JP2020191783A - 培養培地分析による多能性幹細胞の未分化状態の位置特異的な判定方法 - Google Patents

培養培地分析による多能性幹細胞の未分化状態の位置特異的な判定方法 Download PDF

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林 邦 忠 畑
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田 祐 介 依
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原 聡 文 北
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Abstract

【課題】熟練した技術者の判断によらず、培養容器内で位置特異的に多能性幹細胞の分化状態を高感度で検出する方法および装置、ならびに多能性幹細胞を未分化状態で培養するための細胞培養装置を提供すること。【解決手段】細胞培養容器において培養される多能性幹細胞の未分化状態を位置特異的に判定する方法であって、多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器を準備し、前記流出口から細胞培養容器中の培養培地を流出させ、所定流出量毎の培養培地の物性値と培養培地の総流出量とを共に測定し、前記所定流出量毎の培養培地の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の細胞培養容器の流路上の位置を判定することを含んでなる、方法を用いる。【選択図】図9

Description

本発明は、多能性幹細胞が培養された培養培地を分析することにより、多能性幹細胞の未分化状態を位置特異的に判定する方法に関する。
多能性幹細胞は、あらゆる組織に分化しうるその分化多能性ゆえに、組織分化の研究、薬物試験および再生医療などの様々な分野で幅広く用いられている。特にiPS細胞の樹立以降、この分野における研究の発展は著しく、再生医療実現に向けた様々な取り組みが世界中でなされている。
ところで、多能性幹細胞は、分化しやすく、一度分化してしまうと多能性を失う可能性があるため、多能性幹細胞の培養は、多能性幹細胞の未分化状態を維持しながら行う必要があり、未分化状態の維持は、多能性幹細胞の培養において最も重要な要素の一つであるといえる。
未分化状態を維持するためには、分化を阻害する薬剤の使用や、分化を開始した多能性幹細胞の除去などが行われる。多能性幹細胞の大量調製において、最も大きな障害となりうる問題の一つは、分化を開始した多能性幹細胞の除去である。分化を開始した細胞の除去が不十分な場合には、周囲の細胞の分化を誘導して培養細胞全体に悪影響を及ぼす可能性がある。しかし、多能性幹細胞が未分化状態であるか否かの判断は、熟練した技術者によらなければ難しい。このようなことから、多能性幹細胞の大量調製には自ずと限界がある。そのため、少なくとも熟練した技術者の判断に依らずに多能性幹細胞が未分化状態であるか否かを確認する方法の開発や、分化を開始した多能性幹細胞を自動判定できる方法の開発が望まれていた。
これまで、多能性幹細胞が未分化状態であるか否かを確認する方法としては、qRT−PCR法、免疫染色法、フローサイトメトリー法が使用されている(非特許文献1)。しかし、qRT−PCR法や免疫染色法は、測定に際し細胞を破壊する必要がある。フローサイトメトリー法は、非破壊測定が可能であるが、細胞をシングルセルの状態で懸濁する必要があり、煩雑な操作を要する。
一方で、近年、細胞形態に現れないような初期の細胞の分化を、培地中のマーカー代謝物を指標として検出する培地成分分析技術が本発明者らにより報告されている。
特許文献1には、多能性幹細胞が培養された培養培地に含まれる細胞外代謝物の変動値の経時的変化に基づいて、多能性幹細胞の未分化状態を評価する工程を含んでなり、該細胞外代謝物が、L−グルタミン酸、L−アラニン、およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1つである、多能性幹細胞の未分化状態の判定方法が開示されている。
特許文献2には、未分化状態が未知の幹細胞あるいは幹細胞により分化誘導を行った細胞を被検細胞とし、該被検細胞の培養上清における所定の指標物質の存在量に基づいて該被検細胞の分化状態を評価する方法であて、指標物質が、オルニチン、2−アミノアジピン酸、デオキシシチジン、グルタミン酸、トリプトファン、アスパラギン、アラニン、シスチン、ヒポキサンチン、ウリジン、アスパラギン酸、アルギニン、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキイソ吉草酸、尿素、4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ安息香酸及びリボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする細胞分化状態の評価方法が開示されている。
しかしながら、細胞の分化状態を反映するマーカー代謝物は、培養容器内で容易に拡散して均一化することから、検出感度が低下したり、培養容器内における分化細胞の位置を特定して分化細胞のみを選択的に除去することが困難となる場合がある。したがって、培養容器内で位置特異的に細胞の分化状態を高感度で検出する方法の開発が依然として望まれている。
WO2016/052558号公報 WO2017/068801号公報
Nature Biotechnology 25, 803 - 816 (2007)
本発明は、熟練した技術者の判断によらず、培養容器内で位置特異的に多能性幹細胞の分化状態を高感度で検出する方法および装置、ならびに多能性幹細胞を未分化状態で培養するための細胞培養装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路を備えた細胞培養容器から培養培地を流出させ、所定流出量毎の培養培地の物性値と培養培地の総流出量とを指標として分析を行ったところ、細胞培養容器内の多能性幹細胞の未分化状態を位置特異的に判定することが可能であることを見出した。本発明は、このような知見に基づくものである。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)細胞培養容器において培養される多能性幹細胞の未分化状態を位置特異的に判定する方法であって、
多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器を準備し、
前記流出口から細胞培養容器中の培養培地を流出させ、所定流出量毎の培養培地の物性値と培養培地の総流出量とを測定し、
前記所定流出量毎の培養培地の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の細胞培養容器の流路上の位置を判定すること
を含んでなる、方法。
(2)前記細胞培養容器が、容器本体と、該容器本体の一面に貼り付けられた平板とを備えた閉鎖系細胞培養容器である、(1)に記載の判定方法。
(3)複数の多能性幹細胞播種領域が、前記流路の底面上において流路に沿って並んで設けられている、(1)または(2)に記載の判定方法。
(4)前記培養培地が、多能性幹細胞の未分化状態を維持するための培養培地である、(1)〜(3)のいずれかに記載の判定方法。
(5)培地交換により前記流出口から細胞培養容器中の培養培地を流出させる、(1)〜(4)のいずれかに記載の判定方法。
(6)前記培養培地の流出速度が一定である、(1)〜(5)のいずれかに記載の判定方法。
(7)次の培地交換まで使用される培養培地を前記流入口から流入させる、(6)に記載の判定方法。
(8)次の培地交換まで使用される培養培地と、細胞培養容器中の培養培地との間にエアを介在させる、(7)に記載の判定方法。
(9)培地交換の時間周期が24〜48時間である、(5)〜(8)のいずれかに記載の判定方法。
(10)前記所定流出量毎の培養培地の物性値が、細胞外代謝物の含有量または光学的物性値である、(1)〜(9)のいずれかに記載の判定方法。
(11)前記細胞外代謝物が、L−グルタミン酸、L−アラニン、アンモニア、オルニチン、2−アミノアジピン酸、デオキシシチジン、グルタミン酸、トリプトファン、アスパラギン酸、アラニン、シスチン、ヒポキサンチン、ウリジン、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3―ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシイソ吉草酸、3−ヒドロキシイソ吉草酸、尿素、4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ安息香酸、およびリボン酸からなる群から選択される少なくとも1つのものである、(10)に記載の判定方法。
(12)前記光学的物性値が蛍光強度または蛍光指紋情報である、(9)に記載の判定方法。
(13)(1)〜(12)のいずれかに記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
(14)(13)に記載のプログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な記録媒体。
(15)(13)に記載のプログラムを内部記憶装置に記録したコンピュータ。
(16)(13)に記載のコンピュータを備えた、多能性幹細胞の未分化状態の自動判定システム。
(17)継代に必要な細胞を回収する工程と、培養および/または継代に不要な細胞を除去する工程とを含んでなる、多能性幹細胞の継代培養方法であって、継代に必要な細胞が、(1)〜(12)のいずれかに記載の判定方法により、未分化な細胞と評価された多能性幹細胞であり、培養および/または継代に不要な細胞が、(1)〜(12)のいずれかに記載の判定方法により、分化を開始した細胞と評価された多能性幹細胞である、方法。
(18)細胞培養容器において培養される多能性幹細胞の未分化状態を位置特異的に判定する装置であって、
多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器と、
前記流出口から流出する細胞培養容器中の培養培地を回収する回収部と、
所定流出量毎の培養培地の物性値と培養培地の総流出量とを共にする分析測定部と、
前記所定流出量毎の培養培地の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の前記細胞培養容器の流路上の位置を判定する判定部を
を備える、装置。
(19)前記回収部がバイアル分注機構またはフローセルを備えている、(18)に記載の装置。
(20)多能性幹細胞を未分化状態で培養するための細胞培養装置であって、
多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器に対してインキュベーション処理を行うインキュベーション部と、
前記インキュベーション処理の終了後に、前記培養容器に対して培地交換処理を行うことにより、前記細胞培養容器の流出口からインキュベーション処理済み培養培地を流出させる培地交換部と、
前記インキュベーション処理済み培養培地の、所定流出量毎の物性値と総流出量とを共に測定処理する分析測定部と、
