JP6079784B2 - 操舵制御装置 - Google Patents
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Description
本発明の目的は、ドライバに与える違和感を軽減可能な操舵制御装置を提供することにある。
2 転舵部
3 バックアップクラッチ
4 SBWコントローラ
5FL,5FR 左右前輪
6 ステアリングホイール
7 コラムシャフト
8 反力モータ
9 操舵角センサ
11 ピニオンシャフト
12 ステアリングギア
13 転舵モータ
14 転舵角センサ
15 ラックギア
16 ラック
17 カメラ
18 車速センサ
19 転舵制御部
19a 加算器
20 操舵反力制御部
20a 減算器
20b 加算器
20c 加算器
21 映像処理部
22 電流ドライバ
23 電流ドライバ
24 ナビゲーションシステム
31 指令転舵角演算部
32 外乱抑制指令転舵角演算部
32a ヨー角演算部
32b 曲率演算部
32c 横位置演算部
32d 加算器
32e 目標ヨーモーメント演算部
32f 目標ヨー加速度演算部
32g 目標ヨーレイト演算部
32h 指令転舵角演算部
32i リミッタ処理部
33 横力演算部
34 横力オフセット部
34a 曲率演算部
34b 上下限リミッタ
34c SATゲイン演算部
34d 乗算器
34e リミッタ処理部
35 SAT演算部
36 操舵反力トルクオフセット部
36a ヨー角演算部
36b 横位置演算部
36c 反力選択部
36d リミッタ処理部
37 ヨー角に応じた反発力演算部
37a 上下限リミッタ
37b ヨー角F/Bゲイン乗算部
37c 車速補正ゲイン乗算部
37d 曲率補正ゲイン乗算部
37e 乗算器
38 横位置に応じた反発力演算部
38a 減算器
38b 上下限リミッタ
38c 距離補正ゲイン乗算部
38d 横位置F/Bゲイン乗算部
38e 車速補正ゲイン乗算部
38f 曲率補正ゲイン乗算部
38g 乗算器
39 逸脱余裕時間に応じ反力演算部
39a 乗算器
39b 除算器
39c 除算器
39d 逸脱余裕時間選択部
39e 逸脱余裕時間に応じた反力演算部
40 横位置に応じた反力演算部
40a 減算器
40b 減算器
40c 横位置偏差選択部
40d 横位置偏差に応じた反力演算部
341 曲率判定部
344 手放し判定部
345 抑制リミッタ
346 前回値読み込み部
[システム構成]
図1は、実施例1の車両の操舵系を示すシステム図である。
実施例1の操舵装置は、操舵部1、転舵部2、バックアップクラッチ3、SBWコントローラ4を主要な構成とし、ドライバの操舵入力を受ける操舵部1と、左右前輪(転舵輪)5FL,5FRを転舵する転舵部2とが機械的に切り離されたステアバイワイヤ(SBW)システムを採用している。
コラムシャフト7は、ステアリングホイール6と一体に回転する。
反力モータ8は、例えば、ブラシレスモータであり、出力軸がコラムシャフト7と同軸の同軸モータであり、SBWコントローラ4からの指令に応じて、コラムシャフト7に操舵反力トルクを出力する。
操舵角センサ9は、コラムシャフト7の絶対回転角、すなわち、ステアリングホイール6の操舵角を検出する。
ステアリングギア12は、ラック&ピニオン式のステアリングギアであり、ピニオンシャフト11の回転に応じて前輪5L,5Rを転舵する。
転舵モータ13は、例えば、ブラシレスモータであり、出力軸が図外の減速機を介してラックギア15と接続され、SBWコントローラ4からの指令に応じて、ラック16に前輪5を転舵するための転舵トルクを出力する。
転舵角センサ14は、転舵モータ13の絶対回転角を検出する。ここで、転舵モータ13の回転角と前輪5の転舵角とは常に一意に定まる相関関係があるため、転舵モータ13の回転角から前輪5の転舵角を検出できる。以下では特に記載しない限り、前輪5の転舵角は転舵モータ13の回転角から算出されたものとする。
バックアップクラッチ3は、操舵部1のコラムシャフト7と転舵部2のピニオンシャフト11との間に設けられ、解放により操舵部1と転舵部2とを機械的に切り離し、締結により操舵部1と転舵部2とを機械的に接続する。
