図1は、本発明の実施形態の駆動装置を備えた撮像装置1の構成を表すブロック図である。
ズーム駆動鏡筒(レンズ鏡筒)3は、本実施形態の被駆動部に相当し、モータ160により駆動されることで撮像装置1の撮影倍率の変更を行う。撮影レンズ2は、被写体からの光をCCDやCMOSセンサなどの光電変換素子で構成されている撮像素子4に結像させる。制御回路(制御部)5は、撮像装置1の全体制御を司るマイクロコンピュータを含む制御回路であり、撮像素子4において光電変換された信号をデジタル映像信号として出力するとともに後述するモータ160の駆動を制御する。
モータ160は、ズーム駆動鏡筒3を駆動するモータであり、2つのコイルを備える2相のステッピングモータにロータ位置検出センサを配置したものである。モータ160の駆動回路は、フィードバック通電切替ドライバ6、オープンループ通電切替ドライバ7、切替回路8により構成される。
フィードバック通電切替ドライバ6は、2値化回路9で後述する第1及び第2ロータ位置検出センサ171、172の出力する検出信号を2値化して出力された信号(第2の信号)に従ってコイル通電を切り替え、モータ160をフィードバック駆動する。
また、オープンループ通電切替ドライバ7は、入力されたコイルへの駆動信号(第1の信号)に従ってコイル通電を切り替え、モータ160をオープンループ駆動する。
切替回路8は、モータ160を駆動する際に、制御回路5からの出力によりフィードバック通電切替ドライバ6とオープンループ通電切替ドライバ7のどちらで駆動するかを切り替える。2つの駆動ドライバと切替回路については後述する。
メインスイッチ10は、撮像装置1の電源起動を選択する。WIDEスイッチ11、TELEスイッチ12は、撮影倍率を撮影者が任意に変更するための倍率変更操作部材である。WIDEスイッチ11は撮影倍率を広角側に変更し、TELEスイッチ12は撮影倍率を望遠側に変更する。
図2は、本発明の実施形態の一例であるモータ160の外観図である。
モータ160は、マグネット161を有するロータ(ロータマグネット)162、第1コイル163、第2コイル164、第1ヨーク165、第2ヨーク166、第1及び第2のロータ位置検出センサ(検出器)171、172によって構成される。これらの部材のうち、第1及び第2コイル163、164、第1及び第2ヨーク165、166、第1及び第2ロータ位置検出センサ171、172でステータを構成している。マグネット161は、外周が多極着磁された円筒形状の永久磁石であり、角度位置に対し、径方向の磁力の強さが正弦波状に変化する着磁パターンを有する。ロータ162は、ステータに対して回転可能に支持され、マグネット161と一体に固定されている。第1及び第2ロータ位置検出センサ171、172はマグネット161の磁束を検出し、電気角で90°ずつ位相のずれた信号を出力するホールセンサである。ここで、マグネット161の極数をnとすると、電気角360°は実際のロータ角度の720/n°に相当する。
(オープンループ駆動)
次に、モータ160のオープンループ駆動モードであるオープンループ駆動について説明する。
制御回路5からの出力により切替回路8がオープンループ駆動を選択すると、制御回路5はオープンループ通電切替ドライバ7に駆動パルス数と回転方向を出力する。オープンループ通電切替ドライバ7は、入力された駆動パルス数と回転方向にしたがって、予め設定される時間間隔の駆動パルスにより第1及び第2コイル163、164の通電パターンを順次切り替える。オープンループ駆動では、オープンループ通電切替ドライバ7が出力する駆動パルスの時間間隔を変更することによって、ロータ162の回転速度を変更することが可能である。また、制御回路5から入力する駆動パルス数を変更することによって、ロータ162の回転量を制御することが可能である。
オープンループ駆動の際に、駆動パルスの時間間隔を短くしていくと、第1及び第2コイル163、164の通電パターンの切り替えに対してロータ162が応答できなくなり、脱調を起こす可能性がある。このため、オープンループ駆動における高速駆動は、第1及び第2コイル163、164の通電パターンの切り替えに対してロータ162が応答できる範囲内となる。
(フィードバック駆動)
次に、モータ160の第2の駆動モードであるフィードバック駆動について説明する。
