JP6103143B1 - IL−1β産生抑制作用を有する食品添加用組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、食経験により安全と認識される成分において、抗炎症作用を有する組成物を提供することにある。分離大豆蛋白質が抗炎症作用を示す場合があることから、その作用本体として分離大豆蛋白質からアルコール抽出されるリン脂質を見出した。さらに詳細な検討により、リン脂質において、PIを必須成分として、さらに他のリン脂質を含有し、「PC,PE,PSの合計量/PIの量」が0.05〜2.6であるものが、IL−1βの産生抑制効果があることを見出した。このような組成物は豊富な食経験から安全と認識されており、課題の解決に至った。

Description

本発明は、IL−1β産生抑制作用を有する食品添加用組成物に関するものである。
炎症は生体が何らかの有害な刺激を受けた時に免疫応答が働き、それによって生体に出現する反応である。
生体に対する刺激により、細胞から、種々の細胞間情報伝達分子となる微量生理活性タンパク質であるサイトカインが放出され、炎症と認識される場合がある。
特許文献1には、「抗炎症及び/又は抗ヒスタミン活性成分、極性脂質リポソーム及び薬学的に許容可能な水性担体を含有し、活性成分がセチリジンではない、炎症性疾患治療のための均質な医薬組成物。」について記載がある。
特許文献2には、抗炎症作用に関し、リポソームを本体とする組成物について記載がある。
特開2013−209423号公報 特表2005−515242号公報
本発明の課題は、食経験により安全と認識される成分において、抗炎症作用を有する組成物を提供することにある。
本発明者は上記課題に対し鋭意検討をおこなった。そうしたところ、過去より十分な食経験のある分離大豆蛋白質において、そこから含水アルコールにて抽出される成分が、マクロファージ細胞(THP−1)からの炎症性サイトカイン(IL−1β)の産生を抑制する傾向があることを見出した。
更に詳細な検討を行ったところ、前記含水アルコールにて抽出される成分のうち、PIを必須成分とし、さらにPC、PEまたはPSから選ばれる1以上を含むものが、同IL−1βの産生を顕著に抑制することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
(1)PI及び、PC、PEまたはPSから選ばれる1以上を含み、「PC,PE,PSの合計量/PIの量」が0.05〜2.6である、炎症抑制作用を有する食品添加用組成物、
(2)炎症抑制作用が、IL−1β産生抑制作用によるものである、(1)記載の食品添加用組成物、
(3)PI及び、PC、PEまたはPSから選ばれる1以上を含み、「PC,PE,PSの合計量/PIの量」が0.05〜2.6である、抗炎症剤、
(4)炎症抑制作用が、IL−1β産生抑制作用による、(3)記載の抗炎症剤、
に関するものである。
また、換言すれば、
(5)PI及び、PC、PEまたはPSから選ばれる1以上を含み、「PC,PE,PSの合計量/PIの量」が0.05〜2.6である、炎症抑制作用を有する組成物、
(6)炎症抑制作用が、IL−1β産生抑制作用によるものである、(5)記載の組成物、
(7)(5)記載の炎症抑制作用を有する組成物を含有する、炎症抑制用加工食品、
(8)炎症抑制作用が、IL−1β産生抑制作用によるものである、(7)記載の炎症抑制用加工食品、
(9)(5)記載の組成物の、炎症抑制剤としての使用、
に関するものである。
なお、特許文献1では抗炎症等の活性成分は極性脂質とは別に添加されており、極性脂質自体に生理作用が存在することは開示されていない。
特許文献2においては、「複数の反応性化学基を有する本体」として、リン酸イノシトール等の記載があるが、特定の組み合わせで顕著な効果が生じる旨の示唆はない。
本発明により、過去より十分な食経験のある大豆由来成分を用い、炎症抑制作用を有する食品添加用組成物を提供することができる。また、本発明により、抗炎症剤を提供することができる。
SPIEEによる、IL−1β産生抑制を示す図である。 リン脂質混合物による、IL−1β産生抑制を示す図である。 各リン脂質単独による、IL−1β産生抑制を示す図である。 リン脂質の組み合わせによる、IL−1β産生抑制を示す図である。
本発明において使用する略号は以下の通りである。
PC:Phosphatidylcholine、
PI:Phosphatidylinositol、
PE:Phosphatidylethanolamine
PS:Phosphatidylserine、
IL−1β:Interleukin−1β。
IL−1はサイトカインと呼ばれる生理活性物質の一種であり、炎症性サイトカインと呼ばれるグループに含まれるものである。IL−1には、IL−1αとIL−1βの2種類が発見されている。
生体においては、IL−1がマクロファージやT細胞、B細胞等から産生されることで、炎症が認識される。すなわち、IL−1の産生を基準に炎症の有無を判断することができる。つまり、IL−1の産生を抑える物質を見出すことができれば、それは炎症を抑制することができる物質と言える。
大豆は古くから広く食されいてる食材であり、経験上安全性が確認されていると言える。
また、大豆に由来する素材においては、各種の生理作用も知られていた。そのため、その作用本体を明確にすることができれば、当該部分のみを濃縮等することで、より生理作用を高めた素材が得られる可能性があり、又それは、十分な食経験に基づき、一定の安全性が認識できるものという事ができるものである。
本発明者は、分離大豆蛋白(以下、SPIと称する)から含水エタノールにて抽出される画分(以下、SPIEEと称する)に、IL−1β産生抑制効果があることを見出した。しかし、SPIEEにおいて、具体的に何が作用本体であるかは不明であった。
本発明者はSPIEEに含まれるリン脂質に着目し、それぞれ単独でIL−1β産生抑制効果があるか評価した。しかし、リン脂質(PC,PI,PE,PS)それぞれの評価では、IL−1β産生抑制効果はほとんどなかった。
本発明者はさらに検討を行った。そうしたところ、驚くべきことに、PIと、他のリン脂質(PC,PEまたはPSのいずれか)が組み合わされた場合に、IL−1β産生抑制効果が生じることを見出した。
