以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
紙幣処理装置は、紙幣を処理する多機能装置である。一般に、スーパーマーケットや銀行など、大量に現金が取り扱われる分野において用いられる。例えば、銀行の窓口などでの出納業務や、スーパーマーケットの売上金の管理業務などで、手間のかかる現金の入金や出金、計数、保管管理等の処理に用いられ、紙幣処理装置を用いることで、これら作業の高精度化、効率化を図ることができる。ここで説明する紙幣処理装置は、特に銀行のテラーカウンターに設置された紙幣入出金機として用いられる。従って、この紙幣入出金機を操作するユーザ(又はオペレータ)は、基本的にはテラーである。
ここで、以下の説明に登場する用語を定義する。「正常紙幣」とは、後述する識別部によって識別可能な紙幣をいい、「リジェクト紙幣」とは、識別部で識別不能な紙幣をいう。「正券」とは、正常紙幣のうち、汚れや破れ等が比較的少ない状態の紙幣をいい、「損券」とは、正常紙幣のうち、汚れや破れ等が比較的多い状態の紙幣をいう。
図1及び図2に、紙幣入出金機1A(以下、単に入出金機1Aともいう)を示す。この入出金機1Aは、いわゆる循環式の入出金機であり、出金処理時に払い出す紙幣には、入金処理時に収納部3に収納した紙幣が含まれる。入出金機1Aは、LANやWAN等のネットワークを介して、又は、直接的に上位端末T等と通信可能に接続し、システム化して用いることができる。入出金機1Aに接続される上位端末Tは1台だけでなく、複数台に接続し、いずれか一つの上位端末Tを選択的に切り替えて用いることができる。
入出金機1Aは、上部の処理部11と、中間部の第1金庫部13と、下部の第2金庫部14とに大別される。処理部11を構成する筐体111内には、入金口211を有する入金部21と、第1及び第2出金口231、232を有する出金部23と、紙幣の識別を行う識別部25と、一時的に紙幣を収納する一時保留部51と、入金部21、出金部23、識別部25及び一時保留部51を相互に連結するループ搬送路411を含む搬送部41と、が配設されている。一方、処理部11を構成する筐体111の下側に配置される筐体131は、第1及び第2金庫部13、14を構成する筐体であり、その内部に格納している収納部3等を、所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成されている(防護筐体131ともいう)。
第1金庫部13には、複数の(図例では4個の)スタック式の収納カセット31を含んで構成された収納部3と、同じくスタック式の精査カセット33とが配設され、第2金庫部14には、回収カセット53が配設されている。防護筐体131の前面には、第1金庫部13を開閉するための第1開閉扉133と、第2金庫部14を開閉するための第2開閉扉135とがそれぞれ個別に設けられている。
入金口211は、例えば入金処理の際に入金する紙幣を投入するための口である。入金口211は、処理部側筐体111の上面において上向きに開口していて、複数枚の紙幣を一度に受け入れ可能に構成されている。入金部21はまた、入金口211に投入された複数枚の紙幣を、一枚ずつ、ループ搬送路411に繰り出す繰り出し機構を備えている。
第1及び第2出金口231、232はそれぞれ、例えば出金処理の際に紙幣を払い出すための口である。これらの出金口231、232は、入金口211よりも奥行き方向の手前側の、処理部側筐体111における上面から前面にかけての位置で前後に並んでかつ、斜め上方に向かって開口している。これら第1及び第2出金口231、232は、搬送されてきた紙幣を集積し、複数枚の紙幣を一度に保持可能なリフトを有している(図示省略)。リフトは、リフト機構により、紙幣の抜き取り可能な払出位置と、紙幣の抜き取り不能な待機位置とに移動する。
識別部25は、ループ搬送路411上に配設されて、そのループ搬送路411に沿って搬送される紙幣の一枚一枚について、その真偽、金種及び正損を識別するように構成されている。具体的には、画像センサ、赤外線センサ、紫外線センサ、及び磁気センサ等の、紙幣の特徴を取得するセンサを搭載し、搬送される紙幣の特徴が、記憶している各種紙幣の特徴と一致するかを判定し、金種、真偽、及び正損を識別する。本入出金機1Aの識別部25はまた、紙幣に印字されている記番号を光学的に読み取る機能を有している。ここで、記番号の読み取りは、紙幣における所定の位置に印字されている記番号の画像を取得し、その取得した画像に基づいて、記番号の各桁の文字や数字を認識することである。尚、識別部25が記番号の読み取りを行うのではなく、識別部25とは別の読取部を、例えばループ搬送路411上に配置してもよい。また、識別部25におけるセンサ以外の機能を、後で述べる制御部513が行ってもよい。