制御回路5からの出力によりが切替回路8がフィードバック駆動を選択すると、制御回路5はフィードバック通電切替ドライバ6に駆動パルス数と回転方向を出力する。フィードバック通電切替ドライバ6は、入力された駆動パルス数と回転方向にしたがって、所定の時間間隔の駆動パルスにより第1及び第2コイル163、164の通電パターンを順次切り替える。フィードバック通電切替ドライバ6から出力される駆動パルスの時間間隔は、第1及び第2ロータ位置検出センサ171、172の出力によって変化する。また、フィードバック通電切替ドライバ6は、制御回路5から入力された駆動パルス数だけ駆動パルスを出力するので、ロータ162の回転量を制御することが可能である。フィードバック通電切替ドライバ6は進角回路を含んでおり、第1及び第2ロータ位置検出センサ171、172の出力から進角信号を生成する。フィードバック通電切替ドライバ6は進角量を制御することで、ロータ162のトルク−回転数特性を変化させることが可能となる。進角制御については後述する。
フィードバック駆動では、第1及び第2ロータ位置検出センサ171、172の出力により変化する時間間隔で第1及び第2コイル163、164の通電パターンを切り替える。ロータ162の位置に応じて、第1及び第2コイル163、164の通電パターンの切り替えを行うため、ロータ162の応答遅れによる脱調の発生を低減でき、オープンループ駆動よりも高速駆動が可能になる。
(位置センサ位相)
次に、モータ160におけるヨークと位置センサの位相関係について説明する。
図3はモータ160のヨークと位置センサとロータの位相関係を示す軸方向断面図である。図中で時計回りを正の方向とする。第1ヨーク165は、第1コイル163に励磁される4つの磁極歯165a〜165dを有している。磁極歯165a〜165dはマグネット161の外周面に所定の隙間を持って対向している。第2ヨーク166は、第2コイル164に励磁される4つの磁極歯166a〜166dを有している。磁極歯166a〜166dはマグネット161の外周面に所定の隙間を持って対向している。本実施形態では、マグネットの極数は8極、着磁角Pは45°である。また、第1ヨーク165を基準とすると、第2ヨーク166の位相P/2は−22.5°、第1ロータ位置検出センサ171の位相β1は+22.5°、第2ロータ位置検出センサ172の位相β2は−45°である。
以下の説明では、電気角を用いてモータ160の動作を説明する。電気角とは、マグネット磁力の1周期を360°として表したものであり、ロータの極数をM、実際の角度をθ0とすると、電気角θは以下の式で表せる。
θ=θ0×M/2 (式1−1)
第1ヨーク165と第2ヨーク166との位相差、第1ロータ位置検出センサ171と第2ロータ位置検出センサ172との位相差、第1ヨーク165と第1ロータ位置検出センサ171との位相差は全て電気角で90°である。なお、図3において、第1ヨーク165の磁極歯の中心とマグネット161のN極中心が対向している。この状態をロータの初期状態とし、電気角0°とする。
(ロータ位置とモータトルクの関係、ロータ位置とセンサ出力の関係)
ここで、モータ160におけるロータ位置とモータトルクとの関係、ロータ位置とセンサ出力との関係について説明する。
図4は、実施例1のモータ160のロータ162の回転位置とモータトルクとの関係及びロータ162の回転位置と位置検出センサとの出力の関係を示す図である。
図4(a)は、ロータ162の回転角度とモータトルクとの関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸はモータトルクを示す。モータトルクは、ロータを時計回りに回転させるトルクを正とする。
第1コイル163に正方向の電流を流すと、第1ヨーク165がN極に磁化し、マグネット161の磁極との間に電磁気力が発生する。また、第2コイル164に正方向の電流を流すと、第2ヨーク166がN極に磁化し、マグネット161の磁極との間に電磁気力が発生する。2つの電磁気力を合成すると、ロータ162の回転に伴って概略正弦波状のトルクが得られる(トルク曲線A+B+)。他の通電状態においても、同様に、概略正弦波状のトルクが得られる(トルク曲線A+B−、A−B−、A−B+)。また、第1ヨーク165は第2ヨーク166に対して電気角で90°の位相をもって配置されるため、4つのトルクは互いに電気角で90°の位相差を持っている。
図4(b)は、ロータ162の回転角度と各信号との出力との関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸は各信号の出力を示す。
マグネット161の径方向磁力の強さは、電気角に対しておおよそ正弦波状になるように着磁している。そのため、第1ロータ位置検出センサ171からは概略正弦波状の信号が得られる(センサ信号A)。なお、本実施形態では、第1ロータ位置検出センサ171は、マグネット161のN極と対向するときに正の値を出力する。