SBWコントローラ4は、前輪5FL,5FRの転舵角を制御する転舵制御部19と、コラムシャフト7に付与する操舵反力トルクを制御する操舵反力制御部(操舵反力制御手段,コントローラ)20と、映像処理部21とを有する。
転舵制御部19は、各入力情報に基づいて指令転舵角を生成し、生成した指令転舵角を電流ドライバ22へ出力する。
電流ドライバ22は、転舵角センサ14により検出される実転舵角を指令転舵角と一致させる角度フィードバックにより転舵モータ13への指令電流を制御する。
操舵反力制御部20は、各入力情報に基づいて指令操舵反力トルクを生成し、生成した指令操舵反力トルクを電流ドライバ23へ出力する。
電流ドライバ23は、反力モータ8の電流値から推定される実操舵反力トルクを指令操舵反力トルクと一致させるトルクフィードバックにより反力モータ8への指令電流を制御する。
映像処理部21は、カメラ17により撮影された自車前方の走行路の映像からエッジ抽出等の画像処理によって走行車線左右の白線(走行路区分線)を認識する。
加えて、SBWコントローラ4は、SBWシステムのフェール時、バックアップクラッチ3を締結して操舵部1と転舵部2とを機械的に連結し、ステアリングホイール6の操舵によるラック16の軸方向移動を可能とする。このとき、転舵モータ13のアシストトルクによりドライバの操舵力を補助する電動パワーステアリングシステム相当の制御を行ってもよい。
上記SBWシステムにおいて、各センサ、各コントローラ、各モータを複数設けた冗長系としてもよい。また、転舵制御部19と操舵反力制御部20を別体としてもよい。
スタビリティ制御は、外乱(横風、路面凹凸、轍、路面カント等)に対する車両の安定性向上を目的とし、2つのフィードバック(F/B)制御を行う。
1.ヨー角F/B制御
白線と自車進行方向とのなす角度であるヨー角に応じて転舵角を補正し、外乱により発生したヨー角を減少させる。
2.横位置F/B制御
白線までの距離(横位置)に応じて転舵角を補正し、外乱により発生したヨー角の積分値である横位置変化を減少させる。
1.横位置に応じた反力オフセット制御
横位置に応じてセルフアライニングトルクに応じた操舵反力特性を操舵反力の絶対値が大きくなる方向へオフセットし、ドライバが操舵角中立位置をまたぐ修正操舵を行ったときに操舵トルクの符号が反転するのを抑制する。
2.逸脱余裕時間に応じた反力オフセット制御
逸脱余裕時間(白線への到達時間)に応じてセルフアライニングトルクに応じた操舵反力特性を操舵反力の絶対値が大きくなる方向へオフセットし、ドライバが操舵角中立位置をまたぐ修正操舵を行ったときに操舵トルクの符号が反転するのを抑制する。
3.曲率に応じた反力オフセット制御
白線の曲率に応じてセルフアライニングトルクに応じた操舵反力特性をセルフアライニングトルクと同一符号方向へオフセットし、旋回時におけるドライバの保舵力を低減すると共に保舵力変化に対する保舵角変化を抑制する。
図2は、転舵制御部19の制御ブロック図である。
SBW指令転舵角演算部31は、操舵角と車速とに基づいてSBW指令転舵角を演算する。
外乱抑制指令転舵角演算部32は、車速と白線情報とに基づき、スタビリティ制御においてSBW指令転舵角を補正するための外乱抑制指令転舵角を演算する。外乱抑制指令転舵角演算部32の詳細については後述する。
加算器19aは、SBW指令転舵角と外乱抑制指令転舵角とを加算した値を最終的な指令転舵角として電流ドライバ22へ出力する。
図3は、操舵反力制御部20の制御ブロック図である。
横力演算部33は、操舵角と車速とに基づき、あらかじめ実験等により求めたコンベンショナルな操舵装置における車速毎の操舵角とタイヤ横力との関係を表す操舵角−横力変換マップを参照してタイヤ横力を演算する。操舵角−横力変換マップは、操舵角が大きいほどタイヤ横力が大きく、かつ、操舵角が小さいときは大きいときよりも操舵角の変化量に対するタイヤ横力の変化量が大きく、かつ、車速が高いほどタイヤ横力が小さくなる特性を有する。