搬送部41は、処理部側筐体111内においてエンドレスに設けられたループ搬送路411を備えている。紙幣は、このループ搬送路411に沿って図2における時計回り方向及び反時計回り方向に搬送される。このループ搬送路411は、図示は省略するが、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、搬送される紙幣を検出するセンサ及び複数のガイドの組み合わせによって構成されている。ループ搬送路411は、その搬送路に沿って、紙幣と紙幣との間に所定間隔を隔てた状態で、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。ループ搬送路411と入金口211との間は、投入路413によって互いに接続されており、入金口211に投入された紙幣は、この投入路413を通ってループ搬送路411まで搬送される。
ループ搬送路411には、4つの収納カセット31のそれぞれに接続される分岐路417が、図示省略の分岐機構を介して接続されており、各分岐機構の動作制御によって、ループ搬送路411上を搬送されている紙幣が選択的に、分岐路417を通じて4つの収納カセット31のいずれかに搬送されてそこに収納されると共に、いずれかの収納カセット31から繰り出された紙幣が、分岐路417を介してループ搬送路411に搬送されるようになる。
ループ搬送路411にはまた、第1及び第2払出路415、416が、紙幣の搬送方向を切り替える分岐機構(図示省略)を介してそれぞれ接続されている。第1払出路415の先端は、第1出金口231に接続され、第2払出路416の先端は、第2出金口232に接続されている。各分岐機構は、互いに異なる3方向に延びる搬送路の集合位置において、所定方向から搬送されてくる紙幣を、それとは別の2方向それぞれに選択的に搬送させるように動作する。分岐機構の具体的な構成は、国際公開第2009/034758号に例示されている。この構成によって、ループ搬送路411上を搬送されている紙幣は、分岐機構の動作制御によって選択的に、第1又は第2払出路415、416を通って第1又は第2出金口231、232に搬送される。
ループ搬送路411にはさらに、精査カセット33に接続される第1接続路418と、回収カセット53に接続される第2接続路419とが、それぞれ図示省略の分岐機構を介して接続されている。この内、第2接続路419は、第1金庫部13を上下に貫通するように延びて配設されており、その途中に分岐路4110が設けられている。この分岐路4110は、後述する第4収納カセット下部31−4Lに接続されている。
これら第1接続路418及び第2接続路419の接続位置に設けられた各分岐機構もまた、互いに異なる3方向に延びる搬送路の集合位置において、所定方向から搬送されてくる紙幣を、それとは別の2方向それぞれに選択的に搬送させるように動作する。この構成によって、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣は、分岐機構の動作制御によって選択的に、第1接続路418を通って精査カセット33に搬送されるか、第2接続路419を通って、第4収納カセット下部31−4L又は回収カセット53に搬送される。また、精査カセット33又は第4収納カセット下部31−4Lから繰り出されかつ、第1又は第2接続路418、419を通って搬送されてきた紙幣が、ループ搬送路411上で時計回り又は反時計回り方向に搬送される。
収納部3は、前述したように、図例では第1−第4のスタック式の収納カセット31を含んで構成されている。ここで、以下の説明において、各々の収納カセットを総称する場合には、符号「31」を付し、第1、第2、第3…の、各々の収納カセットを区別する場合には、符号「31−1、31−2、31−3…」を付す。尚、収納カセット31の数は特に限定されず、1個以上で、適宜の数を設定すればよい。4個の収納カセット31は、この例では、装置の奥行き方向に並んで配設されている。
詳細な図示は省略するが、収納部3は、第1金庫部13の開閉扉133を開けた状態で、装置の手前に引き出すことができる。収納部3を引き出した状態で、各収納カセット31はそれぞれ、装置に対して取り外し、取り付けができるように構成されている。
各収納カセット31の内部には、そこに集積される紙幣の量に応じて昇降する集積台311が配設されている。第1−第3収納カセット31−1、31−2、31−3は、ループ搬送路411から、各カセットの出入口を通ってその内部に送り込まれた紙幣を、集積台311の上で、下から上の順に積み重ねて収納するように構成され、かつ、集積台311上に積み重ねられた紙幣を、上から下の順に一枚ずつ出入口を通じてループ搬送路411に繰り出すことが可能に構成されている。
これに対し、第4収納カセット31−4は、その内部に仕切りが設けられており、これによって第4収納カセット31−4は、上側のカセット上部(第4収納カセット上部31−4U)と、下側のカセット下部(第4収納カセット下部31−4L)に分割されている。第4収納カセット上部31−4Uの出入口は、その上面に形成されている。第4収納カセット下部31−4Lの出入口は、その側面に形成されている。収納カセット上部31−4Uの出入口には、ループ搬送路411から分岐した分岐路417が接続され、収納カセット下部31−4Lの出入口には、第2接続路419から分岐した分岐路4110が接続されている。
