JP6077230B2 - 高甘味度甘味料の味質改善剤及び味質改善方法 - Google Patents
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Description
しかし、高甘味度甘味料は、ショ糖と同等の良質な甘味やボディー感を有しているものが少なく、独特の苦味や渋味を有している、甘味の立ち上がりが遅れる、甘味が後を引く等といった欠点を持つものが多い。
その中でも、スクラロースは、それらの欠点の少ない、砂糖に近い甘味質を有する高甘味度甘味料である。また、スクラロースは甘味質が優れているだけでなく、レトルト殺菌やUHT殺菌のような食品の加熱殺菌工程中でも安定であり、長期保存や缶コーヒー等の保温販売などにおける保存安定性にきわめて優れていることにより、加工食品の甘味付与に最も優れた甘味料の一種であり、広く用いられている。
しかしながら、スクラロースの味質においても、甘味の後引き感が少なからず違和感を与えることがあり、さらにボディー感にも欠けるところがあり、それらの改善が求められている。
例えば、特許文献1では、スクラロースにクエン酸やリンゴ酸などの有機酸又はその塩を添加して、甘味の後引き感を調整する方法が開示されている。
また、スクラロースなどの高甘味度甘味料の味質を改善する方法として、ヘスペリジン(特許文献2)、ガラクトマンナン(特許文献3)、ルチン(特許文献4)、ニゲロオリゴ糖(特許文献5)、アミノ酸(L-アスパラギン酸など、特許文献6)、キナ酸(特許文献7)などを使用する方法も提案されている。
さらに、特許文献8では、特定割合のポリ−γ−グルタミン酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩など)を添加することで、スクラロースなどの高甘味度甘味料の後甘味を抑制することが記載され、特許文献9には、グルタミン酸ナトリウムと5‘−イノシン酸ナトリウムなどを含有する酵母抽出物が、サッカリン、アスパルテーム、ステビアなどの高甘味度甘味料の甘味特性、特に後味特性を改善できることが記載されている。
項1.高甘味度甘味料と、グルタミン酸アンモニウム、グルタミン酸マグネシウム、又はグルタミン酸カリウムとを含有することを特徴とする、高甘味度甘味料の味質改善剤。
項2.高甘味度甘味料が、スクラロース、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、又はサッカリンナトリウムである、項1記載の高甘味度甘味料の味質改善剤。
項3.味質改善が、甘味の後引き感の改善、又はボディー感の付与である、項1又は2記載の高甘味度甘味料の味質改善剤。
項4.高甘味度甘味料に対して、グルタミン酸アンモニウム、グルタミン酸マグネシウム、又はグルタミン酸カリウムを添加することを特徴とする、高甘味度甘味料の味質改善方法。
項5.高甘味度甘味料が、スクラロース、ラカンカ抽出物、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、又はサッカリンナトリウムである、項4記載の高甘味度甘味料の味質改善方法。
項6.味質改善が、甘味の後引き感の改善、又はボディー感の付与である、項4又は5記載の高甘味度甘味料の味質改善方法。
スクラロースなどの高甘味度甘味料の味質改善には、高甘味度甘味料の甘味の後引き感の改善や、高甘味度甘味料へのボディー感の付与が挙げられる。
スクラロースは、1−α−D−ガラクトピラノシル−2−β−D−フルクトフラノシド分子(D−ガラクトースとD−フルクトースとが還元基どうしで互いにグリコシド結合した非還元性二糖分子)内のフルクトース残基の1、6位およびガラクトース残基の4位の三つの水酸基が塩素分子で置換された構造の高甘味度甘味料で、砂糖の約600倍の甘味を有する。
スクラロースは、商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンスイートSU100等を挙げることができる。
アセスルファムカリウムは、6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)−オン−2,2−ジオキシドカリウムという化学名を有し、ショ糖の約200倍の甘味度を有する。
アスパルテームは、フェニルアラニンとアスパラギン酸がペプチド結合した構造を持つジペプチドであり、L−α−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルという化学名を有し、ショ糖の約200倍の甘味度を有する。
サッカリンナトリウムは、トルエンをスルフォン化し、さらにアミノ化、酸化して得られる甘味料サッカリンのナトリウム塩であり、ショ糖の約500倍の甘味度を有する。
ラカンカ抽出物は、中国南部の高冷地で栽培されているウリ科の果実の生又は乾燥したものからエタノールなどで抽出されるもので、モグロシドVを甘味の主成分として含有するものである。
ステビア抽出物は、南米原産のキク科多年生植物であるステビアレバウディアナ・ベルトニの葉や茎等から、水又は有機溶媒で抽出、精製されたものであり、ステビオサイド及びレバウディオサイドAを、甘味の主成分として含有するものである。
さらに、ステビア抽出物には、α−グルコシルトランスフェラーゼ等を用いて、上記ステビア抽出物にグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理ステビアも含まれる。
