JP6083649B2 - 未分化細胞検出方法及び複合糖質検出方法 - Google Patents

未分化細胞検出方法及び複合糖質検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、細胞培養上清を用いて細胞の状態を判別する方法に関する。特に、未分化細胞の存在、非存在を評価する方法に関する。また、本発明は、糖タンパク質などの、糖鎖を有する検出対象物質を検出する方法に関する。
多能性幹細胞は体を構成するあらゆる細胞に分化できる性質やその未分化性を維持できる性質により注目を集め、創薬スクリーニングや疾患メカニズム解明への応用のみならず、再生医療の材料として世界中で研究が進められている。
2010年に世界で初めてのヒトES細胞を用いた第1相臨床試験が米国で急性脊髄損傷に対して始まり、さらに網膜変性疾患に対するヒトES細胞を用いた第1/2相臨床試験の治験許可申請(IND)がFDAにより承認され、ヒト多能性幹細胞を用いた再生医療研究は飛躍的な発展を続けている。
とりわけ、日本発の新たなヒト多能性幹細胞であるiPS細胞は、受精胚を使用しないなどの理由から倫理的な障壁が低く、且つ自家組織からも樹立できるという極めて大きなメリットがあり、再生医療現場からも大きな期待を集めている。我が国では、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターや先端医療センターなどが、加齢黄斑変性症の患者を対象に、iPS細胞を使った臨床研究を2013年度から開始する計画であり、慶応大学も2015年に脊髄損傷患者に対しての臨床研究を始める方針である。
このように、ES細胞やiPS細胞といったヒト多能性幹細胞の臨床応用が開始されるなか、品質と安全性を確保して細胞を供給する体制に関しては十分に整備がなされていない。多能性幹細胞は、作製の方法、培養条件、保存条件などが、未分化性、分化能、増殖能などの品質に影響を与える。このため適切な方法に基づかずに管理されると、生産者や使用者ごとに違った結果を生じる可能性がある。このことは、幹細胞治療の信頼性の低下、治療による健康被害の発生などの弊害を及ぼす原因となる。そのため、信頼性や再現性の高い維持培養法や計測・評価システムが必要である。
たとえば、細胞治療には多能性幹細胞をそのまま用いるのではなく、目的の細胞に分化させてから移植に用いるが、目的の細胞に分化させた細胞源に未分化な細胞が混入している場合、その未分化細胞が腫瘍形成の原因になることが指摘されている。そこで細胞治療に用いる細胞に未分化細胞、すなわち腫瘍形成細胞が混入しているかどうかを評価する技術の開発が求められている。
一方、体性幹細胞の種類や特性は、ES細胞やiPS細胞といったヒト多能性幹細胞と比べて多種多様ではあるが、臨床への適用が既存技術として存在する。しかしながら、移植に適した品質の細胞を安定的に得ることが容易ではないため、間葉系幹細胞の品質検証方法の確立と、それに基づいた安定的な培養方法の確立はきわめて重要な課題となっている。また、体性幹細胞を用いた細胞移植の有効性の評価、その機序の理解及びリスク評価を行う上でも、移植前の細胞の品質検証方法の開発が求められている。
本発明者らは以前、レクチンマイクロアレイを用いて、5種類の異なる体細胞(皮膚、胎児肺、子宮内膜、胎盤動脈、羊膜)から作製したヒトiPS細胞(114検体)と、ヒトES細胞(9検体)の糖鎖プロファイルを網羅的に解析した。
その結果、元の体細胞が組織毎に異なる糖鎖プロファイルを持っていたにもかかわらず、作製されたiPS細胞は、いずれもほぼ同じ糖鎖プロファイルを示し、初期化遺伝子の導入により一様にES細胞と類似の糖鎖構造に収束化することを見出した。ヒトES・iPS細胞とヒト体細胞とのレクチンアレイデータを詳細に解析した結果によると、未分化のヒトES・iPS細胞では、体細胞と比較してα2-6Sia、α1-2Fuc、タイプ1 LacNAcの発現量が顕著に増加していることが推定された。さらに、DNAアレイを用いた糖転移酵素遺伝子の発現解析、及び質量分析計を用いた方法によって、rBC2LCNが未分化のヒトES・iPS細胞のみに結合することを見出した(非特許文献1)。
上記rBC2LCNは、グラム陰性細菌(Burkholderia cenocepacia)由来のBC2L-Cタンパク質のN末端ドメインに対応したBC2LCNレクチン(YP_002232818)を形質転換大腸菌で発現させた組換え体であり、複合糖鎖の非還元末端の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」並びに、「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」の糖鎖構造を認識するレクチンである(非特許文献1,3)。
本発明者らは、上述のレクチンアレイを用いた実験において、rBC2LCNが、未分化のヒトES・iPS細胞と反応するものの、分化した体細胞(皮膚、胎児肺、子宮内膜、胎盤動脈、羊膜)とは全く反応しないことを見出した。rBC2LCNは、「α1-2Fuc」、「タイプ1 LacNAc」及び「α2-6Sia」のうちの2つ(α1-2Fuc、タイプ1 LacNAc)を有する「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(=Hタイプ1構造)」及び「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(=Hタイプ3構造)」の糖鎖構造と特異的に反応していると解される。これら2つの糖鎖構造は、ヒトES・iPS細胞で高発現しており、分化した皮膚、胎児肺、子宮内膜、胎盤動脈、羊膜の細胞ではほとんど発現のない糖鎖である。
このことは、rBC2LCNが認識する糖鎖リガンドは未分化細胞を特徴付ける新規未分化糖鎖マーカーであることを示すものであり、かつ、rBC2LCNは、当該未分化糖鎖マーカー「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」及び/又は「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」(以下、両者をあわせて「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」ということもある。)に特異的なプローブとして用いることができることを示している。
その後、Drukkerらのチームも、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」を認識する抗体が、未分化状態のES細胞及びiPS細胞を認識することを見出しており(非特許文献2)、本発明者らの上記知見が裏付けられた。
ただし、Drukkerらの上記抗体は「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc (=Hタイプ1構造)」には特異的に反応するものの、「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc (=Hタイプ3構造)」とは反応しない。rBC2LCNと比較すると、未分化細胞のうち「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」もしくは「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc含有糖鎖」を検出することができないため、本発明者らのrBC2LCNと比較すると、充分な感度が上がらない欠点がある。
特開平9-301995号 WO2007/027495
Tateno H, Toyota M, Saito S, OnumaY, Ito Y, Hiemori K, Fukumura M, Matsushima A, Nakanishi M, Ohnuma K, Akutsu H,Umezawa A, Horimoto K, Hirabayashi J, Asashima M., J Biol Chem. 2011, 286(23):20345-53. Tang C, Lee AS, Volkmer JP, SahooD, Nag D, Mosley AR, Inlay MA, Ardehali R, Chavez SL, Pera RR, Behr B, Wu JC,Weissman IL, Drukker M., Nat Biotechnol. 2011, 29(9):829-34. Sulak O, Cioci G, Delia M, LahmannM, Varrot A, Imberty A, Wimmerova M., Structure. 2010, 18(1):59-72. Suemori H.,Yasuchika K.,HasegawaK.,Fujioka T.,Tsuneyoshi N.,Nakatsuji N. Biochem.Biophys.Res.Commun. 2006, 345,926-932. Draper JS,Pigott C,ThomsonJA,Andrews PW. J Anat. 2000, 200,249-58. Iijima et al. Chem. Bio. Chem.2009, 10,999-1006 Tateno, H., Nakamura-Tsuruta, S.,and Hirabayashi, J. Nat. Protoc. 2007, 2,2529-2537 Nielsen, J. S., and McNagny, K. M.J Am Soc Nephrol, 2009, 20,1669-1676.
現在、細胞の品質を検査する場合には、細胞の遺伝子発現、エピゲノム状態、細胞表面マーカー等の差異を、シーケンサー、マイクロアレイ、フローサイトメトリー、免疫組織科学等で分析するのが一般的である。しかしながら、これらの方法では細胞そのものを分析に用いる必要があるため、細胞を回収する煩雑な工程が必要なばかりでなく、細胞治療に用いるための貴重な細胞を検査で使用してしまうという大きな問題点がある。
また、上述のように、本発明者らによって未分化細胞と分化細胞とを識別する未分化糖鎖マーカーとなる糖鎖構造自身は確定することができた。しかし、Drukkerらの方法のみならず、本発明者らの以前のrBC2LCNを用いる技術は、細胞表面の糖タンパク質又は糖脂質等が有する糖鎖を観察する点では従来技術の域を出ないものである。すなわち、これらの技術は、被検細胞を回収する工程、もしくはさらに精製工程を要する点も同様で、検出評価工程における工程の煩雑さ、有効細胞の浪費という従来からの問題点を解決するものではなかった。
そこで、本発明は、被検細胞を減らすことなく、非侵襲的に細胞の状態を調べる方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」に特異的なプローブとしてrBC2LCNをスライドグラス上に固定化した基板を作製し、当該基板を用いてES細胞及びiPS幹細胞の分化状態を評価する際に、細胞自身(破砕物)に代えて、培養上清との反応性も同時に評価検討してみた。
その結果、驚くべきことに、基板上のrBC2LCNは、被検細胞培地から採取してきた1滴の培養上清(1μL相当)を、何らの精製工程も施さない状態のまま基板表面のレクチン上に供給するだけで、分化状態が評価できることを見出した。具体的には、rBC2LCNは、コントロール培地やレチノイン酸存在下で培養して分化させたiPS細胞の培養上清とは反応しなかったのに対して、レチノイン酸非存在下で未分化状態を維持したiPS細胞の培養上清とは特異的に反応した。
以上の結果からみて、上記「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」の糖鎖構造を有する未分化糖鎖マーカーが、未分化細胞の培養上清には常に分泌されているのに対し、分化誘導により分化が進行するにつれ減少して、完全に分化すると当該未分化糖鎖マーカーは消失してしまうことを示すものである。
このことは、本願発明においてはじめて「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」糖鎖が培養上清中で観察可能な未分化糖鎖マーカーとして機能することを見出したのみならず、本発明によりはじめて培養上清中で観察可能な未分化糖鎖マーカーが提供されたことに相当する。なお、本発明者らの知る限り、培養下で未分化状態を維持したES細胞及びiPS幹細胞の細胞表面の糖タンパク質又は糖脂質等が培養液中に検出可能な状態で溶出し得ることを示す知見はこれまで存在していない。
すなわち、ES細胞、iPS細胞など未分化細胞を分化誘導する際の分化状態を評価する場合、又はこれら未分化細胞を未分化状態を維持したままで保存する際の保存状態の評価のためには、これら未分化細胞の培養上清を採取して、培養上清中の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」の存在・非存在を、当該糖鎖構造特異的なレクチン及び抗体などにより評価することが可能であることを示すものである。培養上清を用いる当該手法は、標的となる被検細胞自身を回収する工程も、特定の標的分子を精製する工程も不要な、きわめて簡便な技術であるといえる。特に、「BC2LCNレクチン」は、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」及び「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」のいずれの糖鎖構造も高感度で認識する特性を有しているため、当該レクチンを用いることで、より確実な未分化状態の評価システムを提供することができる。
