本発明の実施の形態を説明するにあたり、まず、図11を用いて、反射光の検出タイミング(定着ベルトの副走査方向での検出位置)による検出値の精度の変化、経時による表面状態(検出値)の変化について説明する。図11(a)、(b)は、定着ベルトの表面に臨ませて配置した発光部から、定着ベルト上に光スポットを照射し、この光スポットの定着ベルトの表面からの反射光を、受光部の受光面で検出した時の検出結果を示したものである。図11(a)と図11(b)とは、定着ベルトの主走査方向において同じ検出位置での反射光を検出しているが、検出時期が異なっている。つまり、当初は図11(a)のような検出値が取得されていたが、時間の経過によって定着ベルトの表面の摩耗(傷)が進行し、図11(b)のような検出値が取得されたものである。
また、図11(a)、(b)中にそれぞれ示したAとBとでは、検出時期は同じであるが、副走査方向での検出タイミング、すなわち定着ベルトの回転方向での検出位置が異なっている。この図11(a)、(b)に示すように、検出値は一定周期Pで変動していることがわかる。この周期的な変動に係る一定周期Pは、定着ベルトの一回転分に相当する。このように定着ベルトの回転中に反射光の光強度の検出値が変化するのは、定着ベルトの表面状態が副走査方向に不均一であること、定着ベルトの内部応力が副走査方向に不均一であること、または、定着ベルトにつなぎ目があることで、検出位置が異なると反射光の反射角度が変化するためと考えられる。このように変化した反射光が、受光部の受光面の中心位置からずれた位置に到達することで、検出値の変化が発生していると考えられる。図11に示す例では、Aの位置で検出した場合のほうが、Bの位置で検出するよりも、検出値が10%程度高くなってしまう。
したがって、以下のことが判明した。経時的に摩耗が進行して傷レベルが変わり、反射光の光強度(検出値)が全体的に10%低下したとする。このように検出値が低下する前である図11(a)の時点では、検出値がもともと低いBの位置で検出値を取得し、検出値が低下した後である図11(b)の時点では、検出値がもともと高いAの位置で検出値を取得した場合は、摩耗の進行前後の時点での検出値に見かけ上の変化がなく、傷レベルの変化を検知できないことになる。
以上のように、発明者は、定着ベルトの表面状態の変化を判断する上で、定着ベルトの回転周期で発生する反射光の反射方向の変動の影響で、検出位置の違いで検出値が変動することを知見した。そこで、発明者は、このような定着ベルトの検出位置の違いでの検出値の変動に影響されることなく、定着部材の表面状態の変化を精度よく検知することを目的として、本願を発明するに至った。
<第1実施例>
以下に、本願の第1実施例に係る画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。本実施例は、画像形成装置として、タンデム型のフルカラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という)に適用した場合の例である。本実施例のプリンタは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナーを用いて画像形成を行うもので、各色に対応した部材が各々設けられている。以下、本明細書中、図1、図2では、符号の末尾に、イエロー用の部材にはYを、シアン用の部材にはCを、マゼンタ用の部材にはMを、ブラック用の部材にはKを付して説明する。また、図3〜図6では、符号の末尾に、ブラック用の部材にはaを、マゼンタ用の部材にはbを、シアン用の部材にはcを、イエロー用の部材にはdを付して説明する。また、図1の紙面右方向(中間転写ベルト105の長手方向)をX方向とし、紙面手前方向(中間転写ベルト105の短手方向)Y方向とし、紙面下方向をZ方向とする。図2〜図6では、図1に対応させて、X,Y,Zのそれぞれの方向を示す矢印を付している。
まず、本実施例のプリンタの構成について、その概略を説明する。図1は、本実施例のプリンタのうち、露光、帯電、現像、転写、定着を行う画像形成工程部分を示す概略構成図(以下、「プロセスエンジン部100」と呼ぶ)である。本実施例のプリンタには、図1に示すプロセスエンジン部100の他に、PC等から送られた画像データを処理し、露光データに変換するプリントコントローラ(図示せず)、画像形成動作を制御する本体制御部400、記録材である転写紙115の供給を行う給紙ユニット(図示せず)、転写紙115を手差し給紙させるための手差しトレイ(図示せず)、および、画像形成済みの転写紙115が排紙される排紙トレイ(図示せず)等が設けられている。
本体制御部400は、プリンタの各部を駆動制御するものであり、各種演算や各部の駆動制御を実行するCPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラム等の固定的データを予め記憶するROM(Read Only Memory)、各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)等を備えて構成されている。本体制御部400は、後述の反射型光学センサ68からの検出値に基づいて、定着ベルト67の表面状態を判断する表面状態判断手段としての機能も有している。
図1に示すように、本実施例のプリンタのプロセスエンジン部100は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各トナー像を形成する画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kと、露光手段としての露光ユニット200と、転写手段としての中間転写ベルト105、1次転写ユニット106Y,106C,106M,106Kおよび2次転写ローラ108と、定着手段としての定着ユニット111と、反射型光学検知手段としての反射型光学センサ68(図8参照)と、前述の表面状態判断手段としての本体制御部400とを備えている。
第1の転写手段として、無端ベルト状の中間転写ベルト105(第2の像担持体としても機能する)が設けられている。この中間転写ベルト105は、4つの支持ローラ112,113,114,119に張架された状態(張力のかかった状態で4つの支持ローラに架け渡されている状態をいう)で、駆動ローラとしても機能する支持ローラ112によって、図1中に矢印表示したように、反時計方向に回転駆動される。
