JP6093657B2 - 電線用被覆補修カバー - Google Patents
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Description
以下、芯線が露出した区間を「剥線区間」という。芯線挟持部の長さは、想定される剥線区間のばらつきの最小長さに対応するように設定されることが好ましい。そうすれば、芯線挟持部の両端の段差が、両側の絶縁被覆の端部の間で位置決めされる。したがって、沿面距離が確保された範囲内に剥線区間が位置することとなる。
剥線区間の長さが、最小長さに比べて顕著に長くなると、芯線挟持部の両端の段差と絶縁被覆の端部との「あそび」が大きくなり、被覆補修カバーが剥線区間の片側にずれる可能性がある。この位置ずれ量が一定の値を超えると、剥線区間の一部が、沿面距離が確保された範囲から逸脱し、電線周りの絶縁機能が要求基準に対して不足するおそれがある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、芯線が露出した剥線区間の長さのばらつきに起因する長手方向の位置ずれを防止し、絶縁機能を満足するための沿面距離を確保する電線用被覆補修カバーを提供することにある。
筒部は、周方向の一箇所が長手方向に沿って分断されて開閉可能であり、電線に取り付けられたとき内壁の内側に絶縁被覆を収容可能である。
結合部は、筒部において互いに対向する開閉面の双方に凹凸状に設けられ、互いに嵌合することで開閉面同士を結合可能である。
係止リブは、芯線挟持部の長手方向の両側に長手方向に沿って設けられている。係止リブは、電線に取り付けられたとき、絶縁被覆と離間した自然状態では芯線の径外側且つ絶縁被覆の外径の内側に位置し、絶縁被覆と干渉すると絶縁被覆の外径の外側に撓む。
一方、剥線区間の長さがばらつきの最小長さよりも係止リブの長さ以上長くなると、係止リブの一部又は全部が撓んだ状態から自然状態に戻ろうとして絶縁被覆の端部の内側に嵌り込み、絶縁被覆に係止する。これにより、被覆補修カバーの長手方向の位置が位置決めされる。
したがって、全長が従来の被覆補修カバーとほぼ同等の一種類の被覆補修カバーによって、剥線区間の長さのばらつきに関わらず、被覆補修カバーと剥線区間との長手方向の位置ずれを防止することができる。よって、電線周りの絶縁機能を満足することができる。
(一実施形態)
図1〜図4に示す電線用被覆補修カバー1は、絶縁性及び可撓性を有するポリエチレン等のエラストマー系樹脂材料で形成されており、絶縁被覆91の一部が剥がされ芯線93が露出した電線9を被覆し補修するために、径外方向から取り付けられるカバーである。
以下の説明で、芯線93が露出した区間を「剥線区間」という。剥線区間の長さは、絶縁被覆91を剥がす作業における作業者の技能や工具の差異によって所定の範囲でばらつくことを前提とする。
被覆補修カバー1の本体をなす筒部2は、周方向の一方が長手方向に沿って分断されており、分断された側と反対側の背部23を折り曲げ支点として、開閉面Sを開閉可能である。筒部2は、電線9に取り付けられたとき内壁21の内側に絶縁被覆91を収容する。筒部2の長手方向の中央部に設けられる芯線挟持部4と、両端の内壁21との境界には、段差22が形成されている。
筒部2の外壁には、長手方向の中央位置を示す「標識部」としての標識リブ24が周方向に形成されている。本実施形態では、長手方向の中心に対して対称に、計4本の標識リブ24が形成されている。
突条31及び凹溝32が互いに嵌合することで、芯線93から結合部3の表面を通って電流が外部に到達する経路長が長くなる。したがって、被覆補修カバー1の絶縁機能を確保するための沿面距離が確保される。こうして、突条31及び凹溝32が対設された長手方向の範囲は、「良絶縁性範囲Z」を構成する。
特に本実施形態では、係止リブ5は筒部2と一体に成形されている。また、筒部2の背部23側の内壁21から、略直方体状の係止リブ5が立設されている。
ここで具体的な数値例を挙げて説明する。図2(b)に示すように、一例の被覆補修カバー1は、芯線挟持部4の長さXcが40mmであり、係止リブ5の両端間の長さXrが100mmである。複数の係止リブ5は、隣との隙間を含めて1個あたり約5mmに設定されており、長手方向の片側につき6個で約30mmの区間に設けられている。長さXcの意味については後述する。
係止リブ5の両端間の長さXrである100mmという長さは、剥線区間のばらつきの最大長さに相当する。また、この100mmの範囲すなわち係止リブ5の両端の位置は、結合部3による良絶縁性範囲Zに含まれている。
一方、剥線区間以外の区間では、図3(c)のように、絶縁被覆91は、筒部内壁21の内側に収容される。係止リブ5は、絶縁被覆91と干渉し、絶縁被覆91の径外側に接するように撓む。
架線工事に用いられるバイパス工法では、工事を行う区間の両端で既設電線9の絶縁被覆91の一部を剥がし、芯線93の露出箇所同士をバイパス電線で接続して無停電状態で工事を行う。或いは、芯線93の露出箇所に一端が接続されたアース用電線の他端を電柱の腕金等に接続してアースを取る。工事終了後、芯線93からバイパス電線やアース用電線を外し、芯線93が露出した剥線区間を跨ぐように被覆補修カバー1を被せる。
