は、図1に示された苗移植機1のブロワ41の近傍の略平面図であり、ブロア9dからの搬送風の流れを示す説明図である。
図11に示されるように、各施肥ホッパ27a,27b,27e,27fの下端部に取り付けられた繰出装置34は、走行車両2の前後方向に延びる繰出軸36と、繰出軸36によって回動される繰出ロール35と、繰出ロール35の下方に取り付けられ、左右に開口部を有する略T字状部38とを備えている。各施肥ホッパ27a,27b,27e,27fから流下した肥料等は、繰出ロール35に設けられた複数の繰出溝37に入った状態で、繰出軸36とともに繰出ロール35が回動されることにより、繰出溝37からその略T字状部38に繰り出される。
図12に示されるように、ブロワ41が発生させた搬送風は、ブロワ41に連結されたエアチャンバー42に供給された後に、その一部が各繰出装置34に接続された搬送風分岐ジョイント45を介して、図11に示されるように、各繰出装置34の略T字状部38に取り込まれることにより、各施肥ホッパ27a,27b,27e,27fから繰り出された肥料等が、略T字状部9bの左右方向外側に接続された施肥ジョイント43へ送り出される。施肥ジョイント43へ送り出された肥料等は、図1に示されるように、施肥ジョイント43に接続された施肥ホース40へ搬送される。
図12に示されるように、ブロワ41が発生させた搬送風のうち、各繰出装置34に接続された搬送風分岐ジョイント45に取り込まれず、エアチャンバー42内を真っすぐに進んだ搬送風は、エアチャンバー42に接続された連結ダクト44を介し、右側の施肥装置26のエアチャンバー42に供給され、同様に、右側の施肥装置26の各繰出装置34によって繰り出された肥料等を、施肥ジョイント43を介して施肥ホース40に送り出すように構成されている。
図13(a)は、図1に示された苗移植機1の施肥装置26への伝動機構および後輪9の近傍の略背面図であり、図13(b)は、図1に示された苗移植機1の施肥装置26への伝動機構の略右側面図である。
図13(b)に示されるように、右側の後輪ギアケース51には施肥クラッチ装置155が取り付けられており、施肥クラッチ装置155に設けられた施肥クラッチモータ123(図4に図示)の駆動によって、エンジン7からの駆動力が出力回動軸164に伝達される状態と伝達されない状態とに切り換え可能に構成されている。
図13(a)および図13(b)に示されるように、施肥クラッチ装置155から出力回動軸164に伝達された駆動力は、第一施肥伝動ロッド154に伝えられた後に、入力側第一揺動アーム156を介して中継部材157に伝動される。
図13(a)に示されるように、中継部材157に伝動された駆動力は、中継部材157の右側端部から中間伝動部158を介して第二施肥伝動ロッド159と、リアステップ89(図2に図示)の下方に設けられた施肥駆動軸162とに伝動される。
第二施肥伝動ロッド159に伝動された駆動力は、右側の一方向クラッチ161の出力軸から右側の繰出伝動ギア160へと伝えられた後に、最終的に右側の施肥装置26の4つの繰出装置34に伝動され、各繰出装置34の繰出軸36(図11に図示)が回転される。
一方、施肥駆動軸162に伝動された駆動力は、図13(a)および図13(b)に示されるように、第三施肥伝動ロッド163から左側の一方向クラッチ161へ、左側の一方向クラッチ161の出力軸から左側の繰出伝動ギア160へと順に伝えられた後に、最終的に左側の施肥装置26の4つの繰出装置34に伝動され、各繰出装置34の繰出軸36(図11に図示)が回転される。
中間伝動部158には、図13(b)に示されるように、繰出量調整軸165が連結されており、繰出量調整軸165の後端側は、中間伝動部158の揺動支点283に連結されている。
一対の施肥装置26の施肥量を調節する場合には、繰出量調整軸165の前端部に設けられた調整ハンドル166(図13(b)に図示)を時計回りに、または反時計回りに回動させることにより、揺動支点283の位置が前後方向に移動されて、中間伝動部158における駆動アーム284の揺動量が変更され、第二施肥伝動ロッド159へ伝えられる上下揺動量と、第三施肥伝動ロッド163(図13(a)に図示)へ伝えられる上下揺動量が増減される。その結果、図11に示された繰出ロール35の回転角度が小さく、または大きくなり、走行車両2の左右に設けられた各繰出装置34から繰り出される施肥量が減少され、または増大される。
調整ハンドル166には単位面積あたりの施肥量を示す目盛り197が取り付けられており、施肥量を確認しながら調整ハンドル166を回動させることにより、任意の施肥量に設定することができる。
また、繰出軸36(図11に図示)を駆動するための施肥駆動軸162には、その回転数を検出する繰出量検知センサ39(図4に図示)が設けられており、制御部87は、一対の施肥装置26による施肥量を検出する施肥量検出手段として機能する繰出量検知センサ39からの出力データおよび後輪回転センサ52からの出力データに基づいて、圃場の単位面積当たりの施肥量(走行面積・植付面積当たりの施肥量)を算出するように構成されている。
本実施態様においては、走行車両2の走行中に一対の施肥装置26による肥料の供給が行われている場合に、制御部87は、算出された単位面積当たりの施肥量が70kg/反以上であるか否かを判定する。
その結果、算出された単位面積当たりの施肥量が70kg/反以上であると判定した場合には、走行車両2の車速を調整する車速調整手段として機能するHSTサーボモータ150を制御し、トラニオン軸147の開度を小さくすることにより、走行車両2の走行速度を、通常の走行速度である1.8m/sから2割落とすように構成されている。
施肥装置26の繰出軸36を駆動させる動力は、図13に示されたように、後輪ギアケース51から伝動されるため、単位面積当たりの施肥量が多い場合には、制御部87によって自動的に走行車両2の走行速度を落とすことにより、各繰出装置34における単位時間当たりの肥料の繰出量を減少させ、施肥ホース40内で肥料の詰まりが発生する事態を防止することができる。
さらに、図4に示された苗植付部昇降レバー57からの出力信号に基づき、制御部87によって電子油圧バルブ88が制御され、苗植付部63が上昇される際や、苗移植機1が反転され、ステアリングハンドル55が切られた角度を検出するステアリングセンサ58(図4に図示)からの出力データに基づき、制御部87によって電子油圧バルブ88が制御され、自動的に苗植付部63が上昇される際には、制御部87は、まず、植付具69による苗の植付けを停止させると同時に、繰出量検知センサ39および後輪回転センサ52(図4参照)からの出力データに基づいて、一対の施肥装置26による単位面積当たりの施肥量を算出するように構成されている。