横力オフセット部(オフセット手段)34は、車速と白線情報とに基づき、曲率に応じた反力オフセット制御において操舵反力特性をオフセットするための横力オフセット量を演算する。横力オフセット部34の詳細については後述する。
減算器20aは、タイヤ横力から横力オフセット量を減算する。
SAT演算部35は、車速と横力オフセット量によるオフセット後のタイヤ横力とに基づき、あらかじめ実験等により求めたコンベンショナルな操舵装置におけるタイヤ横力と操舵反力トルクとの関係を表す横力−操舵反力トルク変換マップを参照してタイヤ横力によって発生する操舵反力トルクを演算する。タイヤ横力−操舵反力トルク変換マップは、タイヤ横力が大きいほど操舵反力トルクが大きく、タイヤ横力が小さいときは大きいときよりもタイヤ横力の変化量に対する操舵反力トルクの変化量が大きく、かつ、車速が高いほど操舵反力トルクが小さくなる特性を有する。この特性は、コンベンショナルな操舵装置において、路面反力によって発生する車輪が直進状態に戻ろうとするセルフアライニングトルクによってステアリングホイールに発生する反力を模擬したものである。
操舵反力トルクオフセット部36は、車速と自車前方の走行路の映像とに基づき、横位置または逸脱余裕時間に応じた反力オフセット制御において操舵反力特性をオフセットするための操舵反力トルクオフセット量を演算する。操舵反力トルクオフセット部36の詳細については後述する。
加算器20cは、ステアリング特性に応じた操舵反力トルク成分を加算した後の操舵反力トルクと操舵トルクオフセット量とを加算した値を最終的な指令操舵反力トルクとして電流ドライバ23へ出力する。
図4は、外乱抑制指令転舵角演算部32の制御ブロック図である。
ヨー角演算部32aは、前方注視点での白線と自車進行方向とのなす角度であるヨー角を演算する。前方注視点でのヨー角は、所定時間(例えば、0.5秒)後の白線と自車進行方向とのなす角度とする。カメラ17により撮影された走行路の映像に基づいてヨー角を演算することで、簡単かつ高精度にヨー角を検出できる。
曲率演算部32bは、前方注視点での白線の曲率を演算する。
横位置演算部32cは、前方注視点先での白線までの距離を演算する。
ヨー角に応じた反発力演算部37は、ヨー角と曲率と車速とに基づき、ヨー角F/B制御において外乱により発生したヨー角を減らすための車両の反発力を演算する。ヨー角に応じた反発力演算部37の詳細については後述する。
加算器32dは、ヨー角に応じた反発力と横位置に応じた反発力とを加算し、横方向反発力を演算する。
目標ヨーモーメント演算部32eは、横方向反発力、ホイールベース(車軸間距離)、後輪軸重および前輪軸重に基づいて目標ヨーモーメントを演算する。具体的には、横方向反発力に対し、車両重量(前輪軸重+後輪軸重)に対する後輪軸重の割合と、ホイールベースとを乗じた値を目標ヨーモーメントとする。
目標ヨー加速度演算部32fは、目標ヨーモーメントにヨー慣性モーメント係数を乗じて目標ヨー加速度を演算する。
目標ヨーレイト演算部32gは、目標ヨー加速度に車頭時間を乗じて目標ヨーレイトを演算する。
δst * = (φ*×WHEEL_BASE×(1+(V/vCh)2)×180)/(V×M_PI)
なお、M_PIは所定の係数である。
リミッタ処理部32iは、外乱抑制指令転舵角δst *の最大値および変化率の上限を制限する。最大値は、コンベンショナルな操舵装置(操舵部と転舵部とが機械的に接続された)において、ステアリングホイール6の操舵角が中立位置付近の遊びの角度範囲(例えば、左右3°)にあるときの当該遊びの範囲に対応する前輪5FL,5FRの転舵角範囲(例えば、左右0.2°)とする。
上下限リミッタ37aは、ヨー角に上下限リミッタ処理を施す。上下限リミッタは、ヨー角が正の値の場合(白線と自車進行方向の延長線とが交差するときのヨー角を正とする。)には、外乱を抑制可能な所定値以上、かつ、車両が振動的となる値およびドライバの操舵によって発生する値未満の値(例えば、1°)とし、ヨー角が負の場合には0とする。
