以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る積層フィルムの製造方法について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
まず、本実施形態において製造する積層フィルム100について説明する。図1は、本実施形態の積層フィルム100を示す断面図である。図1に示すように、積層フィルム100は、偏光フィルム1と、位相差フィルム13と、接着層14と、を備えている。偏光フィルム1と、接着層14と、位相差フィルム13とは、この順で積層されている。図示は省略するが、本実施形態の積層フィルム100は、長尺帯状である。積層フィルム100は、例えば、芯材に巻き取られ、原反ロールとして保管等されている。
なお、以下の説明においては、積層フィルム100における各層が積層された方向を、単に「積層方向」と呼ぶ場合があり、積層フィルム100における積層方向と直交する長手方向を、単に「長手方向(第1方向)」と呼ぶ場合があり、積層フィルム100における積層方向と長手方向との両方と直交する幅方向を、単に「幅方向(第2方向)」と呼ぶ場合がある。
また、図面には、適宜3次元直交座標系(XYZ座標系)を示す。3次元直交座標系において、Z軸方向は、積層方向と平行な方向とし、Y軸方向は、幅方向と平行な方向とし、X軸方向は、長手方向と平行な方向とする。また、以下の説明では、積層方向において、Z軸方向の正の側を「上側」と呼ぶ場合があり、Z軸方向の負の側を「下側」と呼ぶ場合がある。また、幅方向において、Y軸方向の正の側を「右側」と呼ぶ場合があり、Y軸方向の負の側を「左側」と呼ぶ場合がある。上側、下側、右側および左側とは、単に各部の相対的な位置関係を説明するために用いる名称であり、積層フィルムの製造時における各部の姿勢、積層フィルムの実際の姿勢、および積層フィルムの使用態様等を限定しない。
偏光フィルム1は、偏光子10と、保護フィルム11と、接着層12と、を備えている。偏光子10と、接着層12と、保護フィルム11とは、この順で積層されている。
偏光子10は、ポリビニルアルコール系樹脂中に二色性色素が配向された層である。本実施形態において偏光子10の吸収軸は、例えば、長手方向に沿って配置され、偏光子10の透過軸は、例えば、幅方向に沿って配置されている。
なお、本明細書において、ある軸がある方向に沿って配置されている、とは、ある軸の軸方向とある方向とが厳密に平行である場合に加えて、ある軸の軸方向とある方向とが略平行であることも含む。すなわち、例えば、偏光子10の吸収軸が、長手方向に沿って配置されている、とは、偏光子10の吸収軸の軸方向が、長手方向と略平行であることを含む。ある軸の軸方向とある方向とが略平行である、とは、ある軸の軸方向とある方向とが成す角度が、例えば、±15°以内程度であることを含む。
偏光子10の形成材料であるポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂誘導体、およびポリビニルアルコール樹脂誘導体の変性体等が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂誘導体としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂誘導体の変性体としては、例えば上述したポリビニルアルコール樹脂誘導体を、エチレン、プロピレン等のオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸;不飽和カルボン酸のアルキルエステル;またはアクリルアミド等で変性したものが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、100以上、10000以下が好ましく、1000以上、10000以下がより好ましく、1500以上、8000以下がさらに好ましく、2000以上、5000以下がよりさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が100未満の場合には、好適な光学特性が得られにくく、10000よりも大きい場合には、水への溶解性が低くなり、後述する樹脂層用塗工液33を作製することが困難になるためである。本明細書において、ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、例えば、JIS K 6727(1994)によって定められた方法によって求められる。
偏光子10の形成材料であるポリビニルアルコール系樹脂は、ケン化されたものであることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、80.0モル%以上、100.0モル%以下が好ましく、90.0モル%以上、99.5%モル以下がより好ましく、93.0モル%以上、99.5モル%以下であることがさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が80モル%未満では、好適な光学特性が得られにくいためである。
なお、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基がケン化工程により水酸基に変化した割合をモル%で表したものであり、下記の(式1)で定義される。
(式1) ケン化度(モル%)=(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)×100
本明細書において、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、例えば、JIS K 6727(1994)によって定められた方法によって求められる。
偏光子10には、可塑剤、界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。可塑剤としては、例えば、ポリオールおよびポリオールの縮合物が挙げられる。ポリオールおよびポリオールの縮合物としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。偏光子10中の可塑剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、20質量%以下が好ましい。
偏光子10の厚みは、特に限定されず、例えば、3μm以上、50μm以下であり、好ましくは5μm以上、15μm以下である。なお、本明細書において、あるフィルム(層)の厚みとは、あるフィルム(層)の積層方向の寸法であり、あるフィルム(層)の平均厚みも含む。すなわち、偏光子の厚みとは、偏光子の平均厚みも含む。
ポリビニルアルコール系樹脂中に配向された二色性色素としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。
保護フィルム11は、接着層12を介して偏光子10の下面10aに貼合されている。保護フィルム11は、光学機能を有しない単なる保護フィルムであってもよく、輝度向上フィルムといった光学機能を併せ持つ保護フィルムであってもよい。
保護フィルム11の形成材料としては、特に限定されず、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等の樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;アクリル系樹脂フィルム;およびポリプロピレン系樹脂フィルム等が挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸されたものであってもよいし、二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに任意の位相差を付与することができる。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣る。そのため、保護フィルム11が環状ポリオレフィン系樹脂フィルムである場合、保護フィルム11における偏光子10と接着される下面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理等の表面処理を行うのが好ましい。特に、比較的容易に実施可能なプラズマ処理、コロナ処理が好適である。
保護フィルム11が酢酸セルロース系樹脂フィルムの場合、保護フィルム11の表面には、視野角特性を改良するために液晶層等を形成してもよい。また、保護フィルム11は、位相差を付与するため酢酸セルロース系樹脂フィルムを延伸させたものであってもよい。保護フィルム11が酢酸セルロース系樹脂フィルムである場合、偏光フィルム1との接着性を高めるため、保護フィルム11の下面には、通常、ケン化処理が施される。ケン化処理としては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液に浸漬する方法が採用できる。
保護フィルム11の表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層等の光学層を形成することもできる。保護フィルム11の表面にこれらの光学層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
保護フィルム11の厚みは、薄型化の要求から、できるだけ薄いものが好ましく、90μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。保護フィルム11の厚みが薄すぎると、保護フィルム11の強度が低下して加工性に劣るため、保護フィルム11の厚みは、5μm以上であることが好ましい。
接着層12は、偏光子10の下面10aに積層されている。接着層12は、偏光子10と保護フィルム11とを互いに接着する層である。接着層12の形成材料としては、例えば、水系接着剤、紫外硬化型接着剤および電子線硬化型接着剤等が好ましく、水系接着剤がより好ましい。水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液に一般的な架橋剤を配合した水溶液、およびウレタン系エマルジョン接着剤等が挙げられる。また、接着層12の形成材料には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
図示は省略するが、偏光子10の上面10bには、プライマー層が設けられていてもよい。プライマー層は、後述する偏光フィルム準備工程S11において基材フィルム20と樹脂層34との密着力を向上させるために設けられる層である。プライマー層は、上述した密着力を向上させることができる成分を含む樹脂で形成されている。プライマー層を形成する樹脂は、透明性、熱安定性、延伸性等に優れた熱可塑性樹脂であることが好ましい。プライマー層を形成する樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。特に、プライマー層を形成する樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。後述する基材フィルム20と樹脂層34との密着力を良好に得られるためである。
プライマー層を形成する樹脂として用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、上述した偏光子10のポリビニルアルコール系樹脂と同様に選択することができる。プライマー層を形成する樹脂は、偏光子10のポリビニルアルコール系樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
