JP6071546B2 - 摩擦抵抗低減型船舶 - Google Patents

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Description

本発明は、摩擦抵抗低減型船舶に関し、特に空気潤滑法を利用した摩擦抵抗低減型船舶に関する。
船舶の抵抗低減方法として空気潤滑法が知られている。例えば、特許第5022346号公報(特許文献1)に、船体摩擦抵抗低減装置が開示されている。この船体摩擦抵抗低減装置は、気泡を発生させて船底に気泡膜を形成することにより、航行する船体の摩擦抵抗を低減する。この船体摩擦抵抗低減装置は、エアーチャンバと、複数の空気噴出孔と、シーチェストと、供給管とを備えている。エアーチャンバは、船体内部の船底に配設されている。複数の空気噴出孔は、エアーチャンバの底部となる前記船底に列設して形成されている。シーチェストは、エアーチャンバを被覆するように船体内部の船底に配設されている。供給管は、空気供給源から供給される空気が複数の空気噴出孔へ向けて流れる。供給管は、シーチェストを貫通して、エアーチャンバに接続されている。
空気潤滑法では、船底は、気泡で概ね一様に覆われることが好ましい。そのためには、船底において船幅方向に並んだ複数の孔の全てから、概ね同じように空気を吹き出して気泡を生成することが望ましい。しかし、例えば、複数の孔の配置によって、各孔における気泡の生成の仕方が異なる場合が考えられる。船底に設けられた複数の孔から空気を吹き出すとき、それら複数の孔の配置によらず、それら複数の孔から概ね同じように空気を吹き出して気泡を生成することが可能な技術が望まれる。船底を気泡で概ね一様に覆うことが可能な技術が求められる。
関連する技術として特許第4959667号公報(特許文献2)に船体摩擦抵抗低減装置が開示されている。この船体摩擦抵抗低減装置は、気泡を発生させて船底に気泡膜を形成することにより、航行する船体の摩擦抵抗を低減する。この船体摩擦抵抗低減装置は、エアーチャンバと、空気噴出孔と、拡散板とを備えている。エアーチャンバは、船体内部の船底に配設され、空気供給口が形成されている。複数の空気噴出孔は、エアーチャンバの底部となる船底に列設して形成されている。拡散板は、エアーチャンバの内部に設けられ、空気供給口と複数の空気噴出孔との間に介在している。拡散板は、少なくとも、空気供給口に対面する供給口対面領域と、複数の空気噴出孔の配列方向の両端部に位置する空気噴出孔に対面する一対の噴出孔対面領域と、を含むように形成されている。
特許第5022346号公報 特許第4959667号公報
本発明の目的は、船底に設けられた複数の孔から空気を吹き出すとき、それら複数の孔の配置によらず、それら複数の孔から概ね同じように空気を吹き出して気泡を生成することが可能な摩擦抵抗低減型船舶を提供することにある。また、本発明の他の目的は、気泡で船底を概ね一様に覆うことが可能な摩擦抵抗低減型船舶を提供することにある。
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
本発明の摩擦抵抗低減型船舶は、船体(20)の船底(23)に設けられた空気吹き出し部(51〜53/1b)を具備している。空気吹き出し部(51〜53(1b))は、送気管(4)と、容器部(2)とを備えている。送気管(4)は、空気を供給する。容器部(2)は、上面(8)に送気管(4)を接続され、底面(7)に空気を吹き出す複数の空気吹き出し孔(5、6)を有している。複数の空気吹き出し孔(5、6)は、船幅方向に平行に延び、船長方向に並んだ複数本の直線(L11、L12)に沿って配列されている。複数の空気吹き出し孔(5、6)は、船首側から見て互いに重ならない位置に配置されている。複数の空気吹き出し孔(5、6)の各々の面積は、船首側に近いほど大きい。
