図2〜3は、本発明に係る接着物の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。以下、これらの図面に基づいて接着物の製造方法の各工程を説明する。
本実施形態に係る接着物の製造方法は、第1の被着体と第2の被着体とが接着剤パターンを介して貼り合わされている接着物の製造方法であって、第1の被着体4上に、厚み5〜90μmのフィルム状感光性接着剤1が2枚以上貼り合わされてなる感光性接着剤層11を設ける第1工程(図2を参照)と、感光性接着剤層11を露光し現像することにより接着剤パターン20を形成する第2工程(図3の(a)及び(b)を参照)と、接着剤パターン20に第2の被着体6を貼り合わせる第3工程(図3の(c)を参照)と、接着剤パターンを硬化させる第4工程と、を備える。
第1工程では、第1の被着体上に厚み5〜90μmのフィルム状感光性接着剤を順に2枚以上貼り合わせて感光性接着剤層を設けてもよく、或いは、予め厚み5〜90μmのフィルム状感光性接着剤を2枚以上貼り合わせた積層体を用意し、この積層体を第1の被着体上に貼り合わせて感光性接着剤層を設けてもよく、或いは、これらを組み合わせてもよい。
図1の(a)及び(b)は、本実施形態に係る感光性接着剤層を設けるために用いられる感光性接着剤シートの好適な実施形態を示す模式断面図である。図1の(a)に示される感光性接着剤シート10は、支持フィルム2と、支持フィルム2上に設けられた厚み5〜90μmのフィルム状感光性接着剤1とを有する。図1の(b)に示される感光性接着剤シート12は、支持フィルム2と、支持フィルム2上に5枚の厚み5〜90μmのフィルム状感光性接着剤1a,1b,1c,1d,1eを貼り合わせてなる厚みが100μm以上の感光性接着剤層11とを有する。感光性接着剤層11は、例えば、上記感光性接着剤シート10を用いて形成することができる。
支持フィルム2としては、フィルム状接着剤を製造するときの加熱・乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエーテルナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムは、シリコーン系やシリカ系の離型剤で処理されたものであってもよい。
支持フィルム2の厚みは、加熱・乾燥時の変形抑制と作業性の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。一方で、厚みが厚すぎるとロール状にした際の巻き始めの段差が大きくなり、接着剤に段差が転写する不具合が発生する傾向にあるため、厚みは300μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るフィルム状感光性接着剤は、バインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤、その他添加剤の配合により得られ、それらの混合溶液をフィルムのような基材に塗布して製造することができる。
本実施形態に係るフィルム状感光性接着剤は、接着強度の観点から、硬化成分を含有することが好ましい。硬化成分としては、例えば、熱により架橋反応を起こしうる反応性化合物、光により架橋反応を起こしうる反応性化合物が挙げられる。中でも、被着体の選択肢が広く、一度に均一に硬化反応を進ませることが容易である点から熱硬化成分を含有することが好ましい。ここで、熱硬化成分とは、熱によって反応を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる樹脂又は上記反応に係る化合物を意味する。
好ましいフィルム状感光性接着剤としては、バインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤及び熱硬化成分を含有する感光性接着剤組成物をフィルム状に形成したものが挙げられる。
具体的なバインダーポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステル、イミド骨格を有する熱可塑性樹脂、ポリアミド骨格を有する熱可塑性樹脂、ポリ(ベンゾオキサゾール)骨格を有する熱可塑性樹脂、アクリル樹脂、フェノール性水酸基を有する樹脂などが挙げられる。フェノール性水酸基を有する樹脂としては、ポリベンゾオキサゾール前駆体等が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、現像性の観点から、酸性の官能基又は塩基性の官能基を有するものが好ましい。アルカリ現像の場合は酸性の官能基を有するバインダーポリマーを配合することが好ましく、酸現像の場合は塩基性の官能基を有するバインダーポリマーを配合することが好ましい。酸性の官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基が挙げられる。塩基性の官能基としては、アミノ基が挙げられる。
またバインダーポリマーは、耐熱性、被着体への密着性の観点からイミド骨格を有する熱可塑性樹脂、芳香族ポリアミド骨格を有する熱可塑性樹脂、全芳香族ポリアミドや、ポリイミドの前駆体、ポリベンゾオキサゾール骨格を有する熱可塑性樹脂、又はポリベンゾオキサゾール前駆体、であることが好ましい。「耐熱性」とは、第1の被着体と第2の被着体とを接着剤パターンを介して熱圧着し接着剤パターンを硬化させて得られる接着物について、高温下に置いた際の耐はく離性を指す。
バインダーポリマーの重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は5000〜150000であることが好ましく、10000〜100000がより好ましく、10000〜60000が更により好ましい。上記バインダーポリマーのMwが5000より小さいと、フィルム形成性が低下する傾向にあり、150000を超えるとアルカリ現像液への溶解性が低下し、現像時間が長くなる傾向にある。上記の範囲内とすることにより、半導体素子を半導体素子搭載用支持基材に接着固定する際の熱溶融時の流動性を確保できるという効果も得られる。
本明細書において、バインダーポリマーの重量平均分子量とは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により、ポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線を基に算出した値を意味する。
本実施形態のフィルム状感光性接着剤は、可塑性を付与する観点から、バインダーポリマーとして、下記一般式(1)で表わされる構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を含むことが好ましい。
一般式(1)中、Uは4価の有機基であり、Vは2価の有機基を示す。但し、Uは、ベンゾオキサゾールを形成できるフェニル基を含む。
一般式(1)で表される構造単位は、Uが、ジフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ベンゼン等の骨格を有する四価の芳香族炭化水素残基であることが好ましい。炭素原子数としては、6〜30が好ましい。より好ましい基は、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルエーテル、ビフェニルである。なお、必要に応じて、Uとして上記にて例示した基の二種類以上を含有させることもできる。Vは、ベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノン等の骨格を有する二価の芳香族炭化水素残基、ブタン、シクロブタン等の骨格を有する二価の脂肪族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。炭素原子数としては、4〜30が好ましい。好ましい基としては、フェニル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルヘキサフルオロプロパンである。なお、必要に応じて、Vとして上記にて例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