次いで、制御部87は、算出された一対の施肥装置26による単位面積当たりの施肥量が70kg/反以上であるか否かを判定する。
その結果、算出された単位面積当たりの施肥量が、70kg/反以上である場合には、制御部87は、苗植付部63の上昇を開始し、リンクセンサ90からの出力データに基づいて苗植付部63の高さを算出して、苗植付部63が400mm以上上昇された時点で、施肥クラッチモータ123を制御して施肥クラッチ装置155を切り状態に切換え、一対の施肥装置26による肥料の供給を停止させる。すなわち、苗植付部63の上昇が開始させてから、苗植付部63が400mm以上上昇されるまでの間は、一対の施肥装置26による肥料の供給が継続される。また、このとき、制御部87は、報知装置の圧電振動板151にパルス信号を印加してブザーを鳴らし、作業者に警告する。
これに対し、繰出量検知センサ39および後輪回転センサ52(からの出力データに基づき算出された一対の施肥装置26による単位面積当たりの施肥量が70kg/反に満たない場合には、制御部87は、電子油圧バルブ88を制御して苗植付部63の上昇を開始させると同時に施肥クラッチモータ123を制御して施肥クラッチ装置155を切り状態に切換え、一対の施肥装置26による肥料の供給を停止させる。
また、本実施態様においては、上述のように、左右の後輪9のトレッド幅が、左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ状態と、左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態との間で切換え可能に構成されている。そのため、施肥駆動軸162は、以下のように、メインフレーム3に支持され、以下のように、一対の施肥装置26を支持する一対の施肥フレームとメインフレーム3とが連結されている。
図14は、図1に示された苗移植機1のメインフレーム3および一対の施肥フレーム113の近傍の略背面図である。
図14に示されるように、メインフレーム3は、走行車両2の下部に設けられた下部フレーム5と、下部フレーム5の上方に設けられ、左右方向に延びるリアフレーム4と、リアフレーム4を支持する補強プレート6を備えている。本実施態様においては、リアフレーム4は2本設けられており、互いに同じ高さ位置に前後に並んだ状態で設けられているため、図14には2本のうちの後側に位置するリアフレーム4が示されている。
図14に示されるように、走行車両2の左右の後部に設けられた施肥フレーム113はそれぞれ、前後方向に延び、左右の施肥装置26が取り付けられた取付角パイプ115と、上下方向に延びる連結パイプ116と、前後方向に延び、それぞれ左右方向内側と外側に設けられた内側連結プレート119および外側連結プレート117と、左右方向に延び、内外の連結プレート119,117を連結する連結パイプ118と、連結パイプ118の後方に配置され、リアフレーム4に連結された連結フレーム114を備えている。取付角パイプ115と外側連結プレート117は、連結パイプ116によって連結されている。また、本実施態様においては、連結フレーム114は、リアフレーム4の本数に合わせて2本設けられており、互いに同じ高さ位置に前後に並んだ状態で設けられているため、図14には2本のうちの後側に位置する連結フレーム114のみが示されている。
図14に示されるように、施肥フレーム113の連結フレーム114は、メインフレーム3のリアフレーム4に連結支持されており、リアフレーム4と連結フレーム114との連結部分183の左右方向の位置は、左右の後輪9のトレッド幅が、左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態に設定された場合における実線で示された左右の後輪9と、左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ状態に設定された場合における破線で示された左右の後輪9との間に位置するように構成されている。したがって、左右の後輪9のトレッド幅がいずれの状態に設定された場合であっても、リアフレーム4と連結フレーム114との連結部分183は、後輪9の上方に位置せず、後輪9に泥が付着した状態で走行することにより連結部分183に泥がかかり、連結部分183が摩耗してしまう事態が防止されている。
一方、図13(a)に示された施肥駆動軸162は、左右方向に並ぶ第1軸受129ないし第6軸受134の6つの軸受に回転可能に取り付けられており、6つの軸受のうち、苗移植機1の進行方向に対する左右方向中央側に位置する第1ないし第4軸受129ないし132は、図14に示されたリアフレーム4に固定されている。また、苗移植機1の進行方向に対し、施肥駆動軸162の左右の端部に取り付けられた第5軸受133および第6軸受134は、図14に示された連結フレーム114に固定されている。すなわち、施肥駆動軸162は、リアフレーム4および連結フレーム114によって、第1軸受129ないし第6軸受134の6つの軸受を介して、回転可能に支持されており、施肥駆動軸162の振れの低減と、施肥駆動軸162の耐久性の向上および施肥性能の向上が図られている。
図13(a)に示されるように、第3軸受131と第4軸受132の左右方向の位置はそれぞれ、一対の後輪9のトレッド幅が、苗移植機1の進行方向に対する左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態に設定された場合の実線で示された一対の後輪9と、左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ状態に設定された場合の破線で示された左右の後輪9との間に位置するように構成されている。したがって、左右の後輪9のトレッド幅がいずれの状態に設定された場合であっても、第3軸受131および第4軸受132は後輪9の上方に位置せず、後輪9に泥が付着した状態で走行することにより第3軸受131および第4軸受132に泥がかかり、第3軸受131および第4軸受132が摩耗してしまう事態が防止されている。
本実施態様によれば、図5または図6(a)に示されるように、補助車輪10のスポーク12は、補助車輪10の回転中心173に向かって、後輪9から離間するように機体幅方向外側に湾曲した形状をなし、さらに、図6(a)に示されるように、後輪9の各スポーク168における後輪9の回転中心172に近接する部分と、補助車輪10の各スポーク12における補助車輪10の回転中心173に近接する部分との機体幅方向の距離145が、機体幅方向に隣り合った植付具69同士の間隔144よりも大きく構成されているから、後輪9のスポーク168と補助車輪10のスポーク12との間に泥が挟まり、苗移植機1が走行できなくなる事態を防止することができる。
