以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、画像形成装置の1種である「カラープリンタ」を説明するための図である。なお、本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラープリンタに限らず、モノクロ複写機やカラー複写機、ファクシミリ装置やプロッタ装置等として、あるいはこれらの各機能を複合させた複合機(MFP:Multifunction Peripheral)等として実施できることは言うまでもない。
図1(a)は、カラープリンタ100の要部のみを模式的に示している。カラープリンタ100は、所謂「タンデム型のプリンタ」である。符号11で示す「中間転写体である転写ベルト」は無端ベルトであって、複数のローラ(図においては3本)に掛け回されて設けられ、これらローラのうちの1本である駆動ローラに駆動されて反時計回りに回転するようになっている。
図1(a)における転写ベルト11の下側の部分は「平面的」に張られ、この部分に作像ユニットUY、UM、UC、UBが配設されている。ここで、符号中の「Y」は「イエロー」、「M」は「マゼンタ」、「C」は「シアン」、「B」は「ブラック」の色をそれぞれ表し、作像ユニットUYはイエロー画像を作像するユニット、作像ユニットUMはマゼンタ画像を作像するユニット、作像ユニットUCはシアン画像を作像するユニット、作像ユニットUBはブラック画像を作像するユニットである。
作像ユニットUY〜UBの下方には、「画像書き込み装置」である光走査装置13が配備され、更にその下方にカセット15が配置されている。上記作像ユニットUY〜UBは、構造的には同一のものであるので、作像ユニットUYを例に取り、図1(b)を参照して簡単に説明する。
図1(b)に示す作像ユニットUYは、光導電性の感光体として感光体ドラム20Yを有し、感光体ドラム20Yの周囲に、帯電器30Y、現像ユニット40Y、転写ローラ50Y、クリーニングユニット60Yを配置した構造となっている。帯電器30Yは「接触式の帯電ローラ」である。帯電器30Yと現像ユニット40Yとの間は「走査光LYによる画像書き込み部」として設定されている。転写ローラ50Yは、転写ベルト11を介して感光体ドラム20Yと反対側に配置され、転写ベルト11の裏面に接触している。
作像ユニットUM〜UBも、作像ユニットUYと同様の構成であり、これらについて必要あるときは、感光体ドラム20M〜20B、帯電器30M〜30B、現像ユニット40M〜40B、転写ローラ50M〜50B、クリーニングユニット60M〜60Bと表記する。
このようなカラープリンタ100による「カラー画像プリントのプロセス」は良く知られているが、以下に簡単に説明する。なお、図1(b)における「破線で示す長方形」は、作像ユニットUYのユニットを「一まとめ」に示すものであり、ケーシング等の実体を示すものでは必ずしも無い。
カラー画像形成のプロセスが開始すると、感光体ドラム20Y〜20B、転写ベルト11が回転を開始する。各感光体ドラム20Y〜20Bの回転は時計回り、転写ベルト11の回転は反時計回りである。
感光体ドラム20Y〜20Bの感光面は、帯電器30Y〜30Bによりそれぞれ均一帯電される。光走査装置13は、それぞれの感光体ドラム20Y〜20Bに対して、走査光LY〜LBによる光走査で画像書き込みを行なう。
なお、このような画像書き込みを行なう光走査装置13は、従来から種々のものが良く知られており、光走査装置13としては、これら周知のものが適宜利用される。
感光体ドラム20Yに対しては、イエロー画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LYとして光走査が行われてイエロー画像が書き込まれ、イエロー画像に対応する静電潜像が形成される。形成された静電潜像は所謂ネガ潜像であり、現像ユニット40Yによりイエロートナーを用いる反転現像により「イエロートナー画像」として可視化される。可視化されたイエロートナー画像は、転写ローラ50Yにより、転写ベルト11の表面側に静電的に1次転写される。
感光体ドラム20Mに対しては、マゼンタ画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LMとして光走査が行われてマゼンタ画像が書き込まれ、マゼンタ画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。形成された静電潜像は、現像ユニット40Mによりマゼンタトナーを用いる反転現像により「マゼンタトナー画像」として可視化される。
感光体ドラム20Cに対しては、シアン画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LCとして光走査が行われてシアン画像が書き込まれ、シアン画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。形成された静電潜像は、現像ユニット40Cによりシアントナーを用いる反転現像により「シアントナー画像」として可視化される。
感光体ドラム20Bに対しては、ブラック画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LBとして光走査が行われてブラック画像が書き込まれ、ブラック画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。形成された静電潜像は、現像ユニット40Bによりブラックトナーを用いる反転現像により「ブラックトナー画像」として可視化される。
マゼンタトナー画像は、転写ローラ50Mにより転写ベルト11側へ静電的に1次転写されるが、このとき、転写ベルト11上に「先に転写されているイエロートナー画像」に重ね合わせられる。同様に、シアントナー画像は、転写ローラ50Cにより、転写ベルト11上に「先に重ね合わせて転写されたイエロートナー画像、マゼンタトナー画像」に重ね合わせられて1次転写される。さらに、ブラックトナー画像は、転写ローラ50Bにより、転写ベルト11上のイエロー、マゼンタ、シアンの各色トナー画像に重ね合わせて1次転写される。このようにして、転写ベルト11上で、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー画像が重ね合わせられて「カラートナー画像」が形成される。
なお、各感光体ドラム20Y〜20Bは、トナー画像転写後に、それぞれクリーニングユニット60Y〜60Bによりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等を除去される。このようにして転写ベルト11に形成されたカラートナー画像は、2次転写ローラ17により転写ベルト11上からシート状記録媒体である転写紙S上に静電的に「2次転写」され、定着装置19により転写紙S上に定着されてプリンタ外に排出される。
転写紙Sは、カセット15内に積載されて収容され、図示されない周知の給紙機構により給紙され、図示されないタイミングローラ(レジストローラとも言う。)により尖端部を保持された状態で待機し、転写ベルト11上のカラートナー画像の移動にタイミングを合わせて2次転写部へ送り込まれる。
2次転写部は、転写ベルト11と、これに接して連れ回りする2次転写ローラ17との当接部であり、転写ベルト11上のカラートナー画像が2次転写部に到達するのにタイミングを合わせて、転写紙Sがタイミングローラにより2次転写部に送り込まれる。かくして、カラートナー画像と転写紙Sが重ね合わせられ、カラートナー画像は転写紙S上に静電転写される。2次転写によりカラートナー画像を転写された転写紙Sは、続いて、定着装置19を通過する際にカラートナー画像を定着され、その後、カラープリンタ100の上部のトレイTR上に排出される。以上が、カラープリンタ100による「カラー画像プリントのプロセス」の概略説明である。
次に、図1(a)のカラープリンタにおける定着装置19を、図1(c)を参照して説明する。定着装置19は、図1(c)に示すように所謂「ベルト定着方式」であり、定着を行なう部分は、図示の如く、定着部材としての定着ベルト61とともに、加熱ローラ62、定着用ローラ64、加圧ローラ63、テンションローラ65、剥離爪66等を有している。