また、第2ロータ位置検出センサ172は第1ロータ位置検出センサ171に対して電気角で90°の位相をもって配置されるため、第2ロータ位置検出センサ172からは余弦波状の信号が得られる(センサ信号B)。なお、本実施形態では、第2ロータ位置検出センサ172は、第1ロータ位置検出センサ171に対して極性を反転してあるため、マグネット161のS極と対向するときに正の値を出力する。
(フィードバック駆動の進角演算と回路構成)
フィードバック通電切替ドライバ6に含まれる進角回路は、2値化回路9にて処理された第1及び第2ロータ位置検出センサ171、172の出力をもとに所定の演算を行う。そして、進角回路によって第1の進角信号と第2の進角信号を出力する。以下、進角信号の演算方法について述べる。
電気角θ、第1ロータ位置検出センサ171の出力をHE1、第2ロータ位置検出センサ172の出力をHE2とすると、各信号は次のように表される。
HE1=sinθ、HE2=cosθ (式2−1)
また、HE1を進角αだけ進めた第1の進角信号をPS1、HE2を進角αだけ進めた第2の進角信号をPS2とすると、HE1,HE2,αを用いて、次のように演算することが可能である。
PS1=sin(θ+α)=HE1×cosα+HE2×sinα (式3−1)
PS2=cos(θ+α)=HE2×cosα−HE1×sinα (式3−2)
本実施例では、この演算式をもとに進角回路を構成する。
図5は、進角回路の構成を示す回路図である。本実施形態における進角回路を、図5に示すようなアナログ回路で構成することで上記の演算が実現可能である。まず、各位置センサ出力を所定の増幅率Aだけ増幅した信号と、さらにそれらを反転させた信号を生成する。それらに適切な抵抗値R1、R2をかけて加算することによって進角信号を生成すると、第1の進角信号PS1、第2の進角信号PS2は次のように表される。
PS1=A×(R/R1)×sinθ+A×(R/R2)cosθ (式4−1)
PS2=A×(R/R1)×cosθ−A×(R/R2)sinθ (式4−2)
回路中の可変抵抗R、R1、R2を次のように選ぶことで、任意の進角αだけ進めた進角信号を生成することができる。
R/R1=cosα,R/R2=sinα (式5−1)
さらに、第1の進角信号PS1、第2の進角信号PS2に対してコンパレータを用いて2値化した2値化信号を出力する。
以上に説明した進角信号の生成方法は、本発明を実現するための一例であり、この方法のみに限定されない。上記の演算を行うデジタル回路によって進角信号を生成してもよいし、高分解能のエンコーダを用いて通電を切り替えるパルス間隔を調整することで進角信号を生成してもよい。これら周知の方法を用いても上記進角信号の生成方法と同様の効果が得られる。
(フィードバック駆動の通電切り替え)
ここで、フィードバック駆動における通電切り替えについて説明する。まず、進角回路から出力される進角信号が有する進角がゼロの場合についてフィードバック駆動の動作を説明する。
図4(b)において、センサ信号A、Bは、前述したようにそれぞれ第1及び第2のロータ位置検出センサ171、172の出力である。2値化信号A、Bは、センサ信号A、Bに対し、コンパレータを用いて2値化を行った信号である。
フィードバック駆動では、2値化信号Aをもとに第1コイル163の通電を切り替え、2値化信号Bをもとに第2コイル164の通電を切り替える。すなわち、2値化信号Aが正の値を示すとき第1コイル163に正方向の電流を流し、負の値を示すとき第1コイル163に逆方向の電流を流す。また、2値化信号Bが正の値を示すとき第2コイル164に正方向の電流を流し、負の値を示すとき第2コイル164に逆方向の電流を流す。
図6は、本実施形態のモータ160のフィードバック駆動の動作を示す軸方向断面図である。
図6(a)は、ロータ162が電気角で135°回転した状態を示している。このとき、センサ信号A、Bは図4(b)の(A)で示した値を示しており、2値化信号A、Bはそれぞれ正、負の値を示している。したがって、第1コイル163には正方向の電流が流れて第1ヨーク165はN極に磁化し、第2コイル164には逆方向の電流が流れて第2ヨーク166はS極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A+B−に対応する時計回りのトルクが働き、ロータ162はθ方向の回転力を受けて回転する。
図6(b)は、ロータ162が電気角で180°回転した状態を示している。第1ロータ位置検出センサ171は、マグネット161のN極とS極の境界に位置する。そのため、電気角180°を境に2値化信号Aは正の値から負の値に切り替わり、第1コイル163の通電方向が正方向から逆方向へ切り替わる。この電気角は、トルク曲線A+B−とトルク曲線A−B−との交点の電気角と一致する。