また、本実施態様によれば、図6(b)または図9に示されるように、車軸20に延長車軸22を固定し、左右のシャフト19を長くすることにより、一対の後輪9のトレッド幅を、左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ幅(本実施態様においては隣接する植付具69同士の幅が25cmに設定されており、100cmのトレッド幅)から、6列の植付具69を跨ぐ幅(本実施態様においては150cmのトレッド幅)に拡げることができるから、機体幅方向のバランスを向上でき、圃場の状態が悪い場合であっても、苗移植機1が走行中に左右方向に傾いてしまう事態を防止することができる。
さらに、本実施態様によれば、図7(b)に示されるように車軸20に延長車軸22を固定し、一対の後輪9を、苗移植機1の進行方向に対する左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐトレッド幅を有する状態(図8に図示)から、左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐトレッド幅を有する状態(図9に図示)に切換えた場合においては、一対の後輪9が転動した跡を整地する一対のサイドフロート79と、一対の補助車輪10が転動した跡を整地する一対のサブフロート80とを入れ換えて取り付けることにより、一対の後輪9の後方に、サブフロート80よりも幅が広く構成された一対のサイドフロート79を配置し、一対の後輪9の転動した跡を一対のサイドフロート79により整地することができるから、苗植付部63による苗の植付性能を向上させることができる。
さらに、本実施態様によれば、図14に示されるように、左右一対の施肥装置26を支持する左右一対の施肥フレーム113と、メインフレーム3との連結部分183が、左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ位置と、6列の植付具69を跨ぐ位置との間に位置している。したがって、一対の後輪9のトレッド幅が、苗移植機1の左右方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐトレッド幅を有する状態(図14において実線で図示)と、左右方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐトレッド幅を有する状態(図14において破線で図示)のいずれに設定された場合においても、施肥フレーム113とメインフレーム3との連結部分183が後輪9の上方に位置しないから、後輪9に泥が付着した状態で走行することにより連結部分183に泥がかかり、連結部分183が摩耗してしまう事態が防止されている。
また、本実施態様によれば、制御部87は、図4に示された繰出量検知センサ39および後輪回転センサ52から出力される検出データに基づいて算出した一対の施肥装置26による単位面積当たりの施肥量が、所定の量(70kg/反)以上であると判定した場合には、図3および図4に示されたHSTサーボモータ150を制御し、トラニオン軸147の開度を小さくすることにより、走行車両2の走行速度を標準速度である1.8m/sから2割落とすように構成されている。したがって、単位面積当たりの施肥量が所定の量以上であるときには、走行車両2の走行速度に合わせて一対の施肥装置26から単位時間当たりに供給される肥料の量を少なくすることができ、図1に示されるように、一対の施肥装置26が、リアステップ89の左右に配置されていることにより、苗植付部63の近傍に延ばされる各施肥ホース40が(施肥装置がリアステップ89の上方に設けられている場合に比して)比較的長く構成されている場合であっても、施肥ホース40内で肥料の詰まりが発生する事態を防止することができる。
さらに、本実施態様によれば、制御部87は、図1に示された植付具69による苗の植付を停止し、図4に示された電子油圧バルブ88を制御して苗植付部63を上昇させる際に、図4に示された繰出量検知センサ39の検出データおよび後輪回転センサ52からの出力データに基づいて判定される一対の施肥装置26による単位面積当たりの施肥量が所定の量(70kg/反)以上であるか否かを判定する。その結果、単位面積当たりの施肥量が所定の量(70kg/反)以上である場合には、制御部87は、電子油圧バルブ88を制御して苗植付部63の上昇を開始させてから、苗植付部63が所定の高さ(400mm)以上上昇されるまでの間は一対の施肥装置26の繰出装置34による肥料の供給を継続させるように構成されている。
したがって、施肥量が多い場合であっても、(施肥装置がリアステップ89の上方に設けられている場合に比して)比較的長く構成された各施肥ホース40が大きく湾曲し肥料の詰まりが発生する事態を防止することができる。
図15(a)は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の苗植付部63の近傍に配置された複数の施肥ホース40の位置を示す略平面図であり、図15(b)は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の苗植付部63の近傍に配置された複数の施肥ホース40の位置を示す略左側面図である。
図15(a)に示されるように、本実施態様においては、前記実施態様の場合と同様に、苗植付部63は、苗移植機1の進行方向に対する左右方向に並ぶ8列の植付具69を備えている。左右方向に隣接する植付具69同士の間隔も、前記実施態様と同様に、25cmに構成されている。
一方、図示はされていないが、一対の施肥装置26から延びる8本の施肥ホース40の後端部に取り付けられた8つの作溝器のうち、一対のサイドフロート79または一対のサブフロート80(図8に図示)に固定された6つの作溝器(すなわち、センターフロート66に固定された2つの作溝器を除く)はそれぞれ、サイドフロート79またはサブフロート80の前端部に固定されている。そのため、各フロートが圃場上の凹凸により上下するのに伴い、作溝器の上下の移動が大きく、6本の施肥ホース40が各作溝器から抜けてしまう実態が発生し得る。
そこで、本実施態様においては、6本の施肥ホース40(一対のサイドフロート79または一対のサブフロート80に延びる施肥ホース40)を、以下のように苗植付部63の近傍に配置することにより、各施肥ホース40が各作溝器から抜けてしまうことの防止が図られている。
