本発明の反射型光学センサを備えた画像形成装置の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、画像形成装置の一実施形態としてのカラープリンタ100を説明するための図である。なお、画像形成装置は、図1に示すカラープリンタ100に限定されることはなく、モノクロ複写機やカラー複写機、ファクシミリ装置やプロッタ装置等として、あるいはこれらの各機能を複合させたMFP、さらにはFA検査機等として実施することもできる。
図1(a)は、カラープリンタ100の要部のみを説明図的に示している。本実施形態のカラープリンタ100は、いわゆる「タンデム型のプリンタ」である。符号11で示す「中間転写体である転写ベルト」は無端ベルトであって、複数のローラ12(図においては3本)に掛け回されて設けられ、これらローラ12のうちの1本である駆動ローラに駆動されて所定方向(図1では反時計回り)に回転するようになっている。
転写ベルト11は、図1の紙面下側の部分が「平面的」に張られ、この部分に作像ユニットUY,UM,UC,UBが配設されている。ここで、符号中の「Y,M,C,B」は、それぞれ「イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック」の各色を表し、作像ユニットUYはイエロー画像を作像するユニット、作像ユニットUMはマゼンタ画像を作像するユニット、作像ユニットUCはシアン画像を作像するユニット、作像ユニットUBはブラック画像を作像するユニットである。
作像ユニットUY,UM,UC,UBの下方には、「画像書き込み装置」である光走査装置13が配備され、更にその下方にシート状記録媒体である転写紙Sが収容されたカセット14が配置されている。
上記作像ユニットUY,UM,UC,UBは、構造的には同一のものであるので、作像ユニットUYを例に取り、図1(b)を参照して簡単に説明する図1(b)に示す作像ユニットUYは、光導電性の感光体(像担持体)として感光体ドラム2Yを有し、感光体ドラム2Yの周囲に、帯電器3Y、現像ユニット4Y、転写ローラ5Y、クリーニングユニット6Yを配置した構造となっている。
帯電器3Yは「接触式の帯電ローラ」である。この帯電器3Yと現像ユニット4Yとの間は「走査光LYによる画像書き込み部」として設定されている。転写ローラ5Yは、転写ベルト11を介して感光体ドラム2Yと反対側に配置され、転写ベルト11の裏面に接触している。
作像ユニットUM,UC,UBも、作像ユニットUYと同様の構成である。これらについて必要あるときは、感光体ドラム2M,2C,2B、帯電器3M,3C,3B、現像ユニット4M,4C,4B、転写ローラ5M,5C,5B、クリーニングユニット6M,6C,6Bとする。
このようなカラープリンタ100による「カラー画像プリントのプロセス」を、以下に簡単に説明する。なお、図1(b)における「破線で示す長方形」は、作像ユニットUYのユニットを「一まとめ」に示すものであり、ケーシング等の実体を必ずしも示すものではない。
カラー画像形成のプロセスが開始すると、感光体ドラム2Y,2M,2C,2B、転写ベルト11が回転を開始する。各感光体ドラム2Y,2M,2C,2Bの回転は図1の例では時計回り、転写ベルト11の回転は反時計回りである。
感光体ドラム2Y,2M,2C,2Bの感光面は、帯電器3Y,3M,3C,3Bによりそれぞれ均一帯電される。光走査装置13は、それぞれの感光体ドラム2Y,2M,2C,2Bに対して、走査光LY,LM,LC,LBによる光走査で画像書き込みを行なう。なお、このような画像書き込みを行なう光走査装置13は、従来から種々のものが良く知られており、光走査装置13としては、これら周知のものが適宜利用される。
感光体ドラム2Yに対しては、イエロー画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LYとして光走査が行われ、イエロー画像が書き込まれ、イエロー画像に対応する静電潜像が形成される。形成された静電潜像はいわゆるネガ潜像であり、現像ユニット4Yによりイエロートナーを用いる反転現像により「イエロートナー画像」として可視化される。可視化されたイエロートナー画像は、転写ローラ5Yにより、転写ベルト11の表面側に静電的に1次転写される。
感光体ドラム2Mに対しては、マゼンタ画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LMとして光走査が行われ、マゼンタ画像が書き込まれ、マゼンタ画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。形成された静電潜像は、現像ユニット4Mによりマゼンタトナーを用いる反転現像により「マゼンタトナー画像」として可視化される。感光体ドラム2Cに対しては、シアン画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LCとして光走査が行われ、シアン画像が書き込まれ、シアン画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。形成された静電潜像は、現像ユニット4Cによりシアントナーを用いる反転現像により「シアントナー画像」として可視化される。
感光体ドラム2Bに対しては、ブラック画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LBとして光走査が行われ、ブラック画像が書き込まれ、ブラック画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。形成された静電潜像は、現像ユニット4Bによりブラックトナーを用いる反転現像により「ブラックトナー画像」として可視化される。
マゼンタトナー画像は、転写ローラ5Mにより転写ベルト11側へ静電的に1次転写されるが、このとき、転写ベルト11上に「先に転写されているイエロートナー画像」に重ね合わせられる。同様に、シアントナー画像は、転写ローラ5Cにより、転写ベルト11上に「先に重ね合わせて転写されたイエロートナー画像、マゼンタトナー画像」に重ね合わせられて1次転写される。ブラックトナー画像は、転写ローラ5Bにより、転写ベルト11上のイエロー、マゼンタ、シアンの各色トナー画像に重ね合わせて1次転写される。
このようにして、転写ベルト11上で、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー画像が重ね合わせられて「カラートナー画像」が形成される。なお、各感光体ドラム2Y,2M,2C,2Bは、トナー画像転写後にそれぞれ、クリーニングユニット6Y,6M,6C,6Bによりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等を除去される。
このようにして転写ベルト11に形成されたカラートナー画像は、2次転写ローラ15により転写ベルト11上から転写紙S上に静電的に「2次転写」され、定着装置16により転写紙S上に定着されてプリンタ外に排出される。
転写紙Sは、カセット14内に積載されて収容され、周知の給紙機構により給紙され、タイミングローラ(「レジストローラ」とも言う。)により尖端部を保持された状態で待機し、転写ベルト11上のカラートナー画像の移動にタイミングを合わせて2次転写部へ送り込まれる。
2次転写部は、転写ベルト11と、これに接して連れ回りする2次転写ローラ15との当接部である。転写ベルト11上のカラートナー画像が2次転写部に到達するのにタイミングを合わせて、転写紙Sがタイミングローラにより2次転写部に送り込まれる。かくして、転写ベルト11上のカラートナー画像と転写紙Sが重ね合わせられ、カラートナー画像は転写紙S上に静電転写される。
2次転写によりカラートナー画像を転写された転写紙Sは、続いて、定着装置16を通過する際にカラートナー画像を定着され、その後、カラープリンタ100の上部のトレイTR上に排出される。
以上が、カラープリンタ100による「カラー画像プリントのプロセス」の概略説明である。
