以下に本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物について具体的に説明する。
本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物に使用するポリカーボネート樹脂(A)とは、ビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルからなる群より選ばれる1種以上を主原料とするものが好ましく挙げられ、なかでもビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料とするものが好ましい。具体的には、上記ビスフェノールAなどをジヒドロキシ成分として用い、エステル交換法あるいはホスゲン法により得られるポリカーボネート樹脂であることが好ましい。さらにビスフェノールAの一部、好ましくは10モル%以下を、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどで置換したものも好ましく用いられる。これらを2種以上配合してもよい。
上記ポリカーボネート樹脂(A)は、優れた耐衝撃性と成形加工性の観点から、好ましい粘度平均分子量(Mv)としては10000〜60000、より好ましくは15000〜40000、さらに好ましくは18000〜30000である。ここで粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し、20℃での塩化メチレン溶液の極限粘度〔η〕を測定して、
〔η〕=1.23×10−4×Mv0.83
より、算出した値である。
本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物に使用する熱可塑性樹脂(B)とは、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂およびポリエーテルイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、これらは1種または2種以上を併用することもできる。
上記ポリエステル系樹脂とは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル、もしくはエステル形成誘導体と、ジオールとを、公知の方法により縮合させて得られるものが挙げられ、芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステル、液晶ポリエステルなどが使用できる。ここで、上記芳香族ジカルボン酸としては、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸などが挙げられ、これらのエステル形成誘導体も、ポリエステル樹脂の製造に用いることができる。上記ジオールの例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2〜6個の炭素原子を有するポリメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAおよびこれらのエステル形成誘導体が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の好ましい具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリビスフェノールAイソフタレートなどが挙げられる。上記ポリエステル樹脂は、o−クロロフェノール溶媒中における25℃での極限粘度(〔η〕25℃、o−クロロフェノール、単位dl/g)が0.4〜2のものが好ましく、さらに好ましくは0.6〜1.5のものである。
上記スチレン系樹脂としては、少なくとも1種のスチレン系単量体が重合された樹脂が使用できる。具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ゴム変性スチレン系樹脂、およびゴム変性スチレン系樹脂とポリフェニレンオキシドとのポリマーブレンド体(変性ポリフェニレンオキシド樹脂)などが挙げられる。
スチレン系樹脂はスチレン系単量体を必須とする重合体である。スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンおよびo−エチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく使用される。これらは1種または2種以上を用いることができる。
スチレン系単量体以外の単量体としては、一層の耐衝撃性、耐薬品性向上を目的とする場合にはシアン化ビニル系単量体が、また靭性および色調の向上を目的とする場合には(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく用いられる。
シアン化ビニル系単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく使用される。(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく使用される。
また、必要に応じて使用されるこれらと共重合可能な他のビニル系単量体としては、ビニルトルエンなどスチレン系単量体以外の芳香族ビニル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体が挙げられる。
本発明において、マレイミド系単量体を共重合したスチレン系樹脂、即ち、マレイミド基変性スチレン系樹脂は、炭素繊維強化ポリカーボネート系樹脂組成物の表面外観(表面粗さ、表面うねり)を大幅に向上できるため、好ましく使用することができる。
スチレン系樹脂の構成成分であるスチレン系単量体の割合は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、全単量体に対し5〜90重量%が好ましく、より好ましくは10〜80重量%の範囲である。シアン化ビニル系単量体を混合する場合には、耐衝撃性、流動性の観点から、1〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは40重量%以下の範囲である。また、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を混合する場合には、靭性、耐衝撃性の観点から、80重量%以下が好ましく、さらに好ましくは75重量%以下の範囲である。さらに、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を混合する場合には、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がさらに好ましく、特に50重量%以下の範囲が好ましい。
スチレン系樹脂の特性には制限はないが、メチルエチルケトン溶媒を用いて、30℃で測定した極限粘度[η]が0.25〜5.00dl/gの範囲のものが好ましく、さらに0.30〜3.00dl/gの範囲のものが好ましく、特に0.35〜1.00dl/gの範囲のものがすぐれた耐衝撃性および成形加工性を有する樹脂組成物が得られることから好ましい。
スチレン系樹脂の製造法には特に制限がなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状−懸濁重合法および溶液−塊状重合法など通常の方法を用いることができる。
ゴム変性スチレン系樹脂としては、通常ゴム状重合体の存在下に、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体および必要に応じ、前記の共重合可能なビニル単量体を加えた単量体混合物を、例えば塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、沈殿重合または乳化重合等の方法により重合または共重合(以下「(共)重合」と称する場合もある)することにより得られるものであり、スチレン系単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体にグラフトした構造をとったもの、スチレン系単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体に非グラフトした構造をとったものが使用できる。