ヨー角F/Bゲイン乗算部37bは、リミッタ処理後のヨー角にヨー角F/Bゲインを乗じる。ヨー角F/Bゲインは、制御量不足を回避しつつ応答性を確保できる所定値以上、かつ、車両が振動的になる値およびドライバが操舵角と転舵角との中立ずれを感じる値未満とする。
曲率補正ゲイン乗算部37dは、曲率に曲率補正ゲインを乗じる。曲率補正ゲインは、曲率が大きいほど小さくなる特性とし、上限および下限(0)を設定する。
乗算器37eは、ヨー角F/Bゲイン乗算部37b、車速補正ゲイン乗算部37cおよび曲率補正ゲイン乗算部37dの各出力を乗じてヨー角に応じた反発力を求める。
減算器38aは、あらかじめ設定された横位置閾値(例えば、90cm)から前方注視点先での白線までの距離を減じて横位置偏差を求める。
上下限リミッタ38bは、横位置偏差に上下限リミッタ処理を施す。上下限リミッタは、横位置偏差が正の値の場合には所定の正の値をとり、横位置偏差が負の値の場合には0とする。
距離補正ゲイン乗算部38cは、前方注視点先での白線までの距離に距離補正ゲインを乗じる。距離補正ゲインは、白線までの距離が所定値以下である場合は最大値をとり、所定値を超える場合は距離が長くなるほど小さくなる特性とし、下限を設定する。
車速補正ゲイン乗算部38eは、車速に車速補正ゲインを乗じる。車速補正ゲインは、0〜70km/hの範囲で最大値をとり、70〜130km/hの範囲で徐々に減少し、130km/h以上の範囲で最小値(0)となる特性とする。
曲率補正ゲイン乗算部38fは、曲率に曲率補正ゲインを乗じる。曲率補正ゲインは、曲率が大きいほど小さくなる特性とし、上限および下限(0)を設定する。
乗算器38gは、横位置F/Bゲイン乗算部38d、車速補正ゲイン乗算部38eおよび曲率補正ゲイン乗算部38fの各出力を乗じて横位置に応じた反発力を求める。
実施例1では、スタビリティ制御として、外乱により発生したヨー角を減少させるヨー角F/B制御と、外乱により発生したヨー角の積分値である横位置変化を減少させる横位置F/B制御を実施する。ヨー角F/B制御は、ヨー角が発生した場合、横位置にかかわらず実施し、横位置F/B制御は、白線までの距離が所定の横位置閾値(90cm)以下となった場合に実施する。すなわち、走行車線中央付近は横位置F/B制御の不感帯となる。両F/B制御の制御領域を図7に示す。φはヨー角である。
車両を走行車線に沿って走行させる場合、特に直線路では、白線の方向と自車進行方向とは一致しているため、ヨー角はゼロとなる。つまり、実施例1のヨー角F/B制御では、発生したヨー角を外乱によるものとみなし、ヨー角を減少させることにより、特に直進時において外乱に対する車両の安定性向上を図ることができ、ドライバの修正操舵量を低減できる。
これに対し、実施例1のヨー角F/B制御を含むスタビリティ制御では、ステアリングホイール6と前輪5L,5Rとが機械的に切り離されたSBWシステムの特徴である、ステアリングホイール6と前輪5L,5Rとを互いに独立して制御可能な点に着目し、操舵角と車速とに応じたSBW指令転舵角とヨー角に応じた外乱抑制指令転舵角とを加算した指令転舵角に基づいて前輪5L,5Rの転舵角を制御する一方、操舵角と車速とに基づいてタイヤ横力を推定し、推定したタイヤ横力と車速とに応じた指令操舵反力に基づいて操舵反力を制御する。
すなわち、外乱抑制分の転舵角を直接前輪5L,5Rに与えるため、外乱抑制のための転舵を促す操舵反力成分の付与が不要となる。さらに、操舵角から推定したタイヤ横力に応じた操舵反力を付与することで、外乱抑制のための転舵によって生じるタイヤ横力の変動が操舵反力に反映されないため、ドライバに与える違和感を軽減できる。従来のSBWシステムでは、センサにより検出したラック軸力や転舵角からタイヤ横力を推定し、推定したタイヤ横力に応じた操舵反力を付与している。このため、外乱抑制のための転舵によって生じるタイヤ横力の変動が操舵反力に必ず反映されてしまい、ドライバの違和感となる。実施例1では、ドライバの操舵によって生じたタイヤ横力のみが操舵反力に反映され、外乱抑制のための転舵によって操舵反力が変動しないため、ドライバに与える違和感を軽減できる。
