JP5454896B2 - 糖鎖アレイ基板とそれを用いた糖鎖結合分子検出法 - Google Patents

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Description

本発明は糖鎖分子を高密度状態で固定化した感度の高い糖鎖アレイ基板、及び当該糖鎖アレイ基板を利用した糖鎖結合分子を迅速に検出・同定する方法に関する。特に生体由来クルードサンプル中に含有される糖鎖結合分子の検出・同定に適する方法であり、未知の糖鎖結合分子のスクリーニング方法にも関する。
エバネッセント波励起法を利用した蛍光観察手法は、顕微鏡の分野でタンパク質の1分子観察を可能とするなど、近年高い成果を挙げている技術である。エバネッセント波励起蛍光観察法では、まず蛍光標識した被検分子(以下プローブ分子)を含む溶液を導波路基板上に接触させた状態で、この基板表面で入斜光を全反射させる。この時、界面近傍数百nmに限定的に発生するエバネッセント波により基板-液層界面近傍の蛍光標識プローブ分子が選択的に励起されるので、非洗浄状態で相互作用情報を蛍光シグナル強度として観察することが可能である(図1)。このエバネッセント波励起蛍光観察法をマイクロアレイに応用することで、液相中で多数の被験分子とアレイ基板上に固定した分子との結合状態を洗浄せずに観察することが可能になる。
本発明者らは入射光をスラブ型導波路基板端面より入射し、スライド基板内を繰り返し全反射させてエバネッセント波を発生させ、このエバネッセント波により励起されるプローブ分子が発する蛍光を観察することによって(図2)、複数種の分子を固定化したマイクロアレイスライド基板表面とプローブ分子間の相互作用観察方法を提供してきた(特許文献1,2)。
本発明者らは、このエバネッセント波励起蛍光検出法を利用して、糖鎖アレイ基板への結合分子のプロービング・スキャニング工程を、さらに高感度化・高速化できることに着目した。エバネッセント波励起蛍光検出法を用いれば、従来の方法より高い感度が期待される上に、スキャニング操作の前の洗浄操作が不要となる為、大幅に操作を簡便化でき、簡便検査の実用化への大きな前進となることが期待される為である。
糖鎖を基板に固定化した「糖鎖アレイ」は、すでに糖鎖抗体の特異性解析・交叉性試験、生体内レクチンの糖結合能解析等に利用されており、今後もその応用範囲の広がりが大いに期待されている。しかし、現行の糖鎖アレイはプロテインアレイ等に比べ、感度が十分高いとは言えず、比較的高濃度の被検プローブを用意する必要があることが欠点であった。また、現在主流になっているアメリカの機能糖鎖コンソーシアム(CFG)の糖鎖アレイでは、300種以上の糖鎖(パラアミノフェニル標識糖鎖に代表される糖鎖・アミノ基リンカー複合体)を固定化した糖鎖アレイが使用されているが、このような方法で数百種類の糖鎖を揃え、これをアレイ化するには非常に高濃度かつ大量の糖鎖と多額の製作コストが必要とする。
具体的には、現在流通している糖鎖標品は、僅か数〜数百pmolで数万円〜数十万円という極めて高価で貴重な生体分子試料である。糖鎖は未だ増幅法が開発されておらず、複雑な立体異性体を安価に合成する方法も開発途上である。このような背景から一般に流通している糖鎖試料の供給は、現在においても生体由来試料から極微量しか得られない試料に頼っており、このことが糖鎖アレイの作製に当たって糖鎖の収集・確保に莫大な労力とコストを要する最大の原因となっている。その上、従来糖鎖アレイにて使用されてきたアミノ基等を有するリンカー分子を結合させた糖鎖分子の基板への固定化効率は非常に低いために、濃度を濃くして(1〜10μM)スポットする必要があることや、それでもなお大部分の分子が固定化されないために、アレイ基板の作製に大部分の糖鎖を浪費するという、非常に効率の悪い作製法が長年利用されてきた。
このように、従来法では結果的に糖鎖アレイ基板の単価が非常に高額になるという、糖鎖アレイの普及を阻む決定的な問題が存在していた。
したがって、安価で感度の良い糖鎖アレイの開発が強く望まれていた。
さらに、糖鎖が糖結合分子に対して「一価」ではなく「多価」の状態で表面に提示されることができれば、糖鎖−糖結合性分子間の相互作用は著しく増強される効果(クラスター効果)が期待できるが、従来法により固定化する化学合成糖鎖を増加させようとしても、糖鎖を一分子ずつ、リンカーを介して固層に結合させることになるので、基板上に提示される各糖鎖は一価(モノバレント)の状態でしかなく、感度の飛躍的な増大は期待できない。このため、アレイ基板上に「単価」ではなく「多価」の状態で糖鎖を提示することで、より微量な糖結合分子の検出を可能にする技術の開発も求められていた。
国際公開2005/064333号パンフレット(WO2005/064333) 特開2007−3357号公報
本発明の課題は、糖鎖分子を高密度状態で固定化した、安価で感度の高い糖鎖アレイ基板を提供することにあり、そのための高効率糖鎖固定化技術を利用した糖鎖マイクロアレイ基板製造方法を提供することである。また、当該糖鎖アレイ基板を利用することで糖鎖結合分子を迅速に検出・解析する方法を提供することも、本発明の目的であり、特に、生体由来のクルード試料中に含まれる糖鎖結合分子をその結合活性に基づき高感度に(数ng程度から)簡便・迅速に検出する手法を提供することである。
我々は前述の糖鎖アレイの問題点を解決すべく、検出にエバネッセント波励起蛍光検出方式を用いる新システムの開発を検討したが、本システムを開発する上で超えなければならない技術的ハードルが複数存在した。
一つ目のハードルは、糖鎖を導波路基板に接して直接固定化する必要がある為に、平滑なガラス表面に対して直接、(少量の高価な)糖鎖を如何にして高密度・高効率に固定化するかという点にあった。我々は解決策として、糖鎖を予め担体の上に複数固定化して多価状態にした複合分子を作製し、この多価糖鎖修飾担体を基板に直接固定化する方法を開発した。またこの時に使用する担体に基板への結合効率の著しく高いものを選択・採用し、そのスポット・固定化条件を最適化することで、高密度に多価状態の糖鎖を基板上に提示する技術を完成した。
第二のハードルは、糖鎖の入手困難性に起因する、多種の糖鎖構造を揃える事の困難さであった。糖鎖アレイの分野ではすでに前述のCFGから、アミノ基をもつスペーサー基に接続された化学合成糖鎖を300種程度合成して基板上にアレイ化した糖鎖アレイ基板が報告されているが、このような化学合成糖鎖の大規模なマイクロアレイ作成技術は、非常に大きな設備投資と最先端の合成技術を持ち合わせた、世界でもわずか数グループしか作製することができない極めて難易度の高い技術であった。我々はこの問題を市販の糖鎖を担体に結合させ、これを基板に結合させることで解決した。本技術は市販の百種を超える糖鎖を基板への簡便な固定化に利用可能とするものであり、これにより大規模な(多種類の糖鎖構造が配列された)糖鎖アレイを安価に供給する方法を提供することができる。
さらに我々は、従来の糖鎖アレイにおけるプロービング工程時の煩雑な操作を、我々の開発したエバネッセント波励起蛍光検出スキャナーを用いた検出系とそれに最適・簡便化したプロービング操作法の採用により、迅速・簡略化することに成功した。前述の新開発の技術を組み合わせ、一体として提供することで、従来の高コストで煩雑な糖鎖アレイ解析を安価・簡便・ハイスループットに解析することを可能とする「エバネッセント波励起蛍光検出糖鎖アレイシステム」をここに完成させた。
本発明においては、糖鎖を直接1本ずつ独立に固定化するのではなく、基板に高密度に結合させやすい担体に対してまず複数の糖鎖を多価の状態で結合した多価糖鎖固定担体を作製し、これを基板上に直接固定化することで基板上に多価の状態で糖鎖を高密度に提示する。また、糖鎖アレイを用いて被検生体由来試料中に含まれる糖鎖結合分子の結合活性検出を行うにあたり、上記基板の効果を最大限に引き出す使用方法を開発した。従来の共焦点スキャナーを用いた検出方法の問題点である、インキュベート操作と洗浄操作を複数回繰り返す煩雑な工程の解消を目的として、エバネッセント波励起スキャナーを採用し、さらに被検糖結合分子と検出抗体をあらかじめ免疫複合体とした後にアレイ基板表面に接触させ、これを洗浄せずに蛍光検出する新規検出方法(ワンステップ検出法)を組み合わせることで、簡便・迅速に高感度な糖結合活性の検出を行える。
また、本発明者らは、従来から細胞表面に存在するタンパク質、糖鎖、脂質などの分子の構造情報を、細胞を破壊せずに観察するための操作手法を開発研究しており、生存状態の細胞に代謝型蛍光色素を取り込ませる手法などで細胞自体を蛍光標識し、当該生存状態の細胞を含んだ溶液をアレイ基板と接触させた後で、基板表面上に非特異的に吸着している余剰細胞を除去する工程を設けることで、細胞の表層分子の構造情報を細胞が生存した状態で観察する方法を完成させ、既に出願している(特願2007−23754号、特開2008−187932号公報)。この手法を組み合わせることで、すなわち、蛍光標識した生存状態の細胞自体の懸濁液を本発明の糖鎖アレイ基板に作用させ、基板表面上に非特異的に吸着している余剰細胞を除去する工程を設けた後に、エバネッセント波励起蛍光観察法を用いて観察することで、細胞表面もしくは細胞内の糖結合分子(ウイルス感染細胞であればウイルス由来糖結合分子)の種類、量など分布情報の観察も可能となった。
なお、当該先願明細書中の記載内容、及び先行文献中の記載内容は本明細書の記載に組み入れるものとする。
すなわち本発明は以下のとおりである。
〔1〕 担体1分子あたりに複数の同一種類の糖鎖分子が結合している糖鎖−担体複合体が、基板上の決められた位置に固定化されていることを特徴とする、糖鎖分子を多価状態で提示する糖鎖アレイ基板。
〔2〕 前記基板が、エバネッセント波励起蛍光観察のための導波路基板であることを特徴とする、前記〔1〕に記載の糖鎖アレイ基板。
〔3〕 前記糖鎖−担体複合体と共に、精製もしくは未精製の被検複合糖質が同一基板上の別の決められた位置に固定化されていることを特徴とする、前記〔1〕又は〔2〕に記載の糖鎖アレイ基板。
〔4〕 担体1分子あたりに複数の同一種類の糖鎖分子が結合している糖鎖−担体複合体を、基板上の決められた位置に直接固定化することで、基板上に糖鎖分子を多価状態で提示させることを特徴とする糖鎖アレイ基板の製造方法。
〔5〕 被検試料を含む溶液又は懸濁液を、前記〔1〕又は〔2〕に記載の糖鎖アレイ基板に作用させ、被検試料中の糖結合分子と糖鎖アレイ基板上の特定の糖鎖分子との結合状態を観察する工程を含むことを特徴とする、被検試料中の糖結合分子の検出又は解析方法。
〔6〕 前記被検試料が、生体由来の血液もしくは体液、又は細胞/ウィルス自体、細胞破砕液、細胞培養上清、もしくはそれらの抽出液、濃縮液であることを特徴とする、前記〔5〕に記載の糖結合分子の検出又は解析方法。
〔7〕 前記被検試料を含む溶液又は懸濁液を糖鎖アレイ基板に作用させるに先立ち、前記被検試料中に標識化された抗体を混合することで被検試料中の標的とする糖結合分子をあらかじめ標識する工程を有し、糖鎖アレイ基板に作用させた後に、当該基板上の糖鎖分子に結合した標識化被検糖結合分子からの標識信号を観察する工程を有することを特徴とする、前記〔5〕又は〔6〕に記載の糖結合分子の検出又は解析方法。
〔8〕 前記糖鎖アレイ基板がエバネッセント波励起蛍光観察のための導波路基板であり、前記標識化された抗体が蛍光標識抗体であって、前記標識信号を観察する工程において、基板上の糖鎖分子に結合した蛍光標識被検糖結合分子を、基板を洗浄することなく、エバネッセント波励起蛍光観察法により観察することを特徴とする、前記〔7〕に記載の糖結合分子の検出又は解析方法。
