JP6083113B2 - 偏光板およびこれを用いた表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶表示装置、有機ELディスプレイ等の表示装置に用いられる偏光板に関する。
液晶表示装置等の表示装置に使用される偏光板は、通常、偏光子の両面に高分子フィルムからなる偏光板保護フィルムが貼り合わされてなる構成を有している。この偏光板保護フィルムの構成材料としては、光学的異方性が小さく、透明性に優れ、さらに偏光子との接着性に優れることから、従来、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等のセルロースエステルフィルムが広く使用されている。
近年、表示装置のさらなる高画質化が求められてきており、それに伴い偏光板保護フィルムについても、より透明度の高いものが要求されている。
上述したように、従来はセルロースエステルフィルムを用いた偏光板保護フィルムが一般的に用いられてきたが、高透明性の要求に伴い、偏光板保護フィルムとしてアクリル樹脂フィルムを用いる技術が有望である。
しかしながら、アクリル樹脂フィルムを偏光子と接着させる際には、接着剤として従来用いられているポリビニルアルコール水溶液(水のり)を使用することができない。
ここで、特許文献1には、分子内に水分散性成分を有するイソシアネート化合物を含有する水分散性のイソシアネート系接着剤を用いて偏光子と偏光板保護フィルムとを接着する技術が開示されている。
特開2003−107245号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上述した特許文献1に開示されている接着剤を用いたとしても、偏光板保護フィルムの材質によっては、偏光子と偏光板保護フィルムとの十分な接着性が達成できない場合があることが判明した。具体的には、偏光板保護フィルムが構成材料としてアクリル樹脂を含む場合に、十分な接着性が得られないことが判明したのである。
また、フィルムの耐熱性や靱性などの各種の機能性を改善すべく、種々のアクリル樹脂含有フィルムが偏光板保護フィルムとして従来提案されている。例えば、アクリル樹脂がアミド基を有するモノマー由来の構成単位を含む変性アクリル樹脂や、当該変性アクリル樹脂とセルロースエステルとが相溶した混合樹脂が偏光板保護フィルムの構成材料として提案されている。本発明者らは、これらの樹脂を用いて構成された偏光板保護フィルムを特許文献1に記載の接着剤を用いて偏光子と接着しようと試みたが、まったく接着することができず、偏光板を作製することすら困難であることが判明した。
なお、アクリル樹脂含有フィルムからなる偏光板保護フィルムと偏光子とを接着するには、一般的な水系接着剤であるエーテル系のエポキシ接着剤を用いることも考えられたが、かような接着剤を用いた場合には偏光子の偏光度が低下してしまうことも判明した。これは、接着剤の成分が、偏光子の染色成分である二色性成分(例えば、ヨウ素)との間で化学的に反応し、ヨウ素の有効含有量が低下することによるものと考えられる。
そこで本発明は、偏光子とアクリル樹脂含有フィルムからなる偏光板保護フィルムとが接着剤を介して貼合されてなる偏光板において、偏光子の偏光度の低下を最小限に抑制しつつ、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的に鑑み、鋭意研究を重ねた。その結果、偏光子とアクリル樹脂含有フィルムからなる偏光板保護フィルムとが接着剤を介して貼合されてなる偏光板において、接着剤として、芳香族ポリエステルと分子量が500以上8000未満の多官能グリシジルエーテル系硬化剤とが反応してなる化合物を含むものを用いることで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.偏光子と、
前記偏光子の少なくとも一方の表面に接着された、アクリル樹脂を含む偏光板保護フィルムと、
を有する偏光板であって、
前記偏光子と前記偏光板保護フィルムとが、芳香族ポリエステルと分子量が500以上8000未満の多官能グリシジルエーテル系硬化剤とが反応してなる化合物を含む接着剤を介して接着されていることを特徴とする、偏光板;
2.前記多官能グリシジルエーテル系硬化剤がヒドロキシアルカン構造を有する、上記1に記載の偏光板;
3.前記アクリル樹脂が、下記一般式(1):
式中、MMAはメチルメタクリレートを表し、Xはアミド基を少なくとも一種有するMM
Aと共重合可能なモノマー単位を表し、YはMMAおよびXと共重合可能なモノマー単位
を表し、p、q、およびrは各構成単位のモル百分率であり、55≦p≦99、1≦q≦
50、p+q+r=100である、
で表される、上記1または2に記載の偏光板;
4.前記一般式(1)におけるXが、N−ビニル−2−ピロリドンまたはアクリロイルモルホリンである、上記3に記載の偏光板;
5.前記偏光板保護フィルムが、前記アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを相溶状態で含む、上記1〜4のいずれか1項に記載の偏光板;
6.上記1〜5のいずれか1項に記載の偏光板を含む、表示装置。
本発明によれば、偏光子とアクリル樹脂含有フィルムからなる偏光板保護フィルムとが接着剤を介して貼合されてなる偏光板において、偏光子の偏光度の低下を最小限に抑制しつつ、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性を向上させうる手段が提供される。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の一形態は、偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の表面に接着された、アクリル樹脂を含む偏光板保護フィルムとを有する偏光板に関する。そして、本形態に係る偏光板の特徴は、前記偏光子と前記偏光板保護フィルムとが、芳香族ポリエステルと分子量が500以上8000未満の多官能グリシジルエーテル系硬化剤とが反応してなる化合物を含む接着剤を介して接着されているという点にある。
≪偏光板≫
以下、本形態に係る偏光板について、より詳細に説明する。
[偏光子]
本形態に係る偏光板は、まず主たる構成要素として、偏光子を備える。偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子である。現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、これにはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。なかでも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。また、フィルムのTD方向に5cm離れた二点間の熱水切断温度の差が1℃以下であることが、色斑を低減させるうえでさらに好ましく、さらにフィルムのTD方向に1cm離れた二点間の熱水切断温度の差が0.5℃以下であることが、色斑を低減させるうえでさらに好ましい。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
[偏光板保護フィルム]
本形態に係る偏光板は、他の主たる構成要素として、偏光板保護フィルムを備える。偏光板保護フィルムは、偏光子の少なくとも一方の表面に接着され、偏光子を保護する機能を有するフィルムである。そして、本形態に係る偏光板において、偏光板保護フィルムは、アクリル樹脂を含む点に特徴がある。
本形態に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
共重合可能な他の単量体としては、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して用いることができる。
好ましい実施形態において、アクリル樹脂は、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)において、MMAはメチルメタクリレートを表し、Xはアミド基を少なくとも一種有するMMAと共重合可能なモノマー単位を表し、YはMMAおよびXと共重合可能なモノマー単位を表す。また、p、q、およびrは各構成単位のモル百分率であり、50≦p≦99、1≦q≦50(好ましくは5≦q≦30)、p+q+r=100である。
上述したモノマー単位X(アミド基を少なくとも一種有するMMAと共重合可能なモノマー単位)の具体例としては、N−ビニル−2−ピロリドン(VP)、アクリロイルモルホリン(ACMO)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)などを由来とするモノマー単位が挙げられる。なかでも、セルロースエステルとの相溶性という観点からは、N−ビニル−2−ピロリドンまたはアクリロイルモルホリン由来のモノマー単位が好ましい。アクリル樹脂がこのようなモノマー単位Xを含むと、偏光板保護フィルムの耐熱性が向上しうる。これは、モノマー単位Xの有するアミド基が電子のローンペアを有しておりそれが水分子を配位することにより、経時で発生する樹脂の結晶配向を抑制することによるものと推測される。また、アミド基は非解離性であることから、経時での分解による酸発生もなく、物理的にも安定しているものと考えられる。
上述したモノマー単位Y(MMAおよびXと共重合可能なモノマー単位)の具体例としては、MMA以外の(メタ)アクリルモノマー、オレフィン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられ、これらのモノマー単位Yは1種または2種以上が用いられうる。ただし、モノマー単位Yは必要に応じて用いられうるにすぎず、これを用いないことが最も好ましい。