また、外乱抑制指令転舵角を左右0.2°の範囲に制限しているため、スタビリティ制御中であってもドライバは操舵入力によって車両の進行方向を所望の方向に変化させることができる。つまり、ドライバの操舵入力によって生じる転舵角の変化量に対し、外乱抑制指令転舵角による転舵角の補正量が微小であるため、ドライバの操舵を妨げることなく外乱に対する車両の安定性向上を実現できる。
これに対し、実施例1のヨー角F/B制御は、制御介入の閾値を持たないため、シームレスな制御により常に外乱に対する安定性を確保できる。さらに、目標位置を持たないため、ドライバは車両を好きなラインで走行させることができる。加えて、ステアリングホイール6を軽く持っている場合でも制御が解除されることはないため、ドライバの操舵負荷を小さくできる。
さらに、実施例1のスタビリティ制御は、制御(外乱抑制指令転舵角の付与)によって生じる車両挙動をドライバに気付かれない程度、かつ、ドライバの操舵によって発生する車両挙動変化を妨げない程度に制限し、かつ、制御によって生じるセルフアライニングトルクの変化を操舵反力に反映させないため、ドライバにスタビリティ制御中であることを意識させることなく実施可能である。これにより、あたかも外乱に対する安定性に優れた車体諸元を持つ車両の振る舞いを模擬できる。
なお、横位置F/B制御において横位置に応じた反発力を求めるための横位置F/Bゲインは、ヨー角F/Bゲインよりも小さな値に設定している。上述したように、ヨー角F/B制御は、過渡的な外乱によるヨー角の変化をドライバが感じる前にヨー角を収束させる必要上、高応答性が求められるのに対し、横位置F/B制御は、横位置変化が増加するのを止めることが求められること、およびヨー角積分値の蓄積によって横位置が変化するのに時間が掛かることから、ヨー角F/B制御ほどの応答性は必要としていないからである。加えて、仮に横位置F/Bゲインを大きくすると、外乱の大小によって制御量が大きく変動し、ドライバに違和感を与えるからである。
図11は、横力オフセット部34の制御ブロック図である。
曲率演算部(曲率検出手段,センサ)34aは、前方注視点での白線の曲率を演算する。
上下限リミッタ34bは、車速に上下限リミッタ処理を施す。
SATゲイン演算部34cは、リミッタ処理後の車速に基づき、車速に応じたSATゲインを演算する。SATゲインは、車速が高いほど大きなゲインとなる特性とし、上限を設定する。
乗算器34dは、SATゲインに曲率を乗じて横力オフセット量を求める。
リミッタ処理部34eは、横力オフセット量の最大値および変化率の上限を制限する。例えば、最大値は1,000N、変化率の上限は600N/sとする。尚、リミッタ処理部34eにおける横力オフセット量の制限については後で詳細に説明する。
曲率に応じた反力オフセット制御は、白線の曲率が大きいほど大きな横力オフセット量を求め、タイヤ横力から減算する。これにより、SAT演算部35で演算されるタイヤ横力に応じた操舵反力トルク、すなわち、セルフアライニングトルクに応じた操舵反力トルクを表す操舵反力特性は、図12に示すように、白線の曲率が大きくなるほど、セルフアライニングトルクと同一符号方向へオフセットされる。なお、図12は右カーブの場合であり、左カーブの場合は図12と反対方向にオフセットされる。
図15は、操舵反力トルクオフセット部36の制御ブロック図である。
ヨー角演算部36aは、前方注視点でのヨー角を演算する。カメラ17により撮影された走行路の映像に基づいてヨー角を演算することで、簡単かつ高精度にヨー角を検出できる。
横位置演算部36bは、前方注視点での左右白線に対する横位置および現在位置での左右白線に対する横位置をそれぞれ演算する。ここで、横位置演算部36bは、自車が白線を越えて隣の走行車線に移った場合、すなわち、レーンチェンジが行われた場合、現在位置での左右白線に対する横位置を入れ替える。つまり、白線到達前の左白線に対する横位置を白線到達後の右白線に対する横位置とし、白線到達前の右白線に対する横位置を白線到達後の左白線に対する横位置とする。なお、車線幅が異なる走行車線にレーンチェンジした場合には、レーンチェンジ後の走行車線の車線幅W2をレーンチェンジ前の走行車線の車線幅W1で除した値W2/W1を入れ替えた横位置に乗じて横位置を補正する。ここで、各走行車線の車線幅情報は、ナビゲーションシステム24から取得する。
