ところで、車両用認証装置では、携帯機がどのエリア内にあるかが重要な情報となる。ここで、携帯機と車両用認証装置との間で超音波を用いる場合、電波と比較してその速度が小さいことから、車両用認証装置から携帯機までの距離を超音波の伝搬時間に基づき把握することが可能となる。ただし、伝搬時間を知るべく、上記特許文献3に記載されているように、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれに設けられた時計の時刻を正確に一致させることは困難である。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両用認証装置と携帯機との間で音波信号を用いて通信することで、車両用認証装置と携帯機との距離を正確に把握することができる車両用認証方法、車両用認証装置、および携帯機を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。なお、以下の技術的思想と、特許請求の範囲の各請求項との対応は次のようになっている。請求項1は、技術的思想7(1+2+7)に対応し、請求項2は、技術的思想8(1+2+8)に対応し、請求項3は、技術的思想9(1+9)に対応し、請求項4〜7は、技術的思想3〜6にかかる発明の発明特定事項を有する従属項に対応し、請求項8は、技術的思想12に対応し、請求項9は、技術的思想14に対応する。
技術的思想1.車両に搭載される車両用認証装置と携帯機との間の通信に基づき、電子認証を行う車両用認証方法において、前記車両用認証装置および前記携帯機のいずれか一方から他方に音波信号としての一方側測距コードを送信することで、前記他方において該一方側測距コードを受信させる他方側受信工程と、前記一方側測距コードの受信に応じて前記他方から前記一方に音波信号としての他方側測距コードを送信することで、前記一方において前記他方側測距コードを受信させる一方側受信工程と、前記一方側測距コードの送信タイミングに対する前記他方側測距コードの受信タイミングの時間差に基づき、前記車両用認証装置および前記携帯機間の距離を算出する距離算出工程と、前記車両用認証装置から前記携帯機に、該携帯機の識別情報を含んだ識別信号を要求する要求信号について、該要求信号を送信する要求信号送信工程と、前記携帯機における前記要求信号の受信に応じて前記携帯機から前記識別信号を前記車両用認証装置に送信する識別信号送信工程とを有することを特徴とする車両用認証方法。
上記方法において、一方側測距コードが他方において受信されることに応じて、他方から一方に他方側測距コードが送信され、これが一方において受信される。ここで、一方側測距コードの送信タイミングに対する他方側測距コードの受信タイミングの時間差は、車両用認証装置と携帯機との距離(一方の送受信部と他方の送受信部との距離)と相関を有する。そして、時間差の算出精度は、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かの影響を受けない。このため、上記時間差を用いることで、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かにかかわらず、距離を正確に把握することができる。
技術的思想2.前記携帯機において前記要求信号の受信に応じて前記識別信号を準備する準備工程を有し、前記一方側測距コードの受信タイミングに対する前記他方側測距コードの送信タイミングの時間差から、前記準備工程の所要時間の変動による影響を除去する除去設定を施した技術的思想1記載の車両用認証方法。
上記方法において、一方側測距コードの送信タイミングに対する他方側測距コードの受信タイミングの時間差は、車両用認証装置と携帯機との距離(一方の送受信部と他方の送受信部との距離)と、他方において一方側測距コードを受信してから他方側測距コードを送信するまでに要する時間とに依存する。ここで、送信するまでに要する時間は、携帯機において識別信号を準備する工程の所要時間に依存しうる。そしてこの場合、識別信号を準備する工程の所要時間が変動すると、上記時間差から、上記距離を正確に把握することが困難となる懸念がある。これに対し、上記時間差から、識別信号を準備する工程の所要時間の変動の影響を除去するなら、上記時間差から上記距離を正確に把握することが比較的容易となる。上記方法では、この点に鑑み、除去設定を施すことで、車両用認証装置と携帯機との距離を正確に把握することができる。
技術的思想3.前記一方は、前記車両用認証装置であり、前記他方は、前記携帯機であり、前記除去設定は、前記準備工程を、前記他方としての前記携帯機における前記一方側測距コードの受信工程から前記他方側測距コードを送信する他方側測距コード送信工程の完了までの期間の外に設ける設定を含む技術的思想2記載の車両用認証方法。
上記方法では、携帯機側が一方側測距コードを受信し他方側測距コードを送信するため、一方側測距コードを受信してから他方側測距コードを送信するまでの期間内に、識別信号の上記準備工程が入る場合には、この期間の長さが、準備工程の所要時間の変動の影響を受けやすい。この点に鑑み、上記装置では、一方側測距コードを受信してから他方側測距コードを送信するまでの期間の外に準備工程を設けることで、上記変動が生じることを好適に抑制することができる。
技術的思想4.前記一方は、前記車両用認証装置であり、前記他方は、前記携帯機であり、前記除去設定は、前記準備工程を、前記他方としての前記携帯機における前記他方側受信工程から前記他方側測距コードを送信する他方側測距コード送信工程の完了までの期間の外に設ける設定を含む技術的思想2または3記載の車両用認証方法。
上記方法では、要求信号受信工程から識別信号送信工程までの期間と、他方側受信工程から他方側測距コード送信工程までの期間とが重複しないようにすることで、後者の期間の長さが、前者の期間によって変動する事態を好適に回避することができる。
技術的思想5.前記一方は、前記車両用認証装置であり、前記他方は、前記携帯機であり、前記除去設定は、前記他方としての前記携帯機において前記一方側測距コードおよび前記識別信号が受信された後であって且つ、前記準備工程の前に、前記他方側測距コードを送信する他方側測距コード送信工程を設ける設定を含む技術的思想2または3記載の車両用認証方法。
上記方法では、携帯機において一方側測距コードを受信してから他方側測距コードを送信するまでの期間に、準備工程を設けない。このため、この期間が準備工程の所要時間の変動の影響を受けることを好適に回避することができる。
技術的思想6.前記携帯機は、中央処理装置を備えて且つ、前記準備工程、前記識別信号送信工程、前記一方側測距コードの受信工程、および前記他方側測距コード送信工程を、前記中央処理装置によるソフトウェア処理によって実現するものである技術的思想3または5記載の車両用認証方法。
上記方法では、準備工程、識別信号送信工程、一方側測距コードの受信工程、および他方側測距コード送信工程が、中央処理装置によるソフトウェア処理によって実現される。このため、一方側測距コードの受信工程と他方側測距コード送信工程とのいずれか一方がなされている期間に、準備工程等が入る場合には、一方側測距コードの受信工程から他方側測距コード送信工程までの期間の長さを変動させる要因となりうる。このため、技術的思想3または5記載の方法の利用価値が特に高い。