これにより、第4収納カセット上部31−4Uは、第1収納カセット31−1等と同様に、紙幣を収納、繰り出すことが可能に構成されている。対して、第4収納カセット下部31−4Lは、ループ搬送路411から、第2接続路419を通ってその内部に送り込まれた紙幣を、集積台311の上で、下から上の順に積み重ねて収納するように構成され、かつ、集積台311上に積み重ねられた紙幣を、上から下の順に一枚ずつ第2接続路419及びループ搬送路411に繰り出すことが可能に構成されている。
精査カセット33は、各収納カセット31の精査処理に利用されるカセットであり、各収納カセット31に収納している紙幣を全て収納することが可能となるように、収納カセット31と同じかそれよりも大きい容量を有している。精査カセット33は、精査処理時以外の通常時は、空である。精査カセット33は、第1金庫部13内において、第2接続路419を挟んだ第4収納カセット31−4とは反対側の位置において、筐体131に対し着脱可能に取り付けられている。
この精査カセット33は、収納カセット31と同様にスタック式であり、収納カセット31と同様に、その上面に出入口が形成され、その内部には集積台331が設けられている。精査カセット33の出入口は、前述の通り、第1接続路418に接続されており、精査カセット33は、ループ搬送路411から出入口を通ってカセット内に送り込まれた紙幣を、集積台331の上に、下から上の順に積み重ねて収納すると共に、集積台331上に積み重ねられている紙幣を、上から下の順に一枚ずつ出入口を通じてループ搬送路411に繰り出すことが可能に構成されている。尚、この精査カセット33を、精査処理用の精査カセットとして構成する代わりに、収納カセット31の一つ(第5収納カセット)として構成してもよい。
一時保留部51は、第2出金口232に接続される第2払出路416の途中からさらに分岐した分岐路に接続されている。この一時保留部51は、例えば出金処理時に発生したリジェクト紙幣を一時的に収納する収納部である。一時保留部51は、スタック式の収納カセット31等とは異なり、巻き取り方式に構成されている。
つまり、この巻き取り方式の一時保留部51は、特開2000−123219号公報に例示されるように、概略矩形箱状の筐体内に、紙幣をガイドする一枚のテープ、ガイド部材、及び、紙幣と共にテープを巻き取るリールを備えて構成されるか、又は、本件出願人が先に出願したPCT/JP2009/066729に例示されるように、筐体内に、紙幣を挟む2枚のテープ、及び、紙幣を挟み込んだ2枚のテープを巻き取るリールを備えて構成される。いずれの構成においても、巻き取り方式の一時保留部51は、紙幣を一枚ずつ巻き取って収納すると共に、その収納した順番とは逆順で、紙幣を一枚ずつ繰り出す、いわゆる先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。
回収カセット53は、第2金庫部14内に着脱可能に取り付けられており、前述したように、第2接続路419を介してループ搬送路411に接続されている。回収カセット53はスタック式の収納部であるが、前述した収納カセット31や精査カセット33とは異なり、装置の奥行き方向に細長い形状を有しており、図示は省略するが、その内部に奥行き方向に移動する札押さえを備えている。回収カセット53は、その札押さえが紙幣の収納量に応じて移動をしながら、立てた姿勢の紙幣を奥行き方向に並べるように収納するよう構成されている。
回収カセット53はまた、収納カセット31や精査カセット33とは異なり、収納している紙幣を繰り出し不可に構成されている。回収カセット53には、例えば入金処理時に入金口211に投入された紙幣のうち、収納部3に収納しきれなかった紙幣(オーバーフロー紙幣)が収納される。また、出金処理時等に識別不可であったリジェクト紙幣が、この回収カセット53に収納される場合がある。
図3は、入出金機1Aの動作制御に係る構成を示している。入出金機1Aは、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとした制御部513を備えている。制御部513には、前述した入金部21、出金部23、第1−第4収納カセット31を含む収納部3、精査カセット33、一時保留部51、回収カセット53、及び搬送部41が、信号の送受信可能に接続されている。これらの各部21,23,3,33,41,51,53は、例えば図2に示す、収納カセット31、精査カセット33及び回収カセット53の出入口に設けられかつ、紙幣の通過を検知する通過センサ312のような、搬送中の紙幣を検知するといった機能を有する各種のセンサを含んでおり、各種センサの検知信号は制御部513に入力される。制御部513は、入力された検知信号等に基づいて制御信号を出力し、各部21,23,3,33,41,51,53は、その制御信号に従って動作する。