アクリル樹脂は、特に光学フィルムとしての脆性の改善や、セルロースエステル樹脂と混合される場合にはフィルムの透明性の改善の観点から、重量平均分子量(Mw)が80000以上であることが好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が80000以上であれば、十分な脆性の改善効果が得られる。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、80000〜1000000の範囲内であることがさらに好ましく、100000〜600000の範囲内であることが特に好ましく、150000〜400000の範囲であることが最も好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限値は特に限定されるものではないが、製造上の観点から1000000以下とされることが好ましい形態である。
なお、アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いてもよい。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁重合または乳化重合では30〜100℃、塊状重合または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
アクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
本形態に係る偏光板において、偏光板保護フィルムは、アクリル樹脂以外の樹脂をさらに含んでもよい。偏光板保護フィルムに含まれうるアクリル樹脂以外の樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂などが挙げられる。なかでも、好ましくはセルロース系樹脂がアクリル樹脂と併用される。
セルロース系樹脂の具体的な形態について特に制限はないが、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カチオン化セルロース樹脂、各種ビニル単量体などの存在下で重合したセルロース系樹脂、各種ビニル単量体などとのグラフト重合体などが用いられる。セルロース系樹脂としては、セルロースエステル樹脂が好ましく用いられる。
セルロースエステル樹脂の具体的な形態についても特に制限はないが、特に脆性の改善や透明性の観点から、下記数式(1)〜(3):
式中、Aはアセチル基の置換度を表し、Bは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す、
の関係を満たすアシル基置換度を有するものであることが好ましい。
セルロースエステル樹脂の炭素数2〜7のアシル基の総置換度(A+B)が2.0以上であれば(すなわち、セルロースエステル分子の2,3,6位の水酸基の残度が1.0以下であれば)、偏光板保護フィルムのヘイズの上昇が防止される。また、アシル基総置換度(A+B)が2.0以上で、かつ、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.0以上であれば、偏光板保護フィルムの脆性の低下が防止される。
セルロースエステル樹脂のアシル基置換度は、総置換度(A)が2.0〜3.0であり、アセチル基の置換度(A)が0.15〜2.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度(B)が1.2〜3.0であれば問題ないが、炭素数が3〜7以外のアシル基、すなわち、アセチル基や炭素数が8以上のアシル基の置換度の総計が1.3以下とされることが好ましい。また、セルロースエステル樹脂の炭素数2〜7のアシル基の総置換度(A+B)は、2.5〜3.0の範囲であることがさらに好ましい。
なお、前記アシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよい。脂肪族アシル基の場合は、直鎖であっても分岐していてもよく、さらに置換基を有してもよい。本発明におけるアシル基の炭素数は、アシル基の置換基を包含するものである。
セルロースエステル樹脂が、芳香族アシル基を置換基として有する場合、芳香族環に置換する置換基Xの数は0〜5個であることが好ましい。この場合も、上述した好ましい実施形態では、置換基を含めた炭素数が3〜7であるアシル基の置換度が1.0〜2.75となるように留意が必要である。例えば、ベンゾイル基は炭素数が7になるため、炭素を含む置換基を有する場合は、ベンゾイル基としての炭素数は8以上となり、炭素数が3〜7のアシル基には含まれないこととなる。
さらに、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上のとき、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
セルロースエステル樹脂としては、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートである。本発明では2種以上のセルロースエステル樹脂を混合して用いることもできる。
なお、アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。また、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に脆性の改善の観点から好ましくは75000以上であり、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることがさらに好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が75000以上であれば、耐熱性や脆性の改善効果が十分に得られる。
本形態に係る偏光板の一実施形態として、偏光板保護フィルムが上述したアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを相溶状態で含むことも好ましい形態である。
この際、偏光板保護フィルムは、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを、95:5〜30:70(アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂)の質量比で、かつ相溶状態で含有することが好ましい。アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂の質量比として、より好ましくは95:5〜50:50であり、さらに好ましくは90:10〜60:40である。アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の質量比が、95:5よりもアクリル樹脂が多くなると、セルロースエステル樹脂による効果が十分に得られない虞があり、同質量比が30:70よりもアクリル樹脂が少なくなると、耐湿性が不十分となる虞がある。
本実施形態において、偏光板保護フィルムは、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを相溶状態で含有する必要がある。偏光板保護フィルムとして必要とされる物性や品質を、異なる樹脂を相溶させることで相互に補うことにより達成するためである。なお、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とが相溶状態となっているかどうかは、例えばガラス転移温度Tgにより判断することが可能である。例えば、両者の樹脂のガラス転移温度が異なる場合、両者の樹脂を混合したときは、各々の樹脂のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は2つ以上存在するが、両者の樹脂が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、1つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)とする。
また、「アクリル樹脂やセルロースエステル樹脂を相溶状態で含有する」とは、上述したように各々の樹脂(ポリマー)を混合することで、結果として相溶された状態となることを意味しており、モノマー、ダイマー、あるいはオリゴマー等のアクリル樹脂の前駆体をセルロースエステル樹脂に混合させた後に重合させることにより混合樹脂とされた状態は含まれないものとする。
例えば、モノマー、ダイマー、あるいはオリゴマー等のアクリル樹脂の前駆体をセルロースエステル樹脂に混合させた後に重合されることにより混合樹脂を得る工程は、重合反応が複雑であり、この方法で作成した樹脂は、反応の制御が困難であり、分子量の調整も困難となる。また、このような方法で樹脂を合成した場合は、グラフト重合、架橋反応や環化反応が生じることが多く、溶媒に溶解しいケースや、加熱により溶融できなくなることが多く、混合樹脂中におけるアクリル樹脂を溶離して重量平均分子量(Mw)を測定することも困難であるため、物性をコントロールすることが難しく光学フィルムを安定に製造する樹脂として用いることはできない。
アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とは、それぞれ非結晶性樹脂であることが好ましく、いずれか一方が結晶性高分子、あるいは部分的に結晶性を有する高分子であってもよいが、本発明においてアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とが相溶することで、非結晶性樹脂となることが好ましい。
偏光板保護フィルムにおけるアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)やセルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)や置換度は、両者の樹脂の溶媒に対して溶解性の差を用いて分別した後に、それぞれ測定することにより得られる。樹脂を分別する際には、いずれか一方にのみ溶解する溶媒中に相溶された樹脂を添加することで、溶解する樹脂を抽出して分別することができ、このとき加熱操作や環流を行ってもよい。これらの溶媒の組み合わせを2工程以上組み合わせて、樹脂を分別してもよい。溶解した樹脂と、不溶物として残った樹脂を濾別し、抽出物を含む溶液については、溶媒を蒸発させて乾燥させる操作によって樹脂を分別することができる。これらの分別した樹脂は、高分子の一般の構造解析によって特定することができる。偏光板保護フィルムが、アクリル樹脂やセルロースエステル樹脂以外の樹脂を含有する場合も同様の方法で分別することができる。
また、相溶された樹脂の重量平均分子量(Mw)がそれぞれ異なる場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、高分子量物は早期に溶離され、低分子量物であるほど長い時間を経て溶離されるために、容易に分別可能であるとともに分子量を測定することも可能である。
また、相溶した樹脂をGPCによって分子量測定を行うと同時に、時間毎に溶離された樹脂溶液を分取して溶媒を留去し乾燥した樹脂を、構造解析を定量的に行うことで、異なる分子量の分画毎の樹脂組成を検出することで、相溶されている樹脂をそれぞれ特定することができる。事前に溶媒への溶解性の差で分取した樹脂を、各々GPCによって分子量分布を測定することで、相溶されていた樹脂をそれぞれ検出することもできる。
なお、偏光板保護フィルムは、その機能を損なわない限り、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂等の樹脂以外にも、添加剤を含有して構成されていてもよい。また、偏光板保護フィルムにおける樹脂成分の総質量は、フィルムの55質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。
偏光板保護フィルムは、各種の添加剤を含みうる。このような添加剤としては、例えば、可塑剤や紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、マット剤、着色剤などが挙げられる。
<可塑剤>
偏光板保護フィルムは、可塑剤を含んでもよい。可塑剤の具体的な形態について特に制限はないが、例えば、ポリエステル系可塑剤や糖エステル系化合物などが挙げられる。
〈ポリエステル系可塑剤〉
ポリエステル系可塑剤の具体的な構造について特に制限はなく、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤が用いることができる。ポリエステル系可塑剤としては、例えば、下記一般式(4)で表されるポリエステル化合物が挙げられる。
一般式(4)において、Bは、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基を表し、Aは、炭素数6〜14の芳香環、または、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基を表し、Xは、水素原子または炭素数6〜14の芳香環を含むモノカルボン酸残基を表し、nは、1以上の自然数を表す。
一般式(4)で表されるポリエステル化合物は、芳香環(炭素数6〜14)または直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基(ともに炭素数2〜6)を有するジカルボン酸と、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとの交互共重合により得られる交互共重合体である。芳香族ジカルボン酸と、直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基を有するジカルボン酸とは、それぞれ単独で用いても、混合物として用いても構わないが、偏光板保護フィルムを構成する主成分の樹脂(例えば、セルロースエステル樹脂)との相溶性の点から、少なくとも芳香族ジカルボン酸が10%以上含まれることが好ましい。また、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸で両末端を封止してもよい。
芳香環(炭素数6〜14)を有するジカルボン酸、つまり、炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、等が挙げられる。そのなかでも好ましくは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸である。
直鎖または分岐のアルキレン基またはシクロアルキレン基(炭素数2〜6)を有するジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、等が挙げられる。そのなかでも好ましくは、コハク酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
また、炭素数が2〜6の直鎖または分岐のアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとしては、例えば、エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。そのなかでも、好ましくはエタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。
なかでも、Aが置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環であることが、可塑性付与性能に優れるという観点から好ましい。ここで、ベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環が有しうる「置換基」とは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基である。
ポリエステル化合物の両末端を封止する、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、オルトトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸、ジメチル安息香酸、パラメトキシ安息香酸が挙げられる。そのなかでも好ましくは安息香酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸である。
芳香族ポリエステル化合物は、常法により上述したジカルボン酸とアルキレンジオールまたはシクロアルキレンジオールとのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によって容易に合成することができる。さらに、上述した芳香族モノカルボン酸を加えることで、両末端が封止されたポリエステル化合物を合成することができる。
以下に、本発明において用いられうる芳香族ポリエステル化合物を例示する。
〈糖エステル化合物〉
偏光板保護フィルムが糖エステル化合物を含むことで、フィルムの耐水性が向上しうる。この効果は、偏光板保護フィルムがセルロースエステル樹脂を含む場合に特に顕著である。
糖エステル化合物の一例としては、下記一般式(5):
で表される化合物が挙げられる。
一般式(5)において、Qは、単糖類または二糖類の残基を表し、Rは、脂肪族基または芳香族基を表し、mは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している水酸基の数の合計であり、lは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計であり、3≦m+l≦8であり、l≠0である。
一般式(5)で表される構造を有する化合物は、水酸基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(l)が固定された単一種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、lの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。したがって、水酸基の数(m)、−(O−C(=O)−R)基の数(l)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本形態のようなセルロースアシレートフィルムの場合、ヘイズ特性に対し一般式(5)で表される構造を有し、かつm=0の成分とm>0の成分との混合比率が45:55〜0:100である化合物が好ましい。さらに性能的、コスト的により好ましくはm=0の成分とm>0の成分との混合比率が10:90〜0.1:99.9の範囲である。なお、上記のm=0の成分とm>0の成分は、常法により高速液体クロマトグラフィによって測定することが可能である。