技術的思想7.前記除去設定は、前記一方を前記携帯機として且つ、前記他方を前記車両用認証装置とする設定を含み、前記一方側測距コードの送信タイミングに対する前記他方側測距コードの受信タイミングの時間差情報を、前記携帯機から前記車両用認証装置に送信する工程を有する技術的思想2記載の車両用認証方法。
上記方法では、携帯機が一方側測距コードを送信するために、車両用認証装置が、一方側測距コードを受信しこれに応じて他方側測距コードを送信することとなる。このため、一方側測距コードの受信から他方側測距コードの送信までの期間が、識別信号の準備工程によって変動する事態を好適に抑制することができる。
技術的思想8.前記要求信号は、チャレンジコードであり、前記準備工程は、前記チャレンジコードに演算処理を施すことでレスポンスコードを生成する工程であり、前記レスポンスコードを生成する演算負荷は、前記一方側測距コードの受信に応じて前記他方側測距コードを送信可能に準備する演算負荷よりも大きい技術的思想2〜7のいずれか1項に記載の車両用認証方法。
上記方法では、車両用認証装置からチャレンジコードが送信されることで、携帯機においてチャレンジコードに演算処理を施してレスポンスコードを生成する処理を実行する。このため、レスポンスコードを生成する処理は、比較的演算負荷が大きいものとなる傾向にある。このため、携帯機において他の演算処理がなされうる場合や、携帯機に電力不足が生じる場合には、レスポンスコードを生成する処理に要する時間が大きく変動しうる。したがって、一方側測距コードの受信から他方側測距コードの送信までの工程の間に準備工程を挟む場合等にあっては、一方側測距コードの受信タイミングに対する他方側測距コードの送信タイミングの時間差が変動しやすい。このため、この方法では、除去設定の利用価値が特に大きいものとなっている。
また、上記方法では、他方側測距コードを送信可能に準備する演算負荷を小さくすることで、他方側測距コードを送信可能とするための処理時間が変動する事態を好適に抑制することができる。
技術的思想9.前記いずれか一方は、前記車両用認証装置であり、前記一方としての前記車両用認証装置による前記一方側測距コードの送信は、前記識別信号送信工程の後になされるものであり、前記一方側測距コードの送信周波数を、前記要求信号の送信周波数とは相違させる技術的思想1〜8のいずれか1項に記載の車両用認証方法。
音波信号が受信される場合、直接受信されるものの他、反射波が受信されることがある。このため、他方としての携帯機が要求信号および一方側測距コードを受信するに際し、要求信号の反射波が一方側測距コードの受信に干渉するおそれがある。この点、上記方法では、一方側測距コードの送信周波数と要求信号の送信周波数とを相違させることで、上記干渉の問題を好適に抑制することができる。
技術的思想10.車両に搭載される車両用認証装置との間で通信をすることで電子認証される対象となる携帯機において、前記車両用認証装置から送信される音波信号としての車両側測距コードを受信する測距コード受信処理部と、前記受信された車両側測距コードに応じて、音波信号としての携帯側測距コードを送信する測距コード送信処理部と、当該携帯機の識別情報を含んだ識別信号の送信を要求する要求信号について、該要求信号を受信する要求信号受信処理部と、前記受信された要求信号に応じて、前記識別信号を送信する識別信号送信処理部とを備え、前記車両用認証装置は、前記測距コード送信処理部により送信された測距コードの受信結果に基づき測定される前記車両用認証装置と前記携帯機との距離が規定値以下であって且つ、前記識別信号が妥当なものであることを条件に、車載電子機器に対する所定の処理を実行するものであることを特徴とする携帯機。
上記において、車両側測距コードの送信タイミングに対する端末側測距コードの受信タイミングの時間差は、車両用認証装置と携帯機との距離(一方の送受信部と他方の送受信部との距離)と相関を有する。そして、時間差の算出精度は、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かの影響を受けない。このため、上記時間差を用いることで、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かにかかわらず、距離を正確に把握することができる。
技術的思想11.前記測距コード送信処理部による前記携帯側測距コードを送信する処理は、前記測距コード受信処理部による前記車両側測距コードの受信処理および前記要求信号受信処理部による前記要求信号の受信処理の後に実行されるものであり、前記識別信号送信処理部による前記識別信号を送信する処理は、前記測距コード送信処理部による前記携帯側測距コードを送信する処理の後に実行されるものである技術的思想10記載の携帯機。
車両側測距コードの送信タイミングに対する携帯側測距コードの受信タイミングの時間差は、車両用認証装置と携帯機との距離(車両用認証装置の送受信部と携帯機の送受信部との距離)と、携帯機において車両側測距コードを受信してから携帯側測距コードを送信するまでに要する時間とに依存する。ここで、送信するまでに要する時間は、携帯機において識別信号を準備する工程の所要時間に依存しうる。そしてこの場合、識別信号を準備する工程の所要時間が変動すると、上記時間差から、上記距離を正確に把握することが困難となる懸念がある。
この点、上記携帯機では、要求信号および車両側測距コードを受信した後、まず携帯側測距コードを送信し、その後、識別信号を送信する処理を実行する。このため、車両側測距コードの受信から携帯側測距コードの送信までの期間の長さが、識別信号の送信に関連する処理によって変動する事態を好適に抑制することができる。このため、車両用認証装置による車両側測距コードの送信タイミングに対する車両用認証装置による携帯側測距コードの受信タイミングの時間差は、車両用認証装置および携帯機間の距離を比較的正確に表現するものとなる。このため、上記距離を正確に把握することが比較的容易となる。
技術的思想12.車両に搭載される車両用認証装置との間で通信をすることで電子認証される対象となる携帯機において、当該携帯機の識別情報を含んだ識別信号の送信を要求する要求信号について、該要求信号を受信する要求信号受信処理部と、前記受信された要求信号に応じて、前記識別信号を送信する識別信号送信処理部と、前記車両用認証装置に音波信号としての携帯側測距コードを送信する測距コード送信処理部と、前記携帯側測距コードの送信タイミングを検出する送信タイミング検出処理部と、前記携帯側測距コードの送信に応じて前記車両用認証装置から音波信号としての車両側測距コードを受信する測距コード受信処理部と、前記車両側測距コードの受信タイミングを検出する受信タイミング検出処理部と、前記受信タイミングに対する前記送信タイミングの時間差情報を前記車両用認証装置に送信する情報送信処理部とを備え、前記車両用認証装置は、前記測距コード送信処理部により送信された測距コードの受信結果に基づき測定される前記車両用認証装置と前記携帯機との距離が規定値以下であって且つ、前記識別信号が妥当なものであることを条件に、車載電子機器に対する所定の処理を実行するものであることを特徴とする携帯機。