上記の摩擦抵抗低減型船舶において、複数の空気吹き出し孔(5、6)は、船幅方向に平行に延び、船長方向に並んだ二本の直線(L11、L12)に沿って配置されていることが好ましい。船首側の直線に沿って並んだ複数の空気吹き出し孔(5、6)の面積は、船尾側の直線に沿って並んだ複数の空気吹き出し孔(5、6)の面積よりも大きいことが好ましい。
上記の摩擦抵抗低減型船舶において、複数の空気吹き出し孔(5、6)は、二本の直線(L11、L12)に沿って、一個又は複数個ごとに千鳥形配列で配置されていることが好ましい。
上記の摩擦抵抗低減型船舶において、複数の空気吹き出し孔(5、6)の各々は、円形又は船長方向に伸びる楕円形であることが好ましい。
上記の摩擦抵抗低減型船舶において、空気吹き出し部(51〜53(1b))は、底面(7)に設けられたアクセス用の第1開口部を開放又は閉止する第1蓋(3)を更に備えていることが好ましい。第1蓋(3)は、複数の空気吹き出し孔(5、6)の一部を有することが好ましい。
本発明により、船底に設けられた複数の孔から空気を吹き出すとき、それら複数の孔の配置によらず、それら複数の孔から概ね同じように空気を吹き出して気泡を生成することが可能となる。また、気泡で船底を概ね一様に覆うことが可能となる。
図1は、実施の形態に係る摩擦抵抗低減型船舶の構成を模式的に示す側面図である。 図2Aは、第1の実施の形態に係る空気吹き出し部としてのエアーレセスの構成を模式的に示す底面図である。 図2Bは、第1の実施の形態に係る空気吹き出し部としてのエアーレセスの構成を模式的に示す正面図である。 図2Cは、第1の実施の形態に係る空気吹き出し部としてのエアーレセスの構成を模式的に示す側面図である。 図3は、実施の形態に係る蓋の構成を模式的に示す部分断面図である。 図4は、容器部底面に設けられた複数の空気吹き出し孔からの空気吹き出し量のバラツキを表す標準偏差を示したグラフである。 図5は、第1の実施の形態に係る空気吹き出し部としてのエアーレセスの変形例の構成を模式的に示す斜視図である。 図6は、第2の実施の形態に係る空気吹き出し部としてのエアーレセスの構成を模式的に示す底面図である。 図7は、船底に設置された複数の吹き出し孔の大きさが同一の場合での、各吹き出し孔より吹き出される空気流量の分布を示したグラフである。 図8は、船底に設置された複数の吹き出し孔において前方側の吹き出し孔を後方側の吹き出し孔よりも相対的に大きくした場合での、各吹き出し孔より吹き出される空気流量の分布を示したグラフである。
以下、本発明の実施の形態に係る摩擦抵抗低減型船舶に関して説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る摩擦抵抗低減型船舶の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る摩擦抵抗低減型船舶の構成を模式的に示す側面図である。摩擦抵抗低減型船舶50は、船体20と、船体20に設けられた空気吹き出し装置30とを備えている。船体20は、船首21と、船尾22と、船底23と、プロペラ26と、舵27を備えている。
空気吹き出し装置30は、船底23の船首21側部分に設けられた空気供給エアーレセス51〜53と、コンプレッサ又はブロワ34とを備えている。航走時に、コンプレッサ又はブロワ34は、空気供給エアーレセス51〜53に空気を供給する。空気吹き出し部としての空気供給エアーレセス51〜53は、供給された空気を空気吹き出し口31〜33から水中に吹き出す。この空気によって形成される気泡によって船底23が覆われて船体20の摩擦抵抗が低減される。空気吹き出し口31〜33は空気供給エアーレセス51〜53の底板に形成されている。空気供給エアーレセス51〜53の底板は、船底23の外板と同一面上に配置されている。空気供給エアーレセス51〜53(空気吹き出し口31〜33を含む)の詳細については、後述される。
摩擦抵抗低減型船舶50は、更に、船体20に設けられた空気回収装置40を備えていても良い。