このようなゴム変性スチレン系樹脂の具体例としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などが挙げられる。
上記のアクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸アルキルの重合体および/または共重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、アクリル酸ジシクロペンタニル、ジアクリル酸ブタンジオール、ジアクリル酸ノナンジオール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ペンタメチルピペリジル、メタクリル酸テトラメチルピペリジル、メタクリル酸ベンジル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコールなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
また、その他のビニル系単量体を共重合することもでき、その他のビニル系単量体としては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、マレイン酸無水物、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、イタコン酸無水物、グルタル酸無水物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられ、これらのビニル系単量体は単独または2種以上を用いることができる。
本発明で用いられるアクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル成分単位を主成分、好ましくは70%以上含むポリメタクリル酸メチル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂は重量平均分子量1千〜45万であることが好ましく、1万〜20万がより好ましく、3万〜15万がさらに好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたGPCで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の重量平均分子量である。アクリル系樹脂の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができる。
上記のポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。かかるポリフェニレンエーテル樹脂は、フェノール化合物の1種または2種以上と酸化カップリング触媒を用い、酸素または酸素含有ガスの存在下で酸化重合して得ることができる。
上記一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、ハロゲン、炭化水素または置換炭化水素であり、このうち少なくとも1つは水素である。置換炭化水素の置換基としては、ハロゲン、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、シアノ基などが挙げられる。
上記一般式(1)におけるR1、R2、R3、R4の具体例としては、水素、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、フェニル、クロロエチル、ヒドロキシエチル、フェニルエチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、カルボキシエチル、メトキシカルボニルエチル、シアノエチル、クロロフェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、アリルなどが挙げられる。
具体的な例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,6−、2,5−、2,4−または3,5−ジメチルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,3,5−、2,3,6−または2,4,6−トリメチルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−メチル−6−アリルフェノールなどが挙げられる。また、これらのフェノール類を酸化重合してポリフェニレンエーテル樹脂を製造する場合には、上記一般式(1)で表される化合物以外のフェノール化合物、例えばビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシン、ハイドロキノン、ノボラック樹脂のような多価ヒドロキシ芳香族化合物と、上記構造式で表されるフェノール化合物とを共重合してもよい。
このようにして得られるポリフェニレンエーテル樹脂の中で好ましいものとしては、2,6−ジメチルフェノール単独重合体、2,6−ジメチルフェノールと少量の3−メチル−6−t−ブチルフェノールあるいは2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体などが挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、上記単独重合体または共重合体に他の重合体をグラフト変性したものであってもよい。例えば、EPDMゴムの存在下に前記フェノール化合物を酸化重合したもの、ポリスチレン系樹脂の存在下に前記フェノール化合物を酸化重合したもの、上記フェノール化合物の単独重合体または共重合体の存在下にスチレンおよび/または他のビニルモノマーをラジカル開始剤と共に溶融混練したものなどを使用することができる。これらの中ではポリスチレン系樹脂の存在下に前記フェノール化合物を酸化重合したものが好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂は他の重合体成分と共に用いることができる。このような他の重合体成分としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ塩化ビニルなどを使用することができる。これらの中でも特にポリスチレン系樹脂が好ましい。
ポリフェニレンエーテル樹脂の、クロロホルムを溶媒として用い、25℃で測定した固有粘度が、0.10〜1.00dl/g、さらに0.15〜0.80dl/g、特に0.20〜0.60dl/gの範囲のものが流動性、機械的特性の観点より好ましい。
本発明におけるポリカーボネート系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の配合量は、(A)成分、(B)成分の合計量を100重量部として、ポリカーボネート樹脂(A)10〜100重量部に対し、熱可塑性樹脂(B)0〜90重量部である。ポリカーボネート樹脂(A)の配合量が10重量部未満であり、熱可塑性樹脂(B)の配合量が90重量部を越える場合は、難燃性、機械的特性、表面外観改良効果が得られない。ポリカーボネート樹脂(A)の配合量は20重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましく、50重量部以上がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂(B)の配合量は80重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。一方、衝撃強度などの機械的特性や難燃性をより向上させる観点から、ポリカーボネート樹脂(A)の配合量は95重量部以下が好ましく、90重量部以下がより好ましく、80重量部以下がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂(B)の配合量は5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。
