JP6063210B2 - ポリウレタン弾性繊維及びその繊維製品 - Google Patents

ポリウレタン弾性繊維及びその繊維製品 Download PDF

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Description

本発明は、紡糸時の糸切れ性が少なく、染色堅牢性、熱セット性および金属摩擦性に優れたポリウレタン弾性繊維に関する。
ポリウレタン弾性繊維は、伸縮性に富み、その優れた物理特性および化学特性のため、ファンデーション類、肌着、ボディスーツ、レッグ、パンスト、水着、ジーンズ、スポーツウェアおよび衛生材等の繊維製品に広く利用されている。
ポリウレタン弾性繊維は、一般に、ナイロン繊維等の他の繊維素材と交編や交織され使用される。特に、ナイロン繊維と組み合わされて使用される場合が多く、通常、その布帛は、ナイロン用染料として用いられるアニオン系の染料である酸性染料、酸性媒染料および含金属染料によって染色されている。
しかし、ポリウレタン弾性繊維を含む繊維製品はポリウレタン弾性繊維の染色堅牢性が低いため、洗濯時に、浴槽中でポリウレタン繊維中から染料が抜け出し退色したり、他の布地で摩擦されると他の洗濯物を染料で汚染するという問題がある。また、ポリウレタン弾性繊維は染料への親和性がナイロンと異なり、ナイロン繊維は良く染まるがポリウレタン弾性繊維は薄くしか染まらない場合があり、ナイロンとポリウレタン弾性繊維との交編布帛においては、同色性不一致による審美性低下の問題がある。
すなわち、ポリウレタン弾性繊維は、染色性および洗濯時の染色堅牢性が十分でなく、従来から、染色時の加工条件の検討、染料の開発、ポリウレタンポリマー自体の改質、ポリウレタンへの添加剤の配合等の種々の検討がなされてきたが未だ充分でなく、ポリウレタン弾性繊維の染色性能に対して更なる向上が望まれている。
さらに、ポリウレタン弾性繊維は、伸縮性に富むが故に生地にした場合の寸法安定性が劣り、その為、生地の裁断後に生地がカールし、生地を製品に縫製加工する際に作業者に負担をかけたり、着用中に衣料品の寸法が縮むといったセット性不良の問題が発生する。高い温度でセットすることも可能であるが、ポリウレタンは熱劣化を起こしやすい。さらに又、ポリウレタン弾性繊維の別の問題として、本来粘着性があるため、編み針やガイドとの金属摩擦により、生地の編み工程時に糸切れが起こり易い。
上述の諸問題を解決するために、従来から多くのことが検討されてきた。例えば、ポリウレタン分子鎖中に第三級アミノ基をビルトインさせたポリウレタン化合物が提案されている(下記特許文献1〜3参照)。しかし、この方法の場合、ポリウレタン弾性繊維の弾性特性や耐熱性が大きく低下する。
両末端に水酸基を有する第三級アミノ化合物とジイソシアネート化合物とのポリウレタン反応生成物を用いて改良することも提案されている(下記特許文献4および5参照)。しかしながら、この方法は熱セット性の改善効果が充分でない。さらに、ポリウレタン弾性繊維の熱セット性と染色性を同時に改善する試みが行われている(下記特許文献6および7参照)。この方法も充分な効果は得られていない。
また、無機化合物ハイドロタルサイト類をポリウレタンに含有させることにより、ポリウレタンの染色性を改善する試みがある(下記特許文献8および9参照)。しかし、ハイドロタルサイトは、貯蔵時に粉体自体が固化しやすく、又、ポリウレタン弾性繊維の紡糸時に糸切れ多発の原因となり、ポリウレタン弾性繊維の安定生産が困難となる場合がある。更に、ポリウレタン弾性繊維の染色性はこれらハイドロタルサイト類を用いて向上したとはいえ、未だ充分に満足する性能レベルにまでは達していない。
特定のマレイミド構造化合物を含有させてポリウレタンウレア弾性繊維の染色堅牢度を改良する提案もされている(下記特許文献10参照)。しかしながら、この方法では、マレイミド構造化合物の製造において、無水マレイン酸骨格へのジアミンの反応が複雑で、架橋反応や不完全な反応を起こす。さらに、その構造中にウレタン結合やウレア結合を有していないため、ポリウレタン重合体との親和性が充分でなく、紡糸工程でのフィルター詰まりや糸切れを多発する問題がある。
また、ポリウレタン溶液中に特定の低分子のジアミノ化合物を添加して繊維を製造する方法が提案されている(下記特許文献11参照)。しかしながら、このジアミノ化合物をポリウレタン重合体に添加混合して紡糸したポリウレタン弾性繊維は、染色性能向上についての効果が小さかった。
すなわち、上述の課題に対して数多くの提案が行われてきたが、未だ充分に満足する結果は得られていない。
特公昭47−51645号公報 特公昭48−25432号公報 特公昭61−7212号公報 特開昭50−117847号公報 特開2000−313802号公報 特開平11−200148号公報 特開2001−40587号公報 特開2000−119510号公報 特開2007−303025号公報 特公平3−6177号公報 特開平5−155841号公報
本発明の目的は、紡糸工程中の糸切れが少なく、染色性、洗濯堅牢度および熱セット性に優れたポリウレタン弾性繊維を提供することである。さらに金属摩擦性にも優れたポリウレタン弾性繊維を提供することも目的の一つである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、末端基に第三級窒素基を有する特定の化合物と特定のフェノール系酸化防止剤とをポリウレタン重合体中に含有させることにより、耐熱性と熱セット性と染色性と紡糸性能を同時に向上させ得ることを初めて見出した。さらに、特定の無機化合物を有効量含有させることによって金属摩擦性が改善されることを見出した。即ち、本発明は下記の発明を提供する。
