本願に係る反射型光学センサは、記録媒体に画像を形成する画像形成装置に用いられ、移動体の表面状態を検知する反射型光学センサであって、発光部を有する複数の照射系、および、複数の照射用レンズを有する照射光学系からなる照射手段と、移動体で反射された反射光を受光する受光部を有する受光系、および、受光部に対応する受光用レンズを有する受光光学系からなる受光手段と、を備えて構成される。
また、照射用レンズと受光用レンズとは、一体化しているため、各レンズを反射型光学センサに組み付ける際の作業性を向上させるとともに、レンズ面間の配置精度を高めることができる。また、この一体化の際は、すべての照射用レンズと受光用レンズとを一体化して形成するのが好ましいが、いくつかの照射用レンズと受光用レンズとが一体化したものを、複数配置する構成などであってもよい。
また、複数の照射用レンズと受光用レンズとは、光軸方向に対してレンズ中心が異なる位置となるように配置されている。このような構成により、各受光部における受光量を維持しつつ、反射型光学センサに対する移動体(検知面)の角度ばらつき(特に、あおり角のばらつき)に起因する、受光部の出力変動を抑制することができる。
また、照射用レンズと受光用レンズとの境界部に、光軸方向に対して平行な平坦部(段差)を設けることで、この平坦部で光が反射されるため、移動体の表面状態の検知に必要な検出光以外の光(以後、「ゴースト光」と呼ぶ)を低減させることができる。したがって、本願に係る反射型光学センサは、光学性能に優れ、画像形成装置等に好適に用いることが可能である。なお、ここでいう「平行な平坦部」とは、光軸方向に対して厳密に平行な平坦面であることは勿論だが、凹凸や傾き等の多少の誤差はあっても、実質的にほぼ平行な平坦面であることも含むものとする。以降に記載のように、光を反射して、移動体の表面状態の検知に必要な検出光以外の光を低減させる作用があればよい。
また、本願に係る反射型光学センサにおいて、照射系の発光部は、対応する照明用レンズの光軸に対して線対称に配置されていることが好ましい。この構成により、移動体の表面に、ほぼ等間隔で光を照射することができ、移動体上の均一な検知が可能となる。なお、ここでいう線対象には、厳密な線対象だけでなく、ほぼ線対象であることも含むものとする。
また、本願に係る反射型光学センサは、受光用レンズが、照射用レンズと比較し、光軸方向に対して受光系から離れた位置に配置されていることが好ましい。各照射用レンズに比べて、受光用レンズをレンズの光軸方向に対して照射系側から大きく遠ざかる位置に配置することで、受光用レンズの曲率半径を大きくすることが可能となる。そのため、受光用レンズのレンズ端部での光学性能の劣化を良好に抑制することができる。その結果、特に移動体が画像を定着させる定着部材である場合、該定着部材のあおり角のばらつきに起因する、反射型光学センサの受光部出力の変動を、より良好に低減することができる。
また、本願に係る反射型光学センサにおいて、受光用レンズは、光を一軸方向にのみ集束させるシリンドリカルレンズであることが好ましい。このように、受光用レンズを単一のシリンドリカルレンズにすることで、個々のレンズ間のレンズパラメータ(例えばレンズ曲率半径、レンズ位置、レンズ厚など)のばらつきがなくなる。そのため、移動体の表面状態をより精度よく検知することができる。
また、受光用レンズを、主走査方向にはパワーのないシリンドリカルレンズとすることで、球面レンズの場合に比べて、点灯する照射系の違いによる受光部での受光量分布の変化を抑制することができる。そのため、移動体の表面状態をより高精度に検知することが可能となる。
また、本願に係る反射型光学センサにおいて、照射系と照明光学系との間に、開口部を設けることが好ましい。このように開口部を設けることで、点灯する任意の照射系に対応する照射用レンズ以外の、他の照射用レンズを透過して移動体に照射される光、さらには、点灯する任意の照射系に対応する照射用レンズや点灯する任意の照射系に対応する照射用レンズ以外の、他の照射用レンズのレンズ面からの直接の反射光(以後、これらの光を「フレア光」という)が、受光部に直接入射することを防ぐことができる。そのため、移動体の表面状態をより精度よく検知することができる。また、開口部を設ける際には、平坦部の段差を基準面として用いることできるため、開口部の位置精度が向上し、反射型光学センサの光学性能を向上させることができる。
また、本願に係る反射型光学センサは、複数の照射系の発光部から、移動体の表面に、光スポットを順次に照射することが好ましい。このように、複数の光スポットを順次に照射することにより、同時に照射する場合に比べて、クロストーク(1つの受光部から見たとき、複数の照射系からの反射光を同時に受光してしまうこと)がなくなる。そのため、主走査方向において各光スポットが照射される位置に対して得られる検知結果の検知精度を、向上させることができる。
または、本願に係る反射型光学センサは、複数の照射系の発光部から、移動体の表面に、光スポットを同時に照射してもよい。このように、複数の光スポットを同時に照射することで、順次に照射する場合に比べて、ライン周期(すべての照射系を点灯させるのに要する時間のこと)を短縮させることができる。短時間で検出できるため、移動体の表面の傷を確実に検知することも可能となる。なお、このような順次照射と同時照射とは、反射型光学センサの使用目的、傷の程度、使用環境等に応じた、好適なものを選択するのが好ましい。
また、本願に係る反射型光学センサを、移動体が搬送する記録媒体の端部位置またはその近傍に対して部分的に配置するか、或いは、記録媒体の幅全域に亘って配置してもよい。このような配置により、記録材として小サイズの用紙を使用した場合、その端部を含む検知領域を小さくすることができるため、反射型光学センサの小型化が可能となる。
また、本願に係る反射型光学センサは、複数の照射系の配列方向の長さと、該配列方向における移動体の長さとが、同一であることが好ましい。この構成により、反射型光学センサの主走査方向長さを、種々の用紙サイズに対応可能なように十分大きくすることとなり、用紙サイズによって移動体上の異なる場所に傷が出現しても、確実に検出することが可能となる。また、互いの長さは、厳密に同一であるのが好ましいが、ほぼ同一であればよく、漏れのない検知が可能となる。
本願の画像形成装置は、画像を記録媒体に定着させる移動体の表面状態を検出する反射型光学センサとして、上述したような光学性能に優れた反射型光学センサを使用している。そのため、移動体の表面の傷を精度良く検出することができ、高精度な画像品質を維持することが可能となる。また、移動体の交換回数を少なくして、維持費等の低コスト化が可能な画像形成装置を提供することができる。
また、本願に係る画像形成装置において、移動体が、無端ベルト状の定着ベルトであることが好ましい。定着ベルトは、表層にPFA等の表面硬度が高い材料を用いているため、表面が特に傷つきやすい。しかし、本願の画像形成装置では、前述のような反射型光学センサを用いていることで、定着ベルトの表面状態を高精度に検知して、傷の発生を迅速に知ることができる。そのため、傷の存在領域を記録材が通過しないようにするなどの対応が可能となり、定着ベルトの交換時期を長くすることができ、定着ベルトを有効に使いこなすことが可能となる。
<第1実施例>
以下に、本願の第1実施例に係る画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。本実施例は、画像形成装置として、タンデム型のフルカラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という)に適用した場合の例である。なお、本願でいう画像形成装置は、プリンタに限らず、複写機やファクシミリ装置あるいは印刷機さらにはこれら各機能を複合させた装置を含むものである。本実施例のプリンタは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナーを用いて画像形成を行うもので、各色に対応した部材が各々設けられている。以下、本明細書の説明および図面では、符号の末尾に、イエロー用の部材はYを、マゼンタ用の部材はMを、シアン用の部材はCを、ブラック用の部材はBKを付して表示または説明する。
図1に示すように、本実施例のプリンタ100は、像担持体としての感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKを並設したタンデム構造が採用されている。これらの感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKは、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に色分解された色に、それぞれ対応する像(画像)を形成可能となっている。
本実施例のプリンタの構成について、その概略を説明する。本実施例のプリンタ100は、図1に示すように、像担持体としての感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKに対して、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの色ごとに帯電、現像処理行う4つの画像ステーション1Y,1C,1M,1BKと、露光手段(光書き込み手段)としての光走査手段8と、転写手段としての転写ベルトユニット10および2次転写ローラ5と、中間転写ベルトクリーニング手段13と、定着手段としての定着ユニット6と、反射型光学検知手段としての反射型光学センサ200(図2参照)と、表面状態判定手段300(図2参照)と、を有して構成されている。