本発明に用いる炭素繊維(C)とは、特に制限がなく、公知の各種炭素繊維、例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ピッチ、レーヨン、リグニン、炭化水素ガス等を用いて製造される炭素質繊維や黒鉛質繊維などが挙げあれる。また、これらの繊維を金属でコートした繊維でもよい。なかでも機械的特性向上が可能なPAN系炭素繊維が好ましく利用できる。炭素繊維(C)は通常チョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバーなどの形状であり、直径15μm以下、好ましくは5〜10μmである。
本発明に用いる炭素繊維(C)の形態は、特に制限されないが、数千から数十万本の炭素繊維の束、あるいは粉砕したミルド状の形態で用いられる。炭素繊維束については、連続繊維を直接使用するロービング法、あるいは所定長さにカットしたチョップドストランドを使用する方法を適用し、用いることが可能である。
本発明に用いる炭素繊維(C)はチョップドストランドを用いることが好ましく、チョップド炭素繊維の前駆体である炭素繊維ストランドのフィラメント数は1,000〜150,000本が好ましい。フィラメント数が1,000本以上であると、製造コストを抑えることができ、150,000本以下であると、製造コストを抑えることができるとともに、生産工程における安定性を向上させることができる。
本発明に用いる炭素繊維(C)のストランド弾性率は、特に制限はないが、150〜1000GPaが好ましく、200〜700GPaがより好ましく、さらに好ましくは220〜500GPaである。ストランド弾性率が150GPa以上であると、炭素繊維強化樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができ、1000GPa以下であると、製造コストを抑えることができる。
本発明に用いる炭素繊維(C)のストランド強度は、特に制限はないが、1〜10GPaが好ましく、2〜9GPaがより好ましく、2.5〜8.5GPaがさらに好ましく、3.0〜8.0GPaが最も好ましい。ストランド強度が1GPa以上であると、得られる炭素繊維強化樹脂組成物の強度をより向上させることができ、10GPa以下であると、製造コストを抑えることができる。
ここで、ストランド弾性率およびストランド強度とは、炭素繊維単繊維3000〜90000本よりなる連続繊維束にエポキシ樹脂を含浸硬化させて作製されたストランドの弾性率および強度をいい、ストランド試験片をJISR7601に準拠して引張り試験に供して得られた値である。
本発明に用いる炭素繊維(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)との接着性を向上するために、炭素繊維(C)に表面酸化処理を行ってもよく、その場合、通電処理による表面酸化、オゾンなどの酸化性ガス雰囲気中での酸化処理をしてもよい。
また、炭素繊維(C)の表面に、樹脂の濡れ性の改善、取り扱い性の向上を目的として、カップリング剤や集束剤等を付着させたものを用いてもよい。カップリング剤としては、例えば、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、およびカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられ、アミノ系シラン系カップリング剤が好適に使用可能である。集束剤としては、例えば、無水マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、フェノール系化合物およびこれら化合物の誘導体からなる群より選ばれる1種以上を含有する集束剤が挙げられ、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物を含有する集束剤が好適に使用可能である。炭素繊維(C)中の集束剤の含有量は、0.1〜10.0重量%であることが好ましく、0.3〜8.0重量%がさらに好ましく、0.5〜6.0重量%が特に好ましい。
また、本発明に用いる炭素繊維(C)のストランドにサイジング剤を付与し、さらにチョップド炭素繊維とする方法としては、例えば特公昭62−9541号公報におけるガラス繊維チョップドストランドで採用されている方法や、例えば特開昭62−244606号公報や、特開平5−261729号公報などの方法を適用することができる。
本発明における炭素繊維(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対し、10〜300重量部である。炭素繊維(C)の配合量が10重量部未満の場合は、得られる成形品において十分な機械強度が得られない。炭素繊維(C)の配合量は20重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましく、40重量部以上がさらに好ましい。一方、炭素繊維(C)の配合量が300重量部を越えると、成形性および表面外観が悪化する。炭素繊維(C)の配合量は250重量部以下が好ましく、200重量部以下がより好ましく、150重量部以下がさらに好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、炭素繊維(C)、難燃剤(D)を配合してなる炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物中の炭素繊維(C)の含有量は、60重量%以下が好ましく、さらに55重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。組成物中の炭素繊維含有量を60重量%以下とすることで、高度な機械強度を発現しながら、成形性および表面外観の低下が抑えられるため好ましい。
また本願発明では、特に炭素繊維(C)の含有量が多い領域(組成物中の含有量が30重量%以上)においても優れた難燃性を発現することを特徴とする。一般的にはフィラー等(ガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等)を配合した場合には、相対的に易燃性の樹脂成分が減少し難燃成分が増加するため燃焼が阻害され難燃性は向上するが、炭素繊維を配合した場合には、難燃性が大幅に悪化する。これは炭素繊維が前記したフィラー等に比べ熱伝導性に優れることから、燃焼時の熱が伝搬し樹脂の分解を促進するためと考えられる。よって炭素繊維(C)の含有量が高くなるほど難燃化することが困難となる。しかしながら本願発明では、金属同等の剛性が求められる炭素繊維(C)高含有領域での難燃化についても、炭化層を強固に形成することで、燃焼の継続を大幅に短縮し熱が伝搬することを最小限に抑制することが可能となることで、特に炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物中の炭素繊維(C)の含有量を、30重量%以上で好ましく適用でき、さらには35重量%以上、40重量%以上でより好ましく用いることが可能である。
炭素繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維(C)の重量平均繊維長は特に限定されるものでないが、0.1〜0.5mmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.125〜0.45mm、特に好ましくは0.15〜0.40mmである。0.1mm以上であれば、衝撃強度、曲げ弾性率をより向上させることができ、0.50mm以下であれば、表面外観をより向上させることができる。重量平均繊維長は得られたペレットまたは成形品をポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、難燃剤(D)が溶ける溶剤にて溶解させた後、濾過・洗浄を行い、その残渣を光学顕微鏡にて50〜100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1000本の長さを測定し、その測定値(mm)(小数点2桁が有効数字)を用いて以下の式に基づき算出することができる。
