JP6066099B2 - 自動変速機用の動力伝達用クラッチの遠心キャンセル構造 - Google Patents
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Description
このように構成された本発明においては、動力伝達用クラッチの締結時の遠心キャンセル室の容積よりも小さい容積であり、内部に流体媒体が封入された変形自在な密閉型の袋体が、遠心キャンセル室内に設けられているので、オイルポンプの駆動状態や入力軸の回転状態に関わらず、締結油圧室内の作動油による遠心圧を相殺するための流体媒体を遠心キャンセル室内に保持することができる。即ち、オイルポンプを使用することなく作動媒体を遠心キャンセル室内に常に保持することができ、燃費を向上することができる。
このように構成された本発明においては、遠心キャンセル室内に設けられた密閉型の袋体は、リターンスプリングの外周側又は内周側に設けられているので、遠心キャンセル室内において密閉型の袋体とリターンスプリングとが干渉することを防止でき、これにより、リターンスプリングによる動力伝達用クラッチの締結ピストンの作動が密閉型の袋体により妨げられることを防止できる。
このように構成された本発明においては、遠心キャンセル室内に設けられた密閉型の袋体の押圧面の外周端が、入力軸が延びる方向で見て、締結ピストンの受圧面の外周端の位置よりも外周側になるよう設けられているので、密閉型の袋体内の流体媒体に生じる遠心圧を、締結油圧室内の作動油による遠心圧よりも大きいものとすることができ、これにより、動力伝達用クラッチの締結ピストンの作動が密閉型の袋体により妨げられることを防止しつつ、締結油圧室内の作動油に生じる遠心圧を相殺するのに十分な遠心圧を袋体の押圧面から締結ピストンに働かせることができる。
このように構成された本発明においては、密閉型の袋体が設けられる動力伝達用クラッチには、発進時における比較的大きなトルクが入力されない。従って、密閉型の袋体の押圧面の外周端を締結ピストンの受圧面の外周端の位置よりも外周側にするために、締結ピストンを小型化し、それにより動力伝達用クラッチの容量が低下しても、この動力伝達用クラッチの容量を超えるトルクが入力されることを防止できる。
このように構成された本発明においては、密閉型の袋体には、締結油圧室に供給される作動油よりも比重が大きい流体媒体が封入されているので、密閉型の袋体内の流体媒体に生じる遠心圧を、締結油圧室内の作動油による遠心圧よりも大きいものとすることができ、これにより、締結油圧室内の作動油による遠心圧を相殺するのに十分な遠心圧を袋体の押圧面から締結ピストンに働かせることができる。
このように構成された本発明においては、密閉型の袋体は遠心キャンセル室内に設けられ、リターンスプリングは遠心キャンセル室の外部に設けられているので、これらの密閉型の袋体とリターンスプリングとが干渉することを防止でき、これにより、リターンスプリングによる動力伝達用クラッチの締結ピストンの作動が密閉型の袋体により妨げられることを防止できる。
まず、図1及び図2により、本発明の第1実施形態による遠心キャンセル構造を適用した自動変速機の全体構成を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による遠心キャンセル構造を適用した自動変速機の中心軸線を通る水平断面を上方から見たスケルトン図であり、図2は、図1に示した自動変速機の締結表である。
この車両の動力源であるエンジン2の出力軸4には、トルクコンバータ6を介して自動変速機8が接続されている。この自動変速機8の出力側にはカウンタ機構10が接続されており、自動変速機8からカウンタ機構10を介して出力される動力により、デファレンシャル機構12が駆動される。
また、自動変速機8は、エンジン2の出力軸4から自動変速機8の入力軸14に入力された動力を変速機構16に伝達する第1クラッチ18、第2クラッチ20及び第3クラッチ22を備えている。第2クラッチ20は、入力軸14に入力された動力を変速機構16、第1クラッチ18及び第3クラッチ22に伝達する。第1クラッチ18及び第3クラッチ22は、第2クラッチ20から入力された動力を変速機構16に伝達する。また、自動変速機8は、変速機構16に含まれる回転要素の作動を制限する第1ブレーキ24及び第2ブレーキ26を備えている。
さらに、変速機構16と第2クラッチ20との間に、変速機構16からの動力を出力する出力ギヤ28が配置されている。
これらのプラネタリギヤセット36、38、40、42は、入力軸14が延びる方向に沿って、エンジン2に遠い側からエンジン2に向かって、複数段プラネタリギヤセット44、第1プラネタリギヤセット36、第4プラネタリギヤセット42の順に配置され、この第4プラネタリギヤセット42のエンジン2側に隣接して出力ギヤ28が配置されている。