〔9〕 前記被検試料を含む懸濁液が生存状態の細胞懸濁液であって、当該懸濁液を糖鎖アレイ基板に作用させるに先立ち、生存状態の細胞内に代謝変換型蛍光色素剤を導入する工程を有し、糖鎖アレイ基板に作用させた後に、当該基板上の糖鎖分子に結合した被検細胞からの蛍光標識信号を観察する工程を有することを特徴とする、前記〔5〕に記載の糖結合分子の検出又は解析方法。
〔10〕 前記〔5〕〜〔9〕のいずれかに記載の糖結合分子の検出又は解析方法において用いるキットであって、担体1分子あたりに複数の同一種類の糖鎖分子が結合している糖鎖−担体複合体が、基板上の決められた位置に複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板を含むことを特徴とする、糖結合分子の検出又は解析用キット。
〔11〕 複合糖質含有試料中の糖鎖分子の検出又は解析方法であって、以下の(a)〜(e)の工程を含む方法;
(a) あらかじめ基板上の決められた位置に、担体1分子あたり複数の同一種類の既知の糖鎖分子が結合している糖鎖−担体複合体が、複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板であり、かつ、さらに被検複合糖質を配置し固定化できる位置を有している糖鎖アレイ基板を用意する工程、
(b) 工程(a)で用意された糖鎖アレイ基板に、被検複合糖質含有試料を配置し固定化する工程、
(c) 工程(a)で固定化された複数種類の既知の糖鎖分子のそれぞれに対して結合することが既知である、標識化された糖結合分子を含む溶液を用意する工程、
(d) 工程(b)で得られた被検複合糖質含有試料がさらに配置された糖鎖アレイ基板に、工程(c)で用意された標識化糖結合分子含有溶液を接触させ、標識化糖結合分子を基板上の既知の糖鎖分子及び被検複合糖質含有試料中の糖鎖分子と結合させる工程、
(e) 基板上の各糖鎖分子に結合した標識化糖結合分子からの標識信号を観察し比較することで、被検複合糖質含有試料中の糖鎖分子の種類又は性質を推定する工程。
〔12〕 前記工程(a)で用意する基板がエバネッセント波励起蛍光観察のための導波路基板であり、かつ前記工程(c)で用いる標識化された糖結合分子が、蛍光標識抗体により標識された糖結合分子であって、前記工程(e)において、基板上の各糖鎖分子に結合した蛍光標識糖結合分子を、基板を洗浄することなく、エバネッセント波励起蛍光観察法により観察し、比較することを特徴とする、前記〔11〕に記載の複合糖質含有試料中の糖鎖分子の検出又は解析方法。
〔13〕 前記〔11〕又は〔12〕に記載の複合糖質含有試料中の糖鎖分子の検出又は解析方法に用いるキットであって、
あらかじめ基板上の決められた位置に、担体1分子あたり複数の同一種類の既知の糖鎖分子が結合している糖鎖−担体複合体が、複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板であり、かつ、さらに被検複合糖質を配置し固定化できる位置を有している糖鎖アレイ基板と共に、
前記複数種類の既知の糖鎖分子のそれぞれに対して結合することが既知である標識化された糖結合分子を含む溶液を包含することを特徴とする、複合糖質含有試料中の糖鎖の検出又は解析用キット。
〔14〕 細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合活性の解析方法であって、あらかじめ標識された被検細胞/ウィルス試料を含む溶液又は懸濁液を、請求項1又は2に記載の糖鎖アレイ基板に作用させ、被検細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子と、糖鎖アレイ基板上の糖鎖分子との結合状態を標識信号として観察し、得られた標識信号のパターンから、被検細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合特性情報を得ることを特徴とする、非検細胞/ウィルス試料中の糖結合分子の糖結合活性の解析方法。
〔15〕 前記被検細胞/ウィルス試料を含む溶液又は懸濁液を糖鎖アレイ基板に作用させるに先立ち、前記被検試料中に標識化された抗体を混合することで被検試料中の標的とする糖結合分子をあらかじめ標識する工程を有し、糖鎖アレイ基板に作用させた後に、当該基板上の糖鎖分子に結合した標識化被検糖結合分子からの標識信号を観察し、得られた標識信号のパターンから、被検細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合特性情報を得ることを特徴とする、前記〔14〕に記載の非検細胞/ウィルス試料中の糖結合分子の糖結合活性の解析方法。
〔16〕 前記糖鎖アレイ基板がエバネッセント波励起蛍光観察のための導波路基板であり、前記標識化された抗体が蛍光標識抗体であって、前記標識信号を観察する工程において、基板上の糖鎖分子に結合した蛍光標識被検糖結合分子を、基板を洗浄することなく、エバネッセント波励起蛍光観察法により観察することを特徴とする、前記〔15〕に記載の非検細胞/ウィルス試料中の糖結合分子の糖結合活性の解析方法。
〔17〕 前記被検細胞/ウィルス試料が生存状態の細胞懸濁液であって、当該懸濁液を糖鎖アレイ基板に作用させるに先立ち、生存状態の被検細胞/ウイルス内に代謝変換型蛍光色素剤を導入する工程を有し、糖鎖アレイ基板に作用させた後に、当該基板上の糖鎖分子に結合した被検細胞からの蛍光標識信号を観察し、得られた蛍光標識信号のパターンから、被検細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合特性情報を得ることを特徴とする、前記〔14〕に記載の非検細胞/ウィルス試料中の糖結合分子の糖結合活性の解析方法。
〔18〕 前記〔14〕〜〔16〕のいずれかに記載の解析方法に用いるためのキットであって、あらかじめ基板上の決められた位置に、担体1分子あたり複数の同一種類の既知の糖鎖分子が結合している糖鎖−担体複合体が、複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板と共に、標識化抗糖結合分子抗体含有溶液又は代謝変換型蛍光色素剤とを包含することを特徴とする、細胞/ウイルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合活性の解析用キット。
〔19〕 被検試料中の未知の糖結合活性を持つ糖結合分子の探索を目的とするスクリーニング方法であって、以下の(a)〜(d)の工程を含む方法;
(a) 前記〔1〕又は〔2〕に記載の糖鎖アレイ基板を用意する工程、
(b) 被検試料に、標識化された抗糖結合分子抗体を混合することで当該試料中の被検糖結合分子を標識する工程、
(c) 工程(a)の糖鎖アレイ基板に、工程(b)であらかじめ標識した被検糖結合分子を含有する被検試料を接触させ、当該被検糖結合分子を上記基板表面上に提示された糖鎖分子と結合させる工程、
(d) 工程(c)において基板上の糖鎖分子に結合した標識化被検糖結合分子からの標識信号を観察する工程。
〔20〕 前記工程(a)で用意する基板がエバネッセント波励起蛍光観察のための導波路基板であり、前記工程(b)で用いる標識化された抗糖結合分子抗体が蛍光標識抗体であって、前記工程(d)において、基板上の糖鎖分子に結合した蛍光標識被検糖結合分子を、基板を洗浄することなく、エバネッセント波励起蛍光観察法により観察することを特徴とする、前記〔19〕に記載のスクリーニング方法。
〔21〕 前記未知の糖結合活性を持つ糖結合分子が、細胞表面又は細胞内に発現、又は細胞外に分泌された糖結合分子であり、あらかじめ前記細胞に、抗体認識用タグ遺伝子を導入し、細胞内で当該抗体認識用タグをランダムに発現、付加させることで、抗体認識用タグが付加された状態で細胞表面又は細胞内に発現、又は細胞外に分泌された糖結合分子であることを特徴とする、前記〔19〕〜〔20〕のいずれかに記載の未知の糖結合活性を持つ糖結合分子のスクリーニング方法。
〔22〕 前記〔19〕〜〔21〕のいずれかに記載のスクリーニング方法に用いるためのキットであって、あらかじめ基板上の決められた位置に、担体1分子あたり複数の同一種類の既知の糖鎖分子が結合している糖鎖−担体複合体が、複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板と共に、前記試料中の未知の糖結合活性を持つ糖結合分子を標識するための標識化された抗糖結合分子抗体含有溶液とを包含することを特徴とする、未知の糖結合活性を持つ糖結合分子のスクリーニング用キット。
本発明はこの糖鎖アレイの作製工程において、あらかじめ基板に高い固定化効率を示す担体分子に対し多数の糖鎖を結合させておき、この多価糖鎖修飾担体を基板上に最適条件で固定化することで糖鎖分子の基板への固定化効率を飛躍的に高め、従来の方式に比べ数百分の1の糖鎖消費量で実用的な糖鎖アレイを作製可能とするものである。このことは非常に高価で生産可能枚数も限られてきた糖鎖アレイのコストの劇的な引き下げを可能とするだけでなく、糖鎖アレイの作製工程における最大の障害要因となる糖鎖調達の困難さをも解決する。さらに本発明技術を利用すると、単にコストを引き下げることができるだけでなく、基板上に多価に提示された糖鎖の示す「クラスター効果」によって被検糖鎖結合分子に対する親和性が向上し、被検糖結合分子の検出感度が10倍程度向上する効果を得ることができる。この効果は従来技術で作製した糖鎖アレイ基板では実施できないような、弱い相互作用や貴重な微量試料を対象とした検出アプリケーションを実施可能とするという新しい価値を消費者に提供するものである。
また本発明では上記技術をエバネッセント波励起蛍光検出法と、新開発のワンステップ検出法と組み合わせることで、被検クルードサンプル中の微量の糖鎖結合分子の検出においても、糖鎖結合分子を蛍光標識することなく簡便・迅速に検出工程を実施可能とする利便性を消費者に提供する。
以上をまとめると、本発明は従来に比べ大幅に安価かつ高感度の大規模糖鎖アレイの提供を可能にするものであり、その価格・性能優位性と検出工程の簡便性が我が国における糖鎖アレイの普及と産業応用に大きな加速をもたらすものと確信する。