前記インキュベーション処理、前記培地交換処理および前記測定処理が2回以上繰り返し行われるように、前記インキュベーション部、前記培地交換部および前記分析測定部の動作を制御する動作制御部と、
前記分析処理により得られた前記所定流出量毎の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の前記細胞培養容器の流路上の位置を判定する判定部
と、
を備える、細胞培養装置。
(21)前記判定部で得られた判定結果に基づいて、分化を開始した細胞を除去するための細胞除去処理を行う細胞除去部をさらに備える、(20)に記載の細胞培養装置。
(22)多能性幹細胞を未分化状態で培養するための細胞培養方法であって、
(a)多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器に対してインキュベーションを行う工程と、
(b)工程(a)の終了後に、前記培養容器に対して培地交換処理を行うことにより、前記細胞培養容器の流出口からインキュベーション処理済み培養培地を流出させる工程と、
(c)工程(b)で流出したインキュベーション処理済み培養培地の、所定流出量毎の物性値と総流出量とを共に測定処理する工程と、
(d)工程(a)、工程(b)および工程(c)を2回以上繰り返し行う工程と、
(f)前記分析処理により得られた前記所定流出量毎の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の前記細胞培養容器の流路上の位置を判定する工程と、
を含んでなる、細胞培養方法。
(23)工程(f)で得られた判定結果で得られた判定結果に基づいて、分化を開始した細胞を除去する工程(g)をさらに含む、(22)に記載の細胞培養方法。
本発明によれば、所定流出量毎の培養培地の物性値と培養培地の総流出量とを指標として、細胞培養容器内の多能性幹細胞の未分化状態を位置特異的に判定することができる。
本発明によれば、多能性幹細胞の破壊を必要とせず、多能性幹細胞が培養された培養培地の所定流出量毎の物性値と総流出量の分析結果のみに基づいて評価することができる点で有利である。
また、培養培地の分析によれば、細胞を破壊し細胞内代謝物を測定するような方法と比較して大きく値が変動することがない。そして、所定流出量毎の物性値については、予め決定されたプログラムに従って、自動で取得、記録し、これを解析することができるから、多能性幹細胞の未分化状態の自動的な判断が可能になる。すなわち、培養培地の分析は全自動化が可能である点でさらに有利である。
本発明によれば、また、多能性幹細胞の未分化状態の判定は、特定の所定流出量毎の培養培地の物性値と総流出量に基づいて行うことができ、すなわち、予め決定された参照値(例えば、予め行った実験によって決定した基準値、蓄積されたデーターベース、および代謝シミュレーション等)と比較する必要がない点で有利である。
本発明によれば、さらに、多能性幹細胞の未分化状態の判定は、特定の所定流出量毎の培養培地の物性値と総流出量に基づいて迅速に行い、培養容器内の分化された細胞を効率的に特定、除去することができ、そうすると多能性幹細胞の品質の均一化も期待できる点で有利である。
本発明の一実施形態において使用される培養容器の概略平面図である。 図1AのA−A線断面図である。 図1AのB−B線断面図である。 細胞播種時の図1AのA−A線断面図である。 本発明の一実施形態に係る細胞培養装置の構成を示す概略図である。 細胞播種部の構成を示す概略平面図である。 インキュベーション部の構成を示す概略断面図である。 細胞形態観察部の構成を示す概略側面図である。 培地交換部の構成を示す概略平面図である。 バイアル分注機構を備えた培地交換部の構成を示す概略平面図である。 フローセルを備えた培地交換部の構成を示す概略平面図である。 細胞剥離部の構成を示す概略側面図である。 細胞回収部の構成を示す概略平面図である。 本発明の一実施形態に係る細胞培養装置が行う細胞培養処理手順を示すフローチャートである。 実施例1において使用される一本鎖閉鎖系の細胞培養容器の写真である。 光学顕微鏡による、播種後5日目(day5)の細胞形態の観察の結果を示す図であり、Aは図10に示される破線域(I)内の細胞形態像、Bは図10に示される破線域(II)内の細胞形態像をそれぞれ示す。 播種後1日目(day1)、2日目(day2)、3日目(day3)、4日目(day4)、5日目(day5)の培養培地におけるLC−MS分析により求められた乳酸(Lactic Acid)の存在量を示す図である。 播種後1日目(day1)、2日目(day2)、3日目(day3)、4日目(day4)、5日目(day5)の培養培地におけるLC−MS分析により求められた分化マーカー(2−アミノアジピン酸)の存在量を示す図である。 培地交換の際のエアプラグの有無が培地成分の拡散に及ぼす影響について確認した予備試験の結果を示す図である。 実施例2のA群について、蛍光分光光度計により、播種後1日目(day1)、2日目(day2)、3日目(day3)、4日目(day4)、5日目(day5)および6日目(day5)の細胞形態の観察の結果を示す写真である。 実施例2のB群について、光学顕微鏡により、播種後1日目(day1)、2日目(day2)、3日目(day3)、4日目(day4)、5日目(day5)および6日目(day5)の細胞形態の観察の結果を示す写真である。 実施例2のA群について、播種後1日目(day1)、2日目(day2)、3日目(day3)、4日目(day4)、5日目(day5)および6日目(day5)の培養培地について、蛍光分光光度計を用いた3次元蛍光スペクトル測定を行った結果を示すグラフである。 実施例2のB群について、播種後1日目(day1)、2日目(day2)、3日目(day3)、4日目(day4)、5日目(day5)および6日目(day5)の培養培地について、蛍光分光光度計を用いた3次元蛍光スペクトル測定を行った結果を示すグラフである。 実施例2において、3次元蛍光スペクトル測定結果を入力データとして多変量解析(主成分分析)を行い、分化細胞または未分化細胞の判別を行った結果を示すグラフである。 実施例2において、3次元蛍光スペクトル測定結果を入力データとして多変量解析(階層的クラスタリング)を行い、蛍光強度の挙動の類似する励起波長および蛍光波長の組み合わせの集まりとして分類した結果を示すグラフである。 実施例2において、分化細胞と未分化細胞との間で大きな差異を示す、特徴的な蛍光強度の挙動を示すクラスターの平均相対蛍光強度を示すグラフである。
発明の具体的な説明
本発明において、「多能性幹細胞の未分化状態の判定」とは、対象とする多能性幹細胞が未分化状態であるか否かを判定することを意味する。
本発明で用いられる「多能性幹細胞」は、三胚葉のいずれの由来の細胞にも分化する能力を有する細胞を意味する。本発明で用いられる多能性幹細胞は、特に限定されないが、好ましくは、霊長類細胞や齧歯類細胞などの哺乳類の多能性幹細胞とすることができ、より好ましくは、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシまたはヤギの多能性幹細胞とすることができ、さらに好ましくは、ヒトの多能性幹細胞とすることができる。本発明で用いられる多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導性多能性幹細胞(iPS細胞または人工多能性幹細胞)、Muse細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring Cell)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)または、胚性生殖幹細胞(EG細胞)などの多能性幹細胞が挙げられ、好ましくは、ES細胞またはiPS細胞である。従って、本発明で用いられる多能性幹細胞は、好ましくは、哺乳類のES細胞若しくはiPS細胞であり、より好ましくは、霊長類若しくは齧歯類などのES細胞またはiPS細胞であり、さらに好ましくは、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ若しくはヤギのES細胞またはiPS細胞であり、最も好ましくは、ヒトES細胞またはヒトiPS細胞である。本発明によれば、フィーダー細胞は用いても用いなくてもよい。
本発明で用いられる「培養培地」(単に「培地」ともいう)は、多能性幹細胞の未分化状態を維持するための培養培地を意味する。このような培養培地としては、多能性幹細胞の未分化状態を維持できれば、特に制限無く用いることができる。本発明で用いられる培養培地は、特に限定されないが、好ましくは、多能性幹細胞を培養することができる培地に未分化維持に寄与する因子が添加された培養培地とすることができる。多能性幹細胞を培養することができる培地としては、多能性幹細胞を培養することができれば、特に制限無く用いることができ、例えば、Essential-8(商標)培地、TeSR(商標)−E8(商標)培地、ReproFF2培地、mTeSR(商標)1培地等が挙げられる。未分化維持に寄与する因子としては、例えば、bFGF、TGF−β、インスリン等が挙げられる。なお、培養培地は、培養工程中、所定時間周期で新しい培養培地に交換されるものであるが、詳細については後述する。
本発明においては、多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填された一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器を準備する。まず、図1A〜図1Dを参照して、本発明の一実施形態において使用される培養容器について説明する。図1Aは、本発明の一実施形態において使用される培養容器の概略平面図であり、図1Bは、図1AのA−A線断面図であり、図1Cは、図1AのB−B線断面図であり、1Dは細胞播種時の図1AのA−A線断面図である。
本実施形態において使用される培養容器は、図1A〜図1Cに示すように、閉鎖系の培養容器10である。図1A〜図1Cに示すように、培養容器10は、凹状の流路12を有する容器本体21と、流路12の開口部を封止する平板22とを備える。容器本体21および平板22の材質としては、例えば、光透過性を有する合成樹脂(例えばポリスチレン)が使用される。容器本体21および平板22が光透過性を有することにより、培養容器10中の細胞を外部から光学的に観察することができる。
図1Aに示すように、培養容器10は、容器本体21は、液体が流入する流入口11と、流入口11から流入した液体が通過する流路12と、流路12を通過した液体が流出する流出口13とを有する。流入口11と流路12と流出口13とは、例えば射出成形により、一体に形成されている。
図1Aに示すように、容器本体21の流路12は、平面視において蛇行する形状を有する。また、図1Bおよび図1Cに示すように、容器本体21の流路12は、容器本体21の一方側に開口する凹部(溝部)として形成されている。
また、図1Dに示すように、細胞を播種する際、培養容器10は不図示の反転機構により平板22が下側になる状態とされる。そして、細胞含有懸濁液を培養容器10の流路12を通過させ、通過中に平板22上に細胞31を落下させることにより、細胞31を直接播種する。
