JP6086011B2 - 積層型コイル部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フェライト仮焼粉末およびフェライト仮焼粉末を用いて作製した積層型コイル部品、ならびに、フェライト仮焼粉末の製造方法および積層型コイル部品の製造方法に関する。
図2に示すとおり、積層型コイル部品10は、磁性体部11と、磁性体部11の内部に設けられるコイル状の内部導体部12と、を有する。磁性体部11の外形は略直方体である。磁性体部11の長手方向の両端には、外部電極13がそれぞれ設けられる。この外部電極13は、磁性体部11の長手方向の両端に引き出された内部導体部12と電気的に接続される。積層型コイル部品10をたとえば1MHz〜1GHzの周波数領域のノイズを吸収するのに使用する場合は、積層型コイル部品10はこの周波数領域で大きなインピーダンスを得ることのできるものであることが望ましい。
一般に、積層型コイル部品10は、フェライトなどの磁性材料を含む磁性体部11と導電性材料を含む内部導体部12とにより構成され、磁性体部11と内部導体部12とで線膨張係数が異なる。そのため、積層型コイル部品10の製造工程の一つである焼成後の冷却工程において、内部導体部12の周辺にある磁性体部11に応力歪みが発生することがある。また、積層型コイル部品10を回路基板へ実装する際のリフロー処理などで、積層型コイル部品10が加熱または冷却されたり、外部応力が付与されたりして、前述した応力歪みがさらに大きくなることもある。これにより、積層型コイル部品10から得られるインピーダンスが低下してしまう。インピーダンスが低下するという問題を解決するためには、積層型コイル部品10の磁性体部11にもたらされる応力歪みを軽減することが有効である。
この応力歪みを軽減する手段が、たとえば特許文献1(特開2005−38904号公報)に開示されている。特許文献1には、複数のセラミック層と複数の内部電極とを積み重ねたセラミック積層体を備え、複数のセラミック層は空孔を含み、セラミック積層体の最外層に配置されているセラミック層の空孔率が残りのセラミック層の空孔率より小さい構造をした積層型コイル部品が記載されている。ここで、セラミック層の空孔率が小さいとは、単位体積あたりの磁性材料の割合が多く、磁性体部の密度が大きいことを意味し、セラミック層の空孔率が大きいとは、単位体積あたりの磁性材料の割合が少なく、磁性体部の密度が小さいことを意味する。
したがって、先行文献1に記載された積層型コイル部品は、内部導体部の周辺にある磁性体部の密度は小さく、内部導体部から離れた外側の磁性体部の密度が大きい構造をしている。内部導体部の周辺にある磁性体部の密度が小さければ、磁性体部に発生する内部応力を吸収することができ、応力歪みを軽減できる。そのため、積層型コイル部品から得られるインピーダンスが低下しにくい。
特開2005−38904号公報
しかし、先行文献1に記載された積層型コイル部品では、内部導体部の周辺にある磁性体部において空孔が多いため、単位体積あたりの磁性体材料の割合が小さい。そのため、磁性体部の密度が小さくなり、磁性体部における透磁率が低くなる。すなわち、先行文献1に記載された積層型コイル部品は、応力歪みによるインピーダンスの低下は起きにくいが、元々のインピーダンスが小さくなってしまうという問題がある。
本発明の目的は、応力歪みを軽減するとともに、大きなインピーダンスを得ることのできる積層型コイル部品およびその製造方法を提供することである。
また、本発明の別の局面における目的は、積層型コイル部品の磁性体部の材料に関するものであり、焼成後の密度が小さいにもかかわらず、高い透磁率を得ることのできるフェライト仮焼粉末およびその製造方法を提供することである。
本発明の第1の局面に係るフェライト仮焼粉末は、少なくとも元素としてのFe、NiおよびZnを含み、Niは、スピネル構造の一部を構成するNiOとして存在するものと、スピネル構造に変化していないNiOとして存在するものとを有し、フェライト仮焼粉末1重量部においてスピネル構造に変化していないNiOの量をNSとし、フェライト仮焼粉末1重量部におけるNiOの合計量をWnとしたとき、NS/Wnで表されるスピネル構造に変化していないNiOの比率Rnsが0.49以上であることを特徴とする。