以上の知見を得たことで本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
〔1〕 幹細胞の培養上清中の下記(式1)又は(式2)で表される未分化糖鎖マーカーの存在の有無又は存在量を測定することを特徴とする、幹細胞の分化状態を判別する方法;

(図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)
(図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)。
この方法によれば、細胞そのものではなく、細胞を培養している培養上清を用いて、細胞の分化状態を評価できる。
〔2〕 前記未分化糖鎖マーカーの有無又は存在量を、(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質を用いて測定することを特徴とする、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕 前記タンパク質が、下記のタンパク質である前記〔2〕に記載の方法;
配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、前記(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質。
〔4〕 前記幹細胞の培養上清が、当該幹細胞に対して分化誘導処理を施した後の培養上清であることを特徴とする、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 ポドカリキシンに由来する前記(式1)又は/及び(式2)で表される前記未分化糖鎖マーカーの存在の有無又は存在量を測定することを特徴とする、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 前記未分化糖鎖マーカーを、
前記(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識し、
配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、糖鎖を有さない、
タンパク質を用いたレクチン‐レクチンサンドイッチ法により検出することを特徴とする、前記〔1〕〜〔5〕記載の方法。
〔7〕 分化誘導処理を施した幹細胞の培養上清中の下記(式1)又は(式2)で表される未分化糖鎖マーカーが存在しないことを確認して採取することを特徴とする、未分化細胞の混入していない分化細胞の取得方法;
(図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)
(図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)。
〔8〕 前記未分化糖鎖マーカーが存在しないことの確認を、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、前記(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質を用いて行うことを特徴とする、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕 幹細胞の分化状態を判別する方法に用いるためのキットであって、下記(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質を含むことを特徴とするキット。
(図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)
(図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)。
〔10〕 前記タンパク質が、下記のタンパク質である前記〔9〕に記載のキット;
配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、前記(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質。
本発明に係る幹細胞の分化状態を判別する方法によれば、被検細胞の培養上清を直接レクチンなどの未分化糖鎖マーカー特異的なタンパク質と反応させることで、細胞を破壊することなく、非侵襲的に細胞の状態を評価することができる。従って、本発明は、特に未分化細胞の状態を簡便かつ効率的に判別することに用いることができるので、再生医療やバイオロジクスなどへの応用が期待できる。
レクチン‐レクチンサンドイッチ法の具体的手順の一例を説明するための図である。 未分化なES細胞(KhES1株)をCy3ラベルしたrBC2LCN及びTra1-60で染色した写真である(実施例1)。ネガティブコントロールとしては、Cy3ラベルしたBSAを反応させた。細胞の存在を確認するために、DAPIでの核染色をそれぞれ行った。 未分化なES細胞(KhES1株)及び分化誘導処理(レチノイン酸処理)を施したES細胞をCy3ラベルしたrBC2LCN及びTra1-60で染色した写真である(実施例2)。細胞の存在を確認するために、DAPIでの核染色をそれぞれ行った。 分化誘導処理(レチノイン酸処理)を施したiPS細胞(201B7株、253G1株)培養上清と、処理をしていない未分化状態のiPS細胞(201B7株、253G1株、TIGMKOS#19株)培養上清とのrBC2LCNに対する反応性の比較結果を示すグラフである(実施例3)。なお、コントロールとして培地のみの場合を測定。 未分化糖鎖マーカーをレクチン‐レクチンサンドイッチ法により検出した結果を示すグラフである(実施例4)。 未分化糖鎖マーカーをレクチン‐レクチンサンドイッチ法により検出するための検出用レクチン(オーバーレイレクチン)をスクリーニングした結果を示すグラフである(実施例5)。 未分化糖鎖マーカーをレクチン‐レクチンサンドイッチ法により検出した結果を示すグラフである(実施例6)。 レクチン‐レクチンサンドイッチ法における未分化細胞数の検量線を示すグラフである(実施例7)。 レクチン‐レクチンサンドイッチ法における未分化細胞数の検量線を示すグラフである(実施例7)。 レクチン‐レクチンサンドイッチ法における未分化細胞数の検量線を示すグラフである(実施例7)。 レクチン‐レクチンサンドイッチ法における未分化細胞数の検量線を示すグラフである(実施例7)。 未分化糖鎖マーカーを同定した結果を示す写真である(実施例8)。 rBC2LCNが認識する糖鎖構造を解析した結果を示すグラフである(実施例9)。
A.幹細胞の分化状態判別方法等
1.本発明の培養上清で測定可能な未分化糖鎖マーカー
本発明の培養上清で検出可能な未分化糖鎖マーカー(以下、単に「未分化糖鎖マーカー」ともいう)は、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」すなわち「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(Hタイプ1糖鎖)」又は「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(Hタイプ3糖鎖)」の糖鎖構造を有しており、ヒトES・iPS細胞の細胞表面に顕著に発現している、糖タンパク質及び糖脂質等の複合糖質である。なお、後述する実施例8では、この複合糖質の一つとしてポドカリキシン(podocalyxin)が同定されている。ポドカリキシンの糖鎖の構造には、「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(Hタイプ3糖鎖)」が含まれているものと予想された。
本発明では、これら2種類の糖鎖が、ES細胞、iPS細胞など未分化状態の細胞では、培養上清中に常に分泌されているが、分化した体細胞においては、培養上清中への分泌がないこと、すなわちこれらの糖鎖リガンドが未分化状態の場合においてのみ細胞上清中に分泌されることをはじめて見出した点に特徴を有する発明であり、これらの糖鎖リガンドは、「細胞上清中で測定可能な未分化糖鎖マーカー」として有用である。
「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」の糖鎖構造は、GlcNAcの4位の位置の水酸基は単糖(好ましくはフコース)又は分岐した若しくは分岐していないオリゴ糖鎖(好ましくは2〜5の糖からなる糖鎖)で置換されていてもよい。また、当該糖鎖構造は、未分化細胞の幹細胞表面では、膜構成成分として、GlcNAcの1位の位置で糖タンパク質、糖脂質又は糖類などの非還元末端に結合している糖鎖であるから、未分化状態の幹細胞の培養上清中に分泌されている糖鎖構造としても、GlcNAcの1位の位置で、OH基、又は他の糖類、タンパク質、若しくは脂質、若しくはその他の分子の非還元末端が結合している。すなわち、下記(式1)として表すことができる。
(図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖、例えば、4αFuc基を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくはその他の分子を表す。)
同様に、「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」の糖鎖構造は、GalNAcの1位の位置の水酸基は分岐した若しくは分岐していないオリゴ糖鎖(好ましくは2〜5の糖からなる糖鎖)で置換されていてもよい。また、当該糖鎖構造は、未分化細胞の幹細胞表面では、膜構成成分として、GalNAcの1位の位置で糖タンパク質、糖脂質又は糖類などの非還元末端に結合している糖鎖であるから、未分化状態の幹細胞の培養上清中に分泌されている糖鎖構造としても、GalNAcの1位の位置で、OH基、又は他の糖類、タンパク質、若しくは脂質、若しくはその他の分子の非還元末端が結合している。すなわち、下記(式2)として表すことができる。
(図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖、例えば、Galβ1-4Glc基を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくはその他の分子を表す。)
2.本発明の「未分化糖鎖マーカー」の検出用プローブ
本発明の培養上清中の未分化糖鎖マーカーの「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(式1)」又は「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(式2)」の検出用プローブとしては、一般にタンパク質プローブが用いられ、当該未分化糖鎖マーカーと特異的に結合するタンパク質であればどのようなものでも用いることができる。典型的には、本発明者らが見出した前記(式1)及び(式2)の両糖鎖構造を認識するレクチンであるBC2LCN又はその改変体が好ましく用いられるが(式1)又は(式2)のいずれかを認識するレクチンであっても用いることができる。
また、レクチンのみならず未分化糖鎖マーカーを認識できる抗体若しくはそのフラグメント、又はTCR若しくはそのフラグメントなど他のタンパク質であれば用いることができる。具体的には、Drukkerらの「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(Hタイプ1糖鎖)」抗体(非特許文献2)などを例示することができる。
後述するが、本発明の「未分化糖鎖マーカー」の検出用プローブを固定化した基板と共に、当該基板表面と幹細胞の培養上清とを接触させる手段、及び基板に固定化した上記検出用プローブもしくは培養上清を標識化する手段とをセットとすることで、幹細胞の分化状態の判別用キットとすることができる。特に、「未分化糖鎖マーカー」として、BC2LCN又はその改変体を用いた場合は、きわめて高感度に幹細胞の分化状態を判定することができるキットとなる。
ここで、「基板」というとき、スライドグラスなど平坦な形状のものには限られず、ELISAプレート、磁気ビーズ、フィルターなど、通常のタンパク質固定化法が適用できる任意の形状、材質の基材が含まれる。「基板材料」として、好ましくは通常のマイクロアレイで使用される物質であり、シリコンウエハー、ガラス、ポリカーボネート、膜、ポリスチレンまたはポリウレタンのような高分子フィルム及び多孔性物質が用いられる。
3.rBC2LCNについて
上記2.で述べたように、本発明において、未分化糖鎖マーカー(Hタイプ1糖鎖及び/又はHタイプ3糖鎖)、すなわち、(式1)又は(式2)の糖鎖構造を検出するためのプローブとしては、これらの糖鎖構造に結合特異性を示すタンパク質は全て使用することが可能であるが、これらタンパク質の中で最も好ましいレクチンは、本発明者らが以前見出した「rBC2LCN」であるので、以下「rBC2LCN」について説明する。
