JP6103296B2 - (メタ)アクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents
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Description
現在では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が市場に導入され、さらなる短波長化を図ったArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術も導入されようとしている。さらに、次世代の技術として、F2 エキシマレーザー(波長:157nm)リソグラフィー技術が研究されている。また、これらとは若干異なるタイプのリソグラフィー技術として、電子線リソグラフィー技術、波長13.5nm近傍の極端紫外光(Extreme Ultra Violet light:EUV光)を用いるEUVリソグラフィー技術についても精力的に研究されている。
このような短波長の照射光又は電子線に対する高解像度のレジストとして、光酸発生剤を含有する「化学増幅型レジスト」が提唱され、現在、この化学増幅型レジストの改良及び開発が精力的に進められている。ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて使用されるレジスト樹脂の有用なモノマーとして、γ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレートに代表されるβ−ヒドロキシラクトンの(メタ)アクリル酸エステルが幅広く用いられている。このような(メタ)アクリル酸エステルの製造法として、酸無水物をエステル化剤として用いる方法も知られている。例えば、アルカリ金属の無機塩及び(メタ)アクリル酸存在下でラクトンアルコールと(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて、(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法が開示されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、反応時間が長く、クロトノラクトン(エステル体のβ−脱離体)の副生も多いため、目的物を高収率で得ることができない。
また、遷移金属等のトリフラートからなるルイス酸触媒の存在下、ラクトン骨格を有するアルコールと(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて、(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法が開示されている(特許文献2参照)。この方法では、高い収率で目的物を得ることはできるものの、触媒が特殊な化合物のため入手が困難であり、工業的、汎用的な方法とは言えない。
さらに、塩化鉄(III)のような遷移金属等の硫酸又ハロゲン化物からなるルイス酸触媒の存在下、ラクトン環を有するアルコールと(メタ)アクリル酸無水物とを反応させて、(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法が開示されている(特許文献3参照)。この方法では、高い収率で目的物を得ることはできるものの、ArFエキシマレーザーリソグラフィー用モノマーはハロゲン含有量を出来る限り低減することが要求されている。又、ハロゲン化物は洗浄、蒸留などの操作では除けず、煩雑な精製処理が必要になる。この触媒での反応ではハロゲンの低減が困難となるため、有効な方法とは言えない。
すなわち、本発明の第一の要旨は、電気陰性度0.95以上のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩触媒の存在下、下記式(1)
(式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、mは0又は1である。)
で表されるアルコール(A)と(メタ)アクリル酸無水物を反応させ、下記式(2)
(式(2)中、R1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は水素又はメチル基を表し、mは0又は1である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法である。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシ又はメタクリロイルオキシを意味する。
本発明のアルコール(A)は、下記式(1)で表される化合物である。
また、R1としては、得られた(メタ)アクリル酸エステルの精製のしやすさから、炭素数4〜5の直鎖アルキル基が好ましい。mは0又は1の整数である。エステルのβ−脱離抑制の点から、mは0が好ましい。
前記アルコール(A)は、光学活性を有する場合があるが、S体、R体、ラセミ体のいずれも使用できる。
前記式(1)で表されるアルコール(A)としては、例えば、下記式(3)〜(8)等で表されるアルコールが挙げられる。なお、アルコール(A)としては、特に限定されるものではなく、市販のものが使用できる。
本発明で使用する(メタ)アクリル酸無水物は、特に限定されず、市販のものでも独自に製造したものでも使用できる。
(メタ)アクリル酸無水物の使用量は、特に限定されず、通常は、前記式(1)で表されるアルコール(A)1モルに対して0.8モル以上で使用する。反応収率の観点から(メタ)アクリル酸無水物の使用量は、0.95モル以上が好ましく、1.05倍モル以上がより好ましい。また、(メタ)アクリル酸無水物の使用量は、通常は、前記式(1)で表されるアルコール(A)1モルに対して、5モル以下で使用できるが、精製時において未反応物を除去する操作(中和処理等)の簡便性から3モル以下が好ましく、1.5倍モル以下がより好ましい。
本発明では、触媒として、電気陰性度0.95以上のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いる。具体的には、電気陰性度0.95以上のアルカリ金属の無機塩又はアルカリ土類金属の無機塩、あるいは、電気陰性度0.95以上のアルカリ金属(メタ)アクリル酸塩またはアルカリ土類金属(メタ)アクリル酸塩を用いる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の電気陰性度は、ポーリングの電気陰性度に基づく。電気陰性度0.95以上のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いることで、副反応抑制等の効果を奏する。更なる副反応抑制の点から、電気陰性度0.98以上アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いることがより好ましい。
