JP6077943B2 - アンニンコウ抽出液の低分子画分による動脈硬化症の治療剤 - Google Patents

アンニンコウ抽出液の低分子画分による動脈硬化症の治療剤 Download PDF

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Description

本発明は、アンニンコウ抽出液の低分子画分によるアンジオテンシン変換酵素の阻害剤に関する。また本発明は、アンニンコウ抽出液の低分子画分による動脈硬化症の治療や予防に関する。
動脈硬化症は、先進国を中心に急激に増加している。我が国の全人口の3人に1人が脳疾患や動脈硬化症により寝たきりになり、医療費の増加の要因となっている。動脈硬化にはアテローム性粥状動脈硬化、細動脈硬化、中膜硬化などがあるが、特段の説明のない場合はアテローム性動脈硬化を指すことが多い。アテローム性動脈硬化症は、脂質異常症(従来の高脂血症)や糖尿病、高血圧、喫煙などの危険因子により生じると考えられる。最終的には動脈の血流が遮断され、酸素や栄養が重要組織に到達できなくなる結果、脳梗塞や心筋梗塞などが起こる。特に脳梗塞は、日本においては約150万人の患者がおり、毎年約50万人が発症している。また脳梗塞は、寝たきりの人の約3割、全医療費の1割を占める。脳梗塞は、日本人の死亡原因の中でも多くを占める疾患である上、後遺症を残して介護が必要となることが多く、福祉の面でも大きな課題を伴う。このため、副作用を軽減した奏功性の高い抗動脈硬化剤の確立が切望されている。
近年、アテローム性動脈硬化の血管損傷からの回復には、骨髄由来血管内皮前駆細胞(endorhelial progenitor cells: EPCs)や間葉系前駆細胞(mesenchymal progenitor cell)、中間葉系前駆細胞(fibrocytes)の動員に関わるケモカイン(SDF-1/stromal cell-derived factor 1やVEGF/vascular endothelial growth factorなど)が重要な役割を果たすことが示唆されている。これらSDF-1やVEGFの刺激により、血管内皮細胞、筋繊維芽細胞、繊維芽細胞などの数が増加する。また、血管の修復、保護が促進され、動脈硬化症の症状を改善することが明らかになっている(非特許文献1)。このように、動脈硬化は脂質代謝異常によって発生すると言われていたが、最近では、免疫異常によって炎症反応が血管壁で惹起されて発生する機序の存在も示唆されるようになった。
また糖尿病性腎症は、我が国をはじめ、先進諸国において末期腎不全の原因の第一位の腎疾患であり、重要な社会的問題となっている。糖尿病で血糖の高い状態が10年以上も続くと、全身の動脈硬化が進行し始め、腎臓に障害が及ぶと蛋白尿、ネフローゼ症候群等を経て慢性腎不全に至る。このことから、腎臓病は、動脈硬化が原因で引き起こされる病態であるといえる。腎臓病が進行して腎不全の状態になると、尿毒症により身体の様々な器官・臓器で、様々な症状が引き起される。また昏睡に陥り命に関わることもある。そのため腎臓病が進むと、末期には血液の濾過を機械に肩代わりしてもらう血液透析や自分の腹膜を使って行う腹膜透析といった人工透析治療が必要になる。末期腎不全により人工透析治療を行っている人は、日本だけでも約23万人と、増加の一途を辿っている。これは人口比に直すと世界で最大であり、透析症例の約10人に1人は日本人である。この透析医療に費やされる医療費も全体の約3%を占める。したがって、動脈硬化の抑制による腎臓病の予防剤、もしくは治療薬剤の開発は、医学的、社会的、そして医療経済上の重要な課題の一つである。
アンニンコウ(Grifola gargal)は、チリ・パタゴニア原産で杏仁様の芳香が特徴的な食用担子菌で、ヒダナシタケ目サルノコシカケ科マイタケ属に属する木材腐朽菌である。これまで抗酸化作用、破骨細胞抑制作用、抗アレルギー作用や糖尿病・肥満症改善効果など、多彩な機能性を持つことが明らかになっている。特に、G.gargalの熱水抽出液の低分子画分(GLF)は、これまでも、脂肪減少作用、血糖降下作用が認められ、糖尿病・肥満症改善効果に関して効果があることが報告されている(特許文献1)。
しかしながら、アンニンコウの抽出物によるアテローム性の動脈硬化や非アテローム性である糖尿病性腎症などにおける動脈硬化の抑制効果は、これまで報告されておらず、いずれの文献にも記載されていない。
P. Gil-Bernabe et al., Circulation Journal, Vol.75, 2269-2279, 2013
特開2011-102286
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、アンニンコウの熱水抽出液の低分子画分を含むアンニンコウ抽出液の低分子画分によるアンジオテンシン変換酵素の阻害剤、当該低分子画分を含む動脈硬化症の治療剤や予防剤などを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。本発明者は、動脈硬化症モデルマウスに対しアンニンコウの熱水抽出液の低分子画分を投与し、その影響を調べた。その結果本発明者は、アンニンコウの熱水抽出液の低分子画分に、アテローム性の動脈硬化に起因する死亡率の減少、アテロームの形成抑制作用、血管損傷の抑制作用、コラーゲンの沈着抑制作用、繊維化抑制作用があることを明らかにした。また、当該低分子画分の投与により、血管の炎症の抑制、制御性T細胞などの免疫細胞の働きによる動脈硬化症の症状の改善効果が認められた。
さらに本発明者は、アンニンコウの熱水抽出液の低分子画分にアンギオテンシン変換酵素の阻害作用があることを明らかにした。アンギオテンシン変換酵素は、不活性体であるアンジオテンシンIを、生理活性を有するアンジオテンシンIIに変換する。アンギオテンシンIIの動脈硬化への関与については数多くの報告があり、ApoE欠損モデルマウスにアンギオテンシンIIを投与すると動脈硬化が促進することが知られている。
本発明のアンニンコウの熱水抽出液の低分子画分は、アンギオテンシン変換酵素の阻害作用を示した。したがって本発明のアンニンコウの熱水抽出液の低分子画分は、アンギオテンシン変換酵素を阻害することによってアンジオテンシンIIの産生を抑制し、動脈硬化症の症状を改善したと考えられる。
本発明はこのような知見に基づくものであり、以下の〔1〕〜〔15〕を提供する。
〔1〕食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を含む、アンギオテンシン変換酵素阻害剤。
〔2〕食用キノコがGrifola属、Pleurotus属、Lentinula属、Pholiota属、Agrocybe属、Leucopaxillus属、Agaricus属、Tricholoma属からなる群より選択される少なくとも一つのキノコである、〔1〕に記載の阻害剤。
〔3〕食用キノコが、アンニンコウ(Grifola gargal)、マイタケ(Grifola frondosa)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eringii)、シイタケ(Lentinula edodes)、ナメコ(Pholiota nameko)、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)、オオイチョウタケ(Leucopaxillus giganteus)、ヒメマツタケ(Agaricus blazei)、サウーバ(Tricholoma sp.)及びキッタリア(Cyttaria espinosae)からなる群より選択される少なくとも一つのキノコである、〔1〕又は〔2〕に記載の阻害剤。
〔4〕食用キノコがアンニンコウ(Grifola gargal)である、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の阻害剤。
〔5〕食用キノコがアンニンコウ(Grifola gargal)の子実体である、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の阻害剤。