[1]ポリウレタン重合体(A成分)、末端基に第三級窒素基を有する下記式(1)で表わされる分子量が300以上2000未満の化合物(B成分)および下記(I)の群から選ばれるフェノール系酸化防止剤(C成分)からなり、B成分およびC成分の含有量がA成分に対してそれぞれ0.01〜8質量%および0.01〜5質量%であり、B成分に対するC成分の重量部比率C/Bが0.03〜10であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
Figure 0006063210
(但し、式中、R〜Rは炭素原子数が1〜5のアルキル基またはヒドロキシアルキレン基であるか、RとRおよびRとRがそれぞれ結合し、それらが結合した窒素原子と共に複素環基を形成しており、Rはジイソシアナート残基であり、RおよびRは炭素原子数が1〜5の直鎖又は分岐したアルキル基、エチレンオキシ繰り返し単位が1〜5の基またはプロピレンオキシ繰り返し単位が1〜5の基であり、XおよびYはウレタン結合及び又はウレア結合であり、nは1〜6の整数である。)
(I):1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テロラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、ビス(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、片ヒンダードのヒドロキシフェニル基を少なくとも1個有する分子量が約300以上である片ヒンダードフェノール化合物、p―クレゾールとジビニルベンゼンの重合体、p―クレゾールとジシクロペンタジエンの重合体、p−クロロメチルスチレンとp−クレゾールの重合体
[2]Mg、Al、Zn、Ca、TiおよびSiの群から選ばれた1種以上の金属の酸化物、炭酸化物または水酸化物から構成された無機化合物(D成分)をさらに含有し、D成分の含有量がA成分に対して0.01〜8質量%であり、B成分、C成分およびD成分の合計がA成分に対して0.5〜15質量%であることを特徴とする上記[1]に記載のポリウレタン弾性繊維。
[3]上記[1]または[2]に記載のポリウレタン弾性繊維と、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、天然繊維およびセルロース誘導体繊維からなる群から選ばれた繊維とからなる繊維製品。
[4]インナー、アウター、レッグ、スポーツウェア、ジーンズ、水着および衛生材からなる群から選ばれた上記[3]に記載の繊維製品。
本発明で用いる上記B成分は、その構造中にウレタン結合又はウレア結合を有するため、添加するポリウレタン重合体との親和性が良好である。分子量が300未満の化合物の場合、洗濯時の染色堅牢度が充分でなく、分子量が2000以上の場合、ポリウレタン弾性繊維の物理特性である伸張回復性の低下が起こる。
また、上記B成分は、従来のポリマーの主鎖または側鎖に第3級窒素含有化合物を有するウレタン重合物を用いる場合に比較して、末端に第三級窒素基を有し、且つ比較的低分子量であるために、ポリウレタン重合体中で非結晶部分に存在することができ、染色時にポリマー中に浸潤した染料と結合し易いため、染色性も良好である。
しかしながら、上記B成分は、紡糸工程での配管中のデッドスペースにこの化合物を含む紡糸原液が滞留した場合、ポリウレタン重合体にアルファネート結合反応および/またはビュレット結合反応を促進させ、紡糸中に糸切れを起こすことがある。この滞留時の望ましくない副反応は上記B成分に加えて上記C成分を併用することにより大幅に抑えられ、長期間の紡糸安定性能が大きく向上する。
また、このB成分を含有したポリウレタン弾性繊維は、編み針に対する金属摩擦性が低下し、編み工程時に糸切れを起こしやすい傾向がある。しかし、B成分およびC成分に加えて上記D成分を併用することにより、金属摩擦性が改良され、本発明のポリウレタン弾性繊維は耐熱性、熱セット性、染色堅牢性および金属摩擦性に優れ、紡糸時および編み加工時の糸切れも少ない。
ジエチルアミノプロピルアミンと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの反応生成物のNMRチャートである。 ジエチルアミノイソプロパノールと4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの反応生成物のNMRチャートである。 試験糸の金属摩擦性評価装置の概略図である。 金属摩擦性評価試験結果の一例である。
本発明に用いる上記B成分であるジアミノ化合物は、ジイソシアナート化合物と、このジイソシアナート化合物中のイソシアネート基と反応するアミノ基又は水酸基と第三級アミノ基を分子構造中に同時に有する化合物とをイソシアナート基に対して実質的に当量反応させることで得ることが出来る。
ジイソシアナート化合物の好ましい例として、分子内に2個のイソシアネート基を有す公知の脂肪族、脂環族もしくは芳香族の有機ジイソシアネートが挙げられる。具体的には、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等の有機ジイソシアネートが例示され、好ましくは、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートである。また、有機ジイソシアネートとして、遊離のイソシアネート基に変換される封鎖されたイソシアネート基を有する化合物を使用してもよい。
第三級アミノ基を有し、且つイソシアネート基と反応するアミノ基を1分子構造中に同時に有する化合物の例として、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、N,N−ジイソプロピルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエトキシプロピルアミン、ジエタノールアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル4−ピペコリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、4−アミノメチル−1−ブチルピペリジン等のアミン類が例示される。