なお、容器21では、平板22に代えてまたは平板22に加えて、流路12の底面上または流路12の壁面全体に細胞を播種することができる。図示しないが、例えば、流路12の底面に細胞が播種される複数の細胞播種領域が、流路に沿って並んで設けられていてもよい。流路12上の細胞播種領域の形状は、特に制限されず、細胞の種類および量等に応じて適宜設定してよく、窪み状、スポット状等にすることができる。かかる容器のさらなる詳細は、例えば、WO2015/125742に記載されている。
容器本体21の流入口11および流出口13は、容器本体21の同一側面に設けられているが、異なる側面に設けられていてもよい。流入口11は、流路12の一端に連通しており、流出口13は流路12の他端に連通している。図示されていないが、流入口11および流出口13には、シリンジの先端を挿入可能なスリット付のゴム栓、注射針を刺すことが可能な弾性膜、ルアーロック等の医療用に使用されている開閉弁を具備する構造が設けられていてもよい。これにより、液体の注入時および回収時において、外界からのコンタミネーションのリスクが軽減され得る。
平板22は、適度なガス透過性を有するように薄く形成されていてよい。平板22の厚みは、例えば50μm〜200μmである。これにより、培養中の細胞に酸素ガス等のガスを供給することが容易である。なお、嫌気性の細胞を培養する場合には、平板22は、ガス不透過性を有することが好ましく、この場合、平板32の厚みは、例えば2000μm〜3000μmである。
平板22は、流路12の開口部が封止されるように、流路12の開口部が形成された容器本体31の面全体に配置され、容器本体31の壁部(流路12を規定する壁部の端部)に貼り付けられて固定支持されている。本実施形態において、平板22は、容器本体21に接着剤で接着されているが、固定方法は接着剤に限定されず、例えば、熱融着、超音波融着等であってもよい。
培養容器10は、次のようにして製造することができる。まず、平板22が貼り付けられる前の容器本体21の流路12が形成された面を、Oプラズマ処理する。例えば、Oガスを適当なワット数の電力によってプラズマ化し、Oプラズマを、容器本体21の流路12が形成された面に所定時間曝露する。次いで、容器本体21の流路12を細胞非接着コーティング液で処理する。例えば、流路12内に細胞非接着コーティング液を流入させ、37℃で所定時間静置する。その後、流路12から細胞非接着コーティング液を流出させ、流路12を滅菌水で洗浄する。次いで、容器本体21の流路12が形成された一面に、平板22を貼り付ける。例えば、容器本体21の壁部の端部に接着剤を塗布した後、平板22を、容器本体21上に、流路12の開口部が覆われるように載置し、接着剤により接着する。次いで、接着剤を乾燥して固化させる。
培養容器10を細胞培養に使用する前に、次の前処理を行うことが好ましい。まず、流入口11から流路12にPBS溶液を流入させ、流路12をPBS溶液で満たす。これにより、流路12から気泡が除かれる。次いで、平板22のうち窪み21と向かい合う部分に細胞外マトリックス(ECM)を付着させる。例えば、流入口11から流路12にECM溶液を流入させる。流路12内のPBS溶液は、ECM溶液により押し流されて流出口13から流出する。流路12がECM溶液で満たされた状態を所定時間維持する。これにより、流路12の細胞非接着コーティング液が塗布されていない部分、すなわち平板22のうち流路12の開口部に対応する領域全体に、ECMが付着する。ECMは、細胞培養の際、細胞の足場となる。
本発明においては、上記一本の流路を備えた細胞培養容器の流出口から培養培地を流出させる。
本発明においては、多能性幹細胞の培養工程中、所定時間周期で新しい培養培地に交換(培地交換)することにより細胞培養容器の流出口から培養培地を流出させることができる。したがって、本発明においては、細胞培養容器の流出口から使用済みの培養培地を流出させる際に、次の培地交換まで使用される培養培地を前記流入口から流入させてよい。
また、本発明においては、次の培地交換まで使用される培養培地と、培養容器内の使用済みの培養培地との間にはエアを介在させることが好ましい。このようにエアを介在させることにより、培養培地内の細胞外代謝物等の拡散を防止することができ、細胞の未分化状態を正確に判定する上で有利である。
多能性幹細胞の培養工程中、培地交換の時間周期は、当業者であれば適宜決定することができるが、例えば、12〜72時間、好ましくは、24〜48時間とすることができる。
ここで、「培養工程中」とは、多能性幹細胞が、前記培養培地が添加された培養容器に播種され、培養された後、継代されるまでを意味する。多能性幹細胞は、培養工程中、培地交換が1〜5回行われるような密度で播種することができるが、好ましくは、2〜4回、より好ましくは3〜4回培地交換が行われるような密度で播種することができる。
その他の培養条件については、使用する多能性幹細胞の状態に応じて、当業者であれば適宜決定することができる。
本発明においては、培養容器からの培養培地の流出速度は、例えば培地交換の際に培養容器への培養培地の流入速度を調節することにより当業者は適宜設定することができる。培養培地の流出速度は、簡便かつ正確な測定の観点からは、一定であることが好ましい。より具体的には、培養培地の流出速度は、好ましくは5〜25mL/minであり、より好ましくは10〜20mL/minである。
本発明においては、培養容器から流出する培養培地について所定流出量毎の物性値を指標として、多能性幹細胞が未分化状態であるか否かを判定することができる。ここで、「所定流出量」は、分析精度に応じて当業者が適宜設定してよいが、好ましくは0.2〜2mLであり、より好ましくは0.5〜1.5mLである。
また、本発明においては、細胞培養容器の流出口から流出する培養培地について、所定流出量毎に物性値と総流出量とを測定する。本発明においては、後述のとおり、所定流出量毎の培養培地の物性値は多能性幹細胞の分化状態の指標として使用され、培養培地の総流出量は、多能性幹細胞の細胞培養容器の流路上の位置を判定する指標として使用される。「所定流出量」は、特に限定されないが、精密な培養培地の測定の観点からは、15〜45mLであり、より好ましくは20〜35mLであり、さらに好ましくは20〜25mLである。
本発明において、「所定流出量毎に」培養培地の物性値を測定する手法は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、公知の分注バイアル機構等を用いて所定流出量毎に培養培地をフラクション化し、得られるフラクション(バイアル)を経時的に測定に供する手法や、フローセル等を用いて所定流出量毎に測定を連続して実施する手法等が挙げられる。
本発明において、培養培地の「物性値」とは、多能性幹細胞の分化状態の指標となる培養培地の性質であれば特に限定されず、好ましくは、多能性幹細胞の分化状態の指標となる細胞外代謝物の含有量または光学的物性値とされる。
本発明において、「細胞外代謝物」とは、細胞培養の結果、細胞外(培養培地中)に存在する代謝物を意味し、具体的には、L−グルタミン酸、L−アラニン、アンモニア、オルニチン、2−アミノアジピン酸、デオキシシチジン、グルタミン酸、トリプトファン、アスパラギン酸、アラニン、シスチン、ヒポキサンチン、ウリジン、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3―ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシイソ吉草酸、3−ヒドロキシイソ吉草酸、尿素、4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ安息香酸、およびリボン酸からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。
培養培地における細胞外代謝物の測定手段としては、特に制限無く、細胞外代謝物の種類、性質に応じて選択することができる。測定手段としては、例えば、酵素電極法、比色法、ガスクロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ質量分析、液体クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ質量分析(LC−MS)、キャピラリー電気泳動質量分析等が挙げられる。好ましくは、―LC−MS等の市販の分析機器を使用することができる。
本発明において、「光学的物性値」とは、培養培地の光学的な現象に対する物性値を意味し、例えば、特定の波長の光における反射率、吸収率、吸光度、屈性率、蛍光強度等が挙げられるが、迅速かつ高感度な測定の観点からは蛍光強度が好ましい。
培養培地における光学的物性値の測定手段としては、光学的物性値に応じた従来公知の一般的な光学計測装置(蛍光分光光度計、紫外可視分光光度計、近赤外分光光度計、赤外分光光度計、ラマン分光光度計)が挙げられる。
本発明においては、上述のようにして得られる所定流出量毎の培養培地の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の細胞培養容器の流路上の位置を判定する。
多能性幹細胞の未分化状態の判定は、上記測定により得られる培養培地の物性値が基準物性値と比較してどの程度変動しているかを分析し、変動度が基準範囲内にあるとき、当該細胞は未分化状態であると判定し、変動度が基準範囲外であるとき、当該細胞は未分化状態でないと判定することができる。
例えば、多能性幹細胞の未分化状態の判定は、上記培養培地の物性値と、当該物性値について予め設定される閾値とを比較し、細胞が分化すると培養培地の物性値が上昇する場合、上記測定により得られる培養培地の物性値が閾値よりも高い場合には、細胞は分化状態にあると判定することができる。より具体的には、多能性幹細胞の未分化状態の判定のため閾値および判定手法は、例えば、特許文献1および特許文献2の記載に準じて設定することができる。
また、培養培地の物性値が光学的物性値である場合、多能性幹細胞の未分化状態の判定のため、例えば、多変量分析を用いて分化細胞を峻別することができる。多変量解析には、(1)教師なし(パターン認識)と、(2)教師ありとがある。(1)教師なしには、主成分分析、クラスター分析等がある。(2)教師ありには、(2−1)判別分析、(2−2)回帰分析等がある。
特に後述する実施例2に記載のように培養培地の物性値として特に蛍光強度を用いる場合、励起光をある波長範囲内で掃引しながら測定対象物に照射し、測定対象物から発せられた様々な波長の蛍光を検出することで、3次元蛍光スペクトル(励起蛍光マトリクス(Excitation−Emission Matrix:EEM)または蛍光指紋とも呼ばれる)を得ることができる。3次元蛍光スペクトルは、測定対象物に照射する励起波長、測定対象物から発する蛍光波長、測定対象物の蛍光強度の3軸からなる3次元データの等高線状のグラフとなる。