〔6〕低分子画分が以下の工程を含む方法によって得られる、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の阻害剤;
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以下の物質からなる画分を取得する工程。
〔7〕食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を含む、動脈硬化症の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤。
〔8〕食用キノコがGrifola属、Pleurotus属、Lentinula属、Pholiota属、Agrocybe属、Leucopaxillus属、Agaricus属、Tricholoma属からなる群より選択される少なくとも一つのキノコである、〔7〕に記載の薬剤。
〔9〕食用キノコが、アンニンコウ(Grifola gargal)、マイタケ(Grifola frondosa)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eringii)、シイタケ(Lentinula edodes)、ナメコ(Pholiota nameko)、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)、オオイチョウタケ(Leucopaxillus giganteus)、ヒメマツタケ(Agaricus blazei)、サウーバ(Tricholoma sp.)及びキッタリア(Cyttaria espinosae)からなる群より選択される少なくとも一つのキノコである、〔7〕又は〔8〕に記載の薬剤。
〔10〕食用キノコがアンニンコウ(Grifola gargal)である、〔7〕から〔9〕のいずれかに記載の薬剤。
〔11〕食用キノコがアンニンコウ(Grifola gargal)の子実体である、〔7〕から〔10〕のいずれかに記載の薬剤。
〔12〕動脈硬化症がアテローム性粥状動脈硬化症、細動脈硬化、中膜硬化からなる群より選択される、〔7〕から〔11〕のいずれかに記載の薬剤。
〔13〕低分子画分が以下の工程を含む方法によって得られる、〔7〕から〔12〕のいずれかに記載の薬剤;
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以下の物質からなる画分を取得する工程。
〔14〕以下(a)から(c)の工程を含む方法によって調製される食用キノコの熱水抽出液の低分子画分であって、アンギオテンシンII変換酵素の阻害活性を有する低分子画分;
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以下の物質からなる画分を取得する工程。
〔15〕〔1〕から〔6〕に記載の阻害剤、〔7〕から〔13〕に記載の薬剤、および〔14〕に記載の低分子画分からなる群より選択される少なくとも1つを含む飲食品組成物。
本発明により、アンニンコウの熱水抽出液の低分子画分を含むアンギオテンシン変換酵素阻害剤、動脈硬化症の治療剤や予防剤などが提供された。アンニンコウは、従来より食品として使用されている。従って安全性が非常に高く、副作用のリスクが小さい治療あるいは予防効果が期待される。
アンニンコウ子実体の熱水による抽出および限外濾過膜による当該抽出液の低分子画分の取得工程を示す図である。 ApoE欠損マウスに対するアンギオテンシンIIとGLF(アンニンコウ子実体の熱水抽出液の低分子画分)の投与量と投与回数を示す図である。 GLFの投与工程を示す図である。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスの死亡率の変化を示す図である。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスの体重変化を示すグラフである。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスの大動脈の変化を示す写真である。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスの大動脈の面積の変化を示すグラフである。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスのアテロームの面積率の変化を示すグラフである。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスの大動脈と心臓の重量の変化を示すグラフである。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスの血清中における顆粒球数の変化を示すグラフである。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスの制御性T細胞の数の変化を示すグラフである。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスの血清中におけるMCP-1濃度の変化を示すグラフである。 GLF投与による、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウスの血清中におけるSDF-1濃度の変化を示すグラフである。 糖尿病性腎症モデルマウスに対するGLFの投与工程を示す図である。 GLF投与による、糖尿病性腎症モデルマウスの体重変化を示すグラフである。 GLF投与による、糖尿病性腎症モデルマウスの腎臓重量の変化を示すグラフである。 GLF投与による、糖尿病性腎症モデルマウスの腎臓組織におけるコラーゲン量の変化を示すグラフである。 GLF投与による、糖尿病性腎症モデルマウスの腎臓組織におけるヒドロキシプロリン量の変化を示すグラフである。 GLF投与による、糖尿病性腎症モデルマウスの腎臓組織における線維化の変化を示すグラフである。 GLF投与による、糖尿病性腎症モデルマウスの血清中におけるSDF-1濃度の変化を示すグラフである。
本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を含む、アンギオテンシン変換酵素阻害剤に関する。また本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を含む、動脈硬化症の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤に関する。さらに本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分であって、アンギオテンシン変換酵素の阻害活性、あるいは、動脈硬化症の治療及び予防の両方又はいずれか一方の活性を有する低分子画分に関する。
食用キノコは、当該キノコの熱水抽出液の低分子画分がアンギオテンシン変換酵素の阻害作用あるいは動脈硬化症の治療効果や予防効果の少なくとも1つを有する限り、特に限定されない。そのような食用キノコの例として、Grifola属、Pleurotus属、Lentinula属、Pholiota属、Agrocybe属、Leucopaxillus属、Agaricus属、Tricholoma属からなる群より選択されるキノコが挙げられる。
より具体的には、このような食用キノコとして、
・アンニンコウ(学名:Grifola gargal)
・マイタケ(学名:Grifola frondosa)
・ヒラタケ(学名:Pleurotus ostreatus)
・エリンギ(学名:Pleurotus eringii)
・シイタケ(学名:Lentinula edodes)
・ナメコ(学名:Pholiota nameko)
・ヤナギマツタケ(学名:Agrocybe cylindracea)
・オオイチョウタケ(学名:Leucopaxillus giganteus)
・ヒメマツタケ(学名:Agaricus blazei)
・サウーバ(学名:Tricholoma sp.)
