図1及び図2に示すように、半導体製造ライン1は、破線で示すウエハ2(搬送対象物)を搬送するウエハ搬送システム3(搬送システム)と、ウエハ2に対して所定の処理を行うプロセス装置4と、ウエハ搬送システム3によって搬送されているウエハ2をウエハ搬送システム3から受け取ってプロセス装置4に渡すと共にプロセス装置4によって処理されたウエハ2をプロセス装置4から受け取ってウエハ搬送システム3に戻す移載装置5と、を備える。「移載する(to transfer)」とは、「装置間で対象物を受け渡す」を意味する。
ウエハ搬送システム3は、パレット6(搭載装置)と、浮上搬送装置7と、を備える。図1に示すように、浮上搬送装置7は、水平方向において直線的に構成されている。
ここで、図1を参照して、「システム長手方向」及び「鉛直方向」、「システム幅方向」を定義する。システム長手方向は、浮上搬送装置7の長手方向を意味する。システム長手方向のうち、ウエハ2を搬送する方向を「搬送方向」とし、搬送方向と反対の方向を「反搬送方向」とする。鉛直方向は、地面に対して垂直な方向である。鉛直方向のうち、地面に向かう方向を「下方向」とし、地面から離れる方向を「上方向」とする。システム幅方向は、システム長手方向及び鉛直方向に対して直交する方向である。システム幅方向のうち、浮上搬送装置7の中央に近づく方向をシステム幅中央方向とし、浮上搬送装置7の中央から離れる方向をシステム幅反中央方向とする。
(パレット6)
図2に示すように、パレット6は、ウエハ2を搭載するものである。即ち、本実施形態のウエハ搬送システム3は、ウエハ2を直接的に搬送するのではなく、ウエハ2を搭載したパレット6を搬送することで間接的にウエハ2を搬送する。パレット6は、パレット本体8(本体)と、3つの搭載ピン9(搭載部)、3つの位置決めユニット10、一対のフラつき防止磁石11(搬送案内対象磁石)、押し出しピン12(突起)、一対の停止操作部13(操作部)、一対の駆動部60(搬送駆動力生成手段)、4つのフック61、を備える。
パレット本体8は、平面視で長方形の平板状に形成されている。パレット本体8は、長方形の基部14と、一対の張り出し部15と、を有する。本実施形態において、パレット6は、パレット本体8の基部14の長手方向がシステム長手方向に対して平行となるような姿勢で拘束されたまま、浮上搬送装置7によって搬送される。従って、以降、パレット6を説明するに際しても、前述した「システム長手方向」及び「鉛直方向」、「システム幅方向」をそのまま利用するものとする。パレット本体8の基部14は、システム長手方向に対して平行に延びる一対の長辺14aと、システム幅方向に対して平行に延びる一対の短辺14bと、を有する。パレット6が浮上搬送装置7によって搬送されるに際し、パレット本体8の先頭となる部分を先頭部62と称し、パレット本体8の後尾となる部分を後尾部63と称する。一対の張り出し部15は、基部14の各長辺14aの略中央からシステム幅反中央方向へ突出する。
4本の搭載ピン9は、ウエハ2をパレット6に搭載するに際し、ウエハ2とパレット本体8との間の距離を制御するためのピンである。4本の搭載ピン9は、パレット本体8上にウエハ2を搭載するためのものである。4本の搭載ピン9は、パレット本体8の基部14から上方向に突出するように配置されている。各搭載ピン9の上端9aは、半球状に形成されている。ウエハ2は、4本の搭載ピン9の上端9aに搭載される。各搭載ピン9の上端9aが半球状に形成されているので、各搭載ピン9とウエハ2との接触面積が最小限に抑えられており、各搭載ピン9とウエハ2との接触による発塵を効果的に抑制している。
3つの位置決めユニット10は、ウエハ2をパレット6に搭載するに際し、パレット6に対するウエハ2の水平方向での位置決めを行うためのものである。各位置決めユニット10は、パレット本体8から上方に突出する支持部10aと、支持部10aに回転自在に支持されるローラー10bと、を有する。
一対のフラつき防止磁石11は、パレット6が浮上搬送装置7によって搬送される際の、パレット6を平面視で見たときのパレット6のフラつきを防止するための磁石である。各フラつき防止磁石11は、パレット本体8の基部14の各短辺14bの略中央近傍に配置されている。換言すれば、一対のフラつき防止磁石11は、パレット本体8の基部14の先頭部62及び後尾部63に配置されている。
