JP6084549B2 - 溶着金属 - Google Patents

溶着金属 Download PDF

Info

Publication number
JP6084549B2
JP6084549B2 JP2013227172A JP2013227172A JP6084549B2 JP 6084549 B2 JP6084549 B2 JP 6084549B2 JP 2013227172 A JP2013227172 A JP 2013227172A JP 2013227172 A JP2013227172 A JP 2013227172A JP 6084549 B2 JP6084549 B2 JP 6084549B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
weld metal
less
metal
welding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013227172A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015085367A (ja
Inventor
正樹 島本
正樹 島本
和博 福田
和博 福田
哲直 池田
哲直 池田
元宏 堀口
元宏 堀口
石田 斉
斉 石田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2013227172A priority Critical patent/JP6084549B2/ja
Publication of JP2015085367A publication Critical patent/JP2015085367A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6084549B2 publication Critical patent/JP6084549B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、液化天然ガスタンク等の極低温用容器を製造する際に、Ni基合金フラックス入りワイヤで溶接することで生成する溶着金属に関する。
Ni基合金を成分とする溶接材料は、例えば低温用鋼として代表的な9%Ni鋼等の溶接に使用されている。9%Ni鋼等は、LNG、液体窒素、また液体酸素などの貯蔵タンク等に広く用いられている。9%Ni鋼の溶接では、溶接継手部に母材と同等の−196℃の極低温における溶接部の靭性を確保するため、フェライト組織の9%Ni鋼に類似した成分を有する溶接ワイヤ(所謂、共金系ワイヤ)ではなく、Ni基合金溶接材料を使用するのが一般的である。これは共金系ワイヤを用いて溶接した場合の溶接継手部は、溶接ままでは9%Ni鋼と同等の強度と低温靭性を確保することが出来ないからである。
近年、Ni基合金のような特殊溶接材料においても被覆アーク溶接やTIG溶接に比べて、より高い作業能率が期待できるNi基合金フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接が拡大しつつある。一方、Ni基合金は完全オーステナイト組織であり、高温割れ感受性が高いことから、耐高温割れ性と溶接作業性の両立が難しく、溶接姿勢や溶接条件適用範囲が限られていた。そこで、Ni基合金フラックス入りワイヤにより溶接された溶着金属においては、この適用範囲拡大を目的に、耐高温割れ性を改善するため種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1に記載のNi基合金フラックス入りワイヤは、スラグ形成剤の組成を最適化し、溶着金属の耐高温割れ性の改善を図っている。更に、特許文献2、3に記載のNi基合金フラックス入りワイヤは、ワイヤ成分および溶着金属化学成分を最適化する、すなわち、耐高温割れ性に悪影響を及ぼすCr,Nb含有量を低減し、Ni−Mo合金系を主体とした溶着金属化学成分にすることで、高温割れ感受性の更なる低減を図っている。
特開2000−343277号公報 特開2005−59077号公報 特開2007−203350号公報
しかしながら、前述の特許文献1〜3では、いずれも耐高温割れ性の向上を図っているものの、耐気孔欠陥性(耐ブローホール性)については改善の余地がある。そして、耐気孔欠陥性に優れる溶着金属の開発が望まれている。
そこで、本発明の課題は、Ni基合金フラックス入りワイヤで溶接することで生成する溶着金属において、気孔(ブローホール)の発生を抑制することができる溶着金属を提供することにある。
本発明者らは、耐高温割れ性を改善する観点からCrやNb含有量を少なく規制しているNi−Mo合金系のNi基合金フラックス入りワイヤでの溶接で生成する溶着金属で問題となっていたブローホールを低減することを目的とし、以下の事項を見出した。
Ni基合金系溶融金属中におけるC,O元素の平衡溶解度は、一般の炭素鋼に比べて極めて低く、溶接時に溶融金属が凝固する際の温度低下によるC,O元素の平衡溶解度の減少に起因して、COガス生成反応によるブローホールが発生しやすい傾向にある。特に、CrやNb含有量が少ないNi−Mo系合金ではNi−Cr−Nb系合金に比べ、C,O元素の平衡溶解度が更に低いことから、容易にCOガスの生成に起因するブローホールが発生しやすい傾向にある。