また、本実施形態のフィルム状感光性接着剤は、熱時の弾性率向上の観点から、バインダーポリマーとして、下記一般式(2)で表わされる構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を含むことが好ましい。
一般式(2)中、U
1及びV
1は2価の有機基を示し、U
1及びV
1のうちの少なくとも一方が炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基としては、下記一般式(3)で表される基が好ましい。
一般式(3)中、R
11及びR
12は、各々独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はトリフルオロメチル基であり、aは1〜30の整数を示す。
ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量は、5000〜60000であることが好ましく、10000〜50000であることがより好ましく、20000〜40000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると現像性を十分確保しつつ接着剤の硬化物の可塑性、製膜性及び耐熱性をバランスよく得ることができる。
光重合性化合物としては、単官能モノマー及び多官能モノマーが挙げられる。単官能モノマー及び多官能モノマーは、紫外線等が照射されることにより光重合開始剤が発生させたラジカルにより、高分子バインダーや他の多官能モノマーと反応し、架橋構造を形成することで、フィルム状感光性接着剤の溶解性を減少させる働きを有する化合物が好ましい。
単官能モノマー及び多官能モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。具体的には、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(pーヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
本明細書において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はそれに対応するメタクリロイル基を意味し、(メタ)アクリロキシ基とはアクリロキシ基又はそれに対応するメタクリロキシ基を意味する。
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−200(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業株式会社製、商品名)又はFA−321M(日立化成工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、α,β−不飽和カルボン酸として(メタ)アクリル酸等を用いたものが挙げられる。具体的には、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH2−CH2−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH2−CH(CH3)−O−)(−CH(CH3)−CH2−O−)又は(−CH2−CH2−CH2−O−)のブロック構造を有することを意味する。
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、α,β−不飽和カルボン酸として(メタ)アクリル酸等を用いたものが挙げられる。具体的には、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が挙げられる。
ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、及び、EO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが挙げられる。
上記の光重合性化合物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
光重合性化合物は、密着性、解像性等のパターニング性を良好にする観点から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンを含むことがより好ましい。また、光重合性化合物は、低弾性な硬化膜が得られるため熱圧着時の圧着性に優れる観点から、ウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーを含むことが好ましい。
本実施形態のフィルム状感光性接着剤における光重合性化合物の含有量は、密着性及び解像性を向上し、さらに低吸湿率、低透湿率を高水準で達成する観点から、バインダーポリマー及び光重合性化合物の合計100質量部に対して、20〜60質量部であることが好ましく、30〜50質量部であることがより好ましく、30〜45質量部であることがさらに好ましい。
光重合開始剤は、電磁波、特に、紫外線を吸収し、解裂及び/又は他分子からの水素引きぬきを行い、ラジカルを発生させるものが挙げられ、常法によって合成された化合物、或いは、市販の化合物を用いることができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパノン−1−オン、ミヒラーズケトン[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、2−エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2ーベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジル誘導体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物、チオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸の組み合わせ、例えば、エチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチル、2−クロルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチル、イソプロピルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、また、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体とミヒラーズケトンとの組み合わせ;9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−o−ベンゾイルオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(ο−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類などが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