また、プリンタ100は、記録媒体としての記録紙Sの給紙カセットとしてのシート給送手段80と、記録紙Sを搬送する一対のレジストローラ4と、記録紙Sの先端が一対のレジストローラ4に到達したことを検知するセンサ(図示せず)とを、さらに有している。シート給送手段80は、感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKと後述の中間転写ベルト11との間に向けて搬送される記録紙Sを積載している。一対のレジストローラ4は、画像ステーション1Y,1C,1M,1BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、シート給送手段80から搬送されてきた記録紙Sを、各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKと中間転写ベルト11との間の転写部に向けて繰り出す。
また、プリンタ100には、定着ユニット6にて定着済みの記録紙Sをプリンタ100の本体外部に排出する排紙ローラ7と、排紙トレイ17と、トナーボトル9Y,9C,9M,9BKとが備えられている。定着ユニット6は、トナー像が転写された記録紙Sに、トナー像を定着させるものである。排紙トレイ17は、プリンタ100の本体上部に設けられ、排紙ローラ7によりプリンタ100の本体外部に排出された記録紙Sを積載する。トナーボトル9Y,9C,9M,9BKは、排紙トレイ17の下側に位置し、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーが充填されている。
転写ベルトユニット10は、感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKの上方に対向して設けられ、中間転写ベルト11および1次転写ローラ12Y,12M,12C,12BKを備えている。2次転写ローラ5は、中間転写ベルト11に対向して設けられた転写ローラであり、中間転写ベルト11に従動して連れ回りする。中間転写ベルトクリーニング手段13は、中間転写ベルト11に対向して設けられ、中間転写ベルト11の表面をクリーニングする。光走査手段8は、4つの画像ステーション1Y,1C,1M,1BKの下方に対向して配置されている。
転写ベルトユニット10は、中間転写ベルト11、1次転写ローラ12Y,12C,12M,12BKの他に、中間転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ72および従動ローラ73を有している。
従動ローラ73は、中間転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えている。そのため、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段74が設けられている。このような転写ベルトユニット10の1次転写ローラ12Y,12C,12M,12BKおよび2次転写ローラ5と、中間転写ベルトクリーニング手段13とで第2の転写手段71が構成されている。
第1の転写手段である中間転写ベルト11(第2の像担持体としても機能する)は、各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKに対向した位置に配置され、感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKに形成された可視像が転写されて、図1の矢印A1方向に移動可能となっている。また、中間転写ベルト11として、無端ベルトが用いられている。中間転写ベルト11に対して、1次転写工程を実行してそれぞれの画像が重畳転写され、その後、記録シートなどが用いられる記録紙Sに対して、第2の転写手段71によって2次転写工程を実行することで一括転写されるようになっている。
上記の中間転写ベルト11に対する重畳転写とは、中間転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BK上に形成された可視像が、中間転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されることをいう。このような重畳転写が可能となるよう、中間転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKに対向して、1次転写ローラ12Y,12C,12M,12BKが配置されている。1次転写ローラ12Y,12C,12M,12BKによる転写は、電圧印加によって、A1方向の上流側から下流側に向けて、タイミングをずらして行われる。
第2の転写手段71に装備されている中間転写ベルトクリーニング手段13は、詳細な図示を省略するが、中間転写ベルト11に対向し、かつ、当接するように設けられたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有している。これらのクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより、中間転写ベルト11上の残留トナー等の異物を掻き取ることで除去して、中間転写ベルト11をクリーニングする。また、中間転写ベルトクリーニング手段13は、中間転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段(図示せず)を有している。
このように、図1に示す構成のプリンタ100は、中間転写ベルト11に対して各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKで形成された画像を順次転写することで、色画像が重畳されたものを2次転写ローラ5により記録紙Sに一括転写する方式である。しかしながら、本願の画像形成装置がこれに限定されることはなく、このような方式に代えて、中間転写ベルト11に記録紙Sを担持し、この記録紙Sを各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKに対峙させて各色の画像を直接記録紙S上で重畳する方式とすることも可能である。
イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの画像をそれぞれ形成するための感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKは、A1方向の上流側からこの順で並んでいる。感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKの周囲には、これらの回転に従い、帯電、現像処理を行うための画像ステーション1Y,1C,1M,1BKが配置されている。この画像ステーション1Y,1C,1M,1BKとして、感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKの回転方向に沿って、帯電手段30Y,30C,30M,30BK、現像手段40Y,40C,40M,40BKY、1次転写ローラ12Y,12C,12M,12BK、および、クリーニング手段50Y,50C,50M,50BKが配置されている。また、帯電後に行われる書き込みには、光走査手段8が用いられる。
本実施例における光走査手段8は、書き込み光Lbの光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、ミラーおよび回転多面鏡などを備えている。カップリングレンズはレーザ光を略平行光束に変換するレンズであり、この略平行光束(書き込み光Lb)は、回転多面鏡の偏光反射面によって偏光され、fθレンズ、トロイダルレンズ、ミラーを介して、感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKの上面に光スポットとして照射される。この光スポットは、回転多面鏡の回転に伴って、感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKの表面に対して長手方向に移動することで、その表面を走査する。このように、光走査手段8は、各感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKに対して、各色に対応した書き込み光Lbをそれぞれ出射して、これらの感光体ドラム20Y,20C,20M,20BKの表面に静電潜像を形成するよう構成されている。
シート給送手段80は、プリンタ100の本体下部に設けられており、最上位の記録紙Sの上面に当接する給送ローラ3を有している。この給送ローラ3が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の記録紙Sを一対のレジストローラ4に向けて給送するようになっている。
定着ユニット6は、ベルト定着方式が用いられており、このための構成として、定着ベルト61と、この定着ベルト61が掛け回されて熱源を有した加熱ローラ62と加圧ローラ63と、加圧ローラ63と対向して定着ベルト61が掛け回されている定着ローラ64と、などが備えられている。この定着ユニット6の構成については、以下で詳細を説明する。