上記において、携帯側測距コードの送信タイミングに対する車両側測距コードの受信タイミングの時間差は、車両用認証装置と携帯機との距離(一方の送受信部と他方の送受信部との距離)と相関を有する。そして、時間差の算出精度は、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かの影響を受けない。このため、上記時間差を用いることで、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かにかかわらず、距離を正確に把握することができる。
さらに、上記携帯機では、上記携帯機が携帯側測距コードを送信することで、車両用認証装置が、携帯側測距コードを受信しこれに応じて車両側測距コードを送信することとなる。このため、携帯機による携帯側測距コードの送信から携帯機による車両側測距コードの受信までの期間が、識別信号の送信のための準備によって変動する事態を好適に抑制することができる。このため、携帯側測距コードの送信タイミングに対する車両側測距コードの受信タイミングの時間差は、上記変動の影響が抑制されたものとなり、車両用認証装置および携帯機間の距離を正確に表現するものとなる。このため、この時間差情報を用いて上記距離を正確に把握することが比較的容易となる。
技術的思想13.技術的思想9または10記載の携帯機が備える前記各処理部を、コンピュータによって実行させることを特徴とする認証用プログラム。
上記プログラムによれば、技術的思想10〜12のいずれか1項に記載の携帯機の効果に準じた効果を得ることができる。
技術的思想14.車両に備えられてユーザの携帯する携帯機との間で電子認証を行う車両用認証装置において、前記携帯機に、該携帯機の識別情報を含んだ識別信号を送信するように要求する要求信号について、該要求信号を送信する要求信号送信部と、前記携帯機から音波信号である携帯側測距コードを受信する測距コード受信部と、前記測距コード受信部により受信された前記携帯側測距コードに基づき、音波信号である車両側測距コードを前記携帯機に送信する測距コード送信部と、前記携帯機による前記携帯側測距コードの送信タイミングに対する前記車両側測距コードの受信タイミングの時間差情報を含む信号を受信する時間差情報受信手段と、前記携帯機から前記識別信号を受信する識別信号受信部と、前記時間差情報を含む信号を入力とし、当該車両用認証装置と前記携帯機との距離が規定値以下であると判断されて且つ、前記識別信号が妥当なものであると判断されることを条件に、車載電子機器に対する所定の処理の実行条件が成立したと判断する成立判断部と、前記成立判断部により前記実行条件が成立したと判断される場合、前記所定の処理を実行する実行部とを備えることを特徴とする車両用認証装置。
上記において、携帯側測距コードの送信タイミングに対する車両側測距コードの受信タイミングの時間差は、車両用認証装置と携帯機との距離(一方の送受信部と他方の送受信部との距離)と相関を有する。そして、時間差の算出精度は、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かの影響を受けない。このため、上記時間差を用いることで、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かにかかわらず、距離を正確に把握することができる。
さらに、上記装置では、携帯機から携帯側測距コードが送信されることで、車両用認証装置が、携帯側測距コードを受信しこれに応じて車両側測距コードを送信することとなる。このため、携帯機による携帯側測距コードの送信から車両側測距コードの受信までの期間が、識別信号の送信のための準備によって変動する事態を好適に抑制することができる。このため、車両側測距コードの送信タイミングに対する携帯側測距コードの送信タイミングの時間差は、上記変動の影響が抑制されたものとなり、車両用認証装置および携帯機間の距離を正確に表現するものとなる。このため、この時間差情報を用いて上記距離を正確に把握することが比較的容易となる。
技術的思想15.車両に備えられてユーザの携帯する携帯機との間で電子認証を行う車両用認証装置において、前記携帯機に、音波信号としての車両側測距コードを送信する測距コード送信部と、前記携帯機から、前記車両側測距コードの送信に応じた音波信号としての携帯側測距コードを受信する測距コード受信部と、前記携帯機に、該携帯機の識別情報を含む識別信号を送信するように要求する要求信号について、該要求信号を送信する要求信号送信部と、前記携帯機から前記識別信号を受信する識別信号受信部と、前記識別信号が妥当なものであると判断されることを条件に、車載電子機器に対する所定の処理の実行条件が成立したと判断する成立判断部と、前記成立判断部により前記実行条件が成立したと判断される場合、前記所定の処理を実行する実行部とを備え、前記成立判断部は、前記車両側測距コードの送信タイミングに対する前記携帯側測距コードの受信タイミングの時間差を入力とし、当該車両用認証装置と前記携帯機との距離が規定値以下であることを条件に、前記実行条件が成立したと判断するものであることを特徴とする車両用認証装置。
上記において、車両側測距コードの送信タイミングに対する端末側測距コードの受信タイミングの時間差は、車両用認証装置と携帯機との距離(一方の送受信部と他方の送受信部との距離)と相関を有する。そして、時間差の算出精度は、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かの影響を受けない。このため、上記時間差を用いることで、車両用認証装置と携帯機とのそれぞれの認識する時刻が一致するか否かにかかわらず、距離を正確に把握することができる。
技術的思想16.前記測距コード送信部による前記車両側測距コードの送信処理および前記測距コード受信部による前記携帯側測距コードの受信処理を、前記識別信号受信部による前記識別信号の受信処理の前または後に行う技術的思想15記載の車両用認証装置。
車両側測距コードの送信タイミングに対する携帯側測距コードの受信タイミングの時間差は、車両用認証装置と携帯機との距離(車両用認証装置の送受信部と携帯機の送受信部との距離)と、携帯機において車両側測距コードを受信してから携帯側測距コードを送信するまでに要する時間とに依存する。ここで、送信するまでに要する時間は、携帯機において識別信号を準備する工程の所要時間に依存しうる。そしてこの場合、識別信号を準備する工程の所要時間が変動すると、上記時間差から、上記距離を正確に把握することが困難となる懸念がある。
この点、上記装置では、測距コード送信部による前記車両側測距コードの送信処理および前記測距コード受信部による前記携帯側測距コードの受信処理を、前記識別信号受信部による前記識別信号の受信処理の前または後に行う。このため、車両側測距コードの送信タイミングと携帯側測距コードの受信タイミングとの間隔を極力縮めることができる。このため、車両側測距コードの送信タイミングに対する携帯側測距コードの受信タイミングの時間差を、車両用認証装置および携帯機間の距離を正確に表現したものとすることが容易となる。そしてこれにより、上記距離を正確に把握することが比較的容易となる。
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
