以下に、添付図面を参照して、本発明に係る有価媒体管理装置、有価媒体管理システム及び有価媒体管理方法の好適な実施例を詳細に説明する。以下に示す実施例1〜3では、説明の便宜上、金種ごとの損券及び損貨、小切手、手形を収納対象とした場合を示すこととする。また、実施例1では、有価媒体管理装置を単体運用する場合について説明し、実施例2では、金融機関の各支店に配設された複数の有価媒体管理装置をセンターに設置した上位管理装置により統合制御する場合について説明し、実施例3では、有価媒体管理装置を出納機により制御する場合について説明する。
まず、本実施例1に係る有価媒体管理装置10の外観について説明する。図1は、本実施例1に係る有価媒体管理装置10の外観の一例を説明するための説明図である。図1に示すように、この有価媒体管理装置10には、複数の収納部14a〜14j(以下、「収納部14」と総称する)が設けられており、各収納部14には、原則として異なる種別の有価媒体が混在しないように収納される。ただし、回収の報知タイミングが同様になるものは同一の収納部に収納することができ、ある種別の有価媒体を複数の収納部に収納することもできる。
例えば、収納部14aには1万円札の損券を収納し、収納部14bには5千円札の損券を収納し、収納部14cには千円札の損券を収納し、収納部14dには500円硬貨、100円硬貨及び50円硬貨の損貨を収納し、収納部14eには10円硬貨の損貨、5円硬貨の損貨及び1円硬貨の損貨を収納し、収納部14f及び14gには小切手を収納し、収納部14h及び14iには手形を収納し、収納部14jにはその他の記念硬貨等を収納するよう設定することができる。
このように、収納部14ごとに異なる有価媒体を収納することにより、有価媒体の回収時に、行員が収納部から取り出した有価媒体を種別ごとに仕分ける労力を低減することができる。また、従来技術のように複数の有価媒体が混在しているわけではないので、ある種別の有価媒体を回収したい場合に全ての有価媒体を一括して回収するのではなく、例えば1万円札の偽券と小切手とを異なるタイミングで回収することが可能となる。
また、有価媒体管理装置10の前面の上部には表示操作部11が設けられている。行員が有価媒体を収納する場合には、この表示操作部11を用いて収納対象となる有価媒体の種別等を入力すると、表示操作部11に該有価媒体の収納場所を示す情報(収納庫の識別情報)が表示される。
また、有価媒体管理装置10の上部には、スピーカ12が設けられている。収納場所の音声ガイダンス並びに収納された有価媒体の回収タイミングを通知するための音声ガイダンスを行うためである。
また、各収納部14の前面には、有価媒体を挿入するための収納扉が設けられており、例えば収納部14aの前面には収納扉14a1が設けられる。この収納扉14a1は、通常時は電子錠でロックされており、有価媒体の収納時に電子錠がロック解除され、手動にて収納扉14a1を開くことが可能となる。また、この収納扉14a1を閉じると、自動的に電子錠がロックされる。なお、その詳細な説明は後述するが、この収納扉14a1の内部には一対のローラが設けられており、この一対のローラの間に行員が有価媒体を挿入すると、該有価媒体が収納部14a内に収納される。また、ローラが有価媒体を内部に取り込む際に、後述する入力計数部14kにより、計数値がインクリメントされる。
次に、図1に示した有価媒体管理装置10の内部構成について説明する。図2は、図1に示した有価媒体管理装置10の内部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、有価媒体管理装置10は、表示操作部11、スピーカ12、記憶部13、収納部14及び制御部15を有する。
表示操作部11は、押圧検知可能な液晶パネル等により形成されたタッチ型ディスプレイ装置であり、有価媒体の収納操作及び回収操作等を受け付ける。スピーカ12は、操作者である行員に対する操作ガイダンス、回収タイミング及び警告を報知するための出力部である。
記憶部13は、ハードディスク装置及びフラッシュメモリからなる記憶デバイスであり、収納設定データ13a及び有価媒体データ13bを記憶する。収納設定データ13aは、各収納部14の識別情報と、該収納部14への収納対象となる有価媒体の種別とを対応付けたデータである。