市販の光重合開始剤としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1はイルガキュア−369(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパノン−1−オンはイルガキュア−907(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドはイルガキュア−819(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製)が入手可能である。
上述した化合物の中でも、感度及び接着剤の底部硬化性を良好にできる観点からアシルフォスフィンオキサイド類が好ましく、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドがより好ましい。
光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施形態のフィルム状感光性接着剤における光重合開始剤の含有量は、感度及び現像後のパターン形状を良好にする観点から、バインダーポリマー及び光重合性化合物の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。
熱硬化成分としては、例えば、熱硬化性樹脂、硬化剤及び硬化促進剤が挙げられる。熱硬化性樹脂を配合する場合には硬化剤を併用することができる。本発明において熱硬化性樹脂とは、熱により架橋反応を起こしうる反応性化合物をいう。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂及び芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂が挙げられる。中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、取り扱い性及びイミド骨格を有する樹脂との相溶性の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。これら熱硬化性樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂及び多官能エポキシ樹脂が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型或いはビスフェノールF型と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるものが挙げられる。具体的には、チバガイギー社製GY−260、GY−255、XB−2615、ジャパンエポキシレジン社製エピコート828,1007,807、新日本理化株式会社製BEO−60E、大日本インキ化学工業社製850−S等のビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、アミノ基含有、脂環式又はポリブタジエン変性等のエポキシ樹脂が好適に用いられる。
ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール及びアルキルフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるものが挙げられる。具体的には、東都化成社製YDCN−701,704、YDPN−638,602、ダウ・ケミカル社製DEN−431,439、チバガイギー社製EPN−1299、大日本インキ化学工業社製N−730、770、865、665、673、VH−4150,4240、日本化薬社製EOCN−120、BREN等を用いることができる。
その他の構造を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(三井化学株式会社製VG−3010L等)、サリチルアルデヒド−フェノール型又はクレゾール型エポキシ樹脂(日本化薬社製EPPN502H、FAE2500等)、大日本インキ化学工業社製エピクロン840,860,3050、ダウ・ケミカル社製DER−330,337,361、ダイセル化学工業社製セロキサイド2021、三菱ガス化学社製TETRAD−X,C、日本曹達社製EPB−13,27等も使用することができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用でき、混合物或いはブロック共重合物を用いてもよい。
エポキシ樹脂は、被着体同士の接着時の接着強度や硬化膜の信頼性をさらに向上させる観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又は多官能エポキシ樹脂を含むことが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び多官能エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。多官能エポキシ樹脂としては、硬化膜の信頼性をさらに向上させる観点から、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が特に好ましい。
本実施形態のフィルム状感光性接着剤における熱硬化性樹脂の含有量は、バインダーポリマー及び光重合性化合物の合計100質量部に対して、3〜40質量部であることが好ましく、5〜35質量部であることがより好ましく、7〜30質量部であることがさらに好ましく、10〜25質量部であることが特に好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が上記範囲内であると、含有量が上記範囲外である場合と比較して、現像性を確保しつつ熱硬化後の硬化膜が脆くなることを抑制することが容易となる。
エポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤を使用することが好ましく、これらを併用することがより好ましい。硬化剤及び硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン及び分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物が挙げられる。これらの中でも、アルカリ水溶液への溶解性に優れる点から、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物が好ましい。
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂を硬化させるために用いられる化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレートが用いられる。これらは、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のフィルム状感光性接着剤は、カップリング剤を含有することができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられる。