さらに、3次元蛍光スペクトルは、横軸を蛍光波長、縦軸を励起波長として各ポイントの蛍光強度を等高線プロットすることにより、図15Aおよび図15Bに示される通り、平面的に表すことができる。蛍光指紋は、測定対象物に対し蛍光染色等の前処理をせずにキャラクタリゼーションが可能であること、操作が容易で短時間で測定できること、さらに吸光度に比べ感度が高いこと、非破壊で測定が可能であること等の利点を有する。このように、3次元蛍光スペクトルは、3次元の膨大な情報を有する成分固有の蛍光情報であるため、測定者は、3次元蛍光スペクトルを利用することで、成分の識別が可能であり、かつ、非破壊での計測が可能となる。実施例2に示される通り、上述のような3次元蛍光スペクトル情報に多変量分析を適用することで、未分化細胞と分化細胞を判別することができる。さらに、多変量解析により特徴的な励起波長と蛍光波長の組み合わせを特定することで、励起光および蛍光の波長掃引が不要になることから、例えば蛍光分光光度計と分光フローセルとを組み合わせることで培養培地の回収と蛍光強度計測を同時に行うことも可能になり、ひいては、分化細胞を効率的かつ迅速に検出することが可能となる。
また、本発明において、培養培地の「総流出量」は、培養培地容器の流出口から容器内の流路の多能性幹細胞の存在する位置までの内容積に対応していることから、多能性幹細胞の細胞培養容器の流路上の位置を特定する指標となる。したがって、本発明においては、培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の細胞培養容器の流路上の位置を判定することができる。培養培地の「総流出量」の決定方法は、特に限定されず、例えば、分注バイアル機構を用いる場合には分注したフラクション(バイアル)中の培養培地の総体積により算出することができる。また、フローセルを用いる場合にはフローセルを通過する培養培地の流速に測定時間を乗じることにより算出することができる。
多能性幹細胞の未分化状態を判定する判定手段は、分析測定手段により得られた分析結果に基づいて培養培地の物性値を求め、多能性幹細胞の未分化状態を判定することができれば、特に制限無く用いることができる。例えば、コンピュータ等を用いることにより自動化することができる。
本発明において、判定の精度をより高めるために、多能性幹細胞が形成するコロニーの画像の微分フィルタ処理画像(微分画像)に基づいて、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価する方法を併用することができる。当該方法は、特開2014−18184号公報の記載に従って実行することができる。
本発明において、判定の精度をより高めるために、細胞形態観察を併用することもできる。
本発明によれば、多能性幹細胞が培養された培養培地の分析結果に基づいて多能性幹細胞の未分化状態を評価することは、コンピュータ等により全行程を自動化することができる。従って、本発明の方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。具体的には、本発明によれば、多能性幹細胞が培養された培養培地の分析結果を得る工程と、分析結果に基づいて多能性幹細胞の未分化状態を自動判定する工程とをコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。本発明によればまた、本発明のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。本発明によればさらに、本発明のプログラムをその内部記録装置に記録したコンピュータまたは本発明のコンピュータを備えた多能性幹細胞の未分化状態の評価のための自動判定システムが提供される。
本発明のプログラムは、フレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に記録し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、本発明のプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
本発明の判定方法によれば、多能性幹細胞を破壊せずにその未分化状態を判定することができ、該方法により、未分化の細胞と判定されれば、培養を継続し、一方で、分化を開始した細胞と判定されれば、除去することができる。よって、本発明による判定方法は、多能性幹細胞の継代培養方法に適用することができる。
本発明の継代培養方法において、本発明の判定方法により分化を開始した細胞と判定された細胞は、培養および/または継代に不要な細胞として除去することができる。ここで、不要な細胞の除去は、培養中に行うこともできるし、あるいは、継代の際に行うこともできる。不要な細胞の除去は、また、培養培地の分析を行うという本発明の特徴から、培養容器中において位置特異的に好適に行われる。培養容器中における位置特異的な細胞の剥離・除去は、例えば、WO2015/058841号公報の記載に基づき実施することができる。
本発明の継代培養方法の一態様としては、以下の工程:
(i)一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器に多能性幹細胞を播種する工程;
(ii)工程(i)で播種された多能性幹細胞を培養する工程;
(iii)工程(ii)の培養中、培地交換毎に細胞培養容器の流出口から培養培地を流出させ、所定流出量毎に培養培地の物性値と総流出量とを測定する工程;
(iv)工程(iii)で得られた所定流出量毎の培養培地の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の細胞培養容器の流路上の位置を判定する工程;
(v−1)工程(iv)で分化を開始したと判定された多能性幹細胞を除去する工程;および
(v−2)工程(iv)で未分化状態であると判定された多能性幹細胞を培養容器から剥離し、別の培養容器に播種する工程
を含んでなり、工程(i)〜(v)を適宜繰り返す方法である。
該態様において、多能性幹細胞が形成するコロニーの画像の微分フィルタ処理画像(微分画像)に基づいて、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価する方法を併用することができる。該方法を併用する場合は、工程(iv)で行われる評価とは独立して多能性幹細胞のコロニーの良否を評価し、コロニーを選択・剥離除去することができる。
該態様において、細胞形態観察を併用することができる。該観察を併用する場合は、工程(iv)で行われる判定とは独立して多能性幹細胞の細胞形態を観察し、細胞を選択・剥離除去することができる。
本発明によれば、細胞培養容器において培養される多能性幹細胞の未分化状態を位置特異的に判定する装置であって、
多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器と、
前記流出口から流出する細胞培養容器中の培養培地を回収する回収部と、
所定流出量毎の培養培地の物性値と培養培地の総流出量とを測定する分析測定部と、
前記所定流出量毎の培養培地の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の前記細胞培養容器の流路上の位置を判定する判定部
を備える、装置が提供される。
本発明の装置における、回収部、分析測定部および判定部を構成する具体的な手段については上述した通りである。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る細胞培養装置について説明する。
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る細胞培養装置について説明する。当該細胞培養装置においては、図1A〜図1Cに示されるような、多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器が用いられる。図2は、本発明の一実施形態に係る細胞培養装置の構成を示す概略図である。図2において、配線の接続は実線で示されており、容器が搬送される流れは破線で示されている。
本実施形態に係る細胞培養装置100は、多能性幹細胞を未分化状態で培養するための細胞培養装置である。細胞培養装置100は、において、多能性幹細胞が未分化状態であるか否かを位置特異的に判定しながら(必要に応じて、当該判定で特定された、分化を開始した細胞を除去しながら)多能性幹細胞を培養することにより、多能性幹細胞を未分化状態で培養することができる。
図2に示すように、細胞培養装置100は、細胞処理部200と、制御部300と、入力部410と、出力部420と、記憶部430と、報知部440とを備える。
細胞処理部200は、容器または容器中の細胞もしくは培地に対して各種処理を行う操作部である、容器搬入出部210と、細胞播種部220と、インキュベーション部230と、細胞形態観察部240と、培地交換部250と、細胞剥離部260と、細胞回収部270と、容器搬送部280とを備える。さらに、細胞処理部200は、培地分析処理を行う第1培地分析部291および第2培地分析部292を備える。なお、本発明の細胞培養装置において、細胞形態観察部240は、細胞の未分化状態をより正確に確認する観点から設置しており、細胞形態観察部を備えない態様も本発明には包含される。
細胞処理部200は、容器搬入出部210による細胞搬入処理および細胞搬出処理、細胞播種部220による細胞播種処理、インキュベーション部230によるインキュベーション処理、細胞形態観察部240による細胞形態観察処理、培地交換部250による培地交換処理、細胞剥離部260による細胞剥離処理、細胞回収部270による細胞回収処理、第1培地分析部291および第2培地分析部292による培地分析処理等を含む、細胞を所望の状態で培養するための一連の処理を行う。
容器搬入出部210は、細胞搬入処理および細胞搬出処理を行う。細胞搬入処理において、容器搬入出部210は、培養容器10に播種すべき細胞が収容された容器を、細胞培養装置100の外部から搬入する。細胞搬出処理において、容器搬入出部210は、細胞処理部2における処理が完了した培養容器10または細胞処理部200における処理が中止された培養容器10を細胞培養装置100の外部へ搬出する。
細胞播種部220は、培養容器10に対して細胞播種処理を行う。細胞播種処理において、細胞播種部220は、細胞培養に使用されていない新しい培養容器10に細胞を播種する。この際、培養容器10には、細胞とともに培地も収容される。培養容器10に播種される細胞は、未分化状態の多能性幹細胞である。
細胞播種部220の構成例を図3に示す。図3に示すように、細胞播種部220は、細胞懸濁液調製部221と、細胞懸濁液調製部221から供給流路222を通じて供給された細胞懸濁液を貯留する細胞供給用タンク223と、一端が培養容器10の流入口11に連結可能であり、他端が細胞供給用タンク223に連結された流入管路224と、流入管路224に介設されたバルブ、ポンプ等の流量調整器225と、細胞回収用タンク226と、一端が培養容器10の流出口13に連結可能であり、他端が細胞回収用タンク226に連結された流出管路227と、流出管路227に介設されたバルブ、ポンプ等の流量調整器228とを備える。
細胞懸濁液調製部221は、培養容器10に播種すべき細胞(未分化状態の多能性幹細胞)が収容された容器から、セルピッカー等により細胞を採取し、採取した細胞から細胞懸濁液を調製し、調製した細胞懸濁液を供給流路222から細胞供給用タンク223へ供給する。
細胞播種部220は、細胞供給用タンク223に貯留されている細胞懸濁液を、培養容器10の流入口11に連結された流入管路224を通じて、培養容器10に供給する。また、細胞播種部220は、培養容器10の流出口13から流出する細胞懸濁液を、培養容器10の流出口13に連結された流出管路227を通じて、細胞回収用タンク226で回収する。