有価媒体データ13bは、有価媒体の回収に関する有価媒体毎のデータである。具体的には、この有価媒体データ13bは、有価媒体の種別と、該有価媒体の枚数と、該有価媒体の報知条件と、報知内容とが対応付けられている。このため、有価媒体の枚数が報知条件を満たす時点で、該有価媒体が収納された収納部14を収納設定データ13aにより特定し、報知内容を表示操作部11上に表示するとともに、音声メッセージをスピーカ12から出力することができる。例えば、収納部14aに収納された有価媒体(例えば、1万円札)の枚数が100枚に至ったならば、「収納部14aに収納された有価媒体を回収して下さい」等を表示するとともに音声メッセージを出力する。また、毎日15時になれば、「収納部14fに収納された有価媒体を回収して下さい」等を表示するとともに音声メッセージを出力する。さらに、毎月月末の15時になれば、「収納部14hに収納された有価媒体を回収して下さい」等を表示するとともに、音声メッセージを出力する。
なお、本実施例1では、説明の便宜上、「収納部14に収納された有価媒体の枚数」のみを対応付けた場合について説明するが、「収納部14に収納された有価媒体についての行員のコメントや画像データ」などを対応付けることもできる。なお、画像データを有価媒体に対応付ける場合には、この有価媒体を収納部14に収納する際に画像センサにて有価媒体の画像データを取得することになる。
収納部14は、種別の異なる複数の有価媒体を区分して収納する有価媒体の一時保管庫であり、ここでは10個の収納部14a〜14jを有する場合を示している。各収納部14は、原則として同一種別の有価媒体を収納することとするが、回収タイミングが同様である場合には種別が異なる複数の有価媒体を同一の収納部14に収納することもできる。また、一つの収納部14内を複数の区画に区切り、それぞれの区画に異なる種別の有価媒体をそれぞれ収納することもできる。
また、この収納部14には収納扉が設けられており、例えば収納部14aには収納扉14a1が設けられている。かかる収納扉14a1は、電子錠14lにより施錠可能に構成されており、電子錠14lにより収納扉が解錠された場合に、人手で収納扉が解放できるようにされている。また、収納扉14a1が閉じられたならば、電子錠14lは自動的に収納扉を施錠する。さらに、この収納部14は、前面に引き出し可能に構成されている。電子錠14lは、収納扉の施錠・解錠と、収納部14の引出機構の施錠・解錠とを個別に制御できる。電子錠14lが収納部14の引出機構を解錠したならば、収納部14を前面にスライドさせることが可能となる。
また、この収納部14の収納扉の内部には、有価媒体を取り込むための一対のローラが設けられており、行員が一対のローラの間に有価媒体を挿入すると、該有価媒体が収納部14の内部に搬送される。また、かかる一対のローラの収納部14側には入力計数部14kが設けられており、有価媒体を収納部14に収納する都度、入力計数部14kの計数値がインクリメントされる。なお、有価媒体の画像データを撮像する場合には、上記入力計数部14kと同様に、一対のローラの収納部14側にCCDカメラ等の撮像素子を設ければ良い。
制御部15は、有価媒体管理装置10を全体制御する制御部であり、操作受付処理部15a、収納処理部15b、回収処理部15c、計時報知処理部15d及び施解錠処理部15eを有する。操作受付処理部15aは、表示操作部11からの操作入力を受け付けるとともに、操作者である行員向けに処理メニューを表示操作部11に表示制御する処理部である。
収納処理部15bは、有価媒体の収納に関する一連の処理を行う処理部である。具体的には、収納対象となる有価媒体の種別を受け付けたならば、この有価媒体の種別に対応する収納部14を特定し、特定した収納部14の電子錠14lにより収納扉を解錠するよう施解錠処理部15eに指示する。また、入力計数部14kにより計数値がインクリメントされたならば、この計数値を記憶部13内の有価媒体データ13bに書き込む。
回収処理部15cは、収納部14に収納された有価媒体の回収に関する一連の処理を行う処理部である。具体的には、回収対象となる有価媒体の種別を受け付けたならば、この有価媒体の種別に対応する収納部14を特定し、特定した収納部14の電子錠14lにより引出機構を解錠するよう施解錠処理部15eに指示する。行員が収納部14の内部に収納した有価媒体を取り出せるようにするためである。
計時報知処理部15dは、有価媒体データ13bに登録された報知条件を満たすか否かを常に確認し、報知条件を満たす時点で報知内容を報知する処理を行う処理部であり、具体的には、表示操作部11上に報知内容を表示するとともに、音声メッセージをスピーカ12から出力制御する。
この計時報知処理部15dは、内部にタイマ機能を有しており、このタイマの計時時刻が報知条件に指定された時刻になると、報知内容の報知処理を行う。また、入力計数部14kにより計数された計数値が報知条件に指定された枚数になると、報知内容の報知処理を行う。さらに、開放された収納部に対する精査の要求や施錠忘れに関してアラートを発する。