空気回収装置40は、船底23の船尾22側部分に設けられた空気回収チャンバ54〜56と、流路70とを備えている。ここで、空気回収チャンバ54〜56は気液分離機能を有している。空気回収チャンバ54〜56の空気回収口41〜43は、空気吹き出し口31〜33より船尾22側且つプロペラ26より船首21側に配置されている。空気回収口41〜43は空気回収チャンバ54〜56の底板に形成されている。空気回収チャンバ54〜56の底板は、船底23の外板と同一面上に配置される。空気回収装置40は、空気吹き出し装置30が水中に吹き出した空気を空気回収口41〜43から空気回収チャンバ54〜56内に回収して気液分離を行う。分離された空気は、流路70を介して大気中に放出される、又は、流路71を介して大気圧よりも高い圧力状態のままコンプレッサ又はブロワ34に供給される。
次に、本実施の形態に係る空気吹き出し部としての空気供給エアーレセス51〜53について説明する。ここでは、空気供給エアーレセス51〜53としてのエアーレセス1について説明する。すなわち、空気吹き出し部としてのエアーレセス1について説明する。図2A〜図2Cは、本実施の形態に係る空気吹き出し部としてのエアーレセスの構成を模式的に示す底面図、正面図、側面図である。エアーレセス1は、空気を収容する部屋である。エアーレセス1は、送気管4と、容器部2と、蓋3とを備えている。
送気管4は、コンプレッサ又はブロワ34から供給される空気を容器部2へ供給する。供給される空気の圧力は、船底23における水圧(例示:4m水圧〜25m水圧)以上である。容器部2は、上面8に送気管4を接続され、底面7に複数の空気吹き出し孔5、6を有している。容器部2は、供給された空気で満たされ、その空気を保持しつつ、複数の空気吹き出し孔5、6からその空気を吹き出す。複数の空気吹き出し孔5、6から吹き出された空気によって形成される気泡により、船底23が覆われる。
複数の空気吹き出し孔5、6は、船幅方向に平行に延び、船長方向に並んだ2本の直線L01、L02に沿って配列されている。複数の空気吹き出し孔5、6は、船首側から見て互いに重ならない位置に配置されている。言い換えると、複数の空気吹き出し孔5、6は、2本の直線L11、L12に沿って千鳥形配列で配置されている。この場合、複数の空気吹き出し孔が1本の直線に沿って配列される場合に比べて縦曲げに対する船体20の強度が確保される。複数の空気吹き出し孔5、6の各々の形状は、特に制限はないが、円形又は船長方向に伸びる楕円形に例示される。ただし、複数個ずつ千鳥形配列になっていても良い。船幅方向に平行に延びる直線L01に沿って配列されているのは、例えば右舷側から順に、空気吹き出し孔5−1、5−2、5−3、5−4、5−5、5−6、5−7、5−8である。また、船幅方向に平行に延びる直線L02に沿って配列されているのは、例えば右舷側から順に、空気吹き出し孔6−1、6−2、6−3、6−4、6−5、6−6、6−7である。それらの数には特に制限はない。
蓋3は、底面7に設けられ、容器部2内部へのアクセス用の開口部を開放又は閉止する。アクセス用の開口部は、例えば、作業者(ダイバー)が容器部2等の内部をメンテナンスするときに利用する。すなわち、作業者(ダイバー)は、蓋3を下側に動かすことで蓋3を開け、アクセス用の開口部から、又は、容器部2に入って、容器部2のメンテナンスを行う。蓋3は、底面7での設置位置によっては、複数の空気吹き出し孔5、6の一部を有している。蓋3は、蓋本体11と、ヒンジ部12と、張り出し部材13とを備えている。これらの詳細については後述される。
例えば、特許文献1では、空気吹き出し用に、シーチェスト(エアーレセス1に対応)の内部に設けられたエアーチャンバを用いている。エアーチャンバは小さいため、ダイバー(作業者)が海底からエアーチャンバ内をメンテナンスすることができない。しかし、本実施の形態に係るエアーレセス1は、そのようなエアーチャンバと比較して大きく作られ、内部へアクセス可能な扉3が設けられている。すなわち、ダイバー(作業者)が海底からエアーレセス1内をメンテナンスが可能である。すなわち、このエアーレセス1はメンテナンスが容易である。