本発明の第2の局面に係る積層型コイル部品は、磁性材料を含む磁性体部と、磁性体部の内部に設けられるコイル状の内部導体部と、を備えたものであって、磁性体部は、本発明の第1の局面に係るフェライト仮焼粉末が焼成されることにより形成されたものである。
本発明の第3の局面に係るフェライト仮焼粉末の製造方法は、本発明の第1の局面に係るフェライト仮焼粉末を製造するための方法であって、少なくともFe23、NiOおよびZnOを含む粉末状の混合物を作製する混合物作製工程と、混合物を100℃/分以上1000℃/分以下の昇温速度で仮焼する仮焼工程と、を備える。
本発明の第4の局面に係る積層型コイル部品の製造方法は、本発明の第3の局面により作製されたフェライト仮焼粉末に対し、樹脂を混合することにより磁性体スラリーを作製するスラリー作製工程と、磁性体スラリーをシート状に成形することによりグリーンシートを成形するシート成形工程と、グリーンシート上にコイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、コイルパターンの形成されたグリーンシートを複数積層することにより積層体を形成する積層体形成工程と、積層体を焼成する焼成工程と、を備える。
本発明の第1の局面では、フェライト仮焼粉末において、スピネル構造に変化していないNiOの比率Rnsを0.49以上とした。このフェライト仮焼粉末を用いることにより、後述する実施例によって明らかにされるように、密度が小さく、透磁率の高い磁性部品を得ることができる。
本発明の第2の局面では、第1の局面によるフェライト仮焼粉末を材料として、積層型コイル部品の磁性体部を構成した。これによれば、応力歪みを軽減するとともに、大きなインピーダンスを有する積層型コイル部品を得ることができる。
本発明の第3の局面では、フェライト仮焼粉末を作製する際の昇温速度を100℃/分以上1000℃/分以下にすることとした。この製造方法により作製したフェライト仮焼粉末を用いることにより、後述する実施例によって明らかにされるように、密度が小さく、透磁率の高い磁性部品を得ることができる。
本発明の第4の局面では、第3の局面により作製されたフェライト仮焼粉末により、積層型コイル部品の磁性体部を作製することとした。これによれば、応力歪みを軽減するとともに、大きなインピーダンスを有する積層型コイル部品を得ることができる。
図1(A)は比較例に係るフェライト仮焼粉末のX線回折パターンであり、図1(B)は本発明に係るフェライト仮焼粉末のX線回折パターンである。 積層型コイル部品10の一般的な構造を示す斜視図である。 非スピネル型NiOの比率Rnsの求め方を示した説明図である。 フェライト仮焼粉末の焼結過程および収縮率を説明するための概念図である。
前述したように、図2に示した積層型コイル部品10は、磁性材料を含む磁性体部11と、磁性体部11の内部に設けられるコイル状の内部導体部12と、を有する。磁性体部11の外形は略直方体である。磁性体部11の長手方向の両端には、外部電極13がそれぞれ設けられる。この外部電極13は、磁性体部11の長手方向の両端に引き出された内部導体部12と電気的に接続される。
積層型コイル部品10として大きなインピーダンスを得るためには、磁性体部11の透磁率を高めることが有効であり、また、磁性体部11の密度を小さくして、応力歪みを軽減することが有効である。したがって、所望の大きな値のインピーダンスを得るためには、磁性体部11をどのような性状とするかが重要となってくる。
一般に、磁性体部11はフェライト仮焼粉末を焼成することにより形成される。フェライト仮焼粉末は、Fe23、NiO、ZnOを含む粉末状の混合物を仮焼することにより作製される。そして、仮焼の際に、フェライト仮焼粉末中のNiOの大部分がスピネル構造(本実施形態においては、結晶構造の組成式が(Ni、Zn)O・Fe23であるもの)に変化する。