本発明において「rBC2LCN」というとき、グラム陰性細菌(Burkholderia cenocepacia)から見つかったレクチンを大腸菌で発現させた組換え体のことを指すが、このレクチンはBC2L-Cと呼ばれるタンパク質のN末端ドメイン(GenBank/NCBI-GI登録番号:YP_002232818)に相当する(非特許文献3)。rBC2LCNはTNF様タンパク質に構造類似性を示し、3量体を形成することが知られている。糖鎖アレイを用いた解析から、このレクチンは「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc(Hタイプ1糖鎖)」、「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(Hタイプ3糖鎖)」と共に、Hタイプ1又はHタイプ3糖鎖を含有する糖鎖構造である、「Lewis b糖鎖 (Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc)」、「Globo H糖鎖(Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-3Galα1-4Galβ1-4Glc)」に対しても結合特異性を示すことが明らかになっている。
rBC2LCNは、糖鎖を含まないので、形質転換細菌によっても大量生産可能である。具体的には、GenBank/NCBI-GI登録番号:YP_002232818(Genome ID:206562055)のアミノ酸配列(配列番号1)をコードするBC2LCN遺伝子を用い、適宜宿主に対して最適化した後、形質転換した大腸菌から発現させ、通常のタンパク質精製手段により精製することができる。
その際、BC2LCNとしては、配列番号1に対応する全長は必要とせず、また配列番号1において部分的に一部のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加されている場合であっても、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」、すなわち(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識する特性を維持していればよい。
具体的には、本発明のBC2LCN又はその改変体は、例えば、以下のように表現することができる。
「配列番号1に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc」又は「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc」の糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質。」
また、前記(式1)及び(式2)を用いて糖鎖構造を表せば、「配列番号1に示されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質。」と表現できる。
なお、ここで、数個とは20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下の自然数を表す。
4.本発明の「未分化糖鎖マーカー」の検出、測定
(1)培養上清の採取方法
本発明では、未分化状態の幹細胞又は分化誘導後の細胞の培養上清をマイクロピペットなどで一定量採取し、本発明の未分化糖鎖マーカーに特異的に結合するタンパク質との反応性を解析する。培養液は一般に一定期間(約1日)毎に新鮮な培養液と交換する。このため、未分化糖鎖マーカーの検出は、未分化糖鎖マーカーが未分化細胞又は分化が不十分な細胞から交換後の培養液中に検出可能な量分泌された後に行う。培養液交換後、培養液中に検出可能な量の未分化糖鎖マーカーが溶出されるまでに要する時間は、細胞の種類や培養条件によって異なり得る。従って、培養液交換後、未分化糖鎖マーカーの検出に用いる培養上清を採取するまでの時間は、細胞の種類や培養条件によって適宜設定され得るが、例えば18〜30時間程度とされる。通常は24時間程度毎に培地交換を行うので、その際に廃棄する培養上清を利用することが好ましい。
このような解析方法によれば、未分化状態の幹細胞を分化誘導した際に、細胞上清中から上記未分化糖鎖マーカーが検出されなくなった(バックグラウンド値と同レベルになった)ウエル、シャーレ、又はフラスコ内の細胞中には、もはや未分化細胞が混入していない分化細胞のみからなる細胞群であると評価できるから、ウエル、シャーレ又はフラスコ単位で未分化細胞の混入のおそれのない分化細胞を大量かつ迅速に取得できる。
ここで、幹細胞を神経細胞、消化器系細胞などに「分化誘導」する方法としては、どのような手法であってもよく、例えば幹細胞をレチノイン酸存在下で培養して神経系細胞に分化する方法、増殖をストップさせたNIH3T3細胞表面を土台として表皮細胞を形成させる方法など種々の公知の手法が適用できる。本発明の未分化糖鎖マーカーの分化した細胞表面での発現量は無視できる程度であるから、どの分化誘導条件下でもノイズが極めて少ないことが予想される。
また、未分化状態を維持しておきたい幹細胞の品質管理のためには、定期的にもしくは必要に応じて培養上清を採取して、又は培地交換の際に廃棄する培養上清を用いて、本発明の未分化糖鎖マーカー量を測定すれば、保存中の全ての細胞が未分化状態に維持されているかどうかを確認することができる。例えば、典型的な幹細胞の未分化状態維持培養方法として、マウス繊維芽細胞などのフィーダー細胞表面で培養する方法があるが、少なくとも1日1回は培養上清を取り去り新鮮な培地と交換する。その取り去って廃棄する培養上清を用いて分化/未分化判定を行うことができる。
ここで、培養上清を一定量採取する手段としては、手作業でも良いが、自動培養装置などにより自動的に機械的に採取することが確実であり、特に、分化誘導後に未分化細胞の混入のない分化した細胞群のみをできるだけ早く得ようとする場合には、一定時間間隔で採取し解析することにより、確実に分化した細胞群のみを速やかに取得できる。
(2)本発明の「未分化糖鎖マーカー」の解析方法
本発明の未分化糖鎖マーカーと特異的に結合するタンパク質であるレクチンや抗体等を標識化して、培養上清中に直接添加して標識の強さを計測することもできるが、好ましくはレクチンや抗体等を基板上に固定化して、培養上清を「Cy3-NHS ester」(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)などで蛍光標識し、ELISA法やエバネッセント波励起蛍光型スキャナーを用いる方法等により検出、測定する。
幹細胞の培養液から採取した培養上清は、精製工程を経ることなくそのまま、もしくは希釈して、又は予め抗体やレクチン等で濃縮して検出工程に供する。本発明者らが以前に開発した基板上に固定化したレクチン表面に接触させ、エバネッセント波励起蛍光型スキャナーを用いる方法の他、共焦点型スキャナー、蛍光プレートリーダー等を用いて検出できる。固定化された抗体も同様な方法が適用できる。
しかし、当該方法に限定されることはなく、ELISA、表面プラズモン共鳴センサ、平衡透析法、滴定カロリメトリー、水晶発振子センサ検出法などの方法によっても結合活性の測定をすることができる。また、通常の競合法や、後記する「レクチン−レクチンサンドイッチ法」によっても、本発明に係る未分化糖鎖マーカーの測定をすることができる。「レクチン−レクチンサンドイッチ法」を用いた場合には、培養上清中の未分化糖鎖マーカーを定量性良く測定できるので、より精度よく分化の完了(未分化細胞がなくなったこと)を判定できる。
分化誘導後の培養上清に対して、上記解析を施し、未分化細胞が混入していないことを確認した後、当該ウエル、シャーレ、又はフラスコ内の細胞を分収することにより、分化細胞を取得することができる。反対に、未分化維持状態に保持した状態の幹細胞保存方法において、培地交換時の廃棄用培養上清に対して上記解析方法を適用することで、幹細胞の品質保持状態を確認することができる。
(3)本発明の「未分化糖鎖マーカー」を解析することによる、幹細胞の分化状態の判別用キット又は装置
本発明の未分化糖鎖マーカーの検出用プローブ、好ましくはBC2LCN又はその改変体を、下記(1)〜(3)の手段と共にキット又は装置とすれば、未分化糖鎖マーカーの解析が可能なキット、又は装置となるから、幹細胞の分化状態の判別用キット又は装置とすることができる。なお、本発明の未分化糖鎖マーカーの検出用プローブは基板表面に固定化して用いることが好ましい。
(1)幹細胞の培養上清と接触させる手段;ただし、当該手段は手作業でも可能なので必須ではない。
(2)検出用プローブ若しくは培養上清を蛍光標識するための蛍光標識;ここで、「培養上清を蛍光標識する」というとき、培養上清中での検出対象である本発明の未分化糖鎖マーカーすなわち、「(式1)もしくは(式2)で表される糖鎖構造又は当該糖鎖構造含有物質」を蛍光標識することができる蛍光物質(例えば、「Cy3-NHS ester」)を意味する。
(3)蛍光標識を検出するための手段又は装置。
本発明の未分化糖鎖マーカーの検出用プローブを固定化した基板と共に、基板表面に固定化したタンパク質又は培養上清を標識化する手段とをセットとすることで、幹細胞の分化状態の判別用キットとすることができる。好ましくは当該基板表面に幹細胞の培養上清を接触させる手段若しくは装置をセットしてもよく、さらに蛍光標識を検出するための手段もしくは装置をセットにすることもできる。特に、未分化糖鎖マーカーとして、BC2LCN又はその改変体を用いた場合は、きわめて高感度に幹細胞の分化状態を判定することができるキットとなる。
(4)rBC2LCNを用いた未分化糖鎖マーカーの測定手順
以下、本発明の典型的なレクチンであるrBC2LCNを用いた場合について主に述べるが、本発明はrBC2LCNのみに限定されないことは上記したとおりである。
(ア)rBC2LCNをスライドグラス上に固定化した基板に対し、「Cy3-NHS ester」などでラベル化した培養上清を直接反応させて、エバネッセント波励起蛍光検出系で、その結合を測定する。この場合、培養上清は予め物理的もしくは化学的に濃縮してから解析に用いることもある。
(イ)また、rBC2LCNをELISAプレート、磁気ビーズ、フィルターなどの基板に固定化したものに対して予め酵素、蛍光、ビオチンなどでラベル化した培養上清を反応させて、その結合を発色、発光、蛍光などで検出することも可能である。あるいは、培養上清反応後、rBC2LCNに結合しているタンパク質に結合するラベル化した抗体やレクチンを、上から反応させることもできる。特に、rBC2LCNに結合しているタンパク質に結合するレクチンを用いた「レクチン‐レクチンサンドイッチ法」(詳しくは後述)を用いることで、より高感度な測定が可能となる。
(ウ)本発明の内未分化糖鎖マーカーに対する抗体やレクチンを固定化したものに培養上清を反応させて、予め酵素、ビオチン、蛍光などでラベル化したrBC2LCNを反応させることも可能である。rBC2LCNは、常法により蛍光や酵素、ビオチン等でラベル化して、蛍光染色、フローサイトメトリー、ELISA、レクチンブロッティングなどの公知の方法で検出する。rBC2LCNをラベル化する際に、アミノ酸配列中の任意の部位に蛍光標識アミノ酸を導入する公知の芳坂らの方法(非特許文献6参照)又は、一般的なFluorescence Resonance Energy Transfer(FRET)法やパーキンエルマー社の化学増幅型ルミネッセンス プロキシミティホモジニアスアッセイ法(http://www.perkinelmer.co.jp/products_ls/assays/assays_0010.html)を用いれば、rBC2LCNの糖鎖結合ドメインの特定の部位に蛍光標識アミノ酸を導入した変異体を作製することができるから当該rBC2LCN変異体を細胞の培養上清と混合するだけで、細胞の分化度を評価することができる。
(エ)rBC2LCNの場合は極めて感度がよいので、rBC2LCNを固定した基板に対して、培養上清を反応させる場合、本発明の未分化糖鎖マーカー「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」量は、ピコモル(pM)又はナノモル(nM)レベルでも存在、非存在を判別可能なため、分化誘導中の培養液の培養上清の1部の0.1〜10μl程度を採取して測定することも可能である。一般には、定期的(例えば1日ごと)に行う培地交換の際に、廃棄する培養上清を利用して測定することが好ましい。
(オ)分化誘導を施した細胞の分化程度を判定する際のコントロールとしては、通常、同一組成の培地のみの測定値を用いるが、正確に定量する場合は、分化誘導を施さない細胞の培養上清での値をコントロールとして用いることが好ましい。
5.対象となる被検細胞について
本明細書において、対象となる被検細胞は、未分化状態にある「幹細胞」、又は当該細胞を分化誘導して種々の組織特異的に分化した細胞である。その際の「幹細胞」とは、未分化状態にある細胞を広く意味し、例えば、多能性幹細胞(胚性幹細胞:ES細胞)、造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚組織幹細胞等の様々な体性幹細胞の他、体細胞に幹細胞特異的発現遺伝子などを導入して脱分化させた幹細胞(iPS細胞)も包まれる。また、ES細胞をはじめとする幹細胞はヒトに限らず哺乳動物ではかなりの部分で共通したしくみで制御されていると考えられるので、本発明の幹細胞としてはヒト以外の哺乳動物、例えばサル、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラット由来の幹細胞を用いる場合にも適用できる。