画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kは、中間転写ベルト105の張架部分に設けられている。これらの画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kは、感光体ユニット103Y、103C、103M、103Kと、帯電手段としての帯電ユニット301Y,301C,301M,301Kと、現像手段としての現像ユニット102Y,102C,102M,102Kとを有している。また、現像ユニット102Y,102C,102M,102Kには、トナーボトル104Y、104C、104M、104Kから、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーがそれぞれ供給される。また、感光体ユニット103Y,103C,103M,103Kには、第1の像担持体としての感光体ドラム101Y,101M,101C,101Kが設けられている。
露光手段としての露光ユニット200は、図1に示すように、画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kの紙面下方に設けられている。この露光ユニット200は、画像情報に基づいて、露光ユニット200の内部に設けられている半導体レーザ(図4、図5の光源2200a,2200b,2200c,2200d)を駆動して書込光Lbを出射し、感光体ドラム101Y,101C,101M,101K上に静電潜像を形成するためのものである。ここで、書込光Lbの出射は、レーザに限るものではなく、例えばLED(Light Emitting Diode)であってもよい。
次に、図2を用いて、画像形成ユニット1Y,1C,1M,1Kの構成について説明する。以下の説明ではイエローのトナー像を形成する画像形成ユニット1Yを例に挙げて説明する。他の画像形成ユニット1C,1M,1Kも同様の構成を有するため、以下の記載における画像形成ユニットYの各部材を、他の画像形成ユニット1C,1M,1Kの各部材と読み替える(符号の末尾Yを、それぞれC,M,Kと読み替える)ことで、記載および説明を省略する。
図2に示すように、画像形成ユニット1Yでは、感光体ドラム101Yの周囲に、帯電ユニット(帯電手段)301Y、現像ユニット(現像手段)102Y、および、感光体クリーニングユニット308Yが設けられている。また、感光体ドラム101Yに対して、中間転写ベルト105を介して対向する位置には、1次転写ユニット106Yが設けられている。
帯電ユニット301Yは、帯電ローラを採用した接触帯電方式のものであり、感光体ドラム101Yに接触して電圧を印加することにより、感光体ドラム101Yの表面を一様に帯電する。この帯電ユニット301Yには、非接触のスコロトロンチャージャなどを採用した非接触帯電方式のものも採用できる。
現像ユニット102Yは、露光ユニット200により形成された静電潜像に現像剤を付着させて画像を顕像化させる機能を有し、図2に示すように、現像ケース302Y内に設けられた攪拌部303Yと現像部304Yとから主に構成されている。現像ユニット102Yでは、トナーボトル104Yから供給される、磁性キャリアと非磁性トナーとからなる二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という)を使用している。なお、現像剤は、二成分現像剤に限定されることはなく、一成分現像剤を使用することもできる。現像剤は、トナーボトル104Yから撹拌部303Yに供給され、攪拌部303Yで攪拌されながら搬送されて、現像剤担持体としての現像スリーブ305Y上に供給される。また、攪拌部303Yには、平行な2本のスクリュー306Yが設けられており、2本のスクリュー306Yの間には、仕切り板311Yが設けられ、互いに仕切られている。なお、仕切り板311Yは、撹拌部303Yの内部が、中央では仕切られ、スクリュー306Yの両端部では連通するように設けられている。
また、現像ケース302Yには、現像ユニット102Y内の現像剤のトナー濃度を検出するためのTCセンサ312Yが取り付けられている。本実施例で用いる現像剤は、キャリアが磁性体であり、トナーが非磁性体であるため、TCセンサ312Yは透磁率方式を採用している。そのため、現像ユニット102Y内のトナー濃度は、現像剤の透磁率、つまり、単位体積あたりの現像剤の磁気抵抗で表わされる。
一方、現像部304Yには、現像ケース302Yの開口を通して感光体ドラム101Yと対向する現像スリーブ305Yが設けられている。この現像スリーブ305Y内には、マグネット(図示せず)が固定配置されている。また、現像スリーブ305Yに先端が接近するように、ドクターブレード307Yが設けられている。このような現像部304Yでは、現像スリーブ305Yに付着した現像剤のうち、非磁性体のトナーが感光体ドラム101Yに転移される。
このような現像ユニット102Yでは、撹拌部303Yの現像剤を2本のスクリュー306Yで攪拌しながら搬送して循環し、現像スリーブ305Yに供給する。現像スリーブ305Yに供給された二成分現像剤は、現像スリーブ305Y内のマグネットにより汲み上げられて保持される。現像スリーブ305Yに汲み上げられた現像剤は、現像スリーブ305Yの回転に伴って搬送され、ドクターブレード307Yにより適正な量に規制される。なお、規制された現像剤は攪拌部303Yに戻される。このようにして感光体ドラム101Yと対向する領域(以下、「現像領域」という)まで搬送された現像剤は、現像スリーブ305Y内のマグネットにより穂立ち状態となり、現像スリーブ305Yの表面に磁気ブラシを形成する。現像領域では、現像スリーブ305Yに印加されている現像バイアスにより、現像剤中のトナーを、感光体ドラム101Y上の静電潜像部分に移動させる現像電界が形成される。
これにより、現像剤中のトナーは、感光体ドラム101Y上の静電潜像部分に転移し、感光体ドラム101Y上の静電潜像は可視像化され、トナー像が形成される。現像領域を通過した現像剤は、マグネットの磁力が弱い部分まで搬送されることで現像スリーブ305Yから離れ、攪拌部303Yに戻される。このような動作の繰り返しにより、攪拌部303Y内のトナー濃度が薄くなると、それをTCセンサ312Yが検出し、その検出結果に基づいて、トナーボトル104Yから攪拌部303Yにトナーが補給される。