逸脱余裕時間に応じた反力演算部39は、車速とヨー角と前方注視点での左右白線に対する横位置とに基づき、逸脱余裕時間に応じた反力を演算する。逸脱余裕時間に応じた反力演算部39の詳細については後述する。
横位置に応じた反力演算部40は、現在位置での左右白線に対する横位置に基づき、横位置に応じた反力を演算する。横位置に応じた反力演算部40の詳細については後述する。
反力選択部36cは、逸脱余裕時間に応じた反力と横位置に応じた反力のうち絶対値が大きな方を操舵反力トルクオフセット量として選択する。
リミッタ処理部36dは、操舵反力トルクオフセット量の最大値および変化率の上限を制限する。例えば、最大値は2Nm、変化率の上限は10Nm/sとする。
乗算器39aは、ヨー角に車速を乗じて車両の横速度を求める。
除算器39bは、前方注視点での左白線に対する横位置を横速度で除して左白線に対する逸脱余裕時間を求める。
除算器39cは、前方注視点での右白線に対する横位置を横速度で除して右白線に対する逸脱余裕時間を求める。
逸脱余裕時間選択部39dは、左右白線に対する逸脱余裕時間のうち短い方を逸脱余裕時間として選択する。
逸脱余裕時間に応じた反力演算部39eは、逸脱余裕時間に基づき、逸脱余裕時間に応じた反力を演算する。逸脱余裕時間に応じた反力は、逸脱余裕時間に反比例(逸脱余裕時間の逆数に比例)し、3秒以上でほぼゼロとなる特性を有する。
減算器40aは、あらかじめ設定された目標左横位置(例えば、90cm)から左車線に対する横位置を減じて左車線に対する横位置偏差を求める。
減算器40bは、あらかじめ設定された目標右横位置(例えば、90cm)から右車線に対する横位置を減じて右車線に対する横位置偏差を求める。
横位置偏差選択部40cは、左右車線に対する横位置偏差のうち大きな方を横位置偏差として選択する。
横位置偏差に応じた反力演算部40dは、横位置偏差に基づき、横位置に応じた反力を演算する。横位置に応じた反力は、横位置偏差が大きいほど大きくなる特性とし、上限を設定する。
横位置に応じた反力オフセット制御は、横位置に応じた反力を操舵反力トルクオフセット量として操舵反力トルクに加算する。これにより、セルフアライニングトルクに応じた操舵反力トルクを表す操舵反力特性は、図18に示すように、白線までの距離が短くなるほど操舵反力トルクの絶対値が大きくなる方向へオフセットされる。なお、図18は右車線に近い場合であり、左車線に近い場合は図18と反対方向にオフセットされる。
逸脱余裕時間に応じた反力オフセット制御は、逸脱余裕時間に応じた反力を操舵反力トルクオフセット量として操舵反力トルクに加算する。これにより、セルフアライニングトルクに応じた操舵反力トルクを表す操舵反力特性は、図18に示したように、逸脱余裕時間が短くなるほど操舵反力トルクの絶対値が大きくなる方向へオフセットされる。なお、図18は右車線に近い場合であり、左車線に近い場合は図18と反対方向にオフセットされる。
操舵反力制御部20では、操舵反力トルクオフセット部36において、逸脱余裕時間に応じた反力と横位置に応じた反力のうち絶対値が大きな方を操舵反力トルクオフセット量として選択し、加算器20cにおいて、操舵反力トルクに操舵反力トルクオフセット量を加算する。これにより、逸脱余裕時間または横位置に応じて操舵反力特性が操舵反力トルクの絶対値が大きくなる方向へオフセットされる。
逸脱余裕時間に応じた反力オフセット制御では、自車と白線とが平行である場合、すなわち、ヨー角がゼロである場合、逸脱余裕時間に応じた反力はゼロである。このため、自車が白線に近い位置であっても、ヨー角が小さい場合には、僅かな反力しか出すことができない。これに対し、横位置に応じた反力オフセット制御では、白線までの距離に比例して反力(横位置に応じた反力)を生成するため、白線までの距離が短くなるほど大きな反力を出すことができ、自車を走行車線中央付近に戻しやすくすることができる。
