JP6070080B2 - Cu−Zn−Si系合金の連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
そこで、Pbの含有量を大幅に低減しても優れた被削性を有する銅合金として、例えば特許文献1に示すCu−Zn−Si系合金が提供されている。このCu−Zn−Si系合金は、Pbを含有していないことから、例えば、飲料水等と接触する上水道用配管の水栓金具、給排水金具、バルブ、水道メータ金具等の各種部品に用いられている。
そこで、銅合金の棒材を低コストで効率良く製造する方法として、例えば特許文献2に開示されているように、銅合金の溶湯が貯留された鋳造炉に鋳型を設置し、棒状または管状の鋳塊を連続的に鋳造するニアネットシェイプ連続鋳造法が提供されている。なお、上述の鋳型においては、通常、固体潤滑性を有する黒鉛製のモールドが用いられている。
また、上述のCu−Zn−Si系合金に含有されているSiは黒鉛と反応しやすい元素であることから、溶湯中のSiとモールドの黒鉛とが反応することで鋳塊の表面が荒れてしまい、オシレーションマーク深さが深くなるといった問題があった。
そして、1回の前記間欠引き抜きサイクルにおける前記鋳塊の引き抜き方向の移動距離が7mm以上とされているので、溶湯がモールド内に一定の流速で流れ込むことになる。
また、1回の前記間欠引き抜きサイクルにおける前記停止動作の時間TSが3秒以上とされているので、モールド内に流れ込んだ溶湯が急冷されて十分な厚さの凝固シェルが形成されることになる。よって、引き抜き時における凝固シェルの破断を抑制でき、オシレーションマーク深さを低減することが可能となる。
また、1回の間欠引き抜きサイクルにおける前記停止動作の時間TSが3秒未満の場合には、溶湯の冷却・凝固が不十分となり、十分な厚さの凝固シェルを形成することができなくなる。
以上のことから、本発明では、1回の前記間欠引き抜きサイクルにおける前記鋳塊の引き抜き方向の移動距離を7mm以上、かつ、1回の前記間欠引き抜きサイクルにおける前記停止動作の時間TSを3秒以上に設定している。
この場合、前記引き抜き動作の時間TDと前記停止動作の時間TSとの比TD/TSが、1/2以下とされているので、前記停止動作の時間TSが十分に確保され、十分な厚さの凝固シェルを形成することが可能となる。また、TD/TSが、1/10以上とされているので、前記停止動作の時間TSが不必要に長くならず、一定の鋳造速度を確保することができ、生産性の向上を図ることができる。
この場合、モールドにおける冷却能力を高くした場合でも、坩堝側の溶湯が温度低下することが抑制されることになり、坩堝及びモールド内において、固相と液相とが混在した固液共存領域が幅広く存在することを抑制でき、高温の溶湯をモールド内で急冷して十分な厚さの凝固シェルを形成することができる。ここで、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、断熱部材の厚さを25mm以上とすることが好ましい。
本実施形態であるCu−Zn−Si系合金の連続鋳造方法は、Cuの含有量が69mass%以上79mass%以下の範囲内とされ、Siの含有量が2.0mass%以上4.0mass%未満の範囲内とされたCu−Zn−Si系合金からなる棒状または管状の鋳塊1を連続的に鋳造するものである。
また、製出される鋳塊1は、断面積が1mm2以上10000mm2以下とされた断面円形の棒状鋳塊1とされている。
この連続鋳造装置10は、鋳造炉20と、鋳造炉20に連結された鋳型30と、鋳型30から製出された鋳塊1を引き抜くピンチロール12と、このピンチロール12の動作を制御する制御部14と、を備えている。
本実施形態では、加熱手段27は、坩堝22の周囲に配設されたカーボンヒータとされており、図示しない電源装置に接続されている。
この坩堝22の下部には、側壁の一部から水平方向に延在した連結部23が設けられており、この連結部23の端面に鋳型30が連結される構成とされている。また、連結部23には、坩堝22内の銅合金溶湯を鋳型30へと供給する溶湯供給路24が設けられている。
本実施形態では、冷却手段32は、モールド31の外周側に配設された水冷ジャケットとされており、冷却水を循環させることでモールド31を冷却する構成とされている。
また、モールド31は、熱伝導率が100W/(m・K)以上の材料で構成されており、本実施形態では、熱伝導率が150W/(m・K)の黒鉛で構成されている。
この鋳型30は、モールド31の内周孔が水平方向を向くようにして、上述の連結部23の端面に連結されている。
断熱部材40は、一般的に市販されているものを用いることができる。本実施形態では、主成分のボロンナイトライド(BN)に酸化アルミニウム(Al2O3)及び/又は酸化ケイ素(SiO2)が添加されており、その熱伝導率が8W/(m・K)、厚さtが25mmとされている。
まず、鋳造炉20の原料投入口21から、坩堝22内に溶解原料を投入する。原料としては、Cu単体、Zn単体およびSi単体やCu−Zn母合金およびCu−Si母合金等を用いることができる。また、ZnおよびSiを含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。また、本合金のリサイクル材およびスクラップ材を用いてもよい。
この銅合金溶湯は、坩堝22内において所定の温度にまで加熱されて保持される。そして、この銅合金溶湯が、連結部23の溶湯供給路24を介して鋳型30へと供給される。