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Wi×Li)/ΣWi
=Σ(πri2×Li×ρ×ni×Li)/Σ(πri2×Li×ρ×ni)
繊維径ri、および密度ρが一定である場合、上式は簡略化され、以下の式となる。
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li2×ni)/Σ(Li×ni)
Li:繊維状充填材の繊維長
ni:繊維長Liの繊維状充填材の本数
Wi:繊維状充填材の重量
ri:繊維状充填材の繊維径
ρ:繊維状充填材の密度
本発明において、難燃剤(D)としては、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤等の難燃剤を用いることができるが、少なくともホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物(D1)を含むものである。また難燃性および機械的特性に優れるという点で、リン化合物(D1)と上記難燃剤から選択されるいずれか1種以上の難燃剤を併用することが好ましい。
本発明におけるリン化合物(D1)は、好ましくは、下記一般式(2)で表されるホスフィン酸塩、下記一般式(3)で表されるジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーから選ばれる一種以上のリン化合物である。
(式中のR5とR6は、同じかまたは異なり、炭素数1〜6のアルキル基もしくはアリール基であり、直鎖であっても分岐であってもよい。また、R7は、直鎖状または枝分かれした炭素数1〜10のアルキレン基、もしくは、炭素数6〜10のアリーレン基、アルキルアリーレン基またはアリールアルキレン基である。また、Mは、カルシウム、アルミニウムまたは亜鉛である。また、mは1〜4、nは1〜4、xは1〜4である。)
リン化合物(D1)の市販品としては、クラリアントジャパン社の「Exolit」(登録商標)OP1230やOP1240などが挙げられる。また、同社からは、(D1)成分と窒素含有化合物および/またはホウ素含有化合物などを含む混合物も市販されており、市販品の例としてはOP1312が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
本発明において、ホスフィン酸塩、ジホスフィン酸塩およびこれらのポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物(D1)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対し、1〜50重量部が好ましい。難燃剤(D)のうち、リン化合物(D1)を配合しない場合は、十分な難燃効果が得られない。リン化合物(D1)の配合量は2重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。一方、リン化合物(D1)の配合量が50重量部以下であれば、滞留安定性を向上させることができる。リン化合物(D1)の配合量は40重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましい。
本発明に用いる難燃剤(D)は、さらにリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物およびフォスファフェナントレン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン系化合物(D2)、および/または、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素およびチオ尿素からなる群より選ばれる少なくとも一種の窒素化合物(D3)を配合することが好ましい。
本発明におけるリン系化合物(D2)は、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物およびフォスファフェナントレン化合物からなる群より選ばれる一種以上である。
リン酸エステル化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリス(ジメチルフェニル)ホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジキシレニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、縮合燐酸エステル、酸性リン酸エステルおよびリン酸エステルアミドなどが挙げられる。
前記の縮合燐酸エステルとしては、レゾルシノールジフェニルホスフェート、ハイドロキノンジフェニルホスフェート、ビスフェノールAジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェートなどが挙げられ、その市販品としては、大八化学工業(株)製PX−202、CR−741、PX−200、PX−201、(株)アデカ製FP−500、FP−600、FP−700およびPFRなどから選ばれる1種または2種以上が使用することができる。
前記の酸性リン酸エステルとしては、モノメチルアシッドホスフェート、モノエチルアシッドホスフェート、モノイソプロピルアシッドホスフェート、モノブチルアシッドホスフェート、モノラウリルアシッドホスフェート、モノステアリルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノベヘニルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジベヘニルアシッドホスフェート、トリメチルアシッドホスフェート、トリエチルアシッドホスフェート、および前記のモノとジの混合物、モノ、ジおよびトリとの混合物や前記化合物の一種以上の混合物であってもよい。好ましく用いられるホスフェート系化合物としては、モノおよびジステアリルアシッドホスフェートの混合物などの長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられ、その市販品としては、(株)アデカ製“アデカスタブ”AX−71などが使用することができる。
前記のリン酸エステルアミドとしては、窒素を含有する芳香族リン酸エステルアミドが用いられ、高い融点を持つ常温で粉末状の物質であり、配合時のハンドリング性に優れ、市販品としては、四国化成工業(株)製SP−703などが好ましく用いられる。
前記のホスファゼン化合物としては、ホスホニトリル線状ポリマーおよび/または環状ポリマーであり、特に直鎖状のフェノキシホスファゼンを主成分とするものが好ましく用いられ、前記のホスホニトリル線状ポリマーおよび/または環状ポリマーは、著者梶原『ホスファゼン化合物の合成と応用』などに記載されている公知の方法で合成することができ、例えば、リン源として五塩化リンあるいは三塩化リン、窒素源として塩化アンモニウムあるいはアンモニアガスを公知の方法で反応させ(環状物を精製してもよい)、得られた物質をアルコール、フェノールおよびアミン類で置換することで合成することができ、(株)伏見製薬所製「ラビトル」(登録商標)FP−110などが好ましく用いられる。
前記のフォスファフェナントレン化合物としては、分子内に少なくとも1個のフォスファフェナントレン骨格を有するリン系難燃剤であり、三光(株)製HCA、HCA−HQ、BCA、SANKO−220およびM−Esterなどが好ましく用いられる。
リン系化合物(D2)の中では、特に、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリクレジルホスフェートのリン酸エステル化合物およびモノおよびジステアリルアシッドホスフェートの混合物などの長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物の酸性リン酸エステルが、引張物性とウェルド物性に優れ、好ましく用いられる。
