JP6076727B2 - アライメント制御装置 - Google Patents
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Description
そこで、その車両の常用速度域等を考慮に入れ、車両のアライメントを設定するものが提案されている。しかしそのため、滑りのない極低速に転舵角を大きく取った場合には、理想的なアッカーマン機構による転舵角と差が生じ、走行抵抗も増加していた。また、走行時のアライメント制御機能を有する場合にも、走行状態に応じて、あらかじめ設定したアライメントの設定値が、走行抵抗を最小化するとは限らず、エネルギーロスの最小化という観点では不十分であった。
そこでアッカーマン機構は、旋回内外輪の描く円弧の接線方向を向くように、旋回内側帆輪の転舵角を大きくするアライメントを採用することで、走行抵抗の低減を実現している(図10)。
低速走行時のタイヤ滑り角θ(図9)が0°の場合には、上述のアッカーマン機構による旋回時の走行抵抗の最小化が可能であるが、速度の上昇にともなって旋回中心がずれてくることにより、滑り角θが生じた場合には、その限りではない。具体的には、旋回外側の転舵輪と後輪のすべり角に比べて、旋回内側の転舵輪のすべり角が大きくなり、走行抵抗の増大やタイヤ摩耗に繋がる。
そこで従来型の車両では、設計時に、ある車速で旋回時に一定のすべり角θが生じる条件において、破綻がなく、エネルギーロスが少なくなるように左右の転舵角差を設定する。その値は、アッカーマン機構による転舵角と、パラレルステア時の転舵角の間に存在する。この時の車速やすべり角θの条件設定は、その車両のコンセプトに基づき任意に決定される。
特許文献1は、車速を判断基準として、アッカーマン機構とパラレルステアを使い分けることにより、走行性能とスムーズな旋回を両立可能とする技術である。
特許文献2は、走行条件と転舵角差の設定と、その時の瞬間燃費について自己学習により情報を蓄積する。現在の走行条件から、蓄積したエネルギー効率の高い転舵角差の設定を読み出し、エネルギー効率の向上を行うものである。
特許文献3は、駆動力源である電動モータへの供給電流より求まる走行抵抗を判定基準として、左右輪の転舵角(アライメント)の調整を行うものである。
前記転舵輪1に発生する力を検出する車輪力センサ22と、この車輪力センサ22により取得した車輪力に基づき、走行抵抗を最小化するアライメントの制御量を決定し、前記アクチュエータ10を制御するアライメント制御手段23とを備える。なお、車輪力とは、車輪の路面接地点で車輪に作用する力であり、これには前後方向力Fx,横力Fy,および上下方向力Fzがあるが、前記車輪力センサ22は、少なくとも横力Fyを検出可能なものとする。また、この明細書で言う「アライメントの調整」は、トー角の調整と同義である。
上記構成によると、前記車輪力対応アライメント制御手段23は、車輪力センサ22により取得した車輪力に基づきアライメントの制御量を決定するため、上記のように応答性良く高精度に制御できて、様々な速度条件において、エネルギーロスの最小化が図れる。エネルギーロスの最小化により、航続距離の延伸が行える。また、比較的簡単な演算で済み、最適解に到達しないような演算手法を採ることも不要で、実現が容易である。
これにより、常に安全性を確保しながら、走行抵抗を最小化する制御が実現できる。
安全装置27,28が数度動作した後、動作の履歴がなければ、突発的な路面ミューの低下、例えば落ち葉や濡れた鉄路面等であると予測でき、例えば数分の後にエネルギー効率を優先した制御を行うように判断可能である。低速走行の条件下の判断は、適宜行えば良いが、例えば市街地の右左折を考慮して、20Km/h以下の場合はエネルギー効率の最大化を優先し、それ以上の速度では安全性の確保を行う制御を行えばよい。
旋回中に車両の挙動が乱れるなど、安全性の確保を優先すべき状況が発生することが予想される。この場合は速やかにエネルギー効率の最大化のための制御を中止すべきである。車両挙動が乱れるとは、許容されないヨーレートの大幅な変動や、ABS、トラクションコントロール装置、横滑り防止装置等の安全装置27,28の動作が観測されると容易に予測される。そこで、ヨーレートセンサ32と連携し、ヨーレートセンサ32の出力をアライメント調整判断部24に入力し、アライメント調整判断部24がエネルギー効率の最大化のための制御を中止すべきか継続すべきかを判断するようにしている。