インキュベーション部230は、未分化状態の多能性幹細胞および培地が収容された培養容器10に対してインキュベーション処理を行う。インキュベーション処理において、インキュベーション部230は、培養容器10を細胞培養に適した環境に置き、培養容器10中の細胞を生育および増殖させる。
インキュベーション部230によるインキュベーション処理は、培地単位で行われる。したがって、ある培地が収容された培養容器10に対するインキュベーション処理と、当該培地と交換された新しい培地が収容された培養容器10に対するインキュベーション処理とは、別のインキュベーション処理である。ある培地が収容された培養容器10に対するインキュベーション処理は、インキュベーション処理の開始からインキュベーション処理の終了まで行われる。インキュベーション処理は、連続的に行われてもよいし、断続的に行われてもよい。例えば、インキュベーション処理の開始からインキュベーション処理の終了までの間を通じて、ある培地が収容された培養容器10をインキュベーション部230内に保持し、培養容器10に対するインキュベーション処理を連続的に行ってもよい。また、インキュベーション処理の開始後、培養容器10に対してインキュベーション処理以外の処理(例えば、細胞形態観察処理、細胞剥離処理)を行うためにインキュベーション処理を中断し、当該処理の終了後、培地交換処理を行うことなく、インキュベーション処理を再開してもよい。「インキュベーション処理の開始」には、インキュベーション処理が行われていない新鮮な培地が収容された培養容器10に対してインキュベーション処理を開始する場合に加えて、インキュベーション処理が行われていない新鮮な培地が収容された培養容器10に対するインキュベーション処理の開始後、培養容器10に対してインキュベーション処理以外の処理(例えば、細胞形態観察処理、細胞剥離処理)を行うためにインキュベーション処理を中断し、当該処理の終了後、培地交換処理を行うことなく、インキュベーション処理を再開する場合も含まれる。「インキュベーション処理の終了」は、ある培地が収容された培養容器10に対するインキュベーション処理がもはや行われないことを意味する。インキュベーション処理の開始後、培養容器10に対してインキュベーション処理以外の処理(例えば、細胞形態観察処理、細胞剥離処理)を行うためにインキュベーション処理を中断し、当該処理の終了後、培地交換処理を行うことなく、インキュベーション処理を再開する場合、インキュベーション処理の中断は、インキュベーション処理の終了に該当しない。インキュベーション処理は、例えば、ある培地が収容された培養容器10に対して所定時間(例えば、24時間)行われた場合(すなわち、同一培地で所定時間インキュベーション処理が行われた場合)に終了する。
インキュベーション部230の構成例を図4に示す。図4に示すように、インキュベーション部230は、1または2以上の培養容器10を収容可能な容器収容部231と、1または2以上の培養容器10が載置される載置部232と、容器収容部231の内部雰囲気を細胞培養に適した環境に維持する環境調整部233とを有する。環境調整部233は、容器収容部231の内部雰囲気を細胞培養に適した条件(例えば、温度37℃、湿度90%、CO濃度5%)に調整することができる。
細胞形態観察部240は、培養容器10に対して細胞形態観察処理を行う。細胞形態観察処理において、細胞形態観察部240は、培養容器10中の細胞の形態を観察し、観察結果として観察画像を取得する。
細胞形態観察処理が行われる培養容器10は、インキュベーション処理の開始後のいずれかの時点の培養容器10である。「インキュベーション処理の開始後のいずれかの時点」には、インキュベーション処理の中断後のいずれかの時点およびインキュベーション処理の終了後のいずれかの時点が含まれる。インキュベーション処理と、インキュベーション処理の終了後の培地交換処理とが2回以上繰り返し行われる場合、細胞形態観察処理が行われる培養容器10は、インキュベーション処理済み培地が収容された培養容器10(すなわち、インキュベーション処理の開始後であって培地交換処理の前の培養容器10)であってもよいし、インキュベーション処理が行われていない新鮮な培地が収容された培養容器10(すなわち、培地交換処理の後であってインキュベーション処理の開始前の培養容器10)であってもよい。
細胞形態観察部240は、培養容器10に対して細胞形態観察処理を行う。細胞形態観察部240は、例えば、培養容器10中の細胞の形態を観察するための電子カメラモジュールである。細胞形態観察部240の構成例を図5に示す。図5に示すように、細胞形態観察部240は、透過型顕微鏡(例えば位相差顕微鏡)を介して培養容器10中の細胞の形態を撮像するミクロ観察系の撮像部241と、培養容器10中の細胞全体を俯瞰的に撮像するマクロ観察系の撮像部242と、ミクロ観察系およびマクロ観察系の撮像部241および242で撮像された画像を処理して、細胞の状態を判定するための画像データを作成する画像処理部243とを備える。画像処理部243は、例えば、多能性幹細胞が形成するコロニーの画像の微分フィルタ処理画像(微分画像)を作成する。画像処理部243で作成された画像データは、観察時刻と対応付けられて記憶部430に記憶される。
培地交換部250は、培養容器10に対して培地交換処理を行う。培地交換処理において、培地交換部250は、培養容器10中の培地を新しい培地と交換する。インキュベーション処理の終了後に培地交換処理が行われる場合、新しい培地と交換される培養容器10中の培地は、インキュベーション処理済み培地(以下「使用済み培地」ともいう)である。培地交換処理の後であってインキュベーション処理の開始前に培地交換処理が行われる場合、新しい培地と交換される培養容器10中の培地は、インキュベーション処理されていない培地である。細胞剥離処理後に培地交換処理が行われる場合、細胞剥離処理において培養容器10から剥離された不要な細胞(例えば、分化を開始した細胞)は、培地交換処理において培養容器10から除去される。したがって、細胞剥離処理後に培地交換処理が行われる場合、培地交換部250は、細胞剥離部260とともに、培養容器10から不要な細胞を除去する細胞除去処理を行う細胞除去部として機能する。
培地交換部250の構成例を図6Aに示す。図6Aに示すように、培地交換部250は、インキュベーション処理に使用されていない新鮮な培地を貯留する培地供給用タンク251と、一端が培養容器10の流入口11に連結可能であり、他端が培地供給用タンク251に連結された流入管路252と、流入管路252に介設されたバルブ、ポンプ等の流量調整器253と、培地回収機構254と、一端が培養容器10の流出口13に連結可能であり、他端が培地回収機構254に連結された流出管路255と、流出管路255に介設されたバルブ、ポンプ等の流量調整器256とを備える。
培地交換部250は、培地供給用タンク251に貯留されている新鮮な培地を、培養容器10の流入口11に連結された流入管路252を通じて、培養容器10に供給する。培養容器10に新鮮な培地が供給されると、培養容器10中の古い培地(例えば、インキュベーション処理済み培地)は、培養容器10の流出口13から流出する。培地交換部250は、培養容器10の流出口13から流出する培地(例えば、インキュベーション処理済み培地)を、培養容器10の流出口13に連結された流出管路255を通じて、培地回収機構254で回収する。
培地回収機構254は、所定流量毎に古い培地を回収する機能を有しており、バイアル分注機構またはフローセルを用いて構成してもよい。図6Bでは、培地交換部250は、培地回収機構254としてバイアル分注機構254aを備えている。また、培養培地の分析測定の精度の向上等の観点から、バイアル分注機構254aと、流量調整器256との間には、フィルタ257を設けている。図示しないが、バイアル分注機構は、第1培地分析部を構成する分析装置(例えば、蛍光分光光度計等の分光光度計、液体クロマトグラフ質量分析器等の代謝物分析装置、pH/pO/pCO計、タンパク質分析装置等)に接続することができる。
また、図6Cでは、培地交換部250は、培地回収機構254としてフローセル254bを備えている。培地交換部250は、培養培地の分析測定の精度の向上等の観点から、フローセル254bと、流量調整器256との間には、フィルタ257を設けており、さらに、フローセル254bを通過した培養培地を排出できるようにドレイン258が設けられている。図示しないが、フローセル254bには、第1培地分析部を構成する迅速計測が可能な分析装置(例えば、蛍光分光光度計、紫外可視分光光度計、近赤外分光光度計、電気伝導度計等)に接続することができる。
培地交換部250で回収されたインキュベーション処理済み培地は、第1培地分析部291および第2培地分析部292で分析される。第1培地分析部291は、培地交換部250で回収されたインキュベーション処理済み培地の所定流量毎の物性値を分析および算出する第1培地分析処理を行う。第2培地分析部292は、インキュベーション処理済み培地の総流量を分析および算出する第2培地分析処理を行う。
細胞剥離部260は、培養容器10に対して細胞剥離処理を行う。細胞剥離処理において、細胞剥離部260は、培養容器10中の不要な細胞(例えば、分化を開始した細胞)を選択的に剥離する。剥離すべき細胞およびその培養容器中の位置は、第2培地分析部において計測されるインキュベーション処理済み培地の総流量に基づいて特定される。
細胞剥離部260の構成例を図7に示す。図7に示すように、細胞剥離部260は、培養容器10に可視光を照射する光源261と、光を収束させるためのレンズ等の収光部262と、光源261から収光部262に光を供給する光ファイバー263とを有する。細胞剥離部260は、剥離すべき細胞に可視光を照射することにより、培養容器10から目的の細胞を選択的に剥離することができる。光源261は、例えば、400〜500nmの波長の光を照射する光源であり、好ましくはレーザー光源またはLED光源(例えば、405nm、420nmまたは450nmの波長の光を照射するレーザー光源またはLED光源)である。光源261の出力は、特に限定されないが、例えば、細胞の剥離に必要とされる光照射量を短期間(例えば、10分以内)で与えるという観点では、100mW以上の出力を有することが好ましい。
本実施形態では、光を利用して細胞剥離処理を行うが、超音波を利用して細胞剥離処理を行うことも可能である。超音波を利用する場合、細胞剥離部260は、上下方向(所定方向)に超音波振動する振動子を有する超音波プローブを備える。この場合、細胞剥離部260は、培養容器10の平板32の裏面から、剥離すべき細胞が位置する箇所に超音波振動する振動子を接触させることにより、培養容器10から目的の細胞を選択的に剥離することができる。培養容器10から選択的に剥離された細胞は、培地交換の際に古い培地とともに排出される。
細胞回収部270は、培養容器10に対して細胞回収処理を行う。細胞回収処理において、細胞回収部270は、培養容器10中の細胞を培養容器10から剥離させ、回収する。