図2は、定着ユニット6の構成を示す図である。図2に示すように、定着ユニット6は、加圧体としての加圧ローラ63と、移動体としての定着ベルト61と、定着ベルト61が掛け回されている加熱ローラ62と、加圧ローラ63と対向して定着ベルト61が掛け回されている定着ローラ64と、定着ベルト61に張力を付与するテンションローラ65と、ニップ部の記録紙Sの進行方向下流に設けられた分離爪67と加熱ローラ62上の定着ベルト61の温度を検知する温度センサ(図示しない)と、を有して構成されている。以下、定着ベルト61が掛け回されている加熱ローラ62の軸方向(定着ベルト61の幅方向)を主走査方向といい、定着ベルト61の回転方向を副走査方向という。
加圧ローラ63は、アルミ製または鉄製等の芯金の表面に、シリコーンゴム製等の弾性層が設けてあり、表層にはPFA製またはPTFE製の離型層が備えられている。定着ベルト61は、ニッケル、ポリイミドなどの基材にPFA製またはPTFE製等などの離型層を有するもの、または、その中間にシリコーンゴムなどの弾性層を設けたもので構成されている。定着ベルト61は、定着ローラ64と加熱ローラ62とに掛け回されており、外部からテンションローラ65で適切な張力に保たれている。また、定着ローラ64は、金属製の芯金にシリコーンゴムを有したものである。加熱ローラ62は、アルミ製または鉄製の中空ローラで内部にハロゲンヒータなどの熱源Hを有している。
このような部材を備えて構成された定着ユニット6には、定着ローラ64と加圧ローラ63とにより、記録紙Sを挟持しながら搬送するためのニップ部66が形成されている。このニップ部66に向かって、下方から記録紙Sが進入する。記録紙Sが進入すると、ニップ部66では、所定の圧力と熱とを与えることで記録紙S上の画像を定着させる。
テンションローラ65は、金属製の芯金にシリコーンゴムを有したものである。分離爪67は、鋭角な先端側の頂点が、定着ローラ64の表面に当接しており、定着ローラ64の軸方向(紙面に垂直な方向)に複数個設けられている。また、定着ユニット6の温度監視を行うための温度センサとして、定着ベルト61とは当接しない、非接触型温度センサ(サーモパイル)が1つ設けられている。なお、本願がこれに限定されることはなく、定着ベルト61と当接する接触型温度センサ(サーミスタ)を用いることも可能である。
この定着ユニット6で、図4に示すように、例えば、A4サイズ用紙を縦通紙の状態で定着を繰り返すと、定着ベルト61の表面上では、A4縦通紙の用紙幅方向の両側のエッジ部が通過する位置に縦筋状の傷が発生することがある。これはエッジ部の端面に付着した紙粉により、定着ベルト61の表面が摩耗することによって生じる。このとき、A4縦通紙の定着後に、A4横通紙またはA3縦通紙の定着が実施された際に、この縦筋状の傷に対応して画像表面に光沢スジが現れ、このままでは画像品質の劣化を生じてしまう。
この問題を解消するため、本願では反射型光学センサ200と表面状態判定手段300とを用いて、定着ベルト61の表面状態を判定している。図3に、反射型光学センサ200と表面状態判定手段300との配置状態の概略を示す。この図3に示すように、反射型光学センサ200は、加熱ローラ62上の定着ベルト61に対向して配置されている。
反射型光学センサ200は、定着ベルト61の表面に向かって主走査方向に複数の光スポットを照射し、該定着ベルト61からの反射光を受光するセンサである。表面状態判定手段300は、反射型光学センサ200に接続され、プリンタ100内に配置されており、反射型光学センサ200からの検知信号を受けて定着ベルト61の表面状態を判定する。
表面状態判定手段300として、プリンタ100の各部を駆動制御する本体制御手段を併用してもよい。本体制御手段は、各種演算や各部の駆動制御を実行するCPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラム等の固定的データを予め記憶するROM(Read Only Memory)、各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)等を備えて構成されている。なお、本願がこれに限定されることはなく、本体制御手段とは別個の制御手段等を用いて、表面状態判定手段300としてもよい。
また、図4は、図3を、加熱ローラ62の軸(主走査方向)に垂直な方向から見た図を示している。この図4に示すように、反射型光学センサ200は、定着ベルト61の表面上の主走査方向において、A4縦通紙の用紙幅方向の端部(以下、端部を「エッジ部」という)の片側に、1つ配置されている。また、反射型光学センサ200は、主走査方向に複数の光スポットを照射することにより、定着ベルト61の表面上に長い検知領域Aを形成している。このように、反射型光学センサ200は、長い検知領域Aを形成できるため、反射型光学センサ200と用紙エッジ部の主走査方向の相対位置関係は、厳密でなくてもよい。
表面状態判定手段300は、反射型光学センサ200からの検知信号を受け取ることにより、主走査方向に長い検知領域Aの表面状態を検知することができる。そして、用紙エッジ部が検知領域Aに含まれるとき、用紙エッジ部により形成される縦筋状の傷レベルと傷の位置との双方または何れかを定着ベルト61の表面状態として定量化する。定量化の詳細は、後述する。ここで、傷レベルとは傷の程度を表している。すなわち、傷の深さ(粗さ)や傷の幅(大きさ)のことを言う。
[反射型光学センサの構成]
図5に、第1実施例に係る反射型光学センサ200(200a)の概略を示す。図5中、x方向は定着ベルト61の主走査方向とし、y方向は副走査方向とし、zはxy平面に垂直な方向であって、反射型光学センサ200aが定着ベルト61に対向する方向とする。以降の実施例、比較例でも同様である。
図5(a)は、第1実施例の反射型光学センサ200aを主走査方向(x方向)に観察した断面図である。この図5(a)に示すように、第1実施例の反射型光学センサ200aは、発光部(すなわち、照射系)としての発光ダイオード(以下、「LED」と呼ぶ)211a、および、放射された光を定着ベルト61表面に導いて、光スポットSPを照射するように配置された照射用レンズ221aを有する照射光学系と、定着ベルト61から反射された反射光を導光するように配置された受光用レンズ222aを有する受光光学系と、受光用レンズ222aで導光された反射光を受光する受光部としてのフォトダイオード(以下、「PD」と呼ぶ)212aを有する受光系と、LED211aおよびPD212aを支持する基板210aと、基板210aおよびレンズアレイ220aを保持するケース240aと、から構成される。また、照射用レンズ221aと受光用レンズ222aとの境界部には、光軸方向に平行な平坦面からなる平坦部(段差)223aが形成されている。
また、レンズアレイ220aは、複数の照射用レンズ221aと1つの受光用レンズ222aとが二次元にアレイ状に配列されて一体に形成されたものである。
図5(b)は、図5(a)の反射型光学センサ200aを副走査方向(y方向)に観察した概略断面図である。また、図6は、図5(a)の反射型光学センサ200aのPD212aおよび受光用レンズ222aを副走査方向(y方向)に観察した概略断面図である。図7は、反射型光学センサ200aについて、照射用レンズ221aと受光用レンズ222aとを、より詳細に示した図である。また、図8は、LED212aとPD212aとを支持する基板の平面図である。なお、図5(a),(b)、図6に示す概略断面面図では、反射型光学センサ200aの内部を説明する都合上、ケース240aの紙面前側を除去し、かつ、後方の部材を省略して表わしている。以降の実施例、比較例でも同様である。
図5(b)、図8に示すように、LED211aは、主走査方向に複数個配置されている。また、4個のLED211aに対応して、1個の照射用レンズ221aが配置されている。照射用レンズ221aの主走査方向におけるレンズ径は、本実施例では、一例として、2.4mmとしている。この場合の4個のLED211aの主走査方向の配列ピッチを、P(図8参照)とする。また、図5(b)に点線で示すように、4個のLED211aは、照射用レンズ221aの光軸に対して、互いに線対象となる光を有している。本実施例では、各ユニット中で1番目のLEDからの光と4番目のLEDからの光とが、光軸に対して線対象であり、2番目のLEDからの光と3番目のLEDからの光とが、光軸に対して線対象となっている。そのため、図5(b)に示すように、定着ベルト61の表面に、ほぼ等間隔(間隔P’’)で光スポットSP列を照射することができる。
ここで、反射型光学センサで、定着ベルトの表面状態を検出する際、定着ベルトの波うちやばたつき、定着ベルトのカール癖等の影響を受け、反射型光学センサに対する検知面の距離や角度ばらつきが生じる場合がある。これらを完全に排除することは困難である。このように、仮に、反射型光学センサと検知面の距離や角度ばらつきが生じると、定着ベルトの表面状態を検出する際に正しい出力を読み取れないため、正確な検知ができなくなる。したがって、従来は、反射型光学センサに対する検知面の距離や角度ばらつきのうち、定着ベルトの波うちに起因する角度ばらつき(以下、「あおり角」と呼ぶ)の影響が特に大きいという問題があった。