B.糖鎖を有する検出対象物質の検出方法
[概要]
次に、本発明に係る糖鎖を有する検出対象物質の検出方法について説明する。
疾患への罹患あるいは疾患の進展などに伴って生体試料中に検出されるタンパク質を疾患マーカーとして用いる試みがなされてきている。血液、尿及び唾液等の生体試料中に出現する疾患マーカーを検出することで、罹患の有無あるいは進展の程度などを非侵襲的に判定することができ、疾患の早期診断、治療効果の評価及び予後の診断等に役立てることができる。これまでに、種々の癌において、ムチン等の糖タンパク質が特異的に検出されることが報告されている。また、癌の種類に応じて特定の糖タンパク質の糖鎖構造が変化することも報告されている。
従来、糖タンパク質を含むタンパク質を特異的に検出するための手法として、タンパク質を2種類の抗体を用いて挟み込んで検出する「抗体−抗体サンドイッチ法」が知られている。抗体−抗体サンドイッチ法では、まず、目的タンパク質に結合する第一の抗体(捕捉用抗体)を用いて試料中から目的タンパク質を特異的に分離する。次に、「捕捉用抗体−目的タンパク質」の複合体に、目的タンパク質に結合する第二の抗体(検出用抗体)を接触させて、「捕捉用抗体−目的タンパク質−検出用抗体」の複合体を形成させる。検出用抗体には蛍光等で標識された抗体が用いられ、蛍光等の検出によって試料中の上記複合体を検出することによって目的タンパク質の検出が行われる。抗体−抗体サンドイッチ法では、同一抗原に対する2種類の抗体を用いることで、目的タンパク質を特異性高く、かつ高感度に検出することが可能である。
一般に糖鎖は抗原性が低いため、特定の糖鎖構造を有するタンパク質のみに結合する抗体を得ることは難しい。このため、抗体−抗体サンドイッチ法には、糖タンパク質の糖鎖の検出系の構築には適さないという問題がある。また、抗体−抗体サンドイッチ法を実施するためには、目的タンパク質に特異的に結合する抗体を得る必要があるが、そのためには、まず目的タンパク質の精製物が得られていなくてはならない。
上記課題を解決するため、本発明は、以下に記載する、糖鎖を有する検出対象物質を検出するための方法(以下、「レクチン−レクチンサンドイッチ法」とも称する)及びキットを提供する。
〔1〕 糖鎖を有する検出対象物質と前記糖鎖に対して結合性を有するレクチン1及びレクチン2とを接触させて、前記レクチン1と前記検出対象物質と前記レクチン2とから構成される複合体を形成させ、該複合体を検出することにより行う前記検出対象物質の検出方法であって、前記レクチン1及び前記レクチン2の少なくとも一方は、糖鎖を有さないレクチンである検出方法。
〔2〕 前記検出対象物質が、糖蛋白質、糖脂質、プロテオグリカン、グリコペプチド、リポ多糖、ペプチドグリカン、及びステロイド化合物に糖鎖が結合した配糖体からなる群より選択される複合糖質である上記〔1〕記載の検出方法。
〔3〕 前記レクチン1と前記レクチン2が、互いに異なる糖鎖構造に対する結合性を有するものである上記〔1〕又は〔2〕記載の検出方法。
〔4〕 前記糖鎖を有さないレクチンが、原核細胞で発現した組換型レクチン、又は天然型タンパク質の糖鎖構造を改変して得た改変型レクチンである上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の検出方法。
〔5〕 前記検出対象物質と、不溶性担体に結合した、糖鎖を有さない前記レクチン1と、不溶性担体に結合していない前記レクチン2と、を接触させて前記複合体を形成させ、該複合体を検出することにより行う上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の検出方法。
〔6〕 前記検出対象物質と、不溶性担体に結合した、糖鎖を有さない前記レクチン1とを接触させて、前記レクチン1と前記検出対象物質とから構成される複合体1を得る第一手順と、前記複合体1と、前記レクチン2とを接触させて、前記レクチン1と前記検出対象物質と前記レクチン2とから構成される複合体2を得る第二手順と、を含む上記〔5〕記載の検出方法。
〔7〕 前記レクチン1と前記レクチン2の両方が糖鎖を有さないレクチンである上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の検出方法。
〔8〕 糖鎖を有する検出対象物質の検出に用いられるキットであって、前記糖鎖に対して結合性を有するレクチン1及びレクチン2を含み、前記レクチン1及び前記レクチン2の少なくとも一方は糖鎖を有さないレクチンであるキット。
〔9〕 不溶性担体と、前記不溶性担体に結合した、糖鎖を有さない前記レクチン1と、前記不溶性担体に結合していないレクチン2と、を含む上記〔8〕記載のキット。
〔10〕 前記レクチン1と前記レクチン2の両方が糖鎖を有さないレクチンである上記〔8〕又は〔9〕記載のキット。
ここで、本発明に係るレクチン−レクチンサンドイッチ法等で用いる用語について説明する。
「糖鎖」とは、単糖が、グリコシド結合によって、鎖状(直鎖あるいは樹状に分枝した分岐鎖)につながった構造を有する一群の化合物を意味する。糖鎖を構成する単糖としては、グルコース,ガラクトース,マンノース等のヘキソース;L−フコース等のデオキシヘキソース;N−アセチルグルコサミン,N−アセチルガラクトサミン等のヘキソサミン;N−アセチルノイラミン酸,N−グリコリルノイラミン酸等のシアル酸;キシロ−ス,L−アラビノース等のペントース等が挙げられる。「糖鎖」を構成する単糖の数は、特に限定されず、2〜数万程度である。
「レクチン」とは、糖蛋白質、糖脂質、プロテオグリカン、グリコペプチド、リポ多糖、ペプチドグリカン、及びステロイド化合物等の配糖体などの複合糖質に結合した糖鎖の部分構造あるいは全体構造を認識し、結合するタンパク質を意味する。
[レクチン−レクチンサンドイッチ法]
以下、本発明に係るレクチン−レクチンサンドイッチ法について説明する。レクチン−レクチンサンドイッチ法は、「複合体形成手順」と「検出手順」とを含む。「複合体形成手順」は、糖鎖を有する検出対象物質と前記糖鎖に対して結合性を有するレクチン1及びレクチン2とを接触させて、レクチン1と検出対象物質とレクチン2とから構成される複合体(「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体)を形成させる手順である。また、「検出手順」は、複合体形成手順で形成した「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体を検出することにより、検出対象物質の検出を行う手順である。
本発明に係るレクチン−レクチンサンドイッチ法において、「検出対象物質」は、糖鎖を有する物質(以下、「複合糖質」とも称する)であればよく、具体的には糖蛋白質、糖脂質、プロテオグリカン、グリコペプチド、リポ多糖、ペプチドグリカン、及びステロイド化合物等に糖鎖が結合した配糖体などとされる。
また、本発明に係るレクチン−レクチンサンドイッチ法において、検出対象物質を含み得る「試料」としては、例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、リンパ、髄液、胸水、腹水、涙液等の生体由来材料が挙げられるが、これらに限定されない。
[レクチン1,レクチン2]
複合体形成手順に用いるレクチン1及びレクチン2はいずれも検出対象物質が有する糖鎖の部分構造あるいは全体構造を認識し、結合するもの(結合性を有するもの)である。レクチン1が認識する糖鎖構造及びレクチン2が認識する糖鎖構造は、同一であってよいが、互いに異なっていることが好ましい。異なる糖鎖構造に結合するレクチン1及びレクチン2を用いることで、検出対象物質の検出特異性をより高めることができる。
レクチン1は、単一のレクチンであってよく、あるいは複数種のレクチンの混合物であってもよい。レクチン2も同様である。また、レクチン1として複数種のレクチンの混合物を用いる場合、混合物中に含まれるレクチンが認識する糖鎖構造は、同一であっても異なっていてもよい。レクチン2についても同様である。
ここで、元来レクチンはそれ自身糖鎖を有するものであるが、本手順では、レクチン1及びレクチン2の少なくとも一方に、糖鎖を有さないレクチンを用いる。より好ましくは、レクチン1とレクチン2の両方に糖鎖を有さないレクチンが用いられる。
本発明者らの検討の結果、レクチン1及びレクチン2として糖鎖を有するレクチンを用いた場合には、「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体を検出する際にバックグランドが高くなり、高感度な検出ができないことが明らかとなった。バックグランドの上昇の要因として、本発明者らは、レクチン1及びレクチン2として糖鎖を有するレクチンを用いた場合に、レクチン1同士が互いの糖鎖に結合してなる複合体、レクチン2同士が互いの糖鎖に結合してなる複合体、又はレクチン1とレクチン2が互いの糖鎖に結合してなる複合体が生成している可能性を想定した。そして、本発明者らは、レクチン1及び/又はレクチン2として糖鎖を有さないレクチンを用いてこれらの複合体の生成を抑制することを試み、これによって「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体を感度よく検出できることを見出した。
すなわち、レクチン1及びレクチン2の両方に糖鎖を有さないレクチンを用いることで、レクチン1同士の複合体、レクチン2同士の複合体、及びレクチン1とレクチン2の複合体の生成をなくして、「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体のみを高感度に検出することができることが明らかとなった。また、レクチン1及びレクチン2の一方に糖鎖を有さないレクチンを用いることによっても、レクチン1同士の複合体、レクチン2同士の複合体、及びレクチン1とレクチン2の複合体の生成を抑制して、「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体を感度よく検出できる。
なお、ここで、「糖鎖を有さないレクチン」には、糖鎖の修飾が全くないレクチンに加えて、糖鎖を介したレクチン同士の結合を引き起こし得る糖鎖を有さないレクチンが包含されるものとする。より具体的には、「糖鎖を有さないレクチン1」には、レクチン1が認識する糖鎖構造を有する糖鎖及び/又はレクチン2が認識する糖鎖構造を有する糖鎖が修飾されていないレクチンであれば使用可能である。レクチン1が糖鎖を有していても、該糖鎖中にレクチン1及び/又はレクチン2が認識する糖鎖構造が含まれない場合には、レクチン1同士の複合体及び/又はレクチン1とレクチン2の複合体が生成しないためである。同様に、「糖鎖を有さないレクチン2」には、レクチン1が認識する糖鎖構造を有する糖鎖及び/又はレクチン2が認識する糖鎖構造を有する糖鎖が修飾されていないレクチンであれば使用できる。
糖鎖を有さないレクチンとして、具体的には、原核細胞で発現した組換型レクチン、又は天然型タンパク質の糖鎖構造を改変して得た改変型レクチンが挙げられる。
[組換型レクチン]
原核細胞は、細胞内で合成したタンパク質に糖鎖を修飾する膜系構造を有さないため、原核細胞を宿主細胞として発現した組換型レクチン(リコンビナントレクチン)は、糖鎖を有さない。以下に説明するように、組換型レクチンは、一般的な遺伝子工学的手法を用いて簡便かつ低コストに大量生産が可能である。
組換型レクチンの製造方法の一例を説明すれば、まず、目的の糖鎖構造に対して結合性を有するレクチンのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む塩基配列を、常法に従って適当な発現用ベクターに組み込み、発現用組み換えベクターを得る。発現用ベクターには、目的の糖鎖構造に対して結合性を有するレクチンのアミノ酸配列のうち糖鎖構造結合部分のアミノ酸配列をコードする塩基配列のみを含む塩基配列を組み込んでもよい。
発現ベクターは、各種の宿主細胞中でリコンビナントレクチンを発現し、リコンビナントレクチンを産生する機能を有するものであれば特に制限されない。発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター,ファージベクター及びウイルスベクターが挙げられる。具体的には、例えば、pTrcHis2ベクター、pcDNA3.1/myc-Hisベクター(Invitrogen社製)、pUC119(宝酒造社製)、pBR322(宝酒造社製)、pBluescript II KS+ Stratagene社製)、Pqe-tri(Qiagen社製)、pET、pGEM-3Z、pGEX、pMAL等のプラスミドベクター、λENBL3(Stratagene社製)、λDASHII(フナコシ社製)等のバクテリオファージベクター、Charomid DNA(和光純薬工業(株)製)、Lorist6(和光純薬工業(株)製)等のコスミドベクター等が挙げられる。また、大腸菌由来のプラスミド(例えばpTrc99A,pKK223,pET3a)、λファージ等のバクテリオファージ等の他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNA I/Neo、p3×FLAG-CMV-14、pCAT3、pcDNA3.1、pCMV等も挙げられる。