ここで、容器部2の上面8を介して送気管4から空気を供給すると、その空気は送気管4の真下の空気吹き出し孔5、6から吹き出され易くなることが考えられる。しかし、本実施の形態では、容器部2における内寸の高さHを、水圧に応じた所定の高さ以上にしている。高さHを所定の高さ以上に高くすることで、空気が空気吹き出し孔5、6に達する前に、容器部2の内部全体に行きわたり、容器部2の内部全体の空気の圧力を概ね均等な圧力にすることができる。それにより、容器部2内に何らの対策をしなくても、底面7に形成された全ての複数の空気吹き出し孔5、6から概ね均等な量の空気を水中へ放出することができる。
このような所定の高さは、空気吹き出し孔5、6の位置での水圧に依存すると考えられる。例えば、船舶の船底23は、例えば、4〜10m水圧程度の水圧(喫水線からの深さが4〜10m)の場合が考えられる。その場合、そのような所定の高さは、下限としては、40cm以上である。好ましくは50cm以上であり、より好ましくは70cm以上である。上限としては、特にないが、船内構造の空間を考慮して、400cm以下である。好ましくは200cm以下であり、より好ましくは100cm以下である。言い換えると、容器部2における内寸の高さHは、下限としては、40cm以上である。好ましくは50cm以上であり、より好ましくは70cm以上である。上限としては、400cm以下である。好ましくは200cm以下であり、より好ましくは100cm以下である。
また、容器部2の内部全体の空気の圧力を概ね均等な圧力にするには、容器部2における内寸の横幅(船腹方向の幅)Wは、10cm以上500cm以下であることが好ましい。より好ましくは100cm以上であり、更により好ましくは150cm以上である。同様に、容器部2における内寸の奥行き(船長方向の幅)Dは10cm以上500cm以下であることが好ましい。より好ましくは50cm以上であり、更により好ましくは100cm以上である。
ただし、高さHを高くすれば、横幅Wおよび奥行きDを更に大きくすることができる。また、船底23の水圧が更に高い場合(喫水線からの深さが更に深い場合:10m〜25m)には、高さHを低くすることができる。また、容器部2の形状は、図に示されるように直方体形状に例示されるが、均等な圧力にし易いように楕円筒形状や円筒形状であっても良い。
このようなサイズを有する容器部2は、使用開始当初、水で満たされている。しかし、送気管4から空気が供給されて、その水が複数の空気吹き出し孔5、6から押し出されると、容器部2内が等圧な空気で満たされる。そのため、それ以降では、例えば送気管4が1本であったとしても、その送気管4から空気が供給されることで、容器部2内が等圧な空気で満たされつつ、全ての複数の空気吹き出し孔5、6から概ね均等に空気を吹き出すことができる。
容器部2における底面7を除いた側面および上面8は、船底23と同じ材料で構成されている。そして、底面7を除いた側面および上面8は、船体20の内部に水が浸入しないように、船底23と水密に接合されている。すなわち、底面7を除いた側面および上面8と、船底23とは、例えば溶接等の方法により、一体に形成されている。したがって、容器部2における底面7を除いた側面および上面8は、船底23と見なすことができる。言い換えると、エアーレセス1(の容器部2)における底面7を除く部分は、船底23を構成している。底面7は、船底23と同一の材料を用いても良いし、他の材料を用いても良い。
次に、蓋3について更に説明する。