施解錠処理部15eは、有価媒体の収納及び回収時に、収納処理部15b及び回収処理部15cからの施解錠要求を受けて、収納部14に設けられた電子錠14lの施錠及び解錠を制御する処理部である。具体的には、新たな有価媒体を収納する場合には、収納部14の収納扉14a1に設けられた電子錠14lにより収納扉を解錠し、有価媒体を回収する場合には、収納部14自体の引出機構を電子錠14lにより解錠する。なお、収納扉14a1が元の位置に戻されたとき、収納部14自体が元の位置に戻されたときには、自動的に施錠する。
次に、有価媒体管理装置10に対する有価媒体の収納手順について説明する。図3は、有価媒体管理装置10を用いた有価媒体の収納手順を説明するための説明図である。ここでは、収納部14aが1万円の損券を収納する収納部であり、行員が1万円の損券を収納する場合の収納手順を示すこととする。
同図に示すように、行員は、表示操作部11から1万円損券を収納する旨の入力を行う(ステップS1)。入力を受け付けた有価媒体管理装置10は、1万円損券を収納する適切な収納部14を特定し、選択する(ステップS2)。
有価媒体管理装置10は、収納部14aの収納扉を解錠し(ステップS3)、投入口を開き紙幣の投入を促す。行員は、投入口から1万円損券を一枚ずつ投入し収納する(ステップS4)。投入を終えると表示操作部11には、投入枚数が表示され、枚数が確認する旨の入力を行えば収納は終了する。
次に、収納に係る表示操作部11の表示画面について説明する。図4は、収納に係る表示操作部11の表示画面について説明するための説明図である。図4(a)は、表示操作部11の初期画面であるメインメニュー画面を示している。図4(a)に示すメインメニュー画面では、「収納」ボタン、「回収」ボタン、「設定」ボタン及び「精査」ボタンを表示している。
有価媒体管理装置10は、「収納」ボタンに対する操作を受け付けた場合には収納処理を開始し、「回収」ボタンに対する操作を受け付けた場合には回収処理を開始する。また、有価媒体管理装置10は、「設定」ボタンに対する操作を受け付けた場合には、収納部14と種別の対応関係、報知条件及び報知内容等の各種設定を変更する設定処理を開始する。
また、有価媒体管理装置10は、「精査」ボタンに対する操作を受け付けた場合には、収納部14に収納されている有価媒体の枚数などの確認を行う精査処理を開始する。具体的には、有価媒体管理装置10は、「精査」ボタンに対する操作を受け付けると、まず、収納部14の引出機構を解錠する。行員は、解錠された収納部14を引き出し、収納されている有価媒体を取り出して、収納部14を元の位置に戻す。
有価媒体管理装置10は、収納部14が元の位置に戻されたことを検知すると、収納部14の収納扉を解錠する。行員は、取り出した有価媒体を収納部14の一対のローラの間に挿入する。挿入された有価媒体は収納部14の内部に搬送される。有価媒体が収納部14に収納される都度、入力計数部14kは計数値をインクリメントする。そして、収納部14から取り出された全ての有価媒体が収納部14に再収納されると、有価媒体管理装置10は、再収納された有価媒体の計数値と、記憶部13の有価媒体データ13bに記憶されている有価媒体の枚数とを比較する。この比較の結果が一致の場合は、有価媒体管理装置10は精査処理を正常終了し、不一致の場合は表示操作部11やスピーカ12によってエラーである旨を報知する。
図4(a)では、行員が「収納」ボタンを操作した状態を示している。有価媒体管理装置10は、「収納」ボタンに対する操作を受け付けた場合には収納処理を開始し、図4(b)に示す種別選択画面を表示する。
種別選択画面では、まず、「損券」ボタン、「損貨」ボタン、「小切手」ボタン、「手形」ボタン、「その他」ボタン及び「戻る」ボタンを表示する。有価媒体管理装置10は、「小切手」ボタンや「手形」ボタンに対する操作を受け付けた場合にはそのまま収納画面に移行するが、「損券」ボタン、「損貨」ボタン又は「その他」ボタンに対する操作を受け付けた場合には、有価媒体の種別を特定するためのサブメニュー画面を表示する。
図4(b)は、行員が「損券」ボタンを操作することで、「1万円」ボタン、「5千円」ボタン、「2千円」ボタン及び「千円」ボタンを含むサブメニュー画面が表示され、行員がサブメニュー画面の「1万円」ボタンを操作した状態を示している。なお、「戻る」ボタンを操作すれば、図4(a)に示したメインメニュー画面に戻ることができる。
かかる操作により収納する有価媒体の種別が入力されると、有価媒体管理装置10は、対応する収納部14の収納扉を解錠し、図4(c)に示す収納画面を表示する。収納画面では、「解錠しました。お札は1枚1枚入れて下さい。」とのガイダンス表示と、選択された有価媒体の種別が「1万円」であることの表示と、収納先が収納部14aであることを示す「収納部14aへ」との表示と、その時点での計数値と、「戻る」ボタンと、「確認」ボタンとを表示する。