また、炭素鋼やステンレス鋼に代表されるFe基溶接材料の溶融金属の凝固開始温度が1450〜1500℃であるのに対して、Ni基合金溶接材料の溶融金属の凝固開始温度は1300〜1400℃と比較的低いという特徴がある。したがって、Ni基合金溶接材料では、溶融金属表面における溶融スラグの凝固・形成が完了してから、溶融金属の凝固が開始するまでの時間差が長くなる傾向にある。さらに、立向姿勢での溶接が可能な全姿勢用スラグ系においては、溶融スラグの凝固が完了するまでの温度と溶融金属が凝固を開始するまでの温度との差が大きい。このように、溶融スラグの凝固が早いことから、溶融スラグの凝固が完了するまでに溶融金属からCOガスが放出される時間が短いため、特に全姿勢用Ni基合金用フラックス入りワイヤでは溶融金属中にCOガスがトラップされブローホールが発生しやすいという問題がある。
このように、C,O元素の平衡溶解度が炭素鋼に比べて極めて低いNi基合金においては、溶接中に溶融金属内で容易にCOガスが発生することから、溶接中の極短時間に効果的に脱酸を行い、COガスの発生を抑制する必要がある。そこで、COガス反応を抑制することで、ブローホール発生量が極めて少ない良好な溶着金属を得ることができることを見出した。
具体的には、以下のとおりである。
上述の通り、溶着金属のブローホールの主因は、溶融金属が凝固する際に発生するCOガスであり、COガス生成反応は式(1)で示される。
= CO(g)・・・式(1)
ここで、C、Oはそれぞれ溶融金属中の溶存炭素濃度と、溶存酸素濃度を示す。式(1)の反応を抑制しCOガス生成を抑制するためには、溶存炭素濃度あるいは溶存酸素濃度の低減が有効である。しかし、溶存炭素濃度は機械的特性の確保の観点から低減が困難であることが多い。そこで、本発明では、溶存酸素濃度の低減を目的に、脱酸力の強いMg、Al、Ti元素を調整し、溶存酸素濃度の低減を図った。その結果、脱酸生成物である非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値が1.5以上となる場合に、ブローホールの発生量が極めて少ない良好な溶着金属を得ることが出来ることを見出した。非金属系介在物の比率の分子は、脱酸力の強いMg、Al、Ti元素からなる脱酸生成物の総和であり、分母は比較的脱酸力の弱いCr、Mn、Si元素からなる脱酸生成物の総和である。よって、非金属系介在物の比率である(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の値が大きいほど、溶着金属中で脱酸反応が進んでいることを示しており、溶存酸素濃度が低下し、結果的にCOガスの発生が抑制できる。
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術手段を講じている。
本発明に係る溶着金属は、Ni基合金の外皮にフラックスが充填されたNi基合金フラックス入りワイヤにより溶接された溶着金属であって、前記溶着金属の組成が、C:0.005〜0.05質量%、Si:0.1〜0.5質量%、Mn:0.2〜6.0質量%、Cr:0.1〜15.0質量%、Mo:10.0〜25.0質量%、Fe:0.1〜10.0質量%、W:1.0〜4.0質量%、Ti:0.01〜1.0質量%、残部がNi及び不可避的不純物であり、前記不可避的不純物が、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下、Nb:0.1質量%以下、V:0.1質量%以下、Al:0.1質量%以下、Mg:0.01質量%以下、に規制され、前記溶着金属に含まれる非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値が1.5以上であることを特徴とする。
かかる構成によれば、溶着金属は、C、Si、Mn、Cr、Mo、Fe、Wを所定の範囲で含有することで、溶着金属の強度、延性、耐高温割れ性が向上し、Tiを所定の範囲で含有することで、脱酸剤としての効果が向上する。
また、溶着金属は、不可避的不純物について、P、S、Nb、V、Al、Mgを所定量以下に規制することで、耐高温割れ性、靭性が向上する。
さらに、溶着金属は、溶着金属に含まれる非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値を規定することで、溶着金属中の溶存酸素量が低減する。これにより、COガスの生成が抑制され、ブローホール発生量が低減する。
本発明の溶着金属は、溶融金属中のCOガス生成反応を抑制することで、ブローホール発生量が極めて少ない良好な溶着金属を得ることができる。
非金属系介在物の所定の比率の平均値と気孔発生数の関係を示すグラフである。 実施例の耐ブローホール性の評価で用いた試験片を示す断面図である。 実施例の引張試験および衝撃試験で用いた試験片を示す断面図である。 実施例の引張試験片の採取位置を示す断面図である。 実施例の衝撃試験片の採取位置を示す断面図である。 実施例の高温割れ試験で用いた試験片を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の溶着金属は、Ni基合金の外皮にフラックスが充填されたNi基合金フラックス入りワイヤにより溶接されたものである。そして、溶着金属の組成について、C、Si、Mn、Cr、Mo、Fe、W、Tiを所定量の範囲とし、残部がNi及び不可避的不純物としたものである。
また、溶着金属は、不可避的不純物について、P、S、Nb、V、Al、Mgを所定量以下に規制したものである。