制御部513にはまた、識別部25が接続されており、識別部25は、識別結果及び記番号の読み取り結果を制御部513に提供する。さらに、入出金機1Aを操作するオペレータに対するヒューマンインターフェース部分としての操作部55が接続されている。例えばLANやシリアルバスを通じて、入出金機1Aが上位端末T等との間で信号の送受信を行うための通信部57も制御部513に接続されている。各種の情報を記憶するための、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の汎用のストレージデバイスにより構成される記憶部59も制御部513に接続されている。
記憶部59は、入出金機1Aが収納している紙幣の金種別枚数又は金額である在高を少なくとも記憶する。また、記憶部59は、収納カセット31毎の在高も記憶する。具体的には、記憶部59はカウンタを有し、各カセットへの紙幣の収納時及び各カセットからの紙幣の繰出時に、リアルタイムに紙幣のカウントを行う現物在高として、各収納カセット31や精査カセット33、回収カセット53毎にカウンタが設定される。また、入金処理や出金処理が完了したときにも機内在高としてカウンタが設定される。
図4の(a)は、この入出金機1Aの記憶部59に設定されているカウンタの一覧を示している。各カセット31、33,53への紙幣の収納時及び各カセット31、33,53からの紙幣の繰出時に、リアルタイムに紙幣のカウントを行う現物在高として、第1−第4収納カセット31、精査カセット33及び回収カセット53毎にカウンタが設定されている。各カウンタには、128金種が設定されかつ、1金種につき2バイトのサイズが割り当てられている。また、入金処理や出金処理が完了したときにカウントを行う機内在高として、128金種でかつ、1金種につき2バイトのサイズが割り当てられたカウンタが設定されている。これらのカウンタは、通過センサ312の検知結果に基づいて増減する。
また、この入出金機1Aでは、紙幣の管理を記番号を利用して行うように構成されており、記憶部59は、例えば図5に例示するように、各部に収納している紙幣の記番号を、その収納順に並べると共に、各々の記番号を、その収納枚数に対応する通し番号に関連付けた記番号リストLを記憶している。図4の(b)は、この記番号リストの一覧を示している。第1−第4収納カセット31及び精査カセット33については、それぞれ3000枚分で、紙幣一枚につき16バイトのサイズが割り当てられている。回収カセット53については、5000枚分で、紙幣一枚につき16バイトのサイズが割り当てられ、出金部23については、220枚分で、紙幣一枚につき16バイトのサイズが割り当てられ、一時保留部51については、520枚分で、紙幣一枚につき16バイトのサイズが割り当てられている。
例えば、各収納カセット31のカウンタは、その出入口を通過する紙幣を通過センサ312が検知することで、その紙幣の金種の情報に基づき、その収納カセット31の在高におけるその金種の枚数を加算又は減算する。各収納カセット31の記番号も、その出入口を通過する紙幣を通過センサ312が検知することで、その紙幣の記番号情報に基づき、その収納カセット31の記番号リストLに順に記憶、又は削除する。
また、記憶部59は、入出金機1Aにおいて実行された各種処理の履歴をログとして記憶する。
入出金機1Aには、各種の情報を表示するため、例えば図2に仮想的に示すフラットパネルディスプレイからなる表示部511が装着可能に構成されている。この表示部511もまた、制御部513に接続される。表示部511をタッチパネル式のディスプレイとして、表示部511と操作部55とを一体にしてもよい。
制御部513は、通信部57を通じて受けた上位端末Tからの指令、及び/又は、操作部55を通じて受けた各種の指令に応じて、各部21,23,25,3,33,41,51,53,55,57,59,511の動作を制御する。
(直接入金処理)
直接入金処理は、入出金機1Aに入金(収納)された正常紙幣を直接的に収納カセット31に収納する処理である。入金口211に投入された紙幣は、識別部25による識別結果と、予め設定された収納割当とに従って、いずれかの収納カセット31に収納される。
図6に、入金処理時における入出金機1Aの動作を示す。入金する紙幣を入金口211に投入した状態で、例えば上位端末T等の操作によって入金処理の開始コマンドを、入出金機1Aに入力する。入金部21の繰り出し機構は、同図に矢印(実線)で示すように、入金口211の紙幣を一枚ずつ繰り出し、搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、その紙幣の識別や計数、記番号の読み取り(これらを包括的に識別ともいう)を行う。
搬送部41はまた、正常紙幣であって、記番号を全桁読み取ることができた紙幣を、同図に矢印(実線)で示すように、その識別結果及び予め設定された収納割当に従って、所定の収納カセット31に収納する。すなわち、各紙幣は、金種別や正損別に応じて、第1−第4のいずれかの収納カセット31に収納される。