今回、発明者らは、仮焼の際に、混合物のうちのNiOの全てをスピネル構造に変化させるのではなく、意図的に、ある程度の割合でスピネル構造に変化していないNiOが残存するようにフェライト仮焼粉末を作製した。そして、このフェライト仮焼粉末を用いることにより、焼成後の密度が小さく、かつ高い透磁率を得ることのできる磁性部品(フェライトビーズ)を作製した。また、このフェライト仮焼粉末を用いることにより、応力歪みを軽減するとともに、かつ大きなインピーダンスを得ることのできる積層型コイル部品10を作製した。
本実施形態に係るフェライト仮焼粉末は、少なくとも元素としてのFe、NiおよびZnを含み、Niは、スピネル構造の一部を構成するNiOとして存在するものと、スピネル構造に変化していないNiOとして存在するものとを有し、かつ、スピネル構造に変化していないNiOの比率Rns(数式1参照)が0.49以上であることを特徴とする。これにより、前述したような磁性部品および積層型コイル部品10を確実に作製することができる。
Rns=NS/Wn・・・(数式1)
S:フェライト仮焼粉末1重量部においてスピネル構造の一部を構成するNiOの量(NiO換算量)
NS:フェライト仮焼粉末1重量部においてスピネル構造に変化していないNiOの量
Wn:フェライト仮焼粉末1重量部におけるNiOの合計量(S+NS)
以下、実施例1において、フェライト仮焼粉末およびその製造方法を説明するとともに、数式1におけるRnsの導出過程を示す。また、実施例2において、積層型コイル部品10およびその製造方法を説明する。
(フェライト仮焼粉末およびその製造方法)
フェライト仮焼粉末は、少なくともFe、NiおよびZnを含む。なお、ここでいうFe、NiおよびZnは、元素としてのFe、NiおよびZnを表し、Fe化合物やNi化合物やZn化合物を含む場合がある。
実施例1では、はじめに、Fe23、CuO、NiO、ZnOのそれぞれの粉末を準備し、Fe23:48.0mol%(65.05重量%)、CuO:8.25mol%(5.57重量%)、NiO:14.75mol%(9.35重量%)、ZnO:29.0mol%(20.03重量%)という割合となるように調合した。なお、括弧内の数値は割合を重量%で示した場合の値である。調合によりできた粉末を主成分100重量部とし、これに対し、SnO2が0.60重量部、12重量%SiO2−60重量%ZnO−28重量%B23の組成からなるガラス粉末が0.30重量部、となるようにそれぞれ添加し、粉末状の混合物を作製した。
この混合物を純水およびPSZ(部分安定化ジルコニア)ボールとともにボールミルに入れ、48時間かけて混合粉砕した。混合粉砕によりできた粉砕物からPSZボールおよび水分を除去した後、表1に示した昇温速度の条件で、700℃となるまで加熱した。そして、約10分にわたり同じ温度を保持し、仮焼を終了した。これにより、材料番号1〜6に示すフェライト仮焼粉末を作製した。表1において、材料番号3〜6が本発明に係るフェライト仮焼粉末であり、材料番号1、2がその比較例である。
Figure 0006086011
そして、材料番号1〜6に示すフェライト仮焼粉に対して、X線回折装置(リガク社製Miniflex2 CoKα線仕様)、およびX線検出器(リガク社製D/teX Ultra)を用いてX線回析を行なった。そのX線回折に基づく分析結果を表2に示す。
Figure 0006086011
ここで、表2に示した分析結果を説明する前に、発明者らが行なった、フェライト仮焼粉末のX線回折について説明する。図1(A)は材料番号1に係るフェライト仮焼粉末のX線回折パターンであり、図1(B)は材料番号5に係るフェライト仮焼粉末のX線回折パターンである。
これらの図において、2θ=41.2°付近の強度は、フェライト仮焼粉末のスピネル相(311:ミラー指数を示す。以下同じ)による回折ピークである。2θ=41.2°付近の回折ピークの強度が他の回折ピークより大きいということは、仮焼前のそれぞれの粉末の大部分が、仮焼されることによりスピネル構造に変化していることを示す。