リコンビナントレクチンの検出や精製を容易にするために、レクチンは、タグペプチドや他のタンパク質との融合蛋白として発現させても良い。融合させるタグペプチドとしてはFLAGタグ,3XFLAGタグ,Hisタグ(His tag、例えば6×Hisタグ)等が挙げられる。
次いで、得られた発現用組み換えベクターを用いて、適当な宿主細胞を形質転換(形質導入)することにより、形質転換体を調製する。宿主細胞には、リコンビナントタンパクを糖鎖修飾なく発現、産生する細胞が用いられる。宿主細胞としては、例えば原核生物、具体的には大腸菌(Escherichia coli.)やバチルス属菌(B. subtilis, B. brevis, B. borstelenis等)などが挙げられる。大腸菌としては、例えば、BL21, BL21(DE3), K-12, DH1, DH5,
DH5α, M15,HB101, C600, XL-1 Blue, JM109, JM105, JM127, XL1-Blue, VCS257, TOP10などを使用できる。また、よりプラスミドやファージDNAの導入効率の高い、コンピテントセル(Competent Cell)を用いても良い。コンピテントセルとしては、例えば、E. coli DH5α Competent Cell、E. coli
JM109 Competent Cells(タカラバイオ社製)等が挙げられる。
発現用組み換えベクターによる宿主細胞の形質転換は、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば宿主細胞が大腸菌の場合は、Cohenらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A., (1972) 9,2110参照)、プロトプラスト法(Mol.Gen. Genet., (1979) 168,111参照)又はコンピテント法(J.Mol.Biol., (1971) 56, 209参照)、M.Morrisonの方法(Method in Enzymology,
68, 326-331,1979参照)等により行うことができる。また、市販のCompetent Cellを用いる場合には、その製品プロトコールに従って形質転換を行えばよい。
形質転換体(形質導入体)が、リコンビナントレクチンを発現、産生していることを確認するためには、例えば、プローブを用いたサザンハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等のハイブリダイゼーションによる常法を適用できる。また、以下の方法も採用できる。
リコンビナントレクチンが、例えば膜貫通型蛋白として発現した場合等、形質転換体の培養液中に分泌されてこない場合には、細胞を破壊又は溶解する常法(例えば超音波処理する、ホモジナイザー等で処理する、適当な界面活性剤等の膜溶解剤で処理する等)にて、得られた形質転換体を処理し、そのライセートを得る。そして、ライセートについて、必要であればさらにタンパク質を精製した後、例えばタグペプチドに対する抗体を用いた通常の免疫学的測定法(ドットウェスタンブロッティング法、ウェスタンブロッティング法等)を行い、ライセート中にタグペプチドが発現していることを確認する。
また、リコンビナントレクチンが形質転換体の培養液中に分泌されてくる場合には、培養液(培養上清)について、上記ライセートについて行う場合と同様の確認手順を行う。
形質転換体を、栄養培地中で培養して、リコンビナントレクチンを生成させる。培養は従来公知の方法により行われ、温度、培地のpH及び培養時間も適宜設定され得る。宿主細胞が大腸菌である形質転換体を培養する場合は、大腸菌を培養する常法の条件で、通常用いられる液体培地で行えばよい。
リコンビナントレクチンは、培養により得られる培養物から、以下のようにして取得できる。すなわち、リコンビナントレクチンが形質転換体のペリプラズムまたは細胞質内に存在する場合は、濾過または遠心分離などの方法によって培養物から菌体あるいは細胞を回収し、適当な緩衝液に再懸濁する。そして、例えば界面活性剤処理、超音波処理、リゾチーム処理、凍結融解などの方法で、回収された細胞等の細胞壁及び/又は細胞膜を破壊した後、遠心分離や濾過などの方法でリコンビナントレクチンを含有する粗抽出液を得る。リコンビナントレクチンが形質転換体の培養液中に分泌されてくる場合には、培養液(培養上清)を得る。そして、一般に用いられる方法に従って、糖類(糖鎖)の混入がないように、粗抽出液又は培養液(培養上清)からリコンビナントレクチンを単離、精製する。
リコンビナントレクチンの単離、精製方法としては、例えば塩析、溶媒沈殿法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動など分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられる。精製されたリコンビナントレクチンは、例えば抗His抗体を用いたELISA等により確認することができる。
[改変型レクチン]
改変型レクチンは、天然型レクチンを酸あるいは糖分解酵素で処理することによって得ることができる。
過ヨウ素酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸により天然型レクチンを処理することで、糖鎖の水酸基を酸化して、糖鎖の全体構造あるいは糖鎖中の部分構造を変化させることができる。また、アルカリ処理によるβ分解により糖鎖構造を除去することもできる。これにより、天然型レクチンの糖鎖中に存在する、該天然型レクチンが認識しる糖鎖構造あるいは他のレクチンが認識する糖鎖構造を改変して、該天然型レクチンを、糖鎖を介したレクチン同士の結合を引き起こさない改変型レクチンに変換できる。なお、酸処理は、従来公知の手法によって行えばよい(後述する実施例11も参照)。
また、グリカナーゼ(N−グリカナーゼ、O―グリカナーゼ等)、マンノシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ケラタナーゼ、コンドロイチナーゼ、シアリダーゼ、フコシダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、N−アセチルヘキソサミニダーゼ等の糖分解酵素により天然型レクチンを処理することで、天然型レクチンから糖鎖を除去できる。あるいは、糖分解酵素処理により、天然型レクチンの糖鎖を切断して、糖鎖の全体構造あるいは糖鎖中の部分構造を変化させることができる。これらにより、天然型レクチンの糖鎖中に存在する、該天然型レクチンが認識する糖鎖構造あるいは他のレクチンが認識する糖鎖構造を改変して、該天然型レクチンを、糖鎖を介したレクチン同士の結合を引き起こさない改変型レクチンに変換できる。なお、酵素処理は、従来公知の手法によって行えばよい(後述する実施例11も参照)。
なお、酸処理、アルカリ処理又は糖分解酵素処理によって得た改変型レクチンでは、タンパク変性によって、糖鎖に対する結合性が喪失したり弱まったりする場合がある。そのため、複合体形成手順に用いるレクチン1及びレクチン2には、上述の組換型レクチンを用いることがより好ましい。組換型レクチンは、簡便かつ低コストに大量生産が可能であることからも好ましい。
[複合体形成手順]
複合体形成手順において、検出対象物質とレクチン1及びレクチン2とを接触させる際、レクチン1とレクチン2は、同時に試料と反応させても良いし、順次に反応させてもよい。また、複合体形成手順は、不溶性担体を用いてB/F分離を行うヘテロジニアスな方法で行ってもよく、B/F分離を行わないホモジニアスな方法で行ってもよい。
試料と反応させるレクチン1及びレクチン2の量(濃度)は、検出対象物質の種類、必要な測定感度、測定方法や測定装置などに応じて適宜設定される。
不溶性担体を用いてB/F分離を行う方法は、例えば不溶性担体に結合したレクチン1と、不溶性担体に結合していない遊離のレクチン2と、検出対象物質とを接触させて複合体を形成させることにより行われる。より具体的には、B/F分離を行う方法は、検出対象物質と、不溶性担体に結合したレクチン1とを接触させて、レクチン1と検出対象物質とから構成される複合体1を得る第一手順と、複合体1と遊離のレクチン2とを接触させて、レクチン1と検出対象物質とレクチン2とから構成される複合体2を得る第二手順と、によって行われる。
この際、不溶性担体に結合しているレクチン1には、糖鎖を有さないレクチンを用いることが好ましく、レクチン1及びレクチン2の両方に糖鎖を有さないレクチンを用いることがより好ましい。なお、ここでは、レクチン1を不溶性担体に結合させる例を説明したが、レクチン2を不溶性担体に結合することも当然に可能であり、この場合、好ましくはレクチン2に、より好ましくはレクチン2及びレクチン1の両方に糖鎖を有さないレクチンが用いられる。
B/F分離のための不溶性担体には、スライドグラス、ELISAプレート、磁気ビーズ、フィルター、フィルム、メンブレンなど、通常のタンパク質固定化法に用いられる基材を使用できる。基材の材料には、通常、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリスチレン又はポリウレタンなどが用いられる。
レクチンを不溶性担体に固定化させる方法は、特に限定されず、化学的結合法(共有結合により固定化する方法)、物理的に吸着させる方法などの公知の方法を適用できる。アビジン-ビオチン反応のような非常に強固な結合反応を利用してレクチンを不溶性担体に固定化することも可能である。この場合、レクチンにビオチンを結合したビオチン化レクチンを、ストレプトアミジンをコーティングしたストレプトアミジンプレートに固定化すればよい。また、この分野で通常使用される各種リンカーを介して、レクチンを不溶性担体に固定化させてもよい。
不溶性担体を用いてB/F分離を行う方法では、試料と不溶性担体に固定化されたレクチン1とを反応させる第一手順の後、複合体1(不溶性担体−レクチン1−検出対象物質)と遊離のレクチン2とを反応させる第二手順を行う前に、固相表面上から不要な物質を除去するための洗浄手順を含んでもよい。また、第二手順の後、検出手順を行う前にも、洗浄手順を含んでもよい。洗浄手順によって、固相表面上から試料中の夾雑物や未反応のレクチン2を除去し、複合体2(不溶性担体−レクチン1−検出対象物質−レクチン2)のみを固相表面上に分離できる。
B/F分離を行わない方法では、レクチン1と検出対象物質とレクチン2との複合体を分離するための方法として、例えばクロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法、電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、キャピラリーチップ電気泳動法、例えばLiBASys(島津製作所(株)製)等の自動免疫分析装置を用いた方法等を適用できる。具体的な条件は、試料、検出対象物質、レクチン1及びレクチン2の種類や性状に応じて適宜設定される。例えばHPLCを用いて分離する場合、Anal.Chem.65,5,613-616(1993)及び特許文献1等に記載の方法に準じて行えばよい。キャピラリー電気泳動法を用いる場合にはJ.Chromatogr. 593 253−258 (1992)、Anal.Chem. 64 1926−1932 (1992)、及び特許文献2等に記載の方法に準じて行えばよい。また、自動免疫分析装置として例えばLiBASysを用いる場合、生物試料分析22巻4号303-308(1999)に記載されている方法に準じて行えばよい。
既に説明したように、本手順において、レクチン1及びレクチン2の両方に糖鎖を有さないレクチンを用いることで、レクチン1同士の複合体、レクチン2同士の複合体、及びレクチン1とレクチン2の複合体の生成をなくして、「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体のみを選択的に形成させることができる。また、レクチン1及びレクチン2の一方に糖鎖を有さないレクチンを用いることによっても、レクチン1同士の複合体、レクチン2同士の複合体、及びレクチン1とレクチン2の複合体の生成を抑制して、「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体を選択的に形成させることが可能である。
[検出手順]
複合体形成手順で形成された「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体の検出は、例えば標識物質を用いた方法により行うことができる。標識物質としては、例えば、通常の免疫測定法等において用いられる酵素類、放射性同位元素、蛍光性物質、発光性物質、紫外部に吸収を有する物質、スピンラベル化剤としての性質を有する物質など、通常この分野で用いられている標識物質が全て挙げられる。
標識物質をレクチン1及び/又はレクチン2に結合させるには、例えば、通常の免疫測定法等において行われている標識方法を適宜利用して行えばよい。また、1個又は数個のアミノ酸を介して、又は1個又は数個のアミノ酸とリンカーを介して、レクチンに標識物質を結合させる方法も採用できる。さらに、標識物質をタンパク質に結合させるキットも各種市販されているので、それらを用い、キットに添付の取扱説明書に従って標識を行ってもよい。