エバネッセント波励起蛍光観察法の原理を示す図である。 本願実施例において用いた反応槽を具備した導波路基板をエバネッセント波励起蛍光観察する際の装置構成を示す図である。 本願実施例において用いた基板上の反応槽形成ラバーの寸法とその位置関係、並びに反応槽内部のスポット配列方式を示す図である。 従来の共焦点蛍光検出方式における、糖鎖アレイ基板に対するプロービング操作工程を示す図である。 本願実施例において行った、エバネッセント励起蛍光検出方式と直接蛍光標識法を利用した、糖鎖アレイ基板に対するプロービング操作工程を示す図である。 本願実施例において行った、エバネッセント励起蛍光検出方式と検出抗体によるワンステップ検出法を利用した、糖鎖アレイ基板に対するプロービング操作工程を示す図である。 糖鎖修飾BSA担体の固定化条件検討試験の結果を示す図である。 作製した糖鎖修飾BSA担体の分子量変化確認の為に行ったポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の実験結果を示す図である。 糖鎖修飾BSA担体を固定化した基板の評価試験の結果を示す図である。 糖鎖修飾PAA担体の固定化条件検討試験の結果を示す図である。 基板にモデル糖として、マンノースを固定化する際に、PAA担体を用いる場合と用いない場合を比較した、比較検討試験の結果を示す図である。 本願実施例において、同一基板上に22種の糖鎖修飾BSA担体と、23種の天然由来複合糖質を混在させて固定化した、計45種の糖鎖含有分子固定化ハイブリット糖鎖アレイの、各糖鎖含有分子の配列位置対応を示す図である。 45種の糖鎖含有分子固定化ハイブリット糖鎖アレイに対し、14種の既知の蛍光標識レクチンプローブを用いてプロービングした評価試験の結果を示す図である。 45種の糖鎖含有分子固定化ハイブリット糖鎖アレイに対し、6種の既知の糖鎖抗体プローブを用いてプロービングした評価試験の結果を示す図である。 45種の糖鎖含有分子固定化ハイブリット糖鎖アレイに対し、ワンステップ検出法を用いて、培養細胞から培地中に分泌されたCD22の糖結合活性の検出試験結果を示す図である。 45種の糖鎖含有分子固定化ハイブリット糖鎖アレイに対し、ワンステップ検出法を用いて、血清中の糖鎖抗体の糖結合活性の検出試験結果を示す図である。 微生物菌体構成成分として知られるリポポリサッカライド(LPS)を固定化した基板の評価試験の結果を示す図である。 糖鎖構造を人工的に変化させたモデル糖タンパク質分子を固定化した基板を、既知の糖結合特異性を持つレクチン分子によりプロービングすることで、固定化した複合糖質上の糖鎖構造変化を検出する能力の評価試験の結果を示す図である。 従来の糖鎖アレイの作製に用いられてきた糖鎖・リンカー複合体と、糖鎖固定化PAA担体を同一基板上にスポットすることで行った感度比較試験の結果を示す図である。 生きた酵母(S.pombe)細胞表面の糖鎖アレイ解析の結果を示す図である。用いた糖鎖アレイは図21に示したスポットパターンに、図22に示した糖鎖をスポットした基板を用いた。 本願実施例7において使用した、計96種の糖鎖含有分子固定化ハイブリット糖鎖アレイのスポットパターンを示す図である。 本願実施例7において使用した、同一基板上に70種の糖鎖修飾PAA担体と、6種の糖鎖修飾BSA担体と20種の天然由来複合糖質を混在させて固定化した、計96種の糖鎖含有分子固定化ハイブリット糖鎖アレイの、各糖鎖含有分子の配列を示す図である。
本発明は担体を介して多種類の糖鎖分子を高密度に基板上に固定化した糖鎖アレイ基板自体、その製造方法、及びその使用方法、すなわちそれを用いた被検クルード試料中の糖鎖分子、糖結合分子に関する、簡便・迅速・高感度に検出、同定、解析、スクリーニング方法に関するものである。
以下、本発明の糖鎖アレイ基板及びその製造方法、使用方法を具体的に説明し、用いる用語について定義する。
1.基板に固定化する糖鎖
(1)糖鎖−担体複合体用糖鎖
本発明においては、糖鎖分子を基板に固定するために、後述するようなBSA(ウシ血清アルブミン)、PAA(ポリアクリルアミド)などの高分子担体(糖鎖結合に用いる官能基を分子内に多く有し、かつ他の生体分子の非特異的結合が少ない分子)と糖鎖を結合させた多価の糖鎖を担体上に提示した状態で基板上にスポット・固定化するが、その際に用いる糖鎖分子の構造としては、例えば糖タンパク質系糖鎖(N-結合型糖鎖とO-結合型糖鎖)、糖脂質系糖鎖、グリコサミノグリカン系糖鎖、又は多糖類由来オリゴ糖鎖などが挙げられる。
また、1)N-結合型糖鎖としては、高マンノース型・混成型・複合型からなるN-結合型糖鎖など、2)O-結合型糖鎖としては、ムチン型(O-GalNAc)・O-Fuc型・O-Man型・O-Glc型などからなるO-結合型糖鎖など、3)糖脂質系糖鎖としては、ガングリオ系列・グロボ系列・ラクト・ネオラクト系列糖鎖など、4)グリコサミノグリカン系糖鎖としては、ヒアルロン酸・ケラタン硫酸・ヘパリン・ヘパラン硫酸・コンドロイチン硫酸・デルマタン硫酸など、5)多糖類由来オリゴ糖鎖としては、キチン、セルロース、カードラン、ラミナリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲン、アラビノガラクタン、アルギン酸、フルクタン、フコイダン、キシランなどに由来するオリゴ糖鎖などが例示できる。
またさらに詳細な具体的な糖鎖構造の例としては、N-結合型糖鎖のM3・M4・M5・M6・M7・M5A・Hybrid (monoagalacto,bisect)・NA1・NA1(α1-6Fuc)・NA2 (monoagalacto)・NA2 (monoagalacto, bisect)・NA2・NA2 (α1-6Fuc)・A2・NA2(bisect)・NA3・NA3 (α1-6Fuc)・NA4・NA4 (α1-6Fuc)・NA5 (pentaagalacto, bisect)、O-結合型糖鎖のGA2・GA1・GM3-NeuNAc・GM3-NeuGc・GM1・GM2・GD1a・GD1b・GD3・Gb3・Gb4・Forssman・LNnT・LNT・Galili pentasaccharide・B-hexasaccharide・LNFP-I・LNFP-II (Lea)・LNFP-III (Lex)・LNFP-II (Leb)・A-hexasaccharide・A-heptasaccharide・B-pentasaccharide・6'-Sialyl lactose・pLNH・βGalLac・βGal2Lac ・LN3・GN3・GN4・maltotriose・Sialyl Lexなどを挙げることができる。
(2)直接基板に結合可能な複合糖鎖
本発明では基板上の別の位置に、上記の糖鎖−担体複合体と並べて複合糖質含有試料をスポットしたハイブリットアレイを作製することができる。ここで複合糖質とは、糖鎖を持つ生体内高分子の総称である。本発明の複合糖質としては、生体由来の血清などの複合糖質含有試料を未精製のまま用いることができるが、好ましくは、精製された糖タンパク質(糖ペプチドも含む)、プロテオグリカン、糖脂質や、未精製の細胞表層抽出物などである。典型的には天然物由来であるが、遺伝子組換え形質転換体からの発現産物としての糖タンパク質や合成複合糖質も包含される。
2.担体
(1)担体材料
本発明に用いる担体としては用いる分子には、分子内に糖鎖を含まず、かつ十分に精製された分子であり、さらに分子内に基板に結合する為の多数の官能基を有し、かつ糖類に対する親和性の高い高分子材料であればどのような材料であっても良く、天然由来でも合成高分子であってもよい。またより好ましくは、安価で十分な量の供給が見込める等の性質を備えていることが望ましい。これらの条件が揃った担体に適している分子の一例として牛血清アルブミン(BSA)、ポリアクリルアミド(PAA)を例示することが出来る。PAAは、アクリルアミドを重合反応して得られる高分子材料であり、分子量10〜1000 kDa程度の物が利用できるが、分子量30 kDa程度のものが好適にもちいられる。
(2)担体への糖鎖の結合方法
本発明においては最終的に担体に糖鎖を共有結合的に導入できる方法であれば、担体への糖鎖の結合方法は限定されないが、この導入反応の反応効率が高いこと、簡便・安価に導入を実施できることが好ましい。一例としてBSAの場合、リンカー分子であるN-ethoxycalbonyl-2-ethoxy-1,2-dihydroquinolone(EEDQ)や、N-hydroxysuccimide (NHS)を介した糖鎖の導入法が例示できる。またPAAの場合ニトロフェニル基を側鎖に有するPAA(poly(4-nitro-phenylacrlyrate))に対し、還元末端をアミノ化した糖鎖を反応させることにより、糖鎖を付加する方法を例示することができる。
(3)糖鎖−担体複合体の保存方法
反応生成物の安定性は高いので、-30℃の冷凍庫内で冷凍保存が可能である。より好ましい形態として、試料の凍結融解の回数を可能な限り低減する為、1回に使い切る容量分だけ小分けにした包装単位で冷凍保存しておく形態を例示することができる。
3.基板
(1)基板材料
本発明における基板として、糖鎖−担体複合体、天然の複合糖質が結合できる基板材料を用いることができるが、導光性を有し、本発明の解析装置の光照射手段により、その表面にエバネッセント波を発生できるものが好ましい。硼珪酸ガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、高屈折率光学ガラス(BK7、SFF03)などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
(2)基板の処理
本発明における糖鎖が固定化された基板は、糖鎖−担体複合体を直接固定化することはできるが、コート剤によりコートされているのが好ましい。その際に用いられるコート剤として好ましいのは、エポキシ基を活性基として有する化合物であり、典型的にはエポキシ基を活性基として有するシラン化合物を用いるがこれに限定されるものではなく、ビニルスルホン基、活性エステル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、イソチオシアネート基、ハイドロゲル層等がコートされた基板上に細胞結合性タンパク質が固定化された基板が使用可能である。
まずエポキシ基を活性基として有するシラン化合物をコーティングした基板に、糖鎖固定化担体をスポットし、これらの持つヒドロキシル基を介して基板表面に固定化する。本発明では、より好ましい形態として、糖鎖修飾担体を固定化した基板を洗浄後、蛍光標識した被検プローブ分子の基板表面への非特異的吸着を防止するために、基板上の非スポット領域の表面に残存する活性基(エポキシ基)をブロックする為のブロッキング操作工程を設ける。その際に使用するブロッキング剤としては、エポキシ基と反応性を有する化合物を含むブロッキング剤であれば何でも良いが、本願の実施例では、牛血清アルブミン(BSA)(SIGMA社)を用いた。
(3)基板への固定化方法
本発明において上記の基板へ糖鎖−担体複合体をスポットし、これらの持つヒドロキシル又はアミノ基を介して基板表面に固定化する操作では、スポット溶液中の糖鎖濃度と固定化される糖鎖量が、一定の正の非線形相関を示す為、スポット溶液中の糖鎖含有濃度が高いほど、糖鎖の高密度な固定化が期待できる。一方、スポット液中の糖鎖を高濃度にすると糖鎖原料のコストがかさむため、コスト管理面では現実的な糖鎖濃度選択が重要になる。
この際の生体由来複合糖質試料を溶解する溶媒やその濃度に制限は無く、糖鎖−担体複合体濃度は水性溶媒中に0.01〜10 mg/mL程度の濃度範囲で溶解させた状態で用いることができるが、コスト/パフォーマンス比が高い条件として、松浪硝子工業社のスポッティングバッファーを用い、糖鎖−担体複合体の終濃度を0.1-0.5 mg/mLにする条件を例示することが出来る。
また、本発明では上記の糖鎖−担体複合体と並べて生体由来複合糖質試料を基板上にスポットしたハイブリットアレイも作製可能であるが、当該生体由来複合糖質試料の場合も、同様の濃度条件で、同様の手法でスポットすることができる。
(4)基板を備えた反応層の構造