また、2θ=50.7°付近の強度は、フェライト仮焼粉末のNiO相(200)の回折ピークである。図1(A)および図1(B)を比較した場合、図1(A)では、2θ=50.7°付近の回折ピークが見られないのに対し、図1(B)では、2θ=50.7°付近の回折ピークが有る。
材料番号1に係るフェライト仮焼粉末では仮焼前の状態のNiOが存在せず、仮焼前のNiOの全てが、スピネル構造の一部を構成するNiO(以下、「スピネル型NiO」と呼ぶ)として存在している。それに対し、材料番号5に係るフェライト仮焼粉末では、スピネル構造に変化していないNiO(以下、「非スピネル型NiO」と呼ぶ)が存在している。
フェライト仮焼粉末において非スピネル型NiOの量(数式1におけるNS)を求めるため、まず、NiO相にあたる回折ピークの強度比Rp(以下、NiO相強度比Rpと呼ぶ)を数式2で示すように定義した。
Rp=Pn/(Ps+Pn+Pf+Pz)・・・(数式2)
Pn:NiO相(200)にあたる2θ=50.7°付近の回折ピークの強度(NiO相強度)
Ps:スピネル相(311)にあたる2θ=41.2°付近の回折ピークの強度(スピネル相強度)
Pf:Fe23相(104)にあたる2θ=38.5°付近の回折ピークの強度(Fe23相強度)
Pz:ZnO相(101)にあたる2θ=42.1°付近の回折ピークの強度(ZnO相強度)
表2に戻って、フェライト仮焼粉末のX線回折の分析結果を説明する。表2には、材料番号1〜6のX線回折パターンから読み取ったFe23相強度Pf、スピネル相強度Pf、ZnO相強度Pz、NiO相強度Pnが示されている。また、数式2に基づいて算出されたNiO相強度比Rpが示されている。
NiO相強度比Rpは、セラミック仮焼粉末中における非スピネル型NiOの割合を示す。NiO相強度比Rpが大きいほど非スピネル型NiOの量NSが多い。単位当たり量で考えれば、NiO相強度比Rpの値は、セラミック仮焼粉末1重量部における非スピネル型NiOの量NSの値に等しいので、NiO相強度比Rpを非スピネル型NiOの量NSに置き換えることができる。すなわち、Rp=NSという関係が成り立つ。
一方で、フェライト仮焼粉末に対して波長分散型蛍光X線分析法(WD−XRF)により組成分析を行うことにより、フェライト仮焼粉末1重量部におけるNiOの合計量Wn(重量部)を求めた。波長分散型蛍光X線分析法によれば、スピネル型NiOの量Sと、非スピネル型NiOの量NSと、を合わせたNiOの合計量Wnを求めることができる。すなわち、Wn=S+NSという関係がある。
図3は、数式1で示した非スピネル型NiOの比率Rnsの求め方を示した説明図である。非スピネル型NiOの比率Rnsとは、NiOの合計量に対するスピネル構造に変化していないNiOの量の比率である。図3に示すように、X線回折によりNiO相強度比Rpが求められ、波長分散型蛍光X線分析法によりNiOの合計量Wnが求められる。そして、NiO相強度比Rpを非スピネル型NiOの量NSに置き換えた上で、非スピネル型NiOの量NSをNiOの合計量Wn(=S+NS)で除することにより、仮焼後における非スピネル型NiOの比率Rnsが求められる。これにより求めた結果を表3に示す。
Figure 0006086011
表3に示した非スピネル型NiOの量NSは、材料番号1〜6のそれぞれのNiO相強度比Rpの値をそのまま置き換えたものである。これらの非スピネル型NiOの量NSを、NiOの合計量Wnで除算することにより、非スピネル型NiOの比率Rnsを算出した。なお、NiOの合計量Wnの値は、調合組成である仮焼前の混合物のNiO量(重量部)の値とほぼ一致するので、NiOの合計量Wnを、仮焼前の混合物のNiO量とみなすことができる。実施例1では、仮焼前の混合物のNiO量が9.35重量%であるので、NiOの合計量Wn=0.0935として計算した。