次に、図1(a)のカラープリンタ100における定着装置16を、図1(c)を参照して説明する。定着装置16は、図1(c)に示したようにいわゆる「ベルト定着方式」であり、定着を行なう部分は、図示の如く、移動体としての定着ベルト61とともに、加熱ローラ62、定着用ローラ64、加圧ローラ63、テンションローラ65、剥離爪66等を有している。定着装置16には、更に、表面状態変更ローラ67、その駆動装置、表面情報検出装置等が備えられている。なお、表面情報検出装置は、カラープリンタ100に備えられていればよく、必ずしも定着装置16に備えられる必要なない。
定着ベルト61は、ニッケル、ポリイミドなどの基材に「PFAやPTFEなどによる離型層」を有するもの、さらには、これら基材と離型層との間に「シリコーンゴムなどの弾性層」を設けた構成である。従って、定着ベルト61の表面は「離型層をなすPFAやPTFEなどの樹脂」であり、その表面情報が反射型光学センサ200による検出の対象である。
定着ベルト61は無端ベルトで、加熱ローラ62と定着用ローラ64とに巻き掛けられ、テンションローラ65により「必要な張り」を与えられている。なお、定着ベルト61が無端ベルトに限定されることはなく、また、移動体が定着ベルト61に限定されることもなく、従来公知の何れのものでも用いることができる。
加熱ローラ62は、アルミや鉄による中空ローラで、ハロゲンヒータなどの熱源Hを内包しており、この熱源Hにより、加熱ローラ62を介して定着ベルト61を加熱する。また、定着ベルト61の表面温度を検出するための温度センサ(サーモパイル等)が、定着ベルト61の表面に「非接触」で設けられている。なお、この非接触の温度センサに代えて、接触型の温度センサ(サーミスタ)を用いることも可能である。
定着用ローラ64は、金属の芯金をシリコーンゴムで囲繞し、弾性を付与したものである。定着用ローラ64は、定着ベルト61を反時計回りに回転駆動する。
加圧ローラ63は、アルミ又は鉄等の芯金の上にシリコーンゴムなどの弾性層を設け、表層はPFAやPTFE等の離型層により構成されている。加圧ローラ63は、定着用ローラ64と対応する位置で、定着ベルト61に圧接する。この圧接は、定着用ローラ64を変形させ「ニップ部」を形成する。このニップ部が定着部Nとなる。
テンションローラ65は、金属の芯金にシリコーンゴムを設けたものである。剥離爪66はその尖端部が、定着ベルト61の表面に当接するようにして、定着用ローラ64の軸方向(紙面に垂直な方向)に複数個配設されている。
上述のような定着装置16で定着が行なわれるときは、熱源Hにより加熱されつつ定着ベルト61が反時計回り、加圧ローラ63が時計回りにそれぞれ回転する。定着ベルト61の表面温度が定着可能な温度になると、カラートナー画像を転写された転写紙Sが、図1(c)の矢印方向へ搬送されて定着部Nに進入する。そして、カラートナー画像は、定着部Nにおいて定着ベルト61側から熱を受け、加圧ローラ63により定着ベルト61に対して押圧されて圧力を受け、転写紙Sに定着される。
補足すると、カラープリンタ100は、転写ベルト11をクリーニングするクリーニング装置17を有している。クリーニング装置17は、図1(a)の作像ユニットUYの左方において、転写ベルト11がローラ12に撒き掛けられた部分に対向して、転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有している。クリーニング装置17は、転写ベルト11上の「残留トナーや紙粉等の異物」を、クリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。クリーニング装置17は、更に転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段も有している。
なお図1に示した画像形成装置の例では、転写方式は、上述の如く「転写ベルト11上に各感光体ドラム2Y,2M,2C,2Bに形成されたカラートナー画像を順次重畳して1次転写し、転写されたカラートナー画像を2次転写ローラ15により転写紙S上に一括転写する方式」である。しかしながら、転写方式はこれに限定されることはない。
例えば、転写ベルト11上に転写紙Sを担持して搬送し、この転写紙Sを各感光体ドラムに対向接触させて各色のトナー画像を、直接に転写紙S上に重畳して転写する方式とすることも可能である。この場合も、カラートナー画像の定着は、上記と同様とすることができる。
図1に示す本実施形態の画像形成装置(カラープリンタ100)は、定着装置16が、移動体(定着ベルト61)の表面情報を検出する「表面情報検出装置」を有する。以下、本実施形態における表面情報検出装置の一例について説明する。表面情報検出装置は、「所定の方向へ移動する移動体の表面情報を検知する」ものである。より詳細には、「移動体の表面における移動方向と交わる方向に、複数の光スポットを照射し、各光スポットにおける反射光を受光して検知し、複数の検知結果に基づいて移動体表面の表面情報を検出する」ものである。本実施形態では、反射型光学センサ200と表面情報検出装置300とにより構成される。
また、「表面情報検出装置」は、図1(c)、図2(a)、(b)に示したように、反射型光学センサ200と定着ベルト61の間に可動可能な遮光部材400を有する。遮光部材400は反射型光学センサ200と定着ベルト61の間の光路を遮るためのものである。図2(a)、(b)に、シャッタ式の遮光部材400の一例を示す。
これらの図に示したように、従来公知の適宜の可動機構401により、必要に応じて遮光部材400が可動し、光路が開閉する。なお、遮光部材400がシャッタ式に限定されることはなく、例えば、図3に示したように、従来公知の適宜の巻き上げ機構401’により巻き上げることで可動する巻き上げ式の遮光部材400’を用いることもできる。
反射型光学センサ200は、図1(c)に示したように、定着ベルト61の「加熱ローラ62に巻き掛けられた部分」に対向して配置され、定着ベルト61の表面に向かって光を照射し、「定着ベルト61の表面における移動方向と交わる方向」の「異なる位置」に複数の光スポット(検知スポット)SPを形成し、その定着ベルト61からの反射光を受光するように構成される。
上記「定着ベルト61の表面における移動方向と交わる方向」は、光走査による画像書き込みの際の「主走査方向」に対応するので、以下では簡単に「主方向」と言うこともある。また、「移動方向」は、光走査による画像書き込みの際の「副走査方向」に対応するので、以下では簡単に「副方向」と言うこともある。
表面情報検出装置300は、反射型光学センサ200に接続され、カラープリンタ100内に配置され、反射型光学センサ200からの検知信号を受けて定着ベルト61の表面状態を表面情報として検出する。
表面状態変更ローラ67は、金属の芯金に「所定の粗さを有する表層」を有するものである。「表層」は、例えば数10μmオーダの凹凸形状を有しており、その表面粗さは定着ベルト61の表面粗さより大きい。表面状態変更ローラ67を定着ベルト61の表面に接触させて回転させると、表面状態変更ローラ67による摺擦により、定着ベルト61の表面は粗らされて表面部分が削られ「新たな面」が露呈する。従って、定着ベルト61表面の「傷のある部分」を削って「傷の部分を削り去」って、傷のない新たな面を露呈させることができる。
表面状態変更制御装置500は、表面状態変更ローラ67に接続され、カラープリンタ100内に配置されており、表面情報検出装置300の検知結果を受けて表面状態変更ローラ67の動作を制御する。
表面状態変更ローラ67は、駆動手段により「定着ベルト61への接離と摺擦駆動」を行なうようになっている。この駆動手段は、図4(a)、(b)に示したように、表面状態変更ローラ67を支持するロッド69と、ロッド69に接続された回動軸68とから構成され、表面状態変更制御装置500によって制御駆動される。