プライマー層の厚みは、例えば、0.05μm以上、1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上、0.4μm以下であることがより好ましい。プライマー層の厚みが0.05μmよりも小さい場合、後述する基材フィルム20と樹脂層34との密着力が小さくなり、1μmよりも大きい場合、製造される積層フィルム100の厚みが大きくなりやすいためである。
位相差フィルム13は、偏光フィルム1に接着層14を介して貼合されている。より詳細には、位相差フィルム13は、偏光子10の上面10bに接着層14を介して貼合されている。位相差フィルム13は、通過する光に位相差を付与する機能を有している。位相差フィルム13の進相軸は、例えば、長手方向に沿って配置され、位相差フィルム13の遅相軸は、例えば、幅方向に沿って配置されている。すなわち、本実施形態において位相差フィルム13の進相軸と偏光子10の吸収軸とは、同じ方向(長手方向)に沿って配置されている。本実施形態において、偏光子10の吸収軸と位相差フィルム13の進相軸との相対角度は、例えば、0.24°未満である。
なお、本明細書において、偏光子の吸収軸と位相差フィルムの進相軸との相対角度、とは、所定方向に対する偏光子の吸収軸の角度と所定方向に対する位相差フィルムの進相軸の角度との差の絶対値を含む。
位相差フィルム13は、透明性に優れ、かつ、延伸によって適当な位相差値を発現できる樹脂によって形成されていることが好ましい。位相差フィルム13を形成する樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリスチレン系樹脂;(メタ)アクリレート系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリイミド系樹脂;およびポリアミド系樹脂等が挙げられる。
上記の樹脂からなるフィルムを一軸あるいは二軸等の適宜な方式で延伸することにより、適当な位相差が付与された位相差フィルム13を得ることができる。
位相差フィルム13は、1/4波長板および1/2波長板等の波長板であってもよいし、視野角補償フィルムであってもよい。位相差フィルム13の厚みは、20μm以上、200μm以下程度であり、20μm以上、120μm以下が好ましい。
接着層14は、偏光子10の上面10bに図示しないプライマー層を介して積層されていてもよい。接着層14は、偏光子10と位相差フィルム13とを互いに接着する層である。接着層14の形成材料としては、例えば、接着層12と同様の形成材料を用いることができる。接着層12の形成材料と接着層14の形成材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
接着層14の形成材料としては、例えば、活性化エネルギーを照射することによって硬化するものが好ましく、活性化エネルギーとして紫外線光を照射することによって硬化する紫外線硬化性樹脂がより好ましい。紫外線硬化性樹脂としては、エポキシ化合物と共に、カチオン重合開始剤を含有し、活性化エネルギー(紫外線光)を照射されたときにカチオン重合によって硬化するものを用いることが好ましい。
次に、本実施形態の積層フィルム100の製造方法について説明する。
<第1実施形態>
図2は、本実施形態の積層フィルム100の製造方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態の積層フィルム100の製造方法は、図2に示すように、偏光フィルム準備工程S11と、位相差フィルム準備工程S12と、進相軸測定工程(第2測定工程)S13と、選択工程S14と、位相差フィルム貼合工程S15と、を含む。
偏光フィルム準備工程S11は、偏光フィルム1を準備する工程である。本実施形態において、偏光フィルム準備工程S11は、偏光フィルム1を形成する偏光フィルム形成工程である。偏光フィルム準備工程S11は、樹脂層形成工程S11aと、延伸工程S11bと、染色工程S11cと、吸収軸測定工程(第1測定工程)S11dと、保護フィルム貼合工程S11eと、を含む。樹脂層形成工程S11aと延伸工程S11bと染色工程S11cとは、偏光子10を形成する偏光子形成工程S11fを構成する。
図3は、偏光フィルム準備工程S11の手順を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態においては、原反ロール状の基材フィルム20をニップロールおよび搬送ロールによって長手方向に搬送しつつ、偏光フィルム1を製造する。なお、図3においては各工程を連続的に行なっているが、各工程が終了するごとにフィルムをロール状に巻き取り、次工程へ搬送してもよい。
基材フィルム20の材質は、延伸工程S11bにおいて後述する樹脂層34と共に延伸できるならば、特に限定されない。基材フィルム20の材質は、例えば、熱可塑性樹脂である。基材フィルム20の材質として用いられる熱可塑性樹脂としては、透明性、機械的強度、熱安定性、および延伸性等に優れていることが好ましい。
具体的に、基材フィルム20の材質として用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;セルローストリアセテート、セルロースジアセテート等のセルロースエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;およびこれらの樹脂の混合物、共重合物等が挙げられる。
基材フィルム20は、上述した熱可塑性樹脂のうち1種または2種以上の熱可塑性樹脂から構成される。基材フィルム20は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
基材フィルム20の厚みは、特に限定されないが、強度および取扱い性等の観点から、1μm以上、500μm以下が好ましく、1μm以上、300μm以下がより好ましく、5μm以上、200μm以下がさらに好ましく、5μm以上、150μm以下がよりさらに好ましい。基材フィルム20の幅方向の寸法は、例えば、500mm以上である。
基材フィルム20の長手方向における引張弾性率は、例えば、80℃において140MPa以上であることが好ましい。基材フィルム20の長手方向における引張弾性率は、80℃において150MPa以上がより好ましく、155MPa以上がさらに好ましい。後述する乾燥工程における基材フィルム20の熱収縮を抑制するためである。本明細書において、基材フィルム20の長手方向における引張弾性率は、例えば、オートグラフ(登録商標)(株式会社島津製作所製、型番:AG−IS)によって測定される。具体的には、JIS K7163に準拠して測定される。
樹脂層形成工程S11aは、基材フィルム20上にポリビニルアルコール系樹脂を形成材料とする樹脂層34を形成する工程である。まず、基材フィルム20上に図示しないプライマー層を形成してもよい。プライマー層は、基材フィルム20上に塗布したプライマー層用塗工液を乾燥させることで形成される。
プライマー層用塗工液は、例えば、上述したプライマー層を形成する樹脂の粉末を溶媒に溶解させて得られる樹脂溶液である。プライマー層用塗工液の溶媒としては、上述した樹脂を溶解できる有機溶媒および水系溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類;塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類;およびエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類が挙げられる。プライマー層用塗工液の溶媒としては、例えば、水が好ましい。基材フィルム20の材質によらず基材フィルム20が溶解しにくく、環境への影響も小さくできるためである。プライマー層用塗工液における樹脂の濃度は、1質量%以上、25質量%以下程度が好ましい。
プライマー層用塗工液の塗布方法は、基材フィルム20上にプライマー層用塗工液を塗布できるならば、特に限定されない。プライマー層用塗工液の塗布方法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、コンマコート法、リップコート法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。各塗布方法に応じて、プライマー層用塗工液を塗布する塗布装置を選択できる。
塗布したプライマー層用塗工液を図示しない乾燥炉を用いて乾燥させる。乾燥炉内においては、例えば、熱風が吹き付けられる等により、プライマー層用塗工液に熱が加えられ、プライマー層用塗工液が乾燥して硬化する。これにより、プライマー層が形成される。
プライマー層用塗工液を乾燥させる乾燥炉は、プライマー層用塗工液を乾燥できるならば、特に限定されない。乾燥炉における乾燥温度は、例えば、50℃以上、200℃以下であり、60℃以上、150℃以下が好ましい。乾燥炉における乾燥温度は、プライマー層用塗工液に含まれる溶媒の種類に応じて適宜設定できる。プライマー層用塗工液の溶媒が水を含む場合、乾燥炉の乾燥温度は、80℃以上であることが好ましい。乾燥時間は、例えば、30秒以上、20分以下程度である。
プライマー層を形成した後、塗布装置42を用いて、プライマー層を介して基材フィルム20上に樹脂層用塗工液33を塗布する。樹脂層用塗工液33は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の粉末を溶媒に溶解させて得られるポリビニルアルコール系樹脂溶液である。ポリビニルアルコール系樹脂としては、偏光子10の形成材料の説明において上述した通りである。
樹脂層用塗工液33の溶媒は、例えば、水である。樹脂層用塗工液33中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、5質量%以上が好ましく、5質量%以上、15質量%以下がより好ましく、5質量%以上、10質量%以下がさらに好ましい。樹脂層用塗工液33中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度が5質量%未満の場合、樹脂層用塗工液33中の液体成分の割合が多くなるため、樹脂層用塗工液33を乾燥させる効率が低下することがある。また、樹脂層用塗工液33中のポリビニルアルコール系樹脂の濃度が15質量%以上の場合、樹脂層用塗工液33の粘度が大きくなり過ぎて、樹脂層用塗工液33を塗布しにくくなることがある。
樹脂層用塗工液33の粘度は、基材フィルム20上に塗布しやすく、かつ、基材フィルム20上に形成される樹脂層用塗工液33の層の厚みにムラが生じにくい範囲であれば、特に限定されない。樹脂層用塗工液33の粘度は、基材フィルム20上に塗布する際において、例えば、0.5Pa・s以上、10Pa・s以下が好ましく、0.8Pa・s以上、7Pa・s以下がより好ましく、1Pa・s以上、5Pa・s以下がさらに好ましい。樹脂層用塗工液33の粘度が0.5Pa・s未満である場合、塗布した樹脂層用塗工液33が流動して樹脂層34の厚み精度が低下することがある。また、樹脂層用塗工液33の粘度が10Pa・sよりも大きい場合、樹脂層用塗工液33を塗布する塗布装置42において使用できるフィルターが制限される等により、形成される樹脂層34の品質が低下することがある。