さらに、溶着金属は、溶着金属に含まれる非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値を1.5以上としたものである。
以下、溶着金属の成分限定理由について説明する。
<C:0.005〜0.05質量%>
Cは溶着金属の強度を向上させる効果がある。但し、溶着金属のC含有量が0.005質量%未満では、強度を向上させる効果を十分に得ることはできない。一方、C含有量が0.05質量%を超えると、耐高温割れ性及び靭性が低下する。よって、溶着金属のC含有量は0.005〜0.05質量%とする。溶着金属のC含有量は、好ましくは0.010質量%以上である。また、好ましくは0.03質量%以下である。なお、本発明における溶着金属のC源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれるMn−C、Cr−C、W−C等の金属炭化物、シールドガス中のCOガス及びスラグ成分から還元されたCがある。
<Si:0.1〜0.5質量%>
Siは溶着金属の粒界強度を上げ、延性を向上させる効果がある。但し、溶着金属のSi含有量が0.1質量%未満では、その効果は十分ではない。一方、Si含有量が0.5質量%を超えると、Niと化合して低融点化合物を生成するため、耐高温割れ性を劣化させると共に、靭性も低下する。よって、溶着金属のSi含有量は0.1〜0.5質量%とする。溶着金属のSi含有量は、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。なお、本発明における溶着金属のSi源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Si及びFe−Si合金等、又はSiO等のスラグ成分から還元されたSiがある。
<Mn:0.2〜6.0質量%>
MnはNiと低融点化合物を形成して耐高温割れ性を劣化させるSと結合し、Sを無害化する効果がある。但し、溶着金属のMn含有量が0.2質量%未満では、Sを無害化する効果が得られない。一方、Mn含有量が6.0質量%を超えると、スラグ剥離性が低下する。よって、溶着金属のMn含有量は、0.2〜6.0質量%とする。溶着金属のMn含有量は、好ましくは2.0質量%以上である。また、好ましくは3.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるMn源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Mn、Fe−Mn合金、MnO、MnO及びMnCO等があり、いずれの添加によっても溶着金属のMn量を調整できる。
<Cr:0.1〜15.0質量%>
Crは溶着金属の強度を向上させる効果がある。但し、溶着金属のCr含有量が0.1質量%未満では、その効果は十分ではない。一方、Cr含有量が15.0質量%を超えると、靭性が低下する。よって、溶着金属のCr含有量は、0.1〜15.0質量%とする。溶着金属のCr含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは、5.0質量%以上である。また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるCr源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Cr、Fe−Cr合金及びCr等があり、いずれの添加によっても溶着金属のCr量を調整できる。
<Mo:10.0〜25.0質量%>
Moは溶着金属の強度を向上させる効果がある。但し、溶着金属のMo含有量が10.0質量%未満では、溶着金属の強度を確保することができない。一方、Mo含有量が25.0質量%を超えると、溶着金属の靭性が低下する。よって、溶着金属のMo含有量は、10.0〜25.0質量%とする。溶着金属のMo含有量は、好ましくは15.0質量%以上、より好ましくは、16.0質量%以上、さらに好ましくは17.0質量%以上である。また、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは19.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるMo源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Mo及びFe−Mo合金等があり、いずれの添加によっても溶着金属のMo量を調整できる。
<Fe:0.1〜10.0質量%>
Feは溶着金属の延性を確保するために添加する。但し、溶着金属のFe含有量が0.1質量%未満では、この効果を十分確保することができない。一方、Fe含有量が10.0質量%を超えると、溶着金属の耐高温割れ性が劣化する。よって、溶着金属のFe含有量は、0.1〜10.0質量%とする。溶着金属のFe含有量は、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは、6.0質量%以上である。また、好ましくは9.0質量%以下より好ましくは8.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるFe源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Fe、Fe−Mn合金、Fe−Cr合金、Fe−Mo合金及びFe−Ti合金等があり、いずれの添加によってもFe量を調整できる。