アライメントの制御により、運転者に対して、アライメントが固定である車両と異なるフィーリングを与える可能性がある。そのため、運転者に対するフィーリングが快適か不快かであるに係わらず、アライメント制御の許可・不許可のスイッチ34の操作により、アライメント制御の許可、不許可を指示する信号を入力可能にしている。
この発明の他のアライメント制御装置は、車両の転舵輪のトー角を、調整用のアクチュエータの制御によって調整可能なアライメント調整機構を制御するアライメント制御装置であって、前記転舵輪に発生する力を検出する車輪力センサと、前記車輪力センサにより取得した車輪力から、左右輪に発生する横力の差を算出する左右横力差検出部と、前記左右横力差検出部により算出された左右輪の横力差に基づきアライメント制御量を決定し、この決定したアライメント制御量に基づき前記アライメント調整機構の前記アクチュエータを制御するアライメント制御手段とを備え、前記アライメント制御手段は、走行安定性の確保のため予め設けられるマップを参照して車両の走行速度とハンドル角の関係に対応するアライメント制御量を決定し、決定したアライメント制御量に基づき前記アクチュエータを制御してアライメントを変更した後、さらに走行抵抗最小化のため、左右輪の横力の差を略零にするようなアライメント制御量を決定するため、応答性良く、右左折時や切り返し時等の旋回時の走行抵抗を低下させることで、エネルギー効率の向上と航続距離の延伸を行え、また実現が容易である。
なお、操舵装置13は、ステアバイワイヤ式に限らず、ステアリングハンドル11が
転舵用ロッド8と機械的に連結された形式であっても良い。
前記車輪力対応アライメント制御手段23は、車輪力センサ22により取得した車輪力に基づきアライメントの制御量を決定するため、上記のように応答性良く高精度に制御できて、様々な速度条件において、エネルギーロスの最小化が図れる。エネルギーロスの最小化により、航続距離の延伸が行える。また、比較的簡単な演算で済み、最適解に到達しないような演算手法を採ることも不要で、実現が容易である。
路面ミューが安定して確保でき、かつ低速走行の条件下では、エネルギー効率の最大化を優先することができるが、それ以外の場合は、安全性の確保を優先すべきである。路面ミューが安定して確保できることは、他の機器と連携を取ることで確認できる。例えば、路面ミューが低下している場合は、ABS(アンチロックブレーキシステム)からなる安全装置27や、その他の安全装置28(トラクションコントロール装置、横滑り防止装置等)が動作する可能性が高い。そこで、各安全装置27,28の動作フラグを取得し、動作履歴を蓄積する安全装置動作フラグ取得部29を用意し、安全装置27,28の動作履歴を蓄積し、アライメント調整判断部24の制御量生成に用いている。アライメント調整判断部24は、頻繁に安全装置27,28が動作した履歴がある場合は、雨天や積雪状態などの路面状況の悪化が予測できるため、走行安定性の確保を優先するようにアライメンの制御量を生成する。頻繁であるか否かは適宜設定する。
旋回中に車両の挙動が乱れるなど、安全性の確保を優先すべき状況が発生することが予想される。この場合は速やかにエネルギー効率の最大化のための制御を中止すべきである。車両挙動が乱れるとは、許容されないヨーレートの大幅な変動や、ABS、トラクションコントロール装置、横滑り防止装置等の安全装置27,28の動作が観測されると容易に予測される。そこで、ヨーレートセンサ32と連携し、ヨーレートセンサ32の出力をアライメント調整判断部24に入力し、アライメント調整判断部24がエネルギー効率の最大化のための制御を中止すべきか継続すべきかを判断するようにしている。例えば、ヨーレートを閾値と比較し、閾値よりも高い場合はエネルギー効率の最大化のための制御を中止する。
また、アライメント調整判断部24は、安全装置動作フラグ取得部29から、動作フラグがアライメント調整判断部24に入力され、いずれかの安全装置27,28が動作したことを検出した場合、速やかにエネルギー効率最大化のための制御を中止する制御を行うようにしている。路面ミューが低いことなどを理由として、旋回中に両輪の横力Fy の差が閾値以下もしくは、横力Fy の絶対値が閾値以下の場合、安全装置動作フラグ取得部29は、横力FY を用いたアライメント制御を行わないようにしており、これにより、車両挙動を不用意に乱さないことができる。