なお、樹脂層用塗工液33の粘度は、基材フィルム20上に塗布する際に上記数値範囲内となればよい。そのため、例えば、塗布装置42に接続された樹脂層用塗工液33を溜めるタンク(図示せず)内において、樹脂層用塗工液33の粘度は上記数値範囲外であってもよい。この場合、例えば、樹脂層用塗工液33を加温もしくは冷却することで、樹脂層用塗工液33の粘度を上記数値範囲内とすることができる。
樹脂層用塗工液33は、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。可塑剤の種類は、上述した通りである。樹脂層用塗工液33における添加材の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂の量に対して、20質量%以下とすることが好ましい。
塗布装置42を用いた樹脂層用塗工液33の塗布方法は、基材フィルム20上に樹脂層用塗工液33を塗布できるならば、特に限定されない。塗布装置42を用いた樹脂層用塗工液33の塗布方法としては、上述したプライマー層用塗工液の塗布方法と同様の方法が挙げられる。塗布装置42を用いた樹脂層用塗工液33の塗布方法は、プライマー層用塗工液の塗布方法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。塗布装置42としては、各塗布方法に応じた塗布装置を適宜選択できる。塗布される樹脂層用塗工液33の層の厚みは、例えば、50μm以上、200μm以下である。
次に、基材フィルム20上に塗布された樹脂層用塗工液33を、乾燥炉52を用いて乾燥させる。乾燥炉52内においては、例えば、吹き付けられる熱風等により、樹脂層用塗工液33の層に熱が加えられ、樹脂層用塗工液33が乾燥して硬化する。これにより、樹脂層34が形成される。
乾燥炉52は、樹脂層用塗工液33を乾燥できるならば、特に限定されない。乾燥炉52における乾燥温度は、例えば、50℃以上、200℃以下であり、60℃以上、150℃以下が好ましい。乾燥炉52における乾燥温度は、樹脂層用塗工液33に含まれる溶媒の種類に応じて適宜設定できる。樹脂層用塗工液33の溶媒が水を含む場合、乾燥炉52の乾燥温度は、80℃以上であることが好ましい。乾燥時間は、例えば、2分以上、20分以下程度である。
以上により、樹脂層34が形成され、基材フィルム20とプライマー層と樹脂層34とがこの順で積層された積層体70が形成される。形成された樹脂層34の厚みは、例えば、3μm以上、20μm以下であり、好ましくは5μm以上20μm以下である。
延伸工程S11bは、基材フィルム20と共に樹脂層34を延伸する工程である。延伸工程S11bにおいては、延伸装置60を用いて積層体70を長手方向に一軸延伸する。これにより、樹脂層34が延伸される。樹脂層34の厚みは、延伸されることで小さくなる。
樹脂層34の延伸倍率は、所望する偏光子10の偏光特性に応じて適宜選択することができる。樹脂層34の延伸倍率は、延伸する前の樹脂層34の長手方向の寸法に対して、5倍より大きく、17倍以下が好ましく、5倍より大きく、8倍以下であることがより好ましい。樹脂層34の延伸倍率が5倍以下である場合、樹脂層34の配向が不十分となり製造される偏光子10の偏光度が十分に大きくならないことがある。また、樹脂層34の延伸倍率が17倍よりも大きい場合、積層体70が破断しやすくなったり、積層体70の厚みが小さくなり過ぎて、後工程における加工性および取扱い性が低下したりすることがある。
延伸装置60は、樹脂層34を所定の延伸倍率に延伸できるならば、特に限定されない。延伸装置60を用いた積層体70の延伸方法は、搬送ロールの周速差をつけて延伸を行うロール間延伸であってもよいし、テンター延伸であってもよい。また、延伸処理は、多段階に亘って行われてもよい。この場合、多段階に亘った延伸処理のすべてを染色工程S11cの前に行ってもよいし、2段階目以降の延伸処理の一部、あるいは全てを染色工程S11c中に行ってもよい。
延伸装置60を用いて積層体70(樹脂層34)を延伸する際の延伸温度は、基材フィルム20および樹脂層34が延伸可能な程度に流動性を示す温度以上に設定される。延伸温度は、例えば、基材フィルム20の相転移温度(融点またはガラス転移温度)の−30℃以上、+30℃以下の範囲が好ましく、−30℃以上、+5℃以下の範囲がより好ましく、−25℃以上、±0℃以下の範囲がさらに好ましい。延伸温度が、基材フィルム20の相転移温度の−30℃よりも小さい場合、基材フィルム20の流動性が小さすぎて、基材フィルム20および樹脂層34を延伸しにくいことがある。また、延伸温度が、基材フィルム20の相転移温度の+30℃よりも大きい場合、基材フィルム20の流動性が大きすぎて、基材フィルム20および樹脂層34を延伸しにくいことがある。基材フィルム20が多層である場合、基材フィルム20の相転移温度とは、複数の層の相転移温度のうち最も高い温度のことを言う。
染色工程S11cは、樹脂層34に二色性色素を吸着させる工程である。染色工程S11cにおいては、延伸された積層体70全体を、二色性色素を含む染色溶液80に浸漬する。染色溶液80は、二色性色素を溶媒に溶解させた溶液である。染色溶液80の溶媒は、例えば、水である。染色溶液80の溶媒には、水に加えて、水と相溶性のある有機溶媒が添加されていてもよい。染色溶液80における二色性色素の濃度は、0.01質量%以上、10質量%以下が好ましく、0.02質量%以上、7質量%以下がより好ましく、0.025質量%以上、5質量%以下がさらに好ましい。
二色性色素をヨウ素とする場合、ヨウ素が含まれた染色溶液80にヨウ化物をさらに添加することが好ましい。染色効率を向上できるためである。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。染色溶液80におけるヨウ化物の濃度は、0.01質量%以上、20質量%以下が好ましい。
ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素の質量に対するヨウ化カリウムの質量の比は、5以上、100以下が好ましく、6以上、80以下がより好ましく、7以上、70以下がさらに好ましい。
染色溶液80への積層体70の浸漬時間は、特に限定されないが、15秒以上、15分以下が好ましく、1分以上、3分以下がより好ましい。染色溶液80の温度は、10℃以上、60℃以下が好ましく、20℃以上、40℃以下がより好ましい。
上記の染色処理を行うことで、樹脂層34には、配向された二色性色素が吸着され、基材フィルム20上にプライマー層を介して積層された偏光子10が得られる。これにより、基材フィルム20とプライマー層と偏光子10とがこの順で積層された偏光性積層体71が得られる。
なお、染色工程S11cは、上述した染色処理に続いて実施される架橋処理工程を含んでいてもよい。架橋処理工程は、染色された積層体70の全体を、架橋剤を含む架橋溶液中に浸漬する。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物;グリオキザール;およびグルタルアルデヒド等が挙げられる。架橋剤は1種類でもよいし、2種類以上を併用してもよい。
架橋溶液として、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。架橋溶液の溶媒は、例えば、水である。架橋溶液の溶媒には、水に加えて、水と相溶性のある有機溶媒が添加されていてもよい。架橋溶液における架橋剤の濃度は、例えば、1質量%以上、20質量%以下が好ましく、6質量%以上、15質量%以下がより好ましい。
架橋溶液中には、ヨウ化物を添加してもよい。ヨウ化物の添加により、樹脂層34の面内における偏光特性をより均一化させることができる。架橋溶液に添加されるヨウ化物としては、例えば、上述した染色溶液80に添加されるヨウ化物と同様のヨウ化物が挙げられる。架橋溶液に添加されるヨウ化物と染色溶液80に添加されるヨウ化物とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。架橋溶液におけるヨウ化物の濃度は、0.05質量%以上、15質量%以下が好ましく、0.5質量%以上、8質量%以下がより好ましい。
架橋溶液への積層体70の浸漬時間は、15秒以上、20分以下が好ましく、30秒以上、15分以下がより好ましい。架橋溶液の温度は、10℃以上、80℃以下が好ましい。
なお、架橋処理は、架橋剤を染色溶液80中に配合することにより、染色処理と同時に行ってもよい。また、組成の異なる2種以上の架橋溶液を用いて、架橋溶液に浸漬する処理を2回以上行ってもよい。
吸収軸測定工程S11dは、偏光フィルム1と位相差フィルム13とが積層される積層方向と直交する所定方向に対する偏光子10の吸収軸の角度を測定する工程である。本実施形態において所定方向は、例えば、長手方向(搬送方向、図3においては左右方向)である。吸収軸の角度の測定は、測定器90を用いて行われる。本明細書において、測定器90は、例えば、王子計測機株式会社製「KOBRA(登録商標)−WPR」、大塚電子株式会社製「RETS(登録商標)」等である。測定器90は、例えば、偏光性積層体71に基材フィルム20側から入射され偏光子10から射出された光を受光することで偏光子10の吸収軸の測定を行う。
吸収軸測定工程S11dにおいては、積層方向と長手方向との両方に直交する幅方向(図3の紙面と垂直な方向)に沿って、複数の箇所で偏光子10の吸収軸の角度を測定する。一例として、吸収軸測定工程S11dにおける測定方法としては、偏光子10を幅方向に沿って3つの部分に区切った際の各部分について、それぞれ吸収軸の角度を測定する方法が挙げられる。この場合、3つの測定箇所は、例えば、幅方向の中央部分、および幅方向の両端部分から中央部分側へ50mmの位置とすることができる。本実施形態において、吸収軸測定工程S11dは、偏光子形成工程S11f(樹脂層形成工程S11a〜染色工程S11c)の後、保護フィルム貼合工程S11eよりも前に設けられている。
保護フィルム貼合工程S11eは、偏光子10に保護フィルム11を貼合する工程である。偏光子10の基材フィルム20と逆側の面(図3では上側の面)に、接着層12を介して保護フィルム11を貼合する。接着層12の形成方法としては、例えば、接着層12の形成材料を偏光子10の面に塗布する方法、または接着層12の形成材料を偏光子10の面に滴下して貼合時に面内へ接着剤を展開する方法が挙げられる。接着層12の形成材料を塗布する方法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、コンマコート法、リップコート法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。
保護フィルム11の貼合方法は、特に限定されない。例えば、ロール状に巻かれた保護フィルム11を巻き出して、接着層12上に保護フィルム11を載せた状態で、保護フィルム11と偏光性積層体71とを挟みこむ2つのローラー間を通過させて圧着することで、保護フィルム11を貼合することができる。
以上の工程により、偏光子10と保護フィルム11とを備える偏光フィルム1が基材フィルム20上に積層された積層体が得られる。この積層体から、基材フィルム20を剥離除去することで、偏光フィルム1が得られる。基材フィルム20を剥離除去する方法は、特に限定されず、例えば、粘着剤付き偏光板で行われるセパレータ(剥離フィルム)の剥離工程と同様の方法を採用できる。基材フィルム20は、保護フィルム貼合工程S11eの後、そのまますぐに剥離してもよいし、保護フィルム貼合工程S11eの後、一度、保護フィルム11が貼合された偏光性積層体71をロール状に巻き取り、その後の工程で巻き出しながら剥離してもよい。