1次転写ユニット106Yは、感光体ドラム101Yに形成されたトナー像を中間転写ベルト105に転写する機能を有する。本実施例では、1次転写ユニット106Yとして、1次転写ローラを採用しており、中間転写ベルト105を挟んで感光体ドラム101Yに押し当てるようにして設置されている。もちろん、1次転写ユニット106Yは、ローラ状のものに限定されることはなく、導電性のブラシ形状のものや、非接触のコロナチャージャなどを採用してもよい。
感光体クリーニングユニット308Yは、感光体ドラム101Yに先端が押し当てられるように配置される。この先端側に、例えば、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード309Yを備えている。また、クリーニング性能を高めるために、感光体ドラム101Yに接触する導電性のファーブラシ310Yを併用している。このファーブラシ310Yには、金属製の電界ローラ(図示せず)からバイアスが印加されており、その電界ローラにはスクレーパ(図示せず)の先端が押し当てられている。そして、クリーニングブレード309Yやファーブラシ310Yにより、感光体ドラム101Yから除去されたトナーは、感光体クリーニングユニット308Yの内部に収容され、廃トナー回収ユニット(図示ぜず)にて回収される。
以上のように構成された図2の画像形成ユニット1Yでは、感光体ドラム101Yの回転とともに、まず帯電ユニット301Yで感光体ドラム101Yの表面を一様に帯電する。次いで、プリントコントローラからの画像情報に基づいて、露光ユニット200からレーザによる書込光Lbを照射し、感光体ドラム101Y上に静電潜像を形成する。その後、現像ユニット102Yにより静電潜像が可視像化されてトナー像が形成される。このトナー像は、1次転写ユニット106Yにより中間転写ベルト105上に1次転写される。1次転写後に感光体ドラム101Yの表面に残留した転写残トナーは、感光体クリーニングユニット308Yにより除去され、次の画像形成に供される。
次に、図3〜図6を用いて、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの紙面下方に設けられている露光ユニット200の構成について説明する。図3は、露光ユニット200全体の平面図である。図4は、図3に示すm1方向に向かって観察した図であって、ブラック、マゼンタ用の光源からポリゴンミラーまでの部材の配置状態を示す。図5は、図3に示すm2側から観察した図であって、シアン、イエロー用の光源からポリゴンミラーまでの部材の配置状態を示す。図6は、露光ユニット200の側面図である。なお、説明の便宜上、図3〜図6に示す露光ユニット200は、図1に示される露光ユニット200とは上下左右とも逆転させて表示している。
本実施例で用いる露光ユニット200は、半導体レーザからなる4つの光源2200a,2200b,2200c,2200d、4つのカップリングレンズ2201a,2201b,2201c,2201d,4つの開口板2202a,2202b,2202c,2202d,4つのシリンドリカルレンズ2204a,2204b,2204c,2204d(以上、図4、図5参照)、ポリゴンミラー2104(図3〜図6参照)、4つのfθレンズ2105a,2105b,2105c,2105d,8つの折返しミラー2106a,2106b,2106c,2106d,2108a,2108b,2108c,2108d、4つのトロイダルレンズ2107a,2107b,2107c,2107d、4つの光検知センサ2205a,2205b,2205c,2205d、4つの光検知用ミラー2207a,2207b,2207c,2207d(以上、図6参照)、および、走査制御装置(図示せず)などを備えている。これらの部材は、光学ハウジング2300(図6参照)の所定位置に組み付けられている。
なお、図3〜図6の説明では、便宜上、「主走査方向に対応する方向」を「主走査対応方向」と略述し、「副走査方向に対応する方向」を「副走査対応方向」と略述する。また、図3では、便宜上、カップリングレンズ2201aおよびカップリングレンズ2201bの光軸に沿った方向を「w1方向」、光源2200aおよび光源2200bにおける主走査対応方向を「m1方向」とする。さらに、カップリングレンズ2201c、および、カップリングレンズ2201dの光軸に沿った方向を「w2方向」、光源2200cおよび光源2200dにおける主走査対応方向を「m2方向」とする。なお、光源2200aおよび光源2200bにおける副走査対応方向、並びに、光源2200cおよび光源2200dにおける副走査対応方向は、いずれも図中のZ軸方向と同じ方向である。
図3に示すように、光源2200bと光源2200cとは、X軸方向に関して離れた位置に配置されている。そして、光源2200aは、光源2200bの−Z側(図4における光源2200bの下方)に配置されている。また、光源2200dは光源2200cの−Z側(図5における光源2200cの下方)に配置されている。
図4に示すように、カップリングレンズ2201aは、光源2200aから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。また、カップリングレンズ2201bは、光源2200bから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。図5に示すように、カップリングレンズ2201cは、光源2200cから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。また、カップリングレンズ2201dは、光源2200dから射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
図4に示すように、開口板2202aは、開口部(図示せず)を有し、カップリングレンズ2201aを介した光束を整形する。また、開口板2202bは、開口部(図示せず)を有し、カップリングレンズ2201bを介した光束を整形する。図5に示すように、開口板2202cは、開口部(図示せず)を有し、カップリングレンズ2201cを介した光束を整形する。また、開口板2202dは、開口部(図示せず)を有し、カップリングレンズ2201dを介した光束を整形する。