基板との密着性及び硬化膜の信頼性をさらに向上する観点から、本実施形態のフィルム状感光性接着剤はシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、有機官能基と加水分解基とを分子内に有するものであれば特に制限はなく、有機官能基としては、例えば、ビニル其、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基及びメルカプト基が挙げられ、加水分解基としては、例えば、アルコキシ基、クロル基、アセトキシ基、オキシム基、イソプロペノキシ基及びアミド基が挙げられる。工業的には加水分解反応の制御範囲が広く、ハンドリングが容易であるアルコキシ基を加水分解基に用いる場合が多い。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3―ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N’―ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、及びポリエトキシジメチルシロキサンが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
フィルム状感光性接着剤におけるカップリング剤の含有量は、バインダーポリマー及び光重合性化合物の合計100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、1〜7質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。カップリング剤の含有量が上記範囲内であると、密着性を向上させる効果を十分得ながら、接着剤の安定性等の特性への影響を十分小さくすることができる。
本実施形態のフィルム状感光性接着剤はフィラーを含有することができる。フィラーとしては、有機フィラー、無機フィラーが挙げられ、熱時の弾性率向上の点で無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、接着剤に低熱膨張性、低吸湿率を付与する目的で添加されるものが挙げられ、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、酸化鉄及びセラミックの無機絶縁体を単独又は2種以上混合して用いることができる。
有機フィラーとしては、有機ポリマーを微粒子化したものを用いることができ、例えば、アクリル樹脂系、フェノール樹脂系、アラミド樹脂系、ポリイミド樹脂系の微粒子、天然繊維のセルロース系微粒子が挙げられる。
感光性の観点から、フィラーは、一次粒径がサブミクロン以下であることが好ましい。また、フィラーは、相溶性、分散性、樹脂との結合や、相互作用を目的に、表面処理を施したものを用いることができる。
フィルム状感光性接着剤におけるフィラーの含有量は、耐熱性と感光性を両立する観点から、バインダーポリマー及び光重合性化合物の合計100質量部に対して、0〜100質量部であることが好ましく、0〜50質量部であることがより好ましく、0〜30質量部であることがさらに好ましい。
本実施形態のフィルム状感光性接着剤は、必要に応じて、上記以外のビニル化合物、光重合開始剤、可塑剤、染料、顔料、イメージング剤、充填剤等を配合して使用することができる。
図1の(a)に示されるフィルム状感光性接着剤1を備える接着剤シート10は以下のようにして製造することができる。
まず、上述した、バインダーポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤及び熱硬化成分等の各成分を有機溶媒に溶解する。ここで用いられる有機溶媒は、上記材料を均一に溶解又は混練できるものであれば特に制限はなく、そのようなものとしては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン等が挙げられる。次いで、必要に応じて、硬化促進剤、無機フィラー及び他の添加剤を加え、混合する。この場合、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミルなどの分散機を適宜組み合せて、混練を行ってもよい。
こうして得たペースト状混合物(感光性接着剤組成物)を、支持フィルム2上に均一に塗布し、使用した溶媒が充分に揮散する条件、例えば、60〜200℃の温度で0.1〜30分間加熱することにより、フィルム状感光性接着剤1を形成する。このとき、フィルム状感光性接着剤1の厚みが5〜90μmとなるように、ペースト状混合物の溶剤量、粘度の調整や、塗布初期の厚み(ダイコーターやコンマコーターなどのコーターを用いる場合はコーターと支持フィルム2のギャップを調整する)、乾燥温度、風量等を調整する。
感光性や接着力などに係る膜質を均一にする観点から、フィルム状感光性接着剤1の厚みは、5〜75μmが好ましく、10〜70μmがより好ましい。
支持フィルム2は、感光性接着剤層或いはその後形成される接着剤パターンの表面に平坦性を持たせる観点から、平坦性を有することが好ましい。例えば、PETフィルムのような支持フィルムは静電気による密着が高いため、作業性を向上するために平滑剤を使用している場合がある。平滑剤の種類や濃度によっては、接着剤に微少な凹凸を転写し平坦性を下げる場合がある。したがって、平滑剤を使用していない支持フィルムや、平滑剤の少ない支持フィルムを使用することが好ましい。またポリエチレンフィルム等の支持フィルムは柔軟性に優れる点で好ましいが、ラミネート時にロール痕などが感光性接着剤層表面に転写しないよう、支持フィルムの厚さや密度を適宜選択することが好ましい。
図1の(b)に示される感光性接着剤シート12は、感光性接着剤シート10を5枚作製し、これらのフィルム状感光性接着剤を順に貼り合わせて感光性接着剤層11を形成することにより作製することができる。
感光性接着剤シート12においては、感光性接着剤層11の厚みを、第1の被着体及び第2の被着体を接着する接着剤パターンの厚みと同じ、又は、現像工程での膜べり、硬化収縮などの工程を考慮して最終的に所望の厚みになるように計算された厚みにすることで、一回の貼り合わせによって第1の被着体上に所望の感光性接着剤層を設けることができる。
感光性接着剤シート12が有する感光性接着剤層11の厚みは100μm以上が好ましく、200〜2000μmがより好ましく、300〜1500μmが更に好ましい。
次に、第1の被着体4上に、厚み5〜90μmのフィルム状感光性接着剤1が2枚以上貼り合わされてなる感光性接着剤層11を設ける第1工程について説明する。
第1の被着体4としては、ガラス基板や透明樹脂基板等の透明基板、Siウェハ等の半導体ウェハ、半導体基板、有機基板、金属基板、セラミック基板などが挙げられる。透明樹脂基板としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルメタクリレート・スチレン樹脂、透明ABS樹脂、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン、などのスチレン系特殊透明樹脂からなる透明樹脂基板が挙げられる。
第1工程では、図2の(a)及び(b)に示されるように、感光性接着剤シート10を複数用い、これらのフィルム状感光性接着剤をラミネーター13によって順に貼り合わせていき、感光性接着剤層11を形成する。図2の(c)には、5枚のフィルム状感光性接着剤1a,1b,1c,1d,1eが貼り合されてなる感光性接着剤層11が示されている。
フィルム状感光性接着剤のラミネート方法としては、例えば、ロールラミネート、真空ラミネートなど公知の方法が挙げられる。ラミネートの条件としては、ラミネート温度がフィルム状感光性接着剤のガラス転移温度(Tg)以上且つ熱硬化成分が反応しない温度が好ましく、10℃〜180℃の範囲で、ロール圧力0.001N/cm以上、ロール速度0.01mm/s以上の条件が挙げられる。
感光性接着剤層11の厚みH1は、接着物の種類によって設定されるが、本実施形態においては100μm以上であっても、膜厚方向の特性のばらつきが少ない感光性接着剤層を均一な厚みで形成することができる。膜厚が厚くなるほどフィルム端部からの感光性接着剤の染み出しが多くなり、接着剤の保管の観点から、厚みH1は2000μm以下であることが好ましく、1500μm以下であることがより好ましい。