以上のようにして製造された偏光フィルム1を、芯材に巻き取り、原反ロールとして一時保管する。これにより、帯状の偏光フィルム1が巻かれた原反ロール101(図4参照)が得られる。本実施形態の偏光フィルム準備工程S11においては、複数の偏光フィルム1を上述したようにして形成し、準備する。これにより、複数の偏光フィルム1の原反ロール101が得られる。
位相差フィルム準備工程S12は、位相差フィルム13を準備する工程である。位相差フィルム準備工程S12においては、例えば、帯状の位相差フィルム13が巻かれた原反ロール113(図4参照)を準備する。本実施形態の位相差フィルム準備工程S12においては、複数の位相差フィルム13の原反ロール113を準備する。
進相軸測定工程S13は、所定方向に対する位相差フィルム13の進相軸の角度を測定する工程である。所定方向は、吸収軸測定工程S11dにおいて吸収軸の角度を測定する際に基準とした所定方向と同じ方向であり、例えば、長手方向である。進相軸の角度を測定する測定器としては、例えば、偏光子10の吸収軸を測定する測定器90と同様に選択できる。進相軸の角度を測定する測定器は、吸収軸を測定する測定器90と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
なお、吸収軸測定工程S11dにおいて吸収軸の角度を測定する際に基準とする所定方向と、進相軸測定工程S13において進相軸の角度を測定する際に基準とする所定方向とは、実際の計測時において、互いにわずかにずれることは許容される。すなわち、各測定工程において角度の基準となる所定方向が同じ方向であるとは、各測定工程における所定方向が、略同じ方向であることも含む。
進相軸測定工程S13においては、幅方向に沿って、複数の箇所で位相差フィルム13の進相軸の角度を測定する。一例として、進相軸測定工程S13において進相軸の角度を測定する方法としては、位相差フィルム13を幅方向に沿って3つの部分に区切った際の各部分について、それぞれ進相軸の角度を測定する方法が挙げられる。この場合、3つの測定箇所は、例えば、幅方向の中央部分、および幅方向の両端部分から中央部分側へ50mmの位置とすることができる。本実施形態の進相軸測定工程S13においては、位相差フィルム準備工程S12において準備した複数の位相差フィルム13のそれぞれについて、進相軸を測定する。
選択工程S14は、上記工程において準備された偏光フィルム1と位相差フィルム13とから、互いに貼合される貼合面を選択する工程である。選択工程S14においては、偏光フィルム1と位相差フィルム13とにおける互いに対向して貼合される部分において、吸収軸と進相軸との相対角度が所定角度未満となるように、各貼合面が選択される。本実施形態においては、偏光フィルム1と位相差フィルム13とにおける互いに対向して貼合される部分のうちの複数の箇所(上述した各測定工程において測定された複数の箇所)において、吸収軸と進相軸との相対角度が所定角度未満となるように各貼合面を選択することが好ましい。設定される所定角度は、例えば、0.24°であることが好ましく、0.20°であることがより好ましく、0.15°であることがさらに好ましい。所定角度を0.24°に設定することにより、製造される積層フィルム100の偏光度をより向上させることができる。
本実施形態の選択工程S14において、偏光フィルム1の貼合面は、複数の偏光フィルム1の両面のうちから選択される。本実施形態の選択工程S14においては、位相差フィルム13の貼合面は、複数の位相差フィルム13の両面のうちから選択される。すなわち、選択工程S14においては、後の位相差フィルム貼合工程S15において互いに貼合される偏光フィルム1と位相差フィルム13とが、複数の偏光フィルム1と複数の位相差フィルム13とのうちからそれぞれ選択され、かつ、選択された偏光フィルム1における位相差フィルム13に貼合される貼合面と、選択された位相差フィルム13における偏光フィルム1に貼合される貼合面と、がそれぞれ選択される。本実施形態においては、位相差フィルム13は、偏光フィルム1の偏光子10における保護フィルム11が貼合された側と逆側の面に貼合されるため、偏光フィルム1の貼合面は1つの面に限られる。各フィルムおよび各貼合面の選択方法については、後段において詳述する。
位相差フィルム貼合工程S15は、選択工程S14において選択された偏光フィルム1の貼合面に、選択工程S14において選択された位相差フィルム13の貼合面を貼合する工程である。図4は、位相差フィルム貼合工程S15の手順について示す斜視図である。
図4に示すように、位相差フィルム貼合工程S15においては、偏光フィルム準備工程S11で得られた偏光フィルム1の原反ロール101から偏光フィルム1を巻き出し、かつ、位相差フィルム準備工程S12で得られた位相差フィルム13の原反ロール113から位相差フィルム13を巻き出す。そして、各フィルムを巻き出しつつ、偏光フィルム1の長手方向と位相差フィルム13の長手方向とを揃えて、偏光フィルム1に位相差フィルム13を貼合する。偏光フィルム1と位相差フィルム13とは、例えば、保護フィルム貼合工程S11eにおいて保護フィルム11を貼合する場合と同様に、ロール間を通して互いに圧着されることで貼合される。
図示は省略するが、位相差フィルム13の貼合面には、接着層14(図1参照)が形成されており、偏光フィルム1と位相差フィルム13とは接着層14を介して貼合される。接着層14の形成方法は、特に限定されず、例えば、上述した接着層12と同様の方法を採用してもよいし、粘着剤を用いてもよい。
以上の工程により、偏光フィルム1と位相差フィルム13とを備える積層フィルム100が製造される。
次に、選択工程S14における各フィルムおよび各貼合面の選択方法について説明する。図5は、図4における積層フィルム100を示す平面図である。図6は、図4とは異なる位相差フィルム貼合工程S15の他の手順について示す斜視図である。図7は、図6における積層フィルム100を示す平面図である。
例えば、まず図4に示すようにして、偏光フィルム1と位相差フィルム13とを貼合する場合について考える。図4では、偏光フィルム1は原反ロール101の上側から巻き出されており、位相差フィルム13は原反ロール113の上側から巻き出されている。以下の説明においては、フィルムを原反ロールの上側から巻き出すことを単に「上出し」と呼ぶ場合がある。
図4においては、偏光フィルム1の両面のうち原反ロール101において巻かれる際に外側となる偏光フィルム外側面1bと、位相差フィルム13の両面のうち原反ロール113において巻かれる際に内側となる位相差フィルム内側面13aと、が貼合される。すなわち、図4においては、偏光フィルム外側面1bが偏光フィルム1の貼合面であり、位相差フィルム内側面13aが位相差フィルム13の貼合面である。偏光フィルム外側面1bは、偏光子10における保護フィルム11と逆側の上面10b(図1参照)である。
ここで、偏光フィルム1は、吸収軸測定工程S11dにおいて、幅方向(Y軸方向)に区分された3つの部分、すなわち第1部分AD1と第2部分AD2と第3部分AD3とにおける吸収軸の角度が測定されているものとする。第1部分AD1と第2部分AD2と第3部分AD3とは、幅方向に沿って、この順に隣接して設けられている。図4および図5に示す偏光フィルム1の姿勢において、第1部分AD1は、偏光フィルム1における幅方向左側(−Y側)の部分であり、第3部分AD3は、偏光フィルム1における幅方向右側(+Y側)の部分である。第2部分AD2は、偏光フィルム1における幅方向中央の部分である。
図5は、偏光フィルム1の面内各部分における吸収軸A1,A2,A3の一例を破線の矢印で示している。吸収軸A1は、偏光フィルム1における第1部分AD1の吸収軸である。吸収軸A2は、偏光フィルム1における第2部分AD2の吸収軸である。吸収軸A3は、偏光フィルム1における第3部分AD3の吸収軸である。
各吸収軸の角度は、積層方向の上側(+Z側)から下側(−Z側)に視て(以下、平面視)、長手方向(X軸方向)を基準として反時計回りに向かう側(+θz側)を正の側とし、長手方向を基準として時計回りに向かう側(−θz側)を負の側とする。
第1部分AD1における長手方向(X軸方向)に対する吸収軸A1の角度θA1は、正であり、第2部分AD2における長手方向に対する吸収軸A2の角度θA2は、負であり、第3部分AD3における長手方向に対する吸収軸A3の角度θA3は、正である。
また、位相差フィルム13は、進相軸測定工程S13において、幅方向(Y軸方向)に区分された3つの部分、すなわち第1部分FD1と第2部分FD2と第3部分FD3とにおける進相軸の角度が測定されているものとする。第1部分FD1と第2部分FD2と第3部分FD3とは、幅方向に沿って、この順に隣接して設けられている。図4および図5に示す位相差フィルム13の姿勢において、第1部分FD1は、位相差フィルム13における幅方向左側(−Y側)の部分であり、第3部分FD3は、位相差フィルム13における幅方向右側(+Y側)の部分である。第2部分FD2は、位相差フィルム13における幅方向中央の部分である。
図4および図5の例において、位相差フィルム13の第1部分FD1は、偏光フィルム1の第1部分AD1と積層方向(Z軸方向)に対向して貼合される。位相差フィルム13の第2部分FD2は、偏光フィルム1の第2部分AD2と積層方向に対向して貼合される。位相差フィルム13の第3部分FD3は、偏光フィルム1の第3部分AD3と積層方向に対向して貼合される。
図5は、位相差フィルム13の面内各部分における進相軸F1,F2,F3の一例を実線の矢印で示している。進相軸F1は、位相差フィルム13における第1部分FD1の進相軸である。進相軸F2は、位相差フィルム13における第2部分FD2の進相軸である。進相軸F3は、位相差フィルム13における第3部分FD3の進相軸である。
各進相軸の角度は、上述した各吸収軸の角度と同様に、平面視において、長手方向(X軸方向)を基準として反時計回りに向かう側(+θz側)を正の側とし、長手方向を基準として時計回りに向かう側(−θz側)を負の側とする。
第1部分FD1における長手方向(X軸方向)に対する進相軸F1の角度θF1は、負であり、第2部分FD2における長手方向に対する進相軸F2の角度θF2は、正であり、第3部分FD3における長手方向に対する進相軸F3の角度θF3は、負である。
積層フィルム100は、幅方向(Y軸方向)に区分された3つの部分、すなわち左側部分LDと、中央部分CDと、右側部分RDと、を有する。左側部分LDと中央部分CDと右側部分RDとは、幅方向に沿って、この順に隣接して設けられている。図4および図5において、左側部分LDは、偏光フィルム1の第1部分AD1と位相差フィルム13の第1部分FD1とが積層されて構成されている。中央部分CDは、偏光フィルム1の第2部分AD2と位相差フィルム13の第2部分FD2とが積層されて構成されている。右側部分RDは、偏光フィルム1の第3部分AD3と位相差フィルム13の第3部分FD3とが積層されて構成されている。
図4のようにして偏光フィルム1と位相差フィルム13とを貼合したとする場合の、吸収軸と進相軸との相対角度について評価を行う。具体的には、積層フィルム100における左側部分LDと中央部分CDと右側部分RDとのそれぞれにおいて、吸収軸と進相軸との相対角度が、所定角度(本実施形態では、例えば0.24°)未満となるか否かについて判断する。
