JP6084549B2 - 溶着金属 - Google Patents
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具体的には、以下のとおりである。
C + O = CO(g)・・・式(1)
ここで、C、Oはそれぞれ溶融金属中の溶存炭素濃度と、溶存酸素濃度を示す。式(1)の反応を抑制しCOガス生成を抑制するためには、溶存炭素濃度あるいは溶存酸素濃度の低減が有効である。しかし、溶存炭素濃度は機械的特性の確保の観点から低減が困難であることが多い。そこで、本発明では、溶存酸素濃度の低減を目的に、脱酸力の強いMg、Al、Ti元素を調整し、溶存酸素濃度の低減を図った。その結果、脱酸生成物である非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の比率の平均値が1.5以上となる場合に、ブローホールの発生量が極めて少ない良好な溶着金属を得ることが出来ることを見出した。非金属系介在物の比率の分子は、脱酸力の強いMg、Al、Ti元素からなる脱酸生成物の総和であり、分母は比較的脱酸力の弱いCr、Mn、Si元素からなる脱酸生成物の総和である。よって、非金属系介在物の比率である(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の値が大きいほど、溶着金属中で脱酸反応が進んでいることを示しており、溶存酸素濃度が低下し、結果的にCOガスの発生が抑制できる。
本発明に係る溶着金属は、Ni基合金の外皮にフラックスが充填されたNi基合金フラックス入りワイヤにより溶接された溶着金属であって、前記溶着金属の組成が、C:0.005〜0.05質量%、Si:0.1〜0.5質量%、Mn:0.2〜6.0質量%、Cr:0.1〜15.0質量%、Mo:10.0〜25.0質量%、Fe:0.1〜10.0質量%、W:1.0〜4.0質量%、Ti:0.01〜1.0質量%、残部がNi及び不可避的不純物であり、前記不可避的不純物が、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下、Nb:0.1質量%以下、V:0.1質量%以下、Al:0.1質量%以下、Mg:0.01質量%以下、に規制され、前記溶着金属に含まれる非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の比率の平均値が1.5以上であることを特徴とする。
また、溶着金属は、不可避的不純物について、P、S、Nb、V、Al、Mgを所定量以下に規制することで、耐高温割れ性、靭性が向上する。
さらに、溶着金属は、溶着金属に含まれる非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の比率の平均値を規定することで、溶着金属中の溶存酸素量が低減する。これにより、COガスの生成が抑制され、ブローホール発生量が低減する。
本発明の溶着金属は、Ni基合金の外皮にフラックスが充填されたNi基合金フラックス入りワイヤにより溶接されたものである。そして、溶着金属の組成について、C、Si、Mn、Cr、Mo、Fe、W、Tiを所定量の範囲とし、残部がNi及び不可避的不純物としたものである。
また、溶着金属は、不可避的不純物について、P、S、Nb、V、Al、Mgを所定量以下に規制したものである。
さらに、溶着金属は、溶着金属に含まれる非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の比率の平均値を1.5以上としたものである。
以下、溶着金属の成分限定理由について説明する。
Cは溶着金属の強度を向上させる効果がある。但し、溶着金属のC含有量が0.005質量%未満では、強度を向上させる効果を十分に得ることはできない。一方、C含有量が0.05質量%を超えると、耐高温割れ性及び靭性が低下する。よって、溶着金属のC含有量は0.005〜0.05質量%とする。溶着金属のC含有量は、好ましくは0.010質量%以上である。また、好ましくは0.03質量%以下である。なお、本発明における溶着金属のC源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれるMn−C、Cr−C、W−C等の金属炭化物、シールドガス中のCO2ガス及びスラグ成分から還元されたCがある。
Siは溶着金属の粒界強度を上げ、延性を向上させる効果がある。但し、溶着金属のSi含有量が0.1質量%未満では、その効果は十分ではない。一方、Si含有量が0.5質量%を超えると、Niと化合して低融点化合物を生成するため、耐高温割れ性を劣化させると共に、靭性も低下する。よって、溶着金属のSi含有量は0.1〜0.5質量%とする。溶着金属のSi含有量は、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。なお、本発明における溶着金属のSi源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Si及びFe−Si合金等、又はSiO2等のスラグ成分から還元されたSiがある。