図4に示すように、シリンドリカルレンズ2204aは、開口板2202aの開口部を通過した光束を、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。また、シリンドリカルレンズ2204bは、開口板2202bの開口部を通過した光束を、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。図5に示すように、シリンドリカルレンズ2204cは、開口板2202cの開口部を通過した光束を、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。また、シリンドリカルレンズ2204dは、開口板2202dの開口部を通過した光束を、ポリゴンミラー2104の偏向反射面近傍にZ軸方向に関して結像する。
図6に示すように、ポリゴンミラー2104は、2段構造の4面鏡2104ad,2104bcを有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。そして、図4、図5に示すように、1段目(図4、図5、図6の紙面下側の段)の4面鏡2104adでは、シリンドリカルレンズ2204aからの光束およびシリンドリカルレンズ2204dからの光束がそれぞれ偏向され、2段目(図4、図5、図6の紙面上側の段)の4面鏡2104bcでは、シリンドリカルレンズ2204bからの光束およびシリンドリカルレンズ2204cからの光束がそれぞれ偏向されるように配置されている。なお、1段目の4面鏡2104adおよび2段目の4面鏡2104bcは、軸Iを回転軸として互いに位相が45°ずれて回転し、書き込み走査は1段目と2段目とで交互に行われる。
図6に示すように、シリンドリカルレンズ2204aおよびシリンドリカルレンズ2204bからの光束は、ポリゴンミラー2104の−X側(図6における紙面左方向)に偏向され、シリンドリカルレンズ2204cおよびシリンドリカルレンズ2204dからの光束は、ポリゴンミラー2104の+X側(図6における紙面右方向)に偏向される。
また、図6に示すように、各fθレンズ2105a,2105b,2105c,2105dは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って、対応する感光体ドラム101Y,101C,101M,101Kの表面上で、光スポットが主走査方向に等速で移動するようなパワーを有する非円弧面形状を有している。fθレンズ2105aおよびfθレンズ2105bは、ポリゴンミラー2104の−X側に配置され、fθレンズ2105cおよびfθレンズ2105dは、ポリゴンミラー2104の+X側に配置されている。
そして、fθレンズ2105aとfθレンズ2105bとはZ軸方向に積層され、fθレンズ2105aはポリゴンミラー2104の1段目の4面鏡2104adに対向し、fθレンズ2105bは2段目の4面鏡2104bcに対向している。また、fθレンズ2105cとfθレンズ2105dとはZ軸方向に積層され、fθレンズ2105cは2段目の4面鏡2104bcに対向し、fθレンズ2105dは1段目の4面鏡2104adに対向している。
そこで、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204aからの光束は、fθレンズ2105a、折返しミラー2106a、トロイダルレンズ2107a、および、折返しミラー2108aを介して、光スポットとしてブラック用の感光体ドラム101Kに照射され、該感光体ドラム101Kの表面に照射スポット(光スポットにより被照射部に形成される像をいう。以下同様)が形成される。光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラム101Kの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム101K上を走査する。このときの光スポットの移動方向(Y方向)が、感光体ドラム101Kでの「主走査方向」であり、感光体ドラム101Kの回転方向(X方向)が、感光体ドラム101Kでの「副走査方向」である。
また、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204bからの光束は、fθレンズ2105b、折返しミラー2106b、トロイダルレンズ2107b、および、折返しミラー2108bを介して、光スポットとしてマゼンタ用の感光体ドラム101Mに照射され、該感光体ドラム101Mの表面に照射スポットが形成される。光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラム101Mの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム101M上を走査する。このときの光スポットの移動方向(Y方向)が、感光体ドラム101Mでの「主走査方向」であり、感光体ドラム101Mの回転方向(X方向)が、感光体ドラム101Mでの「副走査方向」である。
また、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204cからの光束は、fθレンズ2105c、折返しミラー2106c、トロイダルレンズ2107c、および、折返しミラー2108cを介して、光スポットとしてシアン用の感光体ドラム101Cに照射され、該感光体ドラム101Cの表面に照射スポットが形成される。光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラム101Cの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム101C上を走査する。このときの光スポットの移動方向(Y方向)が、感光体ドラム101Cでの「主走査方向」であり、感光体ドラム101Cの回転方向(X方向)が、感光体ドラム101Cでの「副走査方向」である。
また、ポリゴンミラー2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204dからの光束は、fθレンズ2105d、折返しミラー2106d、トロイダルレンズ2107d、および、折返しミラー2108dを介して、光スポットとしてイエロー用の感光体ドラム101Yに照射され、該感光体ドラム101Yの表面に照射スポットが形成される。光スポットは、ポリゴンミラー2104の回転に伴って感光体ドラム101Yの長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム101Y上を走査する。このときの光スポットの移動方向(Y方向)が、感光体ドラム101Yでの「主走査方向」であり、感光体ドラム101Yの回転方向(X方向)が、感光体ドラム101Yでの「副走査方向」である。