図5に示すように、左側部分LDにおける相対角度θLは、吸収軸A1の角度θA1と進相軸F1の角度θF1との相対角度であり、θL=|θA1−θF1|で表される。中央部分CDにおける相対角度θCは、吸収軸A2の角度θA2と進相軸F2の角度θF2との相対角度であり、θC=|θA2−θF2|で表される。右側部分RDにおける相対角度θRは、吸収軸A3の角度θA3と進相軸F3の角度θF3との相対角度であり、θR=|θA3−θF3|で表される。
本実施形態の選択工程S14においては、各相対角度θL,θC,θRのいずれもが、所定角度(0.24°)未満の場合に、積層フィルム100において吸収軸と進相軸とのずれが十分に小さいと判断する。
ここで、例えば、図4および図5のように偏光フィルム1と位相差フィルム13とが貼合されて形成される積層フィルム100において、各相対角度θL,θC,θRのいずれもが、所定角度(0.24°)未満であったとする。この場合、選択工程S14においては、貼合面が図4および図5に示す組み合わせとなるように、偏光フィルム1の貼合面と位相差フィルム13の貼合面とを選択する。すなわち、偏光フィルム1の貼合面としては、偏光フィルム外側面1bを選択し、位相差フィルム13の貼合面としては、位相差フィルム内側面13aを選択する。
一方、本実施形態の選択工程S14においては、各相対角度θL,θC,θRのいずれか1つ以上が、所定角度(0.24°)以上の場合、積層フィルム100において吸収軸と進相軸とのずれが比較的大きいと判断する。
ここで、例えば、図4および図5のように偏光フィルム1と位相差フィルム13とが貼合されて形成される積層フィルム100において、各相対角度θL,θC,θRのいずれか1つ以上が、所定角度(0.24°)以上であったとする。この場合、図4および図5に示す組み合わせとは異なる貼合面の組み合わせについて再度検討を行う。
再度検討を行う場合、例えば、次に図6に示すようにして、偏光フィルム1と位相差フィルム13とを貼合する場合について考える。図6では、偏光フィルム1は、図4と同様に上出しされている。原反ロール113は、図4における原反ロール113の姿勢に対して幅方向(Y軸方向)に反転された姿勢でセットされており、位相差フィルム13は原反ロール113の下側から巻き出されている。これにより、図6および図7において位相差フィルム13は、図4および図5に示す位相差フィルム13の姿勢に対して、幅方向(Y軸方向)および積層方向(Z軸方向)に反転された姿勢で偏光フィルム1に貼合される。以下の説明においては、フィルムを原反ロールの下側から巻き出すことを単に「下出し」と呼ぶ場合がある。
図6においては、偏光フィルム外側面1bと、位相差フィルム13の両面のうち原反ロール113において巻かれる際に外側となる位相差フィルム外側面13bと、が貼合される。すなわち、図6においては、位相差フィルム13の貼合面が、図4における貼合面と異なり、位相差フィルム外側面13bとなっている。偏光フィルム1の貼合面は、図4と同様に偏光フィルム外側面1bである。
上述したように、図6および図7において位相差フィルム13は、図4および図5に示す位相差フィルム13の姿勢に対して、幅方向(Y軸方向)に反転された姿勢となっている。そのため、図6および図7において、第1部分FD1は、位相差フィルム13における幅方向右側(+Y側)の部分であり、第3部分FD3は、位相差フィルム13における幅方向左側(−Y側)の部分である。第2部分FD2は、図4および図5と同様に、位相差フィルム13における幅方向中央の部分である。
図6および図7の例において、位相差フィルム13の第1部分FD1は、偏光フィルム1の第3部分AD3と積層方向(Z軸方向)に対向して貼合される。位相差フィルム13の第2部分FD2は、偏光フィルム1の第2部分AD2と積層方向に対向して貼合される。位相差フィルム13の第3部分FD3は、偏光フィルム1の第1部分AD1と積層方向に対向して貼合される。すなわち、図6および図7の例の場合、位相差フィルム13の第1部分FD1および第3部分FD3が貼合される偏光フィルム1の部分は、図4および図5の例の場合と異なる。
これにより、図6および図7において、積層フィルム100の左側部分LDは、偏光フィルム1の第1部分AD1と位相差フィルム13の第3部分FD3とが積層されて構成されている。右側部分RDは、偏光フィルム1の第3部分AD3と位相差フィルム13の第1部分FD1とが積層されて構成されている。中央部分CDは、図4および図5と同様に、偏光フィルム1の第2部分AD2と位相差フィルム13の第2部分FD2とが積層されて構成されている。
上述したように、図6および図7において位相差フィルム13は、図4および図5に示す位相差フィルム13の姿勢に対して、積層方向(Z軸方向)に反転された姿勢となっている。そのため、図7に示すように、各進相軸F1〜F3の傾きが、図5に示す場合と幅方向(Y軸方向)に反転している。すなわち、第1部分FD1における長手方向(X軸方向)に対する進相軸F1の角度θF1は、正であり、第2部分FD2における長手方向に対する進相軸F2の角度θF2は、負であり、第3部分FD3における長手方向に対する進相軸F3の角度θF3は、正である。
図6のようにして偏光フィルム1と位相差フィルム13とを貼合したとする場合の、吸収軸と進相軸との相対角度について評価を行う。具体的には、積層フィルム100における左側部分LDと中央部分CDと右側部分RDとのそれぞれにおいて、吸収軸と進相軸との相対角度が、所定角度(本実施形態では、例えば0.24°)未満となるか否かについて判断する。
この場合、図7に示すように、左側部分LDにおける相対角度θLは、吸収軸A1の角度θA1と進相軸F3の角度θF3との相対角度であり、θL=|θA1−θF3|で表される。中央部分CDにおける相対角度θCは、吸収軸A2の角度θA2と進相軸F2の角度θF2との相対角度であり、θC=|θA2−θF2|で表される。右側部分RDにおける相対角度θRは、吸収軸A3の角度θA3と進相軸F1の角度θF1との相対角度であり、θR=|θA3−θF1|で表される。
ここで、図5の例においては、積層フィルム100の左側部分LD、中央部分CDおよび右側部分RDのいずれにおいても、各吸収軸の角度と各進相軸の角度とは互いに正負が逆である例を示しているため、各部における吸収軸と進相軸との相対角度は比較的大きくなりやすい。
これに対して、図7の例においては、位相差フィルム13が幅方向(Y軸方向)および積層方向(Z軸方向)に反転されたことで、位相差フィルム13の各進相軸の角度は正負が反転し、左側部分LDおよび右側部分RDにおいては、偏光フィルム1と重なる位相差フィルム13の部分も変わっている。その結果として、図7の例では、積層フィルム100の左側部分LD、中央部分CDおよび右側部分RDのいずれにおいても、各吸収軸の角度の正負と各進相軸の角度の正負とが一致している。したがって、図7の例において積層フィルム100の各部における吸収軸と進相軸との相対角度は、図5の例よりも、小さくなっている。
なお、図7においては、吸収軸A3の角度θA3と進相軸F1の角度θF1とが同じであり、吸収軸A3と進相軸F1とは重なりあって示されている。すなわち、図7の例において、右側部分RDにおける相対角度θRは0°である。
例えば、図6および図7のように偏光フィルム1と位相差フィルム13とが貼合されて形成される積層フィルム100において、各相対角度θL,θC,θRのいずれもが、所定角度(0.24°)未満であったとする。この場合、選択工程S14においては、貼合面が図6および図7に示す組み合わせとなるように、偏光フィルム1の貼合面と位相差フィルム13の貼合面とを選択する。すなわち、偏光フィルム1の貼合面としては、偏光フィルム外側面1bを選択し、位相差フィルム13の貼合面としては、位相差フィルム外側面13bを選択する。
一方、例えば、図6および図7のように偏光フィルム1と位相差フィルム13とを貼合して形成される積層フィルム100において、各相対角度θL,θC,θRのいずれか1つ以上が、所定角度(0.24°)以上であったとする。この場合、図6および図7に示す組み合わせとは異なる貼合面の組み合わせについて、さらに検討を行う。さらに検討する場合には、例えば、偏光フィルム1と位相差フィルム13とのうちの少なくとも一方を異なるフィルムに変更し、上述したのと同様にして貼合面の検討を行う。
このようにして、形成される積層フィルム100において、各相対角度θL,θC,θRのいずれもが、所定角度(0.24°)未満となるように、偏光フィルム1および位相差フィルム13を選択し、かつ、各フィルムにおける貼合面を選択する。
なお、上記の図4から図7を用いた選択工程S14の説明においては、説明のために、便宜上、偏光フィルム1と位相差フィルム13とを貼合し、積層フィルム100における各相対角度の評価を行うように説明した。しかし、実際の選択工程S14においては、偏光フィルム1と位相差フィルム13とを貼合させずに、吸収軸測定工程S11dと進相軸測定工程S13とから得られた各部分における吸収軸の角度データおよび進相軸の角度データから、各フィルムの選択および各貼合面の選択を行う。
本実施形態によれば、吸収軸測定工程S11dと進相軸測定工程S13とから得られた吸収軸の角度データおよび進相軸の角度データに基づいて、吸収軸と進相軸との相対角度が所定角度未満となるような貼合面を選択する選択工程S14が設けられている。そのため、位相差フィルム貼合工程S15において、選択工程S14において選択された貼合面同士を貼合することで、吸収軸と進相軸との相対角度が所定角度未満となるように偏光フィルム1と位相差フィルム13とを貼合できる。これにより、得られる積層フィルム100において、偏光フィルム1の吸収軸と位相差フィルム13の進相軸との相対角度を小さくでき、吸収軸と進相軸とがずれることを抑制できる。したがって、偏光度に優れた積層フィルム100が得られる。これにより、本実施形態によれば、積層フィルム100を液晶表示装置に用いた場合に、液晶表示装置のコントラストが低下することを抑制できる。
また、例えば、吸収軸と進相軸とのずれを抑制する他の方法として、偏光フィルム1と位相差フィルム13とを積層方向に平行な軸周りに回転させ、吸収軸の角度と進相軸の角度とを調整しつつフィルム同士を貼合する方法が考えられる。しかし、この方法では、偏光フィルム1と位相差フィルム13との貼合角度をずらすため、本実施形態のように原反ロールから巻き出した各フィルム同士を貼合する方法を用いることができず、長尺の積層フィルムを得にくい問題がある。
また、例えば、吸収軸と進相軸とのずれを抑制する他の方法として、偏光フィルム1と位相差フィルム13とを、長手方向を揃えて貼合した際に吸収軸と進相軸とのずれが抑制されるようにカットして、貼合される各フィルムの形状を修正する方法も考えられる。しかし、この方法では、フィルムをカットする手間が掛かり、積層フィルムの製造コストが大きくなる問題がある。また、上述した他の方法と同様に、長尺の積層フィルムを得にくい。また、仮に長尺の積層フィルム得られた場合であっても、フィルムをカットすることにより幅方向の寸法が小さくなる問題がある。
これらの方法に対して、本実施形態によれば、長尺に製造された偏光フィルム1および位相差フィルム13の貼合角度をずらすことなく、かつ、フィルムをカットして形状を修正することもなく、長手方向を揃えてフィルム同士を貼合して長尺の偏光フィルム1を得ることが可能である。そのため、積層フィルム100の製造コストが大きくなることを抑制でき、かつ、容易に長尺の積層フィルム100が得られる。また、積層フィルム100の幅方向の寸法が小さくなることも抑制できる。このような観点から、本実施形態の製造方法は、長手方向の長さが100m以上の積層フィルムを製造する場合に、より効果的であり、幅方向の長さが30cm以上の積層フィルムを製造する場合に、より効果的である。