上記基板は、複数の反応槽を形成させた基板であることが好ましい(図2)。より好ましくは、複数の穴を有するラバーを基板上面及び/又は下面に貼り付けることで、複数の反応槽を形成させた基板である。本発明者らが設計・開発した14穴ラバーを所定の位置に貼り付け、14の反応槽を作製させる。この14穴ラバーには14の長方形の穴が規則正しく空いており、専用のアジャスター上でスライドガラスと密着させることによってスポット周囲に正確に蛍光標識化糖プローブ溶液を満たすことが可能となる。この反応槽に被検蛍光標識プローブ分子溶液を満たすことで、14種の独立した相互作用観察実験を1枚の基板上で同時に並行して実施することが可能であり、大幅な時間とコストの軽減を可能としている。本発明の基板においては、同一アレイスポットパターン内に同一種の糖鎖スポットを複数個配置し、固定化することが望ましい。これにより同一種の糖鎖に対する被験糖結合分子の相互作用に基づく蛍光強度の平均値を算出することが可能となり、スポットの大きさ・形状の不良や、基盤の不均一性に由来するレクチンの固定化量の相違、あるいはスポットに結合した標識プローブ分子数、励起光の不均一性や検出素子の電気的雑音等に由来する、測定したスポットシグナル強度のバラツキ等に起因する測定誤差を軽減できる。また、本発明の基板においては、糖鎖固定化担体を複数種配置固定するとともに、さらに同一基板上に生体由来の糖タンパク質を配置、固定化することが可能である。この基板によれば、被検糖結合分子の結合する糖鎖構造情報と、実際に結合するタンパク種の同定を同時に行うことができる。
(5)基板の保存方法
本発明で得られた基板は、ブロッキング工程が終わった後に、遠心機などを用いて基板上の水分を除去した後に、冷蔵庫(4℃)などで冷蔵保存することにより、基板上の固定化糖鎖の活性を保持したまま長期保存する方法が有用である。
4.解析対象
(1)糖鎖結合性分子
本発明方法において解析対象となる糖結合性分子は、典型的には天然に存在する各種細胞表面もしくは細胞内、又はウィルス表面に存在する糖結合性分子又は、細胞より遊離・分泌した糖結合性分子であり、糖鎖分子に結合しさえすれば全て対象となり、その種類に特に制限はない。また前記の糖結合性分子には天然の当該タンパク質に対応した、一部アミノ酸に変異を導入したものや検出・精製の簡便化の為にタグを付加して人工的に任意の細胞発現系にて発現させた分子も含まれる。タンパク質としては例えば、糖鎖抗体、各種レクチン、レセプターなどが挙げられる。糖結合性分子には、例えば糖鎖抗体や糖結合性タンパク質であるレクチン、サイトカイン、生体内レセプター、ペプチド、RNAアプタマーなどが挙げられる。本明細書でいう糖結合性分子にはこれらやこれらの変異・改変体も包含する。抗体としてはIgG、IgM、IgA、IgE、IgYなどのサブクラスを含む、ポリクロナール抗体又はモノクロナール抗体又は一本鎖抗体などが挙げられる。また基板に固定する細胞結合性タンパク質には、ポリペプチド鎖や上記タンパク質を部位特異的変異導入や化学修飾・糖鎖改変などの方法で物性や結合特異性、および親和力などを改変したものが例示できる。またレクチンとしては、動・植物、真菌、細菌、ウィルスなどから得られる様々な分子家系に属するレクチン、すなわち、細菌を含むすべての生物界で見出されるリシンB鎖関連の「R型レクチン」、真核生物全般に存在し糖タンパク質のフォールディングに関与する「カルネキシン・カルレティキュリン」、多細胞動物に広く存在し、「セレクチン」、「コレクチン」等代表的なレクチンを多く含むカルシウム要求性の「C型レクチン」、動物界に広く分布しガラクトースに特異性を示す「ガレクチン」、植物豆科で大きな家系を形成する「豆科レクチン」、およびこれと構造類似性をもち動物細胞内輸送に関わる「L型レクチン」、リソソーム酵素の細胞内輸送に関わるマンノース6-リン酸結合性の「P型レクチン」、グリコサミノグリカンをはじめとする酸性糖鎖に結合する「アネキシン」、免疫グロブリン超家系に属し「シグレック」を含む「I型レクチン」などが挙げられる。
(2)糖鎖分子
本発明においては、精製もしくは未精製の複合糖質、特に天然由来複合糖質中の糖鎖分子、典型的には各種細胞表面もしくは細胞内、又はウィルス表面に複合糖質として存在する糖鎖分子が解析対象となる。
(3)解析対象試料及びその調製
解析対象試料としては、被検複合糖質又は被検糖結合分子を含む試料であればどのようなものも対象となるが、特に、生体由来クルードサンプルを幅広く対象とすることができる点、及びこれらの試料を従来より大幅に高感度に検出できる点に本発明の特徴及び優位性がある。解析対象試料の一例として、細胞培養時の培地上清や、ヒト由来を含む動物の体液(血液、血清、血漿等を含む)、分泌液(唾液、涙液、汗線分泌液、尿等を含む)、洗浄液(口蓋、胃、腹腔洗浄液等を含む)を挙げることができる。その際、細胞として、癌細胞やウィルス感染細胞、各種疾患の対応臓器・組織由来の細胞などをターゲット細胞とすることができ、同患者の血液・体液などを対象とする、各種疾患の診断方法に用いることができる。その際に、癌細胞などは培養して、その培養上清を検査することができるが、他の細胞の場合は、細胞破砕物の懸濁液若しくは抽出液を解析対象とすることができる。
また、細胞としては、ヒト、哺乳動物由来の細胞、植物細胞、細菌、酵母等の微生物などに適用でき、遺伝子組換え形質転換細胞も包含される。その際、生存又は非生存状態の細胞自体の懸濁液、細胞培養上清又は細胞破砕物の懸濁液若しくは抽出液を対象とすることができる。
したがって、本発明において「細胞」というとき、これら解析対象試料となる細胞の全てを含む。
また、本発明では、ウィルス表面の複合糖質又は糖鎖結合分子を、被検複合糖質又は被検糖鎖結合分子とする場合、ウィルス感染細胞を用いて解析することもできるが、感染細胞から抽出したウィルス自体の懸濁液、破砕液又は抽出液を用いることもできる。
なお、細胞及び/又はウイルスを「細胞/ウイルス」と表記する場合があり、その場合にはウイルス感染細胞も含まれる。
5.本発明の検出方法、解析方法
(1)糖鎖結合分子の検出又は解析方法
本発明によれば、たとえば、生体由来の血液、体液等の生体試料、細胞/ウィルスの生菌又は死菌の懸濁液、破砕液、細胞培養上清、若くはそれらの抽出液、濃縮液等に含まれる各種の糖結合分子を、本発明の糖鎖アレイを用いることで検出(同定)又は解析することができる。
すなわち、被検糖結合分子(各種レクチン、抗体など)を含む被検試料を溶液又は懸濁液の状態で、本発明の糖鎖アレイ基板に作用させ、被検試料中の糖結合分子と糖鎖アレイ基板上の特定の糖鎖分子との結合状態を観察することで、被検試料中の糖結合分子の検出又は解析を行う。
典型的には、被検糖結合分子を含む試料中に、標識化された抗体を混合することで被検糖結合分子を標識し、標準的な糖鎖分子が配置された糖鎖アレイ基板に接触させ、基板上の糖鎖分子に結合した標識化被検糖結合分子からの標識信号を観察する。
その際、基板としてエバネッセント波励起蛍光観察のための導波路基板を用い、蛍光標識抗体で試料中の糖鎖結合分子を標識することで、基板の洗浄工程は不要となり、エバネッセント波励起蛍光観察法により、特定の糖鎖分子に結合した蛍光標識被検糖結合分子との結合状態を、蛍光信号として観察することが可能である。
また、本発明の糖鎖アレイ基板はきわめて感度が良いため、細胞又はウィルス感染細胞を生存したままの状態で、懸濁させて糖鎖アレイ基板に作用させることで、その細胞表面の糖結合分子の糖結合活性の有無やその糖特異性の違いを観察することができる。この際に細胞内に糖結合性タンパク質の遺伝子を導入した細胞を用い、遺伝子導入前後の糖鎖アレイ基板への結合を比較することで、既知糖結合性タンパク質の糖結合活性の評価・解析を行うことが可能である。また一方で興味ある生理活性・機能を示す任意の細胞を用い、その細胞表面の未知糖結合分子の糖結合活性の特徴を評価・解析することも可能である。
その際、被検細胞表面を直接蛍光標識することや、既存の細胞内核染色・ミトコンドリア染色を用いることも可能ではあるが、好ましくは細胞内に取り込ませて代謝後に蛍光色素として利用できる代謝変換型蛍光標識剤が用いられる(特開2008−18793号公報)。代謝変換型蛍光標識剤は細胞表面に影響を与えることなく生細胞選択的に細胞を蛍光標識することができる点に優位性がある。代謝変換型の蛍光標識剤としては、Invitrogen 社製蛍光色素「CellTracker Orange CMRA 548/576 (CMRA)」を一例として挙げることが出来る。代謝変換型蛍光標識剤は懸濁液中に加えるだけで、生きた細胞内に浸透して細胞内部に入り込み、細胞内で膜非透過性グルタチオン蛍光色素付加体を生成する。本発明の実施例7ではこのCMRAを利用するが、細胞内に取り込まれて代謝後に蛍光性をもつ物質であればこれらに限定されない。
そして、当該蛍光標識された生存状態の細胞を、懸濁液の状態で本発明の糖鎖アレイ基板に作用させ、基板表面に非特異的に吸着している余剰な細胞を除去した後、基板上の披検細胞からの蛍光強度を観察する。その際の余剰細胞の除去手法としては、特開2008−18793号公報に記載の手法に従い、基板を液浸状態で180度回転させて下向きとすることにより、前記余剰細胞を重力により沈降除去する手法を用いることが好ましく、かつ基板表面の蛍光をエバネッセント波励起蛍光観察法に基づき観察することが好ましい。
(2)複合糖鎖分子の検出(同定)又は解析方法
本発明によれば、被検複合糖質含有試料中の糖鎖分子、たとえば、生体由来の血液、体液等、細胞/ウィルス自体の懸濁液、破砕液、細胞培養上清、若くはこれらの抽出液、濃縮液などに複合糖質として存在する各種の糖鎖分子を、本発明の糖鎖アレイを用いることで検出又は解析することができる。
すなわち、標準的な糖鎖分子が部分的に配置された糖鎖アレイ基板の他の部分に、被検複合糖質含有試料を固定化し、標準糖鎖分子との結合が既知の標識化された結合分子(レクチン、抗体など)の溶液を接触させ、両者それぞれに結合した標識化結合分子からの標識信号を比較観察することで、試料中の複合糖質の種類、性質を推定することができる。
その際、基板としてエバネッセント波励起蛍光観察のための導波路基板を用い、蛍光標識抗体で試料中の糖鎖結合分子を標識することで、基板の洗浄工程は不要となり、エバネッセント波励起蛍光観察法により、糖鎖分子と蛍光標識糖結合分子との結合状態を、蛍光信号として観察することが可能である。
(3)細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合活性の解析方法
本発明によれば、動植物細胞、微生物細胞等の各種細胞表面もしくは細胞内、又はウィルス表面の糖結合分子の糖結合活性を解析することができる。
すなわち、まず、細胞/ウィルスの懸濁液、破砕液若しくは抽出液由来試料の被検糖結合分子を標識するが、その際には、解析しようとする被検レクチン類一般を認識する蛍光標識などで標識化した抗体、又は被検抗体(免疫グロブリン)類一般を認識する標識化抗体など、対象となる被検糖結合分子をより特異的に認識できる抗体を用いることが好ましい。たとえば、このような抗体の概念に包含される分子として、被検糖結合分子に対するIgG、IgM抗体若しくはそれに対応するFab’断片や組み換え一本鎖抗体を例示することができる。またこれら抗体は、被検抗体に対する一次抗体と、その一次抗体を認識する二次抗体(抗IgG抗体や抗IgG(Fc)抗体)を混合して組み合わせて利用することで、さらに特異性を高める方法も利用可能である。
次いで、標識化された被検糖結合分子を含有する細胞培養上清又は細胞・ウィルスの懸濁/破砕液若しくは抽出液を、既知の標準的な糖鎖分子が配置されている本発明の糖鎖アレイ基板と接触させ、基板表面上の糖鎖分子と結合した標識化被検糖結合分子からの標識信号を観察する。