複合体の検出及び測定は、標識物質が有している、何らかの方法によって検出し得る性質に応じて、それぞれ所定の方法に従って実施される。例えば、不溶性担体に固定化したレクチン1と、標識物質として西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を標識した遊離のレクチン2とを用いてB/F分離を行う方法は、概略以下の通りである。
すなわち、糖鎖を有する検出対象物質を含有する試料を、レクチン1を固定化した不溶性担体に接触させ、4〜40℃で3分〜20時間で反応を行って、固相表面上にレクチン1と検出対象物質との複合体1を生成させる。次に、HRPで標識したレクチン2を含有する溶液を固相表面上に加え、4〜40℃で3分〜16時間反応させて、固定化レクチン1−検出対象物質−標識レクチン2の複合体2を生成させる。続いて、適当な濃度のTMB(3,3’5,5’-テトラメチルベンジジン)溶液を添加し、一定時間反応させる。その後、1M硫酸等の反応停止液を加えて反応を停止させ、450nmの吸光度を測定する。得られた測定値と、予め濃度既知の検出対象物質の溶液について同様の測定を行って得た検量線とから、試料中の検出対象物質の量を求めることができる。
また、例えばAlexa Fluor-488 tetrafluorophenyl ester等で標識したレクチン1と、例えばAlexa Fluor-647 succinimidyl ester等で標識したレクチン2を用い、公知の蛍光相互相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy, FCCS)に従って検出対象物質を測定することもできる。
また、「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体の検出は、標識物質を用いることなく、例えば複合体に由来する性質を利用して測定する方法、具体的には表面プラズモン共鳴などのホモジニアスイムノアッセイ系等の方法によっても行うことが可能である。
既に説明したように、複合体形成手順において、レクチン1及びレクチン2の両方に糖鎖を有さないレクチンを用いることで、本手順では、「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体のみを高感度に検出することができる。また、複合体形成手順において、レクチン1及びレクチン2の一方に糖鎖を有さないレクチンを用いることによっても、本手順で「レクチン1−検出対象物質−レクチン2」の複合体を感度よく検出することが可能となる。
[実施形態例]
以下に、レクチン−レクチンサンドイッチ法の実施態様の具体例を述べる。なお、各操作の後に必要に応じて不要物質を除去する操作(洗浄等)を行ってもよい。
(1−1)不溶性担体に固定化されたレクチン1と、不溶性担体に固定化されていない遊離の非標識レクチン2を用いる方法1
(i)試料と、不溶性担体に固定化されたレクチン1と、遊離の非標識レクチン2とを接触させて、不溶性担体に固定化されたレクチン1と検出対象物質と非標識レクチン2との複合体を形成させ、
(ii)該複合体の量を測定し、
(iii)得られた該複合体の量に基づいて、試料中の検出対象物質の量を測定する。
(1−2)不溶性担体に固定化されたレクチン1と、遊離の非標識レクチン2を用いる方法2
(i)試料と不溶性担体に固定化されたレクチン1とを接触させて、不溶性担体に固定化されたレクチン1と検出対象物質との複合体1を形成させ、次いで
(ii)該複合体1と遊離の非標識レクチン2とを接触させて、複合体1と非標識レクチン2との複合体2を形成させ、次いで
(iii)該複合体2の量を測定し、
(iv)該複合体2の量に基づいて、試料中の検出対象物質の量を測定する。
(2−1)不溶性担体に固定化されたレクチン1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2を用いる方法1
(i)試料と、不溶性担体に固定化されたレクチン1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2とを接触させて、不溶性担体に固定化されたレクチン1と検出対象物質と標識レクチン2との複合体を形成させ、
(ii)該複合体中の標識物質量を測定し、
(iii)得られた標識物質量に基づいて、試料中の検出対象物質の量を測定する。
(2−2)不溶性担体に固定化されたレクチン1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2を用いる方法2
(i)試料と不溶性担体に固定化されたレクチン1とを接触させて、不溶性担体に固定化されたレクチン1と検出対象物質との複合体1を形成させ、次いで
(ii)該複合体1と標識物質で標識した遊離のレクチン2とを接触させて、複合体1と標識レクチン2との複合体2を形成させ、次いで
(iii)該複合体2中の標識物質量を測定し、
(iv)得られた標識物質量に基づいて、試料中の検出対象物質の量を測定する。
(3−1)遊離のレクチンを用いる方法1
(i)試料と遊離のレクチン1と遊離のレクチン2とを接触させて、レクチン1と検出対象物質とレクチン2との複合体を形成させ、
(ii)該複合体の量を測定し、
(iii)得られた該複合体の量に基づいて、試料中の検出対象物質の量を測定する。
(3−2)遊離のレクチンを用いる方法2
(i)試料と遊離のレクチン1とを接触させて、検出対象物質とレクチン1との複合体1を形成させ、次いで
(ii)該複合体1と遊離のレクチン2とを接触させて、レクチン1と検出対象物質とレクチン2との複合体2を形成させ、次いで
(iii)該複合体2の量を測定し、
(iv)得られた該複合体2の量に基づいて、試料中の検出対象物質量を測定する。
(4−1)遊離のレクチン1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2を用いる方法1
(i)試料と遊離のレクチン1と標識物質で標識した遊離のレクチン2とを接触させて、レクチン1と検出対象物質と標識レクチン2との複合体を形成させ、
(ii)該複合体中の標識物質量を測定し、
(iii)得られた標識物質量に基づいて、試料中の検出対象物質の量を測定する。
(4−2)遊離のレクチン1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2を用いる方法2
(i)試料と遊離のレクチン1とを接触させて、検出対象物質とレクチン1との複合体1を形成させ、次いで
(ii)該複合体1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2とを接触させて、複合体1と標識レクチン2との複合体2を形成させ、次いで
(iii)該複合体2中の標識物質量を測定し、
(iv)得られた標識物質量に基づいて、試料中の検出対象物質の量を測定する。
(5−1)標識物質で標識した遊離のレクチン1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2を用いる方法1
(i)試料と、標識物質で標識した遊離のレクチン1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2とを接触させて、標識レクチン1と検出対象物質と標識レクチン2との複合体を形成させ、
(ii)該複合体中の標識物質量を測定し、
(iii)得られた標識物質量に基づいて、試料中の検出対象物質の量を測定する。
(5−2)標識物質で標識した遊離のレクチン1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2を用いる方法2
(i)試料と標識物質で標識した遊離のレクチン1とを接触させて、検出対象物質と標識レクチン1との複合体1を形成させ、次いで
(ii)該複合体1と、標識物質で標識した遊離の標識レクチン2とを接触させて、複合体1と標識レクチン2との複合体2を形成させ、次いで
(iii)該複合体2中の標識物質量を測定し、
(iv)得られた標識物質量に基づいて、試料中の検出対象物質の量を測定する。
[レクチン‐レクチンサンドイッチ法の有利な効果]
以上に説明したレクチン‐レクチンサンドイッチ法によれば、例えば複合糖質として糖タンパク質の検出を行う場合に、糖タンパク質が複数の糖鎖を有していれば、当該糖鎖に反応するレクチンを複数糖タンパク質に結合させることができる。また、糖タンパク質が一つの糖鎖しか有していない場合であっても、その一つの糖鎖にレクチンが反応する構造が複数存在してれば、当該レクチンを複数糖タンパク質に結合させることができる。これに対して、従来の抗体−抗体サンドイッチ法では、糖タンパク質の一つのエピトープに一つの抗体しか結合させることができない。このため、レクチン‐レクチンサンドイッチ法によれば、抗体−抗体サンドイッチ法に比して、糖タンパク質の検出感度を顕著に高めることができる。
また、特定の糖鎖構造を有する糖タンパク質のみに結合する抗体を得ることは難しく、抗体−抗体サンドイッチ法による検出系が構築できない場合であっても、レクチン‐レクチンサンドイッチ法によれば、当該糖鎖構造に反応するレクチンを用いて容易に検出系を構築できる。さらに、レクチン‐レクチンサンドイッチ法では、レクチンとしてリコンビナントタンパク質を用いれば、低コストな検出系の構築が可能である。
最近の研究により、糖鎖の多様な機能が明らかになってきた。とくに癌(転移、腫瘍マーカー等)、免疫(免疫受容体調節、免疫細胞分化、抗体医薬等)、受精、発生・分化(再生医療等)、感染症(インフルエンザ、ピロリ菌、コレラ毒素等)、バイオ医薬、脳、血液型、などにおいて、糖鎖は、注目される重要な役割を果たしていることが解ってきている。従って、特定の糖鎖構造の検出を行える本発明のレクチン‐レクチンサンドイッチ法は、例えば癌マーカー(SLX抗原、CA19-9抗原等)等の疾患関連バイオマーカーの研究(発見・開発等)、該バイオマーカーを検出することによる癌その他疾患の診断・判定(例えば癌の悪性度判定、癌転移能の評価等)、各疾患の発症機構の解明及び治療法の開発、間葉系幹細胞マーカー・分化マーカー等の研究、バイオ医薬品の品質管理及びその開発、細胞の品質管理等の分野において、特に有効に用いられる。
なお、本発明に係るレクチン‐レクチンサンドイッチ法は、用手法に限らず、自動分析装置を用いた測定系に適用して容易かつ迅速に測定を行うこともできる。用手法又は自動分析装置を用いて測定を行う場合の試薬類等の組み合わせなどについては、特に制約はなく、適用する自動分析装置の環境、機種に合わせて、あるいは他の要因を考慮に入れて最もよいと思われる試薬類等の組み合わせを適宜選択して用いればよい。さらに、本発明に係るレクチン‐レクチンサンドイッチ法は、Micro-TAS(Micro-Total Analysis
Systems:μ-TAS、μ総合分析システム)への応用も可能である。
[具体例]
以下、複合糖質として、上述した幹細胞の培養上清中の未分化糖鎖マーカーを検出する場合を例に、レクチン‐レクチンサンドイッチ法をさらに具体的に説明する。ここでは、上記の実施形態例のうち「(2−2)不溶性担体に固定化されたレクチン1と、標識物質で標識した遊離のレクチン2を用いる方法2」に従った方法を、図1を参照しながら説明する。
(ア)複合体形成手順の第一手順
まず、レクチンLとして組換型BC2LCN(以下「rBC2LCN」とも称する)が固定化された不溶性担体の固相表面S(図A参照)に培養上清を接触させ、反応を行う。rBC2LCNは、培養上清に検出対象物質Tとして含まれる、上記(式1)又は(式2)で示される未分化糖鎖マーカーが有する糖鎖構造G(Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc)に対して結合性を有する。従って、反応後の固相表面Sには、レクチンLが糖鎖構造Gを介して検出対象物質Tと結合した複合体1が形成される(図B参照)。
レクチンLは、検出対象物質Tが有する糖鎖構造Gに対して高い特異性を有することが好ましい。この点、rBC2LCNは糖鎖構造「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」に対して高い特異性を有する。このため、本手順では、レクチンLと糖鎖構造Gとの特異的な結合によって、培養上清中の未分化糖鎖マーカーを特異的に固相表面S上に捕捉することができる。
本手順において、レクチンLとして、糖鎖を有さないrBC2LCNを用いることで、次に説明する第二手順において、レクチンLとレクチンLとの複合体が生成するのを防止できる。
(イ)複合体形成手順の第二手順
次に、固相表面Sに形成された複合体1に、蛍光物質等により標識された遊離のレクチンLを接触させ、反応を行う。前段手順として、固相表面Sに存在する夾雑物を取り除くための洗浄を行ってもよい。
レクチンLには、未分化糖鎖マーカーに結合性を有することが明らかとなったSRL,CGL2,ABA、XCLが用いられる(実施例6参照)。配列番号2〜5にこれらのレクチンのアミノ酸配列を示す。配列表において、配列番号2はABAのアミノ酸配列、配列番号3はXCLのアミノ酸配列、配列番号4はSRLのアミノ酸配列、配列番号5はCGL2のアミノ酸配列をそれぞれ示す。これらのレクチンは、二以上を組み合わせて用いてもよい。図では、未分化糖鎖マーカーが有する糖鎖構造のうち、これらのレクチンが結合する糖鎖構造を符号Gで示した。