収納画面の計数値は、有価媒体が挿入され、計数値がインクリメントされる度に更新される。図4(c)では、計数値が「5」である場合を示している。行員が計数値を確認し、「確認」ボタンを操作すると、有価媒体管理装置10は、有価媒体データ13bの該当する種別の枚数に計数値を加算し、計数値をリセットし、メインメニュー画面に戻る。なお、「戻る」ボタンを操作すれば、図4(b)に示した種別選択画面に戻ることができる。
次に、回収のための報知に係る表示操作部11の表示画面について説明する。図5は、回収のための報知に係る表示操作部11の表示画面について説明するための説明図である。図5は、収納部14aが1万円の損券を収納する収納部であり、収納された1万円の損券の数が有価媒体データ13bの報知条件に示された数(例えば100枚)に到達した場合の報知に係る表示操作部11の表示画面を示している。
具体的には、図5に示す表示画面は、「回収通知」のメッセージ表示と、「収納部14aに収納された有価媒体を回収して下さい。」とのガイダンス表示と、「戻る」ボタンと、「回収」ボタンとを表示している。
このように、収納部14のいずれかに収納された有価媒体が、有価媒体データ13bの報知条件を満たした場合には、表示操作部11により報知を行うことで、行員による回収を促す。
図5に示した「回収」ボタンが操作された場合には、有価媒体管理装置10は、回収処理を開始する。具体的には、収納部14aの引出機構を解錠し、収納部14aから有価媒体を回収可能とする。また、「戻る」ボタンが操作された場合には、直前の表示画面に戻る。このため、行員は、回収の必要性を確認したうえで、そのまま回収を開始するか、先に別の作業を行うかを選択することができる。
次に、図2に示した収納設定データ13aの具体例について説明する。図6は、図2に示した収納設定データ13aの具体例を説明するための説明図である。図6に示すように、収納設定データ13aは、各収納部14の識別情報と、該収納部14への収納対象となる有価媒体の種別とを対応付けたデータである。
具体的には、収納部識別情報「収納部14a」には、種別「損券1万円」が対応付けられ、収納部識別情報「収納部14b」には、種別「損券5千円」が対応付けられ、収納部識別情報「収納部14c」には、種別「損券千円」が対応付けられている。また、収納部識別情報「収納部14d」には、種別「損貨500円、損貨100円及び損貨50円」が対応付けられ、収納部識別情報「収納部14e」には、種別「損貨10円、損貨5円及び損貨1円」が対応付けられている。
また、収納部識別情報「収納部14f」及び収納部識別情報「収納部14g」には、種別「小切手」が対応付けられ、収納部識別情報「収納部14h」及び収納部識別情報「収納部14i」には、種別「手形」が対応付けられ、収納部識別情報「収納部14j」には、種別「その他」が対応付けられている。
次に、図2に示した有価媒体データ13bの具体例について説明する。図7は、図2に示した有価媒体データ13bの具体例を説明するための説明図である。図7に示すように、有価媒体データ13bは、有価媒体の種別と、該有価媒体の収納枚数と、該有価媒体の報知条件と、報知内容とを対応付けたデータである。
具体的には、図7は、種別「損券1万円」が「52」枚収納されており、報知条件が「100枚」であり、報知内容が「収納部14aに収納された有価媒体を回収して下さい」である状態を示している。また、種別「損券5千円」が「71」枚収納されており、報知条件が「100枚」であり、報知内容が「収納部14bに収納された有価媒体を回収して下さい」である状態を示している。
また、種別「損券2千円」が「3」枚収納されており、報知条件が「50枚」であり、報知内容が「収納部14jに収納された有価媒体を回収して下さい」である状態を示している。ここで、2千円の紙幣は流通量が少ないため、2千円の損券は、その他の有価媒体として記念硬貨などとともに収納部14jに収納することとし、他の紙幣と比較して報知条件の枚数を少なく設定している。
また、図7は、種別「損券千円」が「66」枚収納されており、報知条件が「100枚」であり、報知内容が「収納部14cに収納された有価媒体を回収して下さい」である状態を示している。また、種別「損貨500円」が「121」枚収納されており、報知条件が「300枚」であり、報知内容が「収納部14dに収納された有価媒体を回収して下さい」である状態を示している。また、種別「損貨100円」が「275」枚収納されており、報知条件が「300枚」であり、報知内容が「収納部14dに収納された有価媒体を回収して下さい」である状態を示している。