押し出しピン12は、パレット6を搬送方向へ強制的に押し出すためのピンである。押し出しピン12は、パレット本体8の基部14から上方向に突出するように配置されている。押し出しピン12は、パレット6がウエハ2を搭載した状態でウエハ2と重ならないような位置に配置される。押し出しピン12は、パレット6がウエハ2を搭載した状態で、ウエハ2から離れた位置に配置される。押し出しピン12は、パレット6がウエハ2を搭載した状態で、ウエハ2よりも後尾部63側となるように配置される。
一対の停止操作部13は、パレット6の移動を所定位置で停止するためのものである。図3に示すように、各停止操作部13は、薄板16と、パレット側停止磁石17と、を有する。各停止操作部13の薄板16は、パレット本体8の基部14の各長辺14aの略中央から下方向に延びる。各停止操作部13のパレット側停止磁石17は、薄板16の下端に取り付けられている。なお、薄板16の下端は、平面視でシステム幅反中央方向に凸のV字状となるように若干折り曲げられている。
駆動部60は、パレット6を搬送するための搬送駆動力Rを生成する部分である。駆動部60の詳細は、後述する。
4つのフック61は、図4に示すように、例えば移載装置5に搭載されたロボットのアーム64がウエハ2とパレット6を同時に保持するためのものである。各フック61は、L字に形成されている。各フック61は、パレット本体8の基部14上に配置されている。各フック61は、パレット本体8の基部14から上方向に延びる突出部61aと、突出部61aの上端からシステム長手方向に延びる引っ掛け部61bと、を有する。4つのフック61のうち2つは、先頭部62寄りに配置され、残りの2つは後尾部63側に配置されている。
(浮上搬送装置7)
図1に示すように、浮上搬送装置7は、パレット浮上ユニット20と複数のカバー21、複数のFFU22(Fan Filter Unit、清浄空気生成手段)を備える。
複数のFFU22は、清浄空気を生成するものである。複数のFFU22は、システム長手方向において間隔を空けて配置されている。
パレット浮上ユニット20は、複数のFFU22が生成した清浄空気を用いてパレット6を浮上させつつパレット6を搬送するものである。図5に示すように、パレット浮上ユニット20は、中央ユニット23と、一対の側方ユニット24と、を備える。
中央ユニット23は、システム幅方向において一対の側方ユニット24に挟まれるように配置されている。中央ユニット23は、高圧筒体25と、マグネットガイド26(搬送案内磁石)と、を有する。高圧筒体25は、複数のFFU22によって生成された清浄空気を溜め込むことで高圧空間Pを形成するものである。高圧筒体25は、システム長手方向に延びる。高圧筒体25は、天板27と一対の側板28、底板29によって構成される。天板27には、複数の噴射スリット30(噴射孔)が形成されている。複数の噴射スリット30は、高圧筒体25内の清浄空気を上方向に噴射するためのスリットである。複数の噴射スリット30は、システム長手方向に2列を成して並んでいる。マグネットガイド26は、パレット6が浮上搬送装置7によって搬送される際の、パレット6を平面視で見たときのパレット6のフラつきを防止するための磁石である。マグネットガイド26は、システム長手方向に直線的に延びている。マグネットガイド26は、天板27の下面27aに取り付けられている。
また、図6に示すように、中央ユニット23は、複数の仕切り板40を有する。複数の仕切り板40は、高圧筒体25内に形成された高圧空間Pをシステム長手方向で仕切る薄板である。高圧空間Pは、複数の仕切り板40で仕切られることで、複数の高圧室Qに分割されている。そして、底板29には、FFU22によって生成された清浄空気を高圧室Qに供給するための複数の供給孔41が形成されている。各供給孔41は、仕切り板40の近傍に形成されている。各供給孔41は、仕切り板40の配置位置よりも僅かに搬送方向側にズレた位置に形成されている。