<W:1.0〜4.0質量%>
Wは溶着金属の強度を向上させる効果がある。但し、溶着金属中のW含有量が1.0質量%未満では、溶着金属の強度を確保することができない。一方、W含有量が4.0質量%を超えると、溶着金属の靭性が低下する。よって、溶着金属のW含有量は1.0〜4.0質量%とする。溶着金属のW含有量は、好ましくは2.0質量%以上である。また、好ましくは3.0質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるW源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属W、Fe−W合金、W−C等があり、いずれの添加によってもW量を調整することができる。
<Ti:0.01〜1.0質量%>
Tiは溶着金属の脱酸剤として効果がある成分である。但し、溶着金属のTi含有量が0.01質量%未満では、この脱酸効果を十分確保することができない。一方、Ti含有量が1.0質量%を超えると、溶着金属の靭性が低下する。よって、溶着金属のTi含有量は0.01〜1.0質量%とする。溶着金属のTi含有量は、好ましくは、0.02質量%以上、より好ましくは、0.04質量%以上である。また、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。なお、本発明の溶着金属におけるTi源としては、外皮を形成するNi基合金、フラックスに含まれる金属Ti及びFe−Ti合金、TiO、Ti、Ti等のスラグ成分から還元されたTiがある。
<残部:不可避的不純物>
溶着金属の残部はNi及び不可避的不純物である。
不可避的不純物としては、P、S、Nb、V、Al及びMgなどが挙げられる。これらの不可避的不純物は、以下の規制範囲であれば、許容される。
<P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下>
P及びSはフラックス入りワイヤ中に存在する不可避的不純物である。P及びSは、Niと化合して低融点化合物を生成するため、その含有量が多いと耐高温割れ性が低下する。よって、溶着金属中のP及びSの含有量は、夫々、P:0.020質量%以下、S:0.010質量%以下に規制する。
<Nb:0.1質量%以下、V:0.1質量%以下>
Nb及びVはフラックス入りワイヤ中に存在する不可避的不純物である。Nb及びVは、Niと化合して低融点化合物を生成するため、その含有量が多いと耐高温割れ性が低下する。よって、溶着金属中のNb及びVの含有量は、夫々、0.1質量%以下に規制する。
<Al:0.1質量%以下、Mg:0.01質量%以下>
Al及びMgはフラックス入りワイヤ中に存在する不可避的不純物である。Al及びMgは、外皮を形成するNi基合金や、Al、MgO等のスラグ成分からの還元により溶着金属に混入する。そして、溶着金属中のAl含有量が0.1質量%を超えると、靭性が低下する。また、Mg含有量が0.01質量%を超えると、靭性が低下する。よって、溶着金属中のAl及びMgの含有量は、夫々、Al:0.1質量%以下、Mg:0.01質量%以下に規制する。
<(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値:1.5以上>
前記溶着金属には非金属系介在物が含有される。非金属介在物について質量%で算出される(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値を1.5以上に制御することで、溶着金属中の溶存酸素量が低減する。これにより、COガスの生成が抑制され、ブローホール発生量を減らすことが出来る(図1参照)。(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値が1.5未満では、上記効果が十分ではなく、溶着金属中にブローホールが発生する。よって、(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値は1.5以上とする。好ましくは、2.0以上である。なお、上限については特に規定されるものではないが、好ましくは、5.0以下である。なお、前記式は、実験により導き出したものである。
なお、溶着金属に含有される非金属系介在物は、MgO、Al、TiO、Cr、MnO、SiOの他、不純物として、例えばZrO、KO、NaO、LiOなどを含有する。なお、これら不純物は、総和として非金属系介在物に10質量%以下まで含有しても何ら問題は無い。なお、本発明では、後述の方法にて、非金属系介在物中のMgO、Al、TiO、Cr、MnO、SiOの含有量を測定し、それらの合計が100質量%となるよう換算をしている。
また、非金属系介在物の組成は、母材組成、フラックス入りワイヤの組成、溶接条件の組合せにより決定される。特に、フラックス入りワイヤの外皮中に含まれる、Mg、Al、Tiの影響を受け、Mg、Al、Tiを増量することで、溶着金属に含有される非金属系介在物のMgO、Al、TiO濃度を増やすことが可能となる。その結果、(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率を増やすことができ、ブローホールの発生量を減らすことが出来る。