・キッタリア(学名:Cyttaria espinosae)
などを挙げることができるがこれらに限定されない。
上述の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分は、アンギオテンシン変換酵素の阻害活性を有する。アンギオテンシン変換酵素は、アンギオテンシンIをアンギオテンシンIIへ変換する。本発明の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分は、アンギオテンシン変換酵素の阻害を通してアンギオテンシンIIの生成を抑制し、動脈硬化症を改善したと考えられる。
食用キノコの熱水抽出液の低分子画分がアンギオテンシン変換酵素の阻害活性を有するか否かは、例えば、アンギオテンシン変換酵素を含む溶液に食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を加え、当該酵素の活性を測定することにより行うことができる。食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を投与しない対照と比較してアンギオテンシン変換酵素の活性が減少した場合、当該低分子化画分はアンギオテンシン変換酵素の阻害活性を有すると判定できる。当該酵素の活性は、吸光度測定など公知の酵素活性の測定手法により行うことができる。
また、上述の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分が動脈硬化症の治療効果や予防効果を有するか否かは、例えば、上述の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分による以下の作用をin vivoあるいはin vitroで測定することにより判定することができる。対照と比較して、上述の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分が以下に例示する作用を促進させた場合、上述の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分は動脈硬化症の治療効果あるいは予防効果を有すると判定することができる。
・動脈硬化に起因する死亡率を減少させる作用
・大動脈の面積を減少させる作用
・アテロームの面積率を減少させる作用
・大動脈及び/又は心臓の重量を減少させる作用
・血しょう中の顆粒球を減少させる作用
・制御性T細胞を増加させる作用
・血しょう中のMCP−1値を減少させる作用
・血しょう中のSDF−1値を減少させる作用
・腎臓重量を減少させる作用
・腎臓組織におけるコラーゲン量を減少させる作用
・腎臓組織におけるヒドロキシプロリン量を減少させる作用
・腎臓組織における線維化を抑制する作用
あるいは、上述の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を動脈硬化症の症状を有する対象に投与し、対象における動脈硬化症の症状を観察し、または動脈硬化症の症状の指標となるマーカーを測定、検出することにより、動脈硬化症の治療効果や予防効果を判定することもできる。食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を投与しない対照と比較して動脈硬化症の症状が抑制または緩和した場合、あるいは対照と比較して動脈硬化症の公知の診断マーカーの値が減少した場合、上述の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分は動脈硬化症の治療効果または予防効果を有すると判定することができる。
動脈硬化症の診断は、例えば頸動脈エコーやABI検査など公知の手法により行うことができる。頸動脈エコーではIMT(内膜中膜複合厚)を測定する。IMTの値が1.0mm以下の場合、正常と判断される。一方1.1mmを超えると脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)と虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)の発症率が高くなるとされている。
ABI検査(足関節上腕血圧比)では足首と上腕の血圧を測定し、その比率(足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧)を計算する。ABIの測定値が0.9以下の場合、症状の有無にかかわらず動脈硬化が疑われる。
動脈硬化症とは、動脈壁の肥厚および弾性喪失を引き起こす複数の疾患の総称である。最も一般的な形態であるアテローム性の動脈硬化は、冠動脈疾患および脳血管疾患を引き起こすため特に重要である。非アテローム性の動脈硬化には、細動脈硬化およびメンケベルク動脈硬化がある。
アテローム性の動脈硬化では、中型動脈および大型動脈の内側に斑点状の内膜プラーク(アテローム)が生じる。プラークは脂質、炎症細胞、平滑筋細胞、および結合組織を含む。アテローム性の動脈硬化の危険因子には異脂肪血症、糖尿病、喫煙、家族歴、座ることが多いライフスタイル、肥満、および高血圧がある。症状はプラークの成長または破裂により血流が減少または途絶するときに現れる。診断は、血管造影、超音波検査その他の画像検査などの臨床的な手法で行うことができる。
一方非アテローム性の動脈硬化では、動脈およびその主要分枝における、年齢に関連した線維症を伴う。非アテローム性の硬化は内膜肥厚を引き起こし、弾性板を脆弱化し破壊する。平滑筋(中膜)層は萎縮し、侵された動脈の内腔は拡大し、動脈瘤または解離の素因となる。高血圧が、大動脈硬化および動脈瘤の形成の主要因子である。内膜損傷、拡張症、および潰瘍形成は血栓症、塞栓症、または血管完全閉塞につながることがある。
非アテローム性の動脈硬化の1つである細動脈硬化では、糖尿病または高血圧を有する患者の遠位動脈が侵される。脳や腎臓の中の細い動脈が硬化して血流が滞る動脈硬化といえる。特に硝子様細動脈硬化では糖尿病患者の小動脈および細動脈が侵される。典型的には、硝子性肥厚が生じ、細動脈壁が変性し、内腔が狭窄し、特に腎臓においてびまん性虚血を引き起こす。増殖性細動脈硬化は高血圧患者でしばしば起こり、典型的には層状の同心肥厚および管腔狭窄を生じ、ときにフィブリノイドの沈着および血管壁の壊死(壊死性細動脈炎)を伴う。高血圧はこれらの変化を促進し、細動脈硬化は細動脈の硬性および末梢抵抗を高めることにより、高血圧の維持を助長することがある。
一方中膜硬化では、巣状石灰化を伴う年齢に関連した中膜変性が生じ、さらには動脈壁内の骨形成を伴うこともある。動脈の一部が内腔の狭窄を伴うことなく、硬く石灰化した管になることがある。診断は通常、単純X線検査によって行う。
本発明における動脈硬化症としては、アテローム性粥状動脈硬化症、細動脈硬化、中膜硬化などを例示することができるがこれらに限定されない。
上に挙げた食用キノコのうち、マイタケ、ヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ナメコ、オオイチョウタケ及びヤナギマツタケの7種は、日本において食用として栽培されているキノコである。またアンニンコウ、ヒメマツタケ、サウーバ及びキッタリアの4種は、南アメリカに生息している食用キノコである。
本発明においては、食用キノコとして、特にアンニンコウが好ましい。本発明においては、アンニンコウの菌糸体及び子実体のいずれも使用することができるが、子実体が好ましい。