尚、収納カセット31に割り当てが設定されておらずかつ、回収カセット53に割り当てが設定されている金種の紙幣(正常紙幣)や損券は回収カセット53に収納される。また、割り当てが設定されている収納カセット31が満杯であるとき等にも、回収カセット53に正常紙幣が収納される。
一方、搬送部41は、リジェクト紙幣を、同図に矢印(破線)で示すように、第2出金口232に払い出す。尚、入金処理時に発生したリジェクト紙幣は、入金口211に再度投入され、識別部25による識別が、もう一度行われることになる。
また、入金処理時に、収納カセット31及び回収カセット53が共に満杯になることに起因して、収納することができなくなった紙幣は、同図に矢印(破線)で示すように、第1出金口231に払い出される。尚、リジェクト紙幣を、第1出金口231に払い出すようにし、収納することができなくなった紙幣を、第2出金口232に払い出すようにしてもよい。
本入出金機1Aではまた、正常紙幣であっても、記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣は、損券等と同様に回収カセット53に収納される。つまり、正常紙幣であるため、入金の取引は確定することができる一方で、記番号を全桁読み取ることができない紙幣は、入出金機1A内で記番号に基づく管理ができず、収納カセット31に収納することができない紙幣である。そこで、入金処理時には、入金処理をスムースに確定させることを優先すべく、正常紙幣であっても、記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣は、記番号に基づく管理外である回収カセット53に収納する。尚、ここでは、記番号を全桁読み取ることができるか否かに応じて紙幣の収納先を変更しているが、全桁としなくても、所定桁数(但し、全桁未満とする)の記番号を読み取ることができるか否かに応じて、紙幣の収納先を変更するようにしてもよい。その場合の「所定桁数」は、ユーザが任意に設定可能に構成してもよい。
ここで、例えば正常紙幣であって、記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣を、リジェクト紙幣と同様に第2出金口232に払い出し、入金口211に再投入することで、識別部25による識別を、もう一度行うようにすることも可能である。しかしながら、こうした場合は、正常紙幣であるため、入金取引を確定させることが可能であるにも拘わらず、オペレータの手間が増えると共に、入金処理を完結するまでに時間を要することになる。これは、銀行における窓口業務の停滞を招く虞がある。
これに対し、前述の通り、正常紙幣であっても、記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣を回収カセット53に収納することは、入金処理を速やかに完結させることを可能にし、窓口業務の停滞を未然に回避することができる。また、回収カセット53に収納することで、当該紙幣は記番号に基づく管理が不要であり、入出金機1Aのその後の動作にも、何ら不都合はない。
このようにして入金処理が終了した後には、記憶部59に記憶している在高が更新される。それと共に、各収納カセット31に収納している紙幣の記番号を収納順に並べた記番号リストLが、紙幣の収納に応じて更新される。尚、入金処理の最中に、各収納カセット31に紙幣が収納される度に、通過センサ312の検知結果を受けて記憶部59に記憶している在高を更新すると共に、記番号リストLを更新するようにしてもよい。
(入金口補充処理)
入金口補充処理は、収納カセット31に外部から紙幣を補充する処理である。正券のみを各収納カセット31に補充することができる。具体的には、図7に示すように、入金口211に投入された紙幣を識別し、入出金機1Aが取り扱う金種の正券のみを該当する収納カセット31に収納し、それ以外の紙幣、例えば損券やリジェクト紙幣は第1出金口231や第2出金口232に払い出す。
入金口補充処理における入出金機1A内での動作は、直接入金処理と基本的には同様である。ただし、搬送部41は、同図に矢印(実線)で示すように、識別部25において入出金機1Aが取り扱う金種の正券と識別された紙幣であって、記番号を全桁読み取ることができた紙幣を、該当する各収納カセット31に搬送する。搬送部41は、それ以外の紙幣、例えば損券やリジェクト紙幣、取り扱い対象外の紙幣であると識別部25で識別された紙幣は、同図に矢印(破線)で示すように、第2出金口232に搬送する。搬送部41はまた、再度識別しても入出金機1Aに収納できない紙幣、例えば収納カセット31に設定されている金種以外の金種の紙幣や、収納先の収納カセット31が満杯である紙幣については、同図に矢印(破線)で示すように、第1出金口231に搬送する。
