JP6104123B2 - 電気機器のコイル製造方法 - Google Patents
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この様なワニス含浸方法として、コイルを熱硬化性樹脂のワニス中に浸漬してワニスを浸透させる浸漬含浸法や、コイルへワニスを滴下して含浸させる滴下含浸法、或いはコイルを真空容器内に収容し、容器内を減圧した状態でワニス中に浸漬もしくはコイルへワニスを滴下して含浸させる真空含浸法などがある。
特に滴下含浸法は、必要部分に必要な量だけのワニスを含浸させることができ、材料歩留まりの観点から優れた含浸方法である。一方、浸漬含浸法や真空含浸法は、ワニスの表面張力による毛細管現象に加え、ワニスの静水圧がかかることによりコイル中へのワニス浸透が促進されるのに対し、前記滴下含浸法では主として毛細管現象のみによりワニスがコイル中へ浸透するため、前記浸漬含浸法や真空含浸法に比較してワニスの浸透性が低く、コイルの導線間の空隙の残留により、絶縁性能低下や放熱性能低下が起こる場合がある。
この改善のため、コイルへワニスを滴下しているときに、固定子を振動子で加振して、コイル中の空気層を除去しワニスの浸透を促進する方法(例えば、特許文献1)や滴下時に固定子をコアの中心軸を水平に対し5°〜20°傾けて保持し、傾斜上部のコイル端にワニスを滴下して、ワニスの自重により浸透を促進する方法(例えば、特許文献2)などが提案されている。
鉄心に丸線の導線を列方向に整列巻線して第1層を形成するとともに、同時に前記第1層の導線間に形成される隙間に複数本の素繊維よりなる繊維束を巻線するステップ1、
前記第1層の巻線上に前記ステップ1と同様にして、順次第2層の導線および前記繊維束を巻線し所要の巻数を有するコイルを形成するステップ2、
前記コイルにワニスを滴下し、前記素繊維間および前記導線間に毛細管現象によって前記ワニスを浸透させるステップ3、
前記コイルを加熱し、前記ワニスを硬化させるステップ4を備え、
巻線する前の前記繊維束の直径は、前記第1層の導線の頂部と、前記第2層の互いに隣り合う導線が接する側部までの高さより大きいことを特徴とする。
以下、この発明による電気機器のコイルについて図面に基づいて説明する。
図1は実施の形態1におけるコイル50の巻線方法を示す模式図である。電磁鋼板等を積層して形成された鉄心1に、エナメル線やポリエステルイミド銅線などからなる所要の直径dを有する導線2を巻き回す巻線用ノズル21と、天然繊維、合成繊維またはガラス繊維等の無機繊維からなる繊維束3を巻き回す繊維束用ノズル31を、回転中心が同じになるよう旋回軸5に把持し、鉄心1の周囲を旋回させることにより、後述する図2(b)、図3に示す導線2間の隙間Sに図4に示すように繊維束3が充填されたコイルを形成する。
上記で得られたコイルを図2のA−A’断面を拡大して図4に示す。導線2間の隙間Sを埋めるように素繊維3aが充填されているのがわかる。
図6にワニス4の滴下後のコイル50の拡大断面図を示す。繊維束3を形成する素繊維3aの隙間にワニス4が浸透し、繊維束3とワニス4からなる層が形成されている。
その後、ワニス4の硬化温度に設定された熱風乾燥炉中で加熱して硬化させると含浸処理されたコイル50が得られる。このように、この実施の形態1によるコイル50は、列方向Lに整列配置された複数の導線2間およびこの列方向Lの上層および下層に整列配置された複数の導線2間に形成される隙間Sに繊維束3が充填されているとともに、繊維束3を構成する素繊維3a間にワニス4を毛細管現象により浸透させているので、毛細管現象によりワニス4が浸透し、導線2間の隙間Sや、コイル50と鉄心1との隙間Sの空気層を確実に除去し、鉄心1への熱伝達性およびコイル50の放熱性を向上させることができ、さらにはコイル50の小型化、軽量化が可能となりまた、ワニス4使用量の歩留りが向上するという効果がある。
尚、毛細管現象による浸透圧Pは下式に従うことが知られている。
P=2×T×cosθ/S
P:浸透圧、T:表面張力、θ:接触角、S:浸透隙間
上式より、浸透隙間Sの狭い繊維束3を充填することにより、浸透圧が増大し、ワニス4の浸透が促進されることがわかり、この実施の形態1の有効性が示される。