アンニンコウは、南アメリカのパタゴニア地方のNotofagus sp.の枯れ木や倒木に発生する担子菌類ヒダナシタケ目サルノコシカケ科マイタケ属に属する木材腐朽菌である。近年、菌床栽培も可能となった。アンニンコウの菌床栽培は、当業者であれば、例えば特開2007−20560に開示の方法にしたがって行うことができる。あるいは、例えば以下の組成からなる培地にアンニンコウ種菌(例えば、株式会社岩出菌学研究所保存のIwade−GG010株)を接種後、例えば培養温度20℃、湿度70%の恒温室内で90日間培養する。そして、培養物を以下に示す低温処理および発生処理を行うことにより、アンニンコウの子実体を得ることができる。なお、アンニンコウ種菌の培養により、菌糸が培地全体に蔓延し、ベンズアルデヒドを主成分とする強い芳香が培養室全体に広がる。この強烈な芳香はアンニンコウに特徴的なものである。
(培地組成)
基材:ナラ類、クヌギ等の広葉樹おが屑
栄養剤:米ぬか、フスマ等
基材:栄養剤=5:1(体積比)にて、混合し、含水率65%とするように、水を加える。
このように調整した培地は、培養ビンや培養袋に入れて、高圧下で滅菌し、冷却後に使用することができる。
(低温処理)
充分に蔓延した菌糸体に刺激を与える。刺激は光照射、低温であり、光刺激は、照度2000Lx 程度である。低温刺激として、室温を10℃に維持する。菌糸培養中にベンズアルデヒドを主成分とする強い芳香を放散する。この芳香が急に激減する時期に刺激を与える(例えば培養90日後)。
このような刺激を与えると、原基が発生し、原基の表面が白から、灰色、黒色へ、変化する。変化した後に、発生処理を行う。
(発生処理)
例えば相対湿度90〜100%、温度15℃の条件で、子実体を発生させることができる。上述のように原基の表面が黒色化した後、培養袋を開封し、培地の空気の循環を促して、培地中の二酸化炭素の濃度を下げ、子実体を発生させることができる。種菌の接種から約120日で、培地2kgからアンニンコウの子実体約400g(生きのこ)を収穫できる。
本発明の「食用キノコの熱水抽出液」は、食用キノコに由来する1つの成分または複数の成分を含むものであって、食用キノコを熱水中で浸漬することによって得られるものから残渣を取り除くことによって得られるものであれば特に限定されない。例えば、食用キノコの熱水抽出物から残渣を取り除くことによって得られる上澄み液、当該上済み液の濃縮液、凍結乾燥品なども、動脈硬化症の治療効果または予防効果が損なわれない限り、本発明の「食用キノコの熱水抽出液」に含まれる。
食用キノコの熱水抽出物は、例えば、食用キノコの乾燥品を粉砕機で粉砕し、それを大量の熱水で煮込むことによって得ることができる。食用キノコの乾燥は、例えば、キノコに40乃至50℃(好ましくは45℃前後)の温風を一昼夜あて、その後60乃至80℃(好ましくは70℃前後)の温風を、例えば約1時間あてることにより行うことができるがこれに限定されない。食用キノコの乾燥品の粉末化は、例えば、乾燥後のキノコをミキサーで粉砕することによって行うことができる。
このようにして得られる食用キノコの粉末は、大量の熱水で処理される。具体的には、例えば、食用キノコの乾燥粉末を熱水に入れ、温度を一定に保ちながら、食用キノコと熱水との混合物を攪拌することにより、食用キノコの熱水抽出物を取得することができる。熱水の温度は、例えば70℃から120℃、好ましくは80℃から110℃、より好ましくは85℃から100℃、特に好ましくは90℃から95℃を例示することができるがこれらに限定されない。また抽出時間は、例えば4時間から8時間、好ましくは5時間から7時間、特に好ましくは6時間程度を例示することができるがこれらに限定されない。また熱水抽出は、通常、中性、常圧の条件下で行うが、減圧、加圧条件下で行うこともできる。
本発明の食用キノコの熱水抽出物の熱水抽出液は、例えば、上述の方法にしたがって得られる食用キノコの熱水抽出物から残渣を取り除き、上澄み液を分離することにより取得することができる。上澄み液の分離は、例えばセライト濾過、薮田式ろ過、フィルタープレス、遠心分離、限外濾過などによって行うことができるがこれに限定されない。熱水抽出物から上澄み液の分離は、熱水抽出物を遠心分離し、食用キノコの乾燥粉末を沈澱させた後に行うことが好ましい。またこの工程は、上述の方法にしたがって得られる熱水抽出物を濾別することによって、食用キノコの乾燥粉末を分離・除去した後に行うこともできる。
上述の食用キノコと熱水の混合物の攪拌の工程と、それにより得られる熱水抽出物から上澄み液を分離する工程は、それぞれ、1回又は複数回行うことができる。あるいは、熱水抽出物から上澄み液を分離することにより得られる食用キノコの残渣に新たな熱水を加え、それにより得られる食用キノコの残渣と熱水の混合物を攪拌し、当該混合物(新たな熱水抽出物)から上澄み液を分離し、熱水抽出液を取得することもできる。本発明においては、食用キノコと熱水の混合物の攪拌時間を例えば30分程度とした場合、食用キノコと熱水の混合物の攪拌と、それにより得られる熱水抽出物からの上澄み液の分離の工程を、好ましくは2乃至5回程度、特に好ましくは3又は4回行うことができる。ホローファイバーを用いれば連続処理が可能である。
本発明においては、食用キノコの熱水抽出液を濃縮して使用することもできる。濃縮は、例えば逆相高速液体クロマトグラフィ(逆相HPLC)を使用して行うことができる。また本発明の熱水抽出液は、凍結乾燥又は噴霧乾燥した形態ものとして使用することもできる。凍結乾燥、噴霧乾燥は、この分野で通常行われている条件及び方法で行うことができる。本発明においては、熱水抽出液の濃縮や凍結乾燥、噴霧乾燥を複数回行うことができる。
本発明においては、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分及びその濃縮物あるいは乾燥産物を、アンギオテンシン変換酵素の阻害、あるいは対象における動脈硬化の治療や予防のために使用することが好ましい。
本発明において低分子画分とは、食用キノコの熱水抽出液を限外濾過膜などの濾過膜を使用して高分子側と低分子側に分画した際に、低分子側に得られる画分をいう。あるいは本発明の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分は、濾過膜を使用してある分子量を境として食用キノコの熱水抽出液を分画した場合に、膜を透過する画分と言い換えることもできる。本発明の低分子画分は、アンギオテンシン変換酵素の阻害作用あるいは動脈硬化症の治療または予防効果を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、分子量1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000から選択される2点の分子量を下限(〜以上、又は、〜より高い)及び上限(〜以下、又は、〜より低い)とする範囲により示される分子量の範囲にある物質を分離するための分離膜によって、低分子側に分離される画分であることが好ましい。本発明においては、分子量6000を好ましい例として挙げることができるがこれに限定されない。
このような低分子画分は、食用キノコの熱水抽出液を、上述の分子量の範囲内にある分子の分離に使用可能な濾過膜を使用する限外濾過などによって取得することができる。上澄み液に含まれる成分を分離膜で分画するに際し、上澄み液は、そのまま使用してもよいし、ある程度濃縮した後に使用してもよい。あるいは、上澄み液を一旦凍結乾燥や噴霧乾燥等の方法で粉末化し、その粉末を水に溶解させて得られる水溶液の形態で使用してもよい。
