JP6080702B2 - プッシュスイッチ - Google Patents

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Description

本発明は、押圧操作すると1段目のスイッチが動作し、さらに押圧操作すると2段目のスイッチが動作する2段のプッシュスイッチに関する。
携帯電話などの移動体通信機器や、携帯型および車載用のオーディオ装置、デジタルカメラVTRなどに使用されるボタンスイッチとして、プッシュスイッチが知られている。
特許文献1には、タクト板を第1、第2タクト板で形成し、キートップの押圧で第1タクト板を2段階に弾性変形させ、第1タクト板の中央部に形成された凸部を1段目の変形で第2タクト板に接触させて第1、第2端子間を接続し、2段目の変形で第2タクト板の中央部を第3端子の接触部に接触させて第1、第2、第3端子間を接続する2段動作プッシュスイッチが記載されている。このプッシュスイッチでは、タクト板を第1、第2タクト板の2つとしてそれぞれに過度のストレスが生じないようにして長寿命化を図るとともに、1段目の荷重特性と2段目の荷重特性の自由度を大きくする。
特許文献2には、ドーム状接点を2枚重ね合わせたプッシュスイッチが記載されている。このプッシュスイッチは、スイッチケースと、スイッチケースの凹部中央の中央固定接点と、この中央固定接点を挟んで点対称位置の二ヶ所に配設された周辺固定接点と、中央孔を有したドーム状の第1可動接点と、第1可動接点に載置されたドーム状の第2可動接点と、可撓性を備えた絶縁樹脂フィルム製の保護シートとから構成される。保護シートを介して第2可動接点のドーム状中央部を押圧すると、第1可動接点のドーム状部分が節度感を生じて弾性反転し、第1可動接点が対向した周辺固定接点に接触し電気的に導通する。さらに第2可動接点のドーム状中央部を押圧していくと、第2可動接点のドーム状部分が節度感を生じて弾性反転し、第2可動接点が中央固定接点に接触し電気的に導通する。
特開2004−031171号公報 特開2008−041603号公報
一般に、プッシュスイッチを押圧操作したときの感触のよさを示す指標として、クリック率が用いられる。クリック率は、プッシュスイッチを構成する凸型の可動部材に対して操作荷重を加える際に可動部材の湾曲が反転し始めるときの操作荷重の極大値と、そこからさらに操作荷重を加えて可動部材の湾曲が完全に反転するまでの操作荷重の減少量との比率である。クリック率が大きいプッシュスイッチほど、操作する人にとっては押圧操作したときに好ましい感触(クリック感)が得られる。
2つの可動部材を重ねて構成される2段のプッシュスイッチでは、一方の可動部材が反転するときの操作荷重の減少量が、他方の可動部材に対する操作荷重の増加により打ち消される。このため、1段目と2段目のクリック率は、一方を大きくすると他方が小さくなるトレードオフの関係にある。したがって、2段のプッシュスイッチでは、単に2つの可動部材を重ねただけでは、1段目と2段目の両方について好ましいクリック感が得られない。
1段目と2段目の両方についてクリック感を向上させるためには、それぞれの可動部材単体について、湾曲を大きくするなどしてクリック率を上げることが考えられる。しかしながら、可動部材単体のクリック率を上げると、可動部材が割れやすくなりプッシュスイッチの寿命が短くなる。そこで、本発明の目的は、可動部材単体のクリック率を上げずに、2段のプッシュスイッチの1段目と2段目の両方についてクリック率を上げることである。
本発明に係るプッシュスイッチは、基板と、基板の表面上に配置された複数の固定接点と、第1の孔部を含む凸型の形状であり、押圧されることにより少なくとも一部の形状が反転して、複数の固定接点間で1段目の導通を生じさせる第1の可動部材と、第2の孔部を含む凹型の形状を有し、第1の可動部材の上に配置された中間部材と、凸型の形状を有し、中間部材の上に配置され、押圧されることにより少なくとも一部の形状が反転し、中央部が第1の孔部および第2の孔部を通り抜けて、複数の固定接点間で2段目の導通を生じさせる第2の可動部材とを有することを特徴とする。
本発明に係るプッシュスイッチでは、第2の可動部材の形状を反転させるための操作荷重は、第1の可動部材の形状を反転させるための操作荷重より大きく設定されていることが好ましい。