図5に戻り、各側方ユニット24は、天板31と側板32、底板33、シール34(シール部材)を有する。一対の側方ユニット24は、システム幅方向において線対称であるから、一方の側方ユニット24のみ説明し、他方の説明は省略する。
天板31は、中央ユニット23の高圧筒体25の天板27に対してシステム幅方向で隣り合っている。天板31と天板27の間には、ガイドスリット35(排出スリット)が形成されている。ガイドスリット35は、システム長手方向に沿って細長く形成されている。シール34は、側板32からシステム幅反中央方向に突出している。
また、図7に示すように、各側方ユニット24は、浮上ユニット側停止磁石42(磁気結合部、移動停止手段)を有する。浮上ユニット側停止磁石42は、底板33に支持されている。浮上ユニット側停止磁石42は、天板31の下方向側に配置されている。浮上ユニット側停止磁石42は、外部環境Fに配置されている。浮上ユニット側停止磁石42は、ガイドスリット35の下方向に配置されている。
そして、図5に戻り、中央ユニット23の高圧筒体25の天板27と、一対の側方ユニット24の天板31と、によって搬送板36(搬送路)が構成される。
中央ユニット23と一対の側方ユニット24は、所定の位置で相互に連結されている。
複数のカバー21は、搬送板36上に外部環境Fから隔離された搬送空間Sを形成するためのものである。複数のカバー21は、システム長手方向に並べて配置されている。各カバー21は、システム長手方向で見て下方向に開口する断面U字状に形成されている。各カバー21は、天板37と一対の側板38を有する。そして、各カバー21の一対の側板38でパレット浮上ユニット20をシステム幅方向で挟み込むことで、各カバー21とパレット浮上ユニット20の搬送板36との間に搬送空間Sが形成される。なお、各カバー21の一対の側板38でパレット浮上ユニット20をシステム幅方向で挟み込むと、各カバー21の一対の側板38は、パレット浮上ユニット20の各側方ユニット24のシール34に対して接触し、シール34がシステム幅中央方向に圧縮されるようにシール34を弾性変形させる。各カバー21は、シール34の自己弾性復元力によってパレット浮上ユニット20との間で気密にシールされている。なお、各カバー21は、上方向へ引っ張り上げればパレット浮上ユニット20から比較的容易に取り外すことができる。
次に、図8及び図9を参照して、浮上搬送装置7内における清浄空気の流れについて説明する。先ず、FFU22によって生成された清浄空気は、パレット浮上ユニット20の中央ユニット23の高圧筒体25の底板29の供給孔41を通って高圧筒体25内の高圧空間Pの高圧室Qに供給される。この結果、高圧室Qの気圧は、例えば2atm程度の高気圧(第1の気圧)となる。
次に、高圧室Q内の圧縮状態にある清浄空気は、パレット浮上ユニット20の中央ユニット23の高圧筒体25の天板27が有する複数の噴射スリット30を通って上方向に、搬送空間Sへ噴射される。これにより、搬送空間Sの気圧は、高圧室Qの気圧である高気圧よりも低く、外部環境Fの気圧である大気圧(第3の気圧)よりも高い、例えば20Pa(ゲージ圧)程度の中気圧(第2の気圧)となる。図6には、各噴射スリット30から噴射された清浄空気の流れの向きを太い矢印で示している。図6に示すように、高圧室Q内の清浄空気は、複数の噴射スリット30を通って概ね上方向に噴射されるが、実際には若干傾いて噴射される。詳しくは、複数の噴射スリット30のうち供給孔41に近い噴射スリット30を通って噴射される清浄空気は確かに殆ど上方向に噴射されるが、供給孔41から離れた噴射スリット30を通って噴射される清浄空気の噴射は、供給孔41から離れる方向の水平成分を有している。ところで、本実施形態では、供給孔41が仕切り板40の配置位置よりも僅かに搬送方向側にズレた位置に形成されている。従って、供給孔41から離れた噴射スリット30を通って噴射される清浄空気の噴射は、搬送方向の水平成分を有することになる。別の言葉で言えば、清浄空気は、殆ど上方向か若干搬送方向に傾きながら高圧室Qから搬送空間Sへと噴射される。