図3は、本実施の形態に係る蓋の構成を模式的に示す部分断面図である。図2Bにおける一点鎖線の縁で囲まれた領域を示している。蓋3は、蓋本体11と、ヒンジ部12と、張り出し部材13とを備えている。蓋本体11は、底面7に設けられた容器部2内部へのアクセス用の開口部に収まるように設けられている。蓋本体11は、底面7内で設置される位置により、複数の空気吹き出し孔5、6の一部を有していても良い。ヒンジ部12は、蓋本体11がアクセス用の開口部を開放する、又は、閉止することが可能なように、蓋本体11を支持する。張り出し部材13は、船内側においてアクセス用の開口部の端部に固定され、当該端部からその開口部の内側に向かって張り出し、その開口部の内周を縁取るように設けられている。張り出し部材13はダブラープレートに例示され、その材料は、鉄であっても良いし、ゴムのような弾性体であっても良い。
底面7の材料と、蓋本体11の材料とは、互いに異なる金属であってもよい。その場合、蓋3は、更に絶縁体材料の絶縁体部14を備えていても良い。図3は、この状態を示している。絶縁体部14は、蓋本体11がアクセス用の開口部を閉止して、蓋本体11の船内側の外縁11aと、張り出し部材13の船外側の内縁13aとが密接するとき、その外縁11aとその内縁13aとの間に介在するように、その外縁11a上に設けられている。その場合、蓋本体11がアクセス用の開口部を閉止したとき、蓋本体11の船内側の外縁11a上の絶縁体部14の上面14aと、張り出し部材13の船外側の内縁13aとが密接する。それにより、蓋本体11がアクセス用の開口部を閉止して、空気潤滑用の空気を容器部2内部に蓄積したとき、蓋本体11とアクセス用の開口部との隙間から、空気潤滑用の空気が漏れ出すことを防止することができる。
また、底面7の材料と、蓋本体11の材料とが、互いに異なる金属である場合、海水中では、張り出し部材13を介した電池反応により、底面7又は蓋本体11に腐食が発生する可能性がある。しかし、底面7又は蓋本体11との間に絶縁体部14を介在させているため、その電池反応を抑制することができる。それにより、底面7又は蓋本体11での腐食の発生を抑えることができる。
なお、底面7の材料と蓋本体11の材料とが同じ金属の場合、絶縁体部14は不要である。蓋本体11がアクセス用の開口部を閉止したとき、張り出し部材13を介した電池反応が発生しないため、底面7又は蓋本体11に腐食が発生する可能性はなくなるからである。その場合、蓋本体11がアクセス用の開口部を閉止したとき、蓋本体11の船内側の外縁11aと、張り出し部材13の船外側の内縁13aとが密接する。それにより、蓋本体11がアクセス用の開口部を閉止して、空気潤滑用の空気を容器部2内部に蓄積したとき、蓋本体11とアクセス用の開口部との隙間から、空気潤滑用の空気が漏れ出すことを防止することができる。
図4は、複数の空気吹出孔5、6から吹き出される各空気吹出量の標準偏差を示したグラフである。縦軸は各空気吹出孔5、6から吹き出される各空気吹出量の標準偏差を示し、横軸は容器部2の高さHを示している。標準偏差が小さいほど、各空気吹き出し孔より吹き出される空気量が均等であることを示す。特に所定の基準値σ以下の場合、各空気吹き出し孔5、6より吹き出される空気量が概ね均等ということができる。この図に示されるように、容器部2の高さHを40cm以上とすることで、各空気吹出量の標準偏差が基準値σ以下となる。すなわち、容器部2の高さHを40cm以上とすることで、エアーレセス1の内部の圧力が概ね均一となるので、底面7に設けられた複数の空気吹き出し孔5、6より概ね均一に空気を吹き出すことができる。
図5は、本実施の形態に係る空気吹き出し部としてのエアーレセスの変形例の構成を模式的に示す斜視図である。図2Aのエアーレセス1では容器部2に設けた蓋3から容器部2のメンテナンスを行うが、本変形例のエアーレセス1aでは新たに設けたアクセス室9から容器部2のメンテナンスを行う。以下では、両者の相違点について主に説明する。
エアーレセス1aは、更にアクセス室9と、蓋2aとを更に備えている。ただし、アクセス室9は、容器部2に隣接して設けられた部屋である。蓋2aは、容器部2とアクセス室9との間に設けられた、容器部2へのアクセス用の開口部を開放又は閉止する。この場合、蓋3はアクセス室9の底面に設けられている。すなわち、蓋3は、アクセス室9の底面に設けられた、アクセス室9へのアクセス用の開口部を開放又は閉止する。蓋2aは、蓋3と同様の構成に例示される。ただし、蓋3が空気漏れを防止するので、蓋2aでは他の構成であっても良い。