本発明において、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物およびフォスファフェナントレン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン系化合物(D2)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対し、1〜50重量部が好ましい。リン系化合物(D2)の配合量が1重量部以上であれば、難燃効果をより向上させることができる。リン系化合物(D2)の配合量は2重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。一方、リン系化合物(D2)の配合量が50重量部以下であれば、耐熱性や滞留安定性をより向上させることができる。リン系化合物(D2)の配合量は40重量部以下が好ましく、35重量部以下がより好ましい。
本発明における窒素化合物(D3)は、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素およびチオ尿素からなる群より選ばれる少なくとも一種である。なお、本発明では、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素およびチオ尿素からなる群より選ばれる一種以上の窒素化合物(D3)には、ポリリン酸アンモニウム、ホスファゼン化合物およびリン酸エステルアミドは含まれない。
前記の脂肪族アミンとしては、エチルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロオクタンなどを挙げることができる。前記の芳香族アミンとしては、アニリン、フェニレンジアミンなどを挙げることができる。
前記の含窒素複素環化合物としては、尿酸、アデニン、グアニン、2,6−ジアミノプリン、2,4,6−トリアミノピリジンおよびトリアジン化合物などを挙げることができる。前記のシアン化合物としては、ジシアンジアミドなどを挙げることができる。また、前記の脂肪族アミドや芳香族アミドとしては、N,N−ジメチルアセトアミドやN,N−ジフェニルアセトアミドなどを挙げることができる。
前記の含窒素複素環化合物において例示したトリアジン化合物は、トリアジン骨格を有する含窒素複素環化合物であり、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌール酸、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、トリメチルトリアジン、トリフェニルトリアジン、アメリン、アメリド、チオシアヌル酸、ジアミノメルカプトトリアジン、ジアミノメチルトリアジン、ジアミノフェニルトリアジン、ジアミノイソプロポキシトリアジンおよびポリリン酸メラミンなどを挙げることができ、メラミンシアヌレートとメラミンイソシアヌレート、ポリリン酸メラミンが好ましく用いられる。
前記のメラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートとしては、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。また、公知の方法で製造されるが、例えば、メラミンとシアヌール酸またはイソシアヌール酸の混合物を水スラリーとし、よく混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥後に一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は完全に純粋である必要は無く、多少未反応のメラミンないしシアヌール酸、イソシアヌール酸が残存していてもよい。また、分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤やポリビニルアルコールおよびシリカなどの金属酸化物などの公知の表面処理剤などを併用してもよい。また、樹脂に配合される前後の平均粒径は、成形品の難燃性、機械強度、表面性の点から0.1〜100μmが好ましく、好ましくは0.2〜50μmであり、さらに好ましくは0.3〜10μmであり、平均粒径はレーザーミクロンサイザー法による累積分布50%粒子径で測定される平均粒径であり、市販品としては日産化学(株)製MC−4000やMC−6000などが好ましく用いられる。
前記のポリ燐酸メラミンとしては、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびメラミン、メラム、メレムから構成されるポリ燐酸メラミンなどが挙げられ、1種で用いても2種以上で用いてもよく、(株)三和ケミカル製“MPP−A、日産化学(株)製PMP−100やPMP−200などが好ましく用いられる。
本発明において、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素およびチオ尿素からなる群より選ばれる少なくとも一種の窒素化合物(D3)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対し、1〜30重量部が好ましい。窒素化合物(D3)の配合量が1重量部以上であれば、難燃効果をより向上させることができる。窒素化合物(D3)の配合量は2重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。一方、窒素化合物(D3)の配合量が30重量部以下であれば、機械強度や外観をより向上させることができる。窒素化合物(D3)の配合量は25重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。
本発明で用いられるシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、RSiO3/2、R2SiO、R3SiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基から選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物を挙げることができる。
本発明において、その他の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、フッ素系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。本発明においては、難燃性および機械的特性に優れるという点で、水酸化マグネシウム、フッ素系化合物、膨潤性黒鉛が好ましく、フッ素系化合物がより好ましい。
フッ素系化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も好ましい。
本発明において、難燃剤(D)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対し、3〜100重量部である。難燃剤(D)の配合量が3重量部未満の場合は、十分な難燃効果が得られない。難燃剤(D)の配合量は5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。一方、難燃剤(D)の配合量が100重量部を越えると、機械強度の低下や外観不良となる。難燃剤(D)の配合量は80重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましい。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃助剤、滴下抑制剤、滑剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、流動改質剤、耐衝撃性改良剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などの添加剤、炭素繊維(C)以外の充填材、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を配合することができる。