定着ベルト61は、ニッケル、ポリイミドなどの基材に「PFAやPTFEなどによる離型層」を有するもの、さらには、これら基材と離型層との間に「シリコーンゴムなどの弾性層」を設けた構成である。従って、定着ベルト61の表面は「離型層をなすPFAやPTFEなどの樹脂」であり、その表面の情報が検出の対象である。
定着ベルト61は無端ベルトで、加熱ローラ62と定着用ローラ64とに巻き掛けられ、テンションローラ65により「必要な張り」を与えられている。
加熱ローラ62は、アルミや鉄による中空ローラで、ハロゲンヒータなどの熱源Hを内包しており、この熱源Hにより、加熱ローラ62を介して定着ベルト61を加熱する。なお、図示されていないが、定着ベルト61の表面温度を検出するための温度センサ(サーモパイル等)が、定着ベルト61の表面に「非接触」で設けられている。
定着用ローラ64は、金属の芯金をシリコーンゴムで囲繞し、弾性を付与したものである。定着用ローラ64は、定着ベルト61を反時計回りに回転駆動する。
加圧ローラ63は、アルミ又は鉄等の芯金の上にシリコーンゴムなどの弾性層を設け、表層はPFAやPTFE等の離型層により構成されている。加圧ローラ63は、定着用ローラ64と対応する位置で、定着ベルト61に圧接する。この圧接は、定着用ローラ64を変形させ「ニップ部」を形成する。このニップ部が定着部となる。
テンションローラ65は、金属の芯金にシリコーンゴムを設けたものである。剥離爪66はその尖端部が、定着ベルト61の表面に当接するようにして、定着用ローラ64の軸方向(紙面に垂直な方向)に複数個配設されている。
前述の如く、定着ベルト61の表面温度を検知する非接触の温度センサ(図示されず)が設けられているが、これに代えて、接触型の温度センサ(サーミスタ)を用いることも可能である。
定着が行なわれるときは、ヒータHにより加熱されつつ定着ベルト61が反時計回り、加圧ローラ63が時計回りにそれぞれ回転し、定着ベルト61の表面温度が定着可能な温度になると、カラートナー画像を転写された転写紙Sが、矢印方向へ搬送されて定着部に進入する。そして、カラートナー画像は、転写部において定着ベルト61側から熱を受け、加圧ローラ63により定着ベルト61に対して押圧されて圧力を受け、転写紙Sに定着される。
補足すると、カラープリンタ100は、転写ベルト11をクリーニングするクリーニング装置(図示されず)を有している。この「クリーニング装置」は、図1(a)において作像ユニットUYの左方において、転写ベルト11がローラに撒き掛けられた部分に対向して、転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有し、転写ベルト11上の「残留トナーや紙粉等の異物」を、上記クリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。また、クリーニング装置は、転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段(図示されず)も有している。
図1に示した画像形成装置例では、転写方式は、上述の如く「転写ベルト11上に各感光体ドラム20Y〜20Bに形成されたカラートナー画像を順次重畳して1次転写し、転写されたカラートナー画像を2次転写ローラ17により転写紙S上に一括転写する方式」であるが、転写方式はこれに限らない。例えば、転写ベルト11上に転写紙Sを担持して搬送し、この転写紙Sを各感光体ドラムに対向接触させて各色のトナー画像を、直接転写紙S上に重畳して転写する方式とすることも可能である。この場合も、カラートナー画像の定着は、上記と同様でよい。
さて、図1に示す画像形成装置(カラープリンタ100)においては、定着装置19が、定着部材(定着ベルト61)の表面の情報を示す表面情報を検出する「表面情報検出装置」を有する。表面情報検出装置は「定着部材の表面における搬送方向と交わる方向に沿って、複数の光スポットを照射し、各光スポットにおける反射光を受光して検知し、複数の検知結果に基づいて定着部材の表面情報を検出する」ものであるが、本実施の形態においては、図1(c)に示す反射型光センサ200と検出部300とから構成される。
また、反射型光センサ200と定着ベルト61の間には、可動可能な遮光部材400が設けられる。ただし、可動機構は図示していない。遮光部材400は、反射型光センサ200と定着ベルト61との間の光路(「表面情報検出装置と定着部材との間の光路」と捉えることができる)を遮るためのものであり、この例では、必要に応じて遮光部材400が可動し、光路が開閉する。つまり、反射型光センサ200から出射される光が定着ベルト61に対して照射される状態と、反射型光センサ200から出射される光が定着ベルト61に対して照射されない状態とが切り替わる。
反射型光センサ200は、図1(c)に示すように、定着ベルト61の「加熱ローラ62に巻き掛けられた部分」に対向して配置され、定着ベルト61の表面に向かって「定着ベルト61の表面における搬送方向と交わる方向」に複数の光スポットを照射し、その定着ベルト61からの反射光を受光するセンサ部と、センサ部を駆動する駆動部とを含んで構成される。なお、これに限らず、反射型光センサ200が、後述の検出部300の制御の下、駆動する形態であってもよい。
上記「定着ベルト61の表面における搬送方向と交わる方向」は、光走査による画像書き込みの際の「主走査方向」に対応するので、以下では簡単に「主走査方向」と言う。
検出部300は、反射型光センサ200に接続され、カラープリンタ100内に配置され、反射型光センサ200からの検知信号を受けて定着ベルト61の表面状態を表面情報として検出する。この例では、検出部300は、請求項の「検出部」に対応している。
定着部材である定着ベルト61の表面は、当初は無傷であるが、定着動作が繰り返されるに従い、前述のオフセットや、剥離爪66等との接触による傷、シート状記録部材による「筋状の傷」が発生する。このような「傷やオフセットの生じた表面の状態」、即ち、「オフセットの有無や程度、傷の状態や位置」が表面状態であり「表面情報」である。
以下では、主として「筋状の傷」に係る表面情報の検出を説明する。図2は、定着装置19による定着を、説明するための図である。図2における上下方向は「定着ベルト61表面で搬送方向TRDと交わる方向(前述の主走査方向)」に対応する。符号Sは、定着されるカラートナー画像を有する転写紙を示している。この説明例では、転写紙Sは「A4サイズ」であり、これを長手方向と幅方向に搬送できるようになっている。符号A4Tは、A4サイズの転写紙Sを長手方向に搬送するときの紙幅を示し、符号A4Lは、A4サイズの転写紙Sを幅方向(短手方向)に搬送するときの紙幅を示している。
紙幅A4Lは、定着ベルト61の幅(図の上下方向の長さ)に略等しく、従って、A4サイズの転写紙Sを幅方向(短手方向)に搬送するときには、長手方向の端部に生じる筋状の傷は、実際上殆ど問題とならない。一方、紙幅A4Tは、定着ベルト61の幅よりも短く、筋状の傷は、紙幅A4Lの内側に発生し、前述した問題を生じさせ得る。
図2における符号W1、W2は、A4サイズの転写紙Sを長手方向に搬送するとき、主走査方向における転写紙幅端部の移動の余裕幅を示している。A4サイズの転写紙Sを長手方向に搬送するにしても「主走査方向の搬送位置を各転写紙に対して完全に一致させる」ことはできず、転写紙Sの両側端部の通過位置は、主走査方向にわずかながら変動する。また、定着ベルト61自体にも、所謂「ベルトの寄り」が発生すると、定着ベルト表面は、主走査方向において転写紙Sの両側端部に対して変動する。余裕幅W1、W2は、このような変動を考慮したものである。
また、転写紙Sと定着ベルト61の接触する位置の変動幅が「狭い」と、筋状の傷も狭い範囲に集中して発生するので、転写紙を搬送する際に、転写紙ごとに意図的に「主走査方向での搬送位置」をずらす場合もある。余裕幅W1、W2は、このような場合にも考慮される。尤も、余裕幅は大きくても「10mm」程度である。このように、余裕幅W1、W2を考慮すると、A4サイズの転写紙Sを長手方向に送る場合「筋状の傷の有無」を表面状態として検出するのであれば、検出領域Aは、余裕幅よりも大きく設定する必要がある。