なお、SRL,CGL2,ABA及びXCLは、未分化糖鎖マーカーを特異的に認識する特性を維持していれば、配列番号2〜5に対応する全長は必要とせず、また配列番号2〜5において部分的に一部のアミノ酸が欠失、置換、挿入、付加されていてもよい。
本手順により、固相表面Sには、レクチンLが糖鎖構造Gを介して検出対象物質Tと結合した複合体1に、さらに糖鎖構造Gを介してレクチンLが結合した複合体2が形成される(図C参照)。
上記の第一手順において、レクチンLとして、糖鎖を有さないrBC2LCNを用いることで、本手順では、レクチンLがレクチンLの糖鎖に結合して複合体を形成することを防止でき、固相表面S上にrBC2LCNと未分化糖鎖マーカーとレクチンLとからなる複合体2のみを選択的に形成させることができる。
さらに、レクチンLにも、糖鎖を有さないrSRL,rCGL2,rABA、rXCLを用いることで、レクチンLがレクチンLの糖鎖に結合して複合体を形成したり、レクチンL同士が複合体を形成したりするのを防止できる。
(ウ)検出手順
最後に、蛍光検出等の標識物質の性質に応じた検出方法によってレクチンLに標識された標識物質を検出することによって、固相表面S上に形成された複合体2を検出する。複合体形成手順において、レクチンL及びレクチンLの両方に糖鎖を有さない組換型レクチンを用いることで、本手順では、複合体2のみを高感度に検出することができる。
さらに、蛍光強度の測定等によって標識物質量を測定し、得られた標識物質量に基づいて、培養上清中の未分化糖鎖マーカーの量を測定してもよい。前段手順として、固相表面Sに存在する夾雑物や未反応のレクチンLを取り除くための洗浄を行ってもよい。
本具体例では、異なる糖鎖構造に結合するrBC2LCN(レクチンL)と、rSRL,rCGL2,rABA及び/又はrXCL(レクチンL)とを組み合わせて用いてサンドイッチ法を行うことで、rBC2LCNのみを用いて検出する場合に比べて、未分化糖鎖マーカーの検出特異性を向上させることができる。
また、本具体例によれば、標識されたrSRL,rCGL2,rABA及び/又はrXCL(レクチンL)を用いてサンドイッチ法を行うことで、標識されたrBC2LCN(レクチンL)のみを用いて検出する場合や、標識された試料をrBC2LCNのみを用いて検出する場合に比べて、高い検出シグナルを得られる。このため、本具体例によれば、検出シグナルの強度に基づいて未分化糖鎖マーカーを定量的に検出する際に、より高精度な定量が可能となる(実施例7参照)。
[キット]
本発明にかかる糖鎖を有する検出対象物質の検出に用いられるキットは、前記糖鎖に対して結合性を有するレクチン1及びレクチン2を含むものであり、レクチン1及びレクチン2の少なくとも一つは糖鎖を有さないレクチンとされる。
キットの構成要件の好ましい態様と具体例は、上記のレクチン−レクチンサンドイッチ法に関する説明において記載した通りである。また、これら試薬の濃度等の好ましい態様も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
また、キットに含まれる試薬中には、通常この分野で用いられる試薬類、例えば緩衝剤、反応促進剤、糖類、タンパク質、塩類、界面活性剤等の安定化剤、防腐剤等であって、共存する試薬等の安定性を阻害したりせず、検出対象物質とレクチン1及びレクチン2との反応を阻害しないものが含まれていてもよい。また、その濃度も、通常この分野で通常用いられる濃度範囲から適宜選択すればよい。
さらに、キットは、検出対象物質について検量線を作成するために用いられる標準品を含んでいてもよい。標準品は、市販の物質を用いても、公知の方法に従って製造された物質を用いてもよい。
本発明における用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。
また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各実施例において、毎日新鮮な培養液に培地交換しながら、細胞を培養した。また、培地交換した際に得られた廃棄用の培養液を用いて、すなわち新鮮培養液に培地交換した後約24時間経過した培養液の培養上清を用いて、各検出を行った。
(実施例1)ES細胞の細胞染色
本実施例で用いるES細胞(KhES1株)は、京都大学再生医科学研究所幹細胞医学研究センターから分譲を受けた。Suemoriらの手法(非特許文献4参照)により培養した。細胞は4%パラホルムアルデヒドで固定し、PBSで洗浄した後、蛍光ラベル化(Cy3を結合)したrBC2LCNを加えて室温で1時間反応させた(図2,中段左。右は同じ細胞の核を染色したもの)。
比較対象として、ES細胞やiPS細胞を特異的に認識するTra1-60抗体をKhES1細胞コロニーと反応させた後、二次抗体であるanti-mouse IgM-Alexa488をさらに反応させたコロニーの染色像を図2上段左に示す。同上段右は同じ細胞の核をDAPIで染色したものである。
蛍光ラベル化されたrBC2LCNはTra1-60抗体と同様に、ES細胞を強く染色する(図2中段左、右は同じく組織の核を染色したもの。)。ネガティブコントロールとしてBSAを蛍光ラベル化したものを用いた場合は蛍光が観察されないことから(図2下段左。右は同じ細胞の核を染色したもの。)、rBC2LCNはTra1-60抗体と同程度またはそれ以上にES細胞を強く検出することがわかる。
上記実験では細胞を破砕せずに行っているため、Tra1-60抗体が細胞表面の糖タンパク質抗原を認識しているのと同様、rBC2LCNが認識している糖鎖構造の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」は、未分化状態の幹細胞表面で大量に発現している糖タンパク質及び糖脂質の構成糖として、細胞表面を覆うように存在していることが窺われる。
(実施例2)ES細胞の分化誘導時における細胞染色
実験例1と同様の方法で調製したES細胞(KhES1株)培養液中に、Draperらの方法(非特許文献5参照)に従って、終濃度10−5Mになるようにレチノイン酸を添加して培養することにより、ES細胞の分化誘導を行った。8日間培養したところ、細胞の形態からみて充分に分化が進んだことを確認して、蛍光標識したrBC2LCNを各細胞と反応させた(図3)。比較対象として、Tra1-60抗体を反応させた後、二次抗体であるanti-mouse IgM-Alexa488をさらに反応させた。図中、「+RA」の段は、レチノイン酸処理をして神経方向へ分化させた場合を示し、「−RA」の段は未処理の場合を示す。なお、図3右の「DAPI」は、同じ細胞の核をDAPIで染色した結果を示す。
神経細胞に分化したKhES1株ではrBC2LCNの蛍光はほとんど検出されなかった。これに対して、Tra1-60抗体の蛍光の強度は、充分に観察可能な強度を保ったままである。この実験結果は、公知の未分化マーカーとして用いられているTra1-60抗体が認識する糖タンパク抗原では、分化が進んだ状態でも依然として細胞表面でかなりの発現量を維持しているのに対し、rBC2LCNが認識している糖鎖構造の「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」の場合は、未分化状態では細胞表面を覆うように発現していたが、分化が進むとほとんど発現しなくなることを示している。
以上のことから、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」の糖鎖構造は、分化、未分化を判定するための未分化糖鎖マーカーとして極めて優れたマーカーであることが明らかになった。また、rBC2LCN固定化基板が未分化性を有したES細胞、iPS細胞など幹細胞を特異的に認識する優れた分化、未分化判定用のキットとしての高い有用性を有していることがわかった。
(実施例3)蛍光ラベル化した培養上清の直接解析
この実験で用いたiPS細胞(201B7株、253G1株)は理化学研究所バイオリソースセンターから分譲を受けた。同TIGMKOS#19株は(独)産業技術総合研究所幹細胞工学研究センターにて樹立された(論文未発表)。Tatenoらの手法(非特許文献1参照)により培養した。約24時間培養した培養液を回収し、遠心分離により液性成分のみを分離し、培養上清を得た。
培養上清中に「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」の糖鎖構造が存在しているか否かを固定化したrBC2LCNを用いて調べた。具体的には、実施例2と同様の方法でiPS細胞の201B7株及び253G1株を8日間培養して分化誘導した。コントロールとして、レチノイン酸(RA)なしで同じiPS細胞の201B7株及び253G1株についても同日間培養した。また、TIGMKOS#19株についてもレチノイン酸(RA)なしで4日間培養した。培養液は毎日、新鮮な培養液と培地交換し、得られた廃棄用の培養上清を以下の測定工程に供した。各iPS細胞の培養上清を蛍光ラベル化して、スライドグラス上に固定化したrBC2LCNと20℃で一晩反応させて、洗浄した後に、エバネッセント波励起蛍光型スキャナーでその結合を検出した(図4)。
その結果、rBC2LCNはレチノイン酸なしで培養した未分化を維持したiPS細胞(201B7株、253G1株、TIGMKOS#19株)の培養上清とは反応したものの、レチノイン酸存在下で培養した分化したiPS細胞(201B7株、253G1株)やコントロール培地とは反応性を示さなかった。このことは、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc/GalNAc」の糖鎖構造が、培養上清中の分化、未分化を判定するための未分化糖鎖マーカーとして有効に機能することを実証するものである。
本性質を利用して、細胞を採取することなく、培養上清を用いてES細胞、iPS細胞が樹立されたことが検証可能である。また、これら幹細胞を保存する際や未分化性を有したまま増殖させようとする際に、分化細胞が混入していないことを検証することも可能である。また、本性質を利用し、各種臓器細胞(心筋細胞、肝臓細胞、神経細胞、膵島細胞、軟骨細胞、骨細胞等)をES細胞、iPS細胞などの幹細胞から作製した際、未分化性を有したまま残留している細胞を、培養上清を検査するだけで簡便かつ迅速に検出することが可能である。
なお、従来、未分化細胞のマーカーとしてNanog、POU5F1、DNMT3B、TERT、UTF1 (undifferentiated embryonic cell transcription factor 1)、FOXD3、LIN28、BRIX等のタンパク質が公知であるが、これらのタンパク質の多くは核内に局在しており、培養上清中での検出は不可能と考えられる。
(実施例4)レクチンオーバーレイによる培養上清の解析
培養上清中の未分化糖鎖マーカーをより高感度に検出するため、スライドグラス上のrBC2LCN(レクチン1)に捕捉された未分化糖鎖マーカーに対して検出用レクチン(レクチン2)を結合させ、レクチン‐レクチンサンドイッチ法による検出を試みた。検出用レクチンには、ビオチン化rAALを用いた。
すなわち、実施例3において、レチノイン酸(RA)なしのiPS細胞(TIGMKOS#19株)と、培地のみ(コントロール培地)を4日培養した培養上清を採取して、rBC2LCNを固定化したスライドグラスに20℃で一晩反応させた。洗浄した後にビオチン化rAALを20℃で一晩反応させた後、1μg/mLのCy3ラベル化したストレプトアビジンを20℃で30分反応させた後、エバネッセント波励起蛍光型スキャナーで結合を検出した(図5)。コントロール培地についても同様の処理及び測定を行った。
本実施例の結果から、スライドグラスに固定化したrBC2LCNとビオチンで標識したAALを用いた本発明のレクチン−レクチンサンドイッチ法によって、培養上清中の未分化糖鎖マーカーを検出できることが明らかになった。
(実施例5)オーバーレイレクチンのスクリーニング
本実施例では、未分化糖鎖マーカーをレクチン‐レクチンサンドイッチ法により検出するために、捕捉用レクチンであるrBC2LCNとともに検出用レクチン(オーバーレイレクチン)として使用可能なレクチンのスクリーニングを行った。スクリーニング対象とした組換型レクチンを以下の「表1」に示す。
*PDB:RCSB Protein Data Bank (http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do)、NCBI:National Center of Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed)
**Ref.1:" Carbohydrate binding specificity of a fucose-specific lectin from Aspergillus oryzae: a novel probe for core fucose." J Biol Chem. 2007 May 25;282(21):15700-8、
Ref.2:"A Novel Core Fucose-specific Lectin from the Mushroom Pholiota squarrosa." J Biol Chem. 2012 Oct 5;287(41):33973-82.