また、図7は、種別「小切手」が「7」枚収納されており、報知条件が「毎日15:00」であり、報知内容が「収納部14fと収納部14gに収納された有価媒体を回収して下さい」である状態を示している。また、種別「手形」が「16」枚収納されており、報知条件が「毎月末営業日15:00」であり、報知内容が「収納部14hと収納部14jに収納された有価媒体を回収して下さい」である状態を示している。また、種別「鑑定券」が「11」枚収納されており、報知条件が「現金輸送日」であり、報知内容が「収納部14jに収納された有価媒体を回収して下さい」である状態を示している。なお、「鑑定券」は、日本銀行などの中央銀行での鑑定を要する有価媒体であることを示す。
このように、小切手、手形及び鑑定券に対する報知条件は、日時を報知条件としている。また、小切手や手形のように、複数の収納部14に収納された種別の有価媒体については、その報知時に該種別の有価媒体が収納された全ての収納部を報知することが好適である。
なお、ここでは、種別が「手形」である有価媒体について一律に「毎月末営業日15:00」を報知条件とする場合を例示したが、手形の期日に合わせて報知条件を設定してもよい。手形の期日に合わせて複数の報知条件を設定する場合には、報知条件毎に異なる収納部14に手形を収納することが望ましい。
次に、有価媒体管理装置10による収納処理の処理手順を説明する。図8は、有価媒体管理装置10による収納処理の処理手順を説明するためのフローチャートである。有価媒体管理装置10の表示操作部11が収納する有価媒体の種別選択を受け付けると(ステップS101)、収納処理部15bは、収納設定データ13aを参照し、受け付けた種別の有価媒体を収納する収納部14を特定する(ステップS102)。
収納処理部15bは、特定した収納部14の電子錠14lにより収納扉を解錠するよう施解錠処理部15eに指示することで、収納扉を解錠する(ステップS103)。入力計数部14kは、有価媒体を受け付けたか否かを判定し(ステップS104)、有価媒体を受け付けたならば(ステップS104;Yes)、計数値をインクリメントする(ステップS105)。
ステップS105の終了後、若しくは有価媒体を受け付けていない場合(ステップS104;No)、収納処理部15bは、表示操作部11が確認操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS106)。表示操作部11が確認操作を受け付けていなければ(ステップS106;No)、収納処理部15bは、ステップS104に移行する。
表示操作部11が確認操作を受け付けたならば(ステップS106;Yes)、収納処理部15bは、有価媒体データ13bの該当する種別の枚数に計数値を加算して、有価媒体データ13bを更新する(ステップS107)。
ステップS107の後、収納処理部15bは、解錠した収納扉を施錠するよう施解錠処理部15eに指示することで、収納扉を施錠し(ステップS108)、入力計数部14kの計数値をリセットして(ステップS109)、処理を終了する。
次に、有価媒体管理装置10による回収処理の処理手順を説明する。図9は、有価媒体管理装置10による回収処理の処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、計時報知処理部15dは、有価媒体データ13bに登録されたいずれかの報知条件が成立しているか否かを確認し(ステップS201)、条件が成立していなければ(ステップS201;No)、そのまま処理を終了する。なお、この処理は、終了後、所定のタイミングで繰り返し実行される。
いずれかの報知条件が成立しているならば(ステップS201;Yes)、計時報知処理部15dは、有価媒体データ13bに登録された内容の報知を実行する(ステップS202)。
報知の実行(ステップS202)の後、表示操作部11が回収操作を受け付けていなければ(ステップS203;No)、ステップS202の報知を継続する。そして、表示操作部11が回収操作を受け付けたならば(ステップS203;Yes)、回収処理部15cは、条件が成立した種別の有価媒体が収納されている収納部14を特定する(ステップS204)。
回収処理部15cは、特定した収納部14の電子錠14lにより引出機構を解錠するよう施解錠処理部15eに指示することで、引出機構を解錠する(ステップS205)。その後、回収処理部15cは、表示操作部11が回収完了操作を受け付けたか否かを判定する(ステップS206)。表示操作部11が回収完了操作を受け付けていなければ(ステップS206;No)、回収処理部15cは、ステップS206に移行し、回収完了操作の待機状態となる。