ここで、本実施形態であるCu−Zn−Si系合金の連続鋳造方法においては、鋳塊1の間欠引き抜きパターンに特徴を有している。
ここで、停止動作は、上述のように引き抜き方向Fへの移動速度が0.1×Dmax未満とされた状態を示しており、図2に示すように、引き抜き方向Fとは反対側(鋳造炉20側)に向けて後退させる動作も含むものとする。
また、本実施形態では、間欠引き抜きサイクルにおける引き抜き動作時間TDと停止動作時間TSとの比TD/TSが、1/10≦TD/TS≦1/2の範囲内とされている。
まず、引き抜き動作によって鋳塊1を引き抜き方向Fに大きく移動させることにより、鋳造炉20内の高温の銅合金溶湯がモールド31内に一定以上の流速で流れこむことになる。
その後、停止動作時間TSを一定時間確保することによって、モールド31内の銅合金溶湯を急冷して凝固を十分に進行させる。
モールド内において凝固シェルが十分な厚さで形成された後に、再度、引き抜き動作によって鋳塊1を引き抜き方向Fに大きく移動させる。
このように間欠引き出しパターンを繰り返し行うことにより、棒状の鋳塊1が連続的に製出される。
特に、本実施形態では、鋳型30が水冷ジャケットを有するものとされ、モールド31における冷却能力が高くなっているので、モールド31内の銅合金溶湯を急冷することができ、十分な厚さの凝固シェルを確実に形成することが可能となる。
例えば、上述の実施形態では、鋳塊を水平方向に引き抜く構成として説明したが、これに限定されることはなく、鋳型を坩堝の底面に配置して鋳塊を下方に引き抜く構成としてもよいし、鋳型を坩堝の上部に配置して鋳塊を上方へ引き抜く構成としてもよい。
また、本実施形態では、断熱部材を配設したものとして説明したが、これに限定されることはなく、断熱部材を配設していなくてもよい。
さらに、本実施形態では、冷却ジャケットを備えた鋳型を使用するものとして説明したが、鋳型の構造に限定はなく、例えばモールド内に二重管からなる水冷プローブを挿入した鋳型であってもよい。
溶解原料として、Cu−21mass%Zn−3mass%SiのCu−Zn−Si合金を準備した。この組成の溶解原料を、図1に示す鋳造炉の坩堝内に50kg装入して、カーボンヒータによって溶解した。
鋳型として、表1に示すように、水冷ジャケットを備えたジャケット方式のものと、水冷プローブを挿入したプローブ方式のものを準備した。
また、鋳型のモールドと鋳造炉の坩堝との間に、断熱部材を配設した。断熱部材は、主成分のボロンナイトライド(BN)に酸化アルミニウム(Al2O3)及び/又は酸化ケイ素(SiO2)が添加されており、その熱伝導率が8W/(m・K)、厚さtが25mmのものを用いた。
そして、表1に示す間欠引き抜きパターンによって、断面積706mm2、外径30mmの円管状鋳塊の引き抜きを行い、50kgの鋳造を行った。
また、オシレーションマーク深さが150μm未満の鋳塊の断面観察写真を図3、4に、オシレーションマーク深さが150μm以上500μm未満の鋳塊の断面観察写真を図5に、オシレーションマーク深さが500μm以上の鋳塊の断面観察写真を図6に示す。
また、1サイクル当りの移動距離及び停止動作時間がいずれも本発明の範囲より短い比較例2でも、オシレーションマーク深さが500μm以上と深かった。
以上、本発明によれば、オシレーションマーク深さを十分に低減でき、表面品質に優れた鋳塊を製造することが可能であることが確認された。
10 連続鋳造装置
20 鋳造炉
21 坩堝
30 鋳型
31 モールド
Claims (3)
- Cuの含有量が69mass%以上79mass%以下の範囲内とされ、Siの含有量が2.0mass%以上4.0mass%未満の範囲内とされたCu−Zn−Si系合金からなる断面積10000mm2以下の棒状または管状の鋳塊を間欠的に引き出して連続鋳造するCu−Zn−Si系合金の連続鋳造方法であって、
前記Cu−Zn−Si系合金の溶湯が貯留される鋳造炉と、この鋳造炉に連結されたモールドと、を有する連続鋳造機を用いて、
前記モールド内で凝固した前記鋳塊を引き抜き方向に移動させる際の最高移動速度Dmaxに対して、引き抜き方向への移動速度が0.1×Dmax以上とされた引き抜き動作と、引き抜き方向への移動速度が0.1×Dmax未満とされた停止動作とからなる間欠引き抜きサイクルを繰り返し実施する構成とされており、
1回の前記間欠引き抜きサイクルにおける前記鋳塊の引き抜き方向の移動距離が7mm以上とされ、1回の前記間欠引き抜きサイクルにおける前記停止動作の時間TSが3秒以上とされていることを特徴とするCu−Zn−Si系合金の連続鋳造方法。 - 請求項1に記載のCu−Zn−Si系合金の連続鋳造方法において、
前記間欠引き抜きサイクルにおける前記引き抜き動作の時間TDと前記停止動作の時間TSとの比TD/TSが、1/10≦TD/TS≦1/2の範囲内とされていることを特徴とするCu−Zn−Si系合金の連続鋳造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のCu−Zn−Si系合金の連続鋳造方法において、
前記モールドが、断熱部材を介して前記鋳造炉の坩堝に連結された構造とされており、前記坩堝及び前記モールドは、熱伝導率が100W/(m・K)以上の材料で構成され、前記断熱部材は、熱伝導率が50W/(m・K)以下の材料からなり、厚さが10mm以上100mm以下とされていることを特徴とするCu−Zn−Si系合金の連続鋳造方法。
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