MnはNiと低融点化合物を形成して耐高温割れ性を劣化させるSと結合し、Sを無害化する効果がある。但し、溶着金属のMn含有量が0.2質量%未満では、Sを無害化する効果が得られない。一方、Mn含有量が6.0質量%を超えると、スラグ剥離性が低下する。よって、溶着金属のMn含有量は、0.2〜6.0質量%とする。溶着金属のMn含有量は、好ましくは2.0質量%以上である。また、好ましくは3.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるMn源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Mn、Fe−Mn合金、MnO、MnO2及びMnCO3等があり、いずれの添加によっても溶着金属のMn量を調整できる。
Crは溶着金属の強度を向上させる効果がある。但し、溶着金属のCr含有量が0.1質量%未満では、その効果は十分ではない。一方、Cr含有量が15.0質量%を超えると、靭性が低下する。よって、溶着金属のCr含有量は、0.1〜15.0質量%とする。溶着金属のCr含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは、5.0質量%以上である。また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるCr源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Cr、Fe−Cr合金及びCr2O3等があり、いずれの添加によっても溶着金属のCr量を調整できる。
Moは溶着金属の強度を向上させる効果がある。但し、溶着金属のMo含有量が10.0質量%未満では、溶着金属の強度を確保することができない。一方、Mo含有量が25.0質量%を超えると、溶着金属の靭性が低下する。よって、溶着金属のMo含有量は、10.0〜25.0質量%とする。溶着金属のMo含有量は、好ましくは15.0質量%以上、より好ましくは、16.0質量%以上、さらに好ましくは17.0質量%以上である。また、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは19.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるMo源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Mo及びFe−Mo合金等があり、いずれの添加によっても溶着金属のMo量を調整できる。
Feは溶着金属の延性を確保するために添加する。但し、溶着金属のFe含有量が0.1質量%未満では、この効果を十分確保することができない。一方、Fe含有量が10.0質量%を超えると、溶着金属の耐高温割れ性が劣化する。よって、溶着金属のFe含有量は、0.1〜10.0質量%とする。溶着金属のFe含有量は、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは、6.0質量%以上である。また、好ましくは9.0質量%以下より好ましくは8.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるFe源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Fe、Fe−Mn合金、Fe−Cr合金、Fe−Mo合金及びFe−Ti合金等があり、いずれの添加によってもFe量を調整できる。
Wは溶着金属の強度を向上させる効果がある。但し、溶着金属中のW含有量が1.0質量%未満では、溶着金属の強度を確保することができない。一方、W含有量が4.0質量%を超えると、溶着金属の靭性が低下する。よって、溶着金属のW含有量は1.0〜4.0質量%とする。溶着金属のW含有量は、好ましくは2.0質量%以上である。また、好ましくは3.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるW源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属W、Fe−W合金、W−C等があり、いずれの添加によってもW量を調整することができる。
Tiは溶着金属の脱酸剤として効果がある成分である。但し、溶着金属のTi含有量が0.01質量%未満では、この脱酸効果を十分確保することができない。一方、Ti含有量が1.0質量%を超えると、溶着金属の靭性が低下する。よって、溶着金属のTi含有量は0.01〜1.0質量%とする。溶着金属のTi含有量は、好ましくは、0.02質量%以上、より好ましくは、0.04質量%以上である。また、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるTi源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Ti及びFe−Ti合金、TiO2、Ti2O3、Ti3O5等のスラグ成分から還元されたTiがある。
溶着金属の残部はNi及び不可避的不純物である。
不可避的不純物としては、P、S、Nb、V、Al及びMgなどが挙げられる。これらの不可避的不純物は、以下の規制範囲であれば、許容される。
P及びSはフラックス入りワイヤ中に存在する不可避的不純物である。P及びSは、Niと化合して低融点化合物を生成するため、その含有量が多いと耐高温割れ性が低下する。よって、溶着金属中のP及びSの含有量は、夫々、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下に規制する。