図2の例では、検出領域Aは、余裕幅W1、W2のうち「余裕幅W2を含む」ように設定され、余裕幅W1のある側には設けられていない。これは、筋状の傷の発生は、余裕幅W1の領域と余裕幅W2の領域とで略同様に起こるであろうと考えられ、一方の余裕幅内での検出で実用上は十分であると考えられるからである。
勿論、余裕幅W1、W2の各領域に対して検出領域を設定してもよく、さらには、検出領域の大きさを「転写ベルト11の幅全体」に亘るように設定しても良い。反射型光センサ200は、主走査方向に複数の光スポットを照射する。これら複数の光スポットが照射される領域が検出領域Aをなす。反射型光センサ200は、長い検出領域Aを形成できるため、反射型光センサ200と転写紙の幅方向端部との「主走査方向の相対的な位置関係」は、比較的ラフでよい。
検出部300は、反射型光センサ200からの検知信号を受けて、主走査方向に長い検知領域Aにおける「定着ベルトの表面状態」を検知することができる。そして、転写紙の幅方向端部が検知領域Aに含まれるとき、転写紙の幅方向端部により形成される筋状の傷の情報である「傷レベル」および/または「傷の位置(主走査方向の位置)」を定着ベルト61の表面情報として定量化する。この点については後述する。
ここで、傷レベルとは「傷の程度」、すなわち「傷の深さ(粗さ)や傷の幅(大きさ)」を言う。「傷の深さ」について補足すると、定着部材の表面に「傷(サーミスタや剥離爪との接触による傷や、筋状の傷)」が生じると、前述の如くに、傷の部分で「定着部材とトナー画像の接触圧」が弱くなり、傷に応じて「定着不全」が生じ、定着された画像では「白抜け(画像濃度の低下する減少)」と呼ばれる「画像異常」が発生する。この明細書で言う「傷の深さ」は、このような「傷と、傷に起因する画像異常との相関関係」を定量的に捉え、画像異常の程度を表すパラメータとして表現したものである。
次に、反射型光センサ200の具体的な一例を説明する。図3乃至6は、反射型光センサ200の具体的な一例を説明するための図である。ここでは、図3乃至6に示す如くにX、Y、Z方向を定める。X方向は、上の説明における「搬送方向に交わる方向」で、説明中の例では「主走査方向」に対応する。Y方向は「搬送方向」に対応する。Z方向は「X、Y両方向に直交する方向」である。図3乃至6における符号61Sは、定着ベルト61の「検出領域(前述の検出領域A)を含む表面部分」を示す。従って、Z方向は、反射型光センサ200から上記「表面部分61S」に向かう方向である。図3乃至6において、符号210は基板、符号240は側板を示し、符号220はレンズ素子を示す。
図3は、基板210上におけるLED(発光ダイオード)とフォトセンサであるフォトダイオード(以下「PD」と表記する。)の配列状態を説明するための図である。また、図4は、Y方向の負側においてX−Z平面を断面とした場合における反射型光センサ200の模式図であり、図5は、Y−Z平面を断面とした場合における反射型光センサ200の模式図である。さらに、図6は、Y方向の正側においてX−Z平面を断面とした場合における反射型光センサ200の模式図である。
まず、図3を参照すると、符号211はLED、符号212はPDをそれぞれ示す。図3の例では、基板210の長手方向であるX方向に沿って、それぞれが複数(図3の例では4個)のLED211からなる複数(図3の例では4個)の組が等間隔的に配列されている。なお、図3においては、16個のLED211が描かれているが、これは説明の便宜上のものであり、LED211の配列個数は、設計条件により定められ、一般には数十個〜数百個に設定できる。また、図3の例では、基板210上には、LED211の個数と同数のPD212が、X方向に等間隔で配列されている。
図4の左側から順に数えて4つずつのLED211を1つの組p(p=1〜P)とし、各組に含まれる4つのLED211について左側から1つずつ順次に番号を振り、図の左側から数えてp番目の組のq番目のものをLED211−p−qと表す。全LED211は、LED211−1−1、211−1−2、211−1−3、211−1−4、211−2−1、・・・、211−2−4、・・・、211−p−q、・・・211−P−4の順次の配列であり、LED211の総数をNとすると、N=4Pである。
PD212については、図6の左側から1つずつ順次に番号を振り、図の左側から数えてn番目のものをPD212−nと表す。PD212の総数はNであって、全PD212は、212−1、212−2、・・・、212−n、・・・212-Nの順次の配列である。
次に、図4乃至6を参照して、レンズ素子220を説明する。レンズ素子220は、2つの領域部分から構成されている。即ち、図4乃至6に示すように、照射用レンズ220−p(p=1〜P)をアレイ配列した照射用レンズアレイの領域と、受光用レンズ220Cによる領域とである。照射用レンズ220−pの個数は、本実施例ではLED211の個数を4で割った数(P=N/4)であり、LED211のZ方向上部に、4個のLED211−p−q(q=1〜4)と照射用レンズ220−pとが1対1に対応するようにして、X方向に配列されている。
受光用レンズ220Cは、図4および図6に示すように「単一のシリンドリカルレンズ」であり、PD212−1〜212−Nに共通に対応して、PD212のZ方向上方に配置される。なお、図6は、反射型光センサ200を「Y軸の正の方向から負の側へ向かって見た図」であると捉えることもできる。受光用レンズ220Cは、Y方向にのみ正のパワーを有する。
照射用レンズアレイの領域と照射用レンズ220Cとは一体的に形成されており、これらは、樹脂成型により一体成形することができる。図4において、符号230−0、230−1、・・230−p、・・・230−Pは「4個のLED211−p−q(q=1〜4)と照射用レンズ220−pとの組」の互いに隣接する組間での「フレア光」を防止するための開口部材を示している。また、図5に示す符号231は、LED211−p−q(q=1〜4)の配列と、PD212−pの配列の間でのフレア光を主に防止するための開口部材を示している。
図7は、前述の組の数を7としたときの開口部材230、231が一体化されている様子を示す図である。図7に示すように、4個のLED211−p−q(q=1〜4)と照射用レンズ220−pとの組に対応して、開口が設けられている。開口を設けることで、点灯する任意のLEDに対応する照射用レンズ220C以外の照射用レンズ220Cを透過して定着ベルト61に照射する光や、点灯する任意のLEDに対応する照射用レンズ220Cや点灯する任意のLEDに対応する照射用レンズ220C以外の照射用レンズ220Cのレンズ面からの直接の反射光(以後、これらの光をフレア光という)が、PDに直接入射することを防いでいる。
図5における符号241は、幅方向(Y方向)の側板を示す。側板240、241は、一体化してケースをなしている。上記開口部材230、231は「ケース」と樹脂成形により一体化でき、レンズ素子220と開口部材231、232も樹脂成形により一体化できる。さらに、レンズ素子220と開口部材230、231と「ケース」も樹脂成形により一体化できる。
図4に示すように、LED211−p−qを点灯させると、放射された「発散性の光束」は、LED211−p−qに対応する照射用レンズ220−pにより集光され、定着ベルト表面61Sを光スポットとして照射する。定着ベルト表面61Sの「光スポットで照射された部分」での反射光は、図6に示されたように、受光用レンズ220CによりY方向にのみ集光されて、いずれかのPD212−nに入射する。なお、定着ベルト表面61Sによる反射は、鏡面反射と言うわけではなく、また受光用レンズ220CによりX方向には集光されていないので、反射光を受光するPDは「PD212−nのみ」ではなく、複数に渡る。
次に、反射型光センサ200の動作を、図8に示すフロー図を用いて説明する。各LED211は、不図示の駆動部の制御の下、光スポットが、図4に示す定着ベルト表面61S上の左端S−1から右端S−Nまで走査するように、LED211−p内のLED211−p−4からLED211−p−1まで点灯し、pは1〜Pまで「順に1個ずつ点灯と消灯」を繰り返す。所謂「順次点灯」である。これは照射用レンズ220−pが倒立系であることに起因している。