図6(b’)は、ロータ162が電気角で180°回転し、第1コイル163の通電方向が切り替わった状態を示している。第1及び第2コイル163、164には、ともに逆方向の電流が流れて第1及び第2ヨーク165、166はS極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A−B−に対応する時計回りのトルクが働き、ロータ162はθ方向の回転力を受けて回転する。
図6(c)は、ロータ162が電気角で225°回転した状態を示している。各進角信号は図4(b)の(C)で示した値を示しており、2値化信号A、Bはともに負の値を示している。したがって、第1コイル163には逆方向の電流が流れて第1ヨーク165はS極に磁化し、第2コイル164には逆方向の電流が流れて第2ヨーク206はS極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A−B−に対応する時計回りのトルクが働き、ロータ162はθ方向の回転力を受けて回転する。
図6(d)は、ロータ162が電気角で270°回転した状態を示している。第2ロータ位置検出センサ172はマグネット161のN極とS極の境界に位置する。そのため、電気角270°を境に2値化信号Bは負の値から正の値に切り替わり、第2コイル164の通電方向が逆方向から正方向へ切り替わる。この電気角は、トルク曲線A−B−とトルク曲線A−B+との交点の電気角と一致する。
図6(d’)は、ロータが電気角で270°回転し、第2コイル164の通電方向が切り替わった状態を示している。第1コイル163には逆方向の電流が流れて第1ヨーク165はS極に磁化し、第2コイル164には正方向の電流が流れて第2ヨーク166はN極に磁化する。このとき、図4(a)のトルク曲線A−B+に対応する時計回りのトルクが働き、ロータ162はθ方向の回転力を受けて回転する。
以上の動作を繰り返すことで、ロータ162を連続的に回転させることが可能となる。また、2値化信号A、Bの正負を反転させれば、逆回転も可能である。
(フィードバック駆動の進角制御)
次に、進角回路から出力される進角信号が所定の進角αを有する場合についてフィードバック駆動の動作を説明する。
図7は、進角回路から出力される進角信号が所定の進角αを有する場合のロータの回転角度とモータトルクおよび各信号の出力との関係を示す図である。
図7(a)は、図4(a)と同様に、ロータ162の回転角度とモータトルクとの関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸はモータトルクを示す。モータトルクは、ロータを時計回りに回転させるトルクを正とする。
図7(b)は、ロータの回転角度と各信号の出力との関係を示すグラフであり、横軸は電気角を、縦軸は各信号の出力を示す。図7(b)において、センサ信号A、Bに対して進角信号A、Bがそれぞれ所定の進角αだけ進んでいる。また、進角信号をもとに生成された2値化信号A、Bもそれぞれセンサ信号A、Bに対して進角αだけ進んでいる。フィードバック駆動では、2値化信号Aをもとに第1コイル163の通電を切り替え、2値化信号Bをもとに第2コイル164の通電を切り替えるため、コイルの通電切り替えタイミングは進角がゼロの時に比べて進角αだけ早いことになる。
図8は、進角を変えたときのトルクと回転数の関係を示す図である。横軸はモータのトルクを、縦軸はモータの回転数を示す。
グラフから、進角αによってトルクと回転数の関係が変化する性質がわかる。この性質を用いて、フィードバック駆動では駆動条件によって進角αを変える進角制御を行っている。一定の負荷条件下でFB駆動を行う場合、進角αを制御することで駆動速度を制御することも可能である。
次に、本実施形態のモータ160の動作を図9のフローチャートにしたがって説明する。
図9において、まず、ステップ(以下、ステップの表記は省略する)S201でモータ160の電源起動を行うメインスイッチ10の待機状態となり、メインスイッチ10がONされたならS202へと進む。
S202では、モータ160によりズーム駆動鏡筒3を撮像装置1の本体内部への収納位置(沈胴位置)から撮影可能位置(撮影スタンバイ位置)まで駆動させる。このとき、目標位置が決まっているので、モータ160は図15で示した駆動方式で駆動させる。S203では、ズーム操作スイッチであるWIDEスイッチ11あるいはTELEスイッチ12の待機状態となる。WIDEスイッチ11がONされたならS206へと進み、TELEスイッチ12がONされたならS208へと進む。ズーム操作スイッチがOFFの場合は、S204へと進む。