各プラネタリギヤセット36、38、40、42は、それぞれ、外歯車のサンギヤ36a、38a、40a、42aと、このサンギヤ36a、38a、40a、42aに噛み合った複数のプラネタリピニオンと、これらのプラネタリピニオンを支持するキャリヤ36b、38b、40b、42bと、ピニオンに噛み合った内歯車のリングギヤ36c、38c、40c、42cとを備えている。
また、第2プラネタリギヤセット38のリングギヤ38cは、第1クラッチ18の出力軸18aに連結されており、これにより、第1クラッチ18及び第2クラッチ20を介して入力軸14に断接可能に連結されている。
また、第2プラネタリギヤセット38のサンギヤ38a(即ち、第3プラネタリギヤセット40のリングギヤ40c)は、第3クラッチ22の出力軸22aに連結されており、これにより、第3クラッチ22及び第2クラッチ20を介して入力軸14に断接可能に連結されている。
また、第2ブレーキ26は、第1プラネタリギヤセット36のリングギヤ36cの外周部においてケース部32の内周に固定されており、第1プラネタリギヤセット36のリングギヤ36cと連結されて、このリングギヤ36cの作動を制限する。
この第1実施形態による遠心キャンセル構造は、自動変速機8の1速(即ち発進時)において非締結となるように作動される第1クラッチ18及び第3クラッチ22に適用されている。図3乃至図6は、第1実施形態による遠心キャンセル構造が適用された第3クラッチ22を例示しているが、第1クラッチ18も同様の遠心キャンセル構造を有している。具体的には、図3は、入力軸14が停止している場合において開放状態にある第3クラッチ22を示す部分拡大断面図であり、図5は、入力軸14が回転している場合において開放状態にある第3クラッチ22を示す部分拡大断面図であり、図6は、入力軸14が回転している場合において締結状態にある第3クラッチ22を示す部分拡大断面図である。また、図4は、図3、図5、及び図6に示す遠心キャンセル構造の袋体の斜視図である。
クラッチハブ50の外周には、入力軸14の軸線方向に沿って延びるスプライン50aが設けられており、複数の摩擦板52が、このスプライン50aに沿って摺動可能に嵌合されている。また、クラッチドラム48の内周には、入力軸14の軸線方向に沿って延びるスプライン48aが設けられており、複数の摩擦相手板54が、摩擦板52を交互に挟み込むようにスプライン48aに沿って摺動可能に嵌合されている。さらに、入力軸14の延びる方向において一方の端部に位置する摩擦相手板54(図3、図5、及び図6では最も右側の摩擦相手板54)は、クラッチドラム48に固定されたスナップリング48bにより、このスプライン48aに沿った摺動が規制される。
この密閉型の袋体68は、締結ピストン56とシールプレート62によって挟まれており、袋体68と締結ピストン56との接触面が、その締結ピストン56を押圧する押圧面68aとなっている。そして、この押圧面68aの外周端は、入力軸14が延びる方向で見て、締結ピストン56の受圧面56cの外周端とほぼ同じ径方向位置になるように設けられており、且つ、この押圧面68aの内周端は、入力軸14が延びる方向で見て、締結ピストン56の受圧面56cの内周端の径方向位置よりも外周側になるように設けられている。これにより、密閉型の袋体68の押圧面68aの面積は、締結ピストン56の受圧面56cの面積よりも小さくなっている。
まず、入力軸14が停止しており、且つ、第3クラッチ22の締結油圧室58に作動油が供給されていない場合には、図3に示すように、第3クラッチ22の締結ピストン56がリターンスプリング66によって解放方向(図3では左方向)に押圧され、摩擦板52と摩擦相手板54とが非接触の解放状態に維持される。
これにより、第3クラッチ22の締結ピストン56は、図5に示すようにリターンスプリング66によって解放方向(図5では左方向)に確実に押圧され、摩擦板52と摩擦相手板54とが非接触の解放状態に維持される。
まず、第1クラッチ18及び第3クラッチ22の締結時の遠心キャンセル室64の容積よりも小さい容積であり、内部に流体媒体が封入された変形自在な密閉型の袋体68が、遠心キャンセル室64内に設けられているので、オイルポンプの駆動状態や入力軸の回転状態に関わらず、締結油圧室58内の作動油による遠心圧を相殺するための流体媒体を遠心キャンセル室64内に保持することができる。即ち、オイルポンプを使用することなく作動媒体を遠心キャンセル室64内に常に保持することができ、燃費を向上することができる。
まず、入力軸14が停止しており、且つ、第3クラッチ22の締結油圧室58に作動油が供給されていない場合には、図7に示すように、第3クラッチ22の締結ピストン56がリターンスプリング66によって解放方向(図7では左方向)に押圧され、摩擦板52と摩擦相手板54とが非接触の解放状態に維持される。