図8に示すように、最初に、駆動部は、図4の左側から数えて第1番目の組(p=1)を駆動対象の組pとして指定する(ステップS1)。次に、検出部300は、ステップS1で指定した組pに含まれる4つのLED211のうち左側から数えて4番目のLED211(q=4)を駆動対象のLED211として指定する(ステップS2)。次に、駆動部は、LED211−p−qを点灯させる(ステップS3)。
LED211−p−qの点灯に同期して、定着ベルト表面61Sからの反射光は、受光用レンズ220CによりY方向にのみ集光されてPD212−nを含む、複数個のPD212で受光される(ステップS4)。この例では、説明の簡単のため、受光するPD212の数は「奇数」であるとし、mを整数として(2m+1)個であるとする。即ち、LED211−p−qが点灯したときの反射光は、PD212−nと「その両側に続くm個のPD」とで受光される。例えば、m=2であるとすれば、反射光を受光する複数のPDは、PD212−n−2、PD212−n−1、PD212−n、PD212−n+1、PD212―n+2の5個である。
これら複数のPD212は、受光量を光電変換する。光電変換された信号は、増幅されて「検知信号」となる。PD212ごとの各検知信号は、検知のつど、検出部300に送られる。mの値は2に限られるものではない。例えば画像との相関を予め実験的に求めておき、良好なmを選択することもできる。ただし、m=0のように小さいとPDの出力値は1つしかなく、値が小さいため検知ばらつきが大きくなってしまう。また、mが大きく、PDの総和に相当するような場合には、検出したい筋状の傷のコントラストが低下してしまう。好ましいmの値は、2から6程度である。
続いて、駆動部は、LED211−p−qを消灯させる(ステップS5)。次に、駆動部は、各PD212の検知信号を検出部300に送信する制御を行う(ステップS6)。次に、駆動部は、駆動対象として指定したLED211を示す「q」の値が1よりも大きいかどうか(駆動対象として指定した組pに含まれる4つのLED211のうち左から数えて第2番目〜第4番目の何れかが駆動対象であるかどうか)を判定する(ステップS7)。ステップS7の結果が「YES」の場合、駆動部は、「q」の値を1だけカウントアップする(ステップS9)。つまり、それまで駆動対象であったLED211よりも1つだけ右側のLED211を駆動対象として新たに指定することになる。そして、前述のステップS3以降の処理が繰り返される。
上述のステップS7の結果が「NO」の場合、駆動部は、駆動対象として指定した組を示す「p」の値が、組の数の最大値を示すPよりも小さいかどうかを判定する(ステップS8)。ステップS8の結果が「YES」の場合、駆動部は、「p」の値を1だけカウントアップする(ステップS10)。つまり、それまで駆動対象であった組pよりも1つだけ右側の組pを駆動対象として新たに指定することになる。そして、前述のステップS2以降の処理が繰り返される。一方、ステップS8の結果が「NO」の場合、つまり、最終のLED211−P−1が「点灯・消灯」した場合、以上を1周期とする順次点灯を繰り返すかどうかを判断する(ステップS11)。場合によっては、検知精度を上げるために、順次点灯を複数周期に亘って行い、各周期での検知結果の平均値処理などを行うこともできる。ステップS11において、次の1周期の順次点灯を行うと判断された場合(ステップS11:YES)、前述のステップS1以降の処理が繰り返され、順次点灯を終了すると判断された場合(ステップS11:NO)、処理は終了する。
上記の場合、定着ベルト表面61S上を光スポットが左端寄りS−1やS−2にある場合、すなわちLED211−1−3やLED211−1−4が点灯するとき、受光用レンズ220Cが倒立拡大系であるため、受光するPD212は5個に満たない。また、光スポットが右端寄りにある場合も同様である。このような事情を鑑みると、この場合、順次点灯するLED211をN個とするのではなく、定着ベルト表面61S上の光スポットが左端寄り及び右端寄りになるLED211を2個ずつを外しN−4個について順次点灯を行なうようにしても良い。即ち、一般的には、点灯・消灯するLED211は、N個全てを用いる必要はなく、そのうち任意のN’(≦N)個を用いても良い。
図3乃至6に示した反射型光センサ200を、図8のフローに従って動作させたときの実験結果の一例を図9に示す。図9は、定着ベルト61が無い状態(すなわち反射型光センサ200から出射された光束を反射する対象物がない状態)で、各々のLED211−p−q(q=1〜4)を点灯させたときのPDn(n=1〜28)のPDの出力値を示している。定着ベルト61が存在しない場合には本来であればPD出力はゼロであることが理想であるが、この結果に示すように第14番目のPD(図9ではPD14と表記)および第15番目のPD(図9ではPD15と表記)を中心として山状のPD出力が得られていることが分かる。ここでは、このPD出力の発生要因として、図10に示すように、LED211−p−qを点灯すると、その発散性の光束の一部は、開口部材230−pおよび231の前面(LED211に対向する面)で反射散乱され、複数のPD210−nに受光されてしまうことを突き止めた。
そこで、本実施形態では、定着ベルト61が無い状態を画像形成装置内で作るため、図1(c)に示した遮光部材400を設置する。定着ベルト61が存在する場合には、本来検出したい定着ベルト61からの反射光に加え、上記開口部材前面での反射光が含まれたPD出力が検出されていることになる。そこで、遮光部材400を閉じた状態(検出部300と定着ベルト61との間の光路を遮る状態)でPD出力を検出し、続いて遮光部材400を開いた状態(検出部300と定着ベルト61との間の光路を遮らない状態)でPD出力を検出し、その差分を取ることで、定着ベルト61からの反射光のみを得ることができる。
図11は、定着ベルト61が有る状態(すなわち遮光部材400が開いた状態)で取得したPD出力から、図9に示すPD出力(定着ベルト61が無い状態(すなわち遮光部材400が閉じた状態)で取得したPD出力)を差し引いたときのPD出力である。すなわち、定着ベルト61からの反射光のみの信号となる。この結果についてPD出力の山状のピークに着目してみると、LED−p−4、LED−p−3、LED−p−2、LED−p−1のように順次点灯した場合に、PD出力がピークとなるPD番号は、小さいほうから大きいほうへシフトしていくことが分かる。これは、LED−p−4、LED−p−3、LED−p−2、LED−p−1のように順次点灯した場合には、定着ベルト表面61S上の光スポットが、左から右へ走査されることからも明らかである。
本実施形態では、検出部300は、定着ベルト61に照射される複数の光スポットの光量に基づいて算出される第1の光量補正係数(各光スポットの光量ばらつきを補正するための係数を指す。以下の説明では、「光量ばらつき補正係数」と呼ぶ)と、画像形成装置の使用時間に関する第1の使用状況(この例では画像形成装置の使用開始前)、および、第1の使用状況よりも使用時間が長い第2の使用状況(この例では画像形成装置の使用開始後)の各々における複数の受光部(この例ではPD212)の検知結果に基づいて算出される第2の光量補正係数(以下の説明では、単に「光量補正係数」と呼ぶ)と、を用いて表面情報を検出する。以下、具体的に説明する。
図12に、画像形成装置の使用開始前(第1の使用状況)において、遮光部材400を閉じた状態で、LED211−1−1からLED211−7−4までの28個のLED211のうち、LED211−2−4からLED211−6−1までの20個を順次点灯した場合における28個のPD出力を示す。画像形成装置の使用開始前とは、画像形成装置がユーザーによって使用される前の時点を意味しており、具体的には、画像形成装置の製造時や出荷時のことである。また、ユーザーに販売され、ユーザー使用環境に設置された後(着荷時)でも良い。これらのとき一般に画像形成装置は室温状態下にあり、20〜25度程度である。画像形成装置の使用開始前においては、もちろん定着装置も作動していないため、反射型光センサ200の近傍、すなわちLED部の温度も室温状態にある。ここでは、そのときの温度をT0(℃)とする。