表示操作部11が回収完了操作を受け付けたならば(ステップS206;Yes)、回収処理部15cは、行員により入力された回収結果に応じて有価媒体データ13bを更新する(ステップS207)。その後、回収処理部15cは、解錠した引出機構を施錠するよう施解錠処理部15eに指示することで、引出機構を施錠し(ステップS208)、処理を終了する。
上述してきたように、本実施例1に係る有価媒体管理装置10は、複数の収納部14に有価媒体を種別毎に収納し、各収納部14に収納された有価媒体の種別と枚数を管理する。そして、収納対象となる有価媒体の種別を受け付けた場合には該有価媒体の種別に対応する収納部14を特定して報知し、収納部14に収納された有価媒体の回収時期を判定して有価媒体の種別に応じたタイミングで報知する。このため、貨幣処理機に付設された有価媒体管理装置10に損券、偽券、小切手及び手形等の有価媒体を収納する場合に、有価媒体の仕分け作業に係る行員の労力を効率良く低減しつつ、有価媒体の種別に応じた回収を行うことができる。
上記実施例1では、有価媒体管理装置10を単体運用する場合について説明した。本実施例2では、金融機関の各支店に配設された複数の有価媒体管理装置をセンターに設置した上位管理装置により統合制御する場合について説明する。
図10は、実施例2に係る有価媒体管理システムのシステム構成を示すシステム構成図である。図10に示すように、金融機関の支店B1、支店B2及び支店B3には、それぞれ貨幣処理機150が配設され、各貨幣処理機150には有価媒体管理装置110が併設されている。この複数の有価媒体管理装置110は、ネットワークを介して管理サーバ60と接続している。管理サーバ60は、センターに設置された上位管理装置である。
有価媒体管理装置110は、有価媒体の収納又は回収が行われた場合に、収納又は回収された有価媒体の種別及び枚数を管理サーバ60に送信する。管理サーバ60は、各有価媒体管理装置110から受信した有価媒体の種別及び枚数を統合して管理するとともに、回収の必要性を判定し、回収が必要と判定した場合に回収が必要な有価媒体管理装置110に対して回収指示を送信する。有価媒体管理装置110は、管理サーバ60からの指示を受けて行員に対して報知を行い、有価媒体の回収を行わせることとなる。
次に、図10に示した有価媒体管理装置110の内部構成について説明する。図11は、図10に示した有価媒体管理装置110の内部構成を示す機能ブロック図である。図11に示した有価媒体管理装置110は、通信部111をさらに備え、記憶部13に有価媒体データ13bに替えて識別データ112を格納する点が図2に示した有価媒体管理装置10と異なる。また、制御部15に計時報知処理部15dに替えて報知処理部113を有する点が図2に示した有価媒体管理装置10と異なる。その他の構成及び動作については、図2に示した有価媒体管理装置10と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
通信部111は、管理サーバ60と通信する通信インタフェースである。通信部111は、収納された有価媒体の種別及び数の管理サーバ60への送信と、回収された有価媒体の種別及び数の管理サーバ60への送信と、管理サーバ60からの回収指示の受信とに用いられる。
識別データ112は、有価媒体管理装置110を一意に識別するためのデータである。有価媒体管理装置110の収納処理部15bは、有価媒体の収納が行われた場合に、自装置内で有価媒体の在高を管理するのではなく、収納された有価媒体の種別及び数を自装置の識別データ112とともに管理サーバ60に送信する。また、有価媒体管理装置110の回収処理部15cは、有価媒体の回収が行われた場合に、自装置内で有価媒体の在高を管理するのではなく、回収された有価媒体の種別及び数を自装置の識別データ112とともに管理サーバ60に送信する。
報知処理部113は、管理サーバ60から回収指示を受信したか否かを常に確認し、回収指示を受信した時点で行員に対する報知を行う処理を行う処理部である。この報知は、実施例1と同様に、表示操作部11上に報知内容を表示するとともに、音声メッセージをスピーカ12から出力制御する。
有価媒体管理装置110による収納処理の処理手順は、図8に示した処理手順において、ステップS107の処理を「有価媒体の種別、計数値及び識別データ112を含む収納通知を管理サーバ60に送信」に変更したものとなる。また、有価媒体管理装置110による回収処理の処理手順は、図9に示した処理手順において、ステップS201の処理を「管理サーバ60から回収指示受信?」に変更し、ステップS207の処理を「有価媒体の種別、回収枚数及び識別データ112を含む回収通知を管理サーバ60に送信」に変更したものとなる。