本実施形態では、感光性接着剤シート10を用いて感光性接着剤層11を形成しているが、感光性接着剤シート12を用いて一回のラミネートによって感光性接着剤層11を形成してもよい。
感光性接着剤層11の厚みを500μmの範囲とする場合、例えば、厚み25〜75μmのフィルム状感光性接着剤を7〜21枚貼り合わせることができる。
フィルム状感光性接着剤を形成する場合、均一な膜特性・厚みを維持する観点から、厚みは5〜90μmであることが好ましく、10〜80μmであることがより好ましい。このような範囲であれば、フィルムを形成する際のはじきやピンホールなどの発生を防止することができる。また、残存揮発分等による厚さ方向での偏りやそれらに起因する膜特性の均一性の低下を防止することができる。また、フィルム状感光性接着剤の厚みを上記範囲とした場合、残存揮発分を十分に低減させることができるため、厚さ方向で残存揮発分の濃度勾配の発生を防ぐことができ、感光性接着剤層における特性の勾配の発生も防ぐことができる。さらに、フィルム状感光性接着剤の厚みを上記範囲とした場合、塗工時に発生するボイドが多くなるなどの問題を防止できる。これにより、均一な厚みのフィルムを広い面積で製造することが容易となる。
厚い感光性接着剤パターンを形成する場合、上記範囲の厚さを2枚以上貼り合せることで均一な膜特性・厚みを維持することができる。貼り合せ時の応力や熱が感光性接着剤へ悪影響を及ぼすことをできるだけ減らすため、できるだけ厚いフィルム状感光性接着剤を作成し、貼り合せることが好ましい。なお、厚さによっては工夫次第で貼り合せ工程を減らすことができるため、貼付け工程を工夫して薄い膜を貼り合せることにより所望の特性を有する所望の厚さの接着剤パターンを形成することができる。例えば、150μm厚の接着剤パターンが必要な場合、75μm厚の接着剤を2枚貼り付ける、50μm厚の接着剤を3回貼り付ける、30μm厚の接着剤を5回貼り付ける、25μm厚の接着剤を6回貼り付ける等の手段がある。
上記の中で、厚みが25μmの場合と30μmの場合とを比べると、厚み30μmのほうが感光性接着剤へのストレスを少なくできると考えられるが、所望の厚みとするまでの貼り付け方を工夫することで貼り合せによるストレスを低減させることができる。例えば、25μm厚の接着剤を2枚貼り付けて50μm厚の接着剤にしたものを3枚貼り付けると、ストレスは4回分であり、一方、25μm厚の接着剤を3枚貼付けて75μm厚の接着剤にしたものを2枚貼り付けてもストレスは3回分となる。
本実施形態において、貼り付ける感光性接着剤は同じ組成、同じ厚さである必要はない。例えば、被着体と接する面に、密着力や接着力の高い組成のものを1層以上貼り付けて接着強度を向上させることができる。また、弾性率の低い組成のものを貼り付けて応力緩和の特性を改善することができる。さらに、厚膜の場合、光の透過度に応じて感度を調整した接着剤を貼り付けて、パターン形状や感度の向上を図ることができる。また、これらを組み合わせることもできる。
次に、感光性接着剤層11を露光し現像することにより接着剤パターン20を形成する第2工程について説明する。
感光性接着剤層11の露光はフォトリソグラフィ方式など公知の方法により行うことができ、例えば、マスク5を介して所定の部位に活性光線Lを照射して露光部を光硬化させる。なお、マスクを介した露光以外に直接描画法を用いることもできる。活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、YAGレーザー及び半導体レーザーの紫外線を有効に放射するものを用いることができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いることもできる。
露光後、感光性接着剤層上に支持フィルムが存在している場合には、支持フィルムを除去した後、ウエット現像等で光硬化させた部分以外の感光性接着剤層を除去して現像することにより、接着剤パターン20を形成させる(図3の(b)を参照)。こうして接着剤パターン付被着体30が得られる。
ウエット現像は、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられ、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammonium hydroxide:TMAH)、炭酸ナトリウム等が用いられる。
本実施形態で形成される接着剤パターンは、厚みH2が100μm以上であっても均一な膜厚を有することができる。また本実施形態においては、厚みH2が200〜2000μm、300〜1500μm、又は350〜1400μmである接着剤パターンを均一な膜厚で形成することができる。
次に、接着剤パターン20に第2の被着体6を貼り合わせる第3工程について説明する。
第2の被着体6としては、上述した第1の被着体と同様のものが挙げられる。
第2の被着体を貼り合わせる方法としては、被着体のサイズにあった熱圧着機、真空熱圧着装置などを用いることができる。
次に、接着剤パターンを硬化させる第4工程が行われ、接着剤パターンの硬化物22によって第1の被着体4と第2の被着体6とが接着された接着物40が得られる。
接着剤パターンの硬化は、例えば、硬化温度は60〜300℃が好ましく、室温の安定性と硬化速度の関係から80℃以上がより好ましく、電子部材部品の変形や省エネの点から200℃以下がより好ましい。
次に、本発明に係る接着物の製造方法の好適な例として、CMOSイメージセンサー等の固体撮像素子を接着物として得る方法について図4及び図5を参照しつつ説明する。
図4の(a)は本発明に係る接着物の製造方法によって得られる固体撮像素子の一実施形態を模式的に示す上面図であり、(b)は(a)のI−I線に沿った模式断面図である。図5は、図4に示される固体撮像素子を製造する方法の一実施形態を説明するための図である。図7は、図5に示される固体撮像素子を製造する方法の一実施形態を説明するための図である。
図4の(a)及び(b)に示される固体撮像素子100は、有効画素領域54を有する半導体基板50と透明基板60とが枠状に形成されたリブ52によって接着されているとともに封止された構造を有する。
本実施形態においては、まず、上述した第1工程及び第2工程と同様にして、有効画素領域54が設けられた半導体ウェハ50上に、有効画素領域54を囲む接着剤パターン20を形成する。こうして、図5の(a)に示されるような接着剤パターン付半導体ウェハ110を得る。なお、図5中の56は、ダイシングラインを示す。
次に、上述した第3工程と同様にして、接着剤パターン20の半導体ウェハとは反対側の面上に透明基板60を貼り合わせた後、上述した第4工程と同様にして接着剤パターン20を硬化させることにより、図5の(b)及び(c)に示される、半導体ウェハ50と透明基板60とが接着剤パターンの硬化物22によって接着された接着物120を得る。なお、図5の(c)は、図5の(b)のII−II線に沿った模式断面図である。
上記で得られた接着物120をダイシングライン56に沿って切断することにより、図4の(a)及び(b)に示される固体撮像素子100を得ることができる。
本実施形態においては、図5の(a)の時点でダイシングを行い、チップ化後に接着剤パターン20の半導体ウェハとは反対側の面上に透明基板60を貼り合せ、硬化させることにより図4に示される固体撮像素子100を得ることができる。