図13に、図12の結果から、各LEDに対してPD1〜PD28の最大値から最小値を引いたPV値を示す。この結果は、検出部300内の記憶装置に保持しておく。ここで、前述の温度T0(℃)は既知であることが好ましいが、分からなくても本発明の効果は変わらない。なお、画像形成装置の長期間の使用等により、定着ベルト61を新品に交換した場合には、交換した後に、上記の使用開始前の複数の受光部の検知結果を取得し、その結果を従来の結果と置き換えて、検出部300内の記憶装置に保持しておく。
一方で、画像形成装置の製造時において、反射型光センサ200を画像形成装置に組み付ける前に、あらかじめ反射型光センサ200のLED211−2−4からLED211−6−1までのLEDを順次点灯したときの光スポットの光量を測定しておく。図14に光スポットの光量測定結果を示す。
これは、反射型光センサ200の画像形成装置の使用開始前における、複数の発光部(この例ではLED211)を有することによる光量ばらつきを表している。以降の反射型光センサ200の動作は、この光量ばらつき条件下で行われることになるので、この光量ばらつきで補正することにより、複数の発光部が完全に等しい光スポットの光量を有しているとみなすことができる。
光量測定結果より光量ばらつき補正係数を算出しておき、検出部300内の記憶装置(不図示)に保持しておく。図15は、算出した光量ばらつき補正係数の一例を示す図である。ここでは、LED211−3−4からLED211−5−1までの平均値で規格化している。なお、光スポットの光量測定については既知の方法があり、光パワーメータで各LEDに対応する光スポットの光量を測ることもできるし、CCDカメラ等のエリアセンサを用いて光スポットの光量を測ることもできる。
画像形成装置の使用開始後において、すなわち、ユーザーが画像形成装置の使用を開始した後の任意のタイミングで、定着ベルト61の表面状態を検出するために、反射型光センサ200は動作する。
図16は、遮光部材400を閉じた状態で、LED211−1−1からLED211−7−4までの28個のLEDのうち、LED211−2−4からLED211−6−1までの20個を順次点灯した場合における28個のPD出力の一例を示す図である。反射型光センサ200は印刷ジョブ後に実行されると、定着装置19の作動後である反射型光センサ200近傍の温度は高温状態下にある。このときの温度をT(℃)とすると、一般にT>T0である。図16のPD出力は、図12のPD出力よりも小さい値となっている。これはLED部の温度が高くなっているため、LED発光出力が低下したことが一因である。また経時によるLED発光出力低下も含まれている。
図17に、図16の結果から、各LEDに対してPD1〜PD28の最大値から最小値を引いたPV値を示す。ここで、温度T[℃]は既知であることが好ましいが、分からなくても本発明の効果は変わらない。
以上の結果を用いて、画像形成装置の使用開始前後におけるPD1〜PD28の検知結果(ここではPV値)を用いて、光量補正係数を算出した結果の一例を図18に示す。図18は、図17の結果を、図13の結果で除算したものである。図18に示すように、各LEDは何れも0.65近傍の値を示しており、LEDの温度上昇による発光出力低下の寄与と、LEDの経時劣化による発光出力低下の寄与を表している。
このように光量補正係数は、画像形成装置の使用開始前(温度T0)を基準としたときの、使用開始後の任意のタイミング(温度T)での各LEDの光量変化を示している。なお、使用開始前を時刻0として、使用開始後の任意のタイミングでの時刻tでの経時による各LEDの光量変化も含んだ結果となっている。
続いて、前述したように、遮光部材400を開いた状態で同様に28個のPD出力を取得し、遮光部材400を閉じた状態で取得したPD出力との差分を取ることで、定着ベルト61からの反射光のみを得ることができる。その結果を図19に示す。これは、温度T(℃)での結果になる。
そして、図20に、図19の結果から、各LEDに対して、複数のPDに対するPD出力の和を取った結果(LEDごとに、複数のPDの各々の出力の和を求めた結果)を示す。すなわち、定着ベルト61から反射され、反射型光センサ200が複数の受光部で取得した光量を意味する。すべてのPD28個の総和をとっても良いし、最大値を含む任意数の和でも良い。これは反射型光センサ200の光学系に依存するため、実験等により予め定めておけばよい。ここでは最大値を含む周辺9個のPD出力和とした。
この図20は反射型光センサ200で検出した領域A部分の定着ベルト61上の表面情報を表していることになる。ただし、温度T(℃)、経時tでの反射型光センサ200で検出した表面情報である。あるタイミングでの相対的な表面情報であれば、この結果で十分である。しかしながら、異なる温度、異なる経時での表面情報と比較して、その変化を捉えるためには、LEDの発光量変化を補正した絶対的な表面情報が必要となる。
そのために、図18で求めた光量補正係数で、図20の結果を除算する。その結果を図21に示す。図21の結果は、図20の結果よりも値が大きくなっており、これは光量補正係数によって、各LEDの発光量低下が補正されたからである。すなわち、この結果は、温度T(℃)、経時tでの反射型光センサ200で検出した表面情報を、温度T0(℃)、時刻t=0での表面情報に定量的に変換したことに他ならない。
さらに、図15で求めた光量ばらつき補正係数で、図21の結果を除算する。その結果を、図22に示す。図22の結果は、図14で示した光スポットの光量ばらつきを補正した結果となっている。例えば、LED211−2−1は図14(図15)に示すように、他のLEDに比べると10%程度発光量が小さかった。その影響を受け、図21においてもLED211−2−1のPD出力和の値が大きく落ち込んでいる。光量ばらつき補正後の結果である図22を見てみると、LED211−2−1の落ち込みは小さく、隣接するLED211−2−2に近い値である。すなわち、光量ばらつき補正をしない場合、図21の結果を採用すると、LED211−2−1を後述する「傷の位置」と誤検出しかねない。光量ばらつき補正をすることにより、より精度の高い検出が可能である。
発光源としてのLEDアレイは、一般的に光量ばらつきとして±10%ないしは±20%と言われる特性を有しており、光量ばらつき補正は重要である。
なお、ここでは、LEDの発光量変化の視点で記載をしているが、本来はPDの受光感度の温度変化や経時変化、光学系の温度変化や経時変化も含めた、反射型光センサ200としての変化を考慮すべきであるのは言うまでもない。実際にはPDの受光感度の変化はLEDの変化に比べると十分小さく、また光学系の温度による変形の影響も十分に小さいことが分かっている。そのため、LEDの発光量変化を反射型光センサ200の変化の主要因として取り上げている。とはいえ、測定上としては、LEDの発光量変化と言いつつも、反射型光センサ200として光学系及びPDの変化を含んだ形でのPD出力値として捉えているので、実際には反射型光センサ200全体としての光量変化を示していることになる。
上記において、T0<Tの条件にて説明をした。その結果、図18に示す光量補正係数は1以下となっている。もちろん、T0>Tの条件でも本発明は成り立つことは言うまでもない。このとき、温度に依存する各LEDの発光量増加が、経時での各LEDの発光量低下を上回っていれば、光量補正係数は1以上になる。
本実施形態では、画像形成装置の使用開始前後において、遮光部材400を閉じた状態で、LED211−1−1からLED211−7−4までの28個のLEDのうち、LED211−2−4からLED211−6−1までの20個を順次点灯した場合における28個のPD出力を用いて光量補正係数を算出しているが、遮光部材400が開いた状態でも光量補正係数を算出することは可能である。しかし、定着ベルト61の傷の程度が悪状態である場合には、その部分の影響を受けてしまうため、光量補正係数の精度が落ちてしまう.したがって、定着ベルト61からの反射光を含まない状態での複数の受光部の検知結果を用いて光量補正係数を算出することが好ましい。