また、例えば、偏光フィルムの原反ロールを製造した場合に、吸収軸の角度が貼合する位相差フィルムの進相軸と大きくずれていると、製造する積層フィルムとして所望の特性を得られない。そのため、例えば、製造した偏光フィルムを廃棄して、新たに偏光フィルムの原反ロールを製造する場合がある。これにより、製造した偏光フィルムが無駄になり、積層フィルムの歩留まりが低下する問題がある。
これに対して、本実施形態によれば、選択工程S14が設けられているため、製造した偏光フィルム1の吸収軸とずれが少ない進相軸を有する位相差フィルムの貼合面を選択することで、偏光フィルム1が無駄になることを抑制できる。これにより、積層フィルム100の歩留まりが低下することを抑制できる。
また、本実施形態によれば、選択工程S14において、吸収軸の角度と進相軸の角度との相対角度が0.24°未満となるように、各貼合面が選択される。そのため、製造される積層フィルム100において、吸収軸と進相軸とのずれを好適に抑制でき、積層フィルム100の偏光度を好適に向上させることができる。
また、吸収軸測定工程S11dにおいて測定された偏光子10の吸収軸の角度が、所望する角度から大きく外れているような場合、製造される偏光フィルム1についても所望する性能は得られにくい。この場合、偏光フィルム1を利用できる製品の幅が狭くなる問題がある。
これに対して、本実施形態によれば、吸収軸測定工程S11dは、偏光子形成工程S11fの後、保護フィルム貼合工程S11eの前に設けられている。そのため、吸収軸測定工程S11dにおいて測定された偏光子10の吸収軸の角度が所望する角度から大きく外れているような場合、偏光子10の搬送を停止して、保護フィルム11の貼合を中止することができる。これにより、保護フィルム11が貼合されていない状態の偏光子10を得ることができる。したがって、偏光子10に貼合されるフィルムの種類等を変更することができ、製造される偏光フィルムあるいは他の多層フィルムを利用できる製品の幅が狭くなることを抑制できる。
また、本実施形態によれば、位相差フィルム準備工程S12において、複数の位相差フィルム13が準備され、選択工程S14において、位相差フィルム13の貼合面は、複数の位相差フィルム13の両面のうちから選択される。そのため、偏光フィルム1の貼合面と貼合される位相差フィルム13の貼合面の組み合わせを多くできる。これにより、得られる積層フィルム100において、偏光フィルム1の吸収軸と位相差フィルム13の進相軸との相対角度をより小さくしやすい。したがって、積層フィルム100の偏光度をより向上できる。このような観点から、位相差フィルム準備工程S12で準備する位相差フィルムの数は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。
また、本実施形態によれば、偏光フィルム準備工程S11において、複数の偏光フィルム1が準備され、選択工程S14において、偏光フィルム1の貼合面は、複数の偏光フィルム1の両面のうちから選択される。そのため、位相差フィルム13の貼合面と貼合される偏光フィルム1の貼合面の組み合わせを多くできる。これにより、得られる積層フィルム100において、偏光フィルム1の吸収軸と位相差フィルム13の進相軸との相対角度をより小さくしやすい。したがって、積層フィルム100の偏光度をより向上できる。このような観点から、偏光フィルム準備工程S11で準備する偏光フィルムの数は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。
また、このように、複数の偏光フィルム1と複数の位相差フィルム13との組み合わせを選択することで、吸収軸と進相軸とのずれが大きくなって所望の特性を得られないことを抑制できる。そのため、偏光フィルム1あるいは位相差フィルム13が無駄になることをより抑制できる。したがって、積層フィルム100の歩留まりが低下することをより抑制できる。
なお、一度の各準備工程において準備した偏光フィルム1および位相差フィルム13のうちの一部において、吸収軸と進相軸との相対角度が所定角度未満とならない場合には、そのフィルムの原反ロールを保管しておき、次回の各準備工程において準備するフィルムとして用いることができる。これにより、偏光フィルム1あるいは位相差フィルム13が無駄になることをより抑制できる。
上述したように、本実施形態の場合、偏光フィルム1の片面には、保護フィルム11が貼合されているため、1つの偏光フィルム1について貼合面として選択できる面は、保護フィルム11と逆側の偏光フィルム外側面1bのみである。しかし、位相差フィルム13の貼合面を変化させることで吸収軸と進相軸との相対角度を変化させることができ、実質的には、貼合面を選択する組み合わせが少なくなることはない。
なお、偏光フィルム1の両面に位相差フィルム13を貼合可能な場合には、偏光フィルム1の貼合面を、偏光フィルム外側面1bと、偏光フィルム1の両面のうち原反ロール101において巻かれる際に内側となる偏光フィルム内側面1aと、のうちから選択することができる。この場合、偏光フィルム1と位相差フィルム13との貼合方法を選択する自由度を大きくすることができる。
また、本実施形態によれば、吸収軸測定工程S11dにおいて偏光子10の幅方向の複数箇所において吸収軸の角度を測定し、進相軸測定工程S13において位相差フィルム13の幅方向の複数箇所において進相軸の角度を測定する。そして、選択工程S14において、複数の箇所で吸収軸と進相軸との相対角度が所定角度未満となるように、偏光フィルム1に位相差フィルム13を貼合する。そのため、積層フィルム100における幅方向の複数の箇所において、偏光フィルム1の吸収軸と位相差フィルム13の進相軸との相対角度を小さくでき、積層フィルム100の偏光度を向上できる。
なお、本実施形態においては、以下の方法を採用することもできる。
選択工程S14においては、吸収軸と進相軸との相対角度が所定角度未満となるように、各フィルムの貼合面が貼合される向きを選択してもよい。この場合、位相差フィルム貼合工程S15においては、選択工程S14において選択された貼合される向きに基づいて、偏光フィルム1の貼合面に位相差フィルム13の貼合面を貼合する。各フィルムの貼合面が貼合される向きとは、例えば、貼合面の長手方向の向きを含む。以下、詳細に説明する。
例えば、図4および図6に示すように、偏光フィルム1の原反ロール101と、位相差フィルム13の原反ロール113と、をそのまま用いてフィルム同士を貼合する場合、上出しする場合および下出しする場合のいずれにおいても、各フィルムの姿勢が長手方向に反転することはない。しかし、原反ロールを巻き直せば、フィルムの姿勢を長手方向に反転させることができる。この場合、幅方向における吸収軸または進相軸の分布は、長手方向に対しては均一であるものとみなすことができるから、フィルムの姿勢のみ長手方向に反転させることができる。
図8Aから図8Cは、原反ロールの巻き直しについて説明するための説明図である。図8Aから図8Cにおいては、偏光フィルム1の原反ロール101を巻き直す場合について示している。
図8Aに示すように、原反ロール101から偏光フィルム1の長手方向の一端1cを巻き出して、図8Bに示すように、他の芯材に巻き取っていく。これにより、巻き直された原反ロール201が得られる。図8Cに示すように、巻き直された原反ロール201は、偏光フィルム1の長手方向の他端1dが巻き出される側の端部となる。
このようにして得られた偏光フィルム1の原反ロール201を図4および図6のようにして上出しすると、図4および図6における姿勢に対して、偏光フィルム1の前後が長手方向に反転した姿勢となり、偏光フィルム1の貼合面である偏光フィルム外側面1bの貼合される向きを反転できる。この場合、偏光フィルム1の姿勢は幅方向にも反転されるため、位相差フィルム13の第1部分FD1および第3部分FD3が貼合される偏光フィルム1の部分は、図4および図6の例の場合と異なる。具体的には、位相差フィルム13の第1部分FD1および第3部分FD3に貼合される部分が、偏光フィルム1の第1部分AD1と第3部分AD3との間で逆になる。
一方、この場合、偏光フィルム1の貼合面は、図4および図6と同じ偏光フィルム外側面1bであり、偏光フィルム1の姿勢は、積層方向には反転しない。そのため、偏光フィルム1の吸収軸の角度の正負は、図4および図6に示す場合と同じである。このように、偏光フィルム1の貼合面の向きを変えることで、吸収軸の角度の正負を変えずに、偏光フィルム1と位相差フィルム13との貼合される部分を変化させて、吸収軸と進相軸との相対角度を変化させることができる。
以上のように、この方法によれば、選択工程S14において各フィルムの貼合面が貼合される向きを選択することで、同じ偏光フィルム1および位相差フィルム13を用いて、吸収軸と進相軸との相対角度を変化させる幅を広くすることができる。具体的には、同じ偏光フィルム1および位相差フィルム13を用いて、原反ロールを巻き直さずに貼合面を変化させる2つの組み合わせと、原反ロールを巻き直して貼合面を変化させる2つの組み合わせとの合計4つの組み合わせにおいて、吸収軸と進相軸との相対角度を変化させることができる。したがって、選択工程S14において、位相差フィルム貼合工程S15で各フィルムを貼合する貼合条件をより適切に選択することができる。その結果、積層フィルム100の偏光度が低下することをより抑制できる。また、複数製造した偏光フィルム1および位相差フィルム13を効率よく組み合わせて利用でき、積層フィルム100の製造効率を向上できる。
なお、上記例では、偏光フィルム1の原反ロール101を巻き直す場合について説明したが、これに限られない。位相差フィルム13の原反ロール113を巻き直して、位相差フィルム13の貼合面の貼合される向きを変化させてもよい。
また、偏光フィルム準備工程S11において、偏光フィルム1の形成方法は、特に限定されない。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂のフィルムを押出成形によって製造した後、延伸処理および染色処理を行う方法等により、偏光フィルム1を形成してもよい。
また、偏光フィルム準備工程S11においては、偏光フィルム1を形成しなくてもよく、予め形成された複数の偏光フィルム1を準備してもよい。また、偏光フィルム準備工程S11においては、1つの偏光フィルム1のみを準備してもよい。また、位相差フィルム準備工程S12においては、1つの位相差フィルム13のみを準備してもよい。また、偏光フィルム準備工程S11において、1つのみ偏光フィルム1を準備して、位相差フィルム準備工程S12において、1つのみ位相差フィルム13を準備してもよい。この場合、位相差フィルム貼合工程S15において貼合される各フィルムは必然的に決まるが、各貼合面および各貼合面の貼合される向きを選択することで、製造される積層フィルム100の偏光度の低下を抑制できる。
また、保護フィルム貼合工程S11eは、設けられていなくてもよい。また、保護フィルム貼合工程S11eの代わりに、あるいは保護フィルム貼合工程S11eに加えて、他のフィルム等が貼合される工程が設けられていてもよい。
また、吸収軸測定工程S11dにおいては、2箇所あるいは4箇所以上において吸収軸を測定してもよい。また、進相軸測定工程S13においては、2箇所あるいは4箇所以上において進相軸を測定してもよい。例えば、各軸を2箇所において測定した場合には、選択工程S14において、測定した2箇所で各軸同士の相対角度が所定角度未満となるように各貼合面を選択してもよい。また、例えば、各軸を4箇所以上において測定した場合には、選択工程S14において、測定した4箇所以上のすべての箇所で各軸同士の相対角度が所定角度未満となるように各貼合面を選択してもよい。