よって、逸脱余裕時間に応じた反力オフセット制御と横位置に応じた反力オフセット制御を併用することにより、白線までの距離に応じて安定的な反力を付与しつつ、車線逸脱を効果的に抑制できる。このとき、逸脱余裕時間に応じた反力と横位置に応じた反力のうち絶対値が大きな方を用いることで、常に必要とされる最適な操舵反力を付与できる。
次に、横力オフセット部34におけるリミッタ処理部34eの詳細について説明する。図21は実施例1の横力オフセット部におけるリミッタ処理部内の制御構成を表すブロック図である。リミッタ処理部34eは、曲率が予め設定された所定曲率以上か否かを判定し、所定曲率未満の場合は通常リミッタ342へ横力オフセット量を送信し、所定曲率以上の場合は手放し判定部344に横力オフセット量を送信する曲率判定部341を有する。通常リミッタ342では、横力オフセット量の変化率に所定の制限を付与するものであり、後述する抑制リミッタ345に比べて変化量の制限は小さいため、ある程度の横力オフセット量の変化が許容される。
また、把持していると判断された場合であっても、曲率が所定曲率以上で、明らかにカーブ走行を行うと判断できる場合には、抑制リミッタ345により横力オフセット量の変化率を抑制することで、ドライバが自ら操舵する際に適切な反力を付与することで、自動的に走行していくような過信を排除するものである。
(1) 左右前輪5FL,5FR(転舵輪)を転舵する転舵部2と機械的に切り離されドライバの操舵入力を受ける操舵部1と、セルフアライニングトルクと操舵反力を座標軸とする座標上に、セルフアライニングトルクが大きいほど大きな操舵反力となる操舵反力特性を設定し、当該操舵反力特性に基づいて操舵部1に操舵反力を付与する操舵反力制御部20と、白線の曲率を検出する曲率演算部34aと、検出された曲率が大きいほど大きなオフセット量を算出し、オフセット量の変化率に所定の制限を付与し、座標上で操舵反力特性をセルフアライニングトルクと同一符号方向へオフセットする横力オフセット部34(オフセット手段)と、白線までの距離が短いほど大きな操舵反力を操舵部1に付与する操舵反力トルクオフセット部36(車線逸脱抑制手段)と、検出された曲率のカーブ方向と反対の操舵トルクを検出した時は手放し状態と判定する手放し判定部344(手放し判定手段)と、手放し判定部344により手放し状態と判定された場合、変化率に付与された所定の制限を、該所定の制限よりも大きな制限に変更して横力オフセット量の増加を抑制する前回値読み込み部346(オフセット抑制手段)と、を備えた。
これにより、曲率のカーブ方向と操舵トルクの方向とに基づいて手放しか否かを判定することができ、手放しと判定された場合は、横力オフセット量の増加が抑制されるため、ドライバが自動運転しているかのような過信を抑制できる。
よって、直進時もしくは曲率が小さな道路を走行中に横力オフセット量を確保することで、道路形状に沿って安定して走行することができ、転舵制御や反力制御のハンチングを回避することができる。
よって、カーブ路走行中に過剰に横力オフセット量が変化することがなく、カーブ路走行中の操舵反力の急変等を抑制することができ、安定した走行を達成できる。
これにより、曲率が大きいほど保舵トルクの変化に対する操舵角の変動が小さくなるため、操舵トルクに対する車両の感度が低く抑えられ、旋回中のドライバによる進路修正の容易化を実現できる。また、操舵角を維持するための保舵トルクを小さくできるため、旋回時におけるドライバの操舵負担を軽減できる。
これにより、操舵反力特性を維持したまま車線逸脱を抑制する方向に操舵反力トルクを付与することができ、安定した操舵状態を達成できる。
これにより、曲率のカーブ方向と操舵トルクの方向とに基づいて手放しか否かを判定することができ、手放しと判定された場合は、横力オフセット量の増加が抑制されるため、ドライバが自動運転しているかのような過信を抑制できる。
これにより、曲率のカーブ方向と操舵トルクの方向とに基づいて手放しか否かを判定することができ、手放しと判定された場合は、横力オフセット量の増加が抑制されるため、ドライバが自動運転しているかのような過信を抑制できる。