次に、図9に示すように、高圧室Qから複数の噴射スリット30を通じて搬送空間Sへ噴射された清浄空気は、搬送空間Sを清浄雰囲気に維持しつつ、やがてガイドスリット35から外部環境Fへ排出される。ここで、ガイドスリット35は複数の噴射スリット30の近傍に形成されているので、高圧室Qから複数の噴射スリット30を通じて搬送空間Sへ噴射された清浄空気は、搬送空間S内に満遍なく行き渡ることになり、搬送空間S内での空気の澱みが発生し難くなっている。
図10には、高圧室Qから複数の噴射スリット30を通じて搬送空間Sへ噴射された清浄空気により、パレット6が搬送空間S内で浮上している様子を示している。図10に示すように、パレット浮上ユニット20の搬送板36と、パレット6のパレット本体8の基部14と、の間に清浄空気が高い圧力で供給されることで、パレット6は、搬送空間S内で浮上する。そして、パレット6のパレット本体8の基部14に搭載された一対の駆動部60(図2を併せて参照)の存在により、パレット6は、浮上しながら搬送方向へと搬送される。
このとき、図2に示すパレット6の一対のフラつき防止磁石11が、図5に示す浮上搬送装置7のパレット浮上ユニット20の中央ユニット23のマグネットガイド26によって磁気的に引き寄せられる。これにより、図2に示すパレット6は、浮上搬送時、搬送空間S内でパレット6を平面視で見て、ふらつき難い。
また、図10に示すように、パレット6の停止操作部13は、浮上搬送装置7のパレット浮上ユニット20の搬送板36のガイドスリット35を通じて、搬送板36の下方向に突出している。そして、浮上搬送装置7のシステム長手方向における所定の位置において、パレット6の停止操作部13のパレット側停止磁石17と、浮上搬送装置7のパレット浮上ユニット20の側方ユニット24の浮上ユニット側停止磁石42と、が磁気的に結合する。これにより、浮上搬送装置7のシステム長手方向における所定の位置において、パレット6は、浮上したまま浮上搬送装置7によって拘束され、パレット6の移動が禁止される。このように、浮上搬送装置7のシステム長手方向における所定の位置においてパレット6の移動が禁止されることで、図1に示す移載装置5が浮上搬送装置7からウエハ2を簡単に受け取ることができるようになる。なお、「磁気的な結合」とは、物理的な接触を伴った磁気的結合である場合と、物理的な接触を伴わない磁気的結合で場合と、が考えられる。本実施形態では、物理的な接触を伴わない磁気的結合を例示している。
上記のように、パレット6の移動が禁止され、パレット6に搭載されているウエハ2が移載装置5によってプロセス装置4に引き渡され、プロセス装置4による所定の処理が完了すると、処理後のウエハ2が移載装置5によってパレット6上に再び搭載される。その後、パレット6の移動を再開するには、移載装置5が有するロボットのアーム64(図4参照)などを用いて図2に示すパレット6の押し出しピン12を搬送方向に押し出してやればよい。これにより、パレット6の停止操作部13のパレット側停止磁石17と、浮上搬送装置7のパレット浮上ユニット20の側方ユニット24の浮上ユニット側停止磁石42と、の磁気的な結合が強制的に解除されるので、パレット6の移動が再び許容されることになる。ところで、パレット6の停止操作部13のパレット側停止磁石17と、浮上搬送装置7のパレット浮上ユニット20の側方ユニット24の浮上ユニット側停止磁石42と、は相互に物理的に接触する場合がある。物理的な接触はダストの発生源となる。しかしながら、パレット6の停止操作部13のパレット側停止磁石17と、浮上搬送装置7のパレット浮上ユニット20の側方ユニット24の浮上ユニット側停止磁石42と、がシステム幅方向において対向する場所は、搬送空間Sから見て、清浄空気の流れの下流側である。従って、仮に、上記の物理的な接触によりダストが発生したとしても、発生したダストが搬送空間S内に侵入することはなく、搬送空間Sの空気清浄度が高いレベルで維持されることになる。
それでも、搬送板36は定期的にアルコール拭き取りなどによる清掃をすることが好ましい。これに対し、本実施形態において複数のカバー21は、シール34の自己弾性復元力によりパレット浮上ユニット20に保持されているだけなので、パレット浮上ユニット20から簡単に取り外すことができる。従って、本実施形態の浮上搬送装置7はメンテナンス性が高い。