ところで、各感光体ドラム101K,101M,101C,101Yにおける画像情報が書き込まれる主走査方向の走査領域は「有効画像領域」と呼ばれている。なお、各折返しミラー2106a〜2106d,2108a〜2108dは、ポリゴンミラー2104から各感光体ドラム101K,101M,101C,101Yに至る各光路長が互いに一致するとともに、各感光体ドラム101K,101M,101C,101Yにおける光束の入射位置および入射角がいずれも互いに等しくなるように、それぞれ配置されている。
また、シリンドリカルレンズ2204a〜2204d(図3〜図5参照)と、それに対応するトロイダルレンズ2107a〜2107d(図6参照)とにより、偏向点とそれに対応する感光体ドラム101K,101M,101C,101Yの表面とを副走査方向に共役関係とする面倒れ補正光学系が構成されている。
ポリゴンミラー2104と各感光体ドラム101K,101M,101C,101Yとの間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施例では、fθレンズ2105aとトロイダルレンズ2107aと折返しミラー2106a,2108aとからKステーション光学の走査光学系(ブラックの画像形成ユニット1Kの走査光学系をいう)が構成されている。また、fθレンズ2105bとトロイダルレンズ2107bと折返しミラー2106b,2108bとからMステーションの走査光学系(マゼンタの画像形成ユニット1Mの走査光学系をいう)が構成されている。そして、fθレンズ2105cとトロイダルレンズ2107cと折り返しミラー(2106c,2108c)とからCステーションの走査光学系(シアンの画像形成ユニット1Cの走査光学系をいう)が構成されている。さらに、fθレンズ2105dとトロイダルレンズ2107dと折り返しミラー2106d,2108dとからYステーションの走査光学系(イエローの画像形成ユニット1Yの走査光学系をいう)が構成されている。
光検知センサ2205aには、ポリゴンミラー2104で偏向され、Kステーションの走査光学系を介した光束のうち、書き込み開始前の光束の一部が、光検知用ミラー2207aを介して入射する。光検知センサ2205bには、ポリゴンミラー2104で偏向され、Mステーションの走査光学系を介した光束のうち書き込み開始前の光束の一部が、光検知用ミラー2207bを介して入射する。
光検知センサ2205cには、ポリゴンミラー2104で偏向され、Cステーションの走査光学系を介した光束のうち書き込み開始前の光束の一部が、光検知用ミラー2207cを介して入射する。光検知センサ2205dには、ポリゴンミラー2104で偏向され、Yステーションの走査光学系を介した光束のうち書き込み開始前の光束の一部が、光検知用ミラー2207dを介して入射する。
光検知センサ2205a〜2205dは、いずれも、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。これらの光検知センサ2205a〜2205dの走査等の制御は、本体制御部400の制御により、走査制御装置(図示せず)によって行われる。この走査制御装置は、各光検知センサ2205a〜2205dの出力信号に基づいて、対応する感光体ドラム101K,101M,101C,101Yでの走査開始タイミングを検出する。
次に、図7を用いて、中間転写ベルト105の詳細を説明する。この図7に示すように、4つの支持ローラ112,113,114,119のうちの支持ローラ112に対向する位置には、2次転写ユニットである2次転写ローラ108が設けられている。そして、中間転写ベルト105上のトナー像を転写紙115上に2次転写する際には、2次転写ローラ108を、支持ローラ112に巻回された中間転写ベルト105部分に押し当てることにより行う。この2次転写ローラ108には、当該2次転写ローラ108に付着したトナーをクリーニングするローラクリーニング部116が当接している(図1参照)。なお、2次転写ユニットとしては、2次転写ローラ108を用いた構成に限定されることはなく、例えば転写ベルトや非接触の転写チャージャを用いた構成としてもよい。
図7に示すように、中間転写ベルト105の主走査方向(Y方向)の中央部付近には、画像濃度や画像位置のチェック用のテストパターン201や画像形成用のパターンが形成される。また、中間転写ベルト105の支持ローラのうちの支持ローラ112に対向する位置に、テストパターン201の濃度や位置を検知するためのフォトセンサ109が、支持ローラ112の軸方向の中央部に設けられている。また、中間転写ベルト105の支持ローラ112,113,114,119のうちの支持ローラ113に対向する位置に、ベルトクリーニングユニット110が設けられている。このベルトクリーニングユニット110は、転写紙115に中間転写ベルト105上のトナー像を転写した後に、中間転写ベルト105上に残留する残留トナーを除去するためのものである。
定着ユニット111は、転写紙115上に転写されたトナー像を定着させるための定着手段であり、図1に示すように、2次転写ローラ108によって搬送される転写紙115の搬送方向下流側に設けられている。図8に示すように、定着ユニット111は、加圧体としての加圧ローラ63と、定着体としての定着ベルト67と、定着ベルト67が掛回されている定着ローラ66および加熱ローラ64と、定着ベルト67に張力を付与するテンションローラ65と、から構成されている。また、定着ローラ66と加圧ローラ63とで、転写紙115を挟持して搬送するニップ部69を形成している。
加圧ローラ63は、アルミまたは鉄等の芯金の表面に、シリコーンゴムなどの弾性層を設けて形成されており、表層にはPFAやPTFEで形成された離型層が備えられている。定着ベルト67は、ニッケル、ポリイミドなどの基材に、PFAやPTFEなどの離型層を有するもの、または、その中間にシリコーンゴムなどの弾性層を設けたもので構成されている。定着ベルト67は、定着ローラ66と加熱ローラ64とテンションローラ65とに掛け回されており、テンションローラ65で適切な張力に保たれている。定着ローラ66は、金属の芯金の表面に、シリコーンゴムを有して形成されたものである。加熱ローラ64は、アルミまたは鉄の中空ローラで、内部にハロゲンヒータ(図示せず)などの熱源を有している。