電気陰性度0.95以上のアルカリ金属の無機塩またはアルカリ土類金属の無機塩存在下で反応を行う場合と、電気陰性度0.95以上のアルカリ金属(メタ)アクリル酸塩またはアルカリ土類金属(メタ)アクリル酸塩存在下で反応を行う場合とでは、通常、反応速度、特に反応開始時の初期速度が異なる。多くの場合、反応性の点からは電気陰性度0.95以上のアルカリ金属(メタ)アクリル酸塩またはアルカリ土類金属(メタ)アクリル酸塩存在下で反応を行うことが好ましい。一方、原料の入手しやすさ、コスト等の点からは電気陰性度0.95以上のアルカリ金属の無機塩またはアルカリ土類金属の無機塩存在下で反応を行うことが好ましい。いずれの触媒を用いて反応を行うかは適宜選択することができる。
本発明で用いるアルカリ金属(メタ)アクリル酸塩またはアルカリ土類金属(メタ)アクリル酸塩としては特に限定されず、例えば、メタクリル酸ベリリウム、メタクリル酸マグネシウム、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸ストロンチウム等が挙げられる。中でも、選択性の点から、メタクリル酸マグネシウム、メタクリル酸カルシウムが好ましい。アルカリ金属(メタ)アクリル酸塩またはアルカリ土類金属(メタ)アクリル酸塩は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
アルカリ金属の無機塩又はアルカリ土類金属の無機塩の添加量は、反応速度の点から、アルコール(A)1モルに対して0.0001モル以上が好ましく、0.001モル以上がより好ましい。また、アルカリ金属の無機塩又はアルカリ土類金属の無機塩の添加量は、副反応抑制の点から、アルコール(A)1モルに対して0.5モル以下が好ましく、0.2モル以下がより好ましい。
また、(メタ)アクリル酸の添加量は、副反応抑制の点から、アルコール(A)1モルに対して0.5モル以下が好ましく、0.2モル以下がより好ましい。
また、(メタ)アクリル酸の添加量は、反応速度の点からアルカリ金属の無機塩又はアルカリ土類金属の無機塩1モルに対して0.01モル以上が好ましく、0.1モル以上がより好ましい。また、(メタ)アクリル酸の添加量は、副反応抑制の点からアルカリ金属の無機塩又はアルカリ土類金属の無機塩1モルに対して10モル以下が好ましく、5モル以下がより好ましい。
アルカリ金属(メタ)アクリル酸塩またはアルカリ土類金属(メタ)アクリル酸塩の添加量は、反応速度の点から、アルコール(A)1モルに対して0.0001モル以上が好ましく、0.001モル以上がより好ましい。また、アルカリ金属(メタ)アクリル酸塩またはアルカリ土類金属(メタ)アクリル酸塩の添加量は、副反応抑制の点から、アルコール1モルに対して0.5モル以下が好ましく、0.2モル以下がより好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、−10℃〜140℃の範囲が好ましい。反応速度の点から10℃以上がより好ましく、20℃以上が更に好ましい。また、副反応抑制の点から120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
反応時間は特に制限されず適宜決めればよいが、0.5時間〜40時間の範囲が好ましい。反応収率の観点から1.0時間以上がより好ましく、2.0時間以上が更に好ましい。また、副生物抑制の観点から35時間以下がより好ましく、30時間以下が更に好ましい。
反応を進行させるために、反応の進行とともに副生する(メタ)アクリル酸又はその他のカルボン酸を系外に除去することが好ましい。(メタ)アクリル酸は、例えば、適当な溶媒との共沸混合物として反応系外に取り出すことができる。反応は、回分式、半回分式、連続式などの何れの方式により行ってもよい。
本発明では、反応を無溶媒下で実施できるが、有機溶剤を使用することが好ましい。本発明で用いる有機溶剤としては、生成する(メタ)アクリル酸エステルを溶解するものが好ましい。また、用いる有機溶剤の極性が低いほど好ましく、特に無極性溶剤を用いることが好ましい。本発明において好適な有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;アセトニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒;これらの混合溶媒などが挙げられる。これらのなかでも、反応に対して不活性であり、エステル化反応が円滑に進行し且つ留去が容易な点から、芳香族炭化水素、エーテル、ニトリルが好ましい。有機溶剤は、1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶媒の使用量は、副反応抑制の点から、前記式(1)で表されるアルコール(A)に対して0.1重量倍以上が好ましく、0.2重量倍以上がより好ましく、0.5以上が特に好ましい。また、有機溶媒の使用量は、触媒の使用量を低減させることができるので、100重量倍以下が好ましく、20重量倍以下がより好ましく、10重量倍以下が特に好ましい。
本発明の製造法においては、重合を抑制するため、反応系内に重合禁止剤を存在させてもよく、反応系にエアーバブリング法により酸素を供給してもよく、これらの方法を組み合わせてもよい。重合禁止剤としては、特に限定されず、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4,4’−ブチリデン−ビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)}、6−tert−ブチル−2,4−キシレノールなどの公知の重合禁止剤(フェノール系重合禁止剤等)を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。重合禁止剤の使用量は、(メタ)アクリル酸無水物に対して、例えば10重量ppm〜10000重量ppm程度である。
反応終了後、必要に応じて水を添加した後、例えば、濾過、濃縮、抽出、洗浄(水洗、酸又はアルカリ洗浄等)、蒸留、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段を用いることにより、目的の(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。例えば、前記式(1)で表されるアルコールからは、それぞれ下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。
(式(2)中、R1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は水素又はメチル基を表し、mは0又は1である。)
なお、反応収率及び実得収率は以下のように定義される。
反応収率又は実得収率(%)=(A/B)×100
ここで、Aは目的生成物のモル数、Bは原料であるアルコールのモル数を表す。
(γ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレートの合成)