次に、図2に示す一対の駆動部60を説明する。図11及び図12に示すように、パレット本体8の基部14の先頭部62には、一対の通気孔65が形成されている。一対の通気孔65は、システム幅方向に若干離れて配置されている。図2及び図11、図12に示すように、各駆動部60は、パレット本体8を挟んで搬送板36と反対側に配置され、各通気孔65を通って吹き上がる清浄空気の運動エネルギーを利用して、パレット6を搬送板36上で搬送するための力としての搬送駆動力Rを生成する。一対の駆動部60は、パレット6のパレット本体8の基部14の先頭部62に配置されている。一対の駆動部60は、システム幅方向に若干離れて配置されている。一対の駆動部60は、同一形状である。一対の駆動部60は、パレット本体8上に突出して形成されている。一対の駆動部60は、パレット本体8から上方向に突出して形成されている。
図11及び図12に示すように、各駆動部60は、パレット本体8の基部14から上方向に突出する角筒体状に形成されている。図12に示すように、各駆動部60には、空気流路66が形成されている。各駆動部60の空気流路66は、基部14から離れるにつれて後尾部63に向かうように傾斜している。各駆動部60の空気流路66は、基部14から離れるにつれて先頭部62から離れるように傾斜している。各駆動部60の空気流路66は、搬送板36へ近づくにつれてパレット6の搬送方向に向かうように傾斜している。各駆動部60の空気流路66は、パレット本体8の基部14の各通気孔65と接続している。各駆動部60は、空気流路66の先頭部62側を区画する内壁面としての傾斜面67を有する。各駆動部60の傾斜面67は、搬送板36へ近づくにつれてパレット6の搬送方向に向かうように傾斜している。以上の構成で、噴射スリット30から上方向に噴射され、通気孔65を通って吹き上がる清浄空気は、傾斜面67に対して斜めに当たる。これにより、傾斜面67には、傾斜面67に対して直交する反力Wが発生する。この反力Wの水平成分が、上述した搬送駆動力Rとなる。
なお、本実施形態では、図5に示すように、搬送板36には、複数の噴射スリット30が形成されている。複数の噴射スリット30は、2列に並べて配置されている。2列のうち一方に属する複数の噴射スリット30は、図12に示すようにパレット6のパレット本体8の基部14の一方の通気孔65と鉛直方向において対向可能であり、他方に属する複数の噴射スリット30は、他方の通気孔65と鉛直方向において対向可能である。従って、一対の駆動部60は、同一の搬送駆動力Rを生成することになり、もって、パレット6は、平面視でふらつくことなくシステム長手方向に沿ってスムーズに搬送される。
以上に、本願発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は、以下の特長を有する。
(1)ウエハ搬送システム3(搬送システム)は、通気孔65が形成された平板状のパレット本体8(本体)と、パレット本体8上にウエハ2(搬送対象物)を搭載可能な4つの搭載ピン9(搭載部)と、を有するパレット6(搭載装置)と、上方へ向けて開口する複数の噴射スリット30(噴射孔)が形成された搬送板36(搬送路)と、清浄空気を生成するFFU22(清浄空気生成手段)と、を有し、FFU22が生成した清浄空気が搬送板36の複数の噴射スリット30からパレット本体8に向かって噴射することでパレット6を搬送板36上で浮上させつつパレット6を搬送する浮上搬送装置7と、を備える。パレット6は、通気孔65を通って吹き上がる清浄空気の運動エネルギーを利用して、パレット6を搬送板36上で搬送するための力としての搬送駆動力Rを生成する駆動部60(搬送駆動力生成手段)を更に有する。駆動部60は、通気孔65を通って吹き上がる清浄空気が斜めに当たる傾斜面67を有するようにパレット本体8上に突出して形成されている。以上の構成によれば、パレット6の浮上搬送装置7側の面が実質的に平坦となるので、パレット6と浮上搬送装置7との間における発塵を抑えることができる。
なお、上記実施形態において、パレット6は、2つの駆動部60を有している。しかし、これに代えて、駆動部60は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