上記一般式(5)において、Qは単糖類または二糖類の残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(5)で表される、単糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
二糖類の具体例としては、例えば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロースなどが挙げられる。
以下に、一般式(5)で表される、二糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
一般式(5)において、Rは、脂肪族基または芳香族基を表す。ここで、脂肪族基および芳香族基はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい。
また、一般式(5)において、mは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している水酸基の数の合計であり、lは、単糖類または二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R)基の数の合計である。そして、3≦m+l≦8であることが必要であり、4≦m+l≦8であることが好ましい。また、l≠0である。なお、lが2以上である場合、−(O−C(=O)−R)基は互いに同じでもよいし異なっていてもよい。
Rの定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシルなどが挙げられる。
また、Rの定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子または硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
次に、一般式(5)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
(合成例:一般式(5)で表される化合物の合成例)
撹拌装置、還流冷却器、温度計および窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×10Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×10Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、例示化合物1、例示化合物2、例示化合物3、例示化合物4、および例示化合物5の混合物を得た。得られた混合物をHPLCおよびLC−MASSで解析したところ、例示化合物1が7質量%、例示化合物2が58質量%、例示化合物3が23質量%、例示化合物4が9質量%、例示化合物5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%の例示化合物1、例示化合物2、例示化合物3、例示化合物4、および例示化合物5を得た。
〈その他の可塑剤〉
偏光板保護フィルムは、上述した可塑剤以外の可塑剤をさらに含有することができる。
かような可塑剤としては特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤および多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
(式中、R11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、および/またはフェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアセテートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でもよいし、二種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は次の一般式(b)で表される。
式中、R12は(m1+n1)価の有機基、m1は2以上の正の整数、n1は0以上の整数、COOH基はカルボキシ基、OH基はアルコール性またはフェノール性ヒドロキシ基を表す。
好ましい多価カルボン酸の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては特に制限はなく公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性またはフェノール性のヒドロキシ基(水酸基)を、モノカルボン酸を用いてエステル化してもよい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、リターデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
可塑剤は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、5〜20質量%の量で含まれることが好ましく、より好ましくは5〜10質量%である。
<ポリエステル>
偏光板保護フィルムは、下記のポリエステルを含有することも好ましい。
(一般式(d)または(e)で表されるポリエステル)
本形態に係るセルロースアシレートフィルムは、下記一般式(d)または(e)で表されるポリエステルを含有することが好ましい。
(式中、B1はモノカルボン酸を表し、Gは2価のアルコールを表し、Aは2塩基酸を表す。B1、G、Aはいずれも芳香環を含まない。mは繰り返し数を表す。)
(式中、B2はモノアルコールを表し、Gは2価のアルコールを表し、Aは2塩基酸を表す。B2、G、Aはいずれも芳香環を含まない。nは繰り返し数を表す。)
一般式(d)、(e)において、B1はモノカルボン酸成分を表し、B2はモノアルコール成分を表し、Gは2価のアルコール成分を表し、Aは2塩基酸成分を表し、これらによって合成されたことを表す。B1、B2、G、Aはいずれも芳香環を含まないことが特徴である。m、nは繰り返し数を表す。
B1で表されるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸等を用いることができる。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のものが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖のまたは側鎖を有する脂肪酸が好ましく用いられうる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアシレートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸とを混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸;ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
B2で表されるモノアルコール成分としては、特に制限はなく公知のアルコール類が用いられうる。例えば、炭素数1〜32の直鎖のまたは側鎖を有する脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールが好ましく用いられうる。炭素数1〜20であることがさらに好ましく、炭素数1〜12であることが特に好ましい。
Gで表される2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられるが、これらのうちエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、さらに、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールが好ましく用いられる。
Aで表される2塩基酸(ジカルボン酸)成分としては、脂肪族2塩基酸、脂環式2塩基酸が好ましく、脂肪族2塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等、特に、脂肪族ジカルボン酸としては炭素数4〜12のもの、これらから選ばれる少なくとも1つのものが使用されうる。つまり、2種以上の2塩基酸を組み合わせて使用してもよい。
m、nは繰り返し数を表し、1以上で170以下が好ましい。
(一般式(f)または(g)で表されるポリエステル)
偏光板保護フィルムは、下記一般式(f)または(g)で表されるポリエステルを含有することも好ましい。
(式中、B1は炭素数1〜12のモノカルボン酸を表し、Gは炭素数2〜12の2価のアルコールを表し、Aは炭素数2〜12の2塩基酸を表す。B1、G、Aはいずれも芳香環を含まない。mは繰り返し数を表す。)
(式中、B2は炭素数1〜12のモノアルコールを表し、Gは炭素数2〜12の2価のアルコールを表し、Aは炭素数2〜12の2塩基酸を表す。B2、G、Aはいずれも芳香環を含まない。nは繰り返し数を表す。)
一般式(f)、(g)において、B1はモノカルボン酸成分を表し、B2はモノアルコール成分を表し、Gは炭素数2〜12の2価のアルコール成分を表し、Aは炭素数2〜12の2塩基酸成分を表し、これらによって合成されたことを表す。B1、G、Aはいずれも芳香環を含まない。m、nは繰り返し数を表す。なお、B1、B2は、前述の一般式(d)または(e)におけるB1、B2と同義である。また、G、Aは、前述の一般式(d)または(e)におけるG、Aの中で炭素数2〜12のアルコール成分または2塩基酸成分に相当する。
ポリエステルの数平均分子量は1000以上10000以下である。数平均分子量が1000未満では、高温高倍率延伸で破断が生じやすく、10000より大きいと相分離起因の白化が増加しやすい。