この場合、作業者(ダイバー)は、アクセス室9下の蓋3を下側に動かすことで、その蓋3を開け、アクセス用の開口部からアクセス室9の内部へ入る。続いて、作業者(ダイバー)は、更に蓋2aを動かすことで、蓋2aを開け、アクセス用の開口部から容器部2の内部へ入る。それにより、作業者(ダイバー)は、容器部2のメンテナンスを行うことができる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る摩擦抵抗低減型船舶の構成について説明する。本実施の形態は、エアーレセスの空気吹き出し孔の構成の点で、第1の実施の形態と相違する。以下では、その相違点について主に説明する。
図6は、本実施の形態に係る空気吹き出し部としてのエアーレセスの構成を模式的に示す底面図である。本実施の形態のエアーレセス1bの空気吹き出し孔5、6の構成は、第1の実施の形態のエアーレセス1の空気吹き出し孔5、6の構成と相違している。
複数の空気吹き出し孔5、6は、船幅方向に平行に延び、船長方向に並んだ複数本の直線に沿って配列されている。複数の空気吹き出し孔5、6は、船首21側から見て互いに重ならない位置に配置されている。複数の空気吹き出し孔5、6の各々の面積は、船首21側に近いほど大きい。船尾22側に近いほど小さい。ただし、図6では、複数本の直線が2本の例を示している。すなわち、複数の空気吹き出し孔5、6は、船幅方向に平行に延び、船長方向に並んだ2本の直線L11、L12に沿って配列されている。複数の空気吹き出し孔5、6は、船首21側から見て互いに重ならない位置に配置されている。したがって、複数の空気吹き出し孔5、6は千鳥形配列ということができる。船首側の直線L11に沿って並んだ複数の空気吹き出し孔5の面積は、船尾側の直線L12に沿って並んだ複数の空気吹き出し孔6の面積よりも大きい。ただし、複数個ずつ千鳥形配列になっていても良い。船幅方向に平行に延びる直線L11に沿って配列されているのは、例えば右舷側から順に、空気吹き出し孔5−1、5−2、5−3、5−4、5−5、5−6、5−7、5−8である。また、船幅方向に平行に延びる直線L12に沿って配列されているのは、例えば右舷側から順に、空気吹き出し孔6−1a、6−2a、6−3a、6−4a、6−5a、6−6a、6−7aである。それらの数には特に制限はない。
船首21側すなわち前方側の吹き出し孔5を、船尾22側すなわち後方側の吹き出し孔6よりも相対的に大きくする理由は、発明者が以下の事象を今回新たに見出したからである。すなわち、前方側の吹き出し孔5から吹き出された気泡の影響により、後方側の吹き出し孔6から気泡を吹き出すときの圧損が小さくなる。そのため、後方側の吹き出し孔6からの方が相対的に空気を吹き出し易くなる。その結果、前方側の吹き出し孔5の大きさと、後方側の吹き出し孔6の大きさとが同じ場合、後方側の吹き出し孔6からの空気吹き出し量が、前方側の吹き出し孔5からの空気吹き出し量よりも多くなり、アンバランスとなる。そうなると、船底23を概ね均一な気泡で覆うことができなくなるおそれがある。そうだからと言って、前方側と後方側という区別が無くなるように、複数の空気吹き出し孔5、6を1本の直線に沿って密に配列すると、縦曲げに対する船体20の強度が下がるおそれがあり好ましくない。複数の空気吹き出し孔5、6を1本の直線に沿って疎に配列すると、船底23を概ね均一な気泡で覆うことができなくなるおそれがあり好ましくない。
そのため、本実施の形態では、複数の空気吹き出し孔5、6を千鳥形配列にしつつ、前方側の吹き出し孔5を後方側の吹き出し孔6よりも相対的に大きくしている。それにより、船体20に対する強度を確保しつつ、前方側の吹き出し孔5からの空気吹き出し量と後方側の吹き出し孔6からの空気吹き出し量とをバランスさせる(概ね同じ量にする)ことができる。その結果、船底23を概ね均一な気泡で覆うことができ、摩擦抵抗の低減の効果を最大限奏することが可能となる。