Nb及びVはフラックス入りワイヤ中に存在する不可避的不純物である。Nb及びVは、Niと化合して低融点化合物を生成するため、その含有量が多いと耐高温割れ性が低下する。よって、溶着金属中のNb及びVの含有量は、夫々、0.1質量%以下に規制する。
Al及びMgはフラックス入りワイヤ中に存在する不可避的不純物である。Al及びMgは、外皮を形成するNi基合金や、Al2O3、MgO等のスラグ成分からの還元により溶着金属に混入する。そして、溶着金属中のAl含有量が0.1質量%を超えると、靭性が低下する。また、Mg含有量が0.01質量%を超えると、靭性が低下する。よって、溶着金属中のAl及びMgの含有量は、夫々、Al:0.1質量%以下、Mg:0.01質量%以下に規制する。
前記溶着金属には非金属系介在物が含有される。非金属介在物について質量%で算出される(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の比率の平均値を1.5以上に制御することで、溶着金属中の溶存酸素量が低減する。これにより、COガスの生成が抑制され、ブローホール発生量を減らすことが出来る(図1参照)。(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の比率の平均値が1.5未満では、上記効果が十分ではなく、溶着金属中にブローホールが発生する。よって、(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の比率の平均値は1.5以上とする。好ましくは、2.0以上である。なお、上限については特に規定されるものではないが、好ましくは、5.0以下である。なお、前記式は、実験により導き出したものである。
また、非金属系介在物の組成は、母材組成、フラックス入りワイヤの組成、溶接条件の組合せにより決定される。特に、フラックス入りワイヤの外皮中に含まれる、Mg、Al、Tiの影響を受け、Mg、Al、Tiを増量することで、溶着金属に含有される非金属系介在物のMgO、Al2O3、TiO2濃度を増やすことが可能となる。その結果、(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の比率を増やすことができ、ブローホールの発生量を減らすことが出来る。
まず、下記表1に示す組成のNi基合金からなる厚さ0.4mm、幅9.0mmの帯を湾曲させて、円筒状の外皮を作製した。これらの外皮に、金属原料とフラックスを内包し、下記表2に示す組成のフラックス入りワイヤを作製した。このワイヤを、直径が1.2mmになるように伸線加工した後、通電加熱により、ワイヤ中に含まれる水分を400ppm以下にしたものを供試ワイヤとした。
耐ブローホール性の評価については、表3に示す組成の板厚が12mm、幅が250mm、長さが300mmの9%Ni鋼板を母材として使用した。図2に示す開先角度60°、ルートギャップ5mmの裏当て金付きの母材を半自動溶接にて3層3パスで立向上進溶接を行った。その際の溶接条件は、溶接電流が160A(直流ワイヤプラス)、アーク電圧が26Vであり、シールドガスには80%Ar−20%CO2を使用し、シールドガスの流量は25リットル/分とし、溶接速度を11〜15cm/分とした。
その際の溶接条件は、溶接電流が200A 、電圧が29V 、溶接速度が300〜400mmであり、シールドガスには80%Ar−20%CO2を使用し、シールドガスの流量は25リットル/分とした。
さが300mmの母材を間隔が2mmになるように調整して、拘束割れ試験方法により行
った。自動溶接機によるシングルビード溶接を行い、スタートとクレータを除く溶接金属
部に発生する割れの有無を確認した。
高温割れ試験の溶接条件は、電流を280A、電圧を34V、溶接速度を50cm/分、シールドガスには80%Ar−20%CO2を使用し、シールドガスの流量は25リットル/分とした。
溶着金属の強度は、引張試験により評価した。引張強さが690MPa以上、かつ、伸びが30%以上の場合を○と評価した。
衝撃値は、衝撃試験により評価した。−196℃における衝撃値が70J以上を○とした。
これらの結果を表6に示す。
Claims (1)
- Ni基合金の外皮にフラックスが充填されたNi基合金フラックス入りワイヤにより溶接された溶着金属であって、
前記溶着金属の組成が、
C:0.005〜0.05質量%、
Si:0.1〜0.5質量%、
Mn:0.2〜6.0質量%、
Cr:0.1〜15.0質量%、
Mo:10.0〜25.0質量%、
Fe:0.1〜10.0質量%、
W:1.0〜4.0質量%、
Ti:0.01〜1.0質量%、
残部がNi及び不可避的不純物であり、
前記不可避的不純物が、
P:0.020質量%以下、
S:0.010質量%以下、
Nb:0.1質量%以下、
V:0.1質量%以下、
Al:0.1質量%以下、
Mg:0.01質量%以下、
に規制され、
前記溶着金属に含まれる非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al2O3+TiO2)/(Cr2O3+MnO+SiO2)の比率の平均値が1.5以上であることを特徴とする溶着金属。
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