細胞回収部270の構成例を図8に示す。図8に示すように、細胞回収部270は、剥離剤溶液を貯留する剥離剤溶液供給用タンク271aと、新鮮な培地を貯留する培地供給用タンク271bと、一端が培養容器10の流入口11に連結可能であり、他端が剥離剤溶液供給用タンク271aおよび培地供給用タンク271bに連結された流入管路272と、流入管路272に介設されたバルブ、ポンプ等の流量調整器273と、剥離剤溶液回収用タンク274aと、細胞回収用タンク274bと、一端が培養容器10の流出口13に連結可能であり、他端が剥離剤溶液回収用タンク274aおよび細胞回収用タンク274bに連結された流出管路275と、流出管路275に介設されたバルブ、ポンプ等の流量調整器276とを有する。培養容器10に供給すべき液体(剥離剤溶液または新鮮な培地)は、流量調整器273が有する切換弁によって選択される。培養容器10から回収される液体(剥離剤溶液または細胞含有培地)は、流量調整器276が有する切換弁によって選択される。
細胞回収部270は、剥離剤溶液供給用タンク271aに貯留されている剥離剤溶液を、培養容器10の流入口11に連結された流入管路272を通じて、培養容器10に供給する。培養容器10に剥離剤溶液が供給されると、培養容器10中の細胞は培養容器10から剥離される。細胞回収部270は、培養容器10の流出口13から流出する剥離剤溶液を、培養容器10の流出口13に連結された流出管路275を通じて、剥離剤溶液回収用タンク274aで回収する。その後、細胞回収部270は、培地供給用タンク271bに貯留されている新鮮な培地を、培養容器10の流入口11に連結された流入管路272を通じて、培養容器10に供給する。培養容器10に新鮮な培地が供給されると、剥離された細胞は、新鮮な培地により押し流されて、新鮮な培地とともに流出口13から流出する。細胞回収部270は、培養容器10の流出口13から流出する細胞含有培地を、培養容器10の流出口13に連結された流出管路275を通じて、細胞回収用タンク274bで回収する。
容器搬送部280は、細胞処理部200内で培養容器10等の容器を搬送し、ある操作部と別の操作部との間で培養容器10等の容器の受け渡しを行う。容器搬送部280は、所定方向に延在する搬送路と、搬送路に設けられた搬送アームとを有する。各操作部は搬送路に隣接して設けられており、搬送アームは、ある操作部の内部にアクセスして当該操作部から容器を搬出し、搬出した容器を搬送路に沿って搬送し、別の操作部の内部にアクセスして当該別の操作部へ容器を搬入することができる。搬送アームは、例えば、容器を保持する保持機構を備え、水平方向および鉛直方向への移動並びに鉛直軸を中心とする旋回が可能となるように構成される。
制御部300は、細胞培養装置100の動作を統括的に制御するとともに、細胞培養装置100における各処理を培養容器単位で管理するコンピュータである。制御部300は、例えば、CPU、RAM、ROM等から構成され、記憶部430に記憶されている各種データ、各種プログラム等に基づいて、各種処理を行う。この際、制御部300は、動作制御部310、第1判定部320、第2判定部330または観察条件調整部340として機能する。
動作制御部310は、記憶部430に記憶されている処理スケジュールに従って、各種操作部を制御し、各種処理を実行する。例えば、動作制御部310は、ある培地が収容された培養容器10に対して、インキュベーション処理、培地交換処理および第1培地分析処理が2回以上繰り返し行われるように、インキュベーション部230、培地交換部250および第1培地分析部291の動作を制御する。例えば、ある培地が収容された培養容器10に対して、インキュベーション処理、培地交換処理および第1培地分析処理がk回(kは2以上の整数である)繰り返し行われる場合、1回目のインキュベーション処理、1回目の培地交換処理、1回目の第1培地分析処理、2回目のインキュベーション処理、2回目の培地交換処理、2回目の第1培地分析処理、・・・・、k回目のインキュベーション処理、k回目の培地交換処理、k回目の第1培地分析処理が順次行われる。
第1判定部320は、所定流出量毎の培養培地の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定するための第1判定処理を行う。
第2判定部330は、培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の細胞培養容器の流路上の位置を判定するための第2判定処理を行う。
観察条件調整部340は、第1判定処理および第2判定処理で得られた判定結果に基づいて、細胞形態観察処理における観察条件を調整する。例えば、第1判定処理および第2判定処理において、培養容器10中の特定の位置の細胞が未分化状態であると判定された場合、観察条件調整部340は、次回の細胞形態観察処理における観察感度を向上させるために、観察倍率、観察回数、観察ポイント数等を増加させる。
入力部410は、例えば、オペレータが操作するキーボード、マウス等のポインティングデバイスから構成され、オペレータからの指示(例えば、処理の開始指示、処理結果の表示指示等)、各処理に必要なデータの入力等の各種操作信号を入力する。入力されたデータは、制御部300により記憶部430に記憶される。
出力部420は、例えば、ディスプレイ等から構成され、各種手段によって取得または分析された結果(例えば、観察画像等の観察結果、細胞外代謝物の変動値またはその経時的変化等の分析結果)を出力する。
記憶部430は、例えば、RAM、ハードディスク等のストレージから構成され、各種データ、各種プログラム等を記憶する。記憶部430には、例えば、培養容器の属性情報(例えば、細胞の種類、培地の種類、継代の履歴等)と、インキュベーション処理条件(例えば、温度等)、インキュベーション処理スケジュール(例えば、インキュベーション処理の開始時刻、終了時刻等)、細胞培養培地からの培養培地の流出条件(例えば、流出速度、流出時期、流出期間等)、細胞形態観察条件(例えば、観察のインターバル、観察倍率、観察回数、観察ポイント数、撮像条件等)、各種判定を行うときの判定条件(例えば、基準範囲)等の情報が記憶されている。
報知部440は、例えば、培養容器10中の細胞が不良な状態(例えば、分化を開始した状態)であると判定されたときに、警告を外部に出力する。例えば、報知部440は、出力部420に警告表示を出力する。
以下、図9を参照して、細胞培養装置100が行う細胞培養処理手順の一実施形態について説明する。図9は、細胞培養装置100が行う細胞培養処理手順の第1実施形態を示すフローチャートである。
オペレータからの開始指示が入力部410から入力されると、動作制御部310は、容器搬入出部210を制御して、細胞搬入処理を実行する(ステップS501)。細胞搬入処理では、培養すべき細胞(未分化状態の多能性幹細胞)が収容された容器が、細胞培養装置100の外部から容器搬入出部210へ搬入される。
ステップS501の後、動作制御部310は、容器搬送部280を制御して、容器搬入出部210へ搬入された容器を容器搬入出部210から細胞播種部220へ搬送し、次いで、細胞播種部220を制御して、細胞播種処理を実行する(ステップS502)。細胞播種処理では、培養すべき細胞(未分化状態の多能性幹細胞)が、細胞培養に使用されていない新しい培養容器10に播種される。この際、培養容器10には、細胞とともにインキュベーション処理に使用されていない新鮮な培地が収容される。
ステップS502の後、動作制御部310は、容器搬送部280を制御して、未分化状態の多能性幹細胞および新鮮な培地が収容された培養容器10を細胞播種部220からインキュベーション部230へ搬送し、次いで、インキュベーション部230を制御して、培養容器10に対してインキュベーション処理を開始する(ステップS503)。動作制御部310は、記憶部430に記憶されているインキュベーション処理条件を参照し、細胞培養に適した所定条件下でインキュベーション処理が実現されるように、インキュベーション部230を制御する。インキュベーション処理では、培養容器10が細胞培養に適した環境下に置かれ、培養容器10中の細胞が生育および増殖する。
ステップS503の後、動作制御部310は、記憶部430に記憶されているインキュベーション処理スケジュールを参照し、現時点が培地交換時刻であるか否かを判定する(ステップS504)。培地交換時刻は、例えば、インキュベーション処理の開始後、所定時間(例えば、24時間)が経過した時点である。
動作制御部310は、現時点が培地交換時刻でないと判定した場合(No側)、インキュベーション処理を続行する。動作制御部310は、現時点が培地交換時刻であると判定するまで、インキュベーション処理を続行する。
動作制御部310は、現時点が培地交換時刻であると判定した場合(Yes側)、インキュベーション処理を終了し(ステップS505)、動作制御部310は、容器搬送部280を制御して、培養容器10をインキュベーション部230から培地交換部250へ搬送し、培地交換処理(ステップS506)に移行する。
動作制御部310は、培養容器10を培地交換部250へ搬送した後、培地交換部250を制御して、培養容器10に対して培地交換処理を実行する(ステップS506)。培地交換処理において、培養容器10中のインキュベーション処理済み培地は、インキュベーション処理に使用されていない新鮮な培地と交換される。
ステップS506の後、動作制御部310は、第1培地分析部291を制御して、培地交換処理で培地から流出するインキュベーション処理済み培地の所定流量毎の物性値を測定する第1培地分析処理を実行する。また、動作制御部310は、第2培地分析部292を制御して、培地交換処理で培地から流出するインキュベーション処理済み培地の総流量を分析および算出する第2培地分析処理を実行する(ステップS507)。
ステップS506の後、動作制御部310は、第1判定部320を制御して、第1培地分析部291によって算出された所定流出量毎の培養培地の物性値に基づいて培養容器10の多能性幹細胞の未分化状態を判定し、さらに、第2判定部330を制御して、第2培地分析部292によって算出された培養培地の総流出量に基づいて未分化状態の判定された多能性幹細胞の培養容器10の流路上の位置を判定する(ステップS508)。例えば、第1判定部320は、取得した所定流出量毎の培養培地の物性値に基づいて、当該物性値が基準物性値と比較してどの程度変動しているかを分析し、変動度が基準範囲内にあるとき、当該細胞は未分化状態であると判定し、変動度が基準範囲外であるとき、当該細胞は未分化状態でないと判定することができる。また、第2判定部330は、第1判定部320が不要な細胞(例えば、分化を開始した細胞、成長状態が不良な細胞等)が存在すると判定した場合、不要な細胞が存在する容器中の位置を特定し、その位置情報を記憶部430に記憶させることができる。
ステップS508において、第1判定部320が、不要な細胞が存在すると判定した場合(Yes側)、動作制御部310は、容器搬送部280を制御して、培養容器10を培地交換部250から細胞剥離部260へ搬送し、次いで、細胞剥離部260を制御して、培養容器10に対して細胞剥離処理を実行する(ステップS509)。動作制御部310は、記憶部430に記憶されている不要な細胞の位置情報に基づいて、不要な細胞を選択的に剥離する。細胞剥離処理で剥離された細胞は、培地中に浮遊した状態にあり、培地交換処理の際に古い培地とともに除去される。