その際、基板としてエバネッセント波励起蛍光観察のための導波路基板を用い、蛍光標識抗体で試料中の糖鎖結合分子を標識することで、基板の洗浄工程は不要となり、エバネッセント波励起蛍光観察法により、特定の糖鎖分子に結合した蛍光標識被検糖結合分子との結合状態を、蛍光信号として観察することが可能である。
また、上述のように、本発明では、細胞又はウィルス感染細胞を生存したままの状態でも、懸濁液として、本発明の糖鎖アレイ基板に作用させることで、その細胞表面の糖結合分子の分布状態を観察することができる。このことにより、生きたままの細胞表面又は細胞内の糖鎖結合分子の糖結合活性を解析することができる。その際の具体的手法は、上記5.(1)に記述したとおり、特開2008−18793号公報に開示された手法が適用できる。
(4)本発明で用いる標識化抗体
本発明では、基板表面の糖鎖分子と、接触させる試料などの溶液中の糖結合分子との結合状態を、糖結合分子に結合している標識化抗体からの蛍光などの標識信号を観察することで、試料中の糖鎖分子、糖結合分子に関する情報を解析することになる。
そのために使用する抗体については、溶液中の糖結合分子、試料中の被検糖結合分子に結合能を有するものであれば、サブクラスや親和性に特に制限はなく、抗体フラグメントでもよい。一例として、一次抗体に約0.1-0.15 mg/mLの各種被検タンパク質に対する抗体、二次抗体に約0.1-0.15 mg/mLのCy3-標識化抗IgG抗体を用いる例を例示できる。
試料中のレクチン解析に用いるためのレクチン類一般を認識する抗体としては、各種市販抗レクチン抗体(ConA、RCA等の多数の植物レクチンやシグレック、ガレクチン等の多数の動物レクチン)が例示でき、抗体類一般を認識する抗体としては、抗IgG抗体が例示できる。また、スクリーニングなどで用いるタグ認識抗体としては、Hisタグ、GSTタグ、V5タグ等に対する抗体(抗Hisタグ抗体、抗GSTタグ抗体、抗V5タグ抗体)が例示できる。
このように、本発明において「抗体」というとき、目的の被検糖結合分子に結合能を有する抗体活性を有するものを指し、また「糖結合分子を認識する抗体」というとき、糖結合分子を直接認識する抗体と共に、当該抗体と結合する、間接的に糖結合分子を認識する抗体も包含される。
(5)エバネッセント波励起蛍光検出法を用いた直接標識法と使用する色素について
従来の共焦点スキャナーを用いる方法では、インキュベートと洗浄の操作を繰り返し行う為、非常に操作が煩雑であるという問題があった(図4)。本発明では被検糖結合分子の糖結合活性を検出する上で、その検出方法に2種の方法が適応可能である。第一の方法は被検糖結合分子を蛍光色素で直接蛍光標識後に、糖鎖アレイと接触させて非洗浄条件下の平衡状態でエバネッセント波励起蛍光観察法により相互作用を蛍光強度によって観察する方法であり、以下これを「直接標識法」と呼ぶ(図5)。本法は実験系が非常にシンプルであることが利点である。
蛍光色素として利用できる蛍光標識剤としては、GEヘルスケアバイオサイセンス社のCy3 mono-reactive dyeシリーズの色素を挙げることが出来るが、混合するだけで被検糖結合分子を蛍光標識できる色素であれば、これに限定されない。
また、生存状態の細胞懸濁液を観察する場合には、一般的な核やミトコンドリア染色等の非特異的蛍光色素を用いることも可能ではあるが、より好ましくは生細胞特異的な染色を可能とする代謝変換型の蛍光標識剤を生きた細胞中に取り込ませることが好ましい。その場合の代謝変換型の蛍光標識剤としては、典型的にはInvitrogen 社製蛍光色素「CellTracker Orange CMRA 548/576 (以下CMRA)」が用いられる。
(6)エバネッセント波励起蛍光検出法を用いたワンステップ検出法について
エバネッセント波励起蛍光検出法を用いたワンステップ検出法は、糖結合分子とこれに対応する蛍光標識抗体をあらかじめ混合して免疫複合体を形成させ、この免疫複合体を糖鎖アレイと接触させたのちに非洗浄条件下の平衡状態でエバネッセント波励起蛍光観察法により相互作用を蛍光強度によって観察する方法であり、以下これを「ワンステップ検出法」と呼ぶ(図6)。ワンステップ検出法はエバネッセント波励起蛍光検出系の洗浄操作が不要という利点を最大限に生かした迅速検出系であり、従来の共焦点スキャナーを用いる方法における「インキュベートと洗浄の操作を繰り返し」による煩雑な操作の省略によるハイスループット化を達成可能とする為、本発明において生体由来クルード試料中の被検糖結合分子の糖結合活性を迅速に検出する上で非常に有用な技術である。
また、生存状態の細胞の懸濁液を被検試料として用いる場合は、糖鎖アレイの基板表面に非特異的に吸着している余剰細胞を除去することが好ましく、特に、特開2008−18793号公報に記載の手法に従い、基板を液浸状態で180度回転させて下向きにして前記余剰細胞を重力により沈降除去する手法を用いることがさらに好ましい。
6.糖鎖結合分子の未知の糖結合活性スクリーニング
(1)スクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法では、被検試料(生体試料、動物細胞、微生物細胞、形質転換体由来試料など)中の未知の糖結合活性を持つ糖結合分子(糖鎖結合分子自体が未知の場合、及び糖鎖結合分子は既知であっても、どのような糖鎖を認識し結合するかという糖結合活性が未知の場合を包含する。)を対象とする。なお、ここで糖結合分子としては典型的にはレクチン、又は抗糖鎖抗体があげられるが、これらには限定されず、糖鎖と結合活性を有するものは全て対象となる。
本発明のスクリーニング方法では、あらかじめ被検試料に対して標識化された既知の抗糖結合分子抗体を混合して被検糖結合分子を標識しておき、本発明の糖鎖アレイ基板に当該被検試料を接触させて基板表面上の糖鎖分子と結合した標識化被検糖結合分子からの標識信号を観察する工程を含むものである。この標識信号の観察は、典型的にはエバネッセント波励起蛍光検出法によりパターンとして観察される。この観察は、既知の糖結合活性を持つ糖結合分子のパターンと比較することで、新規な糖結合活性パターンを示す糖結合分子が検出されれば、それが新規な未知の糖結合活性を有する糖鎖結合分子の候補となる。
本発明は糖鎖結合分子として未知の糖結合活性物質のスクリーニングにおいて、従来法に比べ大幅な効率向上をもたらす能力を有する。方法の一例として、遺伝子導入した動物細胞又は細菌に、タグ部分を結合させた任意被検分子を発現させ培養上清に分泌させる工程、次いでこの培養上清をタグ部分に対して親和性を持つ一次抗体と、この一次抗体に親和性を持つ蛍光標識二次抗体と混合して三者複合体を形成する工程、次にこの三者複合体を含有する被検溶液を本発明にて供給される高感度糖鎖アレイに基板上に供する工程へと順次導き、最終的にこの基板をエバネッセント波励起蛍光検出法にてスキャニングし、発現タンパクと任意固定糖鎖間の未知の結合活性の有無を迅速検出する方法を挙げることができる。
また、癌細胞やウィルス感染細胞、各種疾患の対応臓器・組織由来の細胞などのターゲット細胞又は同血液・体液などを対象とし、未知の糖結合活性物質を検出するためのスクリーニング方法に適用することもできるから、癌や各種疾患の優れたマーカーを検出することが可能となる。
(2)スクリーニング用キット
本発明のスクリーニング用キットは、上記スクリーニング方法で用いられる本発明の糖鎖アレイ基板、すなわち、あらかじめ基板上の決められた位置に、担体1分子あたり複数の同一種類の既知の糖鎖分子が結合している糖鎖−担体複合体が、複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板と共に、スクリーニングの対象となる被検試料中の未知の糖結合活性を持つ糖結合分子を標識するための標識化された抗糖結合分子抗体含有溶液とをセットとして包含する。
本発明は従来法に比べ大幅な効率向上をもたらす糖鎖結合分子の未知の糖結合活性スクリーニングキットを提供することができる。キットの一例として、あるタグ遺伝子を動物細胞又は細菌に導入する際に必要な試薬、タグ部分に対して親和性を持つ一次抗体と、この一次抗体に親和性を持つ蛍光標識二次抗体、さらに本発明において提供される糖鎖−担体複合体固定化アレイ基板のうち、全部又は一部を組み合わせたものを挙げることができる。
また上記キットに、癌や各種疾患特異的糖鎖を含有する複合糖質試料を固定化した基板を加えて、癌や各種疾患のためのマーカーになり得る未知の糖鎖結合性因子のスクリーニング用のキットを提供することもできる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕糖鎖固定化BSA担体を用いた糖鎖アレイの作製とその性能評価
(1)糖鎖修飾BSA担体の基板への固定化条件の検討
まず、はじめに糖鎖結合BSA担体とモデルとして、BSA-trimannoside(Glycotech社)を用意した。また比較対照として、分子内に1本のハイマンノース型糖鎖を持つ糖タンパク質であるRNase B(SIGMA社)も用意した。これら2種のマンノース含有分子をスポッティングバッファー(松浪硝子工業社より購入)に対し、種々の濃度になるように溶解した後に、非接触スポッター(Cartesian社Microsys4000)を用いて、スライド基板に対して液滴を滴下して直径200 μmのスポットを作製した。スポットは1サンプルに付き、基板上に横に3点ずつ中心間間隔300 μmの間隔で配列した。このスポッティング工程に入る前に、スライド基板上に対しては本発明者らが設計・開発した14穴ラバーをスライド基板上の所定の位置に貼り付け、14の独立した反応槽を作製した。この14穴ラバーは厚さ1 mmの黒色シリコンゴム製で、縦横6.8×5.3 mmからなる14の長方形の穴が規則正しく空いており、スライド基板に貼り付けたときに14の反応槽を形成する(図3)。この反応槽は40 μLの試料溶液を反応槽内部に注入することで、反応槽内の基板表面を十分量の試料溶液で満たすことができる。この反応槽内に対してそれぞれスポッティングを行った。十分に反応時間を置いた後に、基板を界面活性剤である1% Triton-X 100(ナカライテスク社)と500 mMグリシン(ナカライテスク社)を含有するトリス緩衝生理食塩水溶液で洗浄した。次に基板上の非スポットした領域の表面に残存する活性基(エポキシ基)に対するブロッキング操作として、1% BSAを含有する燐酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)溶液を反応槽内に40 μL注入し、20℃で1時間静置した。ブロッキング工程が終わったら、次にスライドガラス用遠心機(スピンドライヤーミニ・和研薬工業)を用いて基板上の水分を飛ばしてブロッキング剤を除去し、乾燥した状態のまま冷蔵庫(4℃)内で基板を保管した。
上記の工程で作製された基板上に目的の糖鎖が配列・固定化しているか、この基板が実用的な感度を備えているかを確認する為、すでに糖結合活性がよく知られているコンカナバリンA(ConA)を用いて、評価実験を行った。ConAはマンノースに対する強い結合特異性を有することが知られている豆科のレクチンであり、本実施例においてはローダミン(Rho)標識のConAをベクター社より購入し、これを100 ng/mLになるようにプロービングバッファー(1% Triton-X 100と500 mMグリシンを含有するトリス緩衝生理食塩水溶液(TBS))で希釈して、そのうち40 μLを前記工程で作製したアレイ基板上の反応槽内に注入した。次にプロービング反応を十分に進行させる為に、温度25℃の振盪条件下で、3時間インキュベートを行った後に、エバネッセント波励起蛍光検出スキャナー(モリテックス社)で相互作用を観察した。このスキャナーは基板端面より励起光を入射し、励起されて生じた蛍光発光を、基板から見て下方に配置されているCCDカメラで検出する。以下の実験はスキャン時のパラメータを全て積算回数「4回」、露光時間「199 msec」に揃えて実施した。