また、本実施形態では、光量補正係数を求める際に、複数の受光部の検知結果として、最大値から最小値を引いたPV値を用いた。これは反射型光センサ200に電気的ノイズ等の影響がPD出力値に加算されているような場合には、その影響を差し引くという点で有効である。ただし、これに限らず、別の例として、複数の受光部、例えばPD1〜PD28のPD出力和としてもよい。これは、電気的ノイズ等の影響がなければ、1つのPD出力値よりも、多くのPD出力値の和を取ることにより、誤差が軽減される。また、両方を組み合わせた形態であってもよい。例えば最大値付近の複数のPD出力値の和から最小値を引くことにより、複数のPD出力値の和を取りつつ電気的ノイズ等の影響を差し引くことで誤差を軽減できるという効果が得られる。
次に、図23を参照しながら、遮光部材400を閉じた状態(定着ベルト61からの反射光を含まない状態)と開いた状態(定着ベルト61からの反射光を含む状態)での測定手順、および、光量補正係数で除する手順を説明する。
まず、画像形成装置の使用前(第1の使用状況に対応)においては、遮光部材400は閉じた状態にある(ステップS11)。この状態で、センサ部を駆動する駆動部(不図示)は、LED211を順次に点灯させ(ステップS12)、検出部300は、PD出力を取得する(ステップS13)。このLEDの順次点灯およびPD出力の取得の詳細動作が、図8に示すフローチャートである。前述したように、検出部300は、取得したPD出力の結果を、内部の記憶装置(不図示)に保持する。なお、この結果は後述の光量補正係数算出にて使用する。
続いて、画像形成装置の使用が開始された後の任意のタイミング(第2の使用状況に対応)において、遮光部材400の開閉を制御する開閉制御ユニット(例えば検出部300が遮光部材400の開閉を制御する形態であってもよい)は、遮光部材400を閉じたままの状態に制御する(遮光部材400が開いていた場合には、閉じた状態に制御する)。この状態で、センサ部を駆動する駆動部は、LED211を順次に点灯させ(ステップS14)、検出部300は、PD出力を取得する(ステップS15)。上記同様、このLEDの順次点灯およびPD出力の取得の詳細動作が、図8に示すフローチャートである。
検出部300は、ステップS13で取得したPD出力の結果と、ステップS15で取得したPD出力の結果を用いて、光量補正係数を算出する(ステップS16)。次に、遮光部材400の開閉を制御する制御ユニット(不図示)は、遮光部材400を開いた状態に制御する(ステップS17)。この状態で、同様に、駆動部はLEDを順次点灯させ(ステップS18)、検出部300は、PD出力を取得する(ステップS19)。上記同様、このLEDの順次点灯およびPD出力の取得の詳細動作が図8に示すフローチャートである。
ステップS19の後、制御ユニットは、遮光部材400を閉じた状態に制御する(ステップS20)。なお、ここで必ずしも遮光部材400を閉じた状態にする必要はないが、閉じることにより、反射型光センサ200を保護する(耐熱、防塵)ことが期待できる。そのため、定着ベルト61への光スポット照射時以外は閉じておくことが好ましい。
次に、検出部300は、ステップS19で取得したPD出力と、ステップS15で取得したPD出力との差分を算出する差分処理を実行する(ステップS21)。遮光部材400を閉じた状態でPD出力を検出し、続いて遮光部材400を開いた状態でPD出力を検出し、その差分を取ることで、定着ベルト61からの反射光のみを得ることが可能となる。
ただし、このままでは反射型光センサ200の動作時点でのLED発光量に温度変化、経時変化を含んだ結果であるので、検出部300は、前述のステップS16で算出した光量補正係数を用いて光量補正を行なう(ステップS22)。具体例としては上述したように、各LEDのPD出力(差分値)に対して、光量補正係数で除算する。
さらに、検出部300は、予め取得しておいた光量ばらつき補正係数を用いて光量ばらつき補正を行う(ステップS23)。具体例としては上述したように各LEDの光量補正係数を用いた補正値に対して、光量ばらつき補正係数で除算する。なお、任意のタイミングは、例えば1000枚印刷毎のように所定の印刷枚数を経過する毎に行なうことができる。これにより、表面情報の変化を検出することができる。また、印刷中にジョブを止めるのは生産性を落としてしまうので、所定枚数の印刷を過ぎたジョブ後に行なうことが良い。
なお、上述のステップS13、ステップS15、および、ステップS19の各々におけるPD出力の取得に際し、図8のフローチャートにもあるように、LED211を複数周期に渡って順次に点灯することで、周期数で平均化しても良いし、異常値を除去するために中央値を用いたりすることにより、検出精度を向上させることができる。定着ベルト61の1回転分以上に渡ってLED211を複数周期順次点灯することが好ましく、この場合には定着ベルト61の回転変動を緩和することができる。特に、5周期以上順次点灯することで、最大値と最小値を除いた3周期分以上のデータを使用することで異常値除去も可能である。
次に、遮光部材400の具体例を説明する。図24(a)は遮光部材400が閉じた状態を示し、図24(b)は遮光部材400が開いた状態を示す図である。遮光部材400は、駆動軸に締結されており、上下動可能なように設置されている。遮光部材400は、高温耐熱性を有する不透明のエンジニアリングプラスチックを主部材として、反射型光センサ200側には(図示しない)黒色の低反射部材が貼り付けられている。なお、駆動軸はモータ制御され、反射型光学センサの動作タイミングと同期して、自動で可動可能である。
エンジニアリングプラスチックは、定着ベルト61からの伝熱が反射型光センサ200に直接伝わらないように遮蔽しており、その伝熱を低減する機能を持っている。エンジニアリングプラスチックは通称エンプラと呼ばれ、特に耐熱性の高いスーパーエンプラを用いても良い。黒色の低反射部材としては薄いフィルムなどがあり、反射型光センサ200からの照射スポット光を吸収し、PDに受光されないための機能を有する。もちろん、エンジニアリングプラスチックが低反射機能を有していれば黒色の低反射部材は不要となる。
図24(a)および(b)に示した遮光部材400は、定着ベルト61の主走査方向の全幅とほぼ同じ、もしくは若干長く形成されており、定着ベルト61全体から反射型光センサ200への伝熱を低減する役目も持つ。
別の例として、定着ベルト61の主走査方向の全幅より短く、反射型光センサ200よりも長い遮光部材とすることもできる。この場合には、反射型光センサ200に対向する定着ベルト61部分からの直接的な伝熱は低減できるが、周囲からの伝熱は低減できないため、図24(a)および(b)の場合よりも伝熱の低減効果は小さくなってしまう。しかし、それでも反射型光センサ200の性能が十分に確保できる場合には、遮光部材400の小型化を優先し、この直接的な伝熱の低減のみでもよい。
図24(c)は、別の例の遮光部材400が開いた状態を示す図である。図24(b)では、遮光部材400の可動範囲においてスペースの確保が必要である。これに対して、図24(c)に示すように遮光部材400を駆動軸に巻きつける構成とすれば、省スペース化を図ることができるという利点がある。
ここで、定着ベルト61の表面温度は100数十度〜200度程度に設定されるため、定着に対向して配置される反射型光センサ200には直接的に熱の移動が生じてしまう.反射型光学200センサにはLED、フォトダイオード、レンズ、電子回路、さらにそれらを取り囲むケースなどから構成されており、特に高温時においては、レンズやケースの熱変形や、発光/受光素子や電子回路の熱特性による性能劣化が生じてしまうという課題がある。または性能を確保するために、高温に耐えうる部品を選択せざるを得なくなり光学検知手段(光学センサ)が高価となってしまうという課題がある。このため、定着ベルト61全体から反射型光センサ200への伝熱を低減することは重要である。長さについては防塵効果についても同じことが言える。
別の例として、「表面情報検出装置」を可動可能とし、より具体的には、反射型光センサ200を可動可能とすることもできる。定着ベルト61からの反射光を含まない状態を作る場合には、反射型光センサ200を可動させ、光スポットが定着ベルト61に照射されないようにすれば良い。1例として、図1(c)において定着ベルト61に照射されないように反射型光センサ200が可動された例を、図25(a)に示す。図示はしないが、回転ステージ等に反射型光センサ200を支持することにより可動可能である。また、図25(b)に示すように、可動した状態で光スポットが遮光板に当たるように、遮光板を設置しておくことが好ましい。要するに、表面情報検出装置は、定着部材に対して複数の発光部からの光を照射可能な第1の位置と、定着部材に対して複数の発光部からの光を照射不能な第2の位置との間を移動可能な形態とすることもできる。