図4(a)は、表面状態変更ローラ67が定着ベルト61の表面に接した状態を示し、図4(b)は、表面状態変更ローラ67が定着ベルト61から離れた状態を示している。表面情報検出装置300が「傷の存在を検出」した場合には、表面情報検出装置300からの検知結果を受けて、表面状態変更制御装置500が駆動手段を駆動し、表面状態変更ローラ67を定着ベルト61の表面に接触させて傷の部分を削り去って、傷のない新たな面を露呈させる。
表面情報検出装置300、表面状態変更制御装置500の「制御」を行なう部分は、マイクロコンピュータやCPUとして構成することができる。上記「制御」を行なう部分は、同一のコンピュータに制御プログラムとして内蔵されていることができる。
移動体(定着部材)である定着ベルト61の表面は、当初は無傷であるが、定着動作が繰り返されるに従い、オフセットや、剥離爪66等との接触による傷、シート状記録媒体による「筋状の傷」が発生する。このような「傷やオフセットの生じた表面の状態」、即ち、「オフセットの有無や程度、傷の状態や位置」が表面状態であり「表面情報」である。
シート状記録媒体による「筋状の傷」の発生原因について説明する。例えば、記録媒体としてA4サイズ用紙とA3サイズ用紙を使用可能な画像形成装置において、A4サイズ用紙を縦通紙(用紙を縦長にして送ることをいう)の状態で定着を繰り返す。これにより定着手段である定着ベルト61の表面には、A4縦通紙の用紙幅方向の両端部が位置する箇所に、縦筋状の傷が発生することがある。これは用紙の両端部に付着した紙粉により、定着ベルト61の表面が荒らされ、摩耗することによって生じる。このような縦筋状の傷が定着ベルトに形成された状態で、次にA4横通紙(用紙を横長にして送ることをいう)やA3縦通紙を用いて定着を行った際に、A4縦通紙により生じた縦筋状の傷に対応して、画像表面に光沢筋が現れる。この光沢筋の出現によって画像品質が影響を受ける。
以下では、主として「表面情報検出装置」による「筋状の傷」に対する表面情報の検出を説明する。図5は、定着装置16による定着を説明するための説明図である。図5における上下方向は「定着ベルト61表面で移動方向TRDと交わる方向(前述の主走査方向)」に対応する。
符号Sは、定着されるカラートナー画像を有する転写紙を示している。この説明例では、転写紙Sは「A4サイズ」であり、これを長手方向と幅方向に搬送できるようになっている。符号A4Tは、A4サイズの転写紙Sを長手方向に搬送するときの紙幅を示し、符号A4Lは、A4サイズの転写紙Sを幅方向(短手方向)に搬送するときの紙幅を示している。
紙幅A4Lは、定着ベルト61の幅(図の上下方向の長さ)に略等しく、従って、A4サイズの転写紙Sを幅方向(短手方向)に搬送するときには、長手方向の端部に生じる筋状の傷は、実際上殆ど問題とならない。一方、紙幅A4Tは、定着ベルト61の幅よりも短く、筋状の傷は、紙幅A4Lの内側に発生し、画像品質に影響し得る。
図5における符号W1,W2は、A4サイズの転写紙Sを長手方向に搬送するとき、主走査方向における転写紙幅端部の移動の余裕幅を示している。反射型光学センサ200は、転写紙Sの主走査方向における端部位置に対向して配置されている。また反射型光学センサ200は、主走査方向に複数の光スポットを照射する。これら複数の光スポットが照射される領域が検出領域Aをなす。反射型光学センサ200は、長い検出領域Aを形成できるため、反射型光学センサ200と転写紙Sの幅方向端部との「主走査方向の相対的な位置関係」は比較的ラフとすることができる。
表面情報検出装置300は、反射型光学センサ200からの検知信号を受けて、主走査方向に長い検出領域Aにおける「定着ベルトの表面状態」を検知することができる。そして、転写紙の幅方向端部が検出領域Aに含まれるとき、転写紙の幅方向端部により形成される筋状の傷の情報である「傷レベル」および/または「傷の位置(主走査方向の位置)」を定着ベルト61の表面情報として定量化する。ここで傷レベルとは「傷の程度」、すなわち「傷の深さ(粗さ)や傷の幅(大きさ)」を言う。
「傷の深さ」について補足する。定着部材の表面に「傷(サーミスタや剥離爪との接触による傷や、筋状の傷)」が生じると、前述の如く、傷の部分で「定着部材とトナー画像の接触圧」が弱くなり、傷に応じて「定着不全」が生じる。よって、定着された画像では「白抜け(画像濃度の低下する減少)」と呼ばれる「画像異常」が発生する。この明細書に言う「傷の深さ」は、このような「傷と、傷に起因する画像異常との相関関係」を定量的に捉え、画像異常の程度を表すパラメータとして表現したものである。
以下、本実施形態で用いる反射型光学センサの具体的な構成及び基本的動作を説明するにあたり、図6A〜図6Eに示した反射型光学センサ200を例に挙げて説明する。図6A〜図6D及び以降で説明する実施例、参考例では、以下のようにx、y、z方向を定める。「x方向」は「移動方向に交わる方向(垂直な方向)」であって「主走査方向」である。「y方向」は「移動方向」であって「副走査方向」に対応する。「z方向」は「x、y両方向に直交する方向」である。なお符号61Sは、定着ベルト61の「検出領域(前述の検出領域A)を含む表面部分」を示す。したがって、z方向は、反射型光学センサ200から「表面部分61S」に向かう方向である。
図6A〜図6Dにおいて、符号210は基板、符号240,241は側板を示し、符号220はレンズ素子を示す。まず、図6Dを参照する。図6Dは、基板210上における発光ダイオード(以下「LED」と表記する。)とフォトセンサであるフォトダイオード(以下「PD」と表記する。)の配列状態を説明するための図である。符号211はLED、符号212はPDをそれぞれ示す。
これらの図に示したように、反射型光学センサ200は、発光部としてのLED211(照射系)及び照射用レンズ221を有する照射光学系と、受光部としてのPD212(受光系)及び受光用レンズ222を有する受光光学系と、基板210と、側板240,241と、を有して構成される。反射型光学センサ200は、更に、フレア光を防止するための開口部材230,231を備えている。
LED211は、基板210の長手方向であるx方向に複数個設けられている。また、LED211は、複数個を一組として、各組がx方向に等間隔的に配列されている。なお、図6Dには、4個一組で、16個のLED211が描かれているが、これは説明の便宜上のものであり、これに限定されることはない。LED211の配列個数は、設計条件により定められ、一般には数十個〜数百個に設定できる。
PD212は、基板210のx方向に等間隔で複数個が配列されている。以下では、PD212の個数は、LED211の個数と同数であるとして説明する。
LED211の個々に、図6Dの左側、すなわち、x方向の始点側から4個ずつを1つの組p(p=1〜P、Pは組の総数)とし、各組の中で左から1つずつ順次に番号を振り、この番号をq(q=1〜4)とする。そして、図6Dの左側から数えてp組のq番目のLED211を、LED211−p−qと表す。したがって、図6Dに示したように、すべてのLED211は、LED211−1−1、LED211−1−2、LED211−1−3、LED211−1−4、LED211−2−1、・・・、LED211−2−4、・・・、LED211−p−q、・・・、LED211−P−1、LED211−P−2、LED211−P−3、LED211−P−4の順次の配列となる。また、LED211の総数をNとすると、N=4Pである。
一方、PD212については、図6Dの左側から1つずつ順次に番号を振り、図6Dの左側から数えてn番目のものをPD212−nと表す。PD212の総数はNであって、すべてのPD212は、PD212−1、PD212−2、・・・、PD212−n、・・・、PD212−(N−1)、PD212−Nの順次の配列である。
次に、図6A、図6B、図6Cを参照して、レンズ素子220の構成を詳細に説明する。レンズ素子220は、2つの領域部分から構成されている。すなわち、図6A、図6Bに示したように、照射用レンズ221をアレイ配列した照射用レンズアレイの領域と、受光用レンズ222による領域とから構成されている。