攪拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えたガラス製のフラスコに、(S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン(東京化成工業株式会社製)1.53g(15mmol)、メタクリル酸無水物(和光純薬工業株式会社製を蒸留精製したもの)2.77g(18mmol)、トルエン(和光純薬工業株式会社製)10.40g(12ml)、酸化マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)(マグネシウムの電気陰性度…1.31)0.06g(1.5mmol)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)(和光純薬工業株式会社製)0.034gを仕込んだ。そして、50℃で4時間加熱攪拌し、エステル化反応を行った。加熱終了後の反応液中のγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレート(目的生成物)含有量は1.27g、反応収率は50%((S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン基準)であった。また、反応副生物(エステル体のβ−脱離体)であるクロトノラクトンの含有量は0.09gであり、反応収率は7%であった。
実施例1の酸化マグネシウムを酸化カルシウム(和光純薬工業株式会社製)(カルシウムの電気陰性度…1.00)0.06g(1.5mmol)に変更し、加熱時間を6時間に変更し、メタクリル酸1.03g(12.0mmol)を加えた以外は、実施例1と同じ条件で反応させてγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレートを得た。加熱終了後の反応液中のγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレート含有量は1.39g、反応収率は54%((S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン基準)であった。また、反応副生物(エステル体のβ−脱離体)であるクロトノラクトンの含有量は0.03gであり、反応収率は3%であった。
実施例1の酸化マグネシウムを水酸化リチウム(和光純薬工業株式会社製)(リチウムの電気陰性度…0.98)0.04g(1.5mmol)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で反応させてγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレートを得た。加熱終了後の反応液中のγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレート含有量は1.36g、反応収率は53%((S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン基準)であった。また、反応副生物(エステル体のβ−脱離体)であるクロトノラクトンの含有量は0.11gであり、反応収率は9%であった。
実施例1の酸化マグネシウムを炭酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)(ナトリウムの電気陰性度…0.93)0.16g(1.5mmol)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で反応させてγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレートを得た。加熱終了後の反応液中のγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレート含有量は1.41g、反応収率は55%((S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン基準)であった。しかし、反応副生物(エステル体のβ−脱離体)であるクロトノラクトンの含有量は0.27gであり、反応収率は21%であった。
実施例1の酸化マグネシウムを炭酸バリウム(和光純薬工業株式会社製)(バリウムの電気陰性度…0.89)0.30g(1.5mmol)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で反応させてγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレートを得た。加熱終了後の反応液中のγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレート含有量は検出されなかった。また、反応副生物(エステル体のβ−脱離体)であるクロトノラクトンは検出されなかった。
実施例1の酸化マグネシウムを酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)0.30g(1.5mmol)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で反応させてγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレートを得た。加熱終了後の反応液中のγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレート含有量は検出されなかった。また、反応副生物(エステル体のβ−脱離体)であるクロトノラクトンは検出されなかった。
実施例1の酸化マグネシウムを硫酸銅五水和物(和光純薬工業株式会社製)0.27g(1.5mmol)に変更した以外は、実施例1と同じ条件で反応させてγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレートを得た。加熱終了後の反応液中のγ−ブチロラクトン−3−イルメタクリレート含有量は0.03g、反応収率は1%((S)−3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン基準)であった。また、反応副生物(エステル体のβ−脱離体)であるクロトノラクトンは検出されなかった。
Claims (2)
- 電気陰性度0.95以上のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩触媒の存在下、下記式(1)
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、mは0又は1である。)
で表されるアルコール(A)と(メタ)アクリル酸無水物を反応させ、下記式(2)
(式(2)中、R1は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R2は水素又はメチル基を表し、mは0又は1である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法。 - 式(1)及び(2)において、mが0の構造であることを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
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