また、上述の実施形態ではダイシングによってリブが形成されているが、予めリブ形状を有する接着剤パターンを形成することができる。図6の(a)は本発明に係る接着物の製造方法によって得られる固体撮像素子の別の実施形態を模式的に示す上面図であり、(b)は(a)のIII−III線に沿った模式断面図である。図7は、図6に示される固体撮像素子を製造する方法の一実施形態を説明するための図である。
図6の(a)及び(b)に示される固体撮像素子102は、有効画素領域54を有する半導体基板50と透明基板60とが枠状に形成されたリブ52によって接着されているとともに封止された構造を有する。本実施形態においては、まず、上述した第1工程及び第2工程と同様にして、有効画素領域54が設けられた半導体ウェハ50上に、有効画素領域54を囲み、リブ形状を有する接着剤パターン20を形成する。こうして、図7の(a)に示されるような接着剤パターン付半導体ウェハ112を得る。なお、図7中の56は、ダイシングラインを示す。
次に、上述した第3工程と同様にして、接着剤パターン20の半導体ウェハとは反対側の面上に透明基板60を貼り合わせた後、上述した第4工程と同様にして接着剤パターン20を硬化させることにより、図7の(b)及び(c)に示される、半導体ウェハ50と透明基板60とが接着剤パターンの硬化物22によって接着された接着物122を得る。なお、図7の(c)は、図7の(b)のIV−IV線に沿った模式断面図である。
上記で得られた接着物122をダイシングライン56に沿って切断することにより、図6の(a)及び(b)に示される固体撮像素子102を得ることができる。本実施形態においても、図7の(a)の時点でダイシングを行い、チップ化後に接着剤パターン20の半導体ウェハとは反対側の面上に透明基板60を貼り合せ、硬化させることにより図6に示される固体撮像素子102を得ることができる。
CMOSイメージセンサー等の固体撮像素子を作製する場合には、本発明に係る接着剤パターンによって、半導体基板と透明基板とを接着するとともにセンサ部分を水分やほこり等の異物から守るためのリブを形成することができる。本発明によれば、リブの高さH3を100μm以上としても十分な接着強度で被着体同士を接着できることから、半導体基板と透明基板との距離を大きくすることにより透明基板に付着した異物に起因する画質の低下を抑制することができる。このようなリブを形成する観点から、上述した感光性接着剤層11の厚みH1を、100〜2000μmとすること好ましく、200〜2000μmとすることがより好ましい。
図8は、固体撮像素子を備えるカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。図8に示すカメラモジュール200は、固体撮像素子100を備える電子部品である。固体撮像素子100の半導体基板50は、はんだ216を介して半導体素子搭載用支持基材218に接着されている。カメラモジュール200は、有効画素領域54の真上に位置するように設けられたレンズ210と、レンズ210と、レンズ210とともに固体撮像素子を内包するように設けられた側壁214と、レンズ210が嵌め込まれた状態でレンズ210及び側壁214の間に介在する嵌め込み用部材212とが半導体素子搭載用支持基材218上に搭載された構成を有する。
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<ポリベンゾオキサゾール前駆体(A−1)の合成>
攪拌機、温度計を備えた2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン1000g、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAPK)208.8g、m−アミノフェノール6.6gを仕込み、攪拌溶解した。続いて、温度を5℃以下に保ちながら、セバコイル酸クロリド160.3gを90分間で滴下した後、60分間攪拌を続けた。得られた溶液を6リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを、純水で3回洗浄した後、減圧してポリベンゾオキサゾール前駆体(A−1)を得た。得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(A−1)の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して得られた重量平均分子量は21000であった。なお、GPCの条件は以下の通りである。
[GPC条件]
ポンプ:L6000 Pump(株式会社日立製作所製)
検出器:L3300 RI Monitor(株式会社日立製作所製)
カラム:Gelpack GL−S300MDT−5(計2本)(商品名、日立化成工業株式会社製)
カラムサイズ:直径8mm×300mm
溶離液:DMF/THF(質量比1/1)+LiBr・H2O 0.03mol/l+H3PO4 0.06mol/l
試料濃度:0.1質量%
流量:1ml/min
測定温度:40℃
<ポリイミド(A−2)の合成>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、3,5−ジアミノ安息香酸(分子量152.2、以下「DABA」と略す)1.89g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「D−400」(商品名)、分子量452.4)15.21g及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)、分子量248.5)0.39g及びN−メチル−2−ピロリジノン(以下「NMP」と略す)116gを仕込んだ。次いで、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(分子量326.3、以下「ODPA」と略す)16.88gをフラスコを氷浴中で冷却しながら、上記フラスコ内に少量ずつ添加した。添加終了後、更に室温で5時間攪拌した。次に該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレン70gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃に昇温させてその温度を5時間保持し、水と共にキシレンを共沸除去した。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させた。得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥することによりポリイミド(A−2)を得た。得られたポリイミド(A−2)の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して得られた重量平均分子量は33000であった。なお、GPCの条件は以下の通りである。
[GPC条件]
装置:HLC−8320GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel SuperAW商品名、東ソー社製)
カラムサイズ:直径6mm×15cm
溶離液:DMF/THF(質量比1/1)+LiBr・H2O 0.03mol/l+H3PO4 0.06mol/l
流量:0.35ml/min
試料濃度:約0.1質量%
測定温度:40℃
<ポリイミド(A−3)の合成>