図示されるように、車両10は、車両用認証装置20を備えている。車両用認証装置20は、制御部22と、送受信部24とを備えている。ここで、制御部22は、電子認証のための演算を行う機能を搭載している。これは、たとえば中央処理装置(CPU)とメモリとを備え、メモリに記憶されたプログラムを実行することで実現することができる。もっとも、CPUによるソフトウェア処理をするものに限らず、たとえば、電子認証のための演算を行うためのASIC等の専用のハードウェア手段であってもよい。一方、送受信部24は、圧電素子等を備え、超音波信号を送信する機能と受信する機能とを有するハードウェア手段である。ここで、超音波信号とは、可聴周波数帯域(20Hz以上20kHz未満)よりも高周波の音波信号のことである。送受信部24は、図1の左側の車両10の平面図に示すように、車両の左右両側において車室外に向けて設けられている。
車両用認証装置20は、ドアのロックおよび解除の自動制御を行うドアロックシステム30と通信可能に接続されている。また、車両用認証装置20は、周囲の雰囲気温度を検出する温度センサ32の出力信号を入力する。
車両用認証装置20は、超音波信号を用いて、携帯機40と通信可能とされる。携帯機40は、携帯機40を所持するユーザが、車両10の正当なユーザであるか否かの認証を行うための機能を有する。すなわち、携帯機40は、正当なユーザの所持する情報を記憶しており、この情報を含む識別信号が携帯機40から送信され、車両用認証装置20によって携帯機40(その送信する識別信号)が妥当なものである旨の認証がなされることで、携帯機40を所持するユーザが車両10の正当なユーザである旨、認証されたと見なす。
本実施形態では、携帯機40を、認証のための専用の装置とせず、他の用途を有する装置とする。特に、本実施形態では、スマートフォン等、電話機能を有するものを想定している。具体的には、携帯機40は、送受信部42と、電話回線通信部44と、中央処理装置(CPU)46と、不揮発性メモリ48と、RAM50とを備え、これらが入出力ポート52を介して互いに通信可能に接続されている。
ここで、送受信部42は、超音波信号を送信する機能と受信する機能とを有する。具体的には、送受信部42は、超音波信号を送信する装置としてのスピーカと、超音波信号を受信する装置としてのマイクとを各別の部材として備えたものであってもよい。送受信部42は、さらにスピーカによって受信された超音波信号をデジタルデータに変換するA/D変換器や、送信用のデジタルデータを記憶するレジスタ、レジスタに記憶されたデジタルデータをアナログ信号に変換してマイクに出力するD/A変換器等を備えている。
電話回線通信部44は、携帯電話用の電話回線を介して通信をするための機能を有する。CPU46は、不揮発性メモリ48に備えられた各種プログラムを実行する機能を有するハードウェア手段である。不揮発性メモリ48は、給電の有無にかかわらずデータを保持する書き換え可能なメモリである。特に、本実施形態においては、不揮発性メモリ48に、認証用プログラム48aが記憶されている。認証用プログラム48aは、携帯機40と車両10との通信によって電子認証をする際に携帯機40側で実行される処理を規定するアプリケーションプログラムである。
次に、電子認証処理について詳述する。本実施形態では、車両用認証装置20は、携帯機40と通信することで、車両10の正当なユーザが車両10から所定範囲内にいるか否かを判断し、いると判断することで、車両10のドアのロックの解除を許可する処理を実行する。
図2に、上記所定の範囲を領域A1として図示する。図示されるように、領域A1は、車両10の横方向両側に位置する送受信部24のそれぞれから半径が所定値となる範囲の領域であって且つ車室外の領域である。
ここで、領域A1内にユーザがいるか否かを、本実施形態では、送受信部24から超音波信号が送信されるタイミングに対する、携帯機40からの返信信号である超音波信号が送受信部24において受信されるタイミングの時間差に基づき判断する。この時間差は、車両用認証装置20内の時計のみを用いて算出可能である。このため、上記時間差を用いるなら、車両用認証装置20と携帯機40とのそれぞれの認識する時刻が一致しているか否かの影響を受けることなく、上記判断を行うことができる。
ただし、上記時間差が、車両用認証装置20の送受信部24と携帯機40の送受信部42との距離によって一義的に定まるためには、携帯機40において超音波信号を受信してからこれを送信するまでの時間が変動しないことが望ましい。
そこで本実施形態では、携帯機40において超音波信号を受信してからこれを送信するまでの時間の変動を極力抑制するための設定を行う。次に、これについて説明する。
図3(a)に、車両用認証装置20から送信される超音波信号を示し、図3(b)に、携帯機40から送信される超音波信号の推移を示す。図3(a)に示すように、車両用認証装置20から送信される超音波信号は、同期コード、IDコード、チャレンジコード、および測距コードが時系列的につながったデータである。ここで、同期コードは、プリアンブルである。IDコードは、車両10を特定するためのものである。チャレンジコードは、携帯機40を識別する識別情報を送信するように携帯機40に要求する信号であり且つ、識別情報を含む識別信号を生成するために利用されるものである。測距コードは、送受信部24と携帯機40との間の距離を測定するために用いるコードである。
一方、図3(b)に示すように、携帯機40から送信される超音波信号は、測距コードおよびレスポンスコードが順につながったものである。ここで、測距コードは、車両用認証装置20の送受信部24から送信された測距コードの各ビットを論理反転させたコードとする。これに対し、レスポンスコードは、車両用認証装置20から送信されたチャレンジコードに、識別情報を重畳させるための演算処理を施すことで生成される。
図示されるように、携帯機40のCPU46は、車両用認証装置20から測距コードを受信すると、レスポンスコードの生成および送信に先立ち、車両用認証装置20に測距コードを送信する処理を実行する。これは、携帯機40が車両用認証装置20から測距コードを受信してから車両用認証装置20に測距コードを送信するまでの時間から、レスポンスコードの生成処理に要する時間の変動の影響を除去するための除去設定である。すなわち、CPU46がチャレンジコードからレスポンスコードを生成する処理の演算負荷は、比較的大きく、CPU46の演算負荷が大きい場合や、携帯機40のバッテリ(図示略)容量低下時等においては、CPU46がチャレンジコードを生成するのに要する時間が伸張するおそれがある。このため、CPU46によるレスポンスコードの生成処理に先立って、CPU46により測距コードを算出して送信することで、レスポンスコードの生成処理に要する時間の変動の影響を除去する。さらに、本実施形態では、測距コードの生成処理自体、その演算負荷が大きくならないように簡易な演算処理(ビットの論理反転処理)を設定している。
以下、車両用認証装置20と携帯機40との通信処理について、図4を用いて詳述する。図4(a)は、車両用認証装置20の制御部22が実行する処理の手順を示す。一方、図4(b)は、携帯機40のCPU46が認証用プログラム48aを実行することで実現される処理の手順を示す。以下では、説明の便宜上、車両用認証装置20と携帯機40との通信の時系列を一部反映しつつ、上記2つの処理の手順を説明する。