高甘味度甘味料1質量部に対して、グルタミン酸アンモニウム、グルタミン酸マグネシウム又はグルタミン酸カリウムの添加量が0.01質量部より少ないと、高甘味度甘味料の甘味の後引き感の改善効果が十分ではなく、ボディー感の付与も不十分であり、逆に10質量部より多いと、これらのグルタミン酸塩自体の味が強まり、高甘味度甘味料のバランスの取れた本来の味質が損なわれるので、いずれも好ましくない。
なお、グルタミン酸アンモニウム、グルタミン酸マグネシウム又はグルタミン酸カリウムは、それぞれ単独で用いても良いし、これらのうちの2つ、あるいは3つを併用しても良い。
この味質改善剤(組成物)によれば、高甘味度甘味料の甘味の後引き感による違和感という欠点を解消し、さらにボディー感を付与して、高甘味度甘味料の味質を改善することができる。
本発明の対象となる食品としては、特に制限はされないが、好適には、柑橘果汁や野菜果汁等を含む果実飲料又は野菜ジュース、コーラやジンジャエール又はサイダー等の炭酸飲料、スポーツドリンク、ニアウォーター等の清涼飲料水、コーヒー、紅茶や抹茶等の茶系飲料、ココアや乳酸菌飲料等の乳飲料などの飲料一般;ヨーグルト、ゼリー、プディング及びムース等のデザート類;ケーキ、クラッカー、ビスケット、パイや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の菓子類;米菓、スナック類;アイスクリームやシャーベット等の冷菓並びに氷菓;チューインガム、ハードキャンディ、ヌガーキャンデー、ゼリービーンズ等を含む糖菓一般;果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類;バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類;イチゴジャムやマーマレード等のジャム;菓子パン等を含むパン;焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆ等の調味料一般;蒲鉾等の魚肉練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品を広く例示することができる。
これらの食品中に高甘味度甘味料は、通常1〜5000ppm含有されており、グルタミン酸アンモニウム、グルタミン酸マグネシウム又はグルタミン酸カリウムは、高甘味度甘味料に対する前述の割合で含有されることにより、本発明の効果が発揮される。
0.014%のスクラロース水溶液に、グルタミン酸又は各種のグルタミン酸塩を表1の濃度で添加し、グルタミン酸無添加区と比較して、スクラロースの味質改善効果を、次のように官能評価した。なお、グルタミン酸又は各種のグルタミン酸塩は、添加量を0.005%とした場合と、グルタミン酸マグネシウム0.005%と等しいモル濃度になるように添加量調整した場合で、評価を行った。
×:無添加区と比べて効果が無い、又は異味がある。
△:やや味質が改善している。
○:味質が改善している。
◎:非常に味質が改善している。
また、グルタミン酸アンモニウムとグルタミン酸マグネシウムについては、スクラロースに対してボディー感付与効果が認められ、特にグルタミン酸マグネシウムで高い効果が認められた。
一方、グルタミン酸やグルタミン酸ナトリウムでは、スクラロースの味質改善効果は十分に認められなかった。
下記表2の処方に基づいてノンカロリーのニアウォーターを製造し、得られたニアウォーターを官能にて評価して、結果を表3に示す。
(製法)
(1)表2のレモンフレーバー以外を全て水に加え、加熱撹拌しながら溶解する。
(2)(1)を93℃まで加熱し、レモンフレーバーを加え、水にて全量を補正し容器に充填する。表2の数値は全て質量部を表す。
さらに、グルタミン酸アンモニウムとグルタミン酸マグネシウムについては、ボディー感の付与効果が認められた。
一方、グルタミン酸やグルタミン酸ナトリウムでは、スクラロースの甘味が持続し、ボディー感の付与効果も不十分であった。
0.014%のスクラロース水溶液に、表4の各濃度のグルタミン酸塩を添加し、無添加区と比較して、スクラロースの味質改善効果を実験例1と同様に官能評価して、結果を表4に示した。
0.014%のスクラロース水溶液に、表5の各塩を添加し、無添加区と比較して、スクラロースの味質改善効果を、実験例1と同様に官能評価して、結果を表5に示した。
なお、各塩は、グルタミン酸マグネシウム0.005%と等しいモル濃度となる添加量を使用した。
各グルタミン酸塩水溶液に、以下の表6〜8の各甘味料を添加し、官能で実験例1と同じ評価基準にて、グルタミン酸塩無添加区と比較して甘味質の改善効果について評価を行った。なお、各甘味料は、スクラロース0.014%添加と同等の甘味になる添加量で、各グルタミン酸塩は、グルタミン酸マグネシウム0.005%と等しいモル濃度となる添加量で、それぞれ評価を行った。
グルタミン酸アンモニウム0.0023%溶液に、各甘味料を添加した際の評価結果を表6に示す。
グルタミン酸カリウム0.0026%溶液に、各甘味料を添加した際の評価結果を表7に示す。
グルタミン酸マグネシウム0.005%溶液に、各甘味料を添加した際の評価結果を表8に示す。
Claims (1)
- スクラロース又はラカンカ抽出物に対して、グルタミン酸アンモニウム又はグルタミン酸マグネシウムを添加することを特徴とする、スクラロース又はラカンカ抽出物のボディー感の付与方法。
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