照射用レンズ221は、図6Bに示したように、x方向に複数個設けられ、それぞれを符号221−p(p=1〜P)で表す。図6Bでは、照射用レンズ221−1、・・・、221−Pのように配列されている。また、照射用レンズ221−pは、本実施形態では4個のLED211p−qに対応して、1個設けられている。すなわち、照射用レンズ221−pの個数Pは、ここではLED211の個数Nを4で割った数(P=N/4)である。図6Bに示したように、LED211のz方向上部に、照射用レンズ221−pが、4個のLED211−p−q(q=1〜4)と1対1に対応するようにして、x方向に配列されている。
受光用レンズ222は、図6A及び図6Cに示したように「単一のシリンドリカルレンズ」である。受光用レンズ222は、図6A及び図6Cに示したように、PD212−1〜PD212−Nに共通に対応して、PD212のz方向上方に設置される。なお、図6(c)は、反射型光学センサ200を「y軸の正の方向から負の側へ向かって見た図」である。この受光用レンズ222は、y方向にのみ正のパワーを有する。
照射用レンズアレイの領域と受光用レンズ222とは一体的に形成されており、これらは、樹脂成型により一体成形することができる。
開口部材230は、図6Bに示したように、照射用レンズ221の両側にそれぞれ設置され、図面の左側から、開口部材230−0、開口部材230−1、・・・、開口部材230−p、・・・、開口部材230−Pのように順次配列されている。開口部材230は、「4個のLED211−p−q(q=1〜4)と照射用レンズ221−pとの組」の互いに隣接する組間での「フレア光」を防止するために設けられている。また、図6Aに示す開口部材231は、「LED211−p−q(q=1〜4)の配列と、PD212−pの配列との間」での「フレア光」を主に防止するためのものである。
図6Eに、P=7としたときの開口部材230および開口部材231が一体化されている様子を示す。図6Eに示したように、照射用レンズ221−p(221−1,221−2、・・・)それぞれに対応して、開口Oが設けられている。すなわち、4個のLED211−p−q(q=1〜4)と1個の照射用レンズ221−pとの組に対応して、開口Oが1個設けられている。
このように開口Oを設けることで、点灯する任意のLED211に対応する照射用レンズ221以外の照射用レンズ221を透過して定着ベルト61に照射する光や、点灯する任意のLED211に対応する照射用レンズ221や点灯する任意のLED211に対応する照射用レンズ221以外の照射用レンズ221のレンズ面からの直接の反射光(これらの光が、「フレア光」である)が、PD212に直接入射することを防止している。
側板240は、図6Bに示したように、基板210上の長手方向(x方向)の両端に一対設置されている。側板241は、図6Aに示したように、基板210上の幅方向(y方向)の両端に、x方向に長尺に一対設置されている。これらの側板240,241は、一体化してケース(筐体)243を構成している。上述した開口部材230,231と、このケース243とは、樹脂成形により一体化することができる。
また、図6Bに示したように、LED211−p−qを点灯させると、放射された「発散性の光束」は、LED211−p−qに対応する照射用レンズ221−pにより集光され、定着ベルト61の表面部分61Sを光スポットSP(SP−1、SP−2、・・・)として照射する。表面部分61Sの「光スポットSPで照射された部分(照射領域)」での反射光は、図6A、図6Cに示したように、受光用レンズ222によりy方向にのみ集光されて、いずれかのPD212−nに入射する。表面部分61Sによる反射は、鏡面反射と言うわけではなく、また受光用レンズ222によりx方向には集光されていないので、反射光を受光するPD212は「PD212−nのみ」ではなく、複数のPD212により受光される。
次に、反射型光学センサ200の動作を、図7に示すフローチャートを用いて説明する。LED211は、表面部分61S上を光スポットが図6Bの左端の光スポットSP−1から右端の光スポットSP−Nに走査するように、LED211−p内のLED211−p−4からLED211−p−1の順に、1個ずつ点灯と消灯を行う。この動作をp=1〜Pまで繰り返す。いわゆる、「順次点灯」を行っている。これは照射用レンズ221−pが倒立系であることに起因している。
以下、LED211の点灯からPD212での検知までの動作を説明する。まず、図7のステップS10では、LED211の組pの初期値としてp=1(1≦p≦P)を設定する。次に、ステップS11では、組p内のLED211−p−qの点灯順序を管理するカウンタとしてq=4(1≦q≦4)を設定する。
次に、点灯と受光との処理に入るが、まず、ステップS12で、LED211−p−qを点灯する。例えば、処理の一回目、すなわち、p=1、q=4の場合、1組目のLED211−1−4が点灯される。次いで、ステップS13で、表面部分61Sで反射した反射光をPD212で受光する。
LED211−p−qの点灯に同期して、表面部分61Sからの反射光は、受光用レンズ222によりy方向にのみ集光されてPD212−nを含む、複数個のPD212により受光される。ここでは、説明の簡単のため、受光するPDの数は「奇数」であるとし、mを整数として(2m+1)個であるとする。すなわち、LED211−p−qが点灯したときの反射光は、PD212−nと「その両側に続くm個のPD」とで受光される(PD212−(n−m)〜PD212−(n+m)。
例えば、m=2であるとすれば、反射光を受光する複数のPDは、PD212−(n−2)、PD212−(n−1)、PD212−n、PD212−(n+1)、PD212−(n+2)の5個である。これら複数のPD212−(n−m)〜PD212−(n+m)は、受光量を光電変換する。光電変換された信号は、増幅されて「検知信号」となる。PD212ごとの検知信号は、後述のステップS15で、検知の都度、表面状態を判断する表面情報検出装置300に送られる。
なお、mの値は2でなくても、もちろん構わない。画像データとの相関を予め実験的に求めておき、好適なmを選択することができる。もちろん、m=0とすることもできる。
PD212での受光が完了したら、ステップS14で、LED211−p−qを消灯する。その後、ステップS15で、各PD212−(n−m)〜PD212−(n+m)の検知信号を、表面情報検出装置300に送信する。
そして、ステップS16で、q>1か、すなわち、組p内の4つのLED211すべてについて、ステップS12〜S15の処理が実行されたかを判定する。q>1がyesなら、点灯等していないLED211が存在するため、ステップS17でqをカウントダウン(q=q−1)した後、ステップS12に戻る。そして、次のLED211−p−qについて、ステップS12〜S15の処理を繰り返す。
これに対して、q>1がNOなら、組p内のすべてのLED211について処理が完了したため、ステップS18に進む。例えば、p=1の組では、図6Dの紙面左端のLED211−1−4〜LED211−1−1について点灯、消灯、検知信号送信の一連の処理が終わったときに、1組内のすべてのLED211について処理が完了したと判定される。
そして、ステップS18では、p<Pか、すなわち、すべての組p(p=1〜P)について、ステップS11〜S17の処理が実行されたかを判定する。p<PがYESなら、処理を行っていない組pが存在するため、ステップS19でpをカウントアップ(p=p+1)して、ステップS11に戻る。これに対して、p<Pがnoなら、すべての組pについて処理が完了したため、ステップS20に進む。以上のように、LED211−p−qについて順次点灯が繰り返されて、p=P、q=1となり、最終のLED211−P−1が「点灯・消灯」すると、これを1周期として順次点灯およびPD出力値の取得は終了する。
その後、ステップS20では、一連の処理をもう1周期繰り返すか判定し、YESの場合は、ステップS10に戻って、ステップS11〜S19の処理を繰り返す。このように、順次点灯を複数周期に亘って行い、各周期での検知結果の平均値処理などを行うこともできる。このような処理により、検知精度を向上させることができる。また、ステップS20の判定で、NOの場合は、処理全体を終了する。