また、正券であっても、記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣は、入金処理と異なり、一点鎖線の矢印で示すように一時保留部51に一時的に収納される。
一時保留部51に収納された紙幣は、図8に示すように、入金口211に投入された紙幣が全て繰り出されかつ、第1出金口231及び第2出金口232に払い出された紙幣が、そこから取り出された後に、一枚ずつ繰り出され、同図に実線の矢印で示すように、識別部25による識別が再度行われる。その再識別の結果、正券であって、記番号を全桁読み取ることができた紙幣は、その後、破線の矢印で示すように、該当する各収納カセット31に搬送されて、そこに収納される。当初の識別の際に紙幣が識別部25を通過する際の紙幣の表裏と、再識別の際に紙幣が識別部25を通過する際の紙幣の表裏とは逆になるため、再識別時に記番号を全桁読み取ることが可能になることも起こり得る。
一方、搬送部41は、再識別によっても記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣は、同図に一点鎖線の矢印で示すように、第2出金口232に搬送する。この紙幣は、後述する記番号入力モードが選択されたときには、記番号を手入力する対象となる。
このように、補充処理においては、記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣は、回収カセット53に収容するのではなく、一時保留部51に一旦、収納し、再識別を行う。これは、補充処理は、入金処理とは異なり、収納カセット31内に紙幣を補充することが本来の目的であり、可能な限り、紙幣を収納カセット31内に収納することが望ましいためである。また、入金処理のような窓口業務とは異なり、補充処理は処理を速やかに完結させるという要求に乏しいことも理由の一つである。
(記番号入力モード)
本入出金機1Aでは、前述した再識別の結果、記番号を全桁読み取ることができずに第2出金口232に紙幣が払い出された場合、その紙幣の記番号をオペレータが手入力しかつ、手入力された記番号を記番号リストLの更新に利用する記番号入力モードに移行することが可能に構成されている。
記番号入力モードへの移行は、記番号を全桁読み取ることができない紙幣が発生したときには自動的に(言い換えると、強制的に)移行するようにしてもよいし、オペレータが移行するか否かを選択するようにしてもよい。記番号入力モードへの移行の選択は、補充処理を開始する際に行ってもよいし、記番号を全桁読み取ることができない紙幣が発生した時点で行ってもよい。
記番号入力モードでは、上位端末Tの表示部に、例えば図9(a)に示すような画面S1、又は、同図(b)に示すような画面S2が表示される。表示部511が装着されているときには、その表示部511に画面S1、S2を表示してもよい。表示部511に表示する場合は、入出金機1Aの操作部55を通じて記番号を入力してもよい。
画面S1、S2は、記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣に関する情報を表示している。同図(a)に示す画面S1では、識別部25において撮像された、紙幣のイメージ61と、識別部25における記番号の読み取り結果62と、を示している。紙幣のイメージ61は、紙幣全体のイメージであってもよいし、紙幣における記番号の印字部分のみを切り取ったイメージであってもよい。また、読み取り結果62には、記番号のうちで読み取り可能であった桁は、読み取り結果を、読み取り不可能であった桁は、図例では「?」をそれぞれ表示している。オペレータは、第2出金口232に払い出された紙幣の現物と、画面S1に表示されている紙幣のイメージ61及び記番号の読み取り結果62とを参照しながら、当該紙幣の記番号を上位端末Tの入力部を通じて、画面S1上の入力欄、図例では読み取り結果62における「?」の表示部分に入力する。尚、画面S1には、紙幣のイメージ61及び読み取り結果62のいずれか一方のみを表示してもよい。
そのようにして記番号の手入力が完了すれば、当該紙幣を入金口211に投入する。入金口211に投入された紙幣は、所定の操作を行うことで機内に繰り出され、識別部25において識別(記番号の読み取りを含む)される。制御部513は、入力された記番号と読み取り結果とを照合する。その照合の結果、入力された記番号と読み取り結果とが同じであると判定できたときには、一時保留部51に紙幣を一旦収納する。ここでの判定は、例えば「所定桁数以上の同一性が確保されている」といった判定条件に基づいて行えばよい。尚、入力された記番号と読み取り結果とを照合した結果、入力された記番号と読み取り結果とが同じであると判定できないときには、当該紙幣は、第2出金口232に払い出せばよい。
画面S1にはまた、記番号入金63と、一保返却64との操作ボタンが設けられており、記番号入金63を選択したときには、一時保留部51に収納されている紙幣が、その紙幣に該当する収納カセット31に収納されて記番号入力モードが終了する。尚、記番号入金63は、記番号が入力されかつ、紙幣が一時保留部51に収納された後でなければ操作できないように構成されている。