そこで、第1実施例の反射型光学センサ200aでは、照射用レンズ221aとして、図5(a),(b)に示すように、主走査方向と副走査方向に異なるパワーを持つアナモフィックレンズを用いている。このようなアナモフィックレンズを用いることで、定着ベルト61上での主走査方向の光スポットSPのスポット径(ビーム径)を、所望の状態に維持しつつ、レンズの副走査方向の曲率半径を適正化することができる。そのため、受光用レンズ222aに入射する反射光の副走査方向のビーム径を小さくし、定着ベルト61の波うちに起因するあおり角のばらつきが生じた場合の受光部出力の変動を低減させることができる。その結果、反射型光学センサ200aの検出精度の劣化を防いで、優れた光学性能を保持可能となっている。
第1実施例の反射型光学センサ200aは、後述の比較例の反射型光学センサ200’と比べて、以下の3つ点で異なる。特に、以下の(2)が、第1実施例の主な特徴点である。
(1)遮光壁が設けられていない。
(2)照射用レンズ221aと受光用レンズ222aとは、光軸方向について異なる位置に配置されている。
(3)レンズパラメータ(曲率半径、レンズ径、レンズ厚、照射系と照射用レンズとの中心間距離、受光系と受光用レンズとの中心間距離など)が異なる。
上記(1)の照射用レンズ221と受光用レンズ222aとは、光軸方向において、レンズ中心位置が互いに約0.25mmずれている。そのため、受光用レンズ222aに比べて、照射用レンズ221aは、光軸方向において照射系(LED211a)に近い位置に配置されている。
(3)のレンズパラメータについて具体的に述べると、照射用レンズ221aの主走査方向(図5等のx方向)の曲率半径は4.6mm、主走査方向の円錐定数は0である。照射用レンズ221aの副走査方向(図5等のy方向)の曲率半径は4.3mm、副走査方向の円錐定数は−2.0である。照射用レンズ221aの主走査方向のレンズ径は2.4mm、副走査方向のレンズ径は9.2mm、レンズ厚は6.6mmである。
受光用レンズ222aの主走査方向の曲率半径は50mm、主走査方向の円錐定数は−1.0である。受光用レンズ222aの副走査方向の曲率半径は4.8mm、副走査方向の円錐定数は−1.6である。受光用レンズ222aの主走査方向のレンズ径は17mm、副走査方向のレンズ径は10.9mm、レンズ厚は6.35mmである。
また、副走査方向における照射用レンズ221aおよび受光用レンズ222aの中心間距離(光軸間距離)は、2.53mmである。また、光軸方向における照射系(LED211a)および照射用レンズ221の中心間距離は10.37mmであり、光軸方向における受光系(PD212a)および受光用レンズ222aの中心間距離は10.62mmである。このような寸法とすることで、前述のように、照射用レンズ221aと受光用レンズ222aとは、光軸方向において、レンズ中心位置が互いに約0.25mmずれている。
また、4個のLED211aと1個の照射用レンズ221aとの組を、以後「1ユニット」と呼ぶことにする。この1ユニットが、主走査方向に複数配置されることで、反射型光学センサ200aの照射手段(照射光学系)を構成している。この場合、図8に示すように、1ユニットの主走査方向の配列ピッチをP’とする。また、図8の紙面左から順に、ユニット1、ユニット2、・・・、ユニットLとする。なお、定着ベルト61の検知領域Aの長さに対応して、複数のユニットを配置することができるが、以下の説明を簡素化するため、本実施例および以降の実施例、比較例ではユニット数は7(L=7)とする。
1ユニット内において、各LED211から放射された光は、対応する照射用レンズ221aを介して光スポットSPとして定着ベルト61の表面に照射される。したがって、反射型光学センサ200から主走査方向に、図5(b)に示すように、配列ピッチP’’で複数の光スポットSPが定着ベルト61上に照射されることになる。
図6は、図5(a)の反射型光学センサ200aのPD212aおよび受光用レンズ222aを副走査方向(y方向)に観察した背面図である。この図6、図8に示すように、PD212aは、LED211aに対向して主走査方向に複数個配置されている。このときの主走査方向の配列ピッチはPa’’’である。ここで、第1実施例の反射型光学センサ200aでは、図5、図8に示すように、Pa’’’(PD212aの配列ピッチ)≒Pa’’(光スポットSPの配列ピッチ)≒Pa’(1ユニットの配列ピッチ)/4の関係を満たしている。
この受光用レンズ222aも、主走査方向と副走査方向とに異なるパワーを持つアナモフィックレンズを用いている。そして、定着ベルト61の表面に対して、LED211aから主走査方向に複数の光スポットSPが照射されると、定着ベルト61の表面からの反射光が発生する。しかし、定着ベルト61は光学的な鏡面ではないため、正反射成分に加え、拡散反射成分も含む反射が生じ、反射光の一部が受光用レンズ222aに導光された後、PD212aで受光される。
図8は、LED211aとPD212aとを支持する基板210aを、z方向から観察した平面図である。LED211aは、1ユニット内において主走査方向に配列ピッチPaで整列され、隣接ユニット間では主走査方向に配列ピッチPa’で整列されている。PD212aは、主走査方向に配列ピッチPa’’’で整列されている。また、副走査方向におけるLED211aとPD212aとの間隔をPa’’’’とする。紙面左端からx方向の正の方向に向かって、各LED211aを、LED211a−1,LED211a−2,・・・,LED211a−(N−1),LED211a−N(本実施例では、ユニット数が7であるので、LED211a−1〜LED211a−28)とし、同様にして紙面左端からx方向の正の方向に向かって、各PD212aを、PD212a−1,PD212a−2,・・・,PD212a−(N’−1),PD212a−N’(同様に、PD212a−1〜PD212a−28)とする。
<比較例>
[反射型光学センサの構成]
以下、図10〜図13を用いて、比較例の反射型光学センサ200’の一具体例を説明する。比較例の反射型光学センサ200’の構成は、以下に記載の構成が異なること以外は、第1実施例と同様の構成を有している。第1実施例と同じ構成については、詳細な説明は省略し、異なる構成のみ説明する。
(1)遮光壁230’を設けている。
(2)照射用レンズ221’と受光用レンズ222’とは、光軸方向について同位置に配置されている。
(3)レンズパラメータ(曲率半径、レンズ径、レンズ厚、照射系と照射用レンズとの中心間距離、受光系と受光用レンズとの中心間距離など)が異なる。
図10(a)は、反射型光学センサ200’を主走査方向(x方向)に観察した概略断面図である。図10(b)は、図10(a)の反射型光学センサ200’を副走査方向(y方向)に観察した概略断面図である。また、図11は、反射型光学センサ200’のPD212’および受光用レンズ222’を副走査方向(y方向)に観察した概略断面図である。図12は、反射型光学センサ200’について、レンズアレイ220’を、より詳細に示した図である。図13は、LED211’とPD212’との基板上での配置を示した平面図である。
図10〜図13に示すように、比較例に係る反射型光学センサ200’は、照射系としての発光ダイオード(LED)211’と、放射された光を定着ベルト61表面に光スポットSPを照射するように配置された照射用レンズ221’と、定着ベルト61から反射された反射光を導光するように配置された受光用レンズ222’と、受光用レンズ222で導光された反射光を受光する受光系としてのフォトダイオード(PD)212’と、LED211’およびPD212’を支持する基板210’と、照射用レンズ221および受光用レンズ222’が一体化されたレンズアレイ220’と、基板210’およびレンズアレイ220’を保持するケース240と、フレア光を防止するための遮光壁230と、から構成される。
フレア光を防止するための遮光壁230’は、LED211’と照射用レンズ221’との間であって、主走査方向に複数配置されている。なお、遮光壁230’とケース240’とは、樹脂成形により一体化している。
図12は、反射型光学センサ200’について、レンズアレイ220’部分のみを、より詳細に示した図である。照射用レンズ221’のレンズパラメータを具体的に述べると、照射用レンズ221’の主走査方向の曲率半径は4.6mm、主走査方向の円錐定数は0である。照射用レンズ221の副走査方向の曲率半径は4.3mm、副走査方向の円錐定数は−2.0である。照射用レンズ221’の主走査方向のレンズ径は2.4mm、副走査方向のレンズ径は10.5mm、レンズ厚は6.6mmである。
また、受光用レンズ222’の主走査方向の曲率半径は50mm、主走査方向の円錐定数は−1.0である。受光用レンズ222’の副走査方向の曲率半径は4.8mm、副走査方向の円錐定数は−1.6である。受光用レンズ222’の主走査方向のレンズ径は17mm、副走査方向のレンズ径は10.1mm、レンズ厚は6.6mmである。
また、副走査方向における照射用レンズ221’および受光用レンズ222’の中心間距離(光軸間距離)は2.53mm、光軸方向における照射系および照射用レンズ221’の中心間距離と、光軸方向における受光系および受光用レンズ222’の中心間距離は互いに等しく、10.4mmである。
<第1実施例の反射型光学センサの動作例1>