S204では、ズーム操作スイッチがOFFの間にメインスイッチ10の状態を判別し、メインスイッチ10がOFFされたならS205へと進む。S205では、モータ160によりズーム駆動鏡筒3を撮影可能位置から収納位置まで駆動させて終了させる。このとき、目標位置が決まっているので、モータ160は図15で示した駆動方式で駆動させる。
S206ではモータ160がズーム駆動鏡筒3をWIDE側へ駆動させ、S207においてWIDEスイッチ11の状態を判別する。WIDEスイッチ11がONの状態のときはモータ160の駆動を継続し、WIDEスイッチ11がOFFの状態のときはS210へと進む。
S208ではモータ160がズーム駆動鏡筒3をTELE側へ駆動させ、S209においてTELEスイッチ12の状態を判別する。TELEスイッチ12がONの状態のときはモータ160の駆動を継続し、TELEスイッチ12がOFFの状態のときはS210へと進む。
S210は、ズーム操作スイッチが操作停止された状態であり、モータ160の現在の駆動モード(駆動状態)を判別する。判別方法としては、モータ160の駆動時からズーム操作スイッチの操作停止時までのモータ160に対する出力ステップ数が所定のステップ数以上であるかどうかで判断する。具体的には、出力ステップ数が所定のステップ数以上である場合、フィードバック駆動していると判断し、所定のステップ数未満である場合、オープンループ駆動していると判断する。そして、モータ160がフィードバック駆動モードのときはS211へと進み、オープンループ駆動モードのときはS212へと進む。
S211では、オープンループ駆動モードを用いずに進角の変更やコイルの通電量の変更といったフィードバック駆動のみでモータ160を減速した後(第1減速モード)、S213へと進む。
S212では、オープンループ駆動のみでモータ160を減速した後(第2減速モード)、S213へと進む。
S213では、モータ160の駆動を停止した後、再びS203へと戻りズーム操作スイッチの待機状態となる。
図10は、本実施形態のモータ160の動作を説明する図である。
図10(a)〜(d)は、例えばWIDEスイッチ11あるいはTELEスイッチ12といったズーム操作スイッチの操作に応じたズーム駆動鏡筒3の駆動により撮影可能範囲内で任意の撮影倍率に変更駆動する場合のモータ160の動作を示している。各図の縦軸はモータ160駆動時のロータ162の回転速度、横軸は駆動ステップを表す。図10(a)〜(c)のモータ160の停止動作は図9のS210→S211→S213に示す第1減速モードであり、図10(d)のモータ160の停止動作は図9のS210→S212→S213に示す第2減速モードである。
図10(a)において、モータ160は、起動時(X1)、オープンループ駆動モードにて起動及び加速する。その後、フィードバック駆動モードに切り替えて(X2)進角を変更しながら更なる加速駆動を行う。所定の速度に達した時点(X3)で、進角を固定し一定速度(所定の速度)駆動を行う。この一定速度駆動中に倍率変更操作部材の操作が終了すると(X4)、モータ160への駆動電圧の印加時間の比率を制御するDUTY制御により減速した後(X5)、所定ステップ数だけ進角を遅らせる進角制御でさらに減速駆動を行って停止する(X6)。したがって、ズーム操作スイッチの操作中は高速・高効率で駆動することができ、ズーム操作スイッチの操作が終了した時には素早く停止できる。
図10(b)において、モータ160は、起動時(Y1)、オープンループ駆動モードにて起動及び加速する。その後、フィードバック駆動モードに切り替えて(Y2)進角を変更しながら更なる加速駆動を行う。この加速駆動中に一定速度未満でズーム操作スイッチの操作が終了すると(Y3)、ただちに進角加速を中止してモータ160への駆動電圧をDUTY制御により下げることで減速する(Y4)。そして、進角制御でさらに減速駆動を行って停止する(Y5)。図10(b)では、ズーム操作スイッチの操作停止時のロータ162の回転速度は図10(a)のX4のときのように一定速度にまで達していないので、急な減速による脱調の可能性が低い。そのため、図10(a)のときに比べ、モータ160のDUTY制御による減速時間を短くし、素早く進角制御による減速に移行することができる。
