JP6103007B2 - ボールねじ装置の製造方法 - Google Patents
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図7に示すボールねじ装置100は、ねじ軸101と、ナット102と、複数のボール103とを備えて構成されている。
ねじ軸101は、その外周面に、所定のリードを有する螺旋状のボール転動溝104が形成されている。ナット102は、略円筒状をなし、その内径はねじ軸101の外径よりも大きく形成され、ねじ軸101に所定の隙間をもって外装されている。ナット102の内周面には、ねじ軸101のリードと等しいリードを有する螺旋状のボール転動溝105が形成されている。このボール転動溝105と対向するねじ軸101のボール転動溝104とによって断面略円状の転走路106が形成されている。そして、この転走路106内に複数のボール103が転動可能に充填配置される。そして、ナット102の内周面には、ボール103が循環できるように、転走路106の一端と他端とを連結し、転走路106を転がるボール103を一端から他端に戻す複数の循環路107が形成されている。
図8に示すボールねじ装置201は、ナット202の内周面両端部に循環こま組込み用の凹陥部203を設け、ねじ軸(図示せず)とナット202のボール転動溝204との間を転動するボール(図9参照)207を凹陥部203に嵌め込まれた循環こま205によりナット202内に形成されたボール戻し路(図示せず)に導入して循環させるようにしている。そして、図9に示すように、ナット202の内周面に形成されたボール転動溝204と凹陥部203との境界部206をボール207の直径Dwに対してR=0.05Dw以上の曲率半径で曲面状に形成している。
また、図10に示すボールねじ装置301用のスピンドルナット302の内周面には、ボール307用の螺旋状のボール転動溝303が形成されている。また、ボールねじ装置301においては、ボール307を1つのボール転動溝303の終端部から1つのボール転動溝303の始端部に変向させるための変向通路306を有する変向装置305が設けられている。そして、スピンドルナット302の内周面には、一方でボール転動溝303に接続しかつ他方で変向通路306に接続するボール走入路304が形成されている。そして、ボール転動溝303とボール走入路304との両方が同じ横断面形状を有するようになっている。ボール転動溝303の横断面形状はゴシック形状を有し、ボール走入路304もまた同じゴシック形状を有する。これにより、ボール転動溝303からボール走入路304への、かつボール走入路304から変向装置305の変向通路306へのボール307の引っかかりのない移行が可能になる。
即ち、図8及び図9に示すボールねじ装置201の場合、いわゆるコマ式ボールねじ装置であり、循環こま205と凹陥部203の加工による寸法差によっては、ボール転動溝204と凹陥部203との境界部206を曲面状に形成したとしても、ボール戻し路とボール転動溝204とが滑らかに接続されない可能性がある。このため、更なる加工が必要となる可能性がある。ボール戻し路とボール転動溝204とが滑らかに接続されないと、ボール103がボール戻し路を通過してボール転動溝204に戻される際、またはボール転動溝204からボール戻し路に導入される際に、ボール戻し路とボール転動溝204との境界部に衝突することがあり、前記境界部やボール207に過大な衝撃荷重が加わり、ボールねじ装置201の耐久寿命を低下させるおそれがあった。
従って、本発明はこれら問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ナットの内周面に形成されている転走路を構成するボール転動溝と循環路との境界部やボールに加わる衝撃荷重を軽減して耐久寿命の向上を図ることができるボールねじ装置の製造方法を提供することにある。
また、前記クラウニングは、プラネットタップ加工によってなされるので、転走路を構成する第2ボール転動溝と循環路との境界部に精度よくクラウニングを施すことができる。