次に、以上のようにして、温度T(℃)、経時tでの反射型光センサ200で検出した表面情報の結果を、温度T0(℃)、時刻t=0での表面情報に定量的に変換された結果を用いて、「傷レベル」および/または「傷の位置」を定量化する方法の一例を説明する。
上記の如く、各々のLED211−p−qの順次点灯が行なわれ、点灯ごとの検知信号が検出部300に送られると、検出部300は、差分処理、光量補正を行なった後、図26に示すようにして表面情報を検出する。
図26に示すように、検出部300は、各PD(212−1〜212−N)の検知信号を受信する(検知信号数は原則として、LEDが1個点灯・消灯する度に(2m+1)個である。)と(ステップS31)、受信するごとに、(2m+1)個の検知信号(前述の差分処理、光量補正を施した後の検知信号)の「和」を算出し(ステップS32)、これを「検知結果:R−p−q」と呼ぶ。このようにして、主走査方向に順次に照射される光スポットの各々(主走査方向における定着ベルト61表面上の各位置)に対応して、反射光強度(検知結果):R−p−qを得ることができる。
次に、検出部300は、検知結果:R−p−qに基づいて、定着ベルト61表面Sの表面情報を検出する。一般に、定着ベルト61の表面に傷がある場合には、傷がない場合に比べ、定着ベルト61の表面Sからの反射光は「正反射成分が減少」し「拡散反射成分が増加」する。上述した例で言えば、LED211−p−qを点灯したときに、照射される光スポットの位置に傷があれば、この部分では正反射光成分が減少するので、PD212−nが受光する光量は減少し、その周辺のPD212−n−m〜PD212−n−1、PD212−n+1〜PD212−n+mでは、受光量が増大する。しかし、一般的に、傷がある部位に対応する検知結果:R−p−qは、傷が無い部位のものに比して減少する。
このような検知信号の特性に基づき、表面情報として「傷の有無」と「傷レベル」と「傷の位置(主走査方向の位置)」を表面情報として定量化する。このために、上記の如くして得られた検知結果:R−p−qを「微分」する(ステップS33)。微分操作には、種々のやり方があるが、ここでは最も簡単な操作として「隣接する検知結果の差分を、PDの配列ピッチで除算する」ものとして説明する。即ち「隣接する検知結果の傾き」を演算する操作である。
図27(a)は、1周期の順次点灯から得られた検知結果:R−p−qの例を模式的に示す図である。この図では、データ点が13点描かれているが、図示を簡単化するためであり、データ点が13点であることには特に意味がない。
反射型光センサ200では、主走査方向の定着ベルト61表面上の各位置に対応して、反射光強度が得られるので、検出部300で、複数の反射光強度を主走査方向に比較すると「反射光強度が低下している位置」には傷があることが分かる。
図27(a)においては、検知領域Aの中央部近傍で、検知結果:R−p−q(縦軸の反射光強度)の値が減少しており、この事実をもって「傷が存在する」ことが分かる。このようにして、検出部300は、傷の有無を判定することができる(図26のステップS34)。
上述のステップS34において、傷が有ると判定した場合、検出部300は、傷の位置を判定する(ステップS35)。より具体的には以下のとおりである。ここで、図27(b)は、図27(a)に示した検知結果のデータに対して、前述の微分操作を行なった結果を示している。微分理論一般から明らかなように、極小位置では「微分値が0」であって、極小の前後では「微分値は負から正に向かって変化」している。従って、図27(b)に示すように、微分値が「負から正に大きく変化するゼロクロス位置」を求めることで「傷の位置」を検出(判定)できる。なお、「微分値の絶対値」が、予め設定した所定の値より小さい場合は「反射光強度の低下が小さい」ことを示しており「傷は無い」と判定される。以下、具体例に即して説明する。
図3乃至6に示した如き反射型光センサ200を以下のように構成した。LED211、PD212の配列数:N=24、順次点灯させるLED:n=3〜22、LED211、PD212の配列ピッチ:1mmとした。この反射型光センサ200では、定着ベルト61の表面に1mmピッチで光スポットが照射される。
ここで、40万枚の転写紙(A4サイズの長手方向への搬送)に対して定着を行なった後の定着ベルト61に対して、上述の反射型光センサ200を用いて得られた検知結果:R−p−qと、主走査方向位置との関係を、図28(a)に示す。光スポットは、定着ベルト61の表面にP=1mmで照射されるので、図28(a)における横軸のnは、光スポット照射位置を「mm単位」で表したのと同等である。
図28(b)には、図28(a)の検知結果を主走査方向に対して微分した結果を示す。なお、微分値を平滑化するため「R−(n―1)、R−n、R−(n+1)の3点での傾き」を算出することもできる。図28(b)における「ゼロクロス位置」を求めるとn=12.5となり、LED211−12とLED211−13とに対応する光スポット照射位置の中間である「12.5mmの位置」を傷の位置として検出(判定)できる。
上述のステップ35の後、傷の深さを判定する場合(ステップS36:YES)、処理は、ステップS37に移行する。一方、傷の深さを判定しない場合(ステップS36:NO)、処理は終了する。
ステップS37において、検出部300は、傷のない位置を算出し(ステップS37)、その結果を用いて傷の深さを判定する(ステップS38)。より具体的には以下のとおりである。定性的に見て「傷の深さが深いほど、定着ベルト61の表面の粗さが大きく、反射光強度の低下が大きい」と考えられる。従って「傷の深さ」を検出するには「反射光強度の低下量」を求めればよい。その模式図を図29に示す。検知結果:R−n(反射光強度)が、図29であるような場合には、単純に「検知結果:R−nの最小値」を求めても良いが、反射型光センサ200の傾きや、定着ベルト61の傾き等に起因して、検知結果:R−nに「傾き成分が重畳」されることも考えられる。「傷の位置」は前述のように検出できている。傷のない位置は「検知結果:R−nの変動が小さい位置」、即ち「微分値が0付近に集まる位置」である。この点を考慮して、主走査方向に対する微分結果から、傷のない位置を算出できる。
図30を参照して、傷のある位置:n0での検知結果:R−n0と、少なくとも2つの傷のない位置:n1、n2での検知結果:R−n1、R−n2から「反射光強度の低下量」を求める1例を説明する。検知結果:R−nに重畳される傾き成分を差し引くため「複数の傷のない位置での検知結果を結んだ近似直線」と、傷のある位置での検知結果との距離を求めればよい。先に説明した図28(a)、(b)の結果にこの方法を適用し、反射光強度の低下量を求める場合を説明する。
図28(b)から、傷の位置に対して「微分値が小さい±20の範囲で複数点集まっている位置」を求めたのが図30(a)である。この図から、傷のない位置としてn=6とn=15を選択できる。そこで、傷のある位置:n0=12.5と、傷のない位置:n1=6、n2=15を抽出し、それぞれにおける検知結果:R−nを用いて「傷の深さ(粗さ)」を算出できる。
図30(b)における破線は「Rn−n1とRn−n2を結んだ直線」であり、「破線の矢印は傷の深さ」に対応している。この例では「傷の深さは63.1」である。傷の位置における「反射光強度の低下の比率」は0.16(16%)である。前述の如く「傷の深さ」は「傷と、傷に起因する画像異常との相関関係」を定量的に捉え、画像異常の程度を表すパラメータとして表現したものであり、この例における傷の深さ「63.1」は「傷そのものの物理的な深さ」ではなく、これに対応する「画像異常(濃度低下)の程度」が特定されるものである。図30(b)から、破線で示される傾き成分に「傷の深さが重畳」している様子が見て取れる。傷レベル(傷の深さ)が大きくなるにつれ、この「反射光強度の低下」が増加する。
傷の深さの判定が終了した後(図26のステップ38の後)、さらに傷の幅を判定する場合(ステップS39:YES)、処理は、ステップS40に移行する。一方、傷の幅を判定しない場合(ステップS39:NO)、処理は終了する。