(2)駆動部60は、浮上搬送装置7による浮上搬送時にパレット本体8の先頭となる部分としての先頭部62に配置されている。傾斜面67は、搬送板36に近づくにつれてパレット6の搬送方向に向かうように傾斜する。以上の構成によれば、パレット6は駆動部60を先頭にして搬送されることになるので、パレット6の平面視における向きが安定する。
(3)浮上搬送装置7は、パレット6の搬送方向に沿って延びる磁石であるマグネットガイド26(搬送案内磁石)を有する。パレット6は、浮上搬送装置7による浮上搬送時に浮上搬送装置7のマグネットガイド26によって磁気的に引き寄せられる磁石としての2つのフラつき防止磁石11(搬送案内対象磁石)を有する。2つのフラつき防止磁石11は、パレット本体8の先頭部62と、浮上搬送装置7による浮上搬送時にパレット本体8の後尾となる部分としての後尾部63と、に夫々配置されている。以上の構成によれば、パレット6の平面視における向きを一定に維持することが可能となる。
なお、パレット6は、フラつき防止磁石11を3つ以上有してもよい。この場合、3つのフラつき防止磁石11は、好ましくは、一列に並んで配置される。
(4)搬送板36の複数の噴射スリット30は、パレット6の搬送方向に沿って二列に並べて形成されている。
(5)浮上搬送装置7は、搬送板36上に外部環境Fから隔離された搬送空間Sを形成するためのカバー21を更に有する。浮上搬送装置7は、FFU22が生成した清浄空気が搬送板36の複数の噴射スリット30からパレット本体8に向かって搬送空間S内に噴射することでパレット6を搬送板36上で浮上させつつパレット6を清浄雰囲気内で搬送する。
(付記1)ウエハ搬送システム3(搬送システム)は、板状のパレット本体8(本体)を有し、ウエハ2(搬送対象物)を搭載可能なパレット6(搭載装置)と、パレット本体8に対して対向すると共に複数の噴射スリット30(噴射孔)が形成された搬送板36(搬送路)と、搬送板36上に外部環境Fから隔離された搬送空間Sを形成するためのカバー21と、清浄空気を生成するFFU22(清浄空気生成手段)と、を有し、FFU22が生成した清浄空気を搬送板36の複数の噴射スリット30から搬送空間S内に噴射させることでパレット6を浮上させつつパレット6を清浄雰囲気内で搬送する浮上搬送装置7と、を備える。浮上搬送装置7の搬送板36は、搬送空間S内の清浄空気を外部環境Fへ排出するためのガイドスリット35(排出スリット)を有する。パレット6は、浮上搬送時に、ガイドスリット35を通って外部環境Fに至るまで延びる停止操作部13(操作部)を有する。浮上搬送装置7は、外部環境Fに配置され、停止操作部13を用いてパレット6の移動を所定位置にて停止する移動停止手段を更に有する。以上の構成によれば、移動停止手段が搬送空間Sから見て清浄空気の流れの下流側に配置されるので、移動停止手段の作動によって発生したダストが搬送空間Sに侵入することがない。従って、搬送空間Sの空気清浄度を低下させることなくウエハ2の移動を所定位置にて停止することができる。なお、本実施形態において移動停止手段は、浮上ユニット側停止磁石42によって構成される。
(付記2)ガイドスリット35は、システム長手方向(パレット6の搬送の方向)に沿って形成されている。以上の構成によれば、パレット6の停止操作部13がガイドスリット35を通って外部環境Fに至る構成でも、パレット6の搬送を問題なく行うことができる。
また、ガイドスリット35は、浮上搬送装置7の搬送板36に形成されている。以上の構成によれば、搬送空間S内の清浄空気の、外部環境Fへの排出の方向を下向きにすることができる。
(付記3)ガイドスリット35は、浮上搬送装置7の搬送板36の複数の噴射スリット30の近傍に形成されている。以上の構成によれば、複数の噴射スリット30から搬送空間S内に噴射された清浄空気が搬送空間S内に満遍なく行き渡るので、搬送空間S内で空気の澱みが発生し難い。
(付記4)移動停止手段は、停止操作部13と磁気的に結合可能な浮上ユニット側停止磁石42(磁気結合部)を有する。以上の構成によれば、パレット6の移動を簡素な構成で停止させることができる。