また、吸収軸測定工程S11dにおいては、1箇所のみにおいて吸収軸を測定してもよい。また、進相軸測定工程S13においては、1箇所のみにおいて進相軸を測定してもよい。この場合、選択工程S14においては、測定した1箇所で各軸同士の相対角度が所定角度未満となるように各貼合面を選択してもよい。
以上のように、本明細書において、選択工程S14において各軸同士の相対角度が所定角度未満となるように各貼合面を選択するとは、各測定工程において測定したすべての箇所において、各軸同士の相対角度が所定角度未満となるように各貼合面を選択することを含む。
また、吸収軸の角度と進相軸の角度とを測定する基準となる所定方向は、長手方向以外の方向であってもよい。
また、偏光子10の吸収軸は、偏光子10の透過軸と直交する。そのため、偏光子10の吸収軸を測定することは、偏光子10の透過軸を測定することと等価である。また、位相差フィルム13の進相軸は、位相差フィルム13の遅相軸と直交する。そのため、位相差フィルム13の進相軸を測定することは、位相差フィルム13の遅相軸を測定することと等価である。すなわち、吸収軸と進相軸とをそれぞれ測定し、吸収軸と進相軸との相対角度について評価を行うことは、透過軸と遅相軸とをそれぞれ測定し、透過軸と遅相軸との相対角度について評価を行うことと等価である。したがって、吸収軸測定工程S11dの代わりに偏光子10の透過軸を測定する工程が設けられてもよいし、進相軸測定工程S13の代わりに位相差フィルム13の遅相軸を測定する工程が設けられてもよい。
また、樹脂層形成工程S11aにおいて、プライマー層を形成する前に、プライマー層用塗工液が塗布される基材フィルム20の面にコロナ処理を施す工程を設けてもよい。また、樹脂層形成工程S11aにおいては、プライマー層が形成されなくてもよい。
また、樹脂層形成工程S11aにおける樹脂層34の形成に可塑剤を用いている場合には、染色工程S11cよりも前に、可塑剤を除去する処理を行ってもよい。可塑剤の除去は、例えば、積層体70を室温以上、70℃以下程度の水に浸漬し、積層体70に水を膨潤させることにより、積層体70から可塑剤を溶出させることで行う。
また、染色工程S11cにおいて架橋処理が設けられる場合、架橋処理の後には、偏光性積層体71を、純水、イオン交換水、蒸留水、水道水等の水に浸漬して水洗浄して、ホウ酸等を洗い流す処理を行ってもよい。水洗浄液にはヨウ化物を含んでいてもよい。そして、その後、偏光性積層体71を乾燥させる処理を行ってもよい。乾燥処理は、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥等、公知の方法を採用することができる。
また、染色工程S11cは、延伸工程S11bより前に行われてもよいし、染色工程S11cと延伸工程S11bとが同時に行われてもよい。
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態に対して、吸収軸測定工程が設けられる位置が異なる。なお、上記実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
図9は、本実施形態の積層フィルム100の製造方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態の積層フィルム100の製造方法は、図9に示すように、偏光フィルム準備工程S21と、吸収軸測定工程(第1測定工程)S22と、位相差フィルム準備工程S12と、進相軸測定工程S13と、選択工程S14と、位相差フィルム貼合工程S15と、を含む。
偏光フィルム準備工程S21は、吸収軸測定工程S11dが設けられていない点を除いて、第1実施形態の偏光フィルム準備工程S11と同様である。
吸収軸測定工程S22は、偏光フィルム準備工程S21の後、選択工程S14よりも前に設けられる。吸収軸測定工程S22においては、偏光フィルム準備工程S21で得られた偏光フィルム1における偏光子10の吸収軸を測定する。吸収軸の測定は、例えば、王子計測機株式会社製「KOBRA(登録商標)−WPR」、大塚電子株式会社製「RETS(登録商標)」等の測定器を用いて行う。測定器は、例えば、偏光フィルム1に保護フィルム11側から入射され偏光子10から射出された光を受光することで偏光子10の吸収軸の測定を行う。
本実施形態によれば、吸収軸測定工程S22が偏光フィルム準備工程S21の後に設けられている。そのため、例えば、保護フィルム貼合工程S11e等において吸収軸の角度にずれが生じるような場合であっても、吸収軸測定工程S22において、ずれた後の吸収軸の角度を測定できる。したがって、位相差フィルム13が貼合される直前の吸収軸の角度を測定することができ、選択工程S14において、より適切に貼合面を選択することができる。その結果、積層フィルム100の偏光度をより向上できる。
なお、上記実施形態においては、偏光子10における吸収軸の方向と位相差フィルム13における進相軸の方向とを合わせるものとしたが、これに限られない。例えば、偏光子10における吸収軸の方向と位相差フィルム13における遅相軸の方向とを合わせてもよい。この場合、進相軸測定工程S13の代わりに、所定方向に対する位相差フィルム13の遅相軸の角度を測定する遅相軸測定工程(第1測定工程)を設ける。また、選択工程S14においては、偏光フィルム1と位相差フィルム13とにおける互いに対向して貼合される部分において、吸収軸と遅相軸との相対角度が所定角度未満となるように、偏光フィルム1と位相差フィルム13とから、互いに貼合される貼合面を選択する。吸収軸と遅相軸とを合わせる場合においても、各軸同士の相対角度を所定角度(例えば、0.24°)未満とすることで、積層フィルム100の偏光度を向上できる。
また、第1実施形態および第2実施形態において上述した各方法は、矛盾しない範囲内において、相互に組み合わせることができる。
上述した各実施形態の積層フィルム100の製造方法を用いて実施例を製造し、本発明の有用性について確認した。
実施例において基材フィルムは、厚み90μmの未延伸のポリプロピレンフィルムとした。基材フィルムの融点は、163℃であった。基材フィルムの長手方向の引張弾性率は、80℃において205MPaであった。
実施例においてプライマー層用塗工液は、以下のようにして作製した。ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業株式会社製「Z−200」、平均分子量1100、平均ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し、濃度3質量%のポリビニルアルコール水溶液とした。得られた水溶液に架橋剤(住友化学株式会社製「スミレーズレジン(登録商標)650」)を、2質量部のポリビニルアルコールに対して1質量部混合して、プライマー層用塗工液を作製した。
実施例において樹脂層用塗工液は、以下のようにして作製した。ポリビニルアルコール粉末(株式会社クラレ製「PVA124」、平均重合度2400、平均ケン化度98.0モル%以上、99.0モル%以下)を95℃の熱水に溶解し、濃度8質量%のポリビニルアルコール水溶液とし、これを樹脂層用塗工液とした。
上述したようにして得られた基材フィルムを連続的に搬送しつつ、その片面にコロナ処理を施し、コロナ処理された面にマイクログラビアコーター(塗布装置)を用いて上述したプライマー層用塗工液を連続的に塗布した。塗布したプライマー層用塗工液を、第1乾燥装置において、60℃で3分乾燥させることにより、平均厚み0.2μmのプライマー層を形成した。
プライマー層が形成された基材フィルムを連続的に搬送しつつ、プライマー層上にリップコーター(塗布装置)を用いて上述した樹脂層用塗工液を連続的に塗布した。塗布した樹脂層用塗工液を、乾燥装置を用いて、80℃で8分乾燥させることにより、プライマー層上に樹脂層を形成した。
基材フィルム上にプライマー層および樹脂層が形成された積層体を、連続的に搬送しつつ、ニップロール間での延伸方法によって長手方向(フィルム搬送方向)に延伸した。延伸は、2段階に分けて行った。初めに、延伸温度140℃で延伸倍率が2.5倍となるまで延伸し、次に、延伸温度160℃で延伸倍率が5.8倍となるまで延伸した。なお、延伸倍率は、未延伸状態の積層体の長手方向の寸法に対する倍率である。すなわち、本実施例の延伸工程では、最終的に延伸倍率が5.8倍となるように積層体を延伸した。
延伸された積層体を連続的に搬送しつつ、ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む30℃の染色溶液に滞留時間が150秒程度となるように浸漬させ、樹脂層の染色処理を行った。10℃の純水で余分な染色溶液を洗い流した後、積層体をホウ酸とヨウ化カリウムとを含む76℃の架橋溶液に滞留時間が600秒となるように浸漬して架橋処理を行った。その後、積層体を10℃の純水で4秒洗浄し、80℃で300秒乾燥させた。これにより、配向された二色性色素が樹脂層に吸着された偏光子を得た。
上記偏光子が形成された基材フィルムの面と逆側の面にも上述したのと同様の処理を施して、偏光子を形成した。これにより、基材フィルムの両面にプライマー層を介して積層された偏光子が形成された偏光性積層体を得た。このような偏光性積層体を3つ製造した。この3つの偏光性積層体を、それぞれ第1の偏光性積層体、第2の偏光性積層体、第3の偏光性積層体とする。
第1の偏光性積層体および第2の偏光性積層体について、偏光子の吸収軸の角度を測定した。吸収軸の角度を測定する際には、基材フィルムの一方の面に形成された偏光子を剥離除去し、基材フィルムに残された側の偏光子について吸収軸の角度の測定を行った。基材フィルム側から偏光性積層体に光(波長:590nm)を入射させ、偏光子を透過する光を受光して吸収軸の角度を測定した。吸収軸の角度の測定には、王子計測機株式会社製「KOBRA(登録商標)−WPR」を用いた。吸収軸の角度の測定は、偏光性積層体の幅方向の中央部分、すなわち第2部分と、偏光性積層体の幅方向の両側部分、すなわち第1部分および第3部分と、について行った。
第1部分における測定箇所は、偏光性積層体における幅方向一方側の端部から幅方向他方側に50mmの位置を中心として幅方向および長手方向に40mm×40mmとなる部分とした。第2部分における測定箇所は、偏光性積層体における幅方向の中心位置を中心として、幅方向および長手方向に40mm×40mmとなる部分とした。第3部分における測定箇所は、偏光性積層体における幅方向他方側の端部から幅方向一方側に50mmの位置を中心として幅方向および長手方向に40mm×40mmとなる部分とした。各部分の測定箇所について、1回測定を行い、その平均値を各部分における吸収軸の角度とした。
上記吸収軸を測定した第1の偏光性積層体および第2の偏光性積層体のそれぞれについて、偏光性積層体を連続的に搬送しつつ、接着剤溶液を偏光子上に塗布し、接着層を形成した。貼合面にケン化処理が施されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタオプト株式会社製「KC4UY」、厚み40μm)を、接着層を介して偏光子に貼合した。貼合方法としては、偏光子上に接着層を介してTACフィルム(保護フィルム)が接着された状態で、偏光性積層体を一対のロール間に通し、圧着する方法とした。