図10(c)において、モータ160は、起動時(Z1)、オープンループ駆動モードにて起動及び加速する。その後、フィードバック駆動モードに切り替えて(Z2)進角を変更しながら更なる加速駆動を行う。この加速駆動中にズーム操作スイッチの操作が終了すると(Z3)、直ちに進角加速を中止して所定ステップ数だけ進角を遅らせることでさらに減速駆動を行って停止する(Z4)。すなわち、停止時には図10(a)、(b)のときと同様に第1減速モードにて減速し停止する。しかし、図10(c)のズーム操作スイッチの操作停止時のロータ162の回転速度は、図10(b)のY3におけるロータ162の回転速度に比べ遅く、図10(b)のとき以上に急な減速による脱調の可能性が低い。そのため、図10(a)、(b)のようにDuty制御による減速をすることなく、進角の制御のみで減速することができる。
図10(d)において、モータ160は、起動(W1)からオープンループ駆動モードにて起動及び加速駆動を行う。その後、オープンループ駆動モードでの加速中にズーム操作スイッチの操作が終了すると(W2)、直ちに加速を中止してオープンループ駆動モードのまま減速駆動を行って目標位置(W3)に停止する。すなわち、停止時には第2減速モードにて減速し停止する。
以上のように、本実施形態の撮像装置1は、ズーム操作スイッチの操作に合わせて撮影可能範囲内で任意の撮影倍率に変更駆動する場合の停止タイムラグを少なくすることが可能となる。
図11は、実施例2の駆動装置を備えた撮像装置21の構成を表すブロック図である。実施例1と同一のものには同一符号を付して説明を省略する。
フォーカスレンズ23は、本実施形態の被駆動部に相当し、不図示のレンズホルダーとともにモータ160によって光軸方向に駆動されることで撮像装置21の焦点調節の変更を行う。
制御回路(制御部)25は、撮像装置21の全体制御を司るマイクロコンピュータを含む制御回路であり、撮像素子4において光電変換によって得られた出力信号を増幅しデジタル映像信号として出力するとともにモータ160の駆動を制御する。
測距回路26は、不図示の測距装置(AFセンサ)から出力された被写体からの検出信号をもとに算出されるデフォーカス量を制御回路25に出力する。制御回路25は、デフォーカス量とフォーカスレンズ23の敏感度からフォーカスレンズ23の駆動目標値を求める。さらに、フォーカスレンズ23の駆動目標値に対応したモータ160の駆動量を求め、駆動目標信号(モータ駆動ステップ数)を出力する。
SW1スイッチ27及びSW2スイッチ28は、不図示のレリーズボタンの半押しにより作動する。無限方向スイッチ29及び至近方向スイッチ30は、フォーカスレンズ23の駆動によって焦点位置を撮影者が任意に変更するための焦点位置操作部材である。無限方向スイッチ29はフォーカスレンズ23の焦点位置を無限側に変更し、至近方向スイッチ30はフォーカスレンズ23の焦点位置を至近側に変更する。フォーカス切替スイッチ31は、測距回路26の出力に応じて焦点位置を自動で合わせるオートフォーカスと、撮影者が焦点位置操作部材を操作することで焦点位置を任意に変更可能なマニュアルフォーカスとを選択することができる。
次に、本実施形態のモータ160の動作を図12のフローチャートにしたがって説明する。
図12において、不図示のメインスイッチがONすると、ステップ(以下、ステップの表記は省略する)S301でフォーカス切替スイッチ31の状態を判別する。フォーカス切替スイッチ31がオートフォーカスの場合はS302へと進み、マニュアルフォーカスの場合はS307へと進む。
S302では、SW1スイッチ27の待機状態となり、SW1スイッチ27がONするS303へと進む。ここで、SW1スイッチ27がONされるまではS301からの動作を繰り返す。S303では、測距回路26により被写体の距離を測定し、この測距値に対応するモータ160の駆動量を求める。S304では、S303で求めた駆動量だけモータ160を駆動させてフォーカスレンズ23を駆動し被写体に合焦する。このとき、目標位置が決まっているので、モータ160は図15で示した駆動方式で駆動される。S305では、SW2スイッチ28の待機状態となり、SW2スイッチ28がONするとS306へと進む。S306では、不図示の絞りやシャッタを駆動して撮像素子4への露光動作を行って終了する。
S307では、SW1スイッチ27の待機状態となり、SW1スイッチ27がONするとS305へと進み、SW1スイッチ27がOFFの場合はS308へと進む。
S308では、焦点位置操作部材である無限方向スイッチ29あるいは至近方向スイッチ30の待機状態となる。無限方向スイッチ29がONするとS309へと進み、至近方向スイッチ30がONするとS311へと進む。
S309ではモータ160がフォーカスレンズ23を無限方向に駆動させ、S310では無限方向スイッチ29の状態を判別する。無限方向スイッチ29がONの状態のときはモータ160の駆動を継続し、無限方向スイッチ29がOFFの状態のときはS313へと進む。