以上説明した本発明の溶着金属は、9%Ni鋼や各種高Ni合金等の低温鋼の溶接に際し、Ar+CO混合ガスを用いたガスシールドアーク溶接等に用いる溶接ワイヤにより溶接されることで得られる。
以下、本発明の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
まず、下記表1に示す組成のNi基合金からなる厚さ0.4mm、幅9.0mmの帯を湾曲させて、円筒状の外皮を作製した。これらの外皮に、金属原料とフラックスを内包し、下記表2に示す組成のフラックス入りワイヤを作製した。このワイヤを、直径が1.2mmになるように伸線加工した後、通電加熱により、ワイヤ中に含まれる水分を400ppm以下にしたものを供試ワイヤとした。
Figure 0006084549
Figure 0006084549
前述の方法で製造したフラックス入りワイヤを使用して、溶着金属を得て、溶着金属の化学成分分析を行うとともに、溶着金属の強度、衝撃値、耐高温割れ性、耐ブローホール性の評価を行った。
耐ブローホール性の評価については、表3に示す組成の板厚が12mm、幅が250mm、長さが300mmの9%Ni鋼板を母材として使用した。図2に示す開先角度60°、ルートギャップ5mmの裏当て金付きの母材を半自動溶接にて3層3パスで立向上進溶接を行った。その際の溶接条件は、溶接電流が160A(直流ワイヤプラス)、アーク電圧が26Vであり、シールドガスには80%Ar−20%COを使用し、シールドガスの流量は25リットル/分とし、溶接速度を11〜15cm/分とした。
溶着金属については、図3に示すように、板厚20mmのSM490鋼板の開先面に、開先角度が45°になるように斜面を形成し、この開先部を供試ワイヤでバタリングして、バタリング層を形成した。その後、バタリングされた母材同士をルートギャップが12mmとなるように配置し、開先が狭まる側に、同様に表面をバタリングした裏当て金(鋼材)を配置した。この開先を溶接し、溶着金属を作成した。化学成分分析試料及び引張試験片(JIS Z3111)は図4に示す要領で、また、衝撃試験片は図5に示す要領で試験片(JIS Z3111)を採取した(二点鎖線で示す領域)。
その際の溶接条件は、溶接電流が200A 、電圧が29V 、溶接速度が300〜400mmであり、シールドガスには80%Ar−20%COを使用し、シールドガスの流量は25リットル/分とした。
高温耐割れ試験は、表3に示す成分の母材を使用し、図6に示すように、開先角度が60°になるように板厚の半分まで斜面が形成された板厚が20mm、幅が125mm、長
さが300mmの母材を間隔が2mmになるように調整して、拘束割れ試験方法により行
った。自動溶接機によるシングルビード溶接を行い、スタートとクレータを除く溶接金属
部に発生する割れの有無を確認した。
高温割れ試験の溶接条件は、電流を280A、電圧を34V、溶接速度を50cm/分、シールドガスには80%Ar−20%COを使用し、シールドガスの流量は25リットル/分とした。
Figure 0006084549
溶着金属組成を表4に示す。
Figure 0006084549
溶着金属中の非金属系介在物の平均組成については、溶着金属の縦断面の中央部分から試験片5mm角を切出し、日本電子データム製の電子線マイクロプローブX線分析計(ElectronProbe X−ray Micro Analyzer:EPMA 商品名「JXA−8500F」)を用いて観察し、短径が1μm以上の非金属系介在物について成分組成を定量分析した。このとき、観察面積を25mm(研磨面)とし、非金属系介在物の中央部での成分組成を特性X線の波長分散分光により定量分析した。分析対象元素は、Mg、Al、Si、Mn、Ti、Cr、O(酸素)とした。そして、既知物質を用いて各元素のX線強度と元素濃度の関係を予め検量線として求めておき、分析対象とする上記介在物から得られたX線強度と上記検量線から各試料に含まれる元素量を定量した。そして、観察面積内に存在する短径が1μm以上の非金属系介在物100個について、上記手段で元素量を定量し、その結果を算術平均することで平均の介在物組成を求めた。その結果を表5に示す。
Figure 0006084549
評価基準は以下のとおりである。
溶着金属の強度は、引張試験により評価した。引張強さが690MPa以上、かつ、伸びが30%以上の場合を○と評価した。
衝撃値は、衝撃試験により評価した。−196℃における衝撃値が70J以上を○とした。
溶着金属の耐ブローホール性については、余盛、裏当て金を削除した後、放射線透過試験を行い、検出された0.4mm以上の球状欠陥の個数によって評価した。この際、溶接ビードの始端部及び終端部については、各々の端部から30mmの部分を評価対象外の領域とした。ビードの長さが240mmあたりのブローホールの発生数が5個以下の場合を◎、6〜10個であった場合を○、11個以上であった場合を×と評価した。
これらの結果を表6に示す。
Figure 0006084549
表6に示すように、本発明の範囲を満足する実施例であるNo.1〜3は、溶着金属の強度、衝撃値、耐高温割れ性、耐ブローホール性が良好であった。
比較例であるNo.4〜8は、(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値が1.5未満のため、耐ブローホール性が低下した。
以上、本発明について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。