この一連の処理では、まず制御部22は、車室外にある携帯機40の認証処理の実行条件が成立したか否かを判断する。ここで実行条件は、たとえば、車両10のドアがロックされていることや、車室内において携帯機40が検出されていないこと、車両用認証装置20側から送信される超音波信号に携帯機40が応じることで、携帯機40が超音波信号の伝搬する領域内に存在することが確認されたことなどとすればよい。
そして制御部22は、実行条件が成立したと判断する場合(S10:YES)、送受信部24を用いて、図3(a)に示した超音波信号を送信する(S12)。そして制御部22は、同期コード、IDコード、チャレンジコード、および測距コードの順に測距コードの送信までを完了すると、そのときの時刻を、測距コード送信時刻T1として記憶する(S14)。これは、たとえば制御部22をRAMを備えて構成し、これに記憶する処理とすればよい。
上記超音波信号の送信に伴い、携帯機40において、CPU46は、超音波信号の受信処理を行う(S30)。ここで、CPU46による受信処理とは、送受信部42によって受信されデジタルデータに変換された超音波信号がいかなる信号であるかを特定する処理を含む。すなわち、同期コード、IDコード、チャレンジコード、および測距コードを特定する処理を含む。
次にCPU46は、車両用認証装置20から送信された測距コードに基づき、車両用認証装置20に送信する測距コードを生成する(S32)。この処理は、たとえば車両用認証装置20から送信された測距コードをRAM50に一旦記憶する処理と、RAM50に記憶された測距コードの各ビットを読み出し、その論理値を反転した値をRAM50に記憶する処理とによって構成してもよい。なお、CPU46は、実際には、車両用認証装置20から送信されるIDコードの妥当性を評価し、妥当であると判断する場合に限って、ステップS32以降の処理を実行することが望ましい。ここで、CPU46によるIDコードが妥当であるか否かの判断は、たとえば不揮発性メモリ48等に、ターゲットとする車両10に対応するIDコードを予め記憶しておくことで実現することができる。
そしてCPU46は、測距コードを生成すると、送受信部42を用いて測距コードを送信する(S34)。ここで、CPU46による測距コードの送信処理とは、実際には、送信のための専用のハードウェア(ここでは、送受信部42)に、測距コードを渡す処理のことである。測距コードを送受信部42に渡すことで、CPU46による以降の関与がなくても測距コードが送信される状態となることが、CPU46による送信処理の完了となる。なお、CPU46は、測距コードの送信処理を、ステップS32の処理が完了することで開始してもよいが、ステップS32の処理において、論理反転処理が完了したビットから順次実行してもよい。
続いてCPU46は、レスポンスコードを生成する処理を実行する(S36)。この処理は、ステップS30の処理において受信したチャレンジコードに、携帯機40を識別する識別情報を有するコード(暗号鍵)を論理合成することで生成される。そしてCPU46は、送受信部42を用いて、超音波信号としてレスポンスコードを送信し(S38)、この一連の処理を一旦終了する。ここで、CPU46によるレスポンスコードの送信処理は、実際には、送信のための専用のハードウェア(ここでは、送受信部42)に、レスポンスコードを渡す処理のことである。レスポンスコードを送受信部42に渡すことで、CPU46による以降の関与がなくてもレスポンスコードが送信される状態となることが、CPU46による送信処理の完了となる。
一方、車両用認証装置20においては、携帯機40から測距コードが送信されることで、制御部22は、その測距コードを受信する(S16)。そして制御部22は、測距コードの受信を完了した時刻を、測距コード受信時刻T2として記憶する(S18)。なお、この処理についても、制御部22をRAMを備えて構成し、これに記憶する処理とすればよい。その後、制御部22は、携帯機40からレスポンスコードが送信されることで、これを受信する(S20)。なお、制御部22は、レスポンスコードを受信する処理が完了する場合や、ステップS10において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
図5に、車両用認証装置20側において実行される認証処理の手順を示す。この処理は、制御部22によって、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
この一連の処理では、制御部22は、まず、レスポンスコードを受信済みであるか否かを判断する(S40)。そして制御部22は、レスポンスコードを受信済みであると判断する場合(S40:YES)、レスポンスコードが妥当なものであるか否かを判断する(S42)。この処理は、たとえばレスポンスコードとして妥当な値を制御部22に記憶保持しておき、受信されたレスポンスコードと比較することで実行することができる。またたとえば、制御部22において暗号鍵を記憶保持しておき、図4(b)のステップS36の処理と同様の処理によってレスポンスコードを算出し、これを受信したコードと比較することで実行してもよい。
制御部22は、レスポンスコードが妥当なものであると判断する場合(S42:YES)、車両用認証装置20の送受信部24と携帯機40の送受信部42との距離Lを算出する(S44)。これは、測距コード送信時刻T1、測距コード受信時刻T2、音速Vs、および携帯機40において測距コードを受信してから測距コードを送信するまでに要する時間Δを用いて、以下の式にて算出することができる。
L=Vs・(T2−T1−Δ)/2
ここで、音速Vsは、伝達媒体としての空気の温度に依存するため、上記温度センサ32によって検出される温度Taに基づき可変設定される。詳しくは、音速Vsは、式「Vs=331+0.6・Ta」によって算出される。
制御部22は、距離Lを算出すると、これがしきい値Sよりも小さいか否かを判断する(S46)。ここで、しきい値Sは、図2の領域A1を定めるパラメータである。そして制御部22は、距離Lがしきい値よりも小さいと判断する場合(S46:YES)、車両10のドアロックを解除する処理を許可する(S48)。これは、たとえばドアロックシステム30に、解除を許可する旨の信号を送信する処理とすればよい。これにより、ドアロックシステムでは、たとえばユーザがドアに設けられたボタンに触れるなどすることで、ドアを解除する処理を実行することとなる。
なお、制御部22は、許可処理を実行した後や、ステップS40,S42,S46の処理において否定判断した場合には、この一連の処理を一旦終了する。
以上説明した本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)図4に示したように、測距コード送信時刻T1に対する測距コード受信時刻T2の時間差に基づき、距離Lを算出した。これにより、車両用認証装置20と携帯機40とのそれぞれの内部において認識する時刻が正確に一致しているか否かにかかわらず、距離Lを精度よく算出することができる。
(2)図4(b)に示したように、携帯機40において、車両用認証装置20から送信された測距コードを受信し、車両用認証装置20に送信するまでの期間の外において、レスポンスコードを生成する処理を設けた。これにより、レスポンスコードを生成する処理(S36)の所要時間が変動する場合であっても、測距コードを受信してからこれを送信するまでの時間Δがその影響を受けることを回避することができる。このため、測距コード送信時刻T1に対する測距コード受信時刻T2の時間差(T2−T1)に基づき、距離Lを正確に把握することができる。