ポリエステルの重縮合は常法によって行われる。例えば、上記2塩基酸とグリコールとの直接反応、上記の2塩基酸またはこれらのアルキルエステル類、例えば2塩基酸のメチルエステルとグリコール類とのポリエステル化反応またはエステル交換反応により熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコールとの脱ハロゲン化水素反応のいずれかの方法により容易に合成することができるが、重量平均分子量がさほど大きくないポリエステルは直接反応により合成することが好ましい。
低分子量側に分布が高くあるポリエステルはセルロースアシレートとの相溶性が非常によく、フィルム形成後、透湿度も小さく、しかも透明性に富んだセルロースアシレートフィルムを得ることができる。分子量の調節方法は、特に制限なく従来の方法を使用できる。例えば、重合条件にもよるが、1価の酸または1価のアルコールで分子末端を封鎖する方法を用いる場合には、これらの1価の原料化合物の添加量を調整することで分子量を調節することができる。この場合、1価の酸の添加量を調整することが、ポリマーの安定性の観点から好ましい。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられるが、重縮合反応中には系外に留去されず、停止して反応系外に除去するときには留去し易いものを選ぶことが好ましい。なお、この目的で複数の化合物を混合使用してもよい。また、直接反応の場合には、反応中に生成する水の量により反応を停止するタイミングを計ることによっても重量平均分子量を調節できる。その他、仕込むグリコールまたは2塩基酸のモル数を偏らせることによっても分子量の調節が可能であるし、反応温度をコントロールして分子量を調節することもできる。
ポリエステルは、偏光板保護フィルム100質量%に対して、5〜20質量%の量で含まれることが好ましく、5〜15質量%の量で含まれることがより好ましい。
<紫外線吸収剤>
偏光板保護フィルムは、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。なお、本発明に係る位相差フィルムが紫外線吸収剤を含む場合、当該紫外線吸収剤は2種以上含まれることが好ましい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン株式会社製の市販品であり好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。このほか、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、0.5〜5質量%の量で含まれることが好ましく、0.5〜3質量%の量で含まれることがより好ましい。
<赤外線吸収剤>
偏光板保護フィルムは、赤外線吸収剤を含んでもよい。かような構成とすることにより、フィルムの逆波長分散性が調整されうる。
赤外線吸収剤は、750〜1100nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、800〜1000nmの波長領域に最大吸収を有することがさらに好ましい。また、赤外線吸収剤は、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
赤外線吸収剤としては、赤外線吸収染料または赤外線吸収顔料を用いることが好ましく、赤外線吸収染料を用いることが特に好ましい。
赤外線吸収染料には、有機化合物と無機化合物が含まれる。有機化合物である赤外線吸収染料を用いることが好ましい。有機赤外線吸収染料には、シアニン化合物、金属キレート化合物、アミニウム化合物、ジイモニウム化合物、キノン化合物、スクアリリウム化合物およびメチン化合物が含まれる。赤外線吸収染料については、色材、61〔4〕215−226(1988)、および化学工業、43−53(1986、5月)に記載がある。
赤外線吸収機能あるいは吸収スペクトルの観点で染料の種類を検討すると、ハロゲン化銀写真感光材料の技術分野で開発された赤外線吸収染料が優れている。ハロゲン化銀写真感光材料の技術分野で開発された赤外線吸収染料には、ジヒドロペリミジンスクアリリウム染料(米国特許5380635号明細書および特願平8−189817号明細書記載)、シアニン染料(特開昭62−123454号、同3−138640号、同3−211542号、同3−226736号、同5−313305号、同6−43583号の各公報、特願平7−269097号明細書および欧州特許0430244号明細書記載)、ピリリウム染料(特開平3−138640号、同3−211542号の各公報記載)、ジイモニウム染料(特開平3−138640号、同3−211542号の各公報記載)、ピラゾロピリドン染料(特開平2−282244号記載)、インドアニリン染料(特開平5−323500号、同5−323501号の各公報記載)、ポリメチン染料(特開平3−26765号、同4−190343号の各公報および欧州特許377961号明細書記載)、オキソノール染料(特開平3−9346号明細書記載)、アントラキノン染料(特開平4−13654号明細書記載)、ナフタロシアニン色素(米国特許5009989号明細書記載)およびナフトラクタム染料(欧州特許568267号明細書記載)が含まれる。これらの赤外線吸収剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
赤外線吸収剤は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、0.5〜5質量%の量で含まれることが好ましく、0.5〜3質量%の量で含まれることがより好ましい。
<マット剤(微粒子)>
偏光板保護フィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などの微粒子をマット剤として含有させることが好ましい。なかでも二酸化珪素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。
微粒子の平均一次粒子径としては、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは5〜16nmであり、特に好ましくは5〜12nmである。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成してフィルム中に含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、さらに好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の平均一次粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、平均一次粒子径とする。
微粒子の見かけ比重としては、70g/リットル以上が好ましく、さらに好ましくは90〜200g/リットルであり、特に好ましくは100〜200g/リットルである。見かけ比重が大きいほど、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
1次粒子の平均径が20nm以下、見かけ比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また例えばアエロジルR812、アエロジル200V、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
上記記載の見かけ比重は、二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、このときの重さを測定し、下記式で算出したものである。
マット剤(微粒子)は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、0.1〜2質量%の量で含まれることが好ましく、0.1〜1質量%の量で含まれることがより好ましい。
<着色剤>
偏光板保護フィルムは、着色剤を含んでもよい。「着色剤」とは、染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものが特に好ましい。着色剤としては各種の染料や顔料が使用可能であるが、特に、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
着色剤は、偏光板保護フィルム100質量%に対して、1〜15質量ppmの量で含まれることが好ましく、1〜10質量ppmの量で含まれることがより好ましい。
<偏光板保護フィルムの物性・光学特性>
偏光板保護フィルムの厚さは、好ましくは15〜65μmであり、特に好ましくは25〜50μmである。
偏光板保護フィルムの透湿度は、40℃、90%RHで10〜1200g/m・24hが好ましく、さらに20〜1000g/m・24hが好ましく、20〜850g/m・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
偏光板保護フィルムの破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることがさらに好ましい。
偏光板保護フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。
偏光板保護フィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
<偏光板保護フィルムの製造方法>