以上の説明において、表面部分61S上の光スポットSPが、図6Bで示したように、紙面左端寄りSP−1やSP−2にある場合、すなわちLED211−1−3やLED211−1−4が点灯するとき、照射用レンズ221が倒立拡大系であるため、受光するPD212は5個に満たない。また、光スポットSPが右端寄りにある場合も同様である。
このような事情を鑑みると、この場合、順次点灯するLEDをN個とするのではなく、表面部分61S上の光スポットSPが、左端寄り及び右端寄りになるLED211を2個ずつ外し、N−4個について順次点灯を行なうようにすることもできる。すなわち、一般的には、点灯および消灯するLED211は、N個すべてを用いる必要はなく、そのうち任意のN’(≦N)個を用いてもよい。
以上のように図6A〜図6Eに示した反射型光学センサ200を、図7のフローチャートに従って動作させたときの実験結果を図8Aに示す。図8Aは、定着ベルト61が存在しない状態、すなわち反射型光学センサ200から出射された光束を反射する対象物がない状態で、各々のLED211−p−q(q=1〜4)を点灯させたときのPD212−n(n=1〜28)のPD出力値を示している。
定着ベルト61が存在しない場合には本来であればPD出力値は「ゼロ」であることが理想である。しかし、図8Aの結果に示したようにPD212−14及びPD212−15を中心として山状のPD出力が得られていることが分かる。発明者は、このPD出力値の発生要因を調査した。その結果、図9に示したように、LED211−p−qを点灯すると、その発散性の光束の一部は、開口部材230−p,231の前面(LED211に対向する面)で反射散乱され、複数のPD212−nに受光されてしまうことを突き止めた。
そこで、本願に係る実施形態では定着ベルト61が存在しない状態を画像形成装置(カラープリンタ100)内で作るため、図1(c)、図2(a)、(b)に示したような遮光部材400を設置する。ただし、定着ベルト61が存在する場合には、本来検出したい定着ベルト61からの反射光に加え、開口部材230,231の前面での反射光が含まれたPD出力値が検出されていることになる。
そこで、図2(a)に示したように、遮光部材400を閉じた状態でPD出力値を検出し、続いて、図2(b)に示したように、遮光部材400を開いた状態でPD出力値を検出する。そして、これらのPD出力値の差分を取ることで、定着ベルト61からの反射光のみのPD出力値を得ることが可能となる。
図8Bは、定着ベルト61が存在する状態(すなわち遮光部材400が開いた状態)で取得したPD出力値から、図8Aの定着ベルト61が存在しない状態(すなわち遮光部材400が閉じた状態)で取得したPD出力値を差し引いたときのPD出力値を示すグラフである。
この結果について、PD出力値の山状のピークに着目してみた。すると、LED211−p−4、LED211−p−3、LED211−p−2、LED211−p−1のように、順次点灯した場合に、PD出力値がピークとなるPD番号は、小さいほうから大きいほうへシフトしていくことが分かる。これは、LED211−p−4、LED211−p−3、LED211−p−2、LED211−p−1のように順次点灯した場合には、定着ベルト61の表面部分61S上の光スポットSPが、図6Bの紙面左から右へ走査されることからも明らかである。
図10Aに、画像形成装置(カラープリンタ100)の使用開始前において、遮光部材400を閉じた状態でLED211−2−4からLED211−6−1まで、28個のLED211のうち20個を順次点灯したときの28個のPD出力値を示す。画像形成装置の使用開始前とは、画像形成装置がユーザによって使用される前の時点を意味しており、具体的には反射型光学センサ200の製造時や画像形成装置の製造時のことである。
また、図10Bは、基準反射体が存在する状態(すなわち遮光部材400が開いた状態)で取得したPD出力値から、図10Aの基準反射体が存在しない状態(すなわち遮光部材400が閉じた状態)で取得したPD出力値を差し引き、基準反射体からの反射光のみを算出したPD出力値を示すグラフである。
反射型光学センサ200には、反射型光学センサ200の温度を測定するための温度センサ(IC温度センサなど)が取り付けられている。図10A、図10Bの測定値が得られた時の温度は25℃程度であった。同様に、反射型光学センサ200に取り付けられた温度センサの測定温度が70℃の時に得られた測定結果を図11A、図11Bに示す。これらの図から、温度が25℃から70℃に上昇することによってLED発光量が低下し、基準反射体からの検出値が低下していることがわかる。
図10B、図11Bに示した、各LED211に対する複数のPD出力値の和を取った結果を図12に示す。すなわち、基準反射体から反射され,反射型光学センサ200が複数のPD212で取得した光量を意味する。すべてのPD212である28個の総和をとることもできるし、最大値を含む任意数の和をとることもできる。これは反射型光学センサ200の光学系に依存するため、実験等により予め定めておくことができる。ここでは連続する各LED211を発光した時のPD出力値13個の和の最大値とした。すなわち、図12はこの反射型光学センサ200の基準反射体をリファレンスとした、25℃、70℃における各LED211に対する光量ばらつきを表していることになる。
ここで、基準反射体は複数量産される反射型光学センサ200に共通のリファレンスとして用いられるものである。したがって、個々の反射型光学センサ200に応じて、もちろん図12に相当するグラフは異なる。しかし、すべてこの基準反射体がリファレンスとなっているため、そのグラフの差異が、個々の反射型光学センサ200の個体差を表していることを意味する。
したがって、個体差を含んだ、この光量ばらつきで補正することにより、同一のリファレンスを基準として、複数量産される反射型光学センサ200の出力レベルを比較することが可能になる。すなわち図12に示した測定結果を、イニシャルでの複数のスポットの光量ばらつきを補正する光量バラツキ補正係数として使用することが可能となる。
基準反射体としてガラス板などを用いれば、経時や環境での安定性や表面の均一性など、リファレンスとして用いる上で優位な点が多い。なお、ガラス板は両面で反射してしまうので、片面を粗し面(散乱面)にし、さらに黒色塗装などをして片面のみで反射できるようにすることが望ましい。
図13Aは、図12の25℃の測定結果で、25℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃での測定結果を割ったものである。また図13Bは、図13Aのグラフを、横軸に温度をとって書き直したものである。図13Aのグラフから、次のようなことが判明した。すなわち、25℃での基準反射体の検知結果で25℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃での測定結果を割ることにより、25℃での基準反射体の検知結果を画像形成装置使用前での光量バラツキを補正する光量バラツキ補正係数として用いる。25℃での光量バラツキを補正した後であっても、反射型光学センサ200の温度が高く変化していくと、20個の光スポットに対する検知結果がばらついてくることが図13Aのグラフからわかる。これは、図13Bで示したように、20個の各光スポットの光量がセンサ温度に対してリニアであり、その温度係数が、各光スポットに対して異なるからであるからである。
以上を考慮して、画像形成装置の使用前と使用後とで、以下のような処理を実行することで、反射型光学センサ200による定着ベルト61の表面情報を高い検出精度で検出することができる。以下、そのための一連の処理の流れを、図16のフローチャートを用いて説明する。なお、各ステップでの処理は、図10A〜図13Bを用いて説明した処理と同様にして行うことができる。