図7及び図8は、船底23での船底に設置された複数の吹き出し孔より吹き出される空気流量の分布を示したグラフである。ただし、図7は、船底に設置された複数の吹き出し孔5、6の大きさが同一の場合である(図2A)。図8は、船底に設置された複数の吹き出し孔において前方側の吹き出し孔5を後方側の吹き出し孔6よりも相対的に大きくした場合である(図6)。いずれも、縦軸は複数の吹き出し孔5、6より吹き出される空気流量を示し、横軸は空気吹き出し位置(空気吹き出し孔5、6)を示している。図2Aの構成を有する空気吹き出し孔5、6とすると、図7に示すように、後側の空気吹き出し孔6の空気吹き出し量(概ねQ)が、前方側の吹き出し孔5の空気吹き出し量(概ねQ)よりも多くなる。一方、図6の構成を有する空気吹き出し孔5、6とすることで、図8に示すように、後側の空気吹き出し孔6の空気吹き出し量と、前方側の吹き出し孔5の空気吹き出し量とが概ね等しくなる(概ねQ)。すなわち、図6の構成を有するエアーレセス1bとすることで、各吹き出し孔5、6より吹き出される空気流量を概ね均一とすることができる。それにより、船底23での気泡分布を概ね均一とすることができる。
以上説明されるように、上記各実施の形態により、船底に設けられた複数の孔から空気を吹き出すとき、それら複数の孔から概ね同じように空気を吹き出して気泡を生成することが可能となる。また、気泡で船底を概ね一様に覆うことが可能となる。
また、上記各実施の形態により、エアーレセスに蓋が設けられているので、エアーレセスの点検・補修をダイバーにより実施することが可能となる。それにより、エアーレセスの点検・補修を容易に、頻繁に行うことができる。
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。又、技術的矛盾の発生しない限り、上記各実施の形態の技術は他の実施の形態にも適用可能である。
1、1a、1b:エアーレセス
2 :容器部
2a:蓋
3 :蓋
4 :送気管
5、6 :吹き出し孔
7 :底面
8 :上面
9 :アクセス室
11:蓋本体
11a:外縁
12:ヒンジ部
13:張り出し部材
13a:内縁
14:絶縁体部
14a:上面
20:船体
21:船首
22:船尾
23:船底
26:プロペラ
27:舵
30:空気吹き出し装置
31〜33:空気吹き出し口
34:コンプレッサ又はブロワ
40:空気回収装置
41〜43:空気回収口
50:摩擦抵抗低減型船舶
51〜53:空気供給エアーレセス
54〜56:空気回収チャンバ
70:流路
71:流路

Claims (9)

  1. 船体の船底に設けられた空気吹き出し部を具備し、
    前記空気吹き出し部は、
    空気を供給する送気管と、
    上面に前記送気管を接続され、底面に空気を吹き出す複数の空気吹き出し孔を有する容器部と
    を備え、
    前記複数の空気吹き出し孔は、船幅方向に平行に延び、船長方向に並んだ複数本の直線に沿って配列され、
    前記複数の空気吹き出し孔は、船首側から見て互いに重ならない位置に配置され、
    前記複数の空気吹き出し孔の各々の面積は、船首側に近いほど大きく、
    前記複数の空気吹き出し孔は、船首側空気吹き出し孔、および、船尾側空気吹き出し孔を含み、
    船首側空気吹き出し孔の面積、および、船尾側空気吹き出し孔の面積は、船首側空気吹き出し孔からの空気吹き出し量と、船尾側空気吹き出し孔からの空気吹き出し量とが概ね等しくなるように、設定されている
    摩擦抵抗低減型船舶。
  2. 船体の船底に設けられた空気吹き出し部を具備し、
    前記空気吹き出し部は、
    空気を供給する送気管と、
    上面に前記送気管を接続され、底面に空気を吹き出す複数の空気吹き出し孔を有する容器部と
    を備え、
    前記複数の空気吹き出し孔は、船幅方向に平行に延び、船長方向に並んだ複数本の直線に沿って配列され、