スキャニングの結果、2種のマンノース含有分子のスポットは共に高い蛍光輝度を示し、Rho-ConAプローブとの強い相互作用が観察された。この結果から、糖鎖修飾BSA担体を本実験条件で固定化することにより、十分な感度を持って糖鎖が固定化されることが確認された。スポッティング液中の最適な糖鎖修飾BSA担体の濃度は0.1 mg/mL程度であり、この近辺の濃度範囲が最もコストパフォーマンスに優れることが分かった(図7)。また糖鎖固定化担体の低濃度溶解時のスポット形状安定剤として、0.1 mg/mLのBSA添加が非常に有効であるということが分かった為、以降の実施例ではこれらの濃度条件を本条件に固定した。また糖分子を担体に多価に基板上に提示したBSA-trimannosideはRNase Bに比較して、一桁以上低い濃度においても相互作用が観察可能であった。BSA-trimannoside(M3)とRNase B(M4〜6)の糖鎖構造は若干異なることや、分子量やペプチドシークエンスが一致しないので固定化効率が異なる為、厳密な比較は出来ないが、この結果はマンノース構造が担体分子上において多価状態で提示されることにより、レクチンとの親和性が向上していることが、感度の向上に大きく影響していると考えられる結果を得た。
(2)グリコサミノグリカン(GAG)修飾BSA担体の調製と基板への固定化
本実施例ではアレイ基板上に固定化する糖鎖分子として、モデルとなる6種のGAGを選択し、これをBSA担体に固定化してBSA-GAGを調製した上で、これをスライド基板上に固定化した。今回の実験ではGAGとしてコンドロイチン硫酸A(CSA)、ケラタン硫酸(KS)、コンドロイチン硫酸B(CSB)、ヘパリン(Hep)、ヒアルロン酸(HA)、ヘパラン硫酸(HS)の6種を選択し、生化学工業から購入したものを用いた。これら各種GAGを5 mg秤量した後に、0.4 mLの水に溶解した。ここにペプチド合成用試薬であるN-ethoxycalbonyl-2-ethoxy-1,2-dihydroquinolone(EEDQ)をエタノールに溶解して10 mg/mLとしたものを500 μL加えて、室温で1時間結合反応を進行させた。次にここに糖鎖結合担体となるBSAを精製水に溶解して20 mg/mLの濃度にしたものを500 μL加えて、4℃で12時間、結合反応を進行させた。反応終了後、これらの溶液は遠心限外ろ過膜ユニットを用いて、溶媒をトリス・燐酸緩衝液(TBS)に置換することで未反応の試薬を除去した。上記の操作ではEEDQは和光純薬工業社から、BSAはSIGMA社から、遠心限外ろ過膜ユニットはMillipore社からそれぞれ購入したものを用いた。GAGの担体に対する結合反応の成否はSDS-PAGEで確認した(図8)。各BSA-GAGのSDS-PAGEにおける泳動パターンは、2番のレーンに泳動したBSAに比べ著しく高分子側に移動しており、BSAがGAGの付加によって高分子化した(特に4,7レーンのBSA-GAGは泳動ゲルに入り込まない程に高分子化している)ことが確認された。
前述の6種のBSA-GAGは、次にスポッティングバッファーに対し、タンパク終濃度として0.1 mg/mLになるように溶解した後に、非接触スポッターを用いて、スライド基板に対して液滴を滴下してスポットを作製し、前述の操作でアレイ基板を作製した。
(3)RANTESプローブを用いたGAG修飾BSA担体固定化アレイの性能検証
上記の工程で作製された基板上に目的の糖鎖が配列・固定化しているか、この基板が実用的な感度を備えているかを確認する為、すでにGAGへの結合が認められているRANTESを用いて、検証実験を行った。この実験でプローブとして用いたRANTESはCy3-monoreactive dyeを用いて蛍光標識ラベル化した後、プロービングバッファーで1 μg/mLの濃度に希釈して糖鎖アレイの反応槽内に供した。インキュベート反応は温度25℃の振盪条件下で、3時間行うことで十分に結合反応を進行させた。インキュベート工程後は洗浄せずに平衡状態のまま、前述のエバネッセント波励起蛍光検出スキャナーで相互作用を観察した。結果、図9が示すように、GAG修飾BSA担体を固定化したスポットにおいて、高い蛍光輝度が観察された。この結果から、糖鎖が基板上に正しく配列・固定化されており、この糖鎖が低濃度のプローブから検出できるほど高密度に固定化されていること、そして本検出系が、低濃度の糖結合分子の活性検出において十分な実用感度を持ち、実用上極めて有効に機能することが確認された。
〔実施例2〕糖鎖修飾ポリアクリルアミド(PAA)担体を用いた糖鎖アレイの作製とその性能評価
(1)糖鎖修飾PAA担体を用いた糖鎖アレイの作製条件の検討
本実施例では実験モデルとして、PAA-マンノース (Glycotech社)を用意し、これに対する比較対照として糖鎖非修飾PAAとBSA-マンノース (Dextra社)を選択した。これらを終濃度として1〜0.002 mg/mLになるようにスポッティングバッファーに溶解後、非接触スポッターを用いて、スライド基板に対して液滴を滴下してスポットを作製した。スポットは1サンプルに付き、基板上に横に3点ずつ配列した。この基板を前述の条件でインキュベート・ブロッキングすることで、糖鎖修飾PAA担体を基板上に配列させた基板を作製した。この基板に対し、糖結合性の蛍光標識プロービング分子として100 ng/mL Rho-ConAを用いて、前述のプロービング操作に従って基板上に固定化された各種担体上のマンノースに対する相互作用の強度を観察した。
結果、図10が示すように、PAA-マンノースを固定化したスポットにおいて、BSA- マンノースを固定化したスポットより若干強い蛍光強度が観察された。またこの際にネガティブコントロールのPAA鎖のみを固定化したスポットでは蛍光が観察されず、この相互作用が糖鎖依存的な相互作用であることが確認された。また、この系のプロービングバッファーに競合阻害糖であるマンノースを10 mM加えると、この相互作用は完全に阻害された。実験結果からPAA-マンノースを基板上に固定化することで、Rho-ConAのマンノースに対する糖結合活性を、糖鎖修飾PAA担体の採用と本実験系を組み合わせることで、非常に高感度に検出可能であることが確認された。糖鎖修飾PAA担体は高価である為、微量の糖鎖修飾PAA担体を高効率に固定化する技術が実用上の大きな課題である。本実験結果より、PAA担体濃度として0.1 mg/mL程度まで希釈して基板にスポットすることで、費用対効果の観点における最適濃度であると結論付け、以下の実験における濃度条件とした。
(2)糖鎖修飾PAA担体の有効性の確認
次に糖鎖を基板表面に固定化する際に、糖鎖修飾PAA担体を利用する場合の有用性を確認する検討を行った。モデルとしてマンノースを選択し、単糖のマンノースをスポッティング液に溶解した群と、糖鎖修飾PAAであるPAA-マンノースをスポッティング液に溶解した群の2群を前述のスポット・固定化方法を経て基板上にアレイ化した。この基板をRho-ConAプローブを用いて、前述のプロービング工程に従ってプロービングした。結果、PAA-マンノースをスポッティング液に溶解してスポットした群ではRho-ConAとの糖特異的な相互作用を観察できたが、同条件においても単糖のマンノースをスポッティング液に溶解してスポットした群では、飽和濃度で溶解した場合にも結合は観察できなかった(図11)。この結果から、今回開発されたPAA担体を介して糖鎖を基板上に固定化する方法は非常に少ない糖鎖量から、糖鎖単独で固定化する際よりも圧倒的に高密度・高感度に糖鎖を基板表面に提示できたことが分かり、担体を介した多価糖鎖固定化法の持つ、著しく顕著な固定化効率・検出感度の向上効果が確認された。
(3)糖鎖修飾担体と天然由来複合糖質のハイブリッドアレイの作製
糖鎖アレイの糖鎖修飾担体と天然由来の糖タンパク質を同一基板上に並べたハイブリッド糖鎖アレイは、糖鎖修飾担体スポットから純粋な糖鎖構造との結合情報と同時に、観察したい糖タンパクとの結合情報を取得・比較することが可能である為、生体由来の糖結合分子の相手を探索するアプリケーションに極めて有用な方法になることが期待された。そこで我々は、糖鎖修飾担体及びを天然由来糖タンパクと同一の基板上に固定化したアレイを作製し、その性能評価を行うこととした。各糖鎖修飾担体は前述の実施例に記載した検討結果から得られた至適条件にてスポット・固定化を行った。天然由来糖タンパク質の濃度は0.5 mg/mLに統一した。具体的な内訳としては、23種の糖鎖修飾担体(含ネガティブコントロールとしての糖鎖非修飾BSA担体)と22種の天然由来複合糖質(21種の糖タンパク質と1種の細胞表層成分:Zymosanを含む)の全45種類(図12)とし、これらを前述のアレイ作製工程に従い基板上の反応槽内に配列した。各糖鎖修飾担体及び天然由来糖タンパクの配列は図3に記載のスポット配列(1サンプル横3点ずつ45点分)に従った。
(4)糖鎖修飾担体と天然由来複合糖質のハイブリッド糖鎖アレイのレクチン・糖鎖抗体による性能検証試験
前述の工程で作製したハイブリッド糖鎖アレイ基板を、特異性の異なる様々なレクチン(12種の植物由来レクチンと1種の菌類由来レクチン)をプローブとして用い、直接検出法にてプロービングして機能上の問題がないかどうかを確認する検討を行った。本実施例に用いたレクチンの入手先は以下の通りである。LTL (ロータスマメレクチン)、UEA-I (ハリエニシダレクチン)、AAL(ヒイロチャワンタケレクチン)、MAL(イヌエンジュレクチン)、SNA (セイヨウニワトコレクチン)、PHA-L (インゲンマメレクチン-L)、PHA-E (インゲンマメレクチン-E)、GSL-II (グリフォニアマメレクチン)、BPL (ムラサキモクワンジュレクチン)はVECTOR社より購入したものを用いた。またPSA (エンドウレクチン)、LCA (レンズマメレクチン)、RCA120 (ヒママメレクチン) 、ECA (デイゴマメレクチン)、ConA (タチナタマメレクチン)、ABA(マッシュルームレクチン)は生化学工業社から購入したものを用いた。
この実験でプローブとして用いた各レクチンはCy3-monoreactive dyeを用いて蛍光標識ラベル化した後、プロービングバッファーで100 ng/mLの濃度に希釈して糖鎖アレイの反応槽内に供した。インキュベート反応は温度25℃の振盪条件下で、3時間行うことで十分に結合反応を進行させた。インキュベート工程後は洗浄せずに平衡状態のまま、前述のエバネッセント波励起蛍光検出スキャナーで相互作用を観察した。結果、図13が示すように、各レクチンの糖鎖結合特異性を反映した結合プロファイルが得られ、各結合は既知の糖結合活性の知見と一致した。
この結果から、ハイブリッド糖鎖アレイにおいても糖鎖分子が基板上に正しく配列・提示されており、この糖鎖が低濃度のレクチンプローブから検出できるほど高密度に固定化されていること、さらに本検出系が、植物・菌類由来レクチンの糖結合活性の迅速解析に有用であることが確認された。また基板上に固定化する糖鎖として、天然由来の糖タンパク質(22種)や、細胞由来の細胞表層成分(Zymosan)を固定化しても、糖鎖アレイとしての機能に影響が無く、且つこれら天然由来の複合糖質と被検糖結合分子間の相互作用の観察が可能であることが示された。