ここで、反射型光学センサの一動作例について、第1実施例の反射型光学センサ200aを用いて、図14のフローチャートに従って説明する。定着ベルト61上において、光スポットSPを図8のx方向の正の方向に走査させたい場合について、部材ごとに行われる処理を説明する。なお、比較例および以降の実施例についても、動作は同一である。第1実施例では、LED211a−1〜LED211a−28を用いて、ユニット1→2→3→4→5→6→7の順で、かつ、各ユニット内のLEDを、紙面右から左に順に1個ずつ点灯と消灯とを繰り返す、いわゆる順次点灯を行っている。
まず、図14に示すように、ユニット番号の初期値としてL=1(1≦L≦7)を設定する(ステップS10)。次に、ユニットL内のLED211aの点灯順序を管理するカウンタとしてh=0(0≦h≦3)を設定する(ステップS11)。そして、ステップS12で、LED211a−n(nはLED211aの連続番号であって、1≦n≦28の整数である。また、n=4L−hで表される。)の点灯を行う。例えば、処理の一番目、すなわち、L=1、h=0の場合、n=4であるから、ユニット1の紙面一番右のLED211a−4が点灯される。次いで、定着ベルト61で反射した反射光を2m個(mは1≦m≦14の整数)のPD212a−(n−m)〜PD212a−(n+m)で受光する(ステップS13)。受光の詳細については、後述する。その後、LED211a−nを消灯し(ステップS14)、各PD212a−(n−m)〜PD212a−(n+m)から、表面状態判定手段300に検知信号をそれぞれ送信する(ステップS15)。
そして、ステップS16で、h<3か、すなわち、ユニットL内の4つのLED211aすべてについて、ステップS12〜S15の処理が実行されたかを判定する。h<3がyesなら、処理を行っていないLED211aが存在するため、hをカウントアップ(h=h+1)した後(ステップS17)、ステップS12に戻る。そして、次のLED211a−nについて、ステップS12〜S15の処理を繰り返す。一方、n<Nがnoなら、ユニットL内のすべてのLED211aについて処理が完了したため、ステップS18に進む。例えば、ユニット1では、図8の紙面左端のLED211a−1について点灯、消灯、検知信号送信の一連の処理が終わったときに、ユニット1内のすべてのLED211aについて処理が完了したと判定される。
そして、ステップS18では、L<7か、すなわち、すべてのユニットについて、ステップS11〜S17の処理が実行されたかを判定する。L<7がyesなら、処理を行っていないユニットが存在するため、Lをカウントアップ(h=h+1)して(ステップS19)、ステップS11に戻る。一方、L<7がnoなら、すべてのユニットについて処理が完了したため、ステップS20に進む。本実施例では、7番目のユニット7の左端のLED211a−25についての処理が完了したときに、一回の走査(1周期とする)が終了する。最後に、ステップS20では、一連の処理をもう1周期繰り返すか判定し、yesの場合は、ステップS10に戻って、ステップS11〜S19の処理を繰り返す。noの場合は、処理全体を終了する。
次に、光スポットSPがx方向の正の方向に走査されている際の、PD212aの動作(ステップS13)について説明する。n番目(nは1≦n≦N=28の整数)のLED211a−nの点灯に同期して、定着ベルト61からの反射光を複数個のPD212aで受光する。ここでは、簡単のため偶数個のPD212aで受光するように制御している。すなわち、2m個(mは1≦m≦14の整数)のPD212aで受光するものとする。
次に、2m個のPD212aの選択方法について説明する。n番目のLED211a−nが点灯した際、N’個(28個)のPD212aの中で、PD受光量が最大となるPD212aと、該PD212aの次にPD受光量が大きいPD211aとを抽出する。第1実施例のようなPD212aの配置では、これらの2つのPD212aは隣接しており、該2つのPD212aのx方向における中心をX0=0とおくと、残りの2m−2個のPD212aは、次式
X=0±1.5l×P’’’a
の位置に配置されたPD212をそれぞれ抽出する。ここで、Xは、X0からのx方向への相対距離を表し、lは、1,2,・・・,m−1の整数を表し、P’’’aは、第1実施例のPD212aの主走査方向の配列ピッチ(図8等参照)を表す。同様に、以降の第2〜第4実施例では、PD212a,PD212b,PD212c,PD212dの主走査方向の配置間隔として、P’’’b,P’’’c,P’’’dに置き換える。比較例では,P’’’に置き換える。また、1.5は、隣接するPD212a間の中心間距離が変化する場合も想定した係数である。
2m個のPD212aで受光された反射光は、PD212aで光電変換され、検知信号に増幅される。各PD212aで増幅された検知信号は、検出の都度、表面状態判定手段300に送られる。なお、場合によっては、検知精度を上げるために、複数周期に渡って順次点灯を行い、検知結果の平均値処理などを行うことができる。また、点灯/消灯するLED211aは、左端から右端まですべてのN個(28個)を用いる必要はなく、N個のうち任意のN’’’(1≦N’’’≦N=28)個を用いてもよい。このN’’’個を選択する際にも、互いに隣接する一連のLED211aを用いてもよいが、傷の位置、大きさ、定着ベルト61の主走査方向の寸法等に応じて、1個置き、2個置きのLED211aを用いてもよい。また、傷のない領域の1個のLED211aと、傷が現実に発生した領域の1個または数個のLED211aを用いてもよい。また、何れか1つのユニットのみのLED211aを用いてもよい。
<表面状態判定手段の動作>
次に、表面状態判定手段300の動作について、図15のフローチャートを用いて説明する。表面状態判定手段300では、まず反射型光学センサ200aの(2m+1)個のPD212aから検知信号を受信する(ステップS20)。次に、取得した検知信号の和を取ることで、各LED211a−nに対応した検知結果R−nを算出する。すなわち、主走査方向に照射される各々の光スポットSP、言い換えれば、主走査方向の定着ベルト表面上の各位置に対応して、反射光強度を取得することができる(以上、ステップS21)。
次に、定着ベルト61の表面状態を判定する。一般に、定着ベルト61に傷がある場合は、傷がない場合に比べ、定着ベルト61表面からの反射光は正反射成分が減少し、拡散反射成分が増加する。図5等に示す第1実施例の反射型光学センサ200aや、図10等に示す比較例の反射型光学センサ200’の形態においては、正反射成分が減少することにより、PD212a,PD212’にて受光される光量は、その分減少する。また、拡散反射成分が増加することにより、PD212a,PD212’にて受光される光量は、その一部が増加する。その結果、傷がある場合は、傷がない場合に比べ、PD212a,PD212’にて受光される光量は減少することになる。この受光量の変化から、表面状態、すなわち傷レベル、および、傷の位置を算出する。
まず、傷の位置を判定する。第1実施例の反射型光学センサ200aでは、主走査方向の定着ベルト61の表面上の各位置に対応して、反射光強度が得られるので、表面状態判定手段300で、その複数の反射光強度を主走査方向に比較することにより、反射光強度が低下している位置には傷があることが分かる。ここで、比較例の反射型光学センサ200’で得られる反射光強度の模式図を図16(a)に示す。傷の位置は、具体的には、主走査方向に対して反射光強度の微分を取り(ステップS22)、微分値が負から正に大きく変化するゼロクロス位置を求めることで判定することができる(ステップS23)。その反射光強度を微分してゼロクロス位置を求めた模式図を、図16(b)に示す。なお、微分値の絶対値が予め設定した所定の値より小さい場合には、反射光強度の低下が小さいことを示しており、傷はないと判定される。
具体例として、図17(a)に、400,000枚通紙した後の定着ベルト61に対し、N=24、n=3〜22、m=2、LED211’の配列ピッチP=1mmとした比較例の反射型光学センサ200’を用いて得られた検知結果R−nの例を示す(ステップS21)。この比較例の反射型光学センサ200’では、定着ベルト61の表面に、P’=1mmピッチで光スポットSPが照射されるため、図17(a)の横軸は、光スポット照射位置[mm]に相当する。また、図17(b)に、主走査方向に対して微分した結果、具体的にはR−n、R−(n+1)の2点での傾きを算出した結果を示す。もちろん平滑化を目的として、R−(n―1)、R−n、R−(n+1)の3点での傾きを算出することもできる。
図17(b)に基づいて、ゼロクロス位置を求めるとn=12.5となり、LED211’−12およびLED211’−13に対応する光スポット照射位置の中間、12.5mmの位置に傷があると判定することができる(以上、ステップS22〜S24に相当)。
次に、傷レベル(傷の深さ)を判定する(ステップS25)。まず、傷の深さ(粗さ)が深い(粗い)ほど、反射光強度の低下が大きいと定性的に考えられるため、反射光強度の低下量を求めればよい。反射光強度の低下量を表した模式図を、図16(c)に示す。この図16(c)のような場合には、単純に、検知結果R−nの最小値を求めてもよいが、反射型光学センサ200’の取付け位置や定着ベルト61の傾き等の要因により、検知結果R−nに傾き成分が重畳されることもある。そのため、以下のような手順で算出する。
まず、傷のある位置は前述のステップS22〜S23および図17(b)により、n=12.5と判定することができる。これに対して、傷のない位置は、検知結果R−nの変動が小さい位置であり、すなわち、微分値が0付近に集まる位置である。つまり、主走査方向に対して微分した結果から、傷のない位置を算出することができる。傷のある位置n0での検知結果R−n0と、少なくとも2つの傷のない位置n1,n2での検知結果R−n1,R−n2から、反射光強度の低下量を求める一例を示す。