本発明において安定剤としては、例えば、熱可塑性樹脂の熱酸化劣化抑制、着色防止、加工安定性の向上、耐候性の改善、樹脂中の触媒残渣の不活性化、悪臭抑制などに用いられるものをいずれも使用することができる。具体的には、ラジカル型分解劣化を抑制するフェノール系、ハイドロパーオキサイド分解剤として作用するホスファイト系、チオエーテル系などの酸化防止剤、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系などの光安定剤、金属イオンに作用して不活性な金属錯化合物を形成する金属不活性化剤、およびエステル交換反応を促進させる樹脂中の触媒残渣を不活性化させるホスフェート系化合物などを挙げることができる。これらの安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対し、0.05〜3重量部が好ましい。安定剤の配合量が0.05重量部以上であれば、機械的特性、溶融加工時に熱安定性や耐候性に優れた炭素繊維強化難燃ポリカーボネート樹脂組成物および成形品を得ることができる。安定剤の配合量は0.1重量部以上がより好ましく、0.2重量部以上がさらに好ましい。一方、安定剤の配合量が3重量部以下であれば、機械強度や外観をより向上させることができる。安定剤の配合量は2重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。
本発明において離型剤としては、熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものをいずれも使用することができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、変性シリコーンなどを挙げることができる。これらの離型剤を配合することで、機械的特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
本発明において着色剤としては、熱可塑性樹脂の着色剤に用いられるものをいずれも使用することができる。具体的には、カーボンブラック、酸化チタン、および種々の色の顔料や染料などを挙げることができる。これらの着色剤を配合することで、樹脂の調色、耐候(光)性、および導電性に優れた成形品を得ることができる。
本発明において、耐衝撃性改良剤としては、軟質熱可塑性樹脂などを使用することができる。具体的には、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質ポリオレフィン系ポリマー、各種コアシェル型エラストマー、ポリアミドエラストマーなどを挙げることができる。これらの耐衝撃性改良剤を配合することで、優れた機械的特性(特に衝撃強度)、表面外観を有する成形品を得ることができる。
本発明で用いられる炭素繊維(C)以外の充填材(E)としては、特に限定されるものでないが、繊維状、非繊維状の充填材を使用することができる。繊維状の充填材として具体的には、ガラス繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、アルミナシリケートなどの繊維状、ウィスカー状充填材が挙げられる。非繊維状の充填材として具体的には、タルク、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイトなどの珪酸塩、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、ガラスバルーン、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材、およびモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母に代表される層状珪酸塩が挙げられる。層状珪酸塩は層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩であってもよく、有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。またこれらはシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤で処理されている場合が優れた機械的特性を発現できるため特に好ましい。
本発明における充填材(E)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の合計100重量部に対し、1〜100重量部が好ましい。充填材(E)の配合量が1重量部以上であれば、補強効果をより向上させることができる。充填材(E)の配合量は2重量部以上が好ましく、3重量部以上がより好ましい。一方、充填材(E)の配合量が100重量部以下の場合、機械強度や外観をより向上させることができる。充填材(E)の配合量は75重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましい。
本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、ポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、炭素繊維(C)、難燃剤(D)および必要によりその他成分を溶融混練する方法が好ましい。溶融混練装置の設定温度は、使用するポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)+70℃以上、または熱可塑性樹脂(B)が非晶性樹脂の場合にはガラス転移温度(Tg)+70℃以上、結晶性樹脂の場合には融点(Tm)+20℃以上のいずれかが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、炭素繊維(C)、難燃剤(D)を供給する溶融混練装置原料供給位置は、特に制限はないが、ポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、難燃剤(D)は主原料供給口が好ましく、炭素繊維(C)に関しては、特に制限はないが主原料供給口と吐出口の中間、具体的にはスクリューエレメントデザインで主原料供給口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンと吐出口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンの中間位置であれば重量平均繊維長のコントロールが容易となり好ましい。
溶融混練装置としては特に制限はなく、ポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、炭素繊維(C)、難燃剤(D)とを適度な剪断場の下で加熱溶融混合することが可能な樹脂加工用に使用される公知の押出機、連続式ニーダー等の溶融混練装置を使用することができる。例えば、スクリューが1本の単軸押出機およびニーダー、スクリューが2本の二軸押出機およびニーダー、スクリューが3本以上の多軸押出機およびニーダー、さらに、押出機およびニーダーが1台の押出機、押出機およびニーダーが2台繋がったタンデム押出機、溶融混練せず原料供給のみ可能なサイドフィーダーが設置された押出機およびニーダー等特に制限はない。スクリューエレメントデザインにおいては、フルフライトスクリュー等を有する溶融または非溶融搬送ゾーン、シールリング等を有するシールゾーン、ユニメルト、ニーディング等を有するミキシングゾーン等の組み合わせにも特に制限はなく、例えばシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する連続溶融混練装置が好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸スクリュー部を有する連続溶融混練装置がさらに好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸押出機が最も好ましい。