(付記5)パレット6は、ウエハ2を搭載した状態でウエハ2と重ならない位置に配置された押し出しピン12(突起)を有する。以上の構成によれば、押し出しピン12を用いてパレット6を押し出すことで、停止操作部13と浮上ユニット側停止磁石42との磁気的な結合を解除することができる。
(付記6)浮上搬送装置7は、システム長手方向(パレット6の搬送の方向)に沿って延びる磁石であるマグネットガイド26(搬送案内磁石)を有する。パレット6には、浮上搬送時に浮上搬送装置7のマグネットガイド26によって磁気的に引き寄せられる磁石としての2つのフラつき防止磁石11(搬送案内対象磁石)を有する。2つのフラつき防止磁石11は、パレット本体8の先頭部62と、浮上搬送装置7による浮上搬送時にパレット本体8の後尾となる部分としての後尾部63と、に夫々配置されている。以上の構成によれば、パレット6の浮上搬送時における向きを一定に維持することが可能となる。
(付記7)カバー21は、搬送板36に対して着脱自在に構成されている。以上の構成によれば、搬送板36のメンテナンス性がよい。
(付記8)搬送板36とカバー21の間には、シール34(シール部材)が配置されている。以上の構成によれば、搬送板36とカバー21との間からの清浄空気の意図しない漏れを効果的に抑制できる。
(付記9)浮上搬送装置7は、FFU22によって生成された清浄空気を複数の噴射スリット30から搬送空間S内に噴射する前に一時的に溜め込む高圧空間Pを形成する高圧筒体25と、高圧空間Pをシステム長手方向(パレット6の搬送の方向)において仕切ることで高圧空間Pを複数の高圧室Qに分割する仕切り板40と、を有する。FFU22によって生成された清浄空気は、仕切り板40の近傍に形成される。以上の構成によれば、複数の噴射スリット30から搬送空間S内に噴射された清浄空気の搬送空間S内における噴射方向は鉛直上向き又は単一の方向に若干傾いた斜め上向きとなる。従って、パレット6を上記単一の方向に搬送する場合は、その搬送を円滑に行うことができる。
以上に、上記実施形態を説明したが、上記実施形態は以下のように変更できる。
図11及び図12に示すように、上記実施形態では、一対の駆動部60を角筒体とした。しかし、これに代えて、図13及び図14に示すように、各駆動部60を、傾斜面67を有する傾斜板68と、傾斜板68を支持する一対の支持脚69と、ストレート板70と、によって構成してもよい。ストレート板70は、傾斜板68の下端からパレット本体8の基部14に至るまで延びる平板である。この構成でも、清浄空気が噴射スリット30から上方向に噴射し、傾斜面67に対して斜めに当たると、傾斜面67には、搬送駆動力Rを分力として含む反力Wが生成されることになる。
また、図7に示すように、上記実施形態では、移動停止手段としての浮上ユニット側停止磁石42は側方ユニット24に固定されているとした。しかし、これに代えて、図15に示すように、浮上ユニット側停止磁石42が側方ユニット24によって移動可能に支持される構成を採用してもよい。具体的には、側方ユニット24は、モータ50と、モータ50の回転軸に取り付けられた円盤51と、浮上ユニット側停止磁石42と、を備える。浮上ユニット側停止磁石42は、円盤51の円周上の任意の箇所に取り付けられている。以上の構成によれば、モータ50を駆動させることで、パレット6の停止操作部13のパレット側停止磁石17と磁気的に結合した浮上ユニット側停止磁石42を搬送方向へ移動させると同時に停止操作部13から遠ざけるように浮上ユニット側停止磁石42を移動させることができる。即ち、本変形例は以下の特長を有する。
(付記10)移動停止手段は、停止操作部13と磁気的に結合した浮上ユニット側停止磁石42を搬送方向(パレット6の搬送の方向)へ移動させると同時に停止操作部13から遠ざけるように浮上ユニット側停止磁石42を移動させる磁気結合部移動手段を更に有する。以上の構成によれば、パレット6を加速させながら停止操作部13と浮上ユニット側停止磁石42との磁気的な結合を解除することができる。なお、本実施形態において移動停止手段は、浮上ユニット側停止磁石42とモータ50と円盤51により実現される。磁気結合部移動手段は、モータ50及び円盤51によって実現される。