それには、検知結果R−nに重畳される傾き成分を差し引くために、複数の傷のない位置での検知結果を結んだ近似直線と傷のある位置での検知結果との距離を求めればよい。実際に、図17(a)、図17(b)の結果に適用し、反射光強度の低下量を求める。図17(b)に基づいて、傷の位置に対して微分値が小さい±20の範囲で複数点集まっている位置を求めたものが、図18(a)である。この図18(a)より、傷のない位置としてn=6と15とを選択することができる(以上、ステップS26)。
したがって、傷のある位置n0=12.5と、傷のない位置n1=6,n2=15とを抽出し、それぞれの検知結果R−nを用いて、傷の深さ(粗さ)を算出することができる(ステップS27)。図18(b)に示すように、図中の破線はRn−n1とRn−n2とを結んだ直線であり、図中の破線矢印は傷の深さである。この例では傷の深さは63.1である。反射光強度の低下の比率としては、0.16(16%)である。また、図18(b)から、破線で示される傾き成分に、傷の深さが重畳している様子が見て取れる。傷レベルが大きくなるにつれ、この反射光強度の低下が増加していく。
次に、表面状態を判定するための他の異なるパラメータとして、傷の幅(大きさ)を判定する方法を説明する(ステップS28)。まず、傷の中心位置は、前述のS22〜S23および図17(b)により判定することができる。つまり、傷のある位置での検知結果R−nから、傷の深さ(粗さ)に相当する反射光強度の低下量のうちの所定量、例えば50%の低下となる反射光強度を持つ位置を算出すればよい。図19は、図18(b)の縦軸を拡大したグラフである。この結果より、傷の半値幅は3mmと判定することができる(以上、ステップS29)。
以上のような、傷の深さ(ステップS25〜S27)、および、傷の幅(ステップS28、S29)といった表面状態のパラメータをすべて判定してもよいし、必要なパラメータのみを判定してもよい。パラメータのすべてを判定することで、傷の状態をより詳細に判定することができる。また、必要なパラメータのみを判定することで、判定処理を迅速に行うことができる。
<第1実施例と比較例との効果の比較>
図5〜図9に示した本願の第1実施例に係る反射型光学センサ200と、図10〜図13に示した比較例に係る反射型光学センサ200’とをそれぞれ用いて実験を行った際の、PD出力(受光部出力)の変動結果のグラフを、図20に示す。このグラフは、PD212a,212’を、それぞれ、2個、4個、6個、8個、10個用いて定着ベルト61を検知した際に、レンズアレイ220a,220’が副走査方向に±50μmずれ(ずれをYとする)、かつ、定着ベルト61にあおり角(あおり角をAとする)のみが単独に印加した際のPD出力変動結果を示す。PD出力は、前述したように、複数個のPD212a,212’での検出値の合算値であり、レンズアレイ220a,220’の副走査方向ずれYとあおり角Aの変動とがない場合(Y=0、A=0)を1と規格化している。以下、この規格化された値を「中央値」と呼ぶ。また、PD出力は、フレア光による影響を除去しており、比較例の反射型光学センサ200’と本願の第1実施例に係る反射型光学センサ200aとでは、光量差はほとんどない。
図20から明らかなように、本願の第1実施例に係る反射型光学センサ200aは、比較例の反射型光学センサ200’に比べて、あおり角変動に起因するPD出力の変動が小さい。また、レンズアレイ220aを受発光デバイスに組み付けする際に発生すると考えられるレンズアレイ220aの副走査方向ずれが、仮に±50μm程度起こった場合でも、あおり角Aが±1.5deg以内の変動であれば、PD出力の変動は、中央値に対して±10%以内に収まっている。
また、図9で示したように、第1実施例では、平坦部(段差)223aを設けることによって、この平坦部223aで光が反射するように構成している(図9中の二点鎖線の矢印)。この反射により、定着ベルト61の検知に必要な検出光(図9中の実線の矢印)以外の光(図9中の一点鎖線の矢印であり、以下、「ゴースト光」と呼ぶ)を低減させ、反射型光学センサ200aの検知精度の低下を抑制することができる。
以上のように、本願の第1実施例の反射型光学センサ200aは、優れた光学性能を有している。そして、この反射型光学センサ200aを使用した第1実施例のプリンタ100では、反射型光学センサ200aからの検知信号を表面状態判定手段300が受信することで、定着ベルト61の表面状態を精度よく検知することができる。プリンタ100では、この表面状態の検知結果に基づいて、例えば、傷が大きい領域では記録紙の定着を行わないように、用紙送りを制御する対応や、傷部分に対応する箇所にトナーを多く付着させて、傷が目立たなくなるように制御する対応を実施することで、画像品質の低下を良好に防止することが可能となる。また、傷のレベルが画質に影響するようになったときに、ブザーやメッセージ表示等の警告を発することで、ユーザが定着ベルト61の交換時期を知ることができる。したがって、画質に影響を与えない時期に定着ベルト61を交換してしまうことなどがなく、定着ベルト61の有効利用を可能とすることができる。
<第2実施例>
図21〜図24を用いて、第2実施例に係る反射型光学センサ200bの構成について説明する。図21(a)は、第2実施例の反射型光学センサ200bを走査方向(x方向)に観察した側面図であり、図21(b)は、反射型光学センサ200bを、副走査方向(y方向)に観察した概略断面図である。また、図22は、反射型光学センサ200bのPD212bおよび受光用レンズ222bを副走査方向(y方向)に観察した概略断面図である。図23は、反射型光学センサ200bについて、照射用レンズ221bと受光用レンズ222bとを、より詳細に示した図である。図24は、LED211bとPD212bとを支持する基板210bを、z方向から観察した平面図である。
図21〜図24に示すように、第2実施例の反射型光学センサ200bは、発光部(すなわち、照射系)としての発光ダイオード(LED)211b、および、放射された光を定着ベルト61表面に光スポットSPを照射するように配置された照射用レンズ221bを有する照射光学系と、定着ベルト61から反射された反射光を導光するように配置された受光用レンズ222bを有する受光光学系と、受光用レンズ222bで導光された反射光を受光する受光部としてのフォトダイオード(PD)212bを有する受光系と、LED211bおよびPD212bを支持する基板210bと、基板210bおよびレンズアレイ220bを保持するケース240bと、から構成される。また、照射用レンズ221bと受光用レンズ222bとの境界部に、平坦部(段差)223bを有している。
第2実施例の反射型光学センサ200bの構成は、受光用レンズ222bを受光系から更に遠ざかる位置に配置したこと以外は、第1実施例の反射型光学センサ200aと同様の構成を有している。また、第2実施例のプリンタは、この反射型光学センサ200bを使用したこと以外は、第1実施例のプリンタ100と同様の構成を有している。そのため、以降では、第1実施例と同じ構成については、詳細な説明は省略し、異なる構成のみ説明する。第2実施例の反射型光学センサ200bは、受光用レンズ222bをPD212bから更に遠ざかる位置に配置したことにより、以下の点で第1実施例と異なっている。
(1)レンズパラメータ(曲率半径、レンズ径、レンズ厚、照射系と照射用レンズとの中心間距離、受光系と受光用レンズとの中心間距離など)が異なる。
照射用レンズ221bと受光用レンズ222bとは、光軸方向において、レンズ中心位置が互いに約0.5mmと、第1実施例よりも大きくずれており、受光用レンズ222bに比べて、照射用レンズ221bは照射系(LED211b)側に近い位置に配置されている。レンズパラメータを具体的に述べると、照射用レンズ221bの主走査方向の曲率半径は4.6mm、主走査方向の円錐定数は0である。照射用レンズ221bの副走査方向の曲率半径は4.3mm、副走査方向の円錐定数は−2.0である。照射用レンズ221bの主走査方向のレンズ径は2.4mm、副走査方向のレンズ径は9.2mm、レンズ厚は6.6mmである。
受光用レンズ222bの主走査方向の曲率半径は50mm、主走査方向の円錐定数は−1.0である。受光用レンズ222bの副走査方向の曲率半径は4.8mm、副走査方向の円錐定数は−1.6である。受光用レンズ222bの主走査方向のレンズ径は17mm、副走査方向のレンズ径は10.9mm、レンズ厚は5.6mmである。
また、副走査方向における照射用レンズ221bおよび受光用レンズ222bの中心間距離(光軸間距離)は2.53mm、光軸方向における照射系(LED211b)および照射用レンズ221bの中心間距離は10.37mmであり、光軸方向における受光系(PD212b)および受光用レンズ222bの中心間距離は11.37mmである。
図25に、第1実施例の反射型光学センサ200aと、第2実施例の反射型光学センサ200bとを用いたPD出力のグラフを示す。このグラフは、PD212a,212bを、それぞれ、2個、4個、6個、8個、10個用いて定着ベルト61を検知した際に、レンズアレイ220a,220bが副走査方向にY=±50μmずれ、かつ、定着ベルト61に、あおり角Aのみが単独に印加した際のPD出力の変動結果を示す。PD出力は、フレア光による影響を除去しており、第1実施例の反射型光学センサ200aと第2実施例の反射型光学センサ200bとでは、光量差はほとんどない。