偏光板保護フィルムの製造方法について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。フィルムの製造方法としては、例えば、フィルムを構成する樹脂成分および必要に応じて添加される添加剤成分を適当な溶剤に溶解させてドープを調製し、このドープ液を無限に移行する無端の金属支持体上に流延し、流延したドープをウェブとして乾燥し、金属支持体から剥離させ、必要に応じて延伸し、さらに乾燥し、仕上がったフィルムを巻取るという工程を含む溶液流延法が挙げられる。また、溶剤を用いてドープを調製せずにフィルムを構成する樹脂成分および必要に応じて添加される添加剤成分を溶融させた状態で金属支持体上に流延して同様にフィルムを作製する溶融流延法についても、従来公知の知見を適宜参照することにより実施されうる。
[接着剤]
本形態に係る偏光板の特徴は、上述した構成要素である偏光子と偏光板保護フィルムとが、芳香族ポリエステルと分子量が500以上8000未満の多官能グリシジルエーテル系硬化剤とが反応してなる化合物を含む接着剤を介して接着されているという点にある。以下、偏光子と偏光板保護フィルムとの貼合に用いられる接着剤の構成について、説明する。
<芳香族ポリエステル>
本発明に係る偏光板に用いられる接着剤は、主剤として芳香族ポリエステルを用いている。「芳香族ポリエステル」とは、分子鎖中に芳香族環を有するポリエステルである。芳香族ポリエステルの具体的な形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうるが、芳香族ポリエステルポリウレタンが好ましく用いられる。以下、芳香族ポリエステルポリウレタンについて、より詳細に説明する。
芳香族ポリエステルポリウレタンの原料として用いられるポリオール成分は、ポリエステルポリオールであり、当該ポリエステルポリオールを構成する多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スペリン酸などの脂肪族酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸などの芳香族酸、トリメリット酸、無水テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などの多塩基酸化合物が挙げられる。
また、ポリエステルポリオールを構成するジオール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチルプロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジオールやグリコール類が挙げられる。
その他のポリエステルポリオールとしては、ラクトンポリエステルポリオールなどがあり、当該ラクトンポリエステルポリオールは、上記グリコール類を開始剤として得られるポリγ−ブチロラクトンやポリε−カプロラクトンなどの開環重合ポリエステルポリオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールなどのポリ炭酸エステルジオールが挙げられる。
芳香族ポリエステルポリウレタンの製造に用いられるジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。
芳香族ポリエステルポリウレタンの製造に用いられる鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジメチルプロパンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジンおよびヒドラジン誘導体化合物、ピペラジンおよびピペラジン化合物、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジフェニルメタンジアミン、キシレンジアミン、イソフォロンジアミンなどのアミン化合物が挙げられる。
本発明で用いられる芳香族ポリエステルポリウレタンは、以上の原料から従来公知の方法によって得られるが、例えば、上述したポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とから、有機溶剤中で末端NCOのプレポリマーを調製し、得られたプレポリマーを鎖伸長剤によってポリマー化することによって得られる。
芳香族ポリエステルポリウレタン以外に本発明で用いられうる芳香族ポリエステルとしては、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリカルボン酸エステルなどが挙げられる。
芳香族ポリエステルとしては市販品が用いられてもよいし、自ら合成したものを用いてもよい。芳香族ポリエステルの市販品としては、芳香族ポリエステルポリウレタンであるHW−375(DIC社製)のほか、テロール(OXID社製)、HS2H−179A(豊国製油社製)、マキシモール(川崎化成工業社製)などが挙げられる。なかでも、ポットライフ(使用可能時間)という観点からは、HW−375(DIC社製)が好ましく用いられる。
なお、本発明で用いられる芳香族ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくは600〜6000であり、より好ましくは650〜4000であり、さらに好ましくは700〜3000である。ここで、芳香族ポリエステルの重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるものとする。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)として東ソー(株)製(HCL−8020、示差屈折率検出器内蔵)、同社製分離カラム(TSKgel−GMHXLを3本使用)を用いて同社製TSK標準ポリスチレンを標準サンプルとして検量線を作成し、温度=38℃、溶媒=テトラフルオロエチレン、サンプル濃度=0.1wt/v%、サンプリングピッチ=1/0.4(回/秒)の条件で測定し、同社製データ処理キットにて計算することにより測定された値を採用するものとする。
<多官能グリシジルエーテル系硬化剤>
本発明に係る偏光板に用いられる接着剤は、硬化剤として多官能(二官能を含む)グリシジルエーテル系硬化剤を用いている。「多官能グリシジルエーテル系硬化剤」とは、上述した芳香族ポリエステルの末端水酸基や末端カルボキシル基に作用して架橋剤としての機能を発揮するものであり、分子内に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル化合物である。多官能グリシジルエーテル系硬化剤の具体的な形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
多官能グリシジルエーテル系硬化剤の分子量は、500以上8000未満であることが必要である。多官能グリシジルエーテル系硬化剤の分子量がこの範囲を外れると、偏光子とアクリル樹脂含有フィルムからなる偏光板保護フィルムとを接着する際の接着力が十分に得られないか、仮にこれらを接着できたとしても偏光子の劣化を引き起こしてしまうため、好ましくない。なお、多官能グリシジルエーテル系硬化剤の分子量は、好ましくは600〜6000であり、より好ましくは650〜4000であり、さらに好ましくは700〜3000である。
多官能グリシジルエーテル系硬化剤の具体的な構成としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤、ポリアルキレンエーテルグリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。なかでも、ポリヒドロキシアルカン構造を有するものが好ましく、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤が特に好ましい。
多官能グリシジルエーテル系硬化剤としては市販品が用いられてもよいし、自ら合成したものを用いてもよい。多官能グリシジルエーテル系硬化剤の市販品としては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤であるエピクロンEXA−4850−150、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤であるCR−5L(いずれもDIC社製)、デナコール(長瀬産業株式会社製)などが挙げられる。
多官能グリシジルエーテル系硬化剤のエポキシ当量について特に制限はないが、好ましくは100〜5000であり、より好ましくは200〜3000であり、さらに好ましくは300〜2000である。また、多官能グリシジルエーテル系硬化剤の分子量についても特に制限はないが、好ましくは600〜6000であり、より好ましくは650〜4000であり、さらに好ましくは700〜3000である。
本形態に係る偏光板において、上述した構成要素である偏光子と偏光板保護フィルムとの接着に用いられる接着剤は、上述した芳香族ポリエステルと多官能グリシジルエーテル系硬化剤とが反応してなる化合物(硬化物)を含む。この反応してなる化合物(硬化物)は、芳香族ポリエステルの有する末端水酸基または末端カルボキシル基と、多官能グリシジルエーテル系架橋剤との反応により得られるものである。
本形態に係る偏光板において、上述した構成要素である偏光子と偏光板保護フィルムとの接着に用いられる接着剤は、上述した硬化物以外の成分をも含みうる。かような成分として、例えば、ホウ酸塩、金属塩などが挙げられる。
また、接着剤を含む層(接着剤層)の膜厚についても特に制限はないが、一例として、好ましくは0.5〜10μmであり、より好ましくは1〜5μmである。