図15(a)および図15(b)には、一対の施肥装置26から延びる6本の施肥ホースが図示され、施肥ホースは図1では参照番号40で示されているが、図15においては、6本の各施肥ホース40は、便宜的に参照番号401ないし406によって示されている。
本実施態様においては、苗移植機1の進行方向に対する幅方向外側端部に位置する2本の施肥ホース401および406は、一対の施肥ホッパ群27の前端部に位置する施肥ホッパ27a(図1参照)の下方から延び、2本の施肥ホース402および405は左右の施肥ホッパ27bの下方から延び、2本の施肥ホース403および404は左右の施肥ホッパ27eから延びるものである。
なお、図15には、一対の施肥ホッパ群27の最後部に位置する施肥ホッパ27f(図1参照)の下方から、苗植付部63の幅方向中央部に位置する2つの植付具69の近傍に延びる2本の施肥ホース40は図示されていない。
図15(a)に示されるように、苗植付部63は、上端部(前端部)に、苗移植機1の幅方向に延びる苗植付部上部フレーム81を備えており、苗移植機1の進行方向に対し、苗植付部上部フレーム81の左右には、略U字状のサイドホースガイド139が設けられている。6本の施肥ホース401ないし406のうち、左側に位置する2本の施肥ホース401,402は左側のサイドホースガイド139の内側に摺動可能に通されており、右側に位置する2本の施肥ホース405,406は右側のサイドホースガイド139の内側に摺動可能に通されている。
図15(a)または図15(b)に示されるように、苗植付部63の幅方向中央部側に位置する2本の施肥ホース403,404はそれぞれ単独で、左右のサイドホースガイド139の幅方向中央側に設けられたセンターホースガイド138およびホースホルダ135により、苗載置台65から離間するように摺動可能に配置されており、図2に示された苗送りベルト121などの動作の妨げとならないように構成されている。
これらの構成により、6本の施肥ホース401ないし406は、苗植付部63のフレームにバンドで直接固定されておらず、サイドフロート79、サブフロート80および作溝器の上下動作に追従して摺動することができ、6本の施肥ホース401ないし406の後端部が各作溝器から外れてしまう事態を防止することができる。
また、図15(a)に示されるように、苗植付部上部フレーム81の近傍には、図1に示された整地ロータ67の高さを調節するための高さ調節レバー82と、高さ調節レバー82の左方に設けられ、列ごとに植付具69による苗の植付けの入り切りを設定するためのクラッチレバー83が設けられている。
さらに、本実施態様においては、図15(a)に示されるように、高さ調節レバー82とクラッチレバー83との間の位置(苗植付部63の幅方向中央部)に、苗植付部63の各部に潤滑油を供給するための注油ポンプ84が設けられている。注油ポンプ84が苗植付部63の上部中央に配置されていることにより、注油ポンプ84を使用し易く、なおかつ、注油ポンプ84と8本の施肥ホース40とが干渉することの防止が図られている。
図15(a)に示されるように、苗植付部63の幅方向の端部には、後方に向かうほど下方に傾斜する苗植付部左側フレーム124および苗植付部右側フレーム125が設けられている。苗植付部左側フレーム124および苗植付部右側フレーム125は、それぞれの後部が幅方向中央側に湾曲しており、それぞれの後端部には、幅方向外側に延びるスタンド取付フレーム122が取り付けられている。
苗移植機1の進行方向に対して、最も幅方向外側に位置する植付具69よりも幅方向外側のスタンド取付フレーム122の部分には、上下方向に延びるプレート126の上端部が取り付けられており、プレート126の下端部には、植付装置64などの破損を防止するための植付部スタンド127が取り付けられている。幅方向外側に延びるスタンド取付フレーム122および上下方向に延びるプレート126は略L字状をなしている。これにより、左右方向に並べて設けられた植付具69同士の間隔幅144が、通常の50cmよりも狭い25cmに構成された本実施態様においても、苗移植機1の進行方向に対する幅方向外側に位置する施肥ホース401および406を配置する空間が十分に確保されている。
図16(a)は、図15に示された苗移植機1の図2における進行方向に向かって左側の施肥装置26に設けられた排出トレイ142にガイドトレイ143が取り付けられた状態を示す略左側面図であり、図16(b)は、左側の施肥装置26に設けられた排出トレイ142からガイドトレイ143が取り外された状態を示す略左側面図である。また、図16(c)は、左側の施肥装置26に設けられた排出トレイ142にガイドトレイ143が取り付けられた状態を示す略背面模式図であり、図16(d)は、左側の施肥装置26に設けられた排出トレイ142にガイドトレイ143が収納された状態を示す略背面模式図である。
本実施態様においては、左側の施肥装置26は、図16(a)および図16(b)に示されるように、前後方向に並ぶ4つの施肥ホッパ27a,27b,27e,27fを有する施肥ホッパ群27と、各施肥ホッパ27a,27b,27e,27fの下方に配置された4つの繰出装置34と、各施肥ホッパ27a,27b,27e,27fに残留する肥料を排出するときに、施肥装置26における前後方向中央部に肥料を寄せ集めるための排出トレイ142と、排出トレイ142に着脱可能に構成された2つのガイドトレイ143を備えている。
図16(a)および図16(b)に示されるように、4つの繰出装置34はそれぞれ、苗移植機1における幅方向外側の面にシャッター140と、排出口141を備え、シャッター140を操作することにより、各施肥ホッパ27a,27b,27e,27fに残留する肥料を排出口141から幅方向外側へ排出することができる。
図16(b)に示されるように、排出トレイ142は、略台形の平板状をなす底面184と、底面184の前部および後部からそれぞれ上方に延び、平板状をなす前後の壁部185と、底面184において、苗移植機1の進行方向に対して左側の端部から下方に延びる(図16(c)参照)平板状の垂下部186を備えている。
底面184は、前後方向に並ぶ4つの繰出装置34のうち、最前側に位置する繰出装置34の排出口141よりも前方の位置から、最後側に位置する繰出装置34の排出口141よりも後方の位置まで延在しており、図16(c)に示されるように、苗移植機1の進行方向に対して左側に向かうほど下方に傾斜している。
前側の壁部185は、苗移植機1の幅方向左側に向かうほど後方に位置するように斜めに設けられており、後側の壁部185は、苗移植機1の幅方向左側に向かうほど前方に位置するように斜めに設けられている。