表3において、非スピネル型NiOの比率Rnsは、たとえば、材料番号2ではRns=0.15であり、材料番号3ではRns=0.49である。これらのRnsの値の違いが、完成品である磁性部品の密度、および透磁率に影響を与える。
次に、フェライト仮焼粉末を用いて作製される磁性部品、および磁性部品の製造過程について説明する。
前述した製造方法により得られたフェライト仮焼粉末を、純水、およびPSZボールとともにボールミルに入れ、フェライト仮焼粉末の比表面積(SSA)が7.5m2/gになるまで粉砕した。次に、粉砕後の粉末に対して有機バインダ(アクリル系バインダ)などを加えて混合した後、ドクターブレード法により厚さ25μmのグリーンシートを作製した。このグリーンシートを所定枚数積み重ね、温度60℃、圧力100MPaの条件で圧着した後、金型で打ち抜いてリング状の成形体とした。そして、リング状の成形体を温度400℃にて脱脂した後、昇温速度5℃/分で860℃まで昇温し、さらに同じ温度で2時間保持して、焼成処理を終了した。これにより、リング状の磁性部品(フェライトビーズ)を作製した。磁性部品の寸法は、厚み0.5mm、外径20mm、内径12mmである。また、これとは別に、焼成温度をたとえば865℃、870℃、875℃、・・・、920℃というように5℃ごとに異ならせて焼成した磁性部品をそれぞれ作製した。
それぞれの磁性部品に対してアルキメデス法を用いて密度を測定した。その中から、密度が4.9g/cm3、または、4.6/cm3である磁性部品を選定した。なお、密度4.9g/cm3、または、4.6/cm3という値は、製造ロット内の度数分布における平均的な値である。一般的な磁性部品の密度は5.0g/cm3以上であるのに対し、今回の磁性部品の密度は、それよりも小さい。
次に、選定した磁性部品について、周波数1MHzにおける初透磁率μiを測定した。この測定には、アジレント・テクノロジー社製の磁性体測定治具(型番16454A−S)およびインピーダンスアナライザ(型番E4991A)を用いた。測定結果を表4に示す。表4において、材料番号3〜6が本発明に係るフェライト仮焼粉末を用いた磁性部品であり、材料番号1、2がその比較例である。
Figure 0006086011
表4に示すとおり、磁性部品の密度が4.9g/cm3である場合、材料番号1、2の初透磁率μiが210であるのに対し、材料番号3〜6の初透磁率μiは240〜285であった。すなわち、本発明に係るフェライト仮焼粉末を用いた磁性部品は、比較例に比べて15〜36%高い初透磁率μiを得ることができた。また、磁性部品の密度が4.6g/cm3である場合、材料番号1、2の初透磁率μiが150であるのに対し、材料番号3〜6の初透磁率μiは190〜230であった。すなわち、本発明に係るフェライト仮焼粉末を用いた磁性部品は、比較例に比べて27〜53%高い初透磁率μiを得ることができた。
図4を参照しながら、実施例1において、焼成後の密度が小さく、初透磁率μiの高い磁性部品を作製できる理由について説明する。その理由は、仮焼前の混合物中に調合されたNiOのうちの一部が、仮焼後のフェライト仮焼粉末においてもスピネル構造に変化していない状態で残存しているからである。フェライト仮焼粉末の中に非スピネル型NiOが残存していると、フェライト仮焼粉末を焼結させて磁性部品とするときに、付与される熱量のうちの一部が、スピネル構造への変化のために使われる。そのため、図4に示すように、フェライト仮焼粉末の焼結の進行を比較例よりも遅らすことができ、その分、焼結する際の収縮を抑制できる。その結果、磁性部品の密度を小さくできる。加えて、焼結の進行が遅れると、図4に示すように、フェライト仮焼粉末の焼成温度を比較例よりも高く設定できる。焼成温度を高く設定することにより、フェライト仮焼粉末の焼結過程において粒成長が促進され、磁性部品の初透磁率μiを高くできる。なお、焼成温度を高くすることにより焼結する際の収縮は進行するが、適度な時間に焼成処理を終了することにより、比較例とほぼ同じ小さな密度の磁性部品を得ることができる。