次にこの実施の形態1による効果を実施例を参照しながら述べる。
図1の方法に従い鉄心1に直径1.05mmの導線2と、太さ0.6mmのアクリル樹脂繊維束3を巻き回しコイル50を形成した。このとき導線2間の隙間Sの高さhは0.38mmである。その後、水分除去及び巻線中に生じた導線2の皮膜の応力緩和のため、100℃以上に加熱したのち、図5に示す方法にてワニス4をコイル50中に浸透させ、ワニス4の硬化温度に設定された熱風乾燥炉中で加熱しワニス4を硬化させ、含浸処理されたコイル50を得た。
鉄心1に直径1.05mmの導線2のみを巻き回したのち、水分除去及び巻線中に生じた導線2の皮膜の応力緩和のため、100℃以上に加熱したのち、ワニス4を滴下しコイル50中にワニス4を浸透させ、その後、ワニス4の硬化温度に設定された熱風乾燥炉中で加熱しワニス4を硬化させ、含浸処理されたコイル50を得た。
θ=θ2−θα=(R2/R1−1)×(235+θ1)+(θ1−θα)[℃]
θ:コイル50の温度上昇値、θ1:初期抵抗測定時のコイル50の温度、
θ2:試験後のコイル50の温度、 θα:試験後の室温、
R1:初期抵抗、 R2:試験後の抵抗
また、温度上昇についても、比較例が63.2℃であるのに対し、実施例では48.3℃と温度上昇が少ない。これは、実施例では隙間Sに充分ワニス4が充填され、コイル50で発生したジュール熱を鉄心1に効率良く熱伝達できているのに対し、比較例においては、導線2間に空隙があり、コイル50から鉄心1への熱伝達を阻害していることを示している。
また導線2に丸線を用いる例を示したが、四隅に面取りあるいは曲率が設けられた平角導線を用いてもよい。
尚、前述した実施の形態1の図1では導線2を巻き回す巻線用ノズル21と、繊維束3を巻き回す繊維束用ノズル31が近接して把持された例を示したが、回転中心が同じになるという要件さえ満たされれば良いため特に近接して把持される必要はなく、例えば図7に示すように、前記巻線用ノズル21と繊維束用ノズル31の2本が対向するように配置してもよい。
また、実施の形態1では、1本の導線2を巻き回す巻線用ノズル21に対し、繊維束用ノズル31が1本の例を示したが、例えば図8に示すように、繊維束用ノズル31を2本以上複数本配置してもよい。この場合各繊維束用ノズル31により巻き回される繊維束3を構成する素繊維3aは、同一素材のものに限られず、例えば、合成繊維とガラス繊維のように異なる素材のものを組み合わせてもよい。
50 コイル、S 隙間。
Claims (4)
- 鉄心に丸線の導線を列方向に整列巻線して第1層を形成するとともに、同時に前記第1層の導線間に形成される隙間に複数本の素繊維よりなる繊維束を巻線するステップ1、
前記第1層の巻線上に前記ステップ1と同様にして、順次第2層の導線および前記繊維束を巻線し所要の巻数を有するコイルを形成するステップ2、
前記コイルにワニスを滴下し、前記素繊維間および前記導線間に毛細管現象によって前記ワニスを浸透させるステップ3、
前記コイルを加熱し、前記ワニスを硬化させるステップ4を備え、
巻線する前の前記繊維束の直径は、前記第1層の導線の頂部と、前記第2層の互いに隣り合う導線が接する側部までの高さより大きいことを特徴とする電気機器のコイル製造方法。 - 前記素繊維は無機繊維、合成繊維または天然繊維のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の電気機器のコイル製造方法。
- 前記繊維束は、前記無機繊維と前記合成繊維、または、前記無機繊維と前記天然繊維、あるいは、前記合成繊維と前記天然繊維のいずれか2種類の前記素繊維を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気機器のコイル製造方法。
- 前記ワニスは、エポキシ系ワニス、アクリル系ワニス、不飽和ポリエステル系ワニスのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気機器のコイル製造方法。
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