次に、図10に示した管理サーバ60の内部構成について説明する。図12は、図10に示した管理サーバ60の内部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、管理サーバ60は、表示部61、入力部62、記憶部63、通信部64及び制御部65を有する。
表示部61は、液晶パネルやディスプレイ装置等である。入力部62は、キーボードやマウス等である。記憶部63は、ハードディスク装置及びフラッシュメモリからなる記憶デバイスであり、有価媒体在高データ63a及び回収判定データ63bを記憶する。
有価媒体在高データ63aは、有価媒体管理装置110に収納された有価媒体の枚数を装置ごと且つ種別ごとに管理するデータである。回収判定データ63bは、有価媒体管理装置110に対して回収指示を送信するか否かの判定条件を示すデータである。
通信部64は、有価媒体管理装置110と通信する通信インタフェースである。通信部64は、有価媒体管理装置110からの収納通知の受信と、有価媒体管理装置110からの回収通知の受信と、有価媒体管理装置110への回収指示の送信とに用いられる。
制御部65は、管理サーバ60を全体制御する制御部であり、有価媒体在高管理部65a、回収判定部65b及び回収指示送信部65cを有する。有価媒体在高管理部65aは、有価媒体管理装置110に収納された有価媒体の枚数を装置ごと且つ種別ごとに管理する処理部である。
具体的には、有価媒体在高管理部65aは、有価媒体管理装置110から収納通知を受信した場合に、収納通知に示された識別データ112及び種別の在高に、収納通知に示された計数値を加算して、有価媒体在高データ63aを更新する。また、有価媒体在高管理部65aは、有価媒体管理装置110から回収通知を受信した場合に、回収通知に示された識別データ112及び種別の在高から、回収通知に示された回収枚数を減算して、有価媒体在高データ63aを更新する。
回収判定部65bは、回収判定データ63bに登録された回収条件を満たすか否かを常に確認する処理を行う。回収指示送信部65cは、回収判定部65bによる判定結果に応じて該当する有価媒体管理装置110に対して回収指示を送信する処理部である。
次に、図12に示した記憶部63が記憶するデータの具体例について説明する。図13は、図12に示した記憶部63が記憶するデータの具体例について説明するための説明図である。
図13(a)は、有価媒体在高データ63aについて説明するための説明図である。図13(a)に示すように、有価媒体在高データ63aは、有価媒体の種別並びに有価媒体管理装置110の識別データ112に対応付けて有価媒体の収納枚数を管理している。
具体的には、識別データ112が「X0001」である有価媒体管理装置110は、種別「損券1万円」の有価媒体を「52」枚収納し、種別「損券5千円」の有価媒体を「71」枚収納し、種別「鑑定券」の有価媒体を「11」枚収納している。
また、識別データ112が「X0002」である有価媒体管理装置110は、種別「損券1万円」の有価媒体を「20」枚収納し、種別「損券5千円」の有価媒体を「40」枚収納し、種別「鑑定券」の有価媒体を「0」枚収納している。
また、識別データ112が「X0003」である有価媒体管理装置110は、種別「損券1万円」の有価媒体を「61」枚収納し、種別「損券5千円」の有価媒体を「0」枚収納し、種別「鑑定券」の有価媒体を「4」枚収納している。
また、識別データ112が「X0004」である有価媒体管理装置110は、種別「損券1万円」の有価媒体を「33」枚収納し、種別「損券5千円」の有価媒体を「90」枚収納し、種別「鑑定券」の有価媒体を「37」枚収納している。
図13(b)は、回収判定データ63bについて説明するための説明図である。図13(b)に示すように、回収判定データ63bは、有価媒体の種別に、単独回収条件と連動回収条件とを対応付けたデータである。ここで、単独回収条件とは、単独の有価媒体管理装置110が収納した有価媒体のみで回収が必要と判定される条件であり、連動回収条件とは、複数の有価媒体管理装置110が収納した有価媒体を総合して回収が必要と判断される条件である。
具体的には、種別「損券1万円」の単独回収条件は「100枚」である。これは、ある有価媒体管理装置110に収納された1万円の損券の枚数が100枚に到達したならば、他の有価媒体管理装置110における1万円の損券の収納枚数に関わらず、回収が必要と判断されることを意味する。
また、種別「損券1万円」の連動回収条件は「500枚」である。これは、複数の有価媒体管理装置110により収納された1万円の損券の合計枚数が500枚に到達したならば、各有価媒体管理装置110における1万円の損券の収納枚数が100枚未満であっても回収が必要と判断されることを意味する。