また、図25から明らかなように、第2実施例の反射型光学センサ200bは、第1実施例の反射型光学センサ200aに比べて、あおり角変Aの変動に起因するPD出力変動が、より小さくなっている。さらに、レンズアレイ220bを受発光デバイスに組み付けする際に発生すると考えられる、レンズアレイ220bの副走査方向ずれが、仮にY=±50μm程度起こった場合でも、あおり角Aが±1.5deg以内の変動であれば、PD出力変動は、中央値に対して±10%以内に収まっている。
以上のように、第2実施例の反射型光学センサ200bは、第1実施例に比較して、受光用レンズ222bをPD212bから更に遠ざかる位置に配置したことにより、定着ベルト61のあおり角変動に起因するPD出力変動を、更に良好に低減することができる。
<第3実施例>
図26〜図28を用いて、第3実施例に係る反射型光学センサ200cの構成について説明する。図26(a)は、第3実施例の反射型光学センサ200cを副走査方向(y方向)に観察した概略断面図であり、図26(b)は、反射型光学センサ200cを、副走査方向(y方向)に観察した正面図である。また、図27は、反射型光学センサ200cのPD212cおよび受光用レンズ222cを副走査方向(y方向)に観察した概略断面図である。図28は、LED211cとPD212cとを支持する基板210cを、z方向から観察した平面図である。
図26〜図28に示すように、第3実施例の反射型光学センサ200cは、発光部(すなわち、照射系)としての発光ダイオード(LED)211c、および、放射された光を定着ベルト61表面に光スポットSPを照射するように配置された照射用レンズ221cを有する照射光学系と、定着ベルト61から反射された反射光を導光するように配置された受光部としての受光用レンズ222cを有する受光光学系と、受光用レンズで導光された反射光を受光するフォトダイオード(PD)212cを有する受光系と、LED211cおよびPD212cを支持する基板210cと、基板210cおよびレンズアレイ220cを保持するケース240cと、から構成される。また、照射用レンズ221cと受光用レンズ222cとの境界部に、平坦部(段差)223cを有している。
第3実施例の反射型光学センサ200cの構成は、受光用レンズ222cを、アナモフィックレンズに代えて、主走査方向にはパワーのないシリンドリカルレンズとしたこと以外は、第1実施例の反射型光学センサ200aと同様の構成を有している。また、第3実施例のプリンタは、この反射型光学センサ200cを使用したこと以外は、第1実施例のプリンタ100と同様の構成を有している。そのため、以降では、第1実施例と同じ構成については、詳細な説明は省略し、異なる構成のみ説明する。
第3実施例におけるレンズパラメータを具体的に述べると、照射用レンズ221cについては第1実施例、第2実施例と同様のものを使用しているため、変化はない。これに対して、第3実施例の受光用レンズ222cは、光を一軸方向にのみ集束させるシリンドリカルレンズを使用しているため、主走査方向の曲率半径と主走査方向の円錐定数のみ第1、第2実施例とは変化しており、当該受光用レンズ222cの主走査方向の曲率半径は∞、主走査方向の円錐定数は0である。
図6および図12に示すように、第1実施例の反射型光学センサ200aおよび第3実施例の反射型光学センサ200cは、PD212a,212cを主走査方向に複数個配置した構成となっている。そのため、副走査方向に関しては、PD位置やPDサイズを考慮してPDに入射する光線を副走査方向に絞る必要はあるが、主走査方向に関しては、PDを複数個配置しているため、敢えて受光用レンズの主走査方向にパワーを設けて光線を絞る必要はない。
したがって、第3実施例では、上述したように、受光用レンズ222cを主走査方向にはパワーのないシリンドリカルレンズとした。この構成により、アナモフィックレンズを用いた場合に比べて、点灯するLED211cの違いによるPD受光量分布の変化を、より抑制することができる。そのため、定着ベルト61の表面状態をより高精度に検知することが可能となる。
<第4実施例>
図29〜図32を用いて、第4実施例に係る反射型光学センサ200dの構成について説明する。図29(a)は、第4実施例の反射型光学センサ200dを主走査方向(x方向)に観察した概略断面図である。図29(b)は、反射型光学センサ200dを副走査方向(y方向)に観察した概略断面図である。また、図30は、反射型光学センサ200dのPD212dおよび受光用レンズ222dを副走査方向(y方向)に観察した概略断面図である。図31は、反射型光学センサ200dについて、照射用レンズ221dと受光用レンズ222dとを、より詳細に示した図である。図32は、LED211dとPD212dとを支持する基板210dを、z方向から観察した図である。
図29〜図32に示すように、第4実施例に係る反射型光学センサ200dは、発光部(すなわち、照射系)としての発光ダイオード(LED)211d、および、放射された光を定着ベルト61表面に光スポットSPを照射するように配置された照射用レンズ221dを有する照射光学系と、定着ベルト61から反射された反射光を導光するように配置された受光用レンズ222dを有する受光光学系と、受光用レンズ222dで導光された反射光を受光する受光部としてのフォトダイオード(PD)212dを有する受光系と、LED211dおよびPD212dを支持する基板210dと、照射用レンズ221dおよび受光用レンズ222dが一体化されたレンズアレイ220dと、基板210dおよびレンズアレイ220dを保持するケース240dと、フレア光を防止するための開口部O(図31参照)形成用の遮光壁230dと、から構成される。また、照射用レンズ221dと受光用レンズ222dとの境界部に、平坦部(段差)223dを有している。
第4実施例の反射型光学センサ200dの構成は、フレア光を防止するための開口部O形成用の遮光壁230dを設けたこと以外は、第3実施例の反射型光学センサ200cと同様の構成を有している。また、第4実施例のプリンタは、この反射型光学センサ200dを使用したこと以外は、第1実施例のプリンタ100と同様の構成を有している。そのため、以降では、第1実施例と同じ構成については、詳細な説明は省略し、異なる構成のみ説明する。
第4実施例の反射型光学センサ200dは、照射用レンズ221dの周囲に遮光壁230dを設けて開口部Oを形成することで、点灯する任意のLED211dに対応する照射用レンズ221d以外の照射用レンズ221dを透過して定着ベルト61に照射する光、または、点灯する任意のLED211dに対応する照射用レンズ221dや点灯する任意のLED211dに対応する照射用レンズ221d以外の照射用レンズ221dのレンズ面からの直接の反射光などのフレア光が、PD222dに直接入射することを防ぐことができる。そのため、定着ベルト61の表面状態を、より精度よく検知することができる。
なお、開口部O形成用の遮光壁230dとケース240dとは、樹脂成形により一体化することができる。
また、開口部O形成用の遮光壁230dを設ける際に、平坦部(段差)223dを基準面として用いている。これにより、遮光壁230dにより形成される開口部Oの位置精度が向上し、反射型光学センサ200dの性能劣化を抑制することもできる。更に、副走査方向に関して、平坦部(段差)223d付近に開口部Oを配置させることで、受光用レンズ222dを透過して定着ベルト61上に入射する光を無くすことができる。かつ、照射用レンズ221dを透過して更に受光用レンズ222dを透過して定着ベルト61上に入射する光を、平坦部(段差)223dで反射させて、副走査方向に関して検出光から離れた位置に導光させることが可能となる。したがって、第4実施例の反射型光学センサ200dでは、優れた検知精度を維持することができる。
上記第2〜第4実施例の反射型光学センサ200b,200c,200dでも、第1実施例の反射型光学センサ200aの動作例1で説明したような動作で、順次点灯を行うことができる。なお、本願に係る反射型光学センサの動作は、これに限定されることはない。以下に、第1〜第4実施例について、他の異なる動作例2を説明する。
<反射型光学センサの動作例2>
第1〜第4実施例の反射型光学センサ200(200a,200b,200c,200d)の動作例2について説明する。この動作例2では、複数個のLEDを同時に点灯することで、主走査方向における光走査のライン周期を短縮することができる。図33に、この動作例2を実施した際のPD出力結果を示す。
例えば、4個のLEDと1個の照射用レンズからなるユニットの数を9とした場合、x軸の正の方向(紙面右方向)に紙面左端からユニット1、ユニット2、・・・、ユニット9が配置されているとする。また、ユニット1の左端およびユニット9の右端には、それぞれ3つずつ、さらにPDを追加して配置している。このように構成された反射型光学センサ200を用いて、定着ベルト61の表面状態を検知する際には、ユニット2〜ユニット8のLEDを点灯させるものとする。各ユニット内で、x軸の正の方向に4つのLEDが配置されている。ユニット内での相対番号を付して、LED1,LED2,LED3,LED4の順で配置されているものとする。以下、例えば、ユニット2内のLED3を、LED2−3と呼ぶこととする。また、PDは、9ユニット分と追加の6つとで、合計42個が、PD_1,PD_2,・・・,PD_42の順で配置されているものとする。