本発明の食用キノコの熱水抽出液の低分子画分は、顆粒球の減少、制御性T細胞の増殖促進などの免疫調整機能を有する。したがって本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を有効成分とするこれらの免疫機能の調整剤に関する。
また本発明は、以下の工程を含む方法によって得られる食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を含む、アンギオテンシン変換酵素の阻害剤に関する。
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以下の物質からなる画分を取得する工程。
さらに本発明は、以下の工程を含む方法によって得られる食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を含む、動脈硬化症の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤に関する。
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以下の物質からなる画分を取得する工程。
食用キノコの粉末、当該粉末の熱水抽出液、熱水抽出液から分子量が6000以下の物質からなる画分の取得方法は上に述べた。食用キノコとしてはアンニンコウの子実体が好ましいがこれに限定されない。
本発明においては、「食用キノコの粉末を提供する工程」、「粉末の熱水抽出液を提供する工程」はそれぞれ、「食用キノコの粉末を調製する工程」、「粉末の熱水抽出液を調製する工程」と表現することもできる。
また本発明は、以下の工程を含む方法によって得られる食用キノコの熱水抽出液の低分子画分であって、アンギオテンシン変換酵素の阻害活性を有する低分子画分に関する。また本発明は、以下の工程を含む方法によって得られる食用キノコの熱水抽出液の低分子画分であって、動脈硬化症の治療及び予防の両方又はいずれか一方の作用を有する低分子画分に関する。さらに本発明は、以下の工程を含む食用キノコの熱水抽出液の低分子画分の製造方法に関する。
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以下の物質からなる画分を取得する工程。
本発明の低分子画分は、アンギオテンシン変換酵素の阻害作用、あるいは動脈硬化症の治療効果および/または予防効果を有する。
またアンジオテンシンIIには血管の収縮などを通して血圧を上昇させる作用があることが知られている。実際、ペリンドプリル(商品名:コバシル、協和発酵キリン)、デラプリル(商品名:アデカット、武田薬品工業)、トランドプリル(商品名:プレラン、中外製薬)、シラザプリル(商品名:インヒベース、中外製薬)など多くのアンジオテンシン変換酵素阻害薬が降圧剤として臨床で用いられている。したがって本発明のアンギオテンシン変換酵素阻害剤は、降圧剤として使用することもできる。すなわち本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を含む高血圧症の治療および予防の両方またはいずれか一方のための薬剤に関する。
本発明の阻害剤、薬剤又は低分子画分は、単独でアンギオテンシン変換酵素の阻害のため、あるいはヒトおよび動物における動脈硬化症又は高血圧症の治療および/または予防のために用いることができる。あるいは医薬品や食品に通常使用されうる他の成分と混合して経口投与することもできる。また、アンギオテンシン変換酵素の阻害作用、あるいは動脈硬化症又は高血圧症の治療および/または予防効果が知られている他の化合物や微生物等と併用することもできる。
本発明の阻害剤、薬剤は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分の両方またはいずれか一方を主成分とするものであることが好ましい。本発明において「主成分とする」とは、当該阻害剤、薬剤が目的とする活性(たとえばアンギオテンシン変換酵素を阻害する活性や動脈硬化又は高血圧症を治療あるいは予防する活性)の30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上が、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分によって達成されることをいう。
本発明の阻害剤、薬剤又は低分子画分の投与量は、投与経路、ヒトを含む投与対象動物の年齢、体重、症状など、種々の要因を考慮して、適宜設定することができる。本発明はこれに限定されないが、成人1日当たり、熱水抽出液の低分子画分の凍結乾燥粉末の量に換算して、10乃至200mg/kg体重程度であることが好ましく、20乃至100mg/kg体重程度であることがさらに好ましい。また熱水抽出液の低分子画分の摂取量は、特に限定されないが、成人1日当たり、低分子画分の凍結乾燥粉末の量に換算して、2乃至30mg/kg体重程度であることが好ましく、4乃至15mg/kg体重であることがさらに好ましい。しかしながら、長期間に亘って治療および/または予防の目的で摂取する場合には、上記範囲よりも少量であってもよい。あるいは、本発明の低分子画分は、食品としての安全性について問題がないので、上記範囲よりも多量に使用することもできる。
また本発明の阻害剤、薬剤又は低分子画分は、経口投与又は非経口投与(筋肉内、皮下、静脈内、坐薬、経皮、経胃管、経皮吸収等)のいずれでも投与することができる。また本発明の阻害剤、薬剤又は低分子画分は、湿布や塗布などの方法により局所投与することもできる。
本発明の阻害剤、薬剤又低分子画分の投与形態としては、その目的や投与経路等に応じて剤型を選択することができ、例えば錠剤、被覆錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射剤、坐剤、浸剤、煎剤、チンキ剤等が挙げられる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に対して必要に応じて充填剤、増量剤、賦形剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。また、この医薬製剤中に着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させてもよい。
また本発明は、本発明の薬剤、阻害剤及び低分子画分の少なくともいずれか1つを含む、アンギオテンシン変換酵素を阻害するための飲食品組成物を提供する。あるいは本発明は、本発明の阻害剤、薬剤及び低分子画分の少なくともいずれか1つを含む、動脈硬化症又は高血圧症の治療及び/又は予防用飲食品組成物を提供する。
本発明の飲食品組成物は、保健機能食品や病者用食品にも適用することができる。保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたもので、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型からなる。本発明の阻害剤、薬剤及び低分子画分の少なくともいずれか1つを含有する特定保健用食品等の特別用途食品や栄養機能食品を直接摂取することにより動脈硬化症又は高血圧症の治療及び/又は予防が可能となる。