ステップS508において、第1判定部320が、不要な細胞が存在しないと判定した場合(No側)、動作制御部310は、容器搬送部280を制御して、培養容器10を細胞回収部270へ搬送し、細胞回収処理(ステップS510)に移行する。
また、ステップS508において、第1判定部320が、不要な細胞が存在しないと判定した場合(No側)、動作制御部310は、培養容器10が培養終了条件を満たすか否かをさらに判定するステップを実行してもよい。培養終了条件としては、例えば、培養容器10中の細胞数が閾値以上であること(コンフルエント状態またはそれに近い状態)、インキュベーション処理が所定時間行われたこと等が挙げられる。培養容器10中の細胞数を培養終了条件とする場合、動作制御部310は、細胞形態観察処理部240で取得された観察画像および/またはその処理画像に基づいて、培養容器10中の細胞数を分析する。
培養容器10が培養終了条件を満たさないと判定した場合(No側)、動作制御部310は、容器搬送部280を制御して、培養容器10を培地交換部250からインキュベーション部230へ搬送し、インキュベーション部230を制御して、培養容器10に対してインキュベーション処理を再開する(ステップS503)。動作制御部310は、培養容器10が培養終了条件を満たすと判定するまで、ステップS503〜ステップS509の一連の処理を繰り返し実行することができる。
培養容器10が培養終了条件を満たすと判定した場合(Yes側)、動作制御部310は、容器搬送部280を制御して、培養容器10を培地交換部250から細胞回収部270へ搬送し、次いで、細胞回収部270を制御して、培養容器10に対して細胞回収処理を実行する(ステップS510)。細胞回収処理では、培養容器10から細胞が回収され、別の容器に収容される。
ステップS510の後、動作制御部310は、容器搬送部280を制御して、培養容器10から回収された細胞が収容された容器を細胞回収部270から容器搬入出部210へ搬送し、次いで、容器搬入出部210を制御して、容器を細胞処理装置100の外部へ搬出する(ステップS511)。
ステップS511の後、動作制御部310は、容器搬送部280を制御して、培養容器10から回収された細胞が収容された容器を細胞回収部270から細胞播種部220へ搬送し、次いで、細胞播種部220を制御して、容器中の細胞を新しい培養容器10に播種し、継代培養処理を実行してもよい。この場合、細胞播種処理後の処理は上記と同様に行われる。
以下に、具体的な実施例に則して本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例の特定の態様により制限されると理解されるべきではない。本発明には、実施例に開示された発明のあらゆる改変や変更が含まれると理解されるべきである。
実施例1:多能性幹細胞の未分化状態と培養培地成分との関係についての検討
本実施例では、多能性幹細胞の未分化状態を評価するための培地解析方法について検討した。
(細胞培養容器の準備)
本実施例では、図1A〜図1Cに準じて、図10の写真に示される一本鎖閉鎖系の細胞培養容器を用いた。当該細胞培養容器の詳細は以下の通りであった。
細胞培養容器全体の寸法;27.6mm×85.4mm×10mm
通路12の幅;2.5mm
通路12のアスペクト比−幅:高さ:通路長さ=3:4:1800
細胞播種領域20aのピッチ(中心間隔);3mm
細胞播種領域20aの縁の間隔;0.1mm
細胞播種領域20aの内側の表面粗さRa;0.15
細胞播種領域20aの外側の表面粗さRa;0.7
細胞播種領域の窪み: なし
平板32の厚み;50μm
容器本体の材料;ポリスチレン
平板の材料; ポリスチレン
接着方法: 超音波溶着
流入口11および流出口13には、シリンジの先端を挿入可能なスリット付のゴム栓を設置した。
(細胞培養および培養培地の回収)
以下の実験では、多能性幹細胞として、ヒトiPS細胞(公益財団法人 先端医療振興財団 細胞評価グループ 川真田研究室による樹立株)を用い、ECMとしてビトロネクチン−N(Gibco社製、製品番号:A14700)を用いた。
また、未分化維持培養培地としては、Essential−8培地(Gibco社製、製品番号:A1517001)を用いた。
また、分化誘導因子含有培地としては、Essential−8培地に外胚葉への分化誘導因子であるSB431542(Wako社製、製品番号:192−16541)およびNoggin(Peprotech社製、製品番号:120−10C)がそれぞれ5×10−6mol/Lおよび500×10−9mol/Lとなるように添加された培養培地を用いた。
未分化維持培養培地に、ROCK阻害剤Y−27632(Wako社、製品番号:251−00514)が1×10mol/Lになるよう添加された培地を用いて細胞密度が100cells/mmになるようiPS細胞をシングルセルで細胞培養容器中に播種し(播種後0日(day0))、播種後5日目(day5)まで培養を行った。培地交換については、播種後1日目(day1)、2日目(day2)、3日目(day3)、4日目(day4)、5日目(day5)に、ROCK阻害剤を含まない未分化維持培養培地を用いて全量交換(18mL)した。なお、播種後1日目(day1)以降の培地交換の際には、図10の破線域(I)内に外胚葉分化細胞が形成されかつ破線域(II)内に未分化細胞が形成されることを期待して分化誘導因子を細胞培養容器中に加える処理を行った。具体的には、未分化維持培養培地を用いた培地交換処理後、流出口から、分化誘導因子含有培地を4mL送液し次いで未分化維持培養培地を2mL送液した。
播種後5日目(day5)の細胞形態の観察を、CCD付き光学顕微鏡(オリンパス社製、製品番号:IX81およびDP72)を用いて行った。光学顕微鏡による破線域(I)内(総送液量4.5mL付近)の細胞形態像(A)および破線域(II)内(総送液量11.5mL付近)の細胞形態像(B)は図11Aおよび図11Bに示される通りである。破線域(I)の細胞形態像および破線域(II)の細胞形態像との形態的な相違は確認されなかった。
1日目(day1)、2日目(day2)、3日目(day3)、4日目(day4)、5日目(day5)培地交換時には、流入口から1mLのエアプラグを挿入した後に新たな培地を送液し、使用済みの培地を逐次的に一定量(1mL)ずつ送液してバイアルに回収し、LC−MS分析(LCMS8050およびLC/MS/MSメソッドパッケージ 細胞培養プロファイリング、島津製作所製)により乳酸および2−アミノアジピン酸の存在量を測定した。また、なお、乳酸は細胞数と相関が高いことが知られており、2−アミノアジピン酸は外胚葉分化マーカーとして知られている。
結果は、図12Aおよび図12Bに示される通りであった。
細胞数と相関の高い乳酸の存在量は、試験中ほぼ一定である一方で、破線域(I)内(総送液量4.5mL付近)では、外胚葉分化マーカーである2−アミノアジピン酸の存在量は上昇していた。細胞形態では検知されなかった容器内に局所的に存在する分化細胞を高感度で検出された。
参考例:培地成分の拡散とエアプラグとの関係についての検討
エアプラグが、培地を回収時の培地内成分の拡散にどの程度影響するかについて確認することを目的として、純水に着色料(メチレンブルー)を吸光度が1付近となるように添加された着色水を用いて以下の予備試験1および2を行った。
予備試験1では、着色水の充填された細胞培養容器に、流入口からエアプラグ1mLを挿入し、次に着色料を含まない純水を送液し、流出口から逐次的に一定量(mL)ずつバイアルに培地を回収し、紫外可視分光光度計による吸光度測定より培地中の着色料の相対濃度を確認した。
また、予備試験2では、エアプラグを挿入しない以外、予備試験2と同様に着色料の相対濃度を確認した。
結果は、図13に示される通りであった。
予備試験1(エアプラグあり)では着色料の相対濃度は総送液量にかかわらずほぼ一定であったに対し、予備試験2(エアプラグなし)では総送液量が高くなるほど培地中の着色濃度は低下する傾向が確認された。
実施例2:多能性幹細胞の未分化状態と培養培地成分との関係についての検討2
ヒトiPS細胞を、以下の2つの条件で培養し、分化状態の異なる2つの細胞群(A群、B群)を準備した。なお、いずれの群についても、ECMとしてビトロネクチン−N(Gibco社製、製品番号:A147001)を用いた。また、未分化維持培地としては、Essential−8(Gibco社製、製品番号:A1517001)を用いた。
A群:未分化維持培養培地にROCK阻害剤Y−27632(Wako社、製品番号:251−00514)が1×10mol/Lになるよう添加された培地を用いてiPS細胞をシングルセルで播種し(播種後0日(day0))、播種後1日目(day1)以降はROCK阻害剤を含まない未分化維持培養培地を用いて培養。
B群:未分化維持培養培地にROCK阻害剤Y−27632(Wako社、製品番号:251−00514)が1×10mol/Lになるよう添加された培地を用いて細胞密度が100cells/mmになるようiPS細胞をシングルセルで播種し(播種後0日(day0))、播種後1日目(day1)からは、未分化維持培地に分化誘導因子であるBMP4(Peprotech社製、製品番号:120−05)が40×10−9mol/Lとなるように添加された培養培地を用いて培養。
A群、B群のいずれも、マルチウェルプレート(6ウェル)(BD社製、製品番号:353046)を用いて播種後6日目(day6)まで培養を行った。培地交換については、播種後1日目(day1)、2日目(day2)、3日目(day3)、4日目(day4)、5日目(day5)、および6日目(day6)に、全量交換(4mL)し、使用済み培地を回収した。
(細胞形態の観察)
播種後1日目(day1;d1)、2日目(day2;d2)、3日目(day3;d3)、4日目(day4;d4)、5日目(day5;d5)および6日目(day6;d6)の細胞形態の観察を、実施例1と同様、CCD付き光学顕微鏡(オリンパス社製、製品番号:IX81およびDP72)を用いて行った。
A群およびB群の結果はそれぞれ、図14Aおよび図14Bに示される通りであった。A群では細胞が緻密に集合したコロニーあるいは海島構造を形成しており、一つ一つの細胞が小さい。これは未分化細胞に特徴的な細胞形態である。よってA群は、未分化の細胞であることが確認された。一方、B群では細胞密度が疎で、一つ一つの細胞が大きい。これは分化細胞に特徴的な細胞形態である。よって、B群は分化を開始した細胞であることが確認された。
また、1日目(day1;d1)、2日目(day2;d2)、3日目(day3;d3)、4日目(day4;d4)、5日目(day5;d5)および6日目(day6;d6)の培地交換時に得られた使用済みの培地について、蛍光分光光度計(F7000、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて3次元蛍光スペクトル測定を行い、励起波長(Ex)と蛍光波長(Em)とをそれぞれ掃引して蛍光強度をマッピングした。
ここで、測定条件は、以下の通りである。
温度:23〜25℃
励起波長:210〜380nm、間隔4nm
蛍光波長:270〜550nm、間隔2nm
スキャンスピード:2400nm/min
励起側スリット:5nm
蛍光側スリット:5nm
ホトマル電圧:400V
A群およびB群について得られた3次元蛍光スペクトルはそれぞれ、図15Aおよび図15Bに示される通りであった。