同様の実験を6種の糖鎖抗体プローブを用いて行った。ここで用いた糖鎖抗体は生化学工業社から抗Lex、sLex、Le、Lea、sLea、Leb抗体を購入したものを用い、プロービング液に100 ng/mLの濃度に希釈して糖鎖アレイの反応槽内に供した。
結果、微量の糖鎖抗体を用いて、各糖鎖抗体の特異性を反映した糖結合プロファイル情報を得ることが可能であることが示された(図14)。この結果から本実験系はレクチンのみならず、糖鎖抗体の糖結合特性の判定・解析・診断にも利用可能であることが示された。
〔実施例3〕ワンステップ検出法の有用性検証試験
(1)適切な抗体の濃度の検討
従来の共焦点スキャナーを用いる方法では、インキュベートと洗浄の操作を繰り返し行う為、非常に操作が煩雑であるという問題があった。本発明では生体由来クルードサンプル中の被検糖結合分子の糖結合活性を検出する上で、この煩雑な方法をエバネッセント波励起蛍光検出法とこの方法に最適化した「ワンステップ検出法」を用いることで大幅な簡素化に成功した。具体的には従来の逐次的な一次抗体・二次抗体でのプロービング手法では最低3回の洗浄操作が必要となるのに対し、ワンステップ検出法では、あらかじめ糖結合分子と検出標識抗体を混合して免疫複合体を形成させ、この免疫複合体を糖鎖アレイと接触させたのちに非洗浄条件下でエバネッセント波励起蛍光観察法により相互作用を観察するため、洗浄操作を全く必要としない。このため大幅な工程数の削減と、それに伴う時間的・人的経費の削減が可能になると期待された。
我々は種々の予備検討を行い、一次抗体(約0.1〜0.15 mg/mLの各種被検タンパク質に対する抗体)、二次抗体(約0.1〜0.15 mg/mLのCy3-標識化抗IgG抗体)、被検クルード試料を0.5μL:0.5μL:100μLでの比で混合して3時間プレインキュベートする条件が、S/N比・感度と経済性のバランスが最も良い至適条件であること突き止め、以下の実施例をこの条件で行った。
(2)培養上清中のCD22の糖結合活性検出試験
培養上清を対象としたワンステップ検出法の有効性評価を目的として、遺伝子導入により作製したCD22産生CHO細胞の培養上清中に分泌されたCD22の糖結合活性の検出を試みた。CD22産生CHO細胞の培養上清を100μL,100μg/mLの抗V5抗体(一次抗体)を0.5μL,二次抗体として140μg/mLのCy3ラベル化抗マウスIgG抗体を0.5μL加え、30分間プレインキュベートした。これを前述の工程で作製したハイブリッド糖鎖アレイ基板の反応槽内に40μL加え、3時間インキュベート後にエバネッセント波励起蛍光観察を行った。結果、CD22産生CHO細胞を培養した培地からは、CD22特有の糖結合活性がコントロールの培地に比べ、有意に検出された(図15)。この結果から、本法は培地中の糖結合分子の活性を、精製しないクルードサンプルの状態で、しかも僅かな試料量から迅速に解析することが可能であり、培養上清中の糖結合分子の活性解析法としての優位性が示された。
(3)血清中の糖鎖抗体の糖結合活性検出試験
血清を対象としたワンステップ検出法の有効性評価を目的として、O型ヒト血清中の糖鎖抗体の糖結合活性の検出を試みた。この血清をプロービング液で1,000倍に希釈したもの100μLに150μg/mLのCy3標識化抗ヒトIgG抗体を0.5μL加え、30分間プレインキュベートした。これを前述の工程で作製したハイブリッド糖鎖アレイ基板の反応槽内に40μL加え、3時間インキュベートの後にエバネッセント波励起蛍光観察を行った。結果、血清からは抗A型抗体に由来すると考えられる蛍光スポットが検出された(図16)。この結果から、本法は血清中の糖鎖抗体の活性を、精製しないクルードサンプルの状態で、しかもごく僅かな血清から迅速に解析することが可能であり、血清中の糖結合分子(特に抗体)の簡易活性解析方法として高い有用性が確認された。
〔実施例4〕基板に細胞由来複合糖質を固定化し、これに対応する結合性分子で検出する方法の有効性検討
(1)モデル細胞由来複合糖質の選定と固定化基板の作製
グラム陰性細菌の外膜の構成成分であり、その構造内に多様な糖鎖を持つことが知られるリポポリサッカライド(LPS)を選択した。LPSは種々の生物活性発現や細胞間コミュニケーションに大きな役割を果たしており、近年ではLPSを用いた免疫分野の研究が盛んである。本実施例ではLPSを終濃度として0.125〜1.0 mg/mLになるように溶解した後に、非接触スポッターを用いて、スライド基板に対して液滴を滴下してスポットを作製し、前述の操作でアレイ基板を作製した。
(2)基板上に固定化したLPSの検出能力検証
本実施例ではLPSに結合能を示す糖結合性分子として、抗LPS抗体を選択し、これを上記工程で作製したLPSを固定化した基板に対し、ワンステップ法を適用して供した。プロービング時は1次抗体である抗LPS抗体と2次抗体であるCy3-Anti rabbit IgGを混和し、室温、暗下で30 minインキュベートして、免疫複合体を形成した後に、LPSを固定化基板の反応槽内に100μLずつ供し、前述のプロービング操作法に従ってプロービングした。結果、図17に示されるように、基板上にLPSがきちんと固定化されていること、またLPS固定化アレイ基板によってLPSに対し結合する物質の結合活性を検出可能であることが示された。また本実施法によって細胞由来の複合糖質を糖鎖-担体複合体のスポットに並列して配置することで、細胞由来の複合糖質への結合特性を簡便・迅速に検出できる能力が示された。
〔実施例5〕基板に固定化する複合糖質分子上の糖鎖構造変化検出法の有効性検討
(1)モデル糖タンパク質分子の選定
前述のとおり、本発明で提供される基板には、糖鎖-担体複合体に並列して、天然由来の複合糖質を固定化することが可能である。このため、一定の糖結合特性既知の糖結合分子を用いて固定化した複合糖質側の糖鎖構造の変化を検出することは当然可能である。本実施例では固定化された複合糖質側の糖鎖構造を人工的に変化させたモデル系を用いて、どの程度糖鎖変化を検出可能であるかを評価した。本実施例ではモデル糖タンパク質として、ウシ由来フェッイン(Fet)、ヒト由来α1-酸性糖タンパク質(AGP)、ヒト由来トランスフェリン(TF)、ブタ由来チログロブリン(TG)の4種を選択し、以下の評価実験に供した。
(2)モデル糖タンパク質分子を固定化した基板の作製
前述の4種のモデル糖タンパク質は、酸によって非還元末端のシアル酸を除去した酸処理群と非酸処理群の2群を調製した。酸処理の条件は終濃度が0.1 N になるようにHClを加え、80℃で1時間反応させた。反応後、塩酸を限外ろ過にて除いた後にスポッティングバッファーに対し、上記のモデル糖タンパク質群をタンパク終濃度として0.5 mg/mLになるように溶解した後に、非接触スポッターを用いて、スライド基板に対して液滴を滴下してスポットを作製し、前述の操作でアレイ基板を作製した。
(3)モデル糖タンパク質分子上の糖鎖構造変化の検出能力検証
末端シアル酸の変化を観察する為、末端シアル酸認識レクチンとして知られているSNAと、N-結合型糖鎖構造において、末端シアル酸の内側に存在するラクトサミン構造を認識するレクチンとしてRCA120を用いて、上記工程で作製したモデル糖タンパク質分子を固定化した基板を前述のプロービング操作法に従ってプロービングした。結果、図18に示されるように、基板上に固定化されたモデル糖タンパク質上のシアル酸が外れるという糖鎖変化を、的確に見分けることが可能であった。疾病や癌などで細胞の表面糖鎖構造が変化することが知られている。本法は非常に多検体の天然由来複合糖質を基板上に配列し、その糖鎖構造の変化を観察することが可能であり、こうした糖鎖変化のおきる疾病の判別に利用できるものと期待される。
〔実施例6〕従来の糖鎖アレイの作製に用いられてきた糖鎖・リンカー複合体と、本発明の糖鎖固定化PAA担体の感度比較
本実施例では固定化するモデル糖としてラクトースを選択し、このラクトースについて従来用いられてきた糖鎖・アミノ基リンカー複合体と、本願発明において採用した糖鎖固定化PAA担体の2種を同一基板上にスポットし、同一条件で固定化・プロービングした場合の、感度特性の比較を行った。既報の糖鎖アレイで使用されてきた糖鎖・アミノ基リンカー複合体として、パラアミノフェニルラクトース(Toronto Research Chemicals社)を用意し、これに対する比較対照として、糖鎖固定化PAA担体にはPAA-ラクトース(Glycotech社)を用意した。パラアミノフェニルラクトースは終濃度0.1〜30.000 μMの範囲に、またPAA-ラクトースは分子中のラクトース含有量ベースで終濃度0.17〜170 μMの範囲になるようにスポッティングバッファーにて希釈系列を調製後、これらの溶液を非接触スポッターを用いてスライド基板上にスポットした。スポットは1サンプルに付き横に3点ずつ配列した。この基板を前述の条件でインキュベート・ブロッキングして、糖鎖固定化基板を作製した。この基板に対し、糖結合性の蛍光標識プローブとして10〜1000 ng/mL Rho-RCA溶液を用いて前述の手順と同じ要領でプロービング操作を行い、基板上に固定化されたラクトースへのプローブ分子の結合状態を観察した。
結果、図19に示すように、1,000 ng/mL Rho-RCA120でプロービングした際には、パラアミノフェニルラクトースを固定化したスポット群においては300 μM以上の高濃度の溶液をスポットした場合にシグナルが観察されたが、PAA-ラクトースを固定化したスポット群では、含有ラクトース濃度換算でわずか1.7 μM程度の条件から、同等のシグナル強度が観察された。この結果はPAA−ラクトースは、従来糖鎖アレイに用いられてきた「糖鎖・リンカー複合体」であるパラアミノフェニルラクトースに比べ、ラクトースのモル数ベースで100倍以上低濃度の糖鎖消費量でアレイを作製可能であることを示した。
また本実験において、アレイの反応槽に添加するプローブ(Rho-RCA120)溶液の濃度を下げたところ、パラアミノフェニルラクトースを固定化したスポットではRho-RCA120の検出下限は100 ng/mLであったが、PAA-ラクトースを固定化したスポットの場合Rho-RCA120の検出下限は10 ng/mLと10倍も低い値を示し、より低濃度のプローブを検出可能であることが示された(図19)。
本実験結果をまとめると、従来の糖鎖アレイに用いられている糖鎖・リンカー複合体に比べ、糖鎖固定化PAA担体を採用することで100倍以上糖鎖の消費量を節約と、10倍程度の感度特性の向上を同時に達成しうることが、モデル糖鎖としてラクトースを用いた実験で示された。
〔実施例7〕生きた酵母細胞の糖鎖アレイへの結合解析
分裂酵母Schizosaccharomyces pombe (S.pombe)を生存状態で糖鎖アレイの反応槽内に添加し、その細胞表面の糖鎖結合能解析の実施能力を検証すべく、以下の実験を実施した。糖鎖アレイとしては、上記実施例2で作製した糖鎖アレイ基板に若干の糖鎖を追加した拡張版糖鎖アレイ基板を用いた。拡張版糖鎖アレイ基板は図21に示したレイアウトで図22に示した配列順に96種類の糖鎖試料と2種の参照試料を同一反応槽内に固定化した糖鎖アレイ基板を使用した。