このような部材を備えて構成された定着ユニット111は、定着ローラ66と加圧ローラ63とからなるニップ部69に向かって、転写紙115が進入すると、当該ニップ部69において所定の圧力と熱を与えることで、転写紙115上の画像を定着させる。
この定着ユニット111で、例えばA4サイズ用紙を縦通紙の状態で定着を繰り返すと、定着ベルト67の表面上のA4縦通紙の用紙幅方向の両側の端部(以下、「エッジ部」という)が通過する位置に縦筋状の傷が発生することがある。これはエッジ部の端面に付着した紙粉により、定着ベルト67の表面が摩耗することによって生じる。このとき、A4縦通紙の定着後に、A4横通紙あるいはA3縦通紙の定着が実施された際に、この縦筋状の傷に対応して画像表面に光沢スジが現れ、画像品質の劣化を生じてしまう。
この画像品質の劣化を防止するため、本願に係る第1実施例では、定着ユニット111に、図8に示すように、反射型光学センサ68を設置している。この反射型光学センサ68は、定着ベルト67の表面に光スポットを照射し、その反射光を受光して反射光の光強度を検出するものである。その際の検出値に基づいて、本体制御部400では用紙幅方向のエッジ部の通過位置における定着ベルト67の表面状態の変化、すなわち、定着ベルト67の表面に形成される傷レベルを判断している。そして、本実施例では、この傷レベルが所定レベルを超えたときに、画像品質の劣化を防止するための対処を行う。この対処の詳細は、後述する。
図9に、定着ベルト67の傷レベルを検知するための、反射型光学センサ68(68a)の一例の概略図を示す。図9(a)は、反射型光学センサ68aの側面図であり、図9(b)は平面図である。また、図12に、定着ベルト67の主走査方向における光スポットの照射位置と反射型光学センサ68(68a、68b)の配置状態を示す。図12(a)は、主走査方向における光スポットSP1、SP2の照射位置を示し、図12(b)は、主走査方向における2つの反射型光学センサ68(68a,68b)の配置状態を示す。なお、以下では、定着ベルト67の移動方向(回転方向)を副走査方向とし、副走査方向と直交する方向(定着ベルト67の軸方向)を主走査方向とする。
本実施例では、図12に示すように、2つの反射型光学センサ68a,68bを備えている。図9(a)、(b)に示すように、反射型光学センサ68aは、1個の発光部E1と、1個の受光部D1とを有している。また、発光部E1は、1個の照射用レンズLE1を有し、受光部D1は、1個の受光用レンズLD1を有している。反射型光学センサ68bも同様の構成で、1個の照射用レンズ(図示せず)を有する1個の発光部E2(図12参照)と、1個の受光用レンズ(図示せず)を有する1個の受光部D2(図12参照)とから構成されている。また、図12(b)に示すように、2つの反射型光学センサ68a,68bは、定着ベルト67の表面において、転写紙115のエッジ部が通過する位置と、エッジ部が通過しない位置の計2箇所に、それぞれ副走査方向のほぼ同じ領域に配置されている。さらに、発光部E1,E2と受光部D1,D2とがそれぞれ同じ向きになるように、主走査方向に並列に配置されている。このような配置により、反射型光学センサ68a,68bでは、定着ベルト67の表面の、副走査方向のほぼ同じ領域に光スポットSP1,SP2が照射され、図12(a)に示すように、定着ベルト67の表面に照射スポットが形成される。
以上のように構成されたプロセスエンジン部100によって画像形成を行ったときに、プロセスエンジン部100で定着ベルト67の傷レベルを検出する処理および転写紙115への傷の転写を防止する処理を、図19のフローチャートを用いて説明する。図19に示す処理は、プリンタの起動中に適宜の時間間隔で繰り返し行われる。この処理の実行により、画像形成持の画像品質を高品質に保つことが可能となる。
(反射光の検出:ステップS1)
まず、本体制御部400の制御により、反射型光学センサ68a,68bの発光部E1,E2から、定着ベルト67の表面に光強度140Vの光スポットSP1,SP2を照射する。光スポットSP1は、図12に示すように、定着ベルト67上で、転写紙115のエッジ部による磨耗がない領域(以下、「摩耗なし部NW」と呼ぶ)に照射され、光スポットSP2は、転写紙115のエッジ部による磨耗がある領域(以下、「摩耗部AW」と呼ぶ)に照射される。これらの光スポットSP1,P2が照射されることで、図12(a)に示すように、定着ベルト67上に2つの照射スポットが形成される。次に、光スポットSP1,SP2が定着ベルト67上で反射した反射光を、受光部D1,D2で受光し、それぞれの光強度(V)を検出値として取得する(以上、ステップS1)。
(商の算出:ステップS2)
次に、本体制御部400では、摩耗部AWでの反射光の検出値を、摩耗なし部NWでの反射光の検出値で除算した値(商)を算出する(ステップS2)。図17に、摩耗なし部NWでの反射光の検出値と、摩耗部AWでの反射光の検出値と、磨耗部での検出値を磨耗なしNW部での検出値で除算した値(商)とを示した。この図17に示すように、磨耗なし部NWからの検出値、および、磨耗部からの検出値は、定着ベルト67の回転周期で大きく変動しているが、磨耗部からの検出値を磨耗なし部NWからの検出値で除算した値は、周期的な大きな変動がなくなっている。これは摩耗部AWからの反射光と摩耗なし部NWからの反射光とが、ほぼ同様の周期的および変動率で変動しているために、摩耗部AWからの検出値と摩耗なし部NWからの検出値との比の変動が抑えられているからであると考えられる。
そのため、摩耗部AWでの検出値を摩耗なし部NWでの検出値で除算した値を傷レベルの判断基準に用いれば、定着ベルト67の回転周期で発生する検知出力変動の影響で、検知精度が劣化するのを大きく抑制することができる。ここで、摩耗部AWでの検出値を摩耗なし部NWでの検出値で除算した値が1に近いほど、摩耗が軽度であると判断され、0に近いほど、摩耗が重度であると判断される。
また、検出値の周期的な変動は、経時的に変わることがあるため、ほぼ同じ時刻、副走査方向にほぼ同じ領域での摩耗なし部NWと摩耗部AWとの互いの検出値の商でないと、検出値の比の変動を抑えることができない場合がある。したがって、ほぼ同時刻に副走査方向にほぼ同じ領域の摩耗部AWと摩耗なし部NWとでの反射光の検出を行い、その検出値の商から、傷レベルを判断する必要がある。