S311ではモータ160がフォーカスレンズ23を至近方向に駆動させ、S312では至近方向スイッチ30の状態を判別する。至近方向スイッチ30がONの状態のときはモータ160の駆動を継続し、至近方向スイッチ30がOFFの状態のときはS313へと進む。
S313では、焦点位置操作部材が操作停止された状態であり、モータ160の現在の駆動モードを判別する。判別方法としては、モータ160の駆動時から焦点位置操作部材の操作停止時までのモータ160に対する出力ステップ数が所定のステップ数以上であるかどうかで判断する。具体的には、出力ステップ数が所定のステップ数以上である場合、フィードバック駆動していると判断し、所定のステップ数未満である場合、オープンループ駆動していると判断する。そして、モータ160がフィードバック駆動モードのときはS314へと進み、オープンループ駆動モードのときはS315へと進む。
S314では、第1減速モードでモータ160を減速した後、S316へと進む。
S315では、第2減速モードでモータ160を減速した後、S316へと進む。
S316では、モータ160の駆動を停止した後、再びS301へと戻り上記動作を繰り返す。
図10において示すモータ160の動作は、フォーカスレンズ23の焦点位置を撮影者が任意に変更する場合、すなわちマニュアルフォーカスの場合に適用される。実施例1における倍率変更操作部材は、本実施例では焦点位置操作部材(無限方向スイッチ29及び至近方向スイッチ30)に相当する。図10(a)〜(c)のモータ160の停止動作は図12のS313→S314→S316のときに適用され、図10(d)のモータ160の停止動作は図12のS313→S315→S316のときに適用される。
以上のように、本実施例の撮像装置21は、焦点位置操作部材の操作に合わせてフォーカスレンズ23を駆動する場合は停止タイムラグを少なくすることが可能となる。
図13は、実施例3の駆動装置を備えた撮像装置32の構成を表すブロック図である。
撮像装置32は、後述するパンニング機構35及びチルト機構36を備えているため、それぞれの機構を駆動させるためにモータ160a、160bを備えている。また、モータ160aのロータ位置を検出する第1ロータ位置検出センサ171a及び第2ロータ位置検出センサ172a、モータ160bのロータ位置を検出する第1ロータ位置検出センサ171b及び第2ロータ位置検出センサ172aを備えている。
パンニング機構35は、モータ160aによって撮影レンズ33の光軸方向を撮像素子4とともに左右方向に変更可能とする。すなわち、モータ160aによってパンニング動作が可能となる。
チルト機構36は、モータ160bによって撮影レンズ33の光軸方向を撮像素子4とともに上下方向に変更可能とする。すなわち、モータ160bによってチルト動作が可能となる。
したがって、パンニング機構35及びチルト機構36によりパンチルト機構を構成し、本実施形態の被駆動部に相当する。
制御回路37は、撮像装置32の全体の制御を司るマイクロコンピュータを含む制御回路であり、制御回路37は、撮像素子4において光電変換によって得られた出力信号を増幅し、デジタル映像信号として出力する。
追尾回路38は、撮影レンズ33の画角内、すなわち撮像素子4の撮影画面内の主被写体の状態を検出し、撮影画面内に人がいるかどうかを判別する。人がいる場合は、撮影画面内の位置を求めて、撮影画面中央までの距離を算出し、算出結果からモータ160aとモータ160bの駆動目標値を求め、駆動目標信号(モータ駆動ステップ数)を出力する。
追尾モード切替スイッチ39は、追尾モードのON、OFFを任意に選択可能である。追尾モード切替スイッチ39がONの時は、追尾回路38により自動的に撮影画面内の主被写体の状態を検出する。そして、撮影画面内に人がいる場合は常に撮影画面の中央に来るように、モータ160a、160bの駆動目標値を出力し、駆動目標値に応じてパンニング機構35やチルト機構36が駆動される。
左方向スイッチ40、右方向スイッチ41は撮影者が撮影レンズ33の光軸方向を左右方向に任意に変更するためのパンニングスイッチである。左方向スイッチ40は撮影レンズ33の光軸方向を左方向に変更し、右方向スイッチ41は撮影レンズ33の光軸方向を右方向に変更する。左方向スイッチ40又は右方向スイッチ41を操作するとモータ160aによってパンニング機構35が駆動され、撮影レンズ33のパンニング動作が行われる。