    前記複数の空気吹き出し孔は、船首側から見て互いに重ならない位置に配置され、
    前記複数の空気吹き出し孔の各々の面積は、船首側に近いほど大きく、
    前記複数の空気吹き出し孔は、船首側空気吹き出し孔、および、船尾側空気吹き出し孔を含み、
    船首側空気吹き出し孔の面積、および、船尾側空気吹き出し孔の面積は、船首側空気吹き出し孔の面積と船尾側空気吹き出し孔の面積とを同一にした場合と比較して、船首側空気吹き出し孔からの空気吹き出し量と、船尾側空気吹き出し孔からの空気吹き出し量との差が小さくなるように設定されている
    摩擦抵抗低減型船舶。
  3. 請求項1または2に記載の摩擦抵抗低減型船舶において、
    前記複数の空気吹き出し孔は、船幅方向に平行に延び、船長方向に並んだ二本の直線に沿って配置され、
    船首側の直線に沿って並んだ複数の空気吹き出し孔の面積は、船尾側の直線に沿って並んだ複数の空気吹き出し孔の面積よりも大きい
    摩擦抵抗低減型船舶。
  4. 請求項に記載の摩擦抵抗低減型船舶において、
    前記複数の空気吹き出し孔は、前記二本の直線に沿って、一個又は複数個ごとに千鳥形配列で配置されている
    摩擦抵抗低減型船舶。
  5. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の摩擦抵抗低減型船舶において、
    前記複数の空気吹き出し孔の各々は、円形又は船長方向に伸びる楕円形である
    摩擦抵抗低減型船舶。
  6. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の摩擦抵抗低減型船舶において、
    前記空気吹き出し部は、
    前記底面に設けられたアクセス用の第1開口部を開放又は閉止する第1蓋を更に備え、
    前記第1蓋は、前記複数の空気吹き出し孔の一部を有する
    摩擦抵抗低減型船舶。
  7. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の摩擦抵抗低減型船舶において、
    前記容器部に接続される前記送気管の位置は、前記複数の空気吹き出し孔のすべての位置よりも船首側である
    摩擦抵抗低減型船舶。
  8. 船体の船底に設けられた空気吹き出し部を具備し、
    前記空気吹き出し部は、
    空気を供給する送気管と、
    上面に前記送気管を接続され、底面に空気を吹き出す複数の空気吹き出し孔を有する容器部と
    を備え、
    前記複数の空気吹き出し孔の各々の面積は、船首側に近いほど大きく、
    前記複数の空気吹き出し孔は、船首側空気吹き出し孔、および、船尾側空気吹き出し孔を含み、
    船首側空気吹き出し孔の面積、および、船尾側空気吹き出し孔の面積は、船首側空気吹き出し孔からの空気吹き出し量と、船尾側空気吹き出し孔からの空気吹き出し量とが概ね等しくなるように、設定されている
    摩擦抵抗低減型船舶。
  9. 船体の船底に設けられた空気吹き出し部を具備し、
    前記空気吹き出し部は、
    空気を供給する送気管と、
    上面に前記送気管を接続され、底面に空気を吹き出す複数の空気吹き出し孔を有する容器部と
    を備え、
    前記複数の空気吹き出し孔の各々の面積は、船首側に近いほど大きく、
    前記複数の空気吹き出し孔は、船首側空気吹き出し孔、および、船尾側空気吹き出し孔を含み、
    船首側空気吹き出し孔の面積、および、船尾側空気吹き出し孔の面積は、船首側空気吹き出し孔の面積と船尾側空気吹き出し孔の面積とを同一にした場合と比較して、船首側空気吹き出し孔からの空気吹き出し量と、船尾側空気吹き出し孔からの空気吹き出し量との差が小さくなるように設定されている
    摩擦抵抗低減型船舶。
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