(3)図3に示したように、チャレンジコードおよび測距コードを携帯機40において受信した後、携帯機40から測距コードを送信した。これにより、車両用認証装置20から測距コードを送信し、携帯機40から送信された測距コードを車両用認証装置20において受信することを条件に、チャレンジコードを携帯機40に送信する場合と比較して、測距コード、チャレンジコード、およびレスポンスコードの送受信にかかる所要時間を短縮することが容易となる。このため、認証処理を早期に行うことができるため、ユーザが車両10のドアに触れるなどしてドアのロックを解除することを要求しているときに未だ認証処理が完了していない等の事態が生じることを抑制することができる。
(4)図3に示したように、携帯機40が測距コードを受信した後、測距コードを送信するまでの期間の外に、レスポンスコードの送信処理を設けた。これにより、測距コードを受信してから送信するまでの期間に他の処理が入ることを極力抑制することができる。
(5)携帯機40を識別する識別情報を含む識別信号の生成処理を、車両用認証装置20から送信されるチャレンジコードに演算処理を施すことでレスポンスコードを生成する処理とした。この場合、レスポンスコードを生成する処理の演算負荷が大きくなるため、携帯機40の負荷状況に応じて、レスポンスコードの生成に要する時間が変動しやすい。このため、図3に示した通信手法の利用価値が特に大きい。
(6)携帯機40から送信する測距コードを、受信した測距コードのビットの論理反転したコードとした。これにより、携帯機40のCPU46が測距コードを生成する際の演算負荷を極力小さいものとすることができ、ひいては測距コードの生成処理に要する時間の変動を抑制することができる。
(7)携帯機40として、認証処理に特化したものではなく、他の用途を有する装置を流用した。この場合、携帯機40のCPU46によって実行される演算には、車両認証処理とは無関係なものを含むため、負荷変動によって、認証処理に要する時間が変動するおそれがある。このため、図3に示した通信手法の利用価値が特に大きい。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図6に、本実施形態にかかる超音波信号の送受信手法を示す。ここで、図6(a)は、車両用認証装置20から送信される超音波信号の推移を示し、図6(b)は、携帯機40から送信される超音波信号の推移を示す。
図示されるように、本実施形態では、携帯機40においてチャレンジコードを受信し、これに応じてレスポンスコードを送信する処理のなされる期間と、携帯機40において測距コードを受信しこれに応じて測距コードを送信する処理のなされる期間とが重複しないようにする。詳しくは、車両用認証装置20から、同期コード、IDコード、およびチャレンジコードを送信した後、携帯機40から同期コードおよびレスポンスコードを送信する。車両用認証装置20では、レスポンスコードを受信した後、測距コードを送信し、携帯機40では送信された測距コードを受信することに応じて、測距コードを車両用認証装置20に送信する。
図7(a)は、車両用認証装置20の制御部22が実行する処理の手順を示す。一方、図7(b)は、携帯機40のCPU46が認証用プログラム48aを実行することで実現される処理の手順を示す。以下では、説明の便宜上、車両用認証装置20と携帯機40との通信の時系列を一部反映しつつ、上記2つの処理の手順を説明する。
この一連の処理において、まず制御部22は、図4(a)のステップS10の処理と同様、車室外の認証処理の実行条件が成立したか否かを判断する(S50)。そして、制御部22は、実行条件が成立したと判断する場合(S50:YES)、超音波信号として、同期コード、IDコード、およびチャレンジコードを送信する(S52)。
一方、携帯機40において、CPU46は、車両用認証装置20からのチャレンジコード等の送信処理に応じて、これらの受信処理を実行する(S70)。続いてCPU46は、図4(b)のS36の処理同様、レスポンスコードを生成する(S72)。そしてCPU46は、図4(b)のステップS38の処理と同様、レスポンスコードを送信する(S74)。
これに対し、車両用認証装置20において、制御部22は、レスポンスコードを受信し(S54)、超音波信号として、測距コードを送信する(S56)。そして制御部22は、図4(a)のステップS14の処理と同様、送信が完了した時刻を、測距コード送信時刻T1とする(S58)。
一方、携帯機40において、CPU46は、測距コードを受信(S76)すると、図4(b)のステップS34の処理と同様、測距コードを生成し(S78)、測距コードを送信(S80)した後、この一連の処理を一旦終了する。
これに対し、車両用認証装置20において、制御部22は、測距コードを受信し(S60)、図4(a)のS18の処理同様、受信が完了した時刻を、測距コード受信時刻T2とする(S62)。なお、制御部22は、この処理が完了する場合や、ステップS50において否定判断する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記(1),(2),(4)〜(7)の効果を得ることができる。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図8に、本実施形態にかかる超音波信号の送受信手法を示す。ここで、図8(a)は、車両用認証装置20から送信される超音波信号の推移を示し、図8(b)は、携帯機40から送信される超音波信号の推移を示す。
図示されるように、本実施形態では、携帯機40において測距コードを送信し、車両用認証装置20において測距コードを受信することで、これに応じて車両用認証装置20から携帯機40に測距コードを送信する。詳しくは、車両用認証装置20から、同期コード、IDコード、およびチャレンジコードを送信すると、携帯機40では、これに応じて同期コード、レスポンスコードを送信した後、測距コードを送信する。車両用認証装置では、携帯機40から送信された測距コードを受信した後、測距コードを携帯機40に送信する。
図9(a)は、車両用認証装置20の制御部22が実行する処理の手順を示す。一方、図9(b)は、携帯機40のCPU46が認証用プログラム48aを実行することで実現される処理の手順を示す。以下では、説明の便宜上、車両用認証装置20と携帯機40との通信の時系列を一部反映しつつ、上記2つの処理の手順を説明する。
この一連の処理において、制御部22では、まず図4(a)のステップS10の処理同様、認証処理の実行条件が成立したか否かを判断する(S90)。そして制御部22は、実行条件が成立したと判断する場合(S90:YES)、超音波信号として、同期コード、IDコード、およびチャレンジコードを送信する(S92)。
超音波信号が送信されると、携帯機40において、CPU46は、それらを受信する(S110)。次にCPU46は、図4(b)のS36の処理と同様、レスポンスコードを生成し(S112)、これを送信する(S114)。これに対し、車両用認証装置20において、制御部22は、レスポンスコードを受信する(S94)。