まず、画像形成装置の使用開始前において、遮光部材400を閉じた状態で(ステップS30)、LED211を順次点灯し(ステップS31)、PD出力値(PD出力値1)を取得する(ステップS32)。次に、遮光部材400を開いた状態で(ステップS33)、LED211を順次点灯し(ステップS34)、基準反射体のPD出力値(PD出力値2)を取得する(ステップS35)。このときの検知温度を反射型光学センサ200に取り付けてある温度センサで測定する(ステップS36)。遮光部材400を閉じた後(ステップS37)、PD出力値1とPD出力値2との差分をとる(ステップS38)。ステップS30〜S38の処理を、異なる温度条件でN’回(N’は2以上)繰り返し行う(ステップS39)。
複数の温度条件において基準反射体での測定を行ったら(ステップS39でYES)、各光スポットSPに対応する温度係数を算出する。そして、基準となる温度(図13Aでは25℃)での基準反射体での測定結果と、補正係数及び温度係数(以下、これらを「値3」という。)とを反射型光学センサ200内の記憶媒体に記憶する(以上、ステップS40)。
次に画像形成装置の使用後において、遮光部材400を閉じた状態で(ステップS41)、LED211を順次点灯し(ステップS42)、PD出力値(PD出力値1’)を取得する(ステップS43)。次に、遮光部材400を開いた状態で(ステップS44)、LED211を順次点灯し(ステップS45)、定着ベルト61の表面部分61Sの検知を行い、PD出力値(PD出力値2’)を取得する(ステップS46)。このときの検知温度(以下、この検知温度を「値4」という。)を温度センサで測定する(ステップS47)。
そして遮光部材400を閉じた後(ステップS48)、PD出力値1’とPD出力値2’との差分をとる(ステップS49)。ステップS48、S49の処理と並行して、ステップS47で測定した検知温度(値4)と反射型光学センサ200内の記憶媒体に記憶させてある画像形成装置使用前に測定した25℃での基準反射体の測定結果及び各LED211に対応する温度係数(値3)とを用いて光量補正係数、光量ばらつき補正係数を算出する(ステップS50)。次に、その光量補正係数、光量ばらつき補正係数を用いて、ステップS49で差分をとった定着ベルト61検知時の、例えば20個の光スポットSPに対応する検知結果の補正を行うことで、イニシャルでの光量バラツキと温度による光量変動とを補正する(ステップS51)。これにより、定着ベルト61の表面状態の定量値化を行う(ステップS52)。
以上の処理により、検知温度が変化した場合においても、定着ベルト61の表面状態を高い検出精度で検出することが可能となる。図14には、この光量補正方法を用いて、25℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃での基準反射体の検出結果を補正したものを示してある。20個のスポット光量の温度変動を補正する前の検知結果である図13Aに比べて、どの温度での基準反射体の測定であっても、ほぼ同じ検知結果が得られている。したがって、温度変化に伴うLED光量変動を十分によく補正することができていることがわかる。
また図15は、この方式の光量補正係数を用いて、画像形成装置使用後において、定着ベルト61の表面状態を検知した結果である。図15に示したように、LED211−3−3の光スポットSP位置における定着ベルト61上の傷の程度を精度よく検知できている。なお、LED211の個数、検出するPD出力値の数、検知温度等は、上記に限定されることはなく、反射型光学センサ200の構成や使用状態等に応じて適宜選択することができる。
以上、反射型光学センサ200を用いて、本実施形態の反射型光学センサの基本的な構成と動作とを説明した。本実施形態の反射型光学センサは、更に、定着ベルト61等の移動体のバタツキによって、検出値に変動を生じるのを防ぐため、「照射用レンズを、移動体の移動方向において発光部から発光部と共役となる点までの距離よりも、移動方向に垂直な方向において発光部から発光部と共役となる点までの距離の方が長いレンズ」としている。以下、このような反射型光学センサ及びこの反射型光学センサを備えた画像形成装置の具体的な実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、バタツキとは、移動時の衝撃等により、移動体が蛇行や振動を生じることをいう。
(実施例1)
実施例の画像形成装置としては、画像形成装置の一実施形態として説明した図1等に示したようなカラープリンタ100を用いることができる。実施例1の画像形成装置(カラープリンタ100)の構成及び動作は、前述したとおりである。実施例1の画像形成装置は、図17〜図19に示したような反射型光学センサ200Aを備える。この反射型光学センサ200Aは、図6A〜図6Eを用いて説明した本願の一実施形態に係る反射型光学センサ200と同様の基本構成を有しており、前述した反射型光学センサ200の動作と同様の動作を行って、定着ベルト61の表面情報を検知する。
図17〜図19に示したように、反射型光学センサ200Aは、発光部としての複数のLED211(照射系)と、LED211及び定着ベルト61の表面部分61Sの間に設けられる複数の照射用レンズ221を有する照射光学系と、受光部としての複数のPD212(受光系)と、PD212及び定着ベルト61の表面部分61Sの間に設けられる受光用レンズ222を有する受光光学系とを有している。照射用レンズ221をアレイ配列した照射用レンズアレイと、受光用レンズ222とによりレンズ素子220が構成される。反射型光学センサ200は、更に、基板210及び側板240,241からなるケース(筐体)243と、開口部材230,231と等を備える。なお、照射用レンズ221の配列方向とPD212の配列方向とは一致している。
実施例1の反射型光学センサ200Aの複数の照射用レンズ221には、x方向とy方向とに対して異なるパワーを有するアナモフィックレンズを用いている。実施例1及び以降の実施例で用いられる照射用レンズ221は、定着ベルト61の移動方向(y方向)においてLED211からLED211と共役となる点までの距離よりも、移動方向に垂直な方向(x方向)においてLED211からLED211と共役となる点までの距離の方が長いレンズである。また、照射用レンズ221は、移動方向に垂直な方向(x方向)においてLED211からLED211と共役となる点までの距離が、LED211から定着ベルト61の表面までの距離よりも長くなるレンズである。
図17は、反射型光学センサ200Aのy方向の光学系を説明するための説明図であり、LED211の中心から出射し、照射用レンズ221の有効領域の両端を通過する光線の軌跡を示している。この図17に示したように、発光部であるLED211の上面と被検面である表面部分61S(以下「被検面61S」という。)とは、y方向において共役関係にあり、LED211から出射した光線は被検面61S上に結像される。
また、受光用レンズ222は、y方向にのみパワーを持つシリンダレンズであり、受光部であるPD212の上面と被検面61Sとはy方向において共役関係にあり、被検面61Sから反射した光はPD212の上面に結像される。
このように受光用レンズ222をx方向にはパワーのないシリンドリカルレンズとしたことで、点灯するLED211の違いによるPD212のx方向の受光量分布の変化を抑制することができる。そのため、高精度に被検面61Sの表面状態を検知することが可能となる。
図18(a)、(b)には、定着ベルト61のバタツキ等により、被検面61Sの角度がそれぞれα方向において時計回り方向又は反時計回り方向に傾いた場合の光線の軌跡を示している。照射用レンズ221と受光用レンズ222とが上記に示した光学特性を有することによって、被検面61Sの角度が照射面を中心にα方向に傾いた場合においても、被検面61Sからの反射光のPD212の受光面への照射位置は変わらず、PD212上面に集光されて入射される。そのため、被検面61Sのα方向の変動があっても、検出値変動の起こりづらい構成となっている。また、複数のPD212からなるPDアレイのy方向サイズも小さくすることができるため、反射型光学センサ200Aのコスト低減を行うことができることがわかる。