ステップS40において、検出部300は、傷の幅を判定する(ステップS40)。より具体的には以下のとおりである。ここで、傷の中心位置は前述の如く検出されている。即ち、傷のある位置での検知結果:R−nから「傷の深さ(粗さ)に相当する反射光強度の低下量」が所定量(例えば50%)低下する反射光強度を持つ位置を算出する。図31は、図30(b)の縦軸を拡大して示す図である。図31の結果から「傷の半値幅」を3mmとして検出(判定)することができる。なお、上記の表面情報(表面状態のパラメータ)すべてを検出しても良いし、必要なパラメータのみを判定することもできる。
以上に説明したように、本実施形態では、定着ベルト61に照射される複数の光スポットの光量に基づいて算出される光量ばらつき補正係数と、画像形成装置の使用時間に関する第1の使用状況(この例では画像形成装置の使用開始前)、および、第1の使用状況よりも使用時間が長い第2の使用状況(この例では画像形成装置の使用開始後)の各々における複数の受光部(この例ではPD212)の検知結果に基づいて算出される光量補正係数と、を用いて表面情報を検出することにより、表面情報の検出精度を高めることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、上述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。また、上述の実施形態および変形例は任意に組み合わせることが可能である。
上記の例において、反射型光センサ200は「順次点灯」させていたが、複数のLED211を同時点灯することもできる。この場合には、同時点灯のタイミングに同期して、複数のPD212もそれぞれ反射光を受光する。この場合、検出部300では、上記のようにPD212の検知信号の和を取ることなく「LED211−p−qに対応したPD212−nの検知内容を検知結果:R−p−qとして採用する。すなわち、主走査方向に照射される各々の光スポット、換言すれば「定着ベルト表面上の主走査方向の各位置」に対応して反射光強度を得ることができる。
反射型光センサの形態は、上に説明した反射型光センサ200に限定されるものではない。定着ベルトの表面に「主走査方向に複数の光スポットを照射でき、その反射光が受光できる構成」であれば良い。上述の実施形態においては、反射型光センサ200は、定着ベルト61の表面上の主走査方向において、A4サイズを長手方向に搬送する場合の用紙幅端部の片側に比較的ラフに配置できる。反射型光センサ200を上記用紙幅端部の近傍に置くことにより、検知領域Aの主走査方向の長さを短くしても、上記用紙幅端部を検知領域Aに含むようにできる。すなわち、検知領域Aを短くできることは「反射型光センサ200を、特に主走査方向に小型化」することが可能になるメリットがある。
また、例えば反射型光センサは、1方向に配列されたN(≧1)個のLEDと、これらN個のLEDの個々からの光を定着部材の表面に光スポットとして集光させるM(N≧M≧1)個のレンズと、各光スポットにおける定着部材の表面での反射光を受光するK(≧1)個のフォトセンサとを有する構造のものとすることもできる。この場合、1個の集光レンズに対して複数個のLEDが対応することになり、集光レンズアレイの構造が簡単化される。また,フォトセンサの数を減らすことにより、オペアンプ等の電子部品も削減できるコスト面での利点がある。さらには、フォトセンサとしては単一の受光面をもつものでも良い。集光レンズは大きくなることにより、フォトセンサへの受光レンズとしての兼用が可能となる。
上述の「傷の幅」は、数100μm〜数mm程度で、傷の位置の変動範囲は数mm程度であることから、検知領域Aは「主走査方向に5mm〜15mm程度」の大きさが好適である。
また、本発明が適用される画像形成装置は、例えば、A3サイズ、A4サイズ、A5サイズなどの「複数のサイズの転写紙」を使用することができる。一般的には、最大通紙できる転写紙はA3サイズで、これを長手方向に搬送する場合が多く、「小サイズの用紙幅」としては、A3サイズを除くサイズの転写紙による「筋状の傷」による表面情報の検出が対象となる。仮に、A2サイズを長手方向に通紙可能な画像形成装置である場合には、A2サイズを除くサイズの転写紙による筋状の傷による表面情報が検出の対象となる。
上述の実施形態では、1つの反射型光センサ200が使用されているが、A4サイズの長手方向の搬送幅の両端に存在するから、反射型光センサ200を搬送幅両側に1個ずつ、計2個配置することもできる。また、複数のサイズの転写紙に対応できるように、さらに多くの反射型光センサを配置することもできる。しかし、前述したように、筋状の傷の発生は、上記両端部で略同様に起こり、傷レベルに大きな相違は見られないことから、上の説明のように、片側のみでも十分である。配置する反射型光センサを1個とすると、複数個用いる場合に発生する「反射型光センサの特性ばらつきや取り付ばらつき」の影響を受けることなく、定着部材の表面情報を良好に検知することができる。
上述の実施形態では、反射型光センサ200により照射される「光スポットの配列」を、搬送方向に対して直交する「主走査方向」とした(図32(a)はこの場合を例示する図であり、符号SPは光スポットを表す)が、光スポットの配列は、これに限らない。図32(b)は、「光スポットSPの配列が、搬送方向に対して直角と異なる方向」となる場合の1例を示す図であり、搬送方向(Y方向)に対して45度傾けた場合を示す。このようにすることにより、主走査方向の検知領域A’は、検知領域Aの「1/√2」に短くなるが、主走査方向の光スポットの配列ピッチも1/√2に小さくでき、検知結果の位置分解能を向上させることができる。
上述の実施形態では、定着ベルト61における「筋状の傷」による表面情報を主たる検出対象とする場合であるが、検出対象は、これに限らず、前述のオフセットや「サーミスタや剥離爪との接触に起因する傷」であることもできる。例えば、オフセットの場合、定着ベルト61の表面に固着したトナーの状態が「フィルム状」である場合であると、検知結果である反射光強度:R−p−qの低下は「比較的小さくて、且つ、広い範囲にわたる」ので、このような特性から検出できる。
また、「筋状の傷の幅」は、前述の如く数100μm〜数mm程度であるのに対し、「サーミスタや剥離爪との接触に起因する傷」の幅は「数10μm〜数100μm」であり、その発生位置も略決まっているので、検出位置と傷の幅とにより「筋状の傷」と区別できる。
上述の実施形態では、定着部材として「定着ベルト」の場合を説明したが、定着部材はこれにかぎらず定着ローラを用いることもできることは言うまでもない。しかし、定着部材として定着ベルトを用いる場合、定着ベルトとして「特に表層にPFA等の表面硬度が高い材料を用いた定着ベルト」は傷つきやすく、表面情報の検出が重要であるが、反射型光センサを用いて表面情報を検知することで、ベルト交換等の管理が容易になる。
定着部材の表面の表面情報は、上に説明した例のように「シート状記録媒体と定着部材表面との接触に起因する、搬送方向の筋状の傷に係る情報」であることができるが、この場合、表面情報として、傷レベル(傷の深さや傷の幅)と、傷の主走査方向の位置を同時に検知可能である。
定着部材の表面情報が、筋状の傷の傷レベルと傷の位置とに係る情報である場合、傷の位置を、上記の如く、複数の検知結果:R−p−qに対し、光スポットの配列方向における微分操作により特定することにより、検知結果の変曲点を精度良く算出でき、傷の位置を精度良く算出できる。
また、上記の如く、傷の位置での検知結果と、複数の検知結果に対する微分操作の結果である微分値の絶対値がゼロ付近に集まる少なくとも2つの位置での検知結果から、傷レベルを判定するようにすると、傷のない位置での検知結果も用いるので「重畳する傾き成分を除去」して、精度良く傷レベルを算出できる。
また、複数の光スポットを、定着部材表面に「搬送方向に交わる方向へ順次に照射」することにより、同時に照射する場合に比して、クロストーク(1つのPDから見たとき,複数のLEDからの反射光を同時に受光してしまう)がなくなり、主走査方向の各光スポット位置に対応して得られる検知結果の検知精度を向上させることができる。