一方、携帯機40においてCPU46は、レスポンスコードを送信すると(S114)、測距コードを送信する(S116)。そしてCPU46は、測距コードの送信処理が完了する時刻を、測距コード送信時刻T1としてRAM50に記憶する(S118)。
携帯機40から測距コードが送信されると、車両用認証装置20において制御部22は、測距コードを受信する(S96)。次に、制御部22は、図4(b)のステップS32の処理の要領で、受信した測距コードに基づき測距コードを生成する(S98)。そして制御部22は、生成した測距コードを送信する(S100)。
車両用認証装置20から測距コードが送信されると、携帯機40においてCPU46は、測距コードを受信する(S120)。そしてCPU46は、測距コードの受信が完了すると、受信が完了した時刻を、測距コード受信時刻T2としてRAM50に記憶する(S122)。次にCPU46は、測距コード送信時刻T1と測距コード受信時刻T2とを送信し(S124)、この一連の処理を一旦終了する。
測距コード送信時刻T1と測距コード受信時刻T2とが携帯機40から送信されると、車両用認証装置20において制御部22は、それらを受信する(S102)。なお、制御部22は、受信する処理が完了する場合や、ステップS90において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(5),(6),(7)の効果に準じた効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
(8)携帯機40がまず測距コードを送信し、これに応じて車両用認証装置20が測距コードを送信するようにした。ここで、車両用認証装置20の制御部22は、測距コードを送信する処理をするものの、レスポンスコードを生成する処理についてはこれを行わない。このため、測距コードが携帯機40によって送信されてから、携帯機40において受信されるまでの期間の長さが、レスポンスコードを生成する処理に要する時間の長さの変動によって影響を受けることを好適に抑制することができる。
<第4の実施形態>
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図10に、本実施形態にかかる超音波信号の送受信手法を示す。ここで、図10(a)は、車両用認証装置20から送信される超音波信号の推移を示し、図10(b)は、携帯機40から送信される超音波信号の推移を示す。
本実施形態では、車両用認証装置20から送信される超音波信号の時系列や、これに応じて携帯機40から送信される超音波信号の時系列は、第1の実施形態(図3)のものと同様である。ただし、本実施形態では、同期コード、IDコード、およびチャレンジコードの送信周波数f1を、測距コードの送信周波数f2とは相違させる。
これは、携帯機40におけるチャレンジコードの受信処理と測距コードの受信処理との干渉を回避するための設定である。すなわち、車両用認証装置20から送信され携帯機40において受信される超音波信号には、直接波のみではなく、他の物体に反射した後に受信される反射波が含まれる。ここで、反射波は直接波と比較して、携帯機40に到達するまでの伝搬経路が長いことから、到達時刻が遅延する。このため、チャレンジコードの反射波の到達時刻は、測距コードの直接波の到達時刻と重複するおそれがある。ここで、チャレンジコードと測距コードとは互いに識別可能なコードとされるものの、測距コードについては、その演算負荷が極力小さくなるように設定することから、簡易な信号となり、ノイズに対する耐性が必ずしも高くない。このため、チャレンジコードの反射波の干渉に対して、測距コードを分離することに困難を伴う懸念がある。そこで本実施形態では、送信周波数f1と送信周波数f2とを相違させることで、測距コードの直接波が携帯機40に到達しているときにチャレンジコードの反射波が携帯機40に到達する場合であっても、それらを容易に分離することを可能とする。
詳しくは、送信周波数f1(たとえば「25kHz」)を、送信周波数f2(たとえば「20kHz」)よりも高周波とする。これは、測距コードについては直接波を携帯機40において確実に受信することが望まれることに鑑みた設定である。すなわち、低周波の超音波信号は、高周波のものと比較して回折現象が顕著となるため、車両用認証装置20の送受信部24と携帯機40の送受信部42とを直線で結ぶ線上に障害物があったとしても、これを迂回して送受信部24から送受信部42へと直接波が伝達しやすい。そして、直接波は間接波と比較して、携帯機40に到達するまでの所要時間に対する周囲の障害物の影響が小さいため、測距コード送信時刻T1に対する測距コード受信時刻T2の時間差によって距離Lを正確に算出することができる。
<技術的思想と実施形態との対応>
以下、上記「課題を解決するための手段」に記載された技術的思想と、実施形態との代表的な対応関係を記載する。
技術的思想1:一方側測距コード…図3(a)と図6(a)と図8(b)、他方側受信工程…S30,S76,S96、他方側測距コード…図3(b)と図6(b)と図8(a)、一方側受信処理…S16,S60,S120、距離算出手段…S44、要求信号…チャレンジコード、要求信号送信工程…S12,S52,S92、識別信号…レスポンスコード、識別信号送信工程…S38,S74,S114
技術的思想2:準備工程…S36,S72,S112、除去設定…図3と図6と図8とを参照
技術的思想3:図3と図6とを参照
技術的思想4:他方側測距コード送信工程…S80,S100。図6と図8とを参照
技術的思想5:図3参照
技術的思想6:他方側測距コード送信工程…S34,S80。図3と図6と図10とを参照
技術的思想7:図8参照
技術的思想8:図3と図6と図8と図10とを参照
技術的思想9:図10参照
技術的思想10:測距コード受信処理部…S30,S76、測距コード送信部処理部…S34,S80、要求信号…チャレンジコード、識別信号…レスポンスコード、要求信号受信処理部…S30,S70、識別信号送信処理部…S38,S76
技術的思想11:図3参照
技術的思想12:要求信号…チャレンジコード、識別信号…レスポンスコード、要求信号受信処理部…S110、識別信号送信処理部…S114、測距コード送信部処理部…S116、送信タイミング検出処理部…S118、測距コード受信処理部…S120、受信タイミング検出処理部…S122、情報送信処理部…S124。図8参照
技術的思想14:要求信号…チャレンジコード、識別信号…レスポンスコード、要求信号送信部…S92、測距コード受信部…S96、測距コード送信部…S100、時間差情報受信部…S102、識別信号受信部…S94、成立判断部…S42,S46、実行部…S48。図8参照
技術的思想15:要求信号…チャレンジコード、識別信号…レスポンスコード、測距コード送信部…S12,S56、測距コード受信部…S16,S60、要求信号送信部…S12,S52、識別信号受信部…S20,S54、成立判断部…S42,S46、実行部…S48
技術的思想16:図3と図6とを参照
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・「一方側測距コード(車両側測距コード、携帯側測距コード)について」
上記実施形態において、同期コードを一方側測距コードとしてもよく、また、IDコードを測距コードとしてもよい。ここで、IDコードを測距コードとする場合、たとえば、図3に示す例において、携帯機40においてチャレンジコードを受信することで、IDコードのビット反転信号を車両用認証装置20に送信し、その後、レスポンスコードを生成して送信すればよい。