次に、被検面61Sが加熱ローラ62(図1、図5等参照)上に巻きつけられた定着ベルト61などの回転体上の被検面である場合について、図19(a)、(b)を用いて説明する。被検面61Sにおける検出位置が、y方向において図19(a)のように紙面左側にずれたり、図19(b)のように紙面右側にずれたりすると、被検面61Sでの反射角度が変わる。しかし、被検面61Sからの反射光のPD212受光面への照射位置は、ずれる前とほぼ同じ位置である。そのため、検出対象物が回転体上の被検面61Sである場合でも、y方向における反射型光学センサ200Aの設置誤差による検出値変動も起こりづらいことがわかる。
次に、実施例1に係る反射型光学センサ200Aのx方向における光学系の光学性能を、図20、図21を参照して説明する。図20は参考例としての反射型光学センサ200’における光線の軌跡を示す。図21は実施例1に係る反射型光学センサ200Aにおける光線の軌跡を示す。
図20、図21では、複数の光スポットSPを被検面61S上に照射する反射型光学センサ200’,200Aから照射される光スポットSPのうち、両端の光スポットSPを照射するLED211の中心から出射し、照射用レンズ221の有効領域のx方向の両端を通過する光線の軌跡を示している。図20、図21中の符号61Iは結像面を示す。
図20に示す参考例の反射型光学センサ200’は、x方向において、発光部であるLED211の上面と被検面61S上の照射面(結像面61I)とが共役関係にある。これに対して、図21に示す実施例1の反射型光学センサ200Aは、発光部であるLED211の上面に対する共役点が被検面61Sよりも遠くにある。
図20、図21からわかるように、被検面61S上での照射中心位置が同じ場合、実施例1の反射型光学センサ200Aの構成の方が、受光用レンズ222の内側に光線が入射されることがわかる。したがって、光線の外側のPD212を省略することができる。このように、図20の参考例の反射型光学センサ200’と図21の本願の実施例1の反射型光学センサ200Aとでは、同じロバスト性を維持した場合、実施例1の構成の方が、反射型光学センサ200Aをx方向に小さくすることができる。更に、PDアレイのx方向のサイズも小さくすることができるため、反射型光学センサ200Aのコストを低減することができる。
次に、被検面61Sの角度が傾いた場合の反射型光学センサ200A,200’での検知について、図22〜図25を参照して説明する。これらの図では、被検面61Sへの入射光線を実線、反射光線を点線で示している。
図22は、参考例の反射型光学センサ200’において被検面61Sが傾いていない状態での光線の軌跡を示している。図23は、参考例の反射型光学センサ200’において被検面61S上に照射される光スポットSP列の中心位置を軸に、被検面61Sがβ方向に回転した場合の光線の軌跡を示している。
同様に、図24、図25では、本願の実施例1に係る反射型光学センサ200Aにおいて、被検面61Sが傾いていない状態での光線の軌跡とβ方向に傾いた状態での光線の軌跡をとそれぞれ示している。
図22〜図25からわかるように、参考例に比べて、実施例1に係る反射型光学センサ200Aのほうが、被検面61Sがβ方向に傾いた場合、受光用レンズ222の内側に光線が入射する。そのため、反射型光学センサ200Aでは、β方向の被検面61Sの変動があっても、検出値変動が起こりづらいことがわかる。
本願の実施例1に係る反射型光学センサ200Aの光学系のパラメータを、以下に具体的に述べる。
照射用レンズ221のパラメータ
x方向の曲率半径:4.72
x方向の円錐定数:−1.6
y方向の曲率半径:4.49
y方向の円錐定数:−1.75
x方向のレンズ径:2.4mm
y方向のレンズ径:8.0mm
レンズ厚:6.57mm
配列数:5個
受光用レンズ222のパラメータ
x方向の曲率半径:∞
x方向の円錐定数は:0
y方向の曲率半径:4.83
y方向の円錐定数:−1.65
x方向のレンズ径:16.8mm
y方向のレンズ径:10.5mm
レンズ厚:7.07mm
各種距離
y方向における照射用レンズ221と受光用レンズ222との距離:2.2mm
LED211上面と照射用レンズ221との距離:10.31mm
LED211と受光用レンズ222との距離:9.81mm
レンズ素子220の平坦面から被検面61Sまでの距離:50mm
照射用レンズ221のx方向のLED211上面に対する共役点:被検面61Sから3.7mm遠方に位置
以上、実施例1の反射型光学センサ200Aは、照射用レンズ221が、移動体である定着ベルト61の移動方向において発光部であるLED211からLED211と共役となる点までの距離よりも、移動方向に垂直な方向においてLED211からLED211と共役となる点までの距離の方が長いレンズである。更に、照射用レンズ221は、移動方向に垂直な方向においてLED211からLED211と共役となる点までの距離が、LED211から定着ベルト61の表面までの距離よりも長くなるレンズである。このような構成とすることで、反射型光学センサ200Aのロバスト性が向上し、定着ベルト61のバタツキなどによる検出値の変動を抑制して、高精度に移動体の表面状態を検出することが可能なる。
また、実施例1の反射型光学センサ200Aは、図26(a)に示したように、受光用レンズ222のPD212の配列方向に垂直な方向(y方向)における有効径領域の中心を、定着ベルト61から反射した主光線が通過するように構成されている。図26(b)には、実施例1の変形例であり、照射レンズの有効径が異なる反射型光学センサ200A’を示す。図26(a)、(b)のように主光線が受光用レンズ222の中心を通過した場合に、α方向への変動による検出値の変動の抑制効果を向上させることができる。したがって、反射型光学センサ200Aのロバスト性を向上させ、精度の高い検出が可能となる。なお、図26(b)とした場合、被検面61Sからの反射光の角度範囲が狭くなるため、α方向への変動による検出値の変動の抑制効果を更に向上させることができる。
さらに、実施例1の反射型光学センサ200Aは、受光用レンズ222のPD212の配列方向に垂直な方向(y方向)における有効径は、照射用レンズ221の配列方向に垂直な方向(y方向)における照射用レンズ221の有効径よりも大きい。この構成により、反射型光学センサ200Aのロバスト性を向上させ、精度の高い検出が可能となる。
また、実施例1の反射型光学センサ200Aは、複数のLED211を備え、移動体の表面の移動方向と交わる方向(実施例1では移動方向と垂直なx方向)の異なる位置に、各LED211から出射された光による検知スポット(光スポットSP)を形成している。この構成により、検出領域Aを長くすることができ、転写紙Sの幅方向端部との位置関係を厳密にする必要がなくなるとともに、精度の高い検出が可能となる。
また、実施例1の反射型光学センサ200Aは、照射用レンズ221の配列方向に垂直な方向と定着ベルト61の移動方向(y方向)とが一致するように設置されている。この構成により、精度の高い検出が可能となる。
また、上述のような反射型光学センサ200Aを備えることで、定着ベルト61の表面状態を精度よく検出することが可能となり、画像品質に優れた画像形成装置を提供することができる。
また、反射型光学センサ200Aを、図5に示したように、定着ベルト61が搬送する転写紙Sの端部位置またはその近傍に配置することによって、用紙端部が通過する位置に生じる定着ベルト61上の傷の状態を精度よく検出することができる。その結果、画像形成装置の画像品質の向上に貢献することが可能となる。また、移動体として傷を生じ易い無端状の定着ベルト61の表面状態を検出することで、定着ベルト61の傷の発生を迅速かつ高精度に知ることができる。
(実施例2)