ここで、図17のグラフから、摩耗部AWからの検出値を摩耗なし部NWからの検出値で除算した値に、わずかな周期変動があるのがわかる。これは摩耗部AWと摩耗なし部NWとでの表面状態の副走査方向での違いを示していると考えられる。つまり、図17に示すように、摩耗部AWからの検出値を摩耗なし部NWからの検出値で除算した値に、定着ベルト67の回転周期で小さな値が得られたなら、定着ベルト67において、その小さい値が得られる転写紙115のエッジ部の通過部の副走査方向位置に、他の副走査方向位置よりも程度の大きい傷が存在することになる。
(商が所定値以下であるかの判定:ステップS3)
そのため、本実施例では、摩耗部AWからの検出値を摩耗なし部NWからの検出値で除算した値が、ある許容値(閾値)以下であるか判定する(ステップS3)。許容値以下になったならば、傷が大きい箇所が存在するとして、ステップS4以降の処理を行う。これに対して、許容値を超えていれば、傷の程度が小さく、画像品質に影響がないものとして、ステップS4以降の処理をスキップする。なお、図18に示すように、本実施例では商の最大値と最小値との中間の値を許容値(閾値)としている。
(商が所定値以下である場合の処理:ステップS4,S5)
摩耗部AWからの検出値を摩耗なし部NWからの検出値で除算した商が所定値以下である場合、前述したように、エッジ部の通過による定着ベルト67の表面の摩耗(縦筋状の傷)が進行したことを意味する。この摩耗の進行により、次に転写紙115を用いて定着を行った際に、画像表面に光沢スジが現れることで、画像品質が劣化してしまう。この問題を解消するために、本実施例では、所定値以下の値が検出された定着ベルト67の副走査方向の位置には、転写紙115が通過しないように制御している。
具体的には、定着ベルト67を介在した定着ローラ66と加圧ローラ63とのニップ部69において、定着ベルト67の摩耗が大きい位置(幅走査方向において許容値以下の値が検出された位置)が、当該ニップ部69を通過するタイミングを算出する(ステップS4)。そして、このタイミングでは、転写紙115がニップ部69を通過しないように、本体制御部400がニップ部へ69の転写紙115の搬送速度や搬送タイミングを制御する(ステップS5)。
以上、第1実施例のプリンタでは、副走査方向でほぼ同じ位置において、摩耗部AWと摩耗なし部NWとの検出値の商によって摩耗状態を検知している。そのため、定着ベルト67の摩耗の周期的な変動、すなわち、副走査方向で表面状態が不均一であること、内部応力が不均一であること、定着ベルト67につなぎ目があること、など検出位置の違いに影響されることがない。その結果、表面状態の変化を高精度に検知することが可能となり、画像品質の一層の向上を図ることができる。さらに、本実施例では、定着ベルト67の摩耗状態を周期的に検知しているため、定着ベルト67の副走査方向で摩耗の大きい領域があった場合は、その領域を転写紙115が通過しないように制御することができる。したがって、本実施例では、定着ベルト67の傷が転写紙115に転写されることがなく、傷の大きい領域の影響を受けずに定着を行うことができ、画像品質を向上させることができる。
なお、第1実施例では、定着ベルト67の傷の発生を検知したときに、転写紙115がニップ部69を通過するタイミングで、傷の大きい領域を転写紙115が通過しないように搬送タイミング等を制御することで、画像品質を向上させている。しかし、画像品質を向上させるための手段は、これに限定されることはなく、例えば、特許文献2に記載のような手段を用いてもよい。この特許文献2の画像形成装置では、露光装置の制御により、大きな傷に相当する部位に、当該傷の周囲に相当する部位よりも多量のトナーを付着させている。この状態で定着を行うことで、定着後の画像での傷跡による筋状光沢ムラを目立たなくすることができる。
また、上記2つの手段を組み合わせてもよい。例えば、当初は定着ベルト67の傷の大きい位置を転写紙115が通過しないように制御する。そして、定着ベルト67の副走査方向に、全体的に傷が発生した場合には、トナーの増量によって光沢ムラの発生を抑制するような構成とする。このような構成とすることで、画像品質の向上を図るだけでなく、トナーの増量だけで傷への対処を行う場合に比べて、トナーの使用量を低減させることが可能となる。そして、定着ベルト67の傷の進行がさらに進行した場合のみ、定着ベルト67を交換するようにすれば、定着ベルト67の交換回数を少なくすることができる。このように、優れた画像品質を維持できるとともに、維持コストの削減も可能となる。
また、第1実施例では、発光部E1,E2と受光部D1,D2とを備えた2つの反射型光学センサ68a,68bを用いるだけで、定着ベルト67の傷レベルの高精度な検知が可能となる。そのため、摩耗状態の検知を低コストで実施することができる。
<第2実施例>
以下、第2実施例に係る画像形成装置について説明する。第2実施例の画像形成装置の構成は、プロセスエンジン部において反射型光学センサの光源の個数を変えたこと以外は、第1実施例の画像形成装置と同様の構成を有している。そのため、第1実施例と同じ構成については、同一の符号を付し詳細な説明は省略する。以下、図10を用いて、第1実施例と異なる第2実施例の反射型光学センサ168について説明する。
図10は、定着ベルト67の傷を検知するための、第2実施例における反射型光学センサ168の概略図であり、図10(a)は側面図を、図10(b)は平面図を示す。第1実施例では、それぞれ1組の発光部等を有する2つの反射型光学センサ68a,68bを用いているが、第2実施例では、複数組の発光部等を有する1つの反射型光学センサ168を用いている。すなわち、第2実施例の反射型光学センサ168は、直列に配置された11個の発光部E1〜E11と、11個の受光部D1〜D11とを有している。発光部E1〜E11は、それぞれ照射用レンズLE1〜LE11を有し、受光部D1〜D11は、それぞれ受光用レンズLD1〜LD11を有している。発光部E1〜E11と照射用レンズLE1〜LE11、および、受光部D1〜D11と受光用レンズLD1〜LD11の各セットが、主走査方向に配列されるように設置される。発光部E1〜E11は、瞬時間隔で順次に発光されるため、定着ベルトの副走査方向のほぼ同じ領域に照射スポットが形成される。発光部E1を発光させたら、受光部D1で受光するといったように、それぞれの発光部E1〜E11を発光させた時は、それぞれ対応する受光部D1〜D11で受光される。なお、図10(a)にスポット光と反射光との光路を矢印で表示している。このように、発光部E1〜E11から照射用レンズLE1〜LE11を介して定着ベルト67の表面に光スポットが照射され、その反射光が受光用レンズLD1〜LD11を介して受光部D1〜D11に受光されるように、発光部E1〜E11は照射用レンズLE1〜LE11の光軸からΔdずれた位置に配置され、受光部D1〜D11は受光用レンズLD1〜LD11からΔd’ずれた位置に配置されている。