エポキシ活性化スライドグラス(#1066643、SCHOTT)上に固定化したrBC2LCNと、コントロール培地又はiPS細胞(TIG/MKOS)を毎日培地交換しながら3日間培養し、培養3日目の培養上清(培地交換後約24時間経過したもの)を20℃で一晩反応させた。次に、溶液 (25 mM Tris-HCl pH 7.5, 140 mM NaCl (TBS), 2.7 mM KCl, 1 mM CaCl2, 1 mM MnCl2, and 1% Triton X-100)で1回洗浄した。その後、Cy3ラベル化組換型レクチンを加えて、20℃で3時間インキュベートした。GlycoStationTM Reader 1200(GP BioSciences)で蛍光強度を測定した結果を図6に示す。図の縦軸には、培養上清で得られた蛍光強度値からコントロール培地で得られた蛍光強度値を差し引いた値を表示した。
図6に示されるように、実施例4で用いたAALの他、SRL,CGL2,ABA,XCLの4つの組換型レクチンで特に優位な蛍光強度値が観察された。このことから、これら4つのレクチンが、レクチン‐レクチンサンドイッチ法により未分化糖鎖マーカーを検出する際の検出用レクチンとして有用であることが明らかとなった。
(実施例6)レクチン‐レクチンサンドイッチ法(リコンビナントレクチン)
本実施例では、実施例5で特定されたrSRL,rCGL2,rABA,rXCLをレクチン2(検出用レクチン)に用い、rBC2LCNをレクチン1(捕捉用レクチン)に用いて、レクチン‐レクチンサンドイッチ法による未分化糖鎖マーカーの検出を行った。
ストレプトアビジンプレート(Nunc, #436020)上にビオチン化rBC2LCNを固定化した。洗浄後のプレートに、レチノイン酸(RA)存在下又は非存在下でiPS細胞を毎日培地交換しながら8日間培養し、培養8日目の培養上清(培地交換後約24時間経過したもの)を回収して得られた培養上清を滴下し、37℃で1時間反応させた。再度洗浄を行ったプレートに、HRPラベル化した上述の組換型レクチンを加えて、37℃で1時間反応させた。洗浄後、1-step ULTRA TMB-ELISA (Thermo, #34028)を滴下し、室温で30分反応後、1M硫酸を加えて反応停止し、450nmの吸光度を測定した。
結果を図7に示す。図7には、培養上清で得られた吸光度値をコントロール培地で得られた吸光度値で除して値をS/Nとして表示した。何れのレクチンを反応させた場合でも、未分化のiPS細胞の培養上清(253G1(RA-))は高いS/N値を示したのに比して、分化させたiPS細胞の培養上清(253G1(RA+))はより低いS/N値を示した。4種のオーバーレイレクチンのうち、rABAは最も高いS/N値を示した。一方、フィーダー細胞(MEF)の培養上清は、レチノイン酸(RA)の添加にかかわらず、コントロール培地とほぼ同程度の反応性を示した。
(実施例7)レクチン‐レクチンサンドイッチ法における検量線の作成
本実施例では、実施例6で構築したレクチン‐レクチンサンドイッチ法による未分化糖鎖マーカーの検出系において、培養上清中の未分化細胞数を定量するための検量線の作成を行った。
iPS細胞(201B7又は253G4)を24時間培養後、培地(Medium WakoB、Nutristem、ReproFF又はMEF-CM)を回収し、培地中のiPS細胞の細胞数をカウントした。iPS細胞の培養上清を段階希釈して、実施例6と同様の方法で解析を行い、得られた吸光度値と細胞数との関係を示す回帰直線を検量線として得た。検出用レクチンとしてrABAを用いて得られた検量線を図8、図9に、rSRLを用いて得られた検量線を図10、図11に示す。図8〜図11に示す検量線は、いずれも0.961以上の高い相関係数を示した。
本実施例の結果から、特定のレクチンの組み合わせで培養上清中の未分化糖鎖マーカーの測定を行えば、未分化細胞を定量的に検出して、未分化細胞数が0となったか否かの判定を行い得ることがわかる。
(実施例8)未分化糖鎖マーカーの同定
本実施例では、未分化糖鎖マーカーの同定を行った。
毎日培地交換しながら3日間培養して得られたES細胞の培養上清(KhES1 sup)、3日間培養して得られたiPS細胞の培養上清(253G1 sup)(培地交換後約24時間経過したもの)及びそれぞれのコントロール培地を1 mLずつとり、rBC2LCN固定化ビーズと混合し、室温で3時間反応させた。反応後ビーズを0.2 % SDS 100 μLで95℃5分間加熱し、結合画分を溶出させた。結合画分10 μLをアクリアミドゲルで電気泳動し、銀染色と、HRP-rABA又はHRP-rSRLによるブロットを行った。
結果を図12のA〜Cに示す。HRP-rABA及びHRP-rSRLによるブロットでは、240kDa以上の分子量を有する分子がシグナルを示した(B,C参照)。
さらに、抗ポドカリキシン抗体でブロットした結果を図12Dに示す。240kDa以上の分子量を示す分子でシグナルが認められ、この分子がポドカリキシンタンパクあるいはポドカリキシンタンパクの一部であることが明らかとなった。
この結果から、未分化糖鎖マーカーの一つとして、ポドカリキシンが同定された。ポドカリキシンは、ポドカリキシンは1型膜貫通型糖タンパク質で、足細胞として知られる上皮性糸球体細胞から同定され、糸球体の機能・形態の保持において重要な役割をしているほか、種々の癌の発達にも関係していることが知られている(非特許文献8参照)。
また、本実施例の結果及びポドカリキシンのアルカリ消化を行った実験の結果から、ポドカリキシンは、修飾糖鎖の構造中に「Fucα1-2Galβ1-3GalNAc(Hタイプ3糖鎖)」を含むものと予想された。なお、Hタイプ1糖鎖がポドカリキシンに存在しているか否かは不明である。
本実施例において、Hタイプ3糖鎖を有するポドカリキシンが同定されたことは、未分化細胞を検出するためのプローブとして、抗ポドカリキシン抗体であって、ポドカリキシンのHタイプ3糖鎖の修飾部位を特異的に認識する抗体を利用できる可能性を示している。
(実施例9)rBC2LCNの結合特性の解析
本実施例では、rBC2LCNが認識する糖鎖構造の解析を行った。
舘野らの方法(非特許文献7参照)に従って、rBC2LCNをNHS-activated Sepharose 4FF (GE)に固定化し、ミニカラム (inner diameter, 2 mm; length, 10 mm, bed volume, 31.4 μl)に詰めた後、高速液体クロマトグラフィーに接続した。ヒトiPS細胞(201B7)から単離したピリジルアミノ化糖鎖をカラムに注入し、励起285 nm、蛍光350 nmで蛍光検出した。解析の結果、rBC2LCNは、iPS細胞から単離したHタイプ3を含むO型糖鎖に対し、Ka=2.5 x 10 M−1の親和性で結合することが分かった(図13参照)。
図13(A)中、点線は、コントロールPA化糖鎖であるManα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAc-PAの溶出プロファイルを示す。実線は、iPS細胞から単離したPA化糖鎖であるFucα1-2Galβ1-3(Galβ1-3GlcNAcβ1-6)GalNAc-PAの溶出プロファイルを示す。また、図13(B)は、Fucα1-2Galβ1-3(Galβ1-3GlcNAcβ1-6)GalNAc-PA(Hタイプ3を含むO型糖鎖)の模式図である。円はガラクトース、白四角はN−アセチルガラクトサミン、黒四角はN−アセチルグルコサミン、三角はフコースを示す。また、ガラクトースとN−アセチルグルコサミン、ガラクトースとN−アセチルガラクトサミンの間の太線はβリンケージ、ガラクトースとフコースの間の細線はαリンケージを示す。
(参考実施例10)天然型レクチンを用いた比較実験
本参考実施例では、レクチン‐レクチンサンドイッチ法において、糖鎖を有するレクチンを用いた場合の問題点を検証した。
96種類のレクチンがスライドグラス上に固定化された高密度天然型レクチンアレイ(非特許文献1参照)にPNGaseFを滴下し、37℃で一晩反応させた。反応後1回洗浄を行って、Cy3ラベル化組換型レクチン(rOrysata)を滴下し、20℃で一晩反応させた。反応後2回洗浄を行って、GlycoStationTM Reader 1200(GP BioSciences)で蛍光強度を測定した。また、比較としてPNGase処理を行っていない高密度天然型レクチンアレイを用いても同様の操作を行った。
その結果、PNGaseF処理を行っていないレクチンアレイでは、SSA,SNA,RCA120,MCAでシグナルが検出され、rOrysataがこれら4つのレクチンに結合していた。一方、PNGaseF処理を行ったレクチンアレイでは、SSA,SNA,RCA120,MCAからのシグナルが消失した。このことは、レクチン‐レクチンサンドイッチ法において糖鎖を有するレクチンを用いた場合には、レクチン同士が、検出対象物質を介することなく、当該レクチン自身が有する糖鎖を介して結合して目的としない複合体を形成してしまうことを示すものである。すなわち、レクチン‐レクチンサンドイッチ法において天然型レクチンを用いると、糖鎖検出において疑陽性が生じる可能性が高くなることが明らかとなった。
(実施例11)レクチンサンドイッチ法(糖鎖除去天然型レクチン)
本参考実施例では、天然型レクチンアレイを糖分解酵素で処理して得た改変型レクチンアレイを用いて、レクチン‐レクチンサンドイッチ法による糖タンパク質の検出を行った。
参考実施例10で用いた天然型レクチンアレイにPNGaseFを滴下し、37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、2回洗浄を行って、チログロブリン(10 μg/mL)を滴下し、37℃で一晩反応させた。反応後2回洗浄を行って、Cy3ラベル化組換型レクチン(rOrysata)を滴下し、20℃で3時間反応させた。反応後2回洗浄を行って、GlycoStationTM Reader 1200(GP BioSciences)で蛍光強度を測定した。また、比較としてチログロブリンを滴下せずに同様の操作を行い、チログロブリンを滴下したアレイで得られた蛍光強度値(Signal)と滴下していないアレイで得られた蛍光強度値(Noise)との比(S/N比)を算出した。なお、チログロビンの糖鎖構造から、SSA,SNA,RCA120,MCA及びrOrysataは、いずれもチログロビンに対して結合性を有すると予想された。
結果を「表2」に示す。
PNGaseF処理を行っていないレクチンアレイのSSA(天然型レクチン)でのS/N比は約1.9であった。これに対して、PNGaseF処理を行ったレクチンアレイのSSA(糖鎖除去天然型レクチン)ではS/N比は約8.0と顕著に改善した。同様に、SNA、RCA120、MCAについても、PNGaseF処理を行ったレクチンアレイでは、PNGaseF処理を行っていないレクチンアレイに比して、チログロブリン検出のS/N比が顕著に改善した。
この結果及び実施例10の結果から、PNGaseF処理を行っていないアレイでは、rOrysata(検出用レクチン)が、チログロブリン(検出対象物質)を介することなくSSA、SNA、RCA120、MCA(捕捉用レクチン)に直接結合し、ノイズが発生していることが考えられる。これに対して、PNGaseF処理を行ったアレイでは、捕捉用レクチンの糖鎖除去によって、検出用レクチンと捕捉用レクチンとの直接結合が防止され、捕捉用レクチンと検出対象物質と検出用レクチンとの複合体から生じるシグナルを高感度に検出できた。
本実施例の結果から、レクチン−レクチンサンドイッチアッセイを行う場合には、レクチンの糖鎖の影響を排除することにより、使用するレクチンの糖鎖に他のレクチンが結合してしまうのを防止して、測定のバックグラウンドを低く抑え、高感度で検出対象物質を測定できることが明らかとなった。
1:複合体1(レクチンLと検出対象物質Tの複合体)、2:複合体2(レクチンLと検出対象物質TとレクチンLの複合体)、L:レクチン1、L:レクチン2、G、G:糖鎖構造、S:固相表面、T:検出対象物質

Claims (6)

  1. 幹細胞の培養上清中の下記(式1)又は(式2)で表される未分化糖鎖マーカーの存在の有無又は存在量を、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、下記(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質を用いて測定することを特徴とする、幹細胞の分化状態を判別する方法;
    (図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)
    (図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)。
  2. 前記幹細胞の培養上清が、当該幹細胞に対して分化誘導処理を施した後の培養上清であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. ポドカリキシンに由来する前記(式2)で表される前記未分化糖鎖マーカーの存在の有無又は存在量を測定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記未分化糖鎖マーカーを
    クチン‐レクチンサンドイッチ法により検出することを特徴とする、請求項1〜記載の方法。
  5. 分化誘導処理を施した幹細胞の培養上清中の下記(式1)又は(式2)で表される未分化糖鎖マーカーが存在しないことを、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、下記(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質を用いて確認して採取することを特徴とする、未分化細胞の混入していない分化細胞の取得方法;
    (図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)
    (図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)。
  6. 幹細胞の分化状態を判別する方法に用いるための培養上清用キットであって、配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、下記(式1)又は(式2)で表される糖鎖構造を特異的に認識するタンパク質を含むことを特徴とする培養上清用キット。
    (図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)
    (図中、R1はOH基、若しくは任意の糖鎖を表す。R2はOH基、又は任意の糖鎖、タンパク質、脂質、若しくは他の分子を表す。)。
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