2種の組み合わせとしては、PIと、PC又はPEのいずれかの組み合わせが望ましく、PIとPEの組み合わせがさらに望ましい。
3種の組み合わせとしては、PIとPSのほか、PC又はPEを組み合わせることが望ましい。
PIとそれ以外のリン脂質の量比として、本発明では「PC,PE,PSの合計量/PIの量」が0.05〜2.6であることが必要である。この値は、より望ましくは0.3〜2であり、さらに望ましくは0.4〜1.7である。望ましいとされる量比とすることで、IL−1βの産生が抑制され、ひいては、高い抗炎症効果を示すこととなる。
以上より、効果の高いリン脂質の組み合わせにより、IL−1β産生抑制効果の高い食品添加用組成物や、抗炎症剤を提供することができるし、また、大豆レシチン等において、そのリン脂質の組成を調整することで、IL−1β産生抑制効果を高めた食品添加用組成物を提供することができる。
本発明でいう、炎症抑制作用を有する食品添加用組成物とは、食品として使用可能な素材に由来し、炎症抑制作用を有する組成物である。
本発明でいう、IL-1β産生抑制作用を有する食品添加用組成物とは、食品として使用可能な素材に由来し、IL-1β産生抑制作用を有する組成物である。
本発明で言う、抗炎症剤とは、抗炎症作用を有する剤である。
以下、実施例により本発明の具体的態様を明確にする。
○検討1 分離大豆蛋白質からの含水アルコール抽出物による効果検証
A.分離大豆蛋白質の調製
1.脱脂大豆(不二製油株式会社製)1kgへ12kgの40℃温水を加え、1N NaOHにてpH7.0へ調整した。
2.ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い、5000rpmで1時間攪拌して蛋白質を抽出した。
3.遠心分離(1500G、10分)でオカラ成分を除去して脱脂豆乳を得た。
4.1N HClにてpH4.5へ調整し、蛋白カードを沈殿させて遠心分離機にて回収し大豆蛋白質カードを得た。
5.大豆蛋白質カード固形分に対し10倍量加水し、1N NaOHにてpH7.0へ調整した。
6.スプレードライヤーにて紛体化し「分離大豆蛋白質」(以下、SPIと称することがある)とした。
B.含水エタノール抽出物の調製とリン脂質の分析
1.「分離大豆蛋白質の調製」で得られた分離大豆蛋白質1kgに、含水エタノール(エタノール:水=70:30(容積比))を5L添加し、ホモミキサーにて6000rpmで30分間攪拌した。
2.ろ紙(No.1)にて溶液を回収した。
3.2で得られた不溶性の残差について1、2の工程をさらに二回繰り返した後、1の含水エタノールを無水エタノールに置き換えて再び1、2の工程に供した。
4.回収したエタノール溶液からエバポレータ―によってエタノールを除き、凍結乾燥機にて紛体化し「含水エタノール抽出物(以下SPIEEと称することがある)」とした。
得られた「含水エタノール抽出物」50μgにおける各リン脂質含量は、PC:5.5μg、PI:3.5μg、PE:2μg、PS:0.3μgであった。
(リン脂質の分析は薄層クロマトグラフ法で行った)
C.IL−1β産生抑制効果の検証
イ)細胞の分化誘導:THP-1をRPMI1640培地(10%FBS)に 3.5×10cells/mLで調製し終濃度100nMになるようにPMAを加えた。 12well plateに1mL/wellで播種した後、5%CO, 37℃で48hrインキュベートし分化を誘導した。
ロ)サンプル調製:SPIEE1mgを、70%EtOH 1mlに溶解し、1/200量をRPMI1640培地(10% FBS, 100ng/mL LPS、100nM PMA)に添加した。
ハ)サンプルの添加:評価サンプルを含む培地に交換し5%CO, 37℃で6hrインキュベートした。
ニ)RNA抽出:ISOGENのプロトコールに従って細胞からtotal RNAを抽出し、Real-Time PCRに供した。IL-1β産生量はGAPDHを用いて標準化した。
ホ)IL-1β産生量がPositive Controlに対して40%以下となったものを、IL−1β産生抑制効果ありと判断した。
なお、Negative Controlは「LPS刺激なし」である。
結果
測定されたIL−1β産生量を図1に示した。
考察
図1に示した通り、SPIEEにはIL−1β産生量を抑制する効果が見出された。
検討2 リン脂質のIL−1β産生抑制効果の検証
A.SPIEEに含まれるリン脂質比率での効果検証
検討1において分析された、SPIEEにおけるリン脂質含有比率にて、試薬のリン脂質(Avanti Polar Lipids社製)を混合し、検討1 CにおいてSPIEEの代わりにリン脂質合計11.3μgを用い、他は同じ方法で、IL−1β産生抑制効果の検証を行った。
結果
図2に示した通り、試薬のリン脂質をSPIEEに含まれる比率で混合したものが、SPIEEと同様のIL−1β産生抑制効果を示した。このことから、SPIEEにおけるIL−1β産生抑制効果の作用本体は、リン脂質であることが示唆された。
B.各リン脂質によるIL−1β産生抑制効果の検証。
SPIEEに含まれるリン脂質それぞれをPC:5.5μg、PI:3.5μg、PE:2μg、PS:0.3μg用い、検討1 Cと同様の方法でIL−1β産生抑制効果の検証を行った。
結果
図3に示した通り、各リン脂質単独では、IL−1β産生抑制効果はほとんど見られないことが明らかとなった。
C.各リン脂質の混合によるIL−1β産生抑制効果の検証
表1記載の組み合わせでリン脂質を混合し、検討1 Cと同様の方法でIL−1β産生抑制効果の検証を行った。
表1 リン脂質の組み合わせ
Figure 0006103143
・各リン脂質の数値はμgを示す。各実施例、比較例でのリン脂質混合物を検討1 CにおけるSPIEEの代わりに用い、IL−1β産生抑制効果の検証を行った。
結果
図4に示した通り、PIを必須として、それ以外のリン脂質を組み合わせた場合にのみ、IL−1β産生抑制効果が見出されることが明らかとなった。
特に、「PC,PE,PSの合計量/PIの量」が0.05〜2.6である場合に、顕著なIL−1β産生抑制効果が見出されることが明らかとなった。