本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物は、通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して各種成形品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また、本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物は、炭素繊維(C)にて強化されたものであることからガラス繊維等の充填材と比較して熱伝導性に優れる。これにより燃焼時の熱が成形品全体に伝搬し樹脂の分解を促進するため、炭素繊維(C)の含有量が高くなるほど難燃化することが困難となる。そこで予め熱伝導性を評価しておくことで、大凡の難燃剤量を予測することが可能となる。本発明では、燃焼試験片の熱伝導を再現することを目的とし、12.8mm幅×6.4mm厚み×30mm高さの試験片を作製し、表面温度70℃のホットプレートに試験片を立て、5分後の成形品上部の表面温度を測定することで熱伝導性の指標とする。表面温度が高いほど熱伝導性に優れるといえ、難燃化が難しくなることを意味する。本測定法は炭素繊維がMD方向(流れ方向)に多く配向している方向の熱の伝搬を評価していることから、燃焼時の熱の伝搬と同様の挙動となると考えられる。本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂成形品の熱伝導性としては、5分後の成形品上部の表面温度が35℃以上であることが好ましく、より好ましくは38℃以上、さらに好ましくは40℃以上であり、特に好ましくは43℃以上である。
本発明の成形品は、成形品表面のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値が3.0μm以下であることが好ましく、成形品表面のうねり状凹凸を抑制し、外観・意匠性をより向上させることができる。より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下であり、特に好ましくは1.5μm以下である。また、うねり曲線の算術平均高さ(Wa)値の下限値は最大0μmであり特に限定されない。ここでのうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値とは、JISB0601で定義されるものであり、射出成形により作製した80mm×80mm×3mmの角板成形品を用い、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secで、成形品表面を測定して得られるうねり曲線の算術平均高さ(Wa)である。
通常、成形品のうねりは炭素繊維(C)の分散不良による厚み方向の収縮差で生じることから、厚みによってうねり曲線の算術平均高さは大きく変動する。そのため上記射出成形により得られた角板成形品以外の成形品のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)の好ましい値は、成形品厚みで補正することにより求めることができる。補正方法としては、成形品厚みと基本厚みである3mmとの比(成形品厚み(mm)/3(mm))を上記規定のうねり曲線の算術平均高さの3.0μmに乗することにより得られる値が、本発明におけるWa値に相当する。例えば、1.5mm厚みの成形品の場合には、1.5mm/3mm=0.5と3.0μmを掛け算して算出された1.5μmが、本発明におけるWa値3.0μmに相当することを意味する。よって上記射出成形により得られた角板成形品以外の成形品のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)に関しては、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secで、成形品表面を測定してうねり曲線の算術平均高さが、成形品厚みで補正された値よりも小さくなることが好ましいといえる。
また、上記角板成形品のような平面ではなく、傾いた面や曲面のうねり曲線の算術平均高さ測定に関しては、傾斜補正モードを直線またはR面とすることにより、傾きで生じる高さの変動を補正可能である。
本発明の成形品は、表面粗さ(Ra値)が0.4μm以下であることが好ましい。Ra値が0.4μm以下であれば、成形品表面に目視によって観察される炭素繊維(C)の浮きを低減することができ、表面外観・意匠性をより向上させることができる。より好ましくは0.37μm以下、さらに好ましくは0.34μm以下であり、特に好ましくは0.30μm以下である。また、Ra値の下限値は0μmであり特に限定されない。ここで表面粗さは、80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ8mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面の算術平均粗さ(Ra)値を評価することにより求めることができる。また、角板成形品のような平面ではなく、傾いた面や曲面の表面粗さを測定する場合には、傾斜補正モードを直線またはR面とすることにより、傾きで生じる高さの変動を補正可能である。
本発明の成形品中の炭素繊維(C)の重量平均繊維長(Lw)は、0.1〜0.5mmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.125〜0.45mm、特に好ましくは0.15〜0.40mmである。炭素繊維(C)の重量平均繊維長(Lw)が0.1mm以上であれば、衝撃強度、曲げ弾性率をより向上させることができ、0.50mm以下であれば、表面外観をより向上させることができる。重量平均繊維長は、ペレットまたは成形品をポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、難燃剤(D)が溶ける溶剤にて溶解させた後、濾過・洗浄を行い、その残渣を光学顕微鏡にて50〜100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1000本の長さを測定し、その測定値(mm)(小数点2桁が有効数字)を、前記炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物の繊維長に関する説明にて記載した式に基づき同様に計算することができる。
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップおよびボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンのハウジング、シャーシおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジング、シャーシおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジング、シャーシおよび内部部品、コピー機のハウジング、シャーシおよび内部部品、ファクシミリのハウジング、シャーシおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。さらに、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品およびハウジング、シャーシ部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジング、シャーシおよび内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、コンクリート型枠などの土木関連部材、釣竿部品、リールのハウジング、スプールおよびボディー部品、ルアー部品、クーラーボックス部品、ゴルフクラブ部品、テニス、バドミントン、スカッシュ等のラケット部品、スキー板部品、スキーストック部品、自転車のフレーム、ペダル、フロントフォーク、ハンドルバー、ブレーキブラケット、クランク、シートピラー、車輪、専用シューズ等の部品、ボート用オール、スポーツ用ヘルメット、フェンス構成部材、ゴルフティー、剣道用防具(面)および竹刀などのスポーツ用品部品、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、結束バンド、クリップ、ファン、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、育苗用ポット、植生杭、農ビの止め具などの農業部材、骨折補強材などの医療用品、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ICトレイ、文房具、排水溝フィルター、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。特に自動車用内装部品、自動車用外装部品、スポーツ用品部材および各種電気・電子部品のハウジング、シャーシおよび内部部品として有用である。