このように、フェライト仮焼粉末に、ある程度の割合でスピネル構造に変化していないNiOを残存させることにより、焼成後の磁性部品の密度を小さくするとともに、初透磁率μiを高くできることができる。本発明に係る実施例1で示すように、非スピネル型NiOの比率Rnsが0.49以上であるフェライト仮焼粉末を用いることにより、所望の性状を有する磁性部品を得ることができる。
また、フェライト仮焼粉末における非スピネル型NiOの比率Rnsは、好ましくは0.49以上0.98以下であり、さらに好ましくは0.49以上0.80以下である。非スピネル型NiOの比率Rnsが大きすぎると、磁性部品を作製するための焼成時間が長くなるからである。なお、非スピネル型NiOの比率Rnsは、数式1および数式2により求めることができる。
また、フェライト仮焼粉末を作製する際の昇温速度を100℃/分以上1000℃/分以下にすることで、仮焼後の非スピネル型NiOの比率Rnsを適切な値とすることができる。この昇温速度により作製されたフェライト仮焼粉末を用いて磁性部品を作製すると、磁性部品の密度を小さくするとともに、初透磁率μiを高くできる。
さらに好ましくは、フェライト仮焼粉末を作製する際の昇温速度を、100℃/分以上500℃/分以下とすることである。昇温速度が速すぎると、非スピネル型NiOとして残存している比率も大きくなりすぎ、磁性部品を作製するための焼成時間が長くなるからである。
(積層型コイル部品およびその製造方法)
実施例2は、実施例1に示した材料番号5のフェライト仮焼粉末を用いて積層型コイル部品10を作製した例を示す。また、比較例として材料番号1のフェライト仮焼粉末を用いて積層型コイル部品10を作製した例も示す。
まず、材料番号1および材料番号5に示したフェライト仮焼粉末に対し、有機バインダなどを混合することにより磁性体スラリーを作製した。次に磁性体スラリーをシート状に成形することによりグリーンシートを成形した。そして、それぞれのグリーンシートの所定の位置にレーザ加工機を使用してビアホールを形成した。一方で、銀粉末、ワニスおよび有機溶剤を混合することにより導電ペーストを作製した。この導電ペーストをグリーンシートの表面にスクリーン印刷機で印刷するとともに、ビアホールを充填した。これにより、グリーンシート上に所定形状のコイルパターンを形成した。
コイルパターンの形成されたグリーンシートを複数積層し、さらに積層方向の両側から、コイルパターンの形成されていないグリーンシートをそれぞれ積層し、シート積層体を作製した。その後、シート積層体を温度60℃、圧力100MPaの条件で圧着して積層体ブロックを作製し、これを所定サイズに切断することにより、積層体部品を作製した。
積層体部品を、大気中で400℃に加熱して脱脂した後、大気中で昇温速度5℃/分の条件で、表5に示した焼成温度までそれぞれ昇温した。そして、さらに同じ温度で2時間保持して、焼成処理を終了した。これにより、磁性体部11に内部導体部12を含んだ積層体部品を作製した。
一方で、銀粉末、ガラスフリット、ワニスおよび有機溶剤を含有した外部電極用導電ペーストを作製した。この外部電極用導電ペーストを、積層体部品の両端に塗布して乾燥させた後、750℃で焼き付けて、外部電極13を形成した。これにより、図2に示すような積層型コイル部品10を得た。積層コイル部品10の外径寸法は、長さL:1.0mm、幅W:0.5mm、厚みT:0.5mmであり、内部導体部12のコイルのターン数は10.5ターンであった。
ここで、材料番号5のフェライト仮焼粉末を温度885℃にて焼成し、磁性体部11の密度が4.6g/cm3である積層型コイル部品10を部品番号S1とし、材料番号5のフェライト仮焼粉末を温度895℃にて焼成し、磁性体部11の密度が4.9g/cm3である積層型コイル部品10を部品番号S2とした。また比較例として、材料番号1のフェライト仮焼粉末を温度880℃にて焼成し、磁性体部11の密度が4.6g/cm3である積層型コイル部品10を部品番号M1とし、材料番号1のフェライト仮焼粉末を温度910℃で焼成し、磁性体部11の密度が4.9g/cm3である積層型コイル部品10を部品番号M2とした。