低速走行時のタイヤ滑り角θ(図9)が0°の場合には、上述のアッカーマン機構による旋回時の走行抵抗の最小化が可能であるが、滑り角θが生じた場合には、その限りではない。その時に取るべきアライメントは、車両速度とハンドル角の関係によって、おおよそをマップとして定めることができる。このマップ(図示せず)をアライメント調整判断部24に設けている。
先述した横力Fy の不均一を略零にする制御則だけでは、アライメントの最適値に達するまでに時間を要し、その結果、エネルギー効率に悪影響を与える可能性がある。そこで、アライメント調整判断部24は、上述の車両速度とハンドル角と取るべきアライメントを定めたマップに従い、アライメントを変更した後、横力Fy の不均一の略零を行うことで、より応答性よく、エネルギー効率の高い制御を実現することを可能としている。ハンドル角は、ハンドル角センサ33から得る。このハンドル角センサ33として、例えば前記操舵角センサ14(図2)が用いられる。
これまでは、直進時の転舵輪は平行を保っている前提での記述であったが、実際には、走行時の直進安定性の向上や、走行安定性確保のためのアンダーステア設定のためにトー角が設定されている場合が多い。しかし、路面ミューが安定して確保でき、かつ低速走行の条件下では、直進安定性や走行安定性の確保は必ずしも必要ではない。
以下は、前輪が転舵輪1である広く活用されている自動車に対して、提案するアライメント調整装置6を前輪の転舵輪1に適応した場合について言及するが、広く活用される車両に対して高い効果が期待できることを主張するものであり、適応の範囲を限定するものではない。
アライメントの制御により、運転者に対して、アライメントが固定である車両と異なるフィーリングを与える可能性がある。そのため、運転者に対するフィーリングが快適か不快かであるに係わらず、アライメント制御の許可・不許可のスイッチ34の操作により、アライメント制御の許可、不許可を指示する信号を入力可能にしている。この制御許可信号はアライメント制御装置21のアライメント調整判断部24に入力され、アライメント調整判断部21は、調整許可を指示する入力があった場合のみ、アライメントの制御を行うようにしている。
回転分割ロッド8Lについては、前記筒状部48のスプラインロッド部8Laに噛み合うスプラインナット53が、ハウジング45に設置された軸受52で回転自在に支持され、スプラインナット53の回転と前記ねじ結合部8Cにおける伸縮とで、回転および伸縮が可能である。
この発明は、例えば図8に示すように、4輪独立の操舵装置5Aを持つ車両に対して適応しても良い。4輪独立の操舵装置5Aである場合、操舵装置5Aがアライメント調整機構を兼ねることになる。同図の操舵装置5Aは、走行用のモータ71、減速機72、および車輪用軸受73を有するインホイールモータ駆動装置74を、支軸75回りにサスペンション76に対して回動自在に支持し、転舵用のモータ77によりインホイールモータ駆動装置74の全体を回動させて転舵を行うものである。
このような4輪独立の操舵装置5Aであって、全ての転舵輪1に対向このアライメント制御装置21を適用する場合、すべての車輪が走行抵抗の少ない条件をみたすことができて、エネルギー効率の向上が見込める。
2…駆動輪
3…駆動源
5…転舵装置
5A…転舵装置
6…アライメント調整機構
7…アライメント調整・転舵装置
8…転舵用ロッド
8L,8R…ロッド
11…ステアリングハンドル
12…ナックルアーム
13…操舵装置
20…ECU
21…アライメント制御装置
22…車輪力センサ
23…車輪力対応アライメント制御手段
24…アライメント調整判断部
25…アライメント調整部
26…左右横力差検出部
27,28…安全装置
29…安全装置動作フラグ取得部
31…車速センサ
32…ヨーレートセンサ
33…ハンドル角センサ
34…許可・不許可のスイッチ
Claims (12)
- 車両の転舵輪のトー角を、調整用のアクチュエータの制御によって調整可能なアライメント調整機構を制御するアライメント制御装置であって、
前記転舵輪に発生する力を検出する車輪力センサと、
前記車輪力センサにより取得した車輪力から、左右輪に発生する横力の差を算出する左右横力差検出部と、
前記左右横力差検出部により算出された左右輪の横力差に基づきアライメント制御量を決定し、この決定したアライメント制御量に基づき前記アライメント調整機構の前記アクチュエータを制御するアライメント制御手段とを備え、