・「他方側測距コード(車両側測距コード、携帯側測距コード)について」
一方側測距コードをビット反転したコードに限らず、たとえば、一方側測距コードと同一であってもよい。なお、この場合、測距コードを送信可能に準備する処理とは、たとえば携帯機40がこの処理を行うとすると、測距コードを受信した後、これをCPU46が送信専用のハードウェア手段(送受信部24)に渡す直前までの処理とすればよい。
・「除去設定について」
上記第2の実施形態(図6)において、車両用認証装置20から同期コード、IDコード、および測距コードを順次送信した後、携帯機40から測距コードを送信し、その後、車両用認証装置20からチャレンジコードを送信してもよい。
また、上記第1の実施形態(図3(a))において、測距コードを送信した後、チャレンジコードを送信するようにして且つ、携帯機40側ではチャレンジコードを受信した後、レスポンスコードの生成処理に先立ち、測距コードを生成して車両用認証装置20に送信するようにしてもよい。この場合であっても、車両用認証装置20からチャレンジコードが送信され携帯機40によって受信されるのに要する時間が変動しないのであれば、車両用認証装置20による測距コードの送信タイミングに対する同車両用認証装置20による測距コードの受信タイミングの時間差の変動を好適に抑制することができる。
なお、以上例示した除去設定が必須ではないことについては、「携帯機について」の欄に記載したとおりである。
・「準備工程について」
上記実施形態では、チャレンジコードからレスポンスコードを生成する工程(図4のS36、図7のS72、図9のS112)を例示したが、それらに限らない。たとえば、識別信号を、車両用認証装置20から送信される信号との論理演算によって生成される信号とはせず、不揮発性メモリ48に識別信号を予め記憶しておくなら、準備工程とは、CPU46が、不揮発性メモリ48から読み出し、送信専用のハードウェア手段に渡すために、一時的にRAM50等に書き込む工程となる。この場合、準備工程には、レスポンスコードを生成する場合ほどには時間がかからない。しかし、この場合であっても、たとえば携帯機40における測距コードの受信から測距コードの送信までの経過時間を短くする上では、上記各実施形態に例示した手法が有効である。
・「距離算出工程、時間差情報、情報送信処理部、時間差情報受信部、送信タイミング検出処理部、受信タイミング検出処理部について」
図9では、測距コード送信時刻T1と測距コード受信時刻T2とを送信したが、これに限らず、たとえば、「T2−T1」を送信してもよい。またたとえば、測距コード送信時刻T1と測距コード受信時刻T2とに基づき、携帯機40において距離Lを算出し、距離Lを時間差情報として送信してもよい。
測距コード送信時刻T1としては、測距コードの送信処理が完了した時刻に限らない。たとえば、送信処理を開始した時刻としてもよい。またたとえば図3(a)において、同期コード、IDコードおよびチャレンジコードの送信に要する時間の変動を無視できるなら、測距コード送信時刻T1に代えて同期コードの送信開始時刻と測距コード受信時刻T2とを、測距コード送信時刻T1に対する測距コード受信時刻T2の時間差情報として用いることもできる。
・「実行部について」
ドアのロック解除処理の許可処理に限らない。たとえば、ドアのロックの許可処理であってもよい。
また、送受信部24を車室内に備える構成において、携帯機40が車室内にあると判断する場合には、携帯機40が車室内にあることを検出することで、エンジンや電動機等、車載主機の起動の許可処理であってもよい。また、これにも限らず、たとえば、車載主機がインバータに接続された電動機の場合、インバータの一対の入力端子とバッテリとの間を開閉する開閉器(メインリレー)を閉状態とすることを許可する処理であってもよい。
もっとも、車載電子機器に対する所定の処理としては、許可処理にも限らない。たとえば、上記開閉器を閉状態に切り替える処理自体としてもよい。また、たとえば、ステアリングロックのオン・オフの切り替え等であってもよい。
さらに、所定の処理としては、車両が走行を可能とするための状態を整える処理の許可、または実行に限らない。たとえば、インストルメントパネルの電源をオンする処理や、空調装置の起動を許可する処理等、車室内のアクセサリの起動、または起動の許可であってもよい。もっとも、車室内のアクセサリの起動や許可にも限らず、たとえば、車両10の外部からユーザによりドアをロックする意思表示がなされることを条件にドアをロックする機能を有するものにあって、ドアのロックを禁止する処理であってもよい。
・「携帯機について」
スマートフォン等、車両の用途とは別に様々な機能を搭載した汎用の多機能携帯端末に限らない。たとえば、車両のユーザの電子認証に特化した専用の装置であってもよい。この場合、超音波信号に対する感度等、超音波通信を行う機能のばらつきを個体差程度に抑えることができる。なお、この際、携帯機における処理を、認証用プログラムをコンピュータに実行させることで実現するものに限らず、携帯機における処理の少なくとも一部を、専用のハードウェア手段によって実現するものであってもよい。
ちなみに、携帯機40が測距コードを受信した後、車両用認証装置20に測距コードを送信する設定の場合、レスポンスコードの生成処理および、測距コードの送信処理については、中央処理装置によるソフトウェア処理であることが、上記実施形態に例示した除去設定が特に有効となる設定となる。ただし、これは必須ではない。たとえば、これらをすべてハードウェア処理とする場合であっても、レスポンスコードの演算処理と、測距コードの演算処理とのそれぞれを実行する論理回路の一部を共有化する場合等にあっては、上記除去設定が有効である。また、論理回路による演算速度に個体差が生じうることに鑑みれば、測距コードを受信した後、これを送信するまでの期間に、レスポンスコードの生成処理等、他の処理を含まないことが、個体差の影響を極力抑制する上で有効である。
もっとも、上記実施形態等で例示した除去設定を施さなくても、車両用認証装置および携帯機のいずれか一方からの一方側測距コードの送信タイミングに対する他方から送信される他方側測距コードの受信タイミングの時間差を用いることは有効である。これにより、距離Lの算出精度に、車両用認証装置および携帯機のそれぞれの認識する時刻が一致するか否かが影響を及ぼさなくなるためである。
・「音波信号について」
超音波に限らず、可聴周波数帯域の音波信号であってもよい。この場合、超音波信号と比較して回折現象が顕著となるため、送受信部24の周囲の障害物を迂回して携帯機40と通信することが容易となる。
要求信号と測距コードとで周波数を相違させる手法としては、図10に例示したものに限らない。たとえば図10において、チャレンジコードの送信周波数f1を、測距コードの送信周波数f2よりも低周波としてもよい。また、要求信号と測距コードとの送信周波数を相違させるものにも限らない。たとえば、図3(a)において、チャレンジコードの前に測距コードを送信するようにして且つ、同期コード、IDコードの送信周波数を送信周波数f1とし、測距コードおよびチャレンジコードの送信周波数を送信周波数f2としてもよい。