考察
以上より、PIを必須として、それ以外のリン脂質を適宜組み合わせた組成物は、抗炎症作用を有する食品添加用組成物として使用できることが明らかとなった。
このような組成物は、大豆レシチンのような天然の素材を、目的の組成となるように分離したり、また、特定のリン脂質を追加して調製することもできるし、また、各リン脂質を個別に混合し調製することも可能である。
なお、一般的な大豆レシチンにおけるリン脂質の組成は、フォスファチジルコリン:31.3%、フォスファチジルエタノールアミン:28.5%、フォスファチジルイノシトール:15.6%、フォスファチジルセリン:5.4%、その他:19.3%(川崎医療福祉学会誌Vol.15 No.1 2005 209-216 P210表1より)であり、ここから計算される「PC,PE,PSの合計量/PIの量」は4.18であった。

Claims (5)

  1. PI及び、PC、PEまたはPSから選ばれる1以上を含み、「PC,PE,PSの合計量/PIの量」0.4〜1.7である、炎症抑制作用を有する組成物。
  2. 炎症抑制作用が、IL−1β産生抑制作用によるものである、請求項1記載の組成物。
  3. 請求項1記載の炎症抑制作用を有する組成物を含有する、炎症抑制用加工食品。
  4. 炎症抑制作用が、IL−1β産生抑制作用によるものである、請求項3記載の炎症抑制用加工食品。
  5. 請求項1記載の組成物の、炎症抑制剤としての使用。但し人間を治療する態様を除く。
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