被覆補修カバー1は、筒部2の径方向の一方が長手方向に沿って分断され開閉可能となっており、電線9の径外方向から取り付けることができる。また、筒部2を閉じたとき、結合部3の突条31及び凹溝32が互いに嵌合する範囲では、絶縁機能を満足するための沿面距離が確保される。
図5、図7、図8における「L=○○mm」という記載は、剥線区間の長さが、上記の解釈に基づく「○○mm強」であることを意味する。
そして、図7(c)に示すように、被覆補修カバー7が図の右方向へ約30mmずれたとき、図の左方向の区間Exでは、剥線区間の一部が良絶縁性範囲Zから逸脱することとなる。その結果、バイパス工法での架線工事終了後の電線周りの絶縁機能が不足するおそれがある。
しかし、剥線区間の長さLが100mmより短い場合、例えば図8(b)に示すように剥線区間の長さLが40mm強である場合には、大径の絶縁被覆91が芯線挟持部4に乗り上げることとなる。そのため、被覆補修カバー8は筒部2が閉じられず、電線9に固定することができなくなる。
このように、係止リブ5を有しない第1、第2比較例では、剥線区間の長さのばらつきが比較的大きい場合、芯線挟持部4の長さを一律に設定しようとすると、何らかの不都合が生じることとなる。
図5(a)に示すように、剥線区間の長さLが40mm強である場合、芯線93は、長さXcが40mmである芯線挟持部4に挟持される。このとき、全ての係止リブ5は、絶縁被覆91の外径の外側に撓み、電線9に対する係止には用いられない。この状態で被覆補修カバー1は、第1比較例の被覆補修カバー7と同様、段差22と絶縁被覆91の端部92との位置関係によって位置決めされる。
以上のように本実施形態の被覆補修カバー1は、係止リブ5が機能する範囲において、剥線区間の長さのばらつきに関わらず、作業時に取り付けられた位置からずれることなく保持される。
したがって、通常の注意力を有する作業者が、第1比較例についての図7(c)のように、被覆補修カバー1を剥線区間に対して極端に片側に偏って取り付ける可能性は無いと言ってよい。
よって、本実施形態の被覆補修カバー1を使用すれば、電線9の剥線区間は常に良絶縁性範囲Zに含まれることとなり、バイパス工法での架線工事終了後の電線周りの絶縁機能を満足することができる。
(ア)上記実施形態では、図3(b)に示すように、係止リブ5は、筒部2の背部23側の内壁21から立設されている。この形態に限らず、例えば図6に示すように、係止リブ6は、図の側方若しくは斜め側方の筒部内壁21から図の横方向に立設されてもよい。
(イ)芯線挟持部の長さ、係止リブの形状、数、又は両端間の長さ等の諸元は、上記実施形態の例に限らない。また、係止リブを筒部2と一体成形する形態に限らず、別部品の係止リブを筒部に接合する形態としてもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
2 ・・・筒部、
21・・・内壁、
3 ・・・結合部、
4 ・・・芯線挟持部、
5、6・・・係止リブ、
9 ・・・電線、
91・・・絶縁被覆、
93・・・芯線。
Claims (5)
- 絶縁性且つ可撓性の材料で形成され、絶縁被覆(91)の一部が剥がされ芯線(93)が露出した電線(9)に対し、当該芯線が露出した剥線区間を跨ぐように径外方向から取り付けられる電線用被覆補修カバー(1)であって、
周方向の一箇所が長手方向に沿って分断されて開閉可能であり、電線に取り付けられたとき内壁(21)の内側に前記絶縁被覆を収容可能な筒部(2)と、
前記筒部において互いに対向する開閉面(S)の双方に凹凸状に設けられ、互いに嵌合することで前記開閉面同士を結合可能な結合部(3)と、
前記筒部の内壁において長手方向の中央部に形成され、露出した前記芯線を挟持可能であって、内径が前記芯線の外径と同等であり、長さが前記剥線区間のばらつきの最小長さに対応するように設定された芯線挟持部(4)と、
前記芯線挟持部の長手方向の両側に長手方向に沿って設けられ、電線に取り付けられたとき、前記絶縁被覆と離間した自然状態では前記芯線の径外側且つ前記絶縁被覆の外径の内側に位置し、前記絶縁被覆と干渉すると前記絶縁被覆の外径の外側に撓む係止リブ(5、6)と、
を備えることを特徴とする電線用被覆補修カバー。 - 前記係止リブは、複数が連なって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電線用被覆補修カバー。
- 前記係止リブは、長手方向の両端の位置が、前記結合部が形成される範囲に含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の電線用被覆補修カバー。
- 前記係止リブは、前記筒部と一体に成形されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電線用被覆補修カバー。
- 前記筒部は、長手方向の中央位置を示す標識部(24)が外壁に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電線用被覆補修カバー。
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