本発明の飲食品組成物は、具体的には、各種飲食品に本発明の阻害剤、薬剤又は低分子画分を添加したものを例示することができる。本発明の飲食品組成物は、本発明の薬剤、阻害剤又は低分子画分の少なくともいずれか1つをそのまま使用し、あるいは他の食品ないし食品成分と混合するなど、飲食品組成物における常法にしたがって使用できる。また、その性状についても、通常用いられる飲食品の状態、例えば、固体状(粉末、顆粒状その他)、ペースト状、液状または懸濁状のいずれでもよい。
その他の成分についても特に限定されないが、本発明の飲食品組成物には、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を主成分として使用することができる。タンパク質としては、例えば大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質が挙げられる。糖質としては糖類、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂、パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは合成品、これらを多く含む食品由来のもののいずれであってもよい。
本発明の阻害剤、薬剤又は飲食品組成物を構成する食用キノコの熱水抽出液の低分子画分の量は、その目的、用途(薬剤、飲食品組成物)に応じて任意に定めることができる。本発明はこれに限定されないがその含量としては、全体量に対して通常、0.001〜100%(w/w)、特に0.01〜100%(w/w)が好ましい。
また本発明は、本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を動物に経口投与する工程を含む、アンギオテンシン変換酵素の阻害方法に関する。本発明のアンギオテンシン変換酵素の阻害方法は、生体内に加えin vitroの系において実施することもできる。すなわち本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分をアンギオテンシン変換酵素を対象に接触させる工程を含む、in vitroにおいてアンギオテンシン変換酵素を阻害する方法に関する。また本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分をアンギオテンシン変換酵素を含む、in vitroにおけるアンギオテンシン変換酵素阻害剤に関する。
あるいは本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分を動物に経口投与する工程を含む、動脈硬化症又は高血圧症の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための方法に関する。食用キノコの熱水抽出液の低分子画分が投与される対象としては、哺乳動物が挙げられる。哺乳動物としてはヒト及びヒト以外の動脈硬化の治療や予防を必要とする哺乳動物が挙げられ、好ましくはヒトやサルが挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。
また本発明は、アンギオテンシン変換酵素の阻害のために使用するための食用キノコの熱水抽出液の低分子画分や、動脈硬化症又は高血圧症の治療及び予防の両方又はいずれか一方のために使用するための食用キノコの熱水抽出液の低分子画分に関する。あるいは本発明は、動脈硬化症又は高血圧症の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤の製造における、又はアンギオテンシン変換酵素阻害剤の製造における、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分の使用に関する。
また本発明は、食用キノコの熱水抽出液の低分子画分と薬学的に許容される担体を配合する工程を含む、動脈硬化症又は高血圧症の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤又はアンギオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法に関する。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕アンニンコウからの有効成分の熱水抽出
(1)キノコの乾燥粉末の調整
アンニンコウ(株式会社岩出菌学研究所にて人工栽培したもの)の子実体(川出光生, 原田栄津子,西岡宏樹,目黒貞利:チリ産食用担子菌Grifola gargalの菌床栽培―栽培に適した菌株のスクリーニング―日本きのこ学会誌, 17, 75-79.(2009))に45℃の温風を一昼夜あて、その後、70℃の温風を1時間あてた。得られたアンニンコウ子実体乾燥品を粉砕機にて粉砕し、粉末とした。
(2)熱水抽出および限外濾過膜による分画
アンニンコウ子実体乾燥粉末200kgを200メッシュで篩、水21キロリットルを混合し、90〜95℃で6時間熱水抽出した。得られたキノコ/熱水抽出物(GF)を、熱水抽出液と残渣に分けた。得られた熱水抽出液を、旭化成ケミカルズ株式会社製の限外濾過膜(旭化成UFモジュールマイクロ―ザRACP;分子量:6000)でろ過し、高分子画分(GHF)と低分子画分(GLF)を得た。これを減圧条件下で濃縮し、ついで、真空凍結乾燥を行った(図1)。
〔実施例2〕アンギオテンシンIIを投与したApoE欠損マウスに対するGLFの効果
[モデルマウス]
実験には、ApoE欠損マウス(ApoE-/-マウス)12週齢の雄を使用し、温度湿度管理された動物舎にて、自由給餌、給水、12時間光照射12時間暗黒下の環境条件にて、飼育を行った(図2)。
アンギオテンシンII(AngII:2μg/kg/day)と生理食塩水は、マウスの皮下に移植したマイクロ浸透圧ミニポンプ(Alzet, model 2004,Palo Alto, CA, USA)を通して投与された。このマイクロ浸透圧ミニポンプを移植することによって、28日間一定の速度で連続的にAngIIと生理食塩水を投与することができる。
このマウスをアテローム粥状動脈硬化症のモデルマウスとし、GLF投与実験に用いた。
GLF投与群では、アテローム粥状動脈硬化症モデルマウス(Ang群)にGLF(10mg/kg)をミニポンプの移植後3日目から28日目までの週2回(月曜日および木曜日)に腹腔内投与した(図3)。アテローム粥状動脈硬化症のモデルマウスにGLFを腹腔内注射したグループは、アンギオテンシンII(ポンプ)/ GLF(腹腔内注射)群(AngII(pump)/ GAR(i.p.)、以下「Ang/GAR群」)とした。
また、GLF群と同様に生理食塩水200μlを腹腔内投与したアテローム粥状動脈硬化症モデルマウス(Ang群)を、ネガティブコントロールとした(アンギオテンシンII(ポンプ)/ 生理食塩水(腹腔内注射)群(AngII(pump)/ SAL(i.p.)、以下「Ang/SAL群」))。
生理食塩水をミニポンプにて投与し、生理食塩水200μlを腹腔内投与したApoE-/-マウスを、ポジティブコントロールとした(生理食塩水(ポンプ)/ 生理食塩水(腹腔内注射)群(Sal(pump)/ SAL(i.p.)、以下「SAL/SAL群」))。
生理食塩水(ポンプ)/ 生理食塩水(腹腔内注射)群:Sal(pump)/ SAL(i.p.)
アンギオテンシンII(ポンプ)/ 生理食塩水(腹腔内注射)群:AngII(pump)/ SAL(i.p.)
アンギオテンシンII(ポンプ)/ GLF(腹腔内注射)群:AngII(pump)/ GAR(i.p.)