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(以下「MBAA」と略す、分子量286.28)2.15g及び、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「D400」(商品名)、分子量433)15.59g及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)分子量348.4)2.26g及びNMPを仕込んだ。次いで、ODPA17gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミド(A−2)の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミド(A−3)」という。)を得た。得られたポリイミド(A−3)の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算して得られた重量平均分子量は28000であった。なお、GPCの条件は以下の通りである。
[GPC条件]
装置:HLC−8320GPC(東ソー社製)
カラム:TSKgel SuperAW(商品名、東ソー社製)
カラムサイズ:直径6mm×15cm
溶離液:DMF/THF(質量比1/1)+LiBr・H2O 0.03mol/l+H3PO4 0.06mol/l
流量:0.35ml/min
試料濃度:約0.1質量%
測定温度:40℃
<感光性接着剤組成物の調製>
(感光性接着剤組成物1〜3)
表1に示す材料を、それぞれ表1に示した配合割合(質量部)で混合し、感光性接着剤組成物1〜3の溶液をそれぞれ得た。
表1中の各記号は以下の化合物を示す。
BPE−100:新中村化学工業株式会社製、商品名、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート
BPE−200:新中村化学工業株式会社製、商品名、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン
FA−321A:日立化成工業株式会社製、商品名、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン
M313:東亜合成社製、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレートの混合物
TMCH−5:日立化成工業株式会社製、商品名、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート系ウレタンジアクリレートオリゴマ[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(モル比8.15/1.95/12)の混合物]
Irg−819:チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、商品名、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
YDF−8170:東都化成社製、商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
BEO−60E:新日本理化株式会社製、商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
VG−3101L:三井化学株式会社製、商品名、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂
TrisP−PA:本州化学社製、商品名、α,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン
R−972:日本アエロジル社製、商品名、疎水性フュームドシリカ
A−187:日本ユニカー株式会社製、商品名、エポキシ型シランカップリング剤
SZ−6030:東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製、商品名、メトキシ型シランカップリング剤
<感光性接着剤シートの作製>
(感光性接着剤シート1)
感光性接着組成物溶液1を50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと表記する)上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で約10分間乾燥して、PETフィルム上に、厚さ50μmのフィルム状感光性接着剤が設けられた感光性接着剤シート1を得た。なお、フィルム状感光性接着剤の厚みはダイヤルゲージ(株式会社ミツトヨ製、外枠:標準形、外径:φ57mm、目盛:0.01mm、測定範囲:20mm)にて測定した。
(感光性接着剤シート2)
感光性接着組成物溶液1を50μm厚のPETフィルム上に均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で約15分間乾燥して、PETフィルム上に、厚さ50μmのフィルム状感光性接着剤が設けられた感光性接着剤シート2を得た。
(感光性接着剤シート3)
感光性接着組成物溶液1を50μm厚のPETフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で約10分間乾燥して、PETフィルム上に、厚さ10μmのフィルム状感光性接着剤が設けられた感光性接着剤シート3を得た。
(感光性接着剤シート4)
感光性接着組成物溶液1を50μm厚のPETフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で約10分間乾燥して、PETフィルム上に、厚さ25μmのフィルム状感光性接着剤が設けられた感光性接着剤シート4を得た。
(感光性接着剤シート5)
感光性接着組成物溶液2を50μm厚のPETフィルム上に均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で約10分間乾燥して、PETフィルム上に、厚さ25μmのフィルム状感光性接着剤が設けられた感光性接着剤シート5を得た。
(感光性接着剤シート6)
感光性接着組成物溶液1を50μm厚のPETフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で約15分間乾燥して、PETフィルム上に、厚さ75μmのフィルム状感光性接着剤が設けられた感光性接着剤シート6を得た。
(感光性接着剤シート7)
感光性接着組成物溶液3を50μm厚のPETフィルム上に均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で約15分間乾燥して、PETフィルム上に、厚さ50μmのフィルム状感光性接着剤が設けられた感光性接着剤シート7を得た。
(感光性接着剤シート8)
感光性接着組成物溶液2を50μm厚のPETフィルム上に均一に塗布し、120℃の熱風対流式乾燥機で約45分間乾燥して、PETフィルム上に、厚さ150μmのフィルム状感光性接着剤が設けられた感光性接着剤シート7を得た。
[感光性接着剤シートの評価]
感光性接着剤シートのタックについて以下の方法により評価した。
(タック)
フィルム状感光性接着剤のPETフィルム側の面A及びその反対側の面B(乾燥面)について、各面10点ずつ30℃タックを株式会社RHESCA社製 タッキング試験機 TAC−II、プローブ:円柱型φ5.1(SUS304)を用いて測定した。面Aの平均値と面Bの平均値との差が300gf以下の場合を「A」、300gfを超える場合を「B」で示した。
<接着剤パターンの形成>
(実施例1)