一方、一保返却64を選択したときには、一時保留部51に収納されている紙幣が、第2出金口232に払い出されて、記番号入力モードが終了(中止)する。
以上のようにして補充処理(記番号入力モードも含む)が終了すれば、記憶部59に記憶している在高が更新される。それと共に、各収納カセット31に収納している紙幣の記番号を収納順に並べた記番号リストLが、紙幣の収納に応じて更新される。尚、補充処理の最中に、各収納カセット31に紙幣が収納される度に、通過センサ312の検知結果を受けて記憶部59に記憶している在高を更新すると共に、記番号リストLを更新するようにしてもよい。ここで、用いる記番号の情報は、識別部25が読み取った記番号が基本的に用いられるが、記番号入力モードにおいてオペレータが記番号を手入力をした場合は、その手入力をした記番号が用いられる。
このような記番号入力モードを設けることにより、補充処理においては、可能な限りの紙幣を収納カセット31に収納(つまり、補充)することが可能になる。
尚、記番号入力モードにおいて記番号を手入力する対象の紙幣が複数枚存在するときには、紙幣の一枚一枚について、図9(a)に示す画面S1を表示して記番号の手入力、及び、当該紙幣の入金口211への投入、を逐次、行ってもよい。このような、記番号の逐次入力は、手入力された記番号の情報と紙幣とを、正確に対応付けることが可能になる。
一方、手入力の対象の複数枚の紙幣の記番号を、一括して入力し、その後、その複数枚の紙幣を一度に入金口211に投入するようにしてもよい。このときに表示される画面は、前述した画面S1を、順次表示するようにしてもよいし、複数枚の紙幣に関する情報を一つの画面にまとめて表示する画面S2としてもよい(図9(b)参照)。画面S2には、記番号の手入力に対象となる紙幣それぞれについて、識別部25における読み取り結果65が表示されている。図例では、一つの画面に、10枚分の紙幣の記番号を入力するように構成されているが、記番号の手入力対象の紙幣の枚数に応じて、読み取り結果65の構成は変化する。また、多数の紙幣が記番号の手入力の対象となる場合は、複数ページに分けて表示してもよい。
オペレータは、第2出金口232に払い出された各紙幣の現物と、画面S2に表示されている記番号の読み取り結果65とを参照しながら、各紙幣の記番号を上位端末Tの入力部を通じて、画面S2上の入力欄、図例では読み取り結果65における「?」の各表示部分に入力する。
そうして、全ての紙幣の記番号の手入力が完了すれば、その複数枚の紙幣を一度に入金口211に投入し、所定の操作を行う。このことで、入金口211に投入されている紙幣は、一枚ずつ繰り出される。識別部25は、各紙幣の識別(記番号の読み取りを含む)を行い、制御部513は、入力された記番号と読み取り結果とを照合する。そうして、手入力された記番号と各紙幣との対応付けを行う。こうすることで、画面S2における紙幣の順番と、入金口211に投入する紙幣の順番とが異なっていても、手入力された記番号と各紙幣とを、正確に対応付けることが可能になる。対応付けができた紙幣は、一時保留部51に、一旦収納される。一方、入力された記番号と紙幣との対応付けができない紙幣、例えば手入力された記番号と識別部25で読み取った記番号との不一致桁数が、手入力した記番号の桁数よりも多いような紙幣は、リジェクト紙幣として第2出金口232に払い出せばよい。
画面S2においても、記番号入金63と、一保返却64との操作ボタンが設けられており、記番号入金63を選択したときには、一時保留部51に収納されている紙幣が、その各紙幣に該当する各収納カセット31に収納されて記番号入力モードが終了する。また、一保返却64を選択したときには、一時保留部51に収納されている紙幣が、第2出金口232に払い出されて、記番号入力モードが終了(中止)する。
このような記番号の一括入力は、逐次入力と比べてオペレータの手間が省かれ、記番号入力作業が効率化する。尚、記番号の逐次入力方式と、一括入力方式とは、オペレータが任意に選択可能に構成してもよい。
(精査カセット補充処理)
精査カセット補充処理は、精査カセット33に収納されている紙幣を識別し、入出金機1Aに設定されている金種のうち、正券のみを該当する収納カセット31に収納し、それ以外の紙幣は第2出金口232に払い出す処理である。精査カセット補充処理によれば、精査カセット33に補充したい紙幣をまとめて収納し、一括して該当する収納カセット31に補充することができる。
具体的には、上位端末T等で所定の操作が行われることにより、精査カセット補充処理が開始され、精査カセット補充指示待ちの状態となる。オペレータは第1開閉扉133を開いて、精査カセット33に補充する紙幣をセットし、第1開閉扉133を閉じて元の状態に戻す。そうすると、上位端末T等から精査カセット補充指示により、補充処理が開始する。