本発明に係るプッシュスイッチでは、複数の固定接点は、第1の固定接点、第1の固定接点の周囲に配置された第2の固定接点、ならびに第1の固定接点および第2の固定接点より基板の外周側に配置された第3の固定接点を有し、第1の固定接点は、第2の可動部材の形状が反転したときの中央部の位置に対応して、第2の固定接点および第3の固定接点より基板の表面からの高さが高く形成されることが好ましい。
本発明によれば、可動部材単体のクリック率を上げずに、2段のプッシュスイッチの1段目と2段目の両方についてクリック率を上げることが可能になる。
プッシュスイッチ1の斜視図である。 プッシュスイッチ1の分解斜視図である。 プッシュスイッチ1の上面図である。 プッシュスイッチ1の底面図である。 プッシュスイッチ1のA−A’線断面図である。 プッシュスイッチ1の1段目が導通したときのA−A’線断面図である。 プッシュスイッチ1の2段目が導通したときのA−A’線断面図である。 パターン11〜13と電極14〜16bの接続関係を説明するための図である。 比較例のプッシュスイッチ100についての、図5Aと同様の断面図である。 プッシュスイッチ100にかけられる操作荷重と、上バネ120および下バネ130の変形量(ストローク)との関係(バネ波形)を示したグラフである。 プッシュスイッチ1にかけられる操作荷重と、上バネ20および下バネ30の変形量(ストローク)との関係(バネ波形)を示したグラフである。
以下、添付図面を参照して、本発明に係るプッシュスイッチについて詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図1〜図5Aは、それぞれ、プッシュスイッチ1の斜視図、分解斜視図、上面図、底面図および図1のA−A’線断面図である。
プッシュスイッチ1は、基板10と、接着シート17と、上バネ20と、下バネ30と、中板40と、保護シート50と、アクチュエータ60とを有する。プッシュスイッチ1は、例えば、平面が4mm×3mm、高さが1mmの大きさを有する。
基板10の表面には、パターン11〜13が形成される。パターン11〜13は、それぞれ第1〜第3の固定接点の一例である。パターン11は、円板状の導体であり、基板10の表面中央部に配置される。パターン12は、パターン11を囲む円環状の導体であり、パターン11の周囲に配置される。パターン13は、パターン12を囲む円環状の導体であり、パターン11,12より基板10の外周側に、すなわち接着シート17の内周壁側に配置される。パターン11〜13は、基板10の表面からのパターン11の高さがパターン12,13と比べて例えば数μm高くなるように、エッチングにより形成される。
基板10の裏面には、4つの電極14,15,16a,16bが形成される。また、基板10の裏面には、絶縁性の合成樹脂で形成された絶縁シート18が配置される。電極14〜16bは、図示しない貫通電極および裏面配線を介してパターン11〜13に電気的に接続される。各電極と各パターンの間の接続関係については、図6を用いて後述する。
接着シート17は、矩形の枠状の部材であり、基板10の表面と保護シート50を互いに接着する。基板10と接着シート17により、パターン11〜13、上バネ20、下バネ30および中板40を収納する空間が基板10上に形成される。
上バネ20は、凸型のドーム状であり、かつ凸型の上から見ると例えば小判型の形状を有する導電性の弾性部材である。上バネ20の材質は、例えばステンレス鋼である。上バネ20は、例えば端部22,23が中板40と接するように、中板40上に配置される。上バネ20は、操作荷重がかけられて押圧されることにより、湾曲がつぶれるように変形し、その少なくとも一部の形状が反転する。上バネ20は、中央部だけが凹型に変形するものでもよいし、全体が凹型に変形するものでもよい。以下では、少なくとも一部の形状が反転することを、「湾曲が反転する」と表現する。上バネ20は、第2の可動部材の一例である。