本発明の炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物および成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して使用することができるが、繊維の折損がおきている場合、得られる樹脂組成物は、本発明の成形品と同様の機械強度を発現することは困難である。
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
使用原料としては下記のものを使用した。
(A)ポリカーボネート樹脂
<A1>ポリカーボネート樹脂“タフロン”(登録商標)A1900(出光興産株式会社製)を使用した。粘度平均分子量(Mv)は19000であった。
<A2>ポリカーボネート樹脂“タフロン”A2600(出光興産株式会社製)を使用した。粘度平均分子量(Mv)は25100であった。
(B)熱可塑性樹脂
<B1>ポリブチレンテレフタレート樹脂“トレコン”(登録商標)1100M(東レ株式会社製)を使用した。
<B2>ABS樹脂“トヨラック”(登録商標)T−500(東レ株式会社製)を使用した。
(C)炭素繊維
<C1>炭素繊維“トレカ”(登録商標)カットファイバーTV14−006(東レ株式会社製、原糸T700SC−12K:引張強度4.90GPa、引張弾性率230GPa)を使用した。
<C2>炭素繊維“トレカ”原糸T800SC−24K(東レ株式会社製、引張強度5.88GPa、引張弾性率294GPa)を、樹脂成分付着量が3.0重量%になるようにウレタン樹脂エマルジョン:スーパーフレックス300(第一工業製薬株式会社製)を付着させ、200℃の乾燥炉で乾燥し水分を除去したのち、ロータリーカッターで繊維長6.0mmにカットしたカットファイバーを使用した。
(D)難燃剤
<D1>ホスフィン酸金属塩“Exolit”(登録商標)OP1240(クラリアントジャパン製)を使用した。
<D2−1>縮合リン酸エステル化合物PX200(大八化学工業株式会社)を使用した。
<D2−2>ホスファゼン化合物“ラビトル”(登録商標)FP−110(株式会社伏見製薬所製)を使用した。
<D3>含窒素複素環化合物のトリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩MC−4000(日産化学株式会社製)を使用した。
(E)充填材
<E1>顆粒タルクHT−7000(ハリマ化成株式会社製)を使用した。
<E2>ガラス繊維ECS03−350(セントラル硝子(株)製)を使用した。
(F)滴下抑制剤
<F1>アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン“メタブレン”(登録商標)A3000(三菱レイヨン株式会社製)を使用した。
(G)その他の添加剤
<G1>長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物 “アデカスタブ”(登録商標)AX−71((株)ADEKA製)を使用した。
<G2>フェノール系酸化防止剤“アデカスタブ”(登録商標)AO−60((株)ADEKA製)を使用した。
<G3>ホスファイト系酸化防止剤“アデカスタブ”(登録商標)PEP−36((株)ADEKA製)を使用した。
[実施例1〜9、11、14〜20、22〜24、比較例1〜6、参考例1〜4]
表1〜3記載の組成について、表中に示す諸条件に設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用い、ポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、難燃剤(D)、滴下抑制剤(F)、その他の添加剤(G)を主フィーダーに供給後、炭素繊維(C)、充填材(E)をサイドフィーダーを用いて溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、炭素繊維強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物ペレットを得た。
前記で得られた炭素繊維強化樹脂組成物ペレットを100℃で一昼夜熱風乾燥し、表中の条件で射出成形機(住友重機械社製SG75H−MIV)を使用し、射出速度100mm/sec、射出圧を下限圧(最低充填圧力)+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。評価結果を表1〜3に示す。
[重量繊維長]:曲げ試験片をギ酸にて溶かした後、濾過・洗浄を行い、その残渣を光学顕微鏡にて50〜100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1000本の長さを測定し、その測定値(mm)(小数点2桁が有効数字)を用いて以下の式に基づき計算した。
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li2×ni)/Σ(Li×ni)
Li:繊維状充填材の繊維長
ni:繊維長Liの繊維状充填材の本数
[耐衝撃性]:ISO179に従い23℃でシャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)を評価した。
[曲げ強度、曲げ弾性率]ISO178に従い23℃で曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。
[成形収縮率]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mm厚の角板を使用し、ノギスを用いて流動方向(MD方向)と流動に対して垂直方向(TD方向)の長さを各々測定し、収縮率を算出した。
[表面粗さ]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ8mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面の算術平均粗さ(Ra)値を評価した。
[表面うねり]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値を評価した。
[難燃性]:UL94に従い1/16インチ(約1.6mm)、1/32インチ(約0.8mm)厚みでの垂直燃焼試験を評価した。
[熱伝導性]:12.8mm幅×6.4mm厚み×30mm高さの試験片を作製し、表面温度70℃のホットプレートに試験片を立て、5分後の成形品上部の表面温度を測定した。表面温度が高いほど熱伝導性に優れるといえ、難燃化が難しくなることを意味する。
実施例1〜9、11、14〜20、22〜24、比較例1〜6より、ポリカーボネート樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、炭素繊維(C)に難燃剤(D)を配合することで、優れた機械的特性を低下させることなく、高度な難燃性を発現することがわかる。さらに成形収縮率と外観特性の指標である表面粗さ、表面うねりが抑制でき、金属並の機械的特性と外観・意匠性を両立する樹脂組成物を得ることができる。中でも実施例11から、熱伝導性が比較例5、6にしめすガラス繊維強化系と比べ高くなる高炭素繊維含有領域においても優れた難燃性を発現可能となった。