図10に、精査カセット補充処理における入出金機1Aの動作を示す。同図に示すように、搬送部41は、同図に矢印(実線)で示すように、精査カセット33から紙幣を繰り出し、識別部25に搬送する。搬送部41はまた、正券であって、記番号を全桁読み取ることができた紙幣を、同図に矢印(実線)で示すように、その識別結果や予め設定された収納割当に従って、所定の収納カセット31に収納する。損券やリジェクト紙幣や設定外金種の紙幣は、同図に矢印(破線)で示すように、第1出金口231又は第2出金口232に払い出す。例えば、損券は第2出金口232に払い出し、その他のリジェクト紙幣等は第1出金口231に選択的に払い出す。
また、正券であっても、記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣は、入金口補充処理と同様に、一点鎖線の矢印で示すように一時保留部51に一時的に収納される。
尚、第1出金口231等に搬送する搬送路は、精査カセット33から繰り出される搬送路と一部重複している。従って、識別部25においてリジェクト紙幣と識別された場合には、一旦、精査カセット33からの紙幣の繰り出し処理を中断し、リジェクト紙幣を第1出金口231等に搬送した後に精査カセット33からの紙幣の繰り出し処理を再開する。
一時保留部51に収納された紙幣は、その後、図8に示すように、識別部25による再識別が行われ、再識別の結果、正券であって、記番号を全桁読み取ることができた紙幣は、破線の矢印で示すように、該当する各収納カセット31に搬送されて、そこに収納される。一方、再識別によっても記番号を全桁読み取ることができなかった紙幣は、同図に一点鎖線の矢印で示すように、第2出金口232に搬送する。
第2出金口232に紙幣が払い出された後に、必要に応じて記番号入力モードに移行する点は、前述した入金口補充処理と同様である。
こうして精査カセット補充処理(記番号入力モードも含む)が終了すれば、記憶部59に記憶している在高が更新されると共に、各収納カセット31に収納している紙幣の記番号を収納順に並べた記番号リストLが、紙幣の収納に応じて更新される。尚、精査カセット補充処理の最中に、各収納カセット31に紙幣が収納される度に、通過センサ312の検知結果を受けて記憶部59に記憶している在高を更新すると共に、記番号リストLを更新するようにしてもよい。精査カセット補充処理においても、可能な限りの紙幣を、収納カセット31に収納(補充)することが実現する。
(出金処理)
出金処理は、入出金機1Aに収納されている正常紙幣を払い出す処理である。図11に、その動作を示す。具体的には、上位端末T等において、少なくとも金種と枚数とを指定する所定の出金操作を行うことによって、出金処理は開始する。収納部3は、同図に矢印(実線)で示すように、指定された金種の紙幣を、それが収納されている収納カセット31から、指定された枚数だけ繰り出す。搬送部41は、繰り出された紙幣を識別部25に搬送し、識別部25が識別と、記番号の読み取りとを行った後に、正常紙幣は、第1出金口231(又は第2出金口232)に払い出される。
出金処理時に発生するリジェクト紙幣は、同図に矢印(破線)で示すように、一時保留部51に搬送され、収納される。一時保留部51に収納された紙幣は、必要に応じて、出金処理の終了後に、各収納カセット31又は回収カセット53に収納される。
一連の処理が終了すると、上位端末T等からの指示により、リフトが払出位置に移動し、第1出金口231に払い出された紙幣は、紙幣の抜き取り待ちとなる。紙幣が抜き取られると、リフトは待機位置に移動する。
出金処理の終了後には、記憶部59に記憶している在高が更新される。それと共に、各収納カセット31に収納している紙幣の記番号を収納順に並べた記番号リストが、紙幣の収納に応じて更新される。尚、出金処理の最中に、各収納カセット31から紙幣が繰り出される度に、通過センサ312の検知結果を受けて記憶部59に記憶している在高を更新すると共に、記番号リストLを更新するようにしてもよい。
このように、ここで説明した入出金機1Aでは、入金処理時には、記番号の認識状況に応じて、収納カセット31(第1種の収納部)と回収カセット53(第2種の収納部)とに分けて紙幣を収納するため、入金処理を、適切にかつスムースに完結させることが可能になる。
一方、入金口及び精査カセット補充処理では、記番号が全桁認識できないときには、当該紙幣を回収カセット53に収納するのではなく、再識別を行ったり、記番号の手入力を行うことで、できる限りの紙幣を収納カセット31に収納(補充)することが可能になる。
尚、ここに開示する技術は、前述した構成の入出金機1Aに適用することに限らず、これとは異なる種々の構成の入出金機に適用することが可能である。
また、前記の説明では、記番号が全桁読み取り可能か否かに応じて、処理を異ならせているが、全桁でなくても、紙幣を実質的に特定可能な桁数の記番号が読み取り可能か否かに応じて収納先を異ならせる等、その後の処理を異ならせてもよい。