部品番号S1,S2,M1,M2をそれぞれ50個作製し、それぞれの部品番号について、周波数100MHzにおけるインピーダンスZを測定した。この測定には、アジレント・テクノロジー社製のインピーダンスアナライザ(型番E4991A)を用いた。表5に、それぞれの部品番号に対して得られたインピーダンスZの平均値を示す。なお、表5には、実施例1で示した磁性部品の密度および初透磁率μiを、磁性体部11単体の密度および初透磁率μiとみなして記した。
Figure 0006086011
部品番号S1、S2は、磁性体部11の密度が小さく、初透磁率μiも高いので、大きなインピーダンスを得ることができた。これに対し、部品番号M2では、初透磁率μiは高いのに、得られるインピーダンスZが低下した。その要因としては、磁性体部11の密度が大きく、磁性体部11の内部に応力歪みが発生したためと考えられる。また、部品番号M1では、磁性体部11の密度は小さいが、同じ密度の部品番号S1に比べると、初透磁率μiが小さいので、得られるインピーダンスZが小さくなった。
このように、実施例1で示したフェライト仮焼粉末を用いることにより、焼成後の密度が小さく、かつ高い透磁率を得ることのできる磁性体部11を備えた積層型コイル部品10を作製できる。これにより、応力歪みを軽減するとともに、かつ大きなインピーダンスを得ることのできる積層型コイル部品10を得ることができる。
なお、実施例2では、材料番号5を用いて作製した積層型コイル部品10しか例示していないが、材料番号3、4、6を用いて作製した積層型コイル部品においてもインピーダンスZが約1100Ωとなることを確認している。
前述したそれぞれの実施例は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものでなく、技術的思想の同一性が認められる範囲で種々の変形が可能である。たとえば、積層型コイル部品は、インダクタを含む単体部品に限られず、インダクタの他にコンデンサや抵抗を含む複合部品であってもよい。また、積層型コイル部品は、内部導体部の周辺にある磁性体部の密度が小さく、内部導体部から離れた外側の磁性体部の密度が大きい構造であってもよい。
10:積層型コイル部品
11:磁性体部
12:内部導体部
13:外部電極

Claims (1)

  1. 磁性材料を含む磁性体部と、前記磁性体部の内部に設けられるコイル状の内部導体部と、を備える積層型コイル部品の製造方法であって、
    少なくともFe 、NiOおよびZnOを含む粉末状の混合物を作製する混合物作製工程と、
    前記混合物を100℃/分以上1000℃/分以下の昇温速度で仮焼することによりフェライト仮焼粉末を作製する仮焼工程と、
    前記フェライト仮焼粉末に対し、有機バインダを混合することにより磁性体スラリーを作製するスラリー作製工程と、
    前記磁性体スラリーをシート状に成形することによりグリーンシートを成形するシート成形工程と、
    前記グリーンシート上にコイルパターンを形成するコイルパターン形成工程と、
    前記コイルパターンの形成された前記グリーンシートを複数積層することにより積層体を形成する積層体形成工程と、
    前記積層体を焼成することにより前記磁性体部を形成する焼成工程と、を備え、
    前記フェライト仮焼粉末は、少なくとも元素としてのFe、NiおよびZnを含み、
    Niは、スピネル構造の一部を構成するNiOとして存在するものと、スピネル構造に変化していないNiOとして存在するものとを有し、
    前記フェライト仮焼粉末1重量部においてスピネル構造に変化していないNiOの量をNSとし、フェライト仮焼粉末1重量部におけるNiOの合計量をWnとしたとき、NS/Wnで表されるスピネル構造に変化していないNiOの比率Rnsが0.49以上であることを特徴とする、積層型コイル部品の製造方法
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