したがって、最前部および最後部に位置する施肥ホッパ27a,27fの下方に位置する繰出装置34の排出口141から排出された肥料は、図16(b)に示された前後の壁部185に沿って、排出トレイ142の前後方向中央部に寄せ集められながら、図16(c)に示された排出トレイ142の底面184上を滑り、苗移植機1の幅方向左側へ排出される。
作業者は、前後方向中央部に寄せ集められながら幅方向外側へ排出された肥料を袋などに回収することとなる。
ここに、上述のように、本実施態様においては、苗植付部63は、苗移植機1の幅方向に並ぶ8列の植付具69を備えており、苗移植機1の左側に設けられた施肥装置26は、左側に位置する4列の植付具69の近傍に肥料を供給するための前後方向に並ぶ4つの施肥ホッパ27a,27b,27e,27fおよび4つの繰出装置34と、排出トレイ142を備えている。
これに対して、苗移植機の幅方向に並ぶ6列の植付具と、走行車両の左右に設けられた施肥装置と、左右に設けられた施肥装置の機体幅方向外側に取り付けられた排出トレイを備えた従来の苗移植機においては、左側に設けられた施肥装置は、左側に位置する3列の植付具69の近傍に肥料を供給するための前後方向に並ぶ3つの施肥ホッパおよび3つの繰出装置34を備えている。
このような構成の従来の苗移植機の排出トレイに比して、本実施態様にかかる苗移植機1の排出トレイ142は、左側に設けられた施肥装置26の前後方向に並ぶ施肥ホッパおよび繰出装置34の数が多い分、前後方向(苗移植機1の進行方向)の幅が広く構成されている。したがって、排出トレイ142のみによって、左側の施肥装置26における前後方向中央部に肥料を充分に寄せ集めることは困難である。
そのため、本実施態様においては、以下のようにして、左側に設けられた施肥装置26の排出トレイ142の垂下部186に2つのガイドトレイ143を取り付けることにより、左側に設けられた施肥装置26の前後方向中央部に肥料を充分に寄せ集め、残留肥料を容易に回収することができる。
図16(b)および図16(c)に示されるように、各ガイドトレイ143は、底面187と、内側壁部188と、内側壁部188よりも長く構成された外側壁部189を備えている。
内側壁部188は、図16(c)に示されるように、ガイドトレイ143が排出トレイ142の垂下部186の外側の面(苗移植機1の幅方向左側の面)に取り付けられている場合に、垂下部186に当接する部位である。
外側壁部189は、図16(c)に示されるように、ガイドトレイ143が排出トレイ142の垂下部186の外側の面(苗移植機1の幅方向左側の面)に取り付けられている場合に、苗移植機1の幅方向左側(外側)に位置する部位である。
図16(b)または図16(c)に示されるように、排出トレイ142の垂下部186には、苗移植機1の幅方向に貫通する2つの孔198が形成されており、2つのガイドトレイ143の内側壁部188にはそれぞれ、苗移植機1の幅方向に貫通する孔199が形成されている。
ガイドトレイ143を排出トレイ142に固定する場合には、図16(c)に示されるように、排出トレイ142の垂下部186に形成された孔198と、ガイドトレイの内側壁部188に形成された孔199とを位置合わせし、蝶ボルト178を締めることにより、排出トレイ142にガイドトレイ143を固定することができる。
図16(a)に示されるように、ガイドトレイ143が排出トレイ142に固定された状態で各繰出装置34の排出口141から肥料が排出されると、4つの繰出装置34のうち、最前側および最後側に位置する繰出装置34から排出された肥料はそれぞれ、排出トレイ142の底面184上を流れた後に、前側または後側のガイドトレイ143の内側壁部188を越えて底面187上に流れ込む。
したがって、図16(a)に示されるように、前側に位置するガイドトレイ143を、底面187が後方に向かうほど下方に傾斜するように斜めに固定し、後側に位置するガイドトレイ143を、底面187が前方に向かうほど下方に傾斜するように斜めに固定することにより、底面187上に流れ込んだ肥料を、施肥装置26における前後方向中央部に寄せ集めるように流すことが可能になる。したがって、作業者は、その下方に袋等を用意することによって容易に肥料を回収することができる。
また、本実施態様においては、苗移植機1による苗の植付作業をしている際など、ガイドトレイ143が不要なときには、ガイドトレイ143を前後逆さに排出トレイ142に固定し、苗移植機1の左右方向の幅を縮めることができる。
具体的には、まず、図16(d)に示されるように、ガイドトレイ143を上下逆さにし、ガイドトレイ143の外側壁部189の内面(内側壁部188側の面)を排出トレイ142の垂下部186に当接させる。
図16(d)に示されるように、ガイドトレイ143の外側壁部189に孔200が形成されている。
図16(d)に示されるように、排出トレイ142の垂下部186に形成された孔198と、ガイドトレイ143の外側壁部189に形成された孔200を位置合わせした状態で、蝶ボルト178を締めることにより、排出トレイ142の外側にガイドトレイ143が出っ張らない状態でガイドトレイ143を排出トレイ142に収納することができるため、苗移植機1の左右方向の幅を狭めることが可能である。
以上のとおり、また、図16を用いて、苗移植機1の左側に設けられた施肥装置26の構成と残留肥料の回収につき詳細に説明を加えたが、右側に設けられた施肥装置26についても同様であり、排出トレイ142およびガイドトレイ143によって、各施肥ホッパ27a,27b,27e,27f内の残留肥料を排出する際に、施肥装置26の前後方向における中央部に肥料を寄せ集めることができる。
図17(a)は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の苗載置台65の上部の略斜視図であり、図17(b)は、図17(a)に示された苗載置台65の上部の略左側面図である。
図17(a)および図17(b)に示されるように、苗載置台65は、その下部に位置する苗タンク72と、苗タンク72の上端部から前上方に延びる延長苗タンク73を備えている。
図示はされていないが、本実施態様にかかる苗移植機1の苗植付部63には、機体幅方向に並ぶ6列の植付具69が設けられており、図17(a)に示されるように、各植付具69に供給される苗マットを載置するための6つの苗載せ面78がそれぞれ、仕切り77によって仕切られた状態で苗タンク72に設けられている。
図17(a)および図17(b)に示されるように、延長苗タンク73の前端部(上端部)の下面には、苗移植機1の幅方向に延びるレール98が取り付けられており、延長苗タンク73の上方にはサブ苗タンク74が設けられている。