上方向スイッチ42、下方向スイッチ43は撮影者が撮影レンズ33の光軸方向を上下方向に任意に変更するためのチルトスイッチである。上方向スイッチ42は撮影レンズ33の光軸方向を上方向に変更し、下方向スイッチ43は撮影レンズ33の光軸方向を下方向に変更する。上方向スイッチ42又は下方向スイッチ43を操作するとモータ160bによってチルト機構36が駆動され、撮影レンズ33のチルト動作が行われる。
次に、本実施形態のモータ160a、160bの動作を図14のフローチャートにしたがって説明する。
図14において、不図示のメインスイッチがONすると撮像素子4で被写体の撮像を開始した後、まず、ステップ(以下、ステップの表記は省略する)S401で追尾モード切替スイッチ39の状態を判別する。追尾モード切替スイッチ39がONの場合はS402へと進み、OFFの場合はS406へと進む。
S402では、追尾回路38により撮影レンズ33の画角内、すなわち撮像素子4の撮影画面内の主被写体の状態を検出して撮影画面内に人がいるかどうかを判別する。人がいる場合はS403へと進み、人がいない場合は再びS401へと戻って被写体の撮像を続ける。
S403では、追尾回路38によりS402で検出された人の撮影画面中央までの距離を算出し、算出結果からモータ160aとモータ160bの駆動目標値を求める。S404では、S403で求めた駆動量だけモータ160a及びモータ160bを駆動することで、撮影レンズ33の光軸方向が変更され、撮影画面中央に人が配置される。このとき、目標位置が決まっているので、モータ160a、160bは図15で示した駆動方式で駆動される。S405では、追尾回路38により撮影画面内の人の位置を検出し、画面中央にいない場合はS403へと戻って上記動作を繰り返し、画面中央にいる場合はS401へと戻って被写体の撮像を続ける。
S406では、パンニングスイッチ(左方向スイッチ40、右方向スイッチ41)又はチルトスイッチ(上方向スイッチ42、下方向スイッチ43)の待機状態となる。パンニングスイッチがONするとS407へと進み、チルトスイッチがONするとS409へと進む。
S407では、S406でONされたパンニングスイッチに応じてモータ160aがパンニング機構35を駆動して撮影レンズ33の光軸方向を変更する。S408ではパンニングスイッチの状態を判別し、パンニングスイッチがONの状態のときはモータ160aの駆動を継続し、パンニングスイッチがOFFの状態のときはS411へと進む。
S409では、S406でONされたチルトスイッチに応じてモータ160bがチルト機構36を駆動して撮影レンズ33の光軸方向を変更する。S410ではチルトスイッチの状態を判別し、チルトスイッチがONの状態のときはモータ160bの駆動を継続し、チルトスイッチがOFFの状態のときはS411へと進む。
S411は、パンニングスイッチ又はチルトスイッチが操作停止された状態であり、モータ160a、160bの現在の駆動モードを判別する。判別方法としては、モータ160a、160bの駆動時からパンニングスイッチ又はチルトスイッチの操作停止時までのモータ160に対する出力ステップ数が所定のステップ数以上であるかどうかで判断する。具体的には、出力ステップ数が所定のステップ数以上である場合、フィードバック駆動していると判断し、所定のステップ数未満である場合、オープンループ駆動していると判断する。そして、モータ160a、160bがフィードバック駆動モードのときはS412へと進み、オープンループ駆動モードのときはS413へと進む。
S412では、第1減速モードでモータ160a又は160bを減速した後、S414へと進む。
S413では、第2減速モードでモータ160a又は160bを減速した後、S414へと進む。
S414では、モータ160a又は160bの駆動を停止し、その後、再びS401へと進み、上記動作を繰り返す。
図10において示すモータ160の動作は、パンニングスイッチ又はチルトスイッチの操作に合わせて撮影レンズ33の光軸方向を撮影者が任意に変更する場合のモータ160a又は160bの動作の場合に適用される。実施例1における倍率変更操作部材は、本実施例ではパンニングスイッチ又はチルトスイッチに相当する。図10(a)〜(c)のモータ160の停止動作は図14のS411→S412→S414のときに適用され、図10(d)のモータ160の停止動作は図14のS411→S413→S414のときに適用される。
以上のように、本実施例の撮像装置32は、パンニングスイッチ又はチルトスイッチの操作に合わせて撮影レンズ33の光軸方向を変更駆動する場合は停止タイムラグを少なくすることが可能となる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。