アンジオテンシンII投与後、28日間マウスの体重を経時的に測定すると同時に、実験終了後の死亡率を測定し、30日目に解剖を行った。
解剖した後、心臓と大動脈と取り出し、重量を測定し、アテロームの形成等を観察した。
取り出した大動脈を開いてSudanIIIによりアテローム部分を染色した。
PLASMA中の免疫応答反応として、顆粒球、制御性T細胞の数を、製造社の指示に従い特異的マウスELISAキットで測定した。また、PLASMA中の炎症の指標であるMCP-1や血管内皮細胞、筋繊維芽細胞、繊維芽細胞などの数を増殖させる因子であるSDF-1の値を測定した。
[結果]
マウス死亡率(図4)
ネガティブコントロール群(SAL/SAL群)は死亡率が0%であったのに対して、アンジオテンシンIIを投与したアテローム粥状動脈硬化症モデルマウス(Ang/SAL群)では死亡率は33.3%であった。一方GLF投与群(Ang/GAR群)では死亡率は20%であり、GLFの投与は動脈硬化症に起因する死亡率を減少させた。
マウス体重変化(図5)
SAL/SAL群と比較してAng/SAL群とAng/GAR群は体重の減少が著しかった。しかし、Ang/SAL群とAng/GAR群には差が見られなかった。
大動脈の面積(図6−1、図6−2)
SAL/SAL群と比較してAng/SAL群は、大動脈の面積が大きく、アテローム性の動脈硬化が進んでいることが確認された。それと比較して、Ang/GAR群では大動脈の面積が減少しており、アテロームの形成が抑制されていた。
アテロームの面積率(図7)
染色されたアテロームの面積を測定した。SAL/SAL群と比較してAng/SAL群では、アテロームの面積率も増加していた。一方Ang/GAR群ではAng/SAL群と比較して、アテロームの面積率が減少した。
大動脈と心臓の重量(図8)
大動脈と心臓の重量を測定した。SAL/SAL群と比較してAng/SAL群では、アテローム形成に比例して重量が増えた。一方Ang/GAR群では、Ang/SAL群と比較して、大動脈と心臓の重量が減少した。
顆粒球数(図9)
顆粒球の増加は血管などに損傷を引き起こし、動脈硬化に関わることが確認されている。SAL/SAL群に対してAng/SAL群では著しく顆粒球が増加した。したがって、Ang/SAL群では血管に障害を持つと推測される。しかしAng/GAR群では、顆粒球数がSAL/SAL群とほぼ同程度に減少した。そのため、Ang/GAR群では血管の異常が減少したと推測される。
制御性T細胞数(図10)
制御性T細胞は、アテローム性動脈硬化の発症を抑制することが知られている(Nature Medicine 12, 178-180 (2006) Natural regulatory T cells control the development of atherosclerosis in mice)。SAL/SAL群に対してAng/SAL群は、制御性T細胞の値が減少した。一方Ang/GAR群では、制御性T細胞の値は増加していた。このことから、Ang/SAL群ではアテローム性動脈硬化の発症が抑制されたと推察される。
MCP−1(図11)
炎症性マーカーであるMCP-1の値を測定した。Ang/GAR群において、MCP-1の値が増加しており、動脈硬化による血管の炎症が引き起こされていると考えられた。一方Ang/GAR群ではMCP-1の値は減少した。このことからAng/GAR群では血管の損傷が抑えられていることが推測できる。
SDF−1(図12)
SDF-1の刺激により、血管内皮細胞、筋繊維芽細胞、繊維芽細胞などの数が増加する。これにより血管の修復、保護が促進され、動脈硬化症の症状を改善する。SDF-1の値がAng/GAR群において増加することが確認された。したがって、Ang/GAR群ではSDF-1によりアテロームの形成が抑制されたと推測できる。
なおSDF-1は、骨髄由来血管内皮前駆細胞(endorhelial progenitor cells: EPCs)や間葉系前駆細胞(mesenchymal progenitor cell)、中間葉系前駆細胞(Fibrocytes)の動員に関わるケモカインであり、アテローム粥状動脈硬化症の血管損傷からの回復に関与することが知られている(P. Gil-Bernabe et al., Circulation Journal, Vol.75, 2269-2279, 2013)。
〔実施例3〕糖尿病性腎症モデルマウスにおける動脈硬化症に対するGLFの効果
[モデルマウス]
C57/Bl6 マウス(雄、8週齢: 20-25g)を使用した。マウスは、温度湿度管理された動物舎で行い、自由給餌、給水、12時間光照射12時間暗黒下の環境条件にて、飼育を行った。腎臓病の症状を早めるために、用いた全てのマウスから片側の腎臓を摘出した(P. GIL-BERNABE etc. (2012) Exogenous activated protein C inhibits the progression of diabetic nephropathy. Journal of Thrombosis and Haemostasis, 10: 337-346)。腎臓の摘出手術後、状態の回復を確認した後(1か月後)、ストレプトゾトシ(40mg/kg)を連続5日間、腹腔内注射した。コントロールマウスは、生理食塩水(200μl)を腹腔内注射した。4週間後、STZ処理したマウスは、非空腹時血糖値が300 mg /dLに達しており、糖尿病を発症していた。これらの高血糖値を示したマウスは、糖尿病性腎症モデルマウス群とした。一方、正常マウス群として、ストレプトゾトシンに代えて生理食塩水を腹腔内注射した(正常マウス群:生理食塩水 / 生理食塩水(腹腔内注射)群、以下「SAL/SAL群」)。糖尿病性腎症モデルマウス群の血糖値を確認後、3日後から1週間に2回、(月曜日および木曜日:8週目まで)GLF(100mg/kg)を腹腔内注射し(STZ / GLF(腹腔内注射)群、以下「STZ/GAR群」)、GLF投与の影響を検討した(図13)。コントロールとして、GLF腹腔内投与と同様に、生理食塩水200μlを腹腔内投与した(STZ / 生理食塩水(腹腔内注射)群、以下「STZ/SAL群」)。
生理食塩水 / 生理食塩水(腹腔内注射)群:SAL/SAL群
STZ / 生理食塩水(腹腔内注射)群:STZ/SAL群
STZ / GLF(腹腔内注射)群:STZ/GAR群
GLF投与後、マウスの体重を経時的に測定し、8週目に解剖を行った。解剖した後、腎臓を取り出し、重量を測定した。また腎臓のコラーゲン量およびコラーゲンの主要な成分であるヒドロキシプロリン量を測定した。さらに慢性腎臓病の進行過程で認められる腎臓の線維化をマッソン染色法により評価した。また、PLASMA中の炎症の指標であるMCP-1を、製造社の指示に従い特異的マウスELISAキットで測定した。