Claims (1)

  1. Ni基合金の外皮にフラックスが充填されたNi基合金フラックス入りワイヤにより溶接された溶着金属であって、
    前記溶着金属の組成が、
    C:0.005〜0.05質量%、
    Si:0.1〜0.5質量%、
    Mn:0.2〜6.0質量%、
    Cr:0.1〜15.0質量%、
    Mo:10.0〜25.0質量%、
    Fe:0.1〜10.0質量%、
    W:1.0〜4.0質量%、
    Ti:0.01〜1.0質量%、
    残部がNi及び不可避的不純物であり、
    前記不可避的不純物が、
    P:0.020質量%以下、
    S:0.010質量%以下、
    Nb:0.1質量%以下、
    V:0.1質量%以下、
    Al:0.1質量%以下、
    Mg:0.01質量%以下、
    に規制され、
    前記溶着金属に含まれる非金属系介在物について、質量%で算出される(MgO+Al+TiO)/(Cr+MnO+SiO)の比率の平均値が1.5以上であることを特徴とする溶着金属。
JP2013227172A 2013-10-31 2013-10-31 溶着金属 Active JP6084549B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013227172A JP6084549B2 (ja) 2013-10-31 2013-10-31 溶着金属

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013227172A JP6084549B2 (ja) 2013-10-31 2013-10-31 溶着金属