≪偏光板の構成≫
本形態に係る偏光板において、上述したような、アクリル樹脂を含む偏光板保護フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に後述する接着剤を介して接着されていればよい。本形態に係る偏光板において、偏光子の一方の面には、アクリル樹脂を含まない偏光板保護フィルムが接着されていてもよいし、アクリル樹脂を含む偏光板保護フィルムが接着される場合であっても、上述した所定の接着剤以外の接着剤(例えば、いわゆる水のり(ポリビニルアルコール水溶液))を介して接着されていてもよい。ただし、偏光子の両面にアクリル樹脂を含む偏光板保護フィルムが後述する接着剤を介して接着されているのが最も好ましい形態である。
アクリル樹脂を含まない偏光板保護フィルムとして、例えば、市販のセルロースエステル樹脂フィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)が用いられうる。また、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などのシクロオレフィン樹脂フィルムが用いられてもよい。
本形態に係る偏光板において、偏光板保護フィルムの偏光子とは反対側の表面には、各種の機能性層が設けられうる。かような機能性層としては、例えば、クリヤハードコート(CHC;Clear Hard Coat)加工層、低反射(LR;Low Reflection)加工層、防眩性(AG;Anti-Glare)加工層、反射防止(AR;Anti-Reflection)加工層、帯電防止層、バックコート層、易滑性層、接着層、バリアー層、光学補償層などが挙げられる。これらの機能性層は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が用いられてもよい。2種以上が用いられる場合、それぞれの積層順序には特に制限はなく、従来公知の知見を参照しつつ、適宜決定されうる。
≪偏光板の製造方法≫
本形態に係る偏光板を製造するには、上述した偏光子と偏光板保護フィルムとを、所定の接着剤を介して貼合すればよい。具体的には、上述した接着剤の塗布層を、偏光子と偏光板保護フィルムとの貼合面の一方または両方に形成し、その塗布層を介して偏光子と偏光板保護フィルムとを貼合して、偏光板保護フィルムを偏光子の一方または両方の面に固着させる。接着剤の塗布層は、偏光子の貼合面に形成してもよいし、偏光板保護フィルムの貼合面に形成してもよい。塗布層の形成には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子と偏光板保護フィルムとを両者の貼合面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に接着剤を流延させる方式を採用することもできる。各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて接着剤の粘度調整を行うことも有用な技術である。このための溶剤には、偏光子の光学性能を低下させることなく、接着剤の構成成分を良好に溶解するものが用いられるが、その種類に特別な限定はない。例えば、水が好適に用いられる。すなわち、本発明に係る偏光板において、接着剤は水系接着剤であることが好ましい。なお、接着剤(塗布前)における芳香族ポリエステルの濃度は、1〜50質量%程度が好ましい。また、接着剤(塗布前)における多官能グリシジルエーテル硬化剤の濃度は、0.1〜20質量%程度が好ましい。
偏光子と偏光板保護フィルムとを接着するにあたり、両者の貼合面の一方または双方には、接着剤の塗布層を形成する前に、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理などの易接着処理が施されてもよい。
≪表示装置≫
本発明に係る偏光板は、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置などの各種の表示装置に用いられうる。
例えば、本発明に係る偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。本発明の偏光板は、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPSなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。特に好ましくはVA(MVA、PVA)型、およびIPS型液晶表示装置である。
特に本発明の偏光板は、大画面の液晶表示装置に使用した場合であっても色ムラを生じにくく、優れた視認性を付与することができる。
以下、実施例を用いて本発明の実施形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに限定されるわけではない。
≪光学フィルム(偏光板保護フィルム)の作製≫
以下の手法により、5種類の光学フィルム(偏光板保護フィルム)を作製した(下記の表1を参照)。
(光学フィルムF−1の作製)
(ドープ液の調製)
デルペット80N(旭化成ケミカルズ社製、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、Mw=100000) 100質量部
メチレンクロライド 252質量部
エタノール 48質量部
(光学フィルムの製膜)
上記で調製したドープ液を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
剥離したウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。
このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10%であった。テンターで延伸後130℃にて5分間緩和を行った後、120℃、130℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、光学フィルムF−1を得た。
ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。また、光学フィルムF−1の残留溶剤量は0.1%であり、膜厚は40μm、巻数は4000mであった。
(光学フィルムF−2の作製)
デルペット80N 100質量部に代えて、ダイヤナールBR−85(三菱レイヨン社製、アクリル樹脂、Mw=300000)70質量部、およびCAP482−20(イーストマンケミカル社製、セルロースアセテートプロピオネート、アセチル置換度0.18、プロピオニル置換度2.60、Mw=200000)30質量部の混合物を用いたこと以外は、上述した光学フィルムF−1の作製と同様の手法により、光学フィルムF−2を得た。
(光学フィルムF−3の作製)
従来公知の手法により、メチルメタクリレート(MMA)80質量%とアクリロイルモルホリン(ACMO)20質量%とからなるランダム共重合体(共重合体1、Mw=200000)を合成した。そして、デルペット80N 100質量部に代えて、上記で合成した共重合体1 100質量部を用いたこと以外は、上述した光学フィルムF−1の作製と同様の手法により、光学フィルムF−3を得た。
(光学フィルムF−4の作製)
従来公知の手法により、メチルメタクリレート(MMA)80質量%とN−ビニル−2−ピロリドン(VP)20質量%とからなるランダム共重合体(共重合体2、Mw=200000)を合成した。そして、デルペット80N 100質量部に代えて、上記で合成した共重合体2 100質量部を用いたこと以外は、上述した光学フィルムF−1の作製と同様の手法により、光学フィルムF−4を得た。
(光学フィルムF−5の作製)
従来公知の手法により、メチルメタクリレート(MMA)80質量%と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20質量%とからなるランダム共重合体(共重合体3、Mw=200000)を合成した。そして、デルペット80N 100質量部に代えて、上記で合成した共重合体3 100質量部を用いたこと以外は、上述した光学フィルムF−1の作製と同様の手法により、光学フィルムF−5を得た。
≪接着剤の調製≫
以下の手法により、8種類の接着剤を調製した(下記の表2を参照)。
(硬化剤C−1〜C−3の合成)
攪拌機、滴下ロート、温度計およびコンデンサー付き分離機を備えた1Lガラス製フラスコに、平均分子量650のポリテトラメチレンエーテルグリコール292質量部、エピクロルヒドリン1665質量部(ポリテトラメチレンエーテルグリコールの水酸基1当量に対し20モル)、テトラメチルアンモニウムクロライド10質量部を仕込み、攪拌しながら絶対圧20kPaまで減圧にし、100℃のオイルバスで70℃まで加熱した。そこに、48質量%水酸化ナトリウム水溶液150質量部を4時間かけて滴下した。滴下中、水とエピクロルヒドリンは共沸するが、コンデンサーにて蒸気を凝縮し、分離機にてエピクロルヒドリンは系内に循環し、水のみ反応系外へ留去した。滴下終了後、共沸脱水を継続しながら70℃に保ち、1.5時間熟成脱水を行った。その後、系内を常圧に戻し、析出した塩を溶解するために水224質量部を添加した。70℃で5分間攪拌後、30分間静置した。水相を除去し、残った油相を絶対圧4kPa、温度135℃まで加熱して未反応のエピクロルヒドリンを除去し、一旦常圧に戻し、系内に16質量部の水を添加し、再び絶対圧4kPa、温度135℃まで加熱して、エピクロルヒドリンと水を除去した。析出した微量の塩を濾過により除去し、目的化合物として、下記一般式で表されるポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル198質量部を合成し、これを硬化剤C−1とした。