前記アライメント制御手段は、車両の走行速度が定められた基準に対して低速であるか否かを判断し、走行速度が低速であると判断した場合は、走行抵抗の最小化のため、左右輪の横力の差を略零にするようなアライメント制御量を決定し、走行速度が低速でない場合は、前記走行抵抗の最小化は行わないアライメント制御装置。 - 車両の転舵輪のトー角を、調整用のアクチュエータの制御によって調整可能なアライメント調整機構を制御するアライメント制御装置であって、
前記転舵輪に発生する力を検出する車輪力センサと、
前記車輪力センサにより取得した車輪力から、左右輪に発生する横力の差を算出する左右横力差検出部と、
前記左右横力差検出部により算出された左右輪の横力差に基づきアライメント制御量を決定し、この決定したアライメント制御量に基づき前記アライメント調整機構の前記アクチュエータを制御するアライメント制御手段とを備え、
前記アライメント制御手段は、走行安定性の確保のため予め設けられるマップを参照して車両の走行速度とハンドル角の関係に対応するアライメント制御量を決定し、決定したアライメント制御量に基づき前記アクチュエータを制御してアライメントを変更した後、さらに走行抵抗最小化のため、左右輪の横力の差を略零にするようなアライメント制御量を決定するアライメント制御装置。 - 請求項2に記載のアライメント制御装置であって、
前記アライメント制御手段は、前記車輪力センサにより検出された車輪力が閾値以下である場合、または前記左右横力差検出部により検出された左右輪の横力差が閾値以下である場合、または検出された車両走行速度が閾値以下である場合は、前記左右横力差検出部により検出された左右輪の横力の差を略零にするような制御は行わないアライメント制御装置。 - 請求項2または請求項3に記載のアライメント制御装置であって、
車両の安全装置の動作フラグを取得して動作履歴を蓄積する安全装置動作フラグ取得部を有し、前記車輪力対応アライメント制御手段は、前記安全装置動作フラグ取得部により取得した動作履歴に基づき、走行抵抗を最小化する制御を実施可能か判断し、実施不可能である場合は、前記アライメント制御手段が走行安定性の確保を優先するようにアライメントの制御量を生成するアライメント制御装置。 - 請求項4に記載のアライメント制御装置であって、
前記安全装置動作フラグ取得部の取得した動作履歴が、定められた基準に対して頻繁に安全装置が動作したことを示す場合、前記アライメント制御手段は、走行抵抗を最小化する制御を中止するアライメント制御装置。 - 請求項4に記載のアライメント制御装置であって、
前記アライメント制御手段は、前記安全装置動作フラグ取得部の取得した動作履歴が、安全装置が数度動作した後、動作した履歴がない場合、設定時間の後に走行抵抗を最小化する制御を再開するアライメント制御装置。 - 請求項6に記載のアライメント制御装置であって、
前記アライメント制御手段は、前記安全装置動作フラグ取得部が取得した動作フラグにより、走行抵抗を最小化する制御の中止判断をするアライメント制御装置。 - 請求項4に記載のアライメント制御装置であって、
前記アライメント制御手段は、ヨーレートセンサの出力に基づき、ヨーレートの変化幅が閾値以上の場合、走行抵抗を最小化する制御の中止判断をするアライメント制御装置。 - 請求項4に記載のアライメント制御装置であって、
前記アライメント制御手段は、運転者のスイッチ操作によるアライメント制御の許可、不許可を指示する制御許可信号に従って、または車両全体を統括する制御器の判断によるアライメント制御の許可、不許可を指示する制御許可信号に従ってアライメント制御の開始および中止を行うアライメント制御装置。 - 請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のアライメント制御装置であって、
制御対象となる前記アライメント調整機構が、転舵用ロッドの長さを変えることによりトー角調整を行う形式であるアライメント制御装置。 - 請求項10に記載のアライメント制御装置であって、
前記アライメント調整機構が、転舵を制御する1つのモータと、転舵用ロッドの長さを可変するための他の1つのモータを持つアライメント制御装置。 - 請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のアライメント制御装置であって、
制御対象となる前記アライメント調整機構が、車両の旋回力を発生させることを目的とした転舵装置と、一部の構成要素及び機能を共有する構成であるアライメント制御装置。
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