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015085367A JP2015085367A (ja) 2015-05-07
JP6084549B2 true JP6084549B2 (ja) 2017-02-22

Family

ID=53048749

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013227172A Active JP6084549B2 (ja) 2013-10-31 2013-10-31 溶着金属

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6084549B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109628797A (zh) * 2018-11-26 2019-04-16 抚顺特殊钢股份有限公司 一种导弹发射装置用镍基超合金及制造工艺

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58132393A (ja) * 1982-01-30 1983-08-06 Sumikin Yousetsubou Kk 9%Ni鋼溶接用複合ワイヤ
JP4447078B2 (ja) * 1998-08-10 2010-04-07 株式会社神戸製鋼所 Ni基合金フラックス入りワイヤ
JP4970802B2 (ja) * 2006-02-02 2012-07-11 株式会社神戸製鋼所 Ni基合金フラックス入りワイヤ
JP5198481B2 (ja) * 2010-01-09 2013-05-15 株式会社神戸製鋼所 Ni基合金フラックス入りワイヤ
JP5411820B2 (ja) * 2010-09-06 2014-02-12 株式会社神戸製鋼所 フラックス入り溶接ワイヤ及びこれを用いた肉盛溶接のアーク溶接方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109628797A (zh) * 2018-11-26 2019-04-16 抚顺特殊钢股份有限公司 一种导弹发射装置用镍基超合金及制造工艺

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015085367A (ja) 2015-05-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101674743B1 (ko) 가스 실드 아크 용접용 플럭스 내장 와이어 및 극저온용 강의 용접 방법 및 용접 조인트의 제조 방법
JP5968855B2 (ja) Ni基合金フラックス入りワイヤ
JP4970802B2 (ja) Ni基合金フラックス入りワイヤ
JP5416605B2 (ja) フラックス入りワイヤ
JP6291461B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
CN106392369B (zh) Ni基合金药芯焊丝
KR102013984B1 (ko) 가스 실드 아크 용접용 플럭스 내장 와이어
JP5764083B2 (ja) フラックス入りワイヤおよびこれを用いたガスシールドアーク溶接方法
JP2008068274A (ja) 低温靭性に優れた高強度溶接金属
JPWO2020039643A1 (ja) ガスメタルアーク溶接用ソリッドワイヤ
JP6690786B1 (ja) ソリッドワイヤ及び溶接継手の製造方法
JP6155810B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用高Niフラックス入りワイヤ
JP4173076B2 (ja) Ni基合金フラックス入りワイヤ
JP6891630B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法
JP6801494B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、および溶接継手の製造方法
JP2010017717A (ja) フラックス入りワイヤ
JP6235402B2 (ja) 強度、靭性および耐sr割れ性に優れた溶接金属
JP2019048324A (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法
JP6953870B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法
JP4745900B2 (ja) 低温靭性、耐低温割れ性、および全姿勢溶接時のビード形状が良好な高強度溶接金属
JP6084549B2 (ja) 溶着金属
JP6726008B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP2019048323A (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法
JP6881025B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法
JP2022061819A (ja) 溶接継手の製造方法及び開先充填用のフラックス入りカットワイヤ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150901

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20160531

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160810

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160823

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170110

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170125

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6084549

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150