図17(b)に示されるように、レール98は、縦断面が略C字状をなす部材である。
サブ苗タンク74は、延長苗タンク73と略平行をなす底板96と、機体幅方向において底板96の左右両端部から仕切り77と略平行に延びる側板97とを有する枠体95と、機体幅方向に転動可能にレール98に取り付けられた2つのローラ99と、枠体95と2つのローラ99を接続し、傘の把手のような形状をなす2本のローラ接続部100を備えている。
枠体95は、苗移植機1の幅方向(レール98の長手方向と略平行な方向)において、苗載せ面78と略同一の幅に構成されている。
図17に矢印付きの一点鎖線で示されるように、サブ苗タンク74を、苗移植機1の幅方向(レール98の長手方向に平行な方向)にスライドさせると、2つのローラ99がレール98内で転動されるため、軽い力で容易にサブ苗タンク74を各苗載せ面78の上方に配置することができる。
本実施態様においては、サブ苗タンク74を用いて、以下のようにして、6つの苗載せ面78のうち、残りの苗の量が少なくなった苗載せ面78に苗マットを容易に補充することができる。
まず、作業者は、いわゆる苗取板(苗すくい板)などを用いて、苗移植機1の前部に設けられた予備苗載台120(図1参照)から苗マットを持ち出し、サブ苗タンク74上に載置する(図17(b)参照)。
次いで、サブ苗タンク74を、レール98の長手方向に平行な方向にスライドさせ、苗マットを、補充したい苗載せ面78の位置まで移動させる。このとき、サブ苗タンク74は、上述のように、2つのローラ99の転動によって軽い力でスライドされるから、サブ苗タンク74に載置した苗マットを容易に移動させることができる。
サブ苗タンク74をスライドさせた後に、作業者は、サブ苗タンク74に載置された苗マットを後方に滑らせ、残りの苗の量が少なくなった苗載せ面78に苗マットを補充する。
上述のように、枠体95は仕切り77と略平行に延びる側板97を有するから、サブ苗タンク74に載置した苗マットを仕切り77と略平行に苗載せ面78に滑らせることができ、苗マットが斜めに補充されてしまう事態が防止されている。
図18(a)は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の苗載置台65の上部の略斜視図であり、図18(b)は、図18(a)に示された苗載置台65の上部の略左側面図である。
図示はされていないが、本実施態様にかかる苗移植機1においては、苗植付部63は、機体幅方向に並ぶ6列の植付具69を備えており、各植付具69に供給される苗マットを載置するための6つの苗載せ面78がそれぞれ、仕切り77によって仕切られた状態で苗タンク72に設けられている。
図18(a)および図18(b)に示されるように、本実施態様においては、苗載置台65は、苗タンク72と、苗タンク72の上端部から前上方に延びる延長苗タンク73と、延長苗タンク73に着脱可能に構成された苗取板101を備えている。
図18(a)および図18(b)に示されるように、苗取板101は、略平板状をなし、苗マットを載置可能な大きさに構成された平板部102と、平板部102の一方の短辺から連続的に形成され、延長苗タンク73の上端部に引っ掛けることが可能に構成されたフック部103を備えている。
図18(a)および図18(b)に示されるように、苗タンク72に設けられたすべての仕切り77は、苗取板101のフック部103が延長苗タンク73に引っ掛けられた状態で、苗取板101の後端部(平板部102)に接触しない長さに構成されており、苗タンク72における仕切り77の前端部よりも前方に位置する部分は、境目のない平らな状態に構成されている。
残りの苗の量が少なくなったために、苗載せ面78に苗マットを補充する場合には、作業者は、まず、予備苗載台120に載置された苗マットを苗取板101の平板部102上にすくい上げた状態でリアステップ89上に移動し、苗取板101のフック部103を延長苗タンク73の前端部に引っ掛ける。
次いで、苗取板101を機体幅方向にスライドさせ、苗マットを、補充したい苗載せ面78の位置まで容易に移動させ、苗取板101から苗載せ面78に滑らせて補充することができ、作業性を向上させることができる。
図19(a)は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる苗移植機1の略平面図であり、図19(b)は、図19(a)に示された苗移植機1の略左側面図であり、図19(c)は、図19(a)に示された苗移植機1の上部の略正面模式図である。
本実施態様にかかる苗移植機1の苗植付部63は、図1に示された実施態様の場合と同様に、機体幅方向に並ぶ8列の植付具69が設けられている。
図19(a)に示されるように、本実施態様にかかる苗移植機1は、条数と同じ8つの補助苗タンク104を備えており、各補助苗タンク104は底板106と、底板106の左右両端部(長辺)から上方に延びる側板107を有する枠体105と、枠体105の後部に設けられた溝(図示せず)に上下方向に挿脱可能に構成された後方壁108を備えている。
図19(a)に示されるように、枠体105はその下面に、底板106の短辺と略平行な方向に延びる2つの溝179を備えている。
図19(a)および図19(b)に示されるように、苗移植機1の進行方向に対する補助苗タンク104の左右の幅および前後の幅は、一般的な苗箱から取り出された苗マットを収容可能な長さで、かつ、予備苗載台120に載置可能な長さに構成されている。
図19(b)に示されるように、操縦席48の後方に設けられた後方手摺り109には上下逆U字状をなす第一支持枠111(図19(b)においては、第一支持枠111の機体幅方向に延びる部分は見えておらず、図19(c)においては、上下方向に延びる左右両端部分は第二支持枠112に隠れて見えていない)が取り付けられ、リアステップ89(図2参照)の左右両側を囲う側方手摺り110には第二支持枠112が取り付けられている。
図19(b)または図19(c)に示されるように、第二支持枠112は、リアステップ89(図2参照)の左右両側を囲う側方手摺り110から、苗移植機1の左右方向にそれぞれ延びた後に、上方に延び、左方に延びた第二支持枠112と右方に延びた第二支持枠112とが幅方向中央で合流する形状をなし、第一支持枠111および第二支持枠112は、機体幅方向の幅が、苗載置台65の幅と略同一の幅に構成されている。
図19(b)に示されるように、第一支持枠111の上端部は、第二支持枠112の上端部よりも低い位置に位置している。したがって、補助苗タンク104を、その溝179に、第一支持枠111および第二支持枠112の上端部が嵌るように、第一支持枠111および第二支持枠112の上端部に載置すると、補助苗タンク104を苗移植機1の前方から後方に向かうにつれて下がる斜めの状態で、安定的に載置することができる。