以下、実施例2の反射型光学センサを備えた画像形成装置について、図27、図28を参照して説明する。実施例2の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置と基本構成は同一である。実施例2で用いる反射型光学センサは、実施例1の反射型光学センサ200Aと同様のものを用いているが、表面情報の検知の際に、隣接するLED211を2つ同時に発光させる構成としている。
図27は、実施例2の参考例としての反射型光学センサ200’の光線の軌跡を示し、図28は実施例2の反射型光学センサ200Aの光線の軌跡を示す。図27、図28は、複数の光をアレイ状に時分割に照射して複数のスポットSPを形成する反射型光学センサ200’、200Aにおいて、隣接する2つのLED211を同時に発光させることによって各々の光スポットSPを形成する場合を示している。
図27に示す参考例は、x方向において発光部であるLED211上面と被検面61Sの照射面(結像面61I)とが共役関係にある場合を示している。図27に示したように、隣接する2つのLED211を同時に発光することによって被検面61S上に光を照射した場合、隣接する2つのLED211からの光により被検面61S上に形成される光スポットSPは2つに分かれてしまう。この2つに分かれた光スポットSPの間での被検面61Sの表面状態の検出が難しくなる。
これに対して、図28に示す実施例2の反射型光学センサ200Aでは、x方向においてLED211上面に対する共役点が被検面61Sよりも遠方にある。そのため、隣接したLED211を同時に発光させることによって被検面61S上を照射した光は重なり、1つの光スポットSPが形成される。したがって、その光スポットSPの領域内での被検面61Sの表面状態を検出することが可能となる。したがって、実施例2の反射型光学センサ200Aでも、精度の高い検出が可能となる。
(実施例3)
以下、実施例3の反射型光学センサを備えた画像形成装置について、図29(a)、(b)を参照して説明する。実施例3の画像形成装置は、実施例1の画像形成装置と基本構成は同一である。実施例3で用いる反射型光学センサ200Bは、実施例1の反射型光学センサ200Aと基本構成は同様であるが、LED211をx方向に複数配列したLEDアレイを、y方向に2列並列に設けている。そして、y方向に隣接する2つのLED211を同時に発光させる構成としている。
図29は、実施例3に係る反射型光学センサ200Bにおいて、y方向に2つ配列されたLED211を同時に発光させたときの、各LED211中心から出射し、照射用レンズ221の有効領域のy方向の両端を通過した光線の軌跡を描写した図である。図29(a)は被検面61Sが平面である場合の軌跡を示し、図29(b)は被検面61Sが加熱ローラ62上の定着ベルト61のように被検面61Sが曲面である場合の軌跡を示す。
図29(a)、(b)に示したように、各LED211の上面と被検面61Sとは共役関係にあるために、各被検面61Sに照射された光スポットSPは被検面61S上で分かれる。しかし、被検面61Sがy方向に移動している被検面61S、特に縦筋状の傷を検出する場合には、光スポットSPがy方向に分かれることは問題にはならない。したがって、実施例3の反射型光学センサ200Bでも、精度の高い検出が可能となる。
以下、上記実施例2の反射型光学センサ200A及び実施例3の反射型光学センサ200Bにおいて、同時に照射するLED211の形状と、被検面61S上に形成される光スポットSPの形状との関係を、図30を参照して説明する。
図30(a)、(c)、(e)には、同時に発光させるLED211の形状、すなわち、発光領域が複数に分かれている場合のLED211の配列を示している。このようなLED211により被検面61S上に形成される光スポットSPの形状の概略を図30(b)、(d)、(f)に示した。
図30(a)、(b)は、実施例3のように、y方向に並んだLED211を2つ同時に発光させた場合を示す。この図30(a)に示したようにy方向に並んだ2つのLED211を同時に発光させてスポット光を同時に照射した場合、図30(b)に示したように被検面61S上では、y方向に並んだ2つの光スポットSPとして、同時に被検面61S上に形成される。y方向に移動する移動体を検出する場合は、y方向に光スポットSPが分かれることは問題にならず、同時に2倍の領域の検出を行うことができる。これにより、検出光量が2倍になるため、SN比が向上し、検出精度が向上する。
図30(c)、(d)は、実施例2のように、x方向に隣接したLED211を2つ同時に発光させた場合を示す。この図30(c)、に示したようにx方向に隣接したLED211を同時に発光させた場合、図30(d)に示したように2つのLED211から同時に照射されたスポット光は被検面61S上で重なり、1つの光スポットSPが検出面61S上に形成される。ただし、所望の光スポットSPの形状を得るためには、同時に照射するLED211の形状と間隔、また、LED211上面に対するx方向の共役点位置をコントロールすることによって決定する。この場合も、検出光量が増えるため、SN比が向上し、検出精度が向上する。
また、図30(e)、(f)は、例えば、実施例3の反射型光学センサ200B等を用いて、x、y方向に2つずつ配列された4つのLED211を同時に発光させた変形例を示す。この図30(e)に示したようにx、y方向にそれぞれ隣接する4つのLED211を同時に発光させて同時にスポット光を照射した場合、被検面61S上に形成される光スポットSPは、図30(f)に示したように、紙面左右(x方向に隣接する)のLED211から照射されたスポット光が被検面61S上で重なるが、紙面上下(y方向)には別れた2つの光スポットSPが形成される。
実際に、図30(e)に示した4つの発光領域に分かれるLED211を同時に照射した場合に、被検面61S上に形成される光スポットSPの光強度を、図31に示す各断面において計測した。図31に示すA−A線断面、B−B線断面、C−C線断面、D−D線断面において光スポットSPの光強度を計測したときの計測結果を図32A、図32Bに示す。
この図32Aに示したように、y方向に計測したA−A線断面では、光スポットSPが2つにほぼ分かれている。これに対して、図32Bに示したように、x方向に計測したC−C線断面、B−B線断面、D−D線断面では、紙面左右のLED211から照射されたスポット光が被検面61S上で重なり、1つの光スポットSPが形成されていることがわかる。したがって、検出光量が増え、SN比が向上し、検出精度が向上する。
実施例2、実施例3及び変形例の反射型光学センサ200A,200Bの構造とすることにより、y方向に移動する移動体の表面状態を検出するには適したスポット光を被検面61Sに照射することが可能となる。このように複数のLED211を同時に発光させることによって光スポットSPの面積を増やす理由としては、一つの大きな面積のLED211を発光させるよりも、面積の小さな複数のLED211を同時に発光させた方が、発光光量が大きくなる場合があるからである。
以上説明したように、実施例2、実施例3及び変形例の反射型光学センサ200A,200Bによっても、ロバスト性が向上し、定着ベルト61のバタツキなどによる検出値の変動を抑制して、高精度に移動体の表面状態を検出することが可能となる。更に、2以上備えられたLED211において、隣接するLED211を同時に発光させることで、光スポットの光量を増やし、SN比を向上させ、精度の高い検出が可能となる。また、このような反射型光学センサ200A,200Bを備えることで、画像品質に優れた画像形成装置を提供することができる。
以上、本願の反射型光学センサ及び画像形成装置を、実施形態及び実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成についてはこれらの実施形態及び実施例に限られるものではなく、本願の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。また、前記構成部材の数、位置、形状等は各実施例に限定されることはなく、本願を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。