本実施例では、まず生きた細胞内に入り込むことで膜非透過性グルタチオン蛍光色素付加体を生成するInvitrogen 社製蛍光色素「CellTracker Orange CMRA 548/576 (CMRA)」でS.pombeを蛍光標識ラベル化し、これを糖鎖アレイ表面と反応させた後、前述のエバネッセント波励起蛍光スキャナーで酵母細胞内のCMRAから発せられる蛍光を検出することでS.pombe表面の持つ糖結合特異性を解析した。各反応条件は6×107 cell/mLのS.pombe懸濁液に対し終濃度20 mMになるようにCMRAを加え、37℃条件で45分インキュベートし、反応後前述の糖鎖固定化PAA担体固定化アレイ基板に添加後4℃、60分インキュベートして基板上の糖鎖に対し十分に結合反応を進行させた。(上記操作は、特開2008−187932号公報の記載の手順に従った。)
結果、S.pombeがガラクトースに結合する性質が見出された(図20)。糖鎖は様々なウィルス、病原菌や常在菌が宿主細胞に付着又は感染するステップに大きく関与していることが知られており、その糖結合性が感染性やフローラ形成能に大きく関与しているものと考えられている。本願発明のPAA担体固定化アレイ基板は、ウィルス、菌体、細胞等の表面の糖結合能を直接・簡便に解析するアプリケーションに非常に有用であることや、今まで観察しえなかった弱い糖結合能をも見出す能力を備えていることが示された。
本発明により、従来品より高感度な糖鎖アレイ基板を大幅に安価な価格で提供することができる。また、微量の被検クルードサンプル中の糖鎖結合分子の検出を簡便・迅速に行うことが可能となるため、糖鎖アレイの普及の加速と各種産業への応用が期待される。特に、癌や各種疾患の診断用として、又はそのためのマーカーになり得る未知の糖鎖結合性因子のスクリーニング用として期待される。

Claims (17)

  1. PAA担体1分子あたりに複数の同一種類の糖鎖分子が結合している糖鎖−PAA担体複合体が、エバネッセント波励起蛍光観察用導波路基板上の決められた位置に、ヒドロゲルを介することなく複数種類固定化されていることを特徴とする、複数種類の糖鎖分子を多価状態で提示する糖鎖アレイ基板。
  2. 前記糖鎖−PAA担体複合体と共に、精製もしくは未精製の被検複合糖質が同一基板上の別の決められた位置に、ヒドロゲルを介することなく固定化されていることを特徴とする、請求項1に記載の糖鎖アレイ基板。
  3. PAA担体1分子あたりに複数の同一種類の糖鎖分子が結合している糖鎖−PAA担体複合体を、エバネッセント波励起蛍光観察用導波路基板上の決められた位置に、ヒドロゲルを介することなく複数種類直接固定化することで、基板上に複数種類の糖鎖分子を多価状態で提示させることを特徴とする糖鎖アレイ基板の製造方法。
  4. 蛍光標識化された糖結合分子を含む溶液又は懸濁液からなる被検試料を、請求項1又は2に記載の糖鎖アレイ基板に作用させ、被検試料中の糖結合分子と糖鎖アレイ基板上の特定の糖鎖分子との結合状態をエバネッセント波励起蛍光観察法により、前記糖鎖分子に結合した蛍光標識化被検糖結合分子からの蛍光標識信号として観察する工程を含むことを特徴とする、検試料中の糖結合分子の検出又は解析方法。
  5. 前記蛍光標識化された糖結合分子が、糖鎖アレイ基板に作用させるに先立ち、あらかじめ標的とする糖結合分子に結合能を有する蛍光標識化抗体によって、蛍光標識化された糖結合分子であることを特徴とする、請求項4に記載の糖結合分子の検出又は解析方法。
  6. 前記被検試料が、生体由来の血液もしくは体液、又は細胞/ウィルス自体、細胞破砕液、細胞培養上清、もしくはそれらの抽出液、濃縮液であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の糖結合分子の検出又は解析方法。
  7. 生存状態の細胞懸濁液からなる被検試料に対し、生存状態の細胞内に代謝変換型蛍光色素剤を導入して生存状態の細胞を蛍光標識し、次いで、請求項1又は2に記載の糖鎖アレイ基板に作用させる工程の後に、当該基板上の糖鎖分子に結合した被検細胞からの蛍光標識信号をエバネッセント波励起蛍光観察法により観察する工程を設けることを特徴とする、生存状態の細胞表面の糖結合分子の検出又は解析方法。
  8. 前記請求項4〜7のいずれかに記載の糖結合分子の検出又は解析方法において用いるキットであって、PAA担体1分子あたりに複数の同一種類の糖鎖分子が結合している糖鎖−PAA担体複合体が、エバネッセント波励起蛍光観察用導波路基板上の決められた位置に、ヒドロゲルを介することなく複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板を含むことを特徴とする、糖結合分子の検出又は解析用キット。
  9. 複合糖質含有試料中の糖鎖分子の検出又は解析方法であって、以下の(a)〜(e)の工程を含む方法;
    (a) あらかじめエバネッセント波励起蛍光観察用導波路基板上の決められた位置に、PAA担体1分子あたり複数の同一種類の既知の糖鎖分子が結合している糖鎖−PAA担体複合体が、複数種類、ヒドロゲルを介することなく固定化されている糖鎖アレイ基板であり、かつ、さらに被検複合糖質を配置し固定化できる位置を有している糖鎖アレイ基板を用意する工程、
    (b) 工程(a)で用意された糖鎖アレイ基板に、被検複合糖質含有試料を配置し固定化する工程、
    (c) 工程(a)で固定化された複数種類の既知の糖鎖分子のそれぞれに対して結合することが既知である、蛍光標識化された糖結合分子を含む溶液を用意する工程、
    (d) 工程(b)で得られた被検複合糖質含有試料がさらに配置された糖鎖アレイ基板に、工程(c)で用意された蛍光標識化糖結合分子含有溶液を接触させ、蛍光標識化糖結合分子を基板上の既知の糖鎖分子及び被検複合糖質含有試料中の糖鎖分子と結合させる工程、
    (e) 基板上の各糖鎖分子に結合した蛍光標識化糖結合分子からの蛍光標識信号をエバネッセント波励起蛍光観察法により観察し、被検複合糖質含有試料中の糖鎖分子由来の蛍光標識信号を既知の糖鎖分子由来の蛍光標識信号と比較することで、被検複合糖質含有試料中の糖鎖分子の種類又は性質を推定する工程。
  10. 前記請求項9に記載の複合糖質含有試料中の糖鎖分子の検出又は解析方法に用いるキットであって、
    あらかじめエバネッセント波励起蛍光観察用導波路基板上の決められた位置に、PAA担体1分子あたり複数の同一種類の既知の糖鎖分子が結合している糖鎖−PAA担体複合体が、ヒドロゲルを介することなく複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板であり、かつ、さらに被検複合糖質を配置し固定化できる位置を有している糖鎖アレイ基板と共に、
    前記複数種類の既知の糖鎖分子のそれぞれに対して結合することが既知である蛍光標識化された糖結合分子を含む溶液を包含することを特徴とする、被検複合糖質含有試料中の糖鎖分子の検出又は解析用キット。
  11. 細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合活性の解析方法であって、あらかじめ蛍光標識された被検細胞/ウィルス試料を含む溶液又は懸濁液を、請求項1又は2に記載の糖鎖アレイ基板に作用させ、被検細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子と、糖鎖アレイ基板上の糖鎖分子との結合状態を蛍光標識信号としてエバネッセント波励起蛍光観察法により観察し、得られた蛍光標識信号のパターンから、被検細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合特性情報を得ることを特徴とする、検細胞/ウィルス試料中の糖結合分子の糖結合活性の解析方法。
  12. 前記被検細胞/ウィルス試料を含む溶液又は懸濁液を糖鎖アレイ基板に作用させるに先立ち、前記被検試料中の標的とする糖結合分子を、蛍光標識化された抗体によってあらかじめ蛍光標識する工程を含むことを特徴とする、請求項11に記載の検細胞/ウィルス試料中の糖結合分子の糖結合活性の解析方法。
  13. 前記被検細胞/ウィルス試料が生存状態の細胞懸濁液であって、当該懸濁液を糖鎖アレイ基板に作用させるに先立ち、生存状態の被検細胞/ウィルス内に代謝変換型蛍光色素剤を導入する工程を有し、糖鎖アレイ基板に作用させた後に、当該基板上の糖鎖分子に結合した被検細胞からの蛍光標識信号をエバネッセント波励起蛍光観察法により観察し、得られた蛍光標識信号のパターンから、被検細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合特性情報を得ることを特徴とする、請求項11に記載の検細胞/ウィルス試料中の糖結合分子の糖結合活性の解析方法。
  14. 前記請求項11〜13のいずれかに記載の解析方法に用いるためのキットであって、あらかじめエバネッセント波励起蛍光観察用導波路基板上の決められた位置に、PAA担体1分子あたり複数の同一種類の既知の糖鎖分子が結合している糖鎖−PAA担体複合体が、ヒドロゲルを介することなく複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板と共に、蛍光標識化抗糖結合分子抗体含有溶液又は代謝変換型蛍光色素剤とを包含することを特徴とする、細胞/ウィルスの表面又は細胞内の糖結合分子の糖結合活性の解析用キット。
  15. 被検試料中の未知の糖結合活性を持つ糖結合分子の探索を目的とするスクリーニング方法であって、以下の(a)〜(d)の工程を含む方法;
    (a) 請求項1又は2に記載の糖鎖アレイ基板を用意する工程、
    (b) 被検試料に、蛍光標識化された抗糖結合分子抗体を混合することで当該試料中の被検糖結合分子を蛍光標識する工程、
    (c) 工程(a)の糖鎖アレイ基板に、工程(b)であらかじめ蛍光標識した被検糖結合分子を含有する被検試料を接触させ、当該被検糖結合分子を上記基板表面上に提示された糖鎖分子と結合させる工程、
    (d) 工程(c)において基板上の糖鎖分子に結合した蛍光標識化被検糖結合分子からの蛍光標識信号をエバネッセント波励起蛍光観察法により観察する工程。
  16. 前記未知の糖結合活性を持つ糖結合分子が、細胞表面又は細胞内に発現、又は細胞外に分泌された糖結合分子であり、あらかじめ前記細胞に、抗体認識用タグ遺伝子を導入し、細胞内で当該抗体認識用タグをランダムに発現、付加させることで、抗体認識用タグが付加された状態で細胞表面又は細胞内に発現、又は細胞外に分泌された糖結合分子であることを特徴とする、請求項15に記載の未知の糖結合活性を持つ糖結合分子のスクリーニング方法。
  17. 前記請求項15又は16に記載のスクリーニング方法に用いるためのキットであって、あらかじめエバネッセント波励起蛍光観察用導波路基板上の決められた位置に、PAA担体1分子あたり複数の同一種類の既知の糖鎖分子が結合している糖鎖−PAA担体複合体が、ヒドロゲルを介することなく複数種類固定化されている糖鎖アレイ基板と共に、前記試料中の未知の糖結合活性を持つ糖結合分子を蛍光標識するための蛍光標識化された抗糖結合分子抗体含有溶液とを包含することを特徴とする、未知の糖結合活性を持つ糖結合分子のスクリーニング用キット。
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