また、本実施態様においては、苗植付部63には、苗載置台65上のいずれかの面の苗の残量が僅かになったことを検出する苗切れセンサ(図示せず)が設けられており、苗切れセンサが制御部87に検出信号を出力すると、制御部87は、機体幅方向に往復動する苗載置台65が次に苗移植機1の幅方向中央部に位置した際に、HSTサーボモータ150によりトラニオン軸147の開度を、主変速レバー55(図2および図4に図示)の中立位置に対応する状態に調節して、走行車両2の走行を停止させる。また、制御部87は同時に、図19(a)に示された植付具69の駆動を停止させ、その後に、電子油圧バルブ88を制御して、苗植付部63を上昇可能な最上部まで上昇させるように構成されている。
ここに、第一支持枠111および第二支持枠112の上下方向の長さは、図19(b)に示されるように、苗植付部63が最上部まで上昇された際に、補助苗タンク104の後端部と苗タンク72の前端部の位置が合うと同時に、延長苗タンク73が補助苗タンク104の下面に接触する位置で停止するような長さ(すなわち補助苗タンク104の高さ位置)に構成されている。
また、図19(a)に示されるように、8つの補助苗タンク104を、第一支持枠111および第二支持枠112の幅(苗載置台65の幅)と略一致するように機体幅方向に均等に隙間なく配置することにより、8つの各補助苗タンク104と、苗載置台65の8つの各苗載せ面78との機体幅方向の位置が略一致するように構成されている。
通常、補助苗タンク104が設けられていない従来の苗移植機1の場合には、作業者は、圃場の畔際において、苗マットを苗箱ごと予備苗載台120に載置し、いずれかの苗載せ面78の苗が少なくなったときに、苗取板を用いて苗マットを苗箱から取り出して苗載置台65に補充することとなるが、走行車両2上で苗取板や空の苗箱が作業の邪魔になることがある。
これに対して、本実施態様における補助苗タンク104の大きさは、上述のように、苗箱から取り出された苗マットを収容可能で、かつ、予備苗載台120に載置可能な大きさに構成されている。
したがって、圃場の畔際において、苗マットを苗箱から取り出した状態で補助苗タンク104に収容し、図19(b)に示されるように、補助苗タンク104を予備苗載台120に載置することができるから、苗マットを苗載せ面78に補充する際に、走行車両2上で苗取板を用いて苗箱から取り出す手間をなくすことができる。さらに、苗マットを苗載置台65に補充した後に、苗取板や空の苗箱を扱う必要がなくなり、作業性を向上させることができる。
さらに、本実施態様によれば、苗の残量が僅かになった際には、苗切れセンサがそれを検出して制御部87に出力し、制御部87は、自動的に走行車両2の走行を停止させると同時に、植付装置64の駆動を停止させた後に、苗植付部63を上昇可能な最上部まで上昇させるように構成されているから、苗載置台65上の苗がなくなった状態でそのまま走行してしまう事態を防止することができる。加えて、苗を補給する際に走行車両2を停止させ、苗植付部63を上昇させる操作を不要にすることができ、作業性を向上させることができる。
また、本実施態様によれば、制御部87によって苗植付部63が上昇された状態で、予備苗載台120上の苗マットが収容された補助苗タンク104をそのまま第一支持枠111および第二支持枠112上に移動させた後に、補助苗タンク104の後方壁108を枠体105から取り外し、苗マットを後方に押圧して滑らせることにより、苗載置台65に容易に苗を補給することができる。
図20は、図19に示された苗移植機1のクラッチ機構285の近傍の部分背面図である。
本実施態様においては、図1に示された実施態様の場合と同様に、油圧式無段変速機25(図1および図3参照)はHSTサーボモータ150によってトラニオン軸147の開度を電動で制御可能ないわゆる電動HSTとして構成され、主変速レバー55とトラニオンアームとは機械的に直接接続はされていない。
図20に示されるように、本実施態様においては、HSTサーボモータ150によって回動されるクラッチ機構285のギア軸148に、ブレーキをかけるためのライニングが施されている。
ライニングの荷重は、HSTサーボモータ150によってギア軸148を円滑に回動させることができ、かつ、ギアのバックラッシにより、軸がガタつかない程度の軽い荷重に構成されている。
これにより、電動HSTとして構成された油圧式無段変速機25(図1および図3参照)のトラニオンアームを中立位置(走行車両2の停止位置)に容易に調整することができ、ケーブルなどを用いて機械的にトラニオンアームを中立位置に固定する必要がなく、部品点数を削減し、構成を簡潔にすることができる。
また、本実施態様においては、苗移植機1が坂道に停車している場合であっても、以下のようにして、安全な状態で苗植付部63を駆動させ、苗載置台65(図1および図2参照)を苗移植機1の幅方向端部に寄せる作業や、苗植付部63を駆動させながらの洗車を行うことができる。
まず、ブレーキペダルを踏み込み、セーフティスイッチが押された状態にした後に、手動で植付クラッチの入切を切り換えるために主変速レバー55に設けられた植付ボタン(図示せず)を押圧操作して植付クラッチモータ204(図4参照)を駆動させ、植付可能な状態にする。このとき、制御部87は、走行車両2の前端部中央に設けられたセンターマスコット286(図1および図2参照)に取り付けられた植付ランプ(図示せず)を点灯させるように構成されている。
次いで、操作部54に設けられた副変速レバーをPTOの位置、ピタ植え位置(走行用伝動経路へは伝動せずに植付用伝動経路にのみ動力を伝動する状態)に動かし、その状態を保持する(ピタ植え用のスイッチが押されている状態)。この間に、苗植付部63は連続して駆動し、副変速レバーを離すと苗植付部63の駆動が停止するように構成されている。
すなわち、制御部87は、ブレーキペダルを踏み込まれ、セーフティスイッチが押されたことにより出力された検出信号および副変速レバーが操作されたことにより出力された検出信号に基づいて、苗植付部63を駆動させるように構成されている。したがって、苗移植機1が坂道に停車している場合であっても安全な状態で苗植付部63を駆動させ、苗載置台65を端に寄せる作業や、苗植付部63を駆動させながらの洗車を行うことができる。
また、苗移植機1が停車している場所が坂道でない場合にも、ブレーキペダルを踏みこんだ状態で、主変速レバー55の操作をせずとも、容易に苗植付部63を駆動させることができ、作業性を向上させることができる。