なお、糖尿病で血糖の高い状態が10年以上も続くと、全身の動脈硬化が進行し始め、腎臓に障害が及ぶと蛋白尿、ネフローゼ症候群等を経て慢性腎不全に至る。このことから、糖尿病性腎症も動脈硬化が原因であると考えられて、糖尿病性腎症モデルマウスは、動脈硬化が進行したマウスといえる。
[結果]
マウス体重変化(図14)
SAL/SAL群と比較してSTZ/SAL群とSTZ/GAR群は体重が著しく減少した。一方STZ/SAL群とSTZ/GAR群の間には、体重の差は見られなかった。
腎臓重量(図15)
SAL/SAL群と比較してSTZ/SAL群は腎臓の重量が増加しており、腎臓が肥大した。一方STZ/GAR群では腎臓の重量が有意に減少しており、肥大化が抑制された。
腎臓組織におけるコラーゲン量(図16)
染色されたアテロームの面積を測定した。SAL/SAL群と比較してSTZ/SAL群ではコレステロール値が高く、コラーゲンの沈着がみられた。一方STZ/GAR群では、コラーゲンの沈着がSAL/SAL群と同程度にまで減少していた。コラーゲンは線維化を構成する細胞外基質であり、動脈硬化はコラーゲンの異常沈着が原因である。このため、STZ/GAR群ではコラーゲンの沈着が抑制され、動脈硬化の症状が改善されていると考えられる。
腎臓組織におけるヒドロキシプロリン量(図17)
コラーゲンの主要な成分であるヒドロキシプロリン量を測定した。上述のコラーゲン値と同じように、STZ/GAR群では、ヒドロキシプロリン量も減少していた。このことから、コラーゲン量が減少し、血管の動脈硬化が抑制されていることが示唆される。
マッソン染色による線維化の定量(図18)
慢性腎臓病の進行過程で認められる腎臓の線維化をマッソン染色法により評価した。マッソン染色を行うことにより、腎臓組織の線維化を定量した。STZ/GAR群では、SAL/SAL群と比較して、線維化が進行しており、動脈硬化が進行していると考えられる。しかし、STZ/GAR群では、線維化が抑えられ、動脈硬化が改善していることが示唆される。
MCP-1(図19)
腎疾患の発症・進展は、腎局所への炎症細胞の浸潤・活性化が原因であることから、腎疾患に関わる炎症性マーカーであるMCP-1の値を測定した。その結果、STZ/SAL群において、MCP-1の値が増加した。腎疾患による炎症が引き起こされていると考えられる。一方STZ/GAR群では、血液中のMCP-1の値は減少した。動脈硬化は、免疫異常によって炎症反応が血管壁で惹起されて発生する機序の存在も示唆されている。したがって、MCP-1の減少から腎臓の血管における動脈硬化の改善が推測される。
〔実施例4〕ACE(アンギオテンシンII変換酵素)阻害活性の測定
〔方法〕
各サンプル(表1)を段階的に蒸留水で希釈した。マイクロプレートの各ウェルに希釈した各試料液50μlを入れた。希釈は蒸留水で行い、Blankには蒸留水をいれた。
各サンプルに10mU/mLのACE溶液、または蒸留水100μlを添加した。プレートミキサーで混合した後、37℃にて10分間インキュベートし、反応させた。
1N NaOH溶液を50μlずつ加え反応を停止させ、プレートミキサーで撹拌した後、0.2% O-フタルアルデヒド溶液を10μl添加した。プレートミキサーで撹拌した後、室温にて15分間反応させた。その後、3.6Mリン酸を15μl添加した。再度、プレートミキサーで撹拌した後、360nm 励起波長、460nm蛍光波長で蛍光強度を測定した。
ACEの阻害率(%)は、下記の計算式により算出した。
阻害活性=100−{(S-Sb)/(C-Cb) }×100
試料液の蛍光強度をS、試料液の代わりに超純水を使用した場合の蛍光光度をCとした。また、S及びCに対し、酵素液の代わりに超純水を添加した場合の蛍光強度をSb及びCbとした。
〔結果〕
結果として、各サンプルのACE阻害活性(%)は、GLF、GF、GHF、シイタケ、マイタケの順で強いことが判明した(表1)。
このことからACE阻害活性はGLFが最も高く、この結果から、このACE阻害活性が動脈硬化の抑制にも関わることが示唆された。また、他のきのこと比較しても、GLFのACE阻害活性は高い傾向にあることが推測できる。
本発明により、アンニンコウの熱水抽出液の低分子画分を有効成分として含むアンジオテンシン変換酵素阻害剤や、当該低分子画分を含む動脈硬化症の治療剤や予防剤が提供された。本発明の阻害剤や治療剤、予防剤は、アテローム性動脈硬化に起因する死亡率の減少、アテロームの形成抑制、血管損傷の抑制、コラーゲンの沈着、線維化を抑制する。また本発明の治療剤や予防剤は、アンジオテンシン変換酵素の活性阻害、血管の炎症の抑制や制御性T細胞など免疫細胞の働きにより、動脈硬化症の症状を改善する。アンニンコウは従来より食品として使用されており、安全性が確保されている。本発明の阻害剤や治療剤、予防剤は、動脈硬化症の治療や予防の分野において有用である。

Claims (7)

  1. アンニンコウ(Grifola gargal)の熱水抽出液の低分子画分であって、分子量が6000以下の物質からなる低分子画分を含む、アンギオテンシン変換酵素阻害剤。
  2. アンニンコウ(Grifola gargal)の子実体の熱水抽出液の低分子画分であって、分子量が6000以下の物質からなる低分子画分を含む、アンギオテンシン変換酵素阻害剤。
  3. 下の工程を含む方法によって得られる画分を含むアンギオテンシン変換酵素阻害剤の製造方法
    (a)アンニンコウ(Grifola gargal)またはアンニンコウ(Grifola gargal)の子実体の粉末を提供する工程、
    (b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
    (c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以下の物質からなる画分を取得する工程。
  4. 請求項1または2に記載の阻害剤を含む、飲食品組成物。
  5. アンニンコウ(Grifola gargal)の熱水抽出液の低分子画分であって、分子量が6000以下の物質からなる低分子画分を含む、アンギオテンシン変換酵素阻害用飲食品組成物。
  6. アンニンコウ(Grifola gargal)の子実体の熱水抽出液の低分子画分であって、分子量が6000以下の物質からなる低分子画分を含む、アンギオテンシン変換酵素阻害用飲食品組成物。
  7. 以下の工程を含む方法によって得られる画分を含む、アンギオテンシン変換酵素阻害用飲食品組成物の製造方法;
    (a)アンニンコウ(Grifola gargal)またはアンニンコウ(Grifola gargal)の子実体の粉末を提供する工程、
    (b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
    (c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以下の物質からなる画分を取得する工程。
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