下バネ30は、上バネ20同じ形状かつ同程度の大きさを有する導電性の弾性部材である。ただし、下バネ30は、円形の中央孔31を有する。下バネ30の材質は、例えばステンレス鋼である。下バネ30は、例えば端部32,33がパターン13に接し、中央孔31の縁がパターン12の上に位置するように、基板10上に配置される。下バネ30は、操作荷重がかけられて押圧されることにより、湾曲がつぶれるように変形し、その少なくとも一部の形状が反転する。下バネ30も、上バネ20と同様に、中央孔31の周囲だけが凹型に変形するものでもよいし、全体が凹型に変形するものでもよい。下バネ30についても、少なくとも一部の形状が反転することを、「湾曲が反転する」と表現する。下バネ30は第1の可動部材の一例であり、中央孔31は第1の孔部の一例である。
下バネ30の湾曲を反転させるために必要な操作荷重は、上バネ20の湾曲を反転させるために必要な操作荷重より小さい。このため、操作荷重がかけられたときには、下バネ30の湾曲が、上バネ20より先に反転する。
中板40は、凹型のドーム状であり、上バネ20および下バネ30と同じ形状かつ同程度の大きさを有する導電性の剛性部材である。すなわち、中板40は、上バネ20および下バネ30とは逆に、基板10に向かって凸型になっている。また、中板40は、下バネ30の中央孔31より大きな、円形の中央孔41を有する。中板40は、上バネ20と下バネ30の間に配置される。詳細には、中板40は、中央孔41と中央孔31の位置が合うように、中央孔41の縁が下バネ30の上に載っており、かつ端部42,43で、上バネ20の端部22,23をそれぞれ支持している。中板40は、例えば下バネ30と同じステンレス鋼で、少なくともプッシュスイッチ1の動作に必要な範囲内では操作荷重がかけられても変形しないように、下バネ30より厚く形成される。中板40は中間部材の一例であり、中央孔41は第2の孔部の一例である。
保護シート50は、可とう性の絶縁樹脂シートであり、裏面の端部が接着シート17の上面に接着される。保護シート50は、基板10および接着シート17とともに、上バネ20と下バネ30を収納する空間を密封する。
アクチュエータ60は、円板状の形状を有する樹脂シート材である。アクチュエータ60は、図示しない押し子が押圧されたときに、押圧された力を上バネ20に伝達するように機能する。
図6は、パターン11〜13と電極14〜16bの接続関係を説明するための図である。図6に示すように、電極14はパターン11に、電極15はパターン12に、電極16a,16bはパターン13に、それぞれ接続される。また、図6では、上バネ20、下バネ30および中板40の端部の位置と、中央孔31,41の位置を破線で示している。既に述べたように、下バネ30は、端部32,33がパターン13に接し、中央孔31の縁がパターン12の上に位置するように、基板10上に配置される。上バネ20と中板40は、下バネ30の上に重ねて配置される。
ここで、図5A〜図5Cを参照して、プッシュスイッチ1の動作を説明する。図5Aは、操作荷重がかけられていないときの断面図である。また、図5Bおよび図5Cは、それぞれ、プッシュスイッチ1の1段目および2段目が導通したときの、図1のA−A’線断面図である。
図5Aに示す状態からアクチュエータ60を介して上バネ20が押圧されると、図5Bに示すように、まず下バネ30の湾曲が反転して、下バネ30の中央孔31の縁がパターン12に接触する。これにより、パターン13とパターン12が接続されて、電極16a,16bと電極15の間で1段目の導通が生じ、1段目のスイッチがONになる。その後、下バネ30がパターン12に接触した状態でアクチュエータ60を介して上バネ20と下バネ30がさらに押圧されると、図5Cに示すように、上バネ20の湾曲が反転し、上バネ20の中央部21が、下バネ30の中央孔31および中板40の中央孔41を通り抜けて、パターン11に接触する。これにより、パターン13およびパターン12とパターン11とが接続されて、電極16a,16bおよび電極15と電極14との間で2段目の導通が生じ、2段目のスイッチがONになる。
次に、プッシュスイッチ1とは異なる比較例のプッシュスイッチを用いて、2段のプッシュスイッチの1段目と2段目のクリック率の関係を説明する。