Claims (7)
- 転舵輪を転舵する転舵部と機械的に切り離されドライバの操舵入力を受ける操舵部と、
前記操舵部の操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記検出された操舵角と操舵角の増加に応じて操舵反力が増加する操舵反力特性とに応じて指令操舵反力を演算し、前記指令操舵反力に基づいて前記操舵部に操舵反力を付与する操舵反力制御手段と、
走行路区分線の曲率を検出する曲率検出手段と、
前記検出された曲率が大きいほど大きな操舵角減少量を算出する操舵角減少量算出手段と、
前記操舵角減少量の変化率に所定の制限を付与した抑制操舵角減少量を算出する抑制操舵角減少量算出手段と、
前記指令操舵反力の演算に用いる操舵角を前記検出された操舵角に対して前記抑制操舵角減少量だけ減少させる操舵角変更手段と、
前記走行路区分線までの距離が短いほど大きな操舵反力を前記操舵部に付与する車線逸脱抑制手段と、
前記検出された曲率のカーブ方向と反対の操舵トルクを検出したときは手放し状態と判定する手放し判定手段と、
前記手放し判定手段により手放し状態と判定された場合、前記変化率に付与された所定の制限を、該所定の制限よりも大きな制限に変更する操舵角変更抑制手段と、
を備えたことを特徴とする操舵制御装置。 - 請求項1に記載の操舵制御装置において、
前記操舵角変更抑制手段は、前記検出された曲率が所定曲率以上の場合にのみ前記大きな制限に変更することを特徴とする操舵制御装置。 - 請求項1または2に記載の操舵制御装置において、
前記検出された曲率が大きいほど、前記操舵角の減少量の変化率を抑制する変化率抑制手段を設けたことを特徴とする操舵制御装置。 - 請求項1ないし3いずれか1つに記載の操舵制御装置において、
前記操舵反力特性は、前記操舵部の操舵角が小さいときは大きいときよりも操舵角の変化量に対する操舵反力の変化量が大きいことを特徴とする操舵制御装置。 - 請求項1ないし4いずれか1つに記載の操舵制御装置において、
前記走行路区分線までの距離が短いほど大きな反力加算量を算出する反力加算量算出手段を有し、
前記車線逸脱抑制手段は、前記指令操舵反力に対し前記反力加算量を加算した操舵反力を前記操舵部に付与する手段であることを特徴とする操舵制御装置。 - 転舵部と機械的に切り離された操舵部の操舵角を検出し、検出された操舵角と操舵角の増加に応じて操舵反力が増加する操舵反力特性とに応じて演算した指令操舵反力に基づいて前記操舵部に操舵反力を付与すると共に、走行路区分線までの距離が短いほど前記指令操舵反力を大きくする際、前記走行路区分線の曲率が大きいほど大きな操舵角減少量を算出し、該操舵角減少量の変化率に所定の制限を付与した抑制操舵角減少量を算出し、前記指令操舵反力の演算に用いる操舵角を前記検出された操舵角に対して前記抑制操舵角減少量だけ減少させるにあたり、検出された曲率と反対の操舵トルクを検出した場合は、前記変化率に付与された所定の制限を、該所定の制限よりも大きな制限に変更することを特徴とする操舵制御装置。
- 転舵部と機械的に切り離された操舵部の操舵角を検出するセンサと、
走行路区分線の曲率を検出するセンサと、
操舵トルクを検出するセンサと、
検出された操舵角と操舵角の増加に応じて操舵反力が増加する操舵反力特性とに応じて演算した指令操舵反力に基づいて前記操作部に操舵反力を付与すると共に、走行路区分線までの距離が短いほど前記指令操舵反力を大きくする際、前記検出された曲率が大きいほど大きな操舵角減少量を算出し、該操舵角減少量の変化率に所定の制限を付与した抑制操舵角減少量を算出し、前記指令操舵反力の演算に用いる操舵角を前記検出された操舵角に対して前記抑制操舵角減少量だけ減少させるにあたり、検出された曲率と反対の操舵トルクを検出した場合は、前記変化率に付与された所定の制限を、該所定の制限よりも大きな制限に変更するコントローラと、
を備えたことを特徴とする操舵制御装置。
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