感光性接着剤シート1を3枚用意した。次に、感光性接着剤シート1を、シリコンウェハー(エレクトロニクス エンド マテリアルズ コーポレーション製、商品名「5インチシリコンウェハ」)上に、フィルム状感光性接着剤が密着するように、常圧ラミネータ(大成ラミネーター株式会社製)にて60℃、0.4MPa、1.6m/minの条件でラミネートした。PETフィルムをはく離した後、フィルム状感光性接着剤のウェハとは反対側の面に、別の感光性接着剤シート1をフィルム状感光性接着剤が密着するように上記と同じ条件でラミネートした。これを更に1回繰り返し、ウェハ上に厚さ150μmの感光性接着層を設けた。
最後に貼り合わせた感光性接着剤シート1のPETフィルム上に、フォトマスク(ライン幅100μmのラインが抜けるフォトマスク)を載せ、高精度平行露光機(ミカサ株式会社)を用いて、PETフィルム側から露光量:3000mJ/cm2で紫外線を感光性接着層に照射した。その後、PETフィルムを剥離し、水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammonium hydroxide:TMAH)2.38%溶液を用いて1.5kgf/cm2の圧力でスプレー現像した。現像後、水洗し、接着剤パターンを形成した。
(実施例2)
感光性接着剤シート1を10回ラミネートして厚さ500μmの感光性接着層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、接着剤パターンを形成した。
(実施例3)
感光性接着剤シート1を20回ラミネートして厚さ1000μmの感光性接着層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、接着剤パターンを形成した。
(実施例4)
感光性接着剤シート1に代えて感光性接着剤シート2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、接着剤パターンを形成した。
(実施例5)
感光性接着剤シート1に代えて感光性接着剤シート3を用い、これを15回ラミネートして厚さ150μmの感光性接着層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、接着剤パターンを形成した。
(実施例6)
感光性接着剤シート1に代えて感光性接着剤シート4を用い、これを20回ラミネートして厚さ500μmの感光性接着層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、接着剤パターンを形成した。
(実施例7)
感光性接着剤シート1に代えて感光性接着剤シート5を用い、これを20回ラミネートして厚さ500μmの感光性接着層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、接着剤パターンを形成した。
(実施例8)
感光性接着剤シート1に代えて感光性接着剤シート6を用い、これを2回ラミネートして厚さ150μmの感光性接着層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、接着剤パターンを形成した。
(実施例9)
感光性接着シート1に代えて感光性接着剤シート7を用い、これを10回ラミネートして厚さ500μmの感光性接着層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、接着剤パターンを形成した。
(比較例1)
感光性接着剤シート1に代えて感光性接着剤シート8を用いたこと以外は実施例1と同様にして露光まで行った。その後、PETフィルムを剥離しようとしたところ、未露光部分とPETフィルムとの密着が強く、はく離が困難であった。
(比較例2)
バーコーターを使用して、感光性接着組成物2を6インチウェハ上に乾燥後の膜厚が150μmとなるように塗布し、これをホットプレートにて100℃で5分間乾燥した。形成された感光性接着剤層の膜厚を測定したところ端部が5μm以上盛り上がっていた。
感光性接着剤層上に、フォトマスク(ライン幅100μmのラインが抜けるフォトマスク)を載せ、高精度平行露光機(ミカサ株式会社)を用いて、PETフィルム側から露光量:1000mJ/cm2で紫外線を感光性接着層に照射した。その後、水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammonium hydroxide:TMAH)2.38%溶液を用いて1.5kgf/cm2の圧力でスプレー現像した。現像後、水洗し、接着剤パターンを形成した。
(比較例3)
スピンコーターを使用して、感光性接着組成物1を6インチウェハ上に乾燥後の膜厚が150μmとなるように、回転数100rpm、60秒の条件でスピンコートを行った。形成された感光性接着剤層の膜厚を測定したところ、面内に15μm以上のばらつきが発生していた。
(比較例4)
スピンコーターを使用して、感光性接着組成物1を6インチウェハ上に乾燥後の膜厚が15μmとなるように、回転数2000rpmの条件で30秒スピンコートを行い、これをホットプレートにて100℃で5分間乾燥した。この操作を10回繰り返し、ウェハ上に厚さ150μmの感光性接着剤層を形成した。
(比較例5)
非感光な半導体用接着フィルムであるダイボンディングフィルム HIATTACHシリーズ HS−270(日立化成製、膜厚50μm)を10枚用意した。次に、2枚の接着剤シートを接着剤層同士が密着するように、常圧ラミネータ(大成ラミネーター株式会社製)にて40℃、0.4MPa、1.6m/minの条件でラミネートし、100μmの接着剤層が設けられた接着剤シートを得た。
上記接着剤シートを5枚作成し、これらを以下の手順でラミネートした。接着剤シートの片方のPETフィルムをはく離した後、接着剤層同士が密着するように、別の片方のPETフィルムをはく離した接着シートを上記と同様の条件でラミネートした。これをさらに3回繰り返し、500μmの接着剤シートNPを得た。得られた接着剤シートNPを10mm×10mmの大きさにカットし、さらに5mm×5mmの大きさに穴明けできるパンチ冶具で中心部に穴をあけた。穴あけ加工された接着剤シートNPの片方のPETをはく離し、シリコンウェハ(エレクトロニクス エンド マテリアルズ コーポレーション製、商品名「5インチシリコンウェハ」)を20mm×20mmにダイシングしたチップ上に、接着剤が密着するように、常圧ラミネータ(大成ラミネーター株式会社製)にて60℃、0.4MPa、1.6m/minの条件でラミネートした。
[感光性接着剤層の評価]
ウェハ上に設けた感光性接着剤層の膜厚のばらつき、気泡の発生の有無について、下記の方法にしたがって評価した。
(膜厚のばらつき)
ウェハ上に設けた感光性接着剤層の膜厚を、ダイヤルゲージ(株式会社ミツトヨ製、外枠:標準形、外径:φ57mm、目盛:0.01mm、測定範囲:20mm)を用いてウェハ端部5点及び中心部5点測定した。10点中の最大差が10μm以下の場合を「A」、10μmを超える場合を「B」で示した。
(気泡の発生の有無)
感光性接着剤層を目視で観察し、気泡が含まれていない場合を「A」、気泡が含まれていた場合を「B」で示した。
*:ダイボンディングフィルム HIATTACHシリーズ HS−270(日立化成製、非感光な半導体用接着フィルム)
表2に示すように、実施例1〜9は感光性接着剤層の膜厚のばらつきが十分小さい。また、これらに用いた感光性接着剤シートは、気泡の発生がなく、フィルム状感光性接着剤の乾燥面と基材側面との膜質が同程度であることからタックの差が小さい。これにより均一な特性を有する感光性接着剤層及び接着剤パターンを形成することができる。一方、比較例1〜4は感光性接着剤層の膜厚のばらつきが大きい。特に比較例1は膜厚のバラツキが大きいだけでなく、用いた感光性接着剤シートのフィルム状感光性接着剤の乾燥面と基材面のタックに大きな違いがあり、感光性接着剤層の特性面においてもばらつきが顕著である。