ねじ軸2は、中心軸CLを中心とした円筒形状で、その外周面に、所定のリードを有する螺旋状の第1ボール転動溝5が形成されている。
ナット3は、略円筒状をなし、その内径はねじ軸2の外径よりも大きく形成されており、ねじ軸2に所定の隙間をもって外嵌している。ナット3の内周面には、ねじ軸2の第1ボール転動溝5と等しいリードを有し、第1ボール転動溝5と対向する第2ボール転動溝6が形成されている。そして、ねじ軸2の第1ボール転動溝5とナット3の第2ボール転動溝6とによって断面略円形状の転走路7が形成されている。この転走路7内に複数のボール4が転動可能に充填配置されている。
ここで、ナット3の内周面に形成された、転走路7を構成する第2ボール転動溝6と循環路8の導入部8aとの境界部9には、図2及び図3に示すように、クラウニング10(図2においては斜線で示す)が施される。
また、転走路7を構成する第2ボール転動溝6と循環路8の導入部8aとの境界部9においては、図4に示すように、ボール4と第2ボール転動溝6とが2点A,Bで接触し、ボール4と循環路8とが1点Cで接触している。
図5には、クラウニング形状として、従来のクラウニングを施していないもの、凹状円弧のもの、斜面としたもの、凸状円弧としたもの、複数の円弧を連ならせたものが例示されている。
図5を参照すると、従来のクラウニングを施していないものは、加工は最もし易いが、クラウニングの効果が全くない。以降、凹状円弧のもの、斜面としたもの、凸状円弧としたもの、複数の円弧を連ならせたものの順に加工がし難くなるが、クラウニングの効果が徐々に大きくなる。
先ず、ナット3の素材であるフランジ付きの中空円筒部材N(図6参照)の内周面に、循環路8を形成する。ナット3の材料は、第2ボール転動溝6及び循環路8を形成した後の熱処理が浸炭処理の場合には炭素含有量が0.10〜0.25質量%のクロム鋼またはモリブデン鋼(例えばSCM420)、当該熱処理が高周波焼入れの場合には炭素含有量が0.4〜0.6質量%の炭素鋼(例えばS53C、SAE4150)が好ましい。循環路8は、所定形状の金型を用いた鍛造加工により形成する。
そして、循環路8及び第2ボール転動溝6を形成した中空円筒部材Nにおいて、循環路8と第2ボール転動溝6との境界部9にクラウニング10を施す。クラウニング10は、図6に示すプラネットタップ加工によってなされる。クラウニング10をプラネットタップ加工によって行うことで、転走路を構成する第2ボール転動溝6と循環路8との境界部9に精度よくクラウニング10を施すことができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、クラウニング10の形状は、図3に示した凸状円弧や斜面でなくてもよく、図5に示した凹状円弧や複数の円弧を連ねたものであってもよい。
また、第2ボール転動溝6及びクラウニング10の加工は、プラネットタップ加工に限られない。
2 ねじ軸
3 ナット
4 ボール
5 第1ボール転動溝
6 第2ボール転動溝
6a 溝底
7 転走路
8 循環路
8a 導入部
9 境界部
10 クラウニング
Claims (1)
- 外周面に螺旋状の第1ボール転動溝を有するねじ軸と、該ねじ軸に外嵌して内周面に前記第1ボール転動溝に対向する第2ボール転動溝を有するナットと、前記第1ボール転動溝と前記第2ボール転動溝とによって形成される転走路内に転動可能に充填された複数のボールと、前記ナットの内周面に形成され、前記ボールを手前の転走路に戻すための循環路とを備えたボールねじ装置の製造方法において、
前記転走路を構成する第2ボール転動溝と前記循環路との境界部にクラウニングを施し、
前記クラウニングが、凹状円弧又は複数の円弧を連ねたものであり、
前記クラウニングは、プラネットタップ加工によってなされるものであり、
前記プラネットタップ加工では、回転軸の外周にその切削面が前記第2ボール転動溝の形状に一致した刃物を形成した切削工具の前記回転軸を、前記循環路に軸線方向位置及び位相を合わせた状態で半径方向外方にシフトさせて前記クラウニングを施すことを特徴とするボールねじ装置の製造方法。
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