次に、得られた3次元蛍光スペクトルに対して、R (version 3.1.2)を用いて多変量解析(主成分分析および階層的クラスタリング)を行い、分化細胞と未分化細胞の判別、および分化細胞または未分化細胞に特徴的な蛍光強度の挙動を示すEx―Emの組み合わせの抽出を行った。具体的には、A群およびB群のd2からd6までの3次元蛍光スペクトルデータを入力データとして主成分分析を行い、得られる主成分スコアを用い分化細胞と未分化細胞の判別を行った。また、A群およびB群のd2からd6までの3次元蛍光スペクトルデータを入力データとして階層的クラスタリングを行い、蛍光強度の挙動の類似するEx−Emの組み合わせの集まり(以下クラスター(cluster)と呼称する)として分類・可視化することで、分化細胞または未分化細胞に特徴的なEx―Emの組み合わせの抽出を行った。
上記主成分分析の結果、図16に示される通り、2日目(day2)より初期の分化細胞が検出された。
また、階層的クラスタリングによる分類結果を図17に示す。全50個のクラスターのなかでも、分化細胞と未分化細胞との間で大きな差異を示す、特徴的な蛍光強度の挙動を示すクラスターの平均相対蛍光強度を図18に示す。図17および図18の結果に基づいて、未分化細胞または分化細胞で特徴的な挙動を示すEx−Emの組み合わせを抽出した。その結果、3日目(day3)以降であれば、少なくとも特定のEx−Emにおける蛍光強度(例えばcluster−31に分類される、Ex=360nm、Em=450nm)をモニタするのみで分化細胞を検出可能であることが確認された。この結果から、培地に対する特定のEx−Emにおける蛍光強度を、例えばフローセルを有する蛍光分光光度計で使用済み培地の回収と同時に連続測定することにより、迅速に分化細胞および未分化細胞を検出しうることが確認された。
10 培養容器
11 流入口
12 流路
13 流出口
21 容器本体
22 平板
31 細胞
100 細胞培養装置
200 細胞処理部
210 容器搬入出部
220 細胞播種部
221 細胞懸濁液調製部
222 供給流路
223 細胞供給用タンク
224 流入管路
225 流量調整器
226 細胞回収用タンク
227 流出管路
228 流量調整器
230 インキュベーション部
231 容器収容部
232 載置部
233 環境調整部
240 細胞形態観察部
241 ミクロ観察系の撮像部
242 マクロ観察系の撮像部
243 画像処理部
250 培地交換部
251 培地供給用タンク
252 流入管路
253 流量調整器
254 培地回収機構
254a バイアル分注機構
254b フローセル
255 流出管路
256 流量調整器
257 フィルタ
258 ドレイン
260 細胞剥離部
261 光源
262 収光部
263 光ファイバー
270 細胞回収部
271a 剥離剤溶液供給用タンク
271b 培地供給用タンク
272 流入管路
273 流量調整器
274a 剥離剤溶液回収用タンク
274b 細胞回収用タンク
275 流出管路
276 流量調整器
280 容器搬送部
291 第1培地分析部
292 第2培地分析部
300 制御部
310 動作制御部
320 第1判定部
330 第2判定部
340 観察条件調整部
410 入力部
420 出力部
430 記憶部
440 報知部

Claims (23)

  1. 細胞培養容器において培養される多能性幹細胞の未分化状態を位置特異的に判定する方法であって、
    多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填された一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器を準備し、
    前記流出口から細胞培養容器中の培養培地を流出させ、所定流出量毎に培養培地の物性値と総流出量とを測定し、
    前記所定流出量毎の培養培地の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の細胞培養容器の流路上の位置を判定すること
    を含んでなる、方法。
  2. 前記細胞培養容器が、容器本体と、該容器本体の一面に貼り付けられた平板とを備えた閉鎖系細胞培養容器である、請求項1に記載の方法。
  3. 複数の多能性幹細胞播種領域が、前記流路の底面上において流路に沿って並んで設けられている、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記培養培地が、多能性幹細胞の未分化状態を維持するための培養培地である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の判定方法。
  5. 培地交換により前記流出口から細胞培養容器中の培養培地を流出させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の判定方法。
  6. 前記培養培地の流出速度が一定である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の判定方法。
  7. 次の培地交換まで使用される培養培地を前記流入口から流入させる、請求項6に記載の判定方法。
  8. 次の培地交換まで使用される培養培地と、細胞培養容器中の培養培地との間にエアを介在させる、請求項7に記載の判定方法。
  9. 培地交換の時間周期が24〜48時間である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の判定方法。
  10. 前記所定流出量毎の培養培地の物性値が、細胞外代謝物の含有量または光学的物性値である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の判定方法。
  11. 前記細胞外代謝物が、L−グルタミン酸、L−アラニン、アンモニア、オルニチン、2−アミノアジピン酸、デオキシシチジン、グルタミン酸、トリプトファン、アスパラギン酸、アラニン、シスチン、ヒポキサンチン、ウリジン、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3―ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシイソ吉草酸、3−ヒドロキシイソ吉草酸、尿素、4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ安息香酸、およびリボン酸からなる群から選択される少なくとも1つのものである、請求項10に記載の判定方法。
  12. 前記光学的物性値が蛍光強度または蛍光指紋情報である、請求項9に記載の判定方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  14. 請求項13に記載のプログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な記録媒体。
  15. 請求項13に記載のプログラムを内部記憶装置に記録したコンピュータ。
  16. 請求項15に記載のコンピュータを備えた、多能性幹細胞の未分化状態の自動判定システム。
  17. 継代に必要な細胞を特定する工程と、培養および/または継代に不要な細胞を除去する工程とを含んでなる、多能性幹細胞の継代培養方法であって、継代に必要な細胞が、請求項1〜12のいずれか一項に記載の判定方法により、未分化な細胞と判定された多能性幹細胞であり、培養および/または継代に不要な細胞が、請求項1〜12のいずれか一項に記載の判定方法により、分化を開始した細胞と判定された多能性幹細胞である、方法。
  18. 細胞培養容器において培養される多能性幹細胞の未分化状態を位置特異的に判定する装置であって、
    多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器と、
    前記流出口から流出する細胞培養容器中の培養培地を回収する回収部と、
    所定流出量毎の培養培地の物性値と培養培地の総流出量とを測定する分析測定部と、
    前記所定流出量毎の培養培地の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記培養培地の総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の前記細胞培養容器の流路上の位置を判定する判定部と、
    を備える、装置。
  19. 前記回収部がバイアル分注機構またはフローセルを備えている、請求項18に記載の装置。
  20. 多能性幹細胞を未分化状態で培養するための細胞培養装置であって、
    多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器に対してインキュベーション処理を行うインキュベーション部と、
    前記インキュベーション処理の終了後に、前記培養容器に対して培地交換処理を行うことにより、前記細胞培養容器の流出口からインキュベーション処理済み培養培地を流出させる培地交換部と、
    前記インキュベーション処理済み培養培地の、所定流出量毎に培養培地の物性値と総流出量とを繰り返し測定処理する分析測定部と、
    前記インキュベーション処理、前記培地交換処理および前記測定処理が2回以上繰り返し行われるように、前記インキュベーション部、前記培地交換部および前記分析測定部の動作を制御する動作制御部と、
    前記分析処理により得られた前記所定流出量毎の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の前記細胞培養容器の流路上の位置を判定する判定部
    と、
    を備える、細胞培養装置。
  21. 前記判定部で得られた判定結果に基づいて、分化を開始した細胞を除去するための細胞除去処理を行う細胞除去部をさらに備える、請求項20に記載の細胞培養装置。
  22. 多能性幹細胞を未分化状態で培養するための細胞培養方法であって、
    (a)多能性幹細胞が培養されかつ培養培地が充填される一本の流路と、該流路の両端に配置された流入口および流出口とを備えた細胞培養容器に対してインキュベーションを行う工程と、
    (b)工程(a)の終了後に、前記培養容器に対して培地交換処理を行うことにより、前記細胞培養容器の流出口からインキュベーション処理済み培養培地を流出させる工程と、
    (c)工程(b)で流出したインキュベーション処理済み培養培地の、所定流出量毎に培養培地の物性値と総流出量とを共に繰り返し測定処理する工程と、
    (d)工程(a)、工程(b)および工程(c)を2回以上繰り返し行う工程と、
    (f)前記分析処理により得られた前記所定流出量毎の物性値に基づき多能性幹細胞の未分化状態を判定し、かつ前記総流出量に基づき前記未分化状態の判定された多能性幹細胞の前記細胞培養容器の流路上の位置を判定する工程と、
    を含んでなる、細胞培養方法。
  23. 工程(f)で得られた判定結果で得られた判定結果に基づいて、分化を開始した細胞を除去する工程(g)をさらに含む、請求項22に記載の細胞培養方法。
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