接着剤溶液は、以下のように作製した。ポリビニルアルコール粉末(株式会社クラレ製「KL−318」、平均重合度1800)を95℃の熱水に溶解し、濃度3質量%のポリビニルアルコール水溶液とした。得られた水溶液に架橋剤(住友化学株式会社製「スミレーズレジン(登録商標)650」)を2質量部のポリビニルアルコールに対して1質量部の割合で混合し、接着剤溶液とした。
TACフィルムが貼合された第1の偏光性積層体および第2の偏光性積層体から基材フィルムを剥離除去して、第1の偏光フィルムおよび第2の偏光フィルムを得た。得られた第1の偏光フィルムおよび第2の偏光フィルムをそれぞれ芯材に巻き取り、原反ロールとした。
第3の偏光性積層体について、上述した第1の偏光性積層体および第2の偏光性積層体と同様にして、TACフィルムを貼合した。第3の偏光性積層体においては、偏光性積層体の両面にTACフィルムを貼合した。その後、基材フィルムと一方の偏光子との間で第3の偏光性積層体を分離し、基材フィルム付の偏光性積層体から基材フィルムを剥離除去して第3の偏光フィルムを得た。得られた第3の偏光フィルムを芯材に巻き取り原反ロールとした。
第3の偏光フィルムについて、偏光子の吸収軸の角度を測定した。吸収軸の角度を測定する際には、第3の偏光フィルムに光(波長:590nm)を入射させ、偏光子を透過する光を受光して吸収軸の角度を測定した。吸収軸の角度の測定には、王子計測機株式会社製「KOBRA(登録商標)−WPR」を用いた。吸収軸の角度の測定は、第3の偏光フィルムの幅方向の中央部分および第3の偏光フィルムの幅方向の両側部分、すなわち第1部分から第3部分について行った。第3の偏光フィルムの第1部分から第3部分の測定箇所は、上述した第1の偏光性積層体および第2の偏光性積層体における第1部分から第3部分と同様とした。
第1の偏光フィルム、第2の偏光フィルムおよび第3の偏光フィルムのそれぞれについて、偏光子の厚みは5.3μmであった。
上記測定した各偏光フィルムの吸収軸の角度[°]を表1に示す。表1に示す吸収軸の角度は、図4に示すようにして、上出しした場合の偏光フィルムの姿勢における吸収軸の角度である。
表1においては、各偏光フィルムの視感度補正偏光度[%]についても共に示している。視感度補正偏光度は、以下のようにして算出した。まず、グラントムソンプリズムに所定の波長の光を入射させ、グラントムソンプリズムから射出される偏光に対する偏光フィルムの透過率を測定した。透過率の測定には、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製、V7100)を用いた。透過率は、光源から射出された全光量(この場合、グラントムソンプリズムから射出される偏光の全光量)に対する、測定対象を透過した光の光量(測定器で受光された光量)の比である。
透過率としては、MD透過率と、TD透過率と、をそれぞれ測定した。MD透過率とは、グラントムソンプリズムから射出される偏光の偏光方向と、偏光フィルムの透過軸の方向と、を平行にしたときの透過率である。TD透過率とは、グラントムソンプリズムから射出される偏光の偏光方向と、偏光フィルムの透過軸の方向と、を直交にしたときの透過率である。測定されたMD透過率およびTD透過率を以下の(式2)に代入して、偏光度を算出した。
なお、(式2)に代入したMD透過率およびTD透過率の値は、380nm以上、780nm以下の各波長の光をグラントムソンプリズムに入射させた場合のそれぞれについて測定した各透過率を平均した値とした。
上記(式2)によって算出した偏光度に対して、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正偏光度を求めた。なお、本明細書においては、視感度補正偏光度を、単に偏光度と呼ぶ場合がある。
次に、位相差フィルムとして、シクロオレフィン系横延伸位相差フィルム(日本ゼオン株式会社製、ゼオノアフィルム(登録商標))の原反ロールを2つ準備した。2つの位相差フィルムを、第1の位相差フィルムと、第2の位相差フィルムとする。第1の位相差フィルムおよび第2の位相差フィルムのそれぞれについて、進相軸を測定した。進相軸の角度の測定は、王子計測機株式会社製「KOBRA(登録商標)−WPR」を用いて、上述した偏光フィルムと同様に行った。測定結果を表2に示す。表2に示す進相軸の角度[°]は、図4に示すようにして、上出しした場合の位相差フィルムの姿勢における進相軸の角度である。
上記のようにして得られた3つの偏光フィルムの吸収軸の測定データと、2つの位相差フィルムの進相軸の測定データと、から相対角度が0.24°未満となる組み合わせについて確認した。結果を表3から表8に示す。
表3は、第1の偏光フィルムと第1の位相差フィルムとを貼合した場合について示している。表4は、第1の偏光フィルムと第2の位相差フィルムとを貼合した場合について示している。表5は、第2の偏光フィルムと第1の位相差フィルムとを貼合した場合について示している。表6は、第2の偏光フィルムと第2の位相差フィルムとを貼合した場合について示している。表7は、第3の偏光フィルムと第1の位相差フィルムとを貼合した場合について示している。表8は、第3の偏光フィルムと第2の位相差フィルムとを貼合した場合について示している。
表3から表8のそれぞれにおいては、原反ロールにおける偏光フィルムの巻き状態が上記製造したままの巻き状態の場合と、図8Aから図8Cに示したように巻き直して長手方向に反転させた巻き状態とした場合との、両方について示している。また、その両方について、位相差フィルムを図4のように上出しした場合と、位相差フィルムを図6のように下出しした場合と、を示している。偏光フィルムの巻き出し方はいずれの場合も上出しとした。
上記の表1および表2に示す角度データは、偏光フィルムの巻き状態が製造したままの巻き状態において、図4のようにして偏光フィルムと位相差フィルムとを共に上出しで貼合する場合における角度データである。すなわち、偏光フィルムの巻き状態が製造したままの巻き状態で、偏光フィルムの巻き出し方と位相差フィルムの巻き出し方とが共に上出しである場合には、積層フィルムにおける左側部分の相対角度は、表1における第1部分の吸収軸の角度と表2における第1部分の進相軸の角度との差の絶対値である。積層フィルムにおける右側部分の相対角度は、表1における第3部分の吸収軸の角度と表2における第3部分の進相軸の角度との差の絶対値である。
位相差フィルムの巻出し方を下出しとした場合には、位相差フィルムの姿勢は、幅方向および積層方向に反転する。そのため、表3から表8において、進相軸の角度は、左側部分と右側部分とで入れ替わっており、かつ、表2に示す値に対して正負が逆転している。
偏光フィルムの巻き状態を巻き直して反転させた状態とした場合には、偏光フィルムの姿勢は、幅方向および長手方向に反転する。そのため、表3から表8において、吸収軸の角度は、左側部分と右側部分とで入れ替わっている。この場合、偏光フィルムの姿勢は、積層方向には反転しないため、表1に示す値に対して吸収軸の正負は変わっていない。
なお、積層フィルムの中央部分については、上述したいずれの組み合わせにおいても、相対角度が0.24°未満であったため、表3から表8において記載を省略している。
表3から表8において、網掛けして示している箇所が、積層フィルムの中央部分、左側部分および右側部分のいずれにおいても相対角度が0.24°未満となっている箇所である。この中から、各貼合面および各貼合面を貼合する向きを選択して、各フィルムを貼合することで、吸収軸と進相軸とのずれが小さく、偏光度の低下が抑制された積層フィルムが得られる。
表3から表8に示された、いずれの部位においても相対角度が0.24°未満となる組み合わせのうちから選択して、実施例1から実施例6の積層フィルムを製造した。また、表3から表8に示された左側部分および右側部分の少なくとも一方において相対角度が0.24°以上となる組み合わせのうちから選択して、比較例1から比較例4の積層フィルムを製造した。
実施例1は、偏光フィルムの巻き状態は製造したままの状態として、第3の偏光フィルムと第1の位相差フィルムとを共に上出しで貼合して製造した。
実施例2は、偏光フィルムの巻き出し状態は製造したままの状態として、第3の偏光フィルムと第2の位相差フィルムとを共に上出しで貼合して製造した。
実施例3は、偏光フィルムの巻き出し状態は巻き直して反転させた状態として、第1の偏光フィルムを上出し、第2の位相差フィルムを下出しで貼合して製造した。
実施例4は、偏光フィルムの巻き出し状態は巻き直して反転させた状態として、第1の偏光フィルムを上出し、第1の位相差フィルムを下出しで貼合して製造した。
実施例5は、偏光フィルムの巻き出し状態は巻き直して反転させた状態として、第2の偏光フィルムを上出し、第1の位相差フィルムを下出しで貼合して製造した。
実施例6は、偏光フィルムの巻き出し状態は巻き直して反転させた状態として、第2の偏光フィルムを上出し、第2の位相差フィルムを下出しで貼合して製造した。
比較例1は、偏光フィルムの巻き出し状態は製造したままの状態として、第1の偏光フィルムと第2の位相差フィルムとを共に上出しで貼合して製造した。
比較例2は、偏光フィルムの巻き出し状態は製造したままの状態として、第2の偏光フィルムと第2の位相差フィルムとを共に上出しで貼合して製造した。
比較例3は、偏光フィルムの巻き出し状態は製造したままの状態として、第2の偏光フィルムと第1の位相差フィルムとを共に上出しで貼合して製造した。
比較例4は、偏光フィルムの巻き出し状態は巻き直して反転させた状態として、第3の偏光フィルムを上出し、第2の位相差フィルムを下出しで貼合して製造した。
各実施例および各比較例において、偏光フィルムと位相差フィルムとの貼合は、以下のようにして行った。まず、位相差フィルムの貼合面に紫外線硬化性接着剤((株)ADEKA製の「KR−75T」)を硬化後の厚みが1.0μm程度となるように小径グラビアコーターを用いて塗工した。そして、図4あるいは図6のように、一対のニップロールを用いて、位相差フィルムを、紫外線硬化性接着剤を介して偏光フィルムに圧着させた。圧着したフィルムに、高圧水銀ランプを用いて、位相差フィルム側から200mJ/cm2の積算光量で紫外線を照射して紫外線硬化性接着剤を硬化させた。これにより、各実施例および各比較例の積層フィルムを得た。製造した各積層フィルムは、長尺の帯状であり、長手方向の寸法は500mとした。各積層フィルムは、芯材に巻き取られた原反ロールとした。
上記のようにして得られた各実施例および各比較例のそれぞれについて、位相差フィルム側から光を入射させて視感度補正偏光度を測定した。結果を表9および表10に示す。
表9および表10から、実施例1から実施例6では、中央部分、左側部分および右側部分のいずれにおいても、視感度補正偏光度が99.992%以上であるのに対して、比較例1から比較例4においては、左側部分および右側部分のうちの一方あるいは両方において、視感度補正偏光度が99.992%未満であることが確かめられた。経験的に、視感度補正偏光度が99.992%以上であれば、積層フィルムを液晶表示装置に用いた場合に、十分に高いコントラストが得られることが分かっている。
したがって、本実施例によれば、選択工程を設けることで、偏光度(視感度補正偏光度)に優れる積層フィルムを製造できることが確かめられた。また、このように製造された積層フィルムを用いることで、液晶表示装置のコントラストが低下することを抑制できることが確かめられた。また、偏光度に優れ、かつ、長尺の積層フィルムを容易に得られることが確かめられた。
以上により、本発明の有用性を確認できた。