なお、ここでは単独回収条件と連動回収条件とを異ならせる場合について説明するが、単独回収条件と連動回収条件の一部または全てが同じ条件であっても良い。例えば、種別「損券1万円」の単独回収条件と連動回収条件とがともに「100枚」であれば、いずれかの有価媒体管理装置110に収納された1万円の損券の枚数が100枚に到達するか、若しくは複数の有価媒体管理装置110により収納された1万円の損券の合計枚数が100枚に到達した場合に回収が必要と判定することとなる。
同様に、種別「損券5千円」の単独回収条件は「100枚」であり、種別「損券5千円」の連動回収条件は「200枚」である。したがって、いずれかの有価媒体管理装置110における5千円の損券の収納枚数が100枚に到達するか、若しくは複数の有価媒体管理装置110により収納された5千円の損券の合計枚数が200枚に到達した場合に、回収が必要と判断されることとなる。
種別「小切手」については、単独回収条件が「毎日15:00」であり、連動回収条件は設定されていない。小切手は期限を条件として回収の必要性が判定されるため、複数の有価媒体管理装置110における収納状況を総合して判定する必要がないからである。
同様に、種別「手形」については、単独回収条件が「毎月末営業日15:00」であり、連動回収条件は設定されていない。また、種別「鑑定券」については、単独回収条件が「現金輸送日」であり、連動回収条件は設定されていない。
次に、図10に示した管理サーバ60の処理手順を説明する。図14は、図10に示した管理サーバ60の処理手順を説明するためのフローチャートである。有価媒体在高管理部65aは、いずれかの有価媒体管理装置110から収納通知又は回収通知を受信したかを判定し(ステップS301)、収納通知又は回収通知を受信したならば(ステップS301;Yes)、受信した収納通知又は回収通知に基づいて有価媒体在高データ63aを更新する(ステップS302)。
ステップS302の後、若しくは収納通知及び回収通知を受信していない場合(ステップS301;No)には、回収判定部65bは、いずれかの有価媒体管理装置110において単独回収条件が成立したか否かを判定する(ステップS303)。
いずれかの有価媒体管理装置110において単独回収条件が成立しているならば(ステップS303;Yes)、回収指示送信部65cは、単独回収条件が成立した有価媒体管理装置110に対して回収指示を送信し(ステップS304)、処理を終了する。
いずれの有価媒体管理装置110においても単独回収条件が成立していなければ(ステップS303;No)、回収判定部65bは、連動回収条件が成立しているか否かを判定する(ステップS305)。
連動回収条件が成立していなければ(ステップS305;No)、管理サーバ60は処理を終了する。一方、連動回収条件が成立しているならば(ステップS305;Yes)、回収指示送信部65cは、連動回収条件を成立させている複数の有価媒体管理装置110に対して回収指示を送信して(ステップS306)、処理を終了する。
ここで、連動回収条件が成立した場合の回収指示の送信先について説明する。例えば、図13に示したように、5千円の損券の連動回収条件が「200枚」であって、識別データ112が「X0001」〜「X0004」である有価媒体管理装置110の種別「損券5千円」の収納枚数がそれぞれ「71」枚、「40」枚、「0」枚及び「90」枚であるならば、収納枚数の合計は「201」枚となるので、連動回収条件が成立する。
この場合には、識別データ112が「X0003」である有価媒体管理装置110は、種別「損券5千円」の収納枚数が「0」枚であるために、連動回収条件の成立に関与していない。したがって、回収指示送信部65cは、識別データ112が「X0001」である有価媒体管理装置110と、識別データ112が「X0002」である有価媒体管理装置110と、識別データ112が「X0004」である有価媒体管理装置110に対して回収指示を送信することとなる。
上述してきたように、本実施例2に係る有価媒体管理システムでは、複数の支店に配設された複数の有価媒体管理装置110における有価媒体の収納状況を管理サーバ60により統合して管理し、管理サーバ60が各有価媒体管理装置110における回収の必要性を判定し、必要に応じて有価媒体管理装置110に対して回収指示を送信するよう構成したので、複数の有価媒体管理装置110が存在する場合に有価媒体の管理を効率的に行うことができる。
このように、管理サーバ60が複数の有価媒体管理装置110における有価媒体の収納状況から回収の必要性を判定する構成を用いれば、稀にしか収納されず、単独運用では長期間保管せざるを得なかった有価媒体についても、他の有価媒体管理装置110での収納枚数と合算して回収できるために、早期に回収を行うことができる。