図33(a)に、LED2−3が点灯した際の複数PDにおけるPD出力分布を示す。PD出力は最大値で1に規格化されており、PD_1〜PD_4とPD_15〜PD_18におけるPD出力は0である。したがって、LED2−3(LED2−2)を点灯させる場合、PDは10個(PD_5〜PD_14)あればよい。
例えば、2個のLEDを同時に点灯させる場合、任意の1のLEDを点灯させた時に、センサ検知結果として用いる10個のPDに、任意の1のLEDではない残りの1のLEDが点灯した際の反射光が受光されないことが必要である。したがって、複数のLEDを同時に点灯させる場合は、主走査方向において、ある程度離れた位置に配置するLEDを用いるのがよい。
図33(b)に、LED2−3、LED5−3、LED8−3(ユニット2,5,8の3つ目のLED)を同時に点灯した際の、複数のPDにおけるPD出力分布を示す。これら3つのLEDを同時に点灯させても、任意の1のPDで受光される出力は、単独のLEDが点灯した場合にその反射光を受光する複数PDのうちの任意の1のPDで受光される出力と等しい。
図33(b)に示す例では、ユニット2,5,8のLED1、ユニット2,5,8のLED2、ユニット2,5,8のLED3、ユニット2,5,8のLED4は、同時点灯が可能である。また、ユニット3,6のLED1、ユニット3,6のLED2、ユニット3,6のLED3、ユニット3,6のLED4は、同時点灯が可能である。ユニット4,7のLED1、ユニット4,7のLED2、ユニット4,7のLED3、ユニット4,7のLED4は同時点灯が可能である。
このように、複数個のLEDを同時に点灯することで、主走査方向における光走査のライン周期を短縮することができる。ライン周期を短縮できれば、定着ベルトの搬送速度を上げることも可能となり、画像形成動作に要する時間を、より短縮することができる。
<反射型光学センサの配置角度>
上記第1〜第4実施例では、反射型光学センサ200(200a,200b,200c,200d)から、定着ベルト61の移動方向に対して平行に複数の光スポットをSP照射している。しかし、本願がこれに限定されることはなく、他の異なる配置形態として、これらの反射型光学センサ200から、定着ベルト61の移動方向に対して交差する方向、すなわち傾きを持って複数の光スポットSPを照射してもよい。このような照射とすることで、定着ベルト61の移動方向に対する光スポットSPの配列ピッチを小さくすることができる。図34(a)に、反射型光学センサ200から定着ベルト61の移動方向に対して平行に複数の光スポットSPを照射したときの光スポットSPの照射位置を示し、図34(b)に、反射型光学センサから定着ベルト61の移動方向に対して交差する方向に複数の光スポットSPを照射したときの光スポットSPの照射位置を示す。
図34(b)では、反射型光学センサ200からの光スポットSPを照射方向と、定着ベルト61の移動方向とのなす角度が45°となるよう交差して配置している。これにより、定着ベルト61の移動方向の検知領域A’は、1/√2に短くなるものの、定着ベルト61の移動方向の光スポットSPの配列ピッチも、1/√2に小さくできる。したがって、図34(a)の場合に比べて、同じ数の光スポットSPで、より狭い検知領域A’を検出することで、反射型光学センサの検知結果の位置分解能を、より向上させることができる。なお、この角度は45°に限定されるものではなく、傷の幅等に応じて、適宜の角度に設定することができる。なお、本実施例では、反射型光学センサ200自体を定着ベルト61の移動方向に対して傾けて配置しているが、これに限定されるものではない。他の異なる実施例として、反射型光学センサ200は定着ベルト61の移動方向に対して平行に配置し、LED211から光スポットを照射する際に、図34(b)のように光スポット列が傾斜するように照射してもよい。この場合でも、同様の効果を得ることができる。
以上のように、第1〜第4実施例では、上述のような反射型光学センサ200a,200b,200c,200dを画像形成装置(プリンタ100)内に配置することで、従来は不可能であった定着ベルト上の傷のリアルタイム検知、定着ベルト上の傷の位置や傷の幅の検知を可能とすることができる。更には、反射型光学センサ200a,200b,200c,200d用の受光部および発光部とセンサ用の光学系とを適正化することで、被検物である定着ベルト61上での隣接する光スポットSPの間隔を維持しつつ、定着ベルト61からの反射光強度を増大させ、定着ベルト61表面の傷の検知精度を向上させることができる。
上記第1〜第4実施例の反射型光学センサ200a,200b,200c,200dについて、定着ベルト61に対する好ましい配置について説明する。これらの反射型光学センサ200a,200b,200c,200dは、図35の各図に示すように、プリンタ100で使用する用紙のうち、小サイズの用紙の用紙幅方向のエッジ部が通過する領域Edgの近傍に配置することが好ましい。図35(a)は、このような配置とすることにより、検知領域Aの主走査方向の長さを短くしても、用紙幅方向のエッジ部の通過領域Edgを検知領域Aに確実に含むことができる。このように検知領域Aが短くできることで、反射型光学センサ200を特に主走査方向に小型化することが可能になるというメリットがある。傷の幅は数100μm〜数mm程度であり、傷の位置としての変動範囲は数mm程度である。このことから、検知領域Aは主走査方向に5mm〜15mm程度とするのが好適である。
本願の画像形成装置では、例えば、A3サイズ、A4サイズ、A5サイズなど、複数サイズの用紙を使用することができる。一般には最大通紙できる用紙はA3縦通紙が多いため、ここで小サイズ用紙幅というと、A3用紙を除く用紙サイズが対象となる。もし、A2縦通紙が可能な画像形成装置である場合には、A2用紙を除く用紙サイズが対象となる。
また、小サイズの用紙幅方向のエッジ部の通過領域Edgは、両端に2箇所存在するため、図35の各図に示すように、用紙の両端に1個ずつ、すなわち、主走査方向に計2個の反射型光学センサ200−1,200−2を配置してもよい。このような配置により、傷の検知をより確実に行うことができる。しかし、本願がこれに限定されることはなく、用紙の端面に起因する縦筋状の傷は用紙の両側に発生し、一般にその傷レベルに大きな相違は見られないことから、用紙の両側のいずれか一方(片側)のみに配置してもよく、設備の低コスト化が可能となる。
また、本願の画像形成装置内において、各実施例で説明した反射型光学センサ200(200a,200b,200c,200d)は、図36に示すように、主走査方向に大きく形成して、定着ベルト61の幅とほぼ同一のサイズとしてもよく、種々の用紙サイズに対応することができる。例えば、A1縦通紙が可能な画像形成装置である場合、A2サイズ、A3サイズ、A4サイズ、A5サイズ、B3サイズ、B4サイズ、B5サイズ、および、B6サイズの各用紙の幅方向のエッジ部の通過領域Edgが反射型光学センサ200で照射可能となるように、反射型光学センサを主走査方向に大きく形成する。このように形成することで、種々の用紙サイズに対応可能であるとともに、表面状態を精度よく検知することができる。なお、このような反射型光学センサ200を動作する際に、すべてのLEDを使用するようにしてもよいし、検知領域のサイズに対応して一部のみを点灯させるようにしてもよい。また、例えば、通紙される用紙のサイズの変化に対応できるように、プリンタ本体等で検知した、現に通紙されている用紙のサイズ情報等に基づいて、当該用紙のエッジ部が通過する領域近傍のLEDのみ使用するようにしてもよい。このような構成では、LEDのエネルギー効率が向上し、かつ、エッジ部による傷の状態を精度よく検知することができる。
また、定着部材(移動体)としては、従来公知のいずれのものを用いてもよいが、上記各実施例のように、無端ベルト状の定着ベルト61の表面状態の検出に用いるのが好適である。定着ベルトは、表層にPFA等の表面硬度が高い材料を用いているため、表面が特に傷つきやすい。また、表面状態が副走査方向に不均一であったり、内部応力が副走査方向に不均一であったり、つなぎ目があることで、検出位置が異なると反射光の反射角度が変化することがある。しかし、本願の反射型光学センサを備えた画像形成装置によれば、このように副走査方向で検知精度が変化する定着ベルトであっても、表面状態を精度よく検出することが可能となる。
以上、第1〜第4実施例の反射型光学センサを備えた画像形成装置について説明したが、これらの実施例は一例であって、本願がこれらに限定されるものではない。定着手段の表面に、主走査方向に複数の光スポットを照射することができ、その反射光を受光できる反射型光学センサであれば、定着ベルトの表面状態を精度よく検知することが可能となり、本願の課題を解決できるものである。
また、各実施例に記載の反射型光学センサは、複数のLEDと複数のPDとが1対1に対向するアレイタイプであるが、レーザを光偏向器で偏向し、定着ベルトの表面からの反射光を1つないしは複数のPDで受光するような、光偏向タイプであってもよい。また、1つのLEDと1つのPDとからなる反射型光学センサを、適宜の駆動手段により、主走査方向に移動させるセンサ駆動タイプであってもよい。