なお、得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル(硬化剤C−1)の重量平均分子量(Mw)は2500であった。
原料の仕込み量を適宜変更したこと以外は、上述した硬化剤C−1の合成と同様の手法により、重量平均分子量(Mw)7500のポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテルを合成し、これを硬化剤C−2とした。同様に、重量平均分子量(Mw)8000のポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテルを合成し、これを硬化剤C−3とした。
(接着剤S−1の調製)
主剤である芳香族ポリエステルポリウレタン HW−375(固形分46質量%、DIC社製)100質量部に、硬化剤であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤 エピクロンEXA4850−150(エポキシ当量410〜470、1分子当たりの官能基数2、分子量820〜940、DIC社製)5質量部を加え、約30分間充分に撹拌して、接着剤S−1を調製した。
(接着剤S−2の調製)
硬化剤として、エピクロンEXA4850−150に代えて、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤 CR−5L(エポキシ当量180、1分子当たりの官能基数4〜5、分子量720〜900、DIC社製)を用いたこと以外は、上述した接着剤S−1の調製と同様の手法により、接着剤S−2を調製した。
(接着剤S−3の調製)
特許第3724792号公報の実施例1(段落0076)に記載の手法により、接着剤S−3を調製した。具体的には、イソシアヌル酸トリス(6−インシアネートヘキシル)18質量部に、片末端がメチルエーテル化されたポリエチレングリコール(重量平均分子量1000)2質量部およびジ−n−ブチルスズラウリレート0.2質量部を混合し、窒素雰囲気下、40℃で反応させ、分子内に水分散性成分を有するイソシアネート化合物を得た。これを80質量部の水に分散させて、接着剤S−3を調製した。
(接着剤S−4の調製)
硬化剤として、エピクロンEXA4850−150に代えて、上記で合成した硬化剤C−1(ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、Mw=2500)を用いたこと以外は、上述した接着剤S−1の調製と同様の手法により、接着剤S−4を調製した。
(接着剤S−5の調製)
硬化剤として、エピクロンEXA4850−150に代えて、上記で合成した硬化剤C−2(ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、Mw=7500)を用いたこと以外は、上述した接着剤S−1の調製と同様の手法により、接着剤S−5を調製した。
(接着剤S−6の調製)
硬化剤として、エピクロンEXA4850−150に代えて、上記で合成した硬化剤C−3(ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、Mw=8000)を用いたこと以外は、上述した接着剤S−1の調製と同様の手法により、接着剤S−6を調製した。
(接着剤S−7の調製)
硬化剤として、ビスフェノールA型エポキシ架橋剤 EP−850(エポキシ当量190、1分子当たりの官能基数2、分子量380、DIC社製)を用いたこと以外は、上述した接着剤S−1の調製と同様の手法により、接着剤S−7を調製した。
(接着剤S−8の調製)
市販のポリビニルアルコール#2000(鹸化度80モル%、関東化学社製)2.5質量部を97.5質量部の水に完全に溶解させて、ポリビニルアルコール水溶液を調製し、これを接着剤S−8とした(いわゆる「水のり」)。
≪偏光板の作製≫
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素1質量部およびホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃にて延伸倍率5倍で搬送方向(MD方向)に延伸して偏光子を作製した。
次いで、上記で作製した偏光子の両面に、上記で調製した接着剤S−1を、乾燥後の厚みが0.1μmとなるようにワイヤーバーで塗布した。一方、上記で作製した光学フィルムF−1の一方の面にコロナ処理を施した後、処理面と接着剤とが接するように偏光子の両面に光学フィルムF−1をそれぞれ貼合した。その後、60℃にて5分間乾燥し、35℃にて24時間エージングを行い、偏光板を作製した。
このようにして、上記で作製した光学フィルムF−1〜F−5のそれぞれと、上記で作製した接着剤S−1〜S−8のそれぞれとを組み合わせて、40種類の偏光板サンプルを10枚ずつ(計400枚)作製した。
≪接着性の評価≫
上記で作製した偏光板のそれぞれを、5cm×5cmの大きさの正方形に断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下に24時間放置した。その後、角の部分から偏光子と光学フィルムとの界面で剥がしてその様子を観察した。この作業を1種類のサンプルについて10枚すべての偏光板で行い、偏光子とフィルムの間で剥がれが見られた偏光板の枚数を数え、以下のように評価を行った。結果を下記の表3に示す。
◎:剥がれが見られない
○:1〜3枚剥がれた
△:4〜6枚剥がれた
×:7枚以上剥がれた
なお、この接着性の評価結果は、実用上◎〜○レベルであることが好ましい。
≪偏光子劣化の評価≫
上記で作製した偏光板のそれぞれを、5cm×5cmの大きさの正方形に断裁した。次いで、得られた切断片を6cm×6cmのガラス板の中央部に粘着剤を介して貼り付け、押圧して切断片とガラス板との間の気泡を完全に除去するようにして切断片をガラス板に密着させた。
次に、この偏光板付きガラスの透過率をJIS K−7136に従って、ヘーズメータ(NDH2000型、日本電色工業(株)製)を使用して測定した。
その後、この試験片を60℃、95%RHにセットした恒温恒湿オーブン内に互いに重ならないようにして500時間載置し、23℃、55%RHの雰囲気下に24時間調湿後、各切断片について再び上記方法にて透過率を測定した。
処理前後の透過率変化(ΔT%=処理後の透過率−処理前の透過率)を算出し、以下のように評価を行った。結果を下記の表3に示す。
◎:ΔT%が1%未満
○:ΔT%が1%以上3%未満
△:ΔT%が3%以上5%未満
×:ΔT%が5%以上
なお、表3において、光学フィルムと偏光子との接着が弱くて剥がれてしまったものについては、「―」と記載した。
表3に示す結果から、本発明によれば、偏光子とアクリル樹脂含有フィルムからなる偏光板保護フィルムとを接着剤を介して貼合して偏光板を作製した場合であっても、偏光子劣化(偏光子の偏光度の低下)を最小限に抑制しつつ、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着性を向上させうることがわかる。また、本発明によれば、偏光板保護フィルムを構成するアクリル樹脂含有フィルムの組成が異なった場合であっても、いずれに対しても同様に上述した優れた効果を発現させることができる。

Claims (6)

  1. 偏光子と、
    前記偏光子の少なくとも一方の表面に接着された、アクリル樹脂(ただし、側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する樹脂と、側鎖に置換および/または非置換フェニル基ならびにニトリル基を有する樹脂を含有するものを除く)を含む偏光板保護フィルムと、
    を有する偏光板であって、
    前記偏光子と前記偏光板保護フィルムとが、芳香族ポリエステルと分子量が500以上8000未満の、ポリヒドロキシアルカンポリグリシジルエーテル系エポキシ架橋剤およびポリアルキレンエーテルグリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択される多官能グリシジルエーテル系硬化剤とが反応してなる化合物を含む接着剤を介して接着されていることを特徴とする、偏光板。
  2. 前記多官能グリシジルエーテル系硬化剤がポリヒドロキシアルカン構造を有する、請求項1に記載の偏光板。
  3. 前記アクリル樹脂が、下記一般式(1):
    式中、MMAはメチルメタクリレートを表し、Xはアミド基を少なくとも一種有するMMAと共重合可能なモノマー単位を表し、YはMMAおよびXと共重合可能なモノマー単位を表し、p、q、およびrは各構成単位のモル百分率であり、55≦p≦99、1≦q≦50、p+q+r=100である、
    で表される、請求項1または2に記載の偏光板。
  4. 前記一般式(1)におけるXが、N−ビニル−2−ピロリドンまたはアクリロイルモルホリンである、請求項3に記載の偏光板。
  5. 前記偏光板保護フィルムが、前記アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを相溶状態で含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光板を含む、表示装置。
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