これにより、第3クラッチ22の締結ピストン56は、図8に示すようにリターンスプリング66によって解放方向(図8では左方向)に確実に押圧され、摩擦板52と摩擦相手板54とが非接触の解放状態に維持される。
まず、入力軸14が停止しており、且つ、第3クラッチ22の締結油圧室58に作動油が供給されていない場合には、図10に示すように、第3クラッチ22の締結ピストン56がリターンスプリング66によって解放方向(図10では左方向)に押圧され、摩擦板52と摩擦相手板54とが非接触の解放状態に維持される。
これにより、第3クラッチ22の締結ピストン56は、図11に示すようにリターンスプリング66によって解放方向(図11では左方向)に確実に押圧され、摩擦板52と摩擦相手板54とが非接触の解放状態に維持される。
また、上述したように、密閉型の袋体68は、その容積が第3クラッチ22の締結時の遠心キャンセル室64の容積よりも小さいように形成されているので、図12に示すように締結ピストン56が締結方向に移動することによって遠心キャンセル室64の容積が減少した場合でも、遠心キャンセル室64内の袋体68により締結ピストン56の移動が妨げられることはない。
この密閉型の袋体68の外周面68cは、締結ピストン56を摩擦板52及び摩擦相手板54から遠ざかる解放方向(図13乃至図15では左方向)に付勢するリターンスプリングとして作用する。
まず、入力軸14が停止しており、且つ、第3クラッチ22の締結油圧室58に作動油が供給されていない場合には、図13に示すように、第3クラッチ22の締結ピストン56が袋体68の外周面68cによって解放方向(図13では左方向)に押圧され、摩擦板52と摩擦相手板54とが非接触の解放状態に維持される。
これにより、第3クラッチ22の締結ピストン56は、図14に示すように袋体68の外周面68cによって解放方向(図14では左方向)に確実に押圧され、摩擦板52と摩擦相手板54とが非接触の解放状態に維持される。
2 エンジン
8 自動変速機
14 入力軸
16 変速機構
18 第1クラッチ
20 第2クラッチ
22 第3クラッチ
46 遠心キャンセル構造
56 締結ピストン
56c 受圧面
58 締結油圧室
64 遠心キャンセル室
66 リターンスプリング
68 密閉型の袋体
68a 押圧面
68b 端面
68c 外周面
68d 内周面
Claims (6)
- 自動変速機用の動力伝達用クラッチの遠心キャンセル構造であって、
動力源で生成された動力が入力される入力軸と、
この入力軸の周りに配置された変速機構と、
この変速機構に動力を伝達する動力伝達用クラッチであって、作動油が供給される締結油圧室と、この作動油による油圧の受圧面を有する締結ピストンと、上記入力軸が延びる方向に沿って、上記締結ピストンに対して上記締結油圧室の反対側に設けられる遠心キャンセル室と、を有する上記動力伝達用クラッチと、
この動力伝達用クラッチの遠心キャンセル室内に設けられ、上記動力伝達用クラッチの締結時の上記遠心キャンセル室の容積よりも小さい容積であり、内部に流体媒体が封入された変形自在な密閉型の袋体と、を有することを特徴とする自動変速機用の動力伝達用クラッチの遠心キャンセル構造。 - さらに、上記動力伝達用クラッチの上記締結ピストンを解放方向に付勢するリターンスプリングを有し、
このリターンスプリングは、上記遠心キャンセル室内に設けられ、
上記遠心キャンセル室内に設けられた密閉型の袋体は、上記リターンスプリングの外周側又は内周側に設けられる請求項1に記載の自動変速機用の動力伝達用クラッチの遠心キャンセル構造。 - 上記遠心キャンセル室内に設けられた密閉型の袋体は、上記リターンスプリングの外周側に設けられ、且つ、上記締結ピストンを押圧する押圧面が形成されるよう設けられ、さらに、この密閉型の袋体の押圧面の外周端が、上記入力軸が延びる方向で見て、上記締結ピストンの受圧面の外周端の位置よりも外周側になるよう設けられる請求項2に記載の自動変速機用の動力伝達用クラッチの遠心キャンセル構造。
- 上記密閉型の袋体が設けられる動力伝達用クラッチは、発進時には非締結となるように作動される請求項3に記載の自動変速機用の動力伝達用クラッチの遠心キャンセル構造。
- 上記密閉型の袋体の内部に密閉される流体媒体は、上記締結油圧室に供給される作動油よりも比重が大きい請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動変速機用の動力伝達用クラッチの遠心キャンセル構造。
- さらに、上記動力伝達用クラッチの上記締結ピストンを解放方向に付勢するリターンスプリングを有し、
このリターンスプリングは、上記遠心キャンセル室の外部に設けられる請求項1に記載の自動変速機用の動力伝達用クラッチの遠心キャンセル構造。
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