図7は、比較例のプッシュスイッチ100についての、図5Aと同様の断面図である。プッシュスイッチ100は、プッシュスイッチ1と同様に、基板110と、接着シート117と、上バネ120と、下バネ130と、保護シート150と、アクチュエータ160とを有する。ただし、プッシュスイッチ100は、中板を有さず、下バネ130に中央孔が空いていないという点が、プッシュスイッチ1とは異なる。また、基板110の表面には、プッシュスイッチ1と同様に、パターン111〜113が形成される。ただし、プッシュスイッチ100は、パターン111〜113がすべて同じ高さに形成され、下バネ130が1枚の弾性部材により構成される点が、プッシュスイッチ1とは異なる。
図8(A)および図8(B)は、プッシュスイッチ100にかけられる操作荷重と、上バネ120および下バネ130の変形量(ストローク)との関係(バネ波形)を示したグラフである。グラフの縦軸は操作荷重を、横軸はストロークを示す。これは以下のバネ波形のグラフでも同様である。ストロークは、操作荷重がかけられることで上バネ120の中央部が基板110に向けて近付いていく距離に相当する。
図8(A)における実線は、上バネ120の波形を示す。アクチュエータ160が押圧されるとき、最初は、上バネ120のみが変形していき、ストロークとともに操作荷重が増加する。上バネ120については、距離l1だけ変形すると湾曲が反転し始め、変形に必要な操作荷重は極大値aをとる。その後、ストロークとともに操作荷重は減少していき、上バネ120が距離l3まで変形すると、上バネ120の湾曲は完全に反転し、変形に必要な操作荷重は極小値をとる。湾曲が完全に反転した後は、上バネ120をさらに変形させるために必要な操作荷重は、次第に大きくなる。
図8(A)における細い破線は、下バネ130の波形を示す。上バネ120の湾曲が反転し始めた後で、上バネ120が距離l2まで変形したときに、上バネ120の中央部が下バネ130に接触する。そして、上バネ120を介して押圧されることにより、下バネ130は上バネ120とともに変形していき、ストロークとともに操作荷重が増加する。上バネ120が距離l4まで変形すると、下バネ130の湾曲が反転し始め、下バネ130の変形に必要な操作荷重は極大値cをとる。その後、ストロークとともに操作荷重は減少していく。
上バネ120が距離l5まで変形した時点で、下バネ130の中央部がパターン111に接触し、上バネ120と下バネ130はこれ以上変形できなくなるとする。
上バネ120単体のクリック率は、距離l1から距離l3までの操作荷重の減少量をbとすると、(b/a)×100(%)と表される。また、下バネ130単体のクリック率は、距離l4から距離l5までの操作荷重の減少量をdとすると、(d/c)×100(%)と表される。操作荷重の極大値と極小値(極大値からの減少量)の差が大きくなるほど、クリック率は大きくなり、プッシュスイッチ100を操作する人にとってクリック感が向上する。
図8(A)における太い破線は、上バネ120と下バネ130の合成波形を示す。合成波形は、距離l1で最初の極大値aをとった後、下バネ130の波形が立ち上がる距離l2で極小値をとる。したがって、プッシュスイッチ100の1段目のクリック率は、距離l1から距離l2までの操作荷重の減少量をeとすると、(e/a)×100(%)となる。距離l2から下バネ130の波形が立ち上がり、上バネ120の操作荷重の減少が打ち消されるため、プッシュスイッチ100の1段目のクリック率は、上バネ120単体のクリック率よりも小さくなる。
また、合成波形は、距離l4の付近で2回目の極大値fをとり、その後下バネ130の中央部がパターン111に接触する距離l5まで減少していく。したがって、プッシュスイッチ100の2段目のクリック率は、この減少量をgとすると、(g/f)×100(%)となる。距離l3から先で上バネ120の波形が立ち上がり、下バネ130の操作荷重の減少が打ち消されるため、プッシュスイッチ100の2段目のクリック率は、下バネ130単体のクリック率よりも小さくなる。
図8(B)は、上バネ120が下バネ130に接触するまでの距離を長くした場合のバネ波形を示したグラフである。図8(B)に示すように、上バネ120が下バネ130に接触するまでの距離l2’を図8(A)の距離l2より長くすると、下バネ130の波形が図8(A)の波形に対して右側にシフトする。これにより、1段目のクリック率に寄与する操作荷重の減少量e’が図8(A)での減少量eより大きくなる。このため、1段目のクリック率を大きくすることができる。しかしながら、この場合、2段目のクリック率に寄与する操作荷重の減少量g’が図8(A)での減少量gより小さくなるため、2段目のクリック率が小さくなる。