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、図1ないし図14に示された実施態様においては、走行車両2の左右に設けられた施肥装置26における肥料の繰出量を検出する繰出量検知センサ39(図4参照)からの出力信号と、後輪回転センサ52からの出力信号とに基づいて算出された単位面積当たりの実際の施肥量が、所定の量(70kg/反)以上である場合には、制御部87によりHSTサーボモータ150を制御し、トラニオン軸147の開度を小さくすることにより、走行車両2の走行速度を、通常の走行速度である1.8m/sから2割落とすように構成されているが、図13(b)に示されるように、施肥装置26による施肥量を調節するための調整ハンドル166を操作し、移動された揺動支点283の前後方向の位置をストロークセンサなどによって検出し、揺動支点283の前後方向の位置から判定される一対の施肥装置26による単位面積当たりの予定の(設定された)施肥量が所定の量(70kg/反)以上である場合には、制御部87により、HSTサーボモータ150を制御し、トラニオン軸147の開度を小さくすることにより、走行車両2の走行速度を、通常の走行速度である1.8m/sから2割落とすように構成してもよい。
さらに、このとき落される走行速度の割合は2割に限られず、2割未満に構成してもよく、2割より大きい数値に構成してもよい。
また、図1ないし図14に示された実施態様においては、図13(b)に示された繰出量調整軸165の前端部に設けられた調整ハンドル166を回動させることにより、中間伝動部158における駆動アーム284の揺動支点283を前後方向に移動させ、各繰出装置34から繰り出される量(施肥量)を調整可能に構成されているが、モータを正転または逆転させて、ボールネジに取り付けられたボールナットとともに駆動アーム284の揺動支点283を前後方向に移動させ、各繰出装置34から繰り出される量(施肥量)を調整できるように構成してもよい。
さらに、図6および図7に示された実施態様においては、左右の車軸20に延長車軸22を連結することにより、左右の後輪9のトレッド幅が、苗移植機1の幅方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ状態から、苗移植機1の幅方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態に変更可能に構成されているが、左右の車軸20に延長車軸22を連結することによって、左右の後輪9のトレッド幅をこのように変更可能に構成することは必ずしも必要でなく、例えば、後輪9を表裏反転させてシャフト19に取り付ける(図6において後輪9の機体幅方向外側の面を内側に向けてシャフト19に取り付ける)ことにより一対の後輪9のトレッド幅を変更可能に構成してもよく、シャフト19もしくはローリングフレーム53(図6参照)に電動シリンダを新たにつなぎ、モータを駆動して電動シリンダを伸縮させることにより、一対の後輪9のトレッド幅を変更可能に構成してもよい。
さらに、図8および図9に示された実施態様においては、苗植付部63は、左右一対の後輪9のトレッド幅を、苗移植機1の幅方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ状態から、苗移植機1の幅方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態に変更し、併せてサイドフロート79とサブフロート80とを入れ換えて取付けた場合には、後輪9の機体幅方向外側に位置する補助車輪10の走行跡を均すフロートが存在しないため、左右一対の後輪9のトレッド幅を拡げた場合には、補助車輪10の走行跡を均すためのフロートを、図9においてサイドフロート79のさらに外側に取り付けられるようにしてもよい。
また、図8および図9に示された実施態様においては、苗移植機1は、センターフロート66の左右に、一対のサブフロート80と一対のサイドフロート79とを互いに取り換え可能に備えているが、図9における一対のサブフロート80のさらに外側(機体幅方向外側)の位置にさらに一対のフロートを取り付け可能に構成してもよい。これにより、一対の後輪9が苗移植機1の幅方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐトレッド幅を有する場合(図9参照)には、新たに一対のフロートを取り付けて、補助車輪10の走行跡を均すことができる。
さらに、図14に示された実施態様においては、メインフレーム3のリアフレーム4と、施肥フレーム113の連結フレーム114がそれぞれ2本ずつ設けられているが、リアフレーム4および連結フレーム114の数は1本でも3本以上でもよい。さらに、施肥フレーム113とメインフレーム3の構成はとくに限定されるものではなく、施肥フレーム113とメインフレーム3の連結部分183の苗移植機1の幅方向の位置が、機体幅方向に並ぶ4列の植付具69を跨ぐ状態の後輪9の位置と、機体幅方向に並ぶ6列の植付具69を跨ぐ状態の後輪9の位置との間に位置してさえいれば、いずれの状態の場合においても、走行時の泥による連結部分183の摩耗を防止することができる。
また、図15に示された実施態様においては、図15に示された施肥ホース401は、左側の施肥ホッパ群27の施肥ホッパ27a(図1参照)の下端部に取り付けられた繰出装置34から繰り出された肥料を搬送し、施肥ホース402は、左側の施肥ホッパ群27の施肥ホッパ27b(図1参照)の下端部に取り付けられた繰出装置34から繰り出された肥料を搬送し、施肥ホース403は、左側に設けられた施肥ホッパ群27の施肥ホッパ27e(図1参照)の下端部に取り付けられた繰出装置34から繰り出された肥料を搬送するように構成されているが、苗移植機1に設けられた8つの各繰出装置34と8本の各施肥ホースとの対応関係はとくに限定されず、苗移植機1の左側に設けられた各施肥装置26によって、苗移植機1の右側に位置する植付具69の近傍に供給されるように、一対の施肥装置26から延びる各施肥ホースを左右交差させて配置してもよい。
さらに、図19に示された実施態様においては、補助苗タンク104の枠体105の後部に設けられた溝に挿入されている後方壁108を取り外すことにより、苗マットを苗載置台65に滑らせることが可能に構成されているが、意図しないときに苗マットが補助苗タンク104から苗載置台65に滑り落ちることを防止し、かつ、苗を補充したいときに補助苗タンク104から苗マットを後方に滑らせることが可能であれば、後方壁108をこのように構成することは必ずしも必要でなく、後方に設けられた壁を開閉可能に構成してもよい。