第2実施例の反射型光学センサ168は、図13〜図15に示すように、発光部E1〜E11から定着ベルト67に照射される、いずれかの光スポットSP1〜SP11の照射位置が、定着ベルト67上の、用紙幅方向のエッジ部の通過位置(摩耗部AW)を含む領域に形成されるように設置されている。このような配置により、図13〜図15に示すように、摩耗部AWが定着ベルト67のいずれの位置に発生しても、摩耗部AWと摩耗なし部NWとに光スポットを確実に照射することができる。すなわち、図13に示す例では、発光部E8からの光スポットSP8に対応する照射スポットの形成位置が、摩耗部AWを含む領域に形成され、その他の発光部E1〜E3、E5〜E11からの光スポットSP1〜SP3、SP5〜SP11に対応する照射スポットの形成位置が、摩耗なし部NWに形成される。同様に、図14に示す例では、発光部E8、E9からの光スポットSP8,SP9に対応する照射スポットの形成位置が、摩耗部AWを含む領域に形成される。図15に示す例では、発光部E4〜E8からの光スポットSP4〜SP8に対応する照射スポットの形成位置が、摩耗部AWを含む領域に形成される。
このような反射型光学センサ168によって定着ベルト67に発生した傷レベル(摩耗状態)を検知する手順の一例を図15、図16を用いて説明する。図15に示すように、発光部E1〜E11から、定着ベルト67の表面に11個の光スポット列(SP1〜SP11列)を照射し、各光スポットSP1〜SP11が定着ベルト67の表面で反射した反射光の検出値が、図16に示すグラフのような分布となったとする。この場合、11個の検出値の最小値であるSP7の検出値で、最大値であるSP2の検出値を除算した値を算出するようにすれば、定着ベルト67の回転周期での検出値変動の影響を大きく抑制した状態で、傷レベルを検知することが可能となる。
また、図15において、発光部E3〜E9を順次に発光させる場合、発光部E3を発光させたら、反射光を受光部D3で受光するか、または、受光部D2とD3とD4とで受光するか、もしくは、受光部D1とD2とD3とD4とD5とで受光するように構成してもよい。その他の発光部E4〜E9を発光させた場合も、同様に受光部を一つずつずらして受光する。このように、反射光を複数の受光部で受光させることによって、受光面を大きくし、光利用効率を向上させることができる。
また、図16に示すように、11個の検出値の最小値であるSP7の検出値を、予め設定された閾値A以上の検出値(SP1、SP2、SP3、SP9、SP10、SP11:摩耗なし部NWでの検出値)の平均値で除算した値に基づいて、摩耗状態(傷レベル)を判断してもよい。このように摩耗部AWの最大の検出値を摩耗なし部NWの平均値で除算した値に基づいて摩耗状態を判断すれば、摩耗部AWの中で最も摩耗の程度が進んだ領域で摩耗のレベルを判断することができる。さらに、摩耗なし部NWの複数の検出値の平均値を基準としていることで、摩耗なし部NWの狭い領域の影響が少ない(すなわち、一か所のみなどの狭い領域での検出値の変動に影響されない)状態で、かつ、定着ベルト67の回転周期での検出値の変動の影響を、大きく抑制した状態で、摩耗状態を検知することが可能となる。
または、図16において、予め設定した閾値範囲の上限をAとし、下限をCとした場合(A≧C)、閾値の下限C以下の検出値(SP5、SP6、SP7:摩耗部AWでの検出値)の平均値を、閾値の上限A以上の検出値(SP1、SP2、SP3、SP9、SP10、SP11:摩耗なし部NWでの検出値)の平均値で除算した値に基づいて、摩耗状態を判断してもよい。このように摩耗部AWの平均値を摩耗なし部NWの平均値で除算した値に基づいて摩耗状態を判断すれば、摩耗部AWの中で平均的な傷の程度を検出することができる。さらに、摩耗なし部NWの複数の検出値の平均値を基準としていることで、摩耗なし部NWの狭い領域での表面状態の変動の影響が少ない状態で、かつ、定着ベルト67の回転周期での検出値変動の影響を大きく抑制した状態で、摩耗部AWの平均的な摩耗状態を検知することが可能となる。
また、定着ベルト67上において、主走査方向に11個の光スポットSP1〜SP11(スポット径:1mm)が照射されるように反射型光学センサ168を設置し、定着ベルト67を線速350mm/sで回転させ、発光部E1〜E11を286μS間隔で順次に発光させてもよい。この場合、副走査方向の定着ベルト67の表面に形成される光スポットSP1の照射スポットの中心と、光スポットSP11の照射スポットの中心との位置変動(ずれ)をΔZとしたときに、図13〜図15に示すように、位置変動ΔZを、光スポットのスポット径にほぼ等しい1mm以内にて、副走査方向のほぼ同じ領域(すなわち、照射スポットが副走査方向で重なる領域)に照射することができる。したがって、摩耗部AWでの検出値を、磨耗なし部NWでの検出値で除算した値を求めれば、周期的な検出値変動の影響を大きく抑制した状態で摩耗状態を検出することができる。また、隣接する光スポットからの散乱光の影響を受けることがなく、検出誤差を小さくすることができる。
また、定着ベルト67上に、主走査方向に11個の光スポットSP1〜SP11(スポット径:1mm)が副走査方向の同じ位置に照射されるように、反射型光学センサ168を設置し、定着ベルト67を回転させ、発光部E1〜E11を同時に発光させてもよい。この場合、各々の発光部E1〜E11から照射された光スポットSP1〜SP11からの反射光は、それぞれ対応する一つの受光部D1〜D11で検出することになる。しかし、各光スポットSP1〜SP11に対応する照射スポットは、副走査方向の同じ位置に形成されるため、摩耗部AWでの検出値を、磨耗なし部NWでの検出値で除算した値は、周期的な検出値変動の影響を受けずに、摩耗状態を検出することができる。
以上、第1、第2実施例について説明したが、これらの実施例は一例であって、本願がこれらの実施例に限定されるものではない。定着手段の傷レベル(摩耗状態)を高精度に検知することが可能な構成であれば、本願の課題を解決できるものである。