図8(B)に示した場合とは逆に、上バネ120が下バネ130に接触するまでの距離を短くすれば、下バネ130の波形が図8(A)の波形に対して左側にシフトする。この場合、2段目のクリック率を大きくすることはできるが、1段目のクリック率が小さくなる。
このように、1段目と2段目のクリック率は、一方を大きくすると他方が小さくなるトレードオフの関係にある。このため、上バネ120と下バネ130の波形をシフトさせることで、1段目と2段目の両方についてクリック率を大きくし、クリック感を向上させることは困難である。
また、1段目と2段目の両方のクリック率を大きくするためには、例えば、上バネ120を、操作荷重がストロークに対して緩やかに変化するように構成する(すなわち、バネ波形を広げる)とともに、下バネ130を、操作荷重がストロークに対して急激に変化するように構成して(すなわち、バネ波形を縮めて)、上バネ120と下バネ130の操作荷重の極小値の位置を合わせることが考えられる。しかしながら、上バネ120と下バネ130は大きさに制約が課されるため、それぞれのバネ波形を広げるかまたは縮めて極小値の位置を合わせることにより、1段目と2段目のクリック率を大きくすることは困難である。
また、1段目と2段目の両方のクリック率を大きくするためには、上バネ120と下バネ130の単体のクリック率を大きくすることも考えられる。バネ単体のクリック率を大きくするには、各バネの湾曲をより大きくしてバネ波形の極大値と極小値の差を拡大させる必要がある。しかしながら、各バネの湾曲をより大きくすると、バネが割れやすくなるため、プッシュスイッチの寿命が短くなる。
以上のことから、プッシュスイッチ1では、凹型のドーム状であり、円形の中央孔41を有し、弾性はなく剛性を有する中板40を、上バネ20と下バネ30の間に配置する。これにより、1段目と2段目のクリック率に関する上記のトレードオフの関係を解消する。
図9は、プッシュスイッチ1にかけられる操作荷重と、上バネ20および下バネ30の変形量(ストローク)との関係(バネ波形)を示したグラフである。
図9における実線は、上バネ20の波形を示す。上バネ20の波形は、図8(A)に示した上バネ120の波形と同じである。ただし、上バネ20は、距離l3で湾曲が完全に反転した後、距離l5より短い距離L5まで変形した時点で、中央部21がパターン11に接触し、これ以上変形できなくなるとする。
図9における細い破線は、下バネ30の波形を示す。上バネ20より下バネ30の方が湾曲の反転に必要な操作荷重が小さいため、操作荷重がかけられると、下バネ30の湾曲が先に反転する。したがって、上バネ20の反転が始まる距離l1より手前の距離L4で、下バネ30の波形は、上バネ20の波形の極大値Aより小さい極大値Cをとる。下バネ30は、距離L4で湾曲の反転が始まり、距離l1より手前の距離L2で、中央孔31の縁がパターン12に接触する。すなわち、上バネ20より下バネ30の方が、ストロークが短い。下バネ単体30のクリック率は、距離L4から距離L2までの操作荷重の減少量をDとすると、(D/C)×100(%)と表される。
図9における太い破線は、上バネ20と下バネ30の合成波形を示す。操作荷重がかけられると、下バネ30の湾曲が先に反転し、合成波形は、距離L4の付近で1回目の極大値Fをとる。その後、距離L2で中央孔31の縁がパターン12に接触し、1段目の導通が生じる。すると、下バネ30はこれ以上変形しなくなる。このため、距離L2以降では、操作荷重は上バネ20の変形に使われ、下バネ30の波形は現れなくなる。したがって、距離L4から距離L2までに、合成波形の操作荷重は、上バネ20の波形の操作荷重と同じ値まで、減少量Gだけ減少する。したがって、プッシュスイッチ1の1段目のクリック率は、(G/F)×100(%)となる。
プッシュスイッチ100のクリック率は、一方のバネに対する操作荷重の極大値からの減少量と、同じ区間においてそれを打ち消す他方のバネに対する操作荷重の増加量との差に依存する。プッシュスイッチ1でも、1段目に関しては、上バネ20の操作荷重の増加量により下バネ30の操作荷重の減少量が一部打ち消される。しかしながら、プッシュスイッチ1では、距離L2で下バネ30の波形が消えることから、距離L2までの区間において、下バネ30の波形が合成波形にほぼそのまま現れることになる。したがって、プッシュスイッチ1の1段目のクリック率は、プッシュスイッチ100より大きくなる。
また、プッシュスイッチ1の2段目に関しては、距離L2以降の合成波形が上バネ20の波形と同じになるため、クリック率が上バネ20単体のクリック率と同じ値になる。すなわち、プッシュスイッチ1の2段目のクリック率は、下バネ30による打ち消しの寄与がない分、プッシュスイッチ100より大きくなる。
このように、プッシュスイッチ1では、上バネ20と下バネ30の単体のクリック率を上げなくても、プッシュスイッチ100と比べて1段目と2段目のクリック率を大きくすることができる。さらに、上バネ20および下バネ30の単体のクリック率が、上バネ120および下バネ130の単体のクリック率と同程度であるから、上バネ20と下バネ30の割れやすさは、上バネ120および下バネ130と同程度である。このため、プッシュスイッチ1には、寿命がプッシュスイッチ100と比べて悪化しないという利点がある。
なお、プッシュスイッチ1では、プッシュスイッチ100と異なり、上バネ20の中央部21が中央孔31,61を通り抜けてパターン11に接触する。このため、上バネ20とパターン11の間隔が広すぎると、上バネ20が反転した後も上バネ20の中央部21がパターン11に接触せず、上バネ20をさらに押圧しなければ2段目が導通しなくなるおそれがある。
このため、プッシュスイッチ1では、パターン11は、基板10からの高さがパターン12,13より高く形成されている。上バネ20の波形が極小値をとる付近で2段目が導通するように、上バネ20の湾曲が反転したときの中央部21の位置に対応して、基板10からのパターン11の高さを調整することが好ましい。詳細には、上バネ20の波形が極小値をとる点と上バネ20がパターン11に接触する点が一致しなくても、プッシュスイッチ1の2段目のクリック率を確保できる程度の範囲内において、より短い距離(ストローク)で上バネ20がパターン11に接触するように、パターン11の高さを調整することが好ましい。これにより、プッシュスイッチ1では、完全に反転した後まで過度に上バネ20を変形させなくても、2段目の導通が生じるようになる。したがって、上バネ20が割れにくくなり、プッシュスイッチ1の寿命が長くなるという利点がある。
1 プッシュスイッチ
10 基板
11,12,13 パターン
17 接着シート
20 上バネ
30 下バネ
40 中板
50 保護シート
60 アクチュエータ

Claims (3)

  1. 基板と、
    前記基板の表面上に配置された複数の固定接点と、
    第1の孔部を含む凸型の形状を有し、押圧されることにより少なくとも一部の形状が反転して、前記複数の固定接点間で1段目の導通を生じさせる第1の可動部材と、
    第2の孔部を含む凹型の形状を有し、前記第1の可動部材の上に配置された中間部材と、
    凸型の形状を有し、前記中間部材の上に配置され、押圧されることにより少なくとも一部の形状が反転し、中央部が前記第1の孔部および前記第2の孔部を通り抜けて、前記複数の固定接点間で2段目の導通を生じさせる第2の可動部材と、
    を有することを特徴とするプッシュスイッチ。
  2. 前記第2の可動部材の形状を反転させるための操作荷重は、前記第1の可動部材の形状を反転させるための操作荷重より大きく設定されている、請求項1に記載のプッシュスイッチ。
  3. 前記複数の固定接点は、第1の固定接点、前記第1の固定接点の周囲に配置された第2の固定接点、ならびに前記第1の固定接点および前記第2の固定接点より前記基板の外周側に配置された第3の固定接点を有し、
    前記第1の固定接点は、前記第2の可動部材の形状が反転したときの前記中央部の位置に対応して、前記第2の固定接点および前記第3の固定接点より前記基板の表面からの高さが高く形成される、請求項2に記載のプッシュスイッチ。
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