又、第三級アミノ基を有し且つイソシアネート基と反応する水酸基を1分子構造中に同時に有する化合物の例としては、ジエチルアミノプロピルアルコール、ジエチルアミノイソプロピルアルコール、ジメチルアミノエチルアルコール、ジプロピルアミノエチルアルコール、ジメチルアミノエトキシプロピルアルコール等のアルコール類が例示される。
好ましくは、第三級アミノ基を有し、且つイソシアネート基と反応するアミノ基を1分子構造中に同時に有するジアミン化合物であるジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミンである。
ジイソシアナート化合物と第三級アミノ基を有するジアミノ化合物との反応は、ジイソシアナート化合物のイソシアネート基に対して、ジアミノ化合物のアミノ基や水酸基が実質的に当量又は過剰になるようにして行なうことが好ましい。反応は、溶剤の存在下、又は大過剰のジアミノ化合物を用いて溶剤の無存在下で行うことが出来るが、イソシアネート基の副反応を避けるために、溶剤の存在下、無水条件下、低温で攪拌下に行うことが好ましい。
好ましい溶剤としては、トルエン、キシレン、THF、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等、イソシアネート基に不活性な溶剤が挙げられる。
ポリウレタン繊維の製造には、通常DMAcが好ましい溶剤として用いられるので、DMAc溶剤を用いてジアミノ化合物を製造するとジアミノ化合物を単離することなく紡糸原液に直接混合が可能であるため、ジアミノ化合物の合成溶剤としてはDMAcを用いることが好ましい。
本発明は、上記ジアミノ化合物をポリウレタン重合体に対して、0.01〜8質量%含有させることを特徴とする。この範囲であれば、繊維に悪影響を与えずに、効果を発現することができる。0.01質量%未満では上述の効果が不十分であり、8質量%を超えるとポリウレタン弾性繊維の物理特性に悪影響を与える。好ましくは0.5〜6質量%であり、更に好ましくは1〜5質量%である。
ポリウレタン弾性繊維の製造における紡糸性は重要で、これが欠如すると安定生産することができない。本発明に用いるジアミノ化合物は、ポリウレタンに混合した後、原液輸送配管中に長時間滞留した場合、デッドスペースや紡糸筒上部の紡糸口金内の高温滞留部でポリウレタン重合体へのゲル化副反応を促進する。
更には、ポリウレタン弾性繊維を製造する際には、紡糸筒内は、DMAc溶剤を乾燥するために短時間ではあるが、温度が200℃以上の高温に上げられる。その時、ジアミノ化合物自体の熱分解とそれに起因して、紡糸工程における糸切れの問題を起こす。
この問題の解決には、特定の構造を持つ以下に示すフェノール系酸化防止剤の添加が有効である。即ち、上記のジアミノ化合物を用いる場合、以下に示すフェノール系酸化防止剤との併用が必要である。本発明に用いるフェノール系酸化防止剤としては、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テロラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、片ヒンダードのヒドロキシフェニル基を少なくとも1個有する分子量が約300以上である片ヒンダードフェノール化合物、p−クレゾールとジビニルベンゼンの重合体、p−クレゾールとジシクロペンタジエンの重合体、p−クロロメチルスチレンとp−クレゾールの重合体などが挙げられる。
上記片ヒンダードフェノール化合物は、片ヒンダードのヒドロキシフェニル基を少なくとも2つ含み、かつ、ビスエステル、アルキリデンから選択される骨格を有する化合物であることが好ましい。また、ヒドロキシフェニル基における水酸基に隣接する環位置に存在するアルキル基はターシャリーブチル基であることが望ましく、水酸基の当量が600以下であることが更に望ましい。
かかる片ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、片ヒンダードのヒドロキシフェニル基がビスエステル骨格に共有結合した構造のエチレン−1,2−ビス(3,3−ビス[3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]ブチレート)、並びに片ヒンダードのヒドロキシフェニル基がアルキリデン骨格に共有結合した構造の1,1−ビス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンエチレン−1,2−ビス(3,3−ビス[3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]ブチレート)、1,1−ビス(2−メチル−5−t−ブチル−4ヒドロキシフェニル)ブタン及び1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4ヒドリキシフェニル)ブタン等をあげることが出来る。
好ましいヒンダードフェノール化合物として、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テロラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、P−クレゾールとジビニルベンゼンの重合体、P−クレゾールとジシククロペンタジエンの重合体が挙げられる。
これらのフェノール系酸化防止剤は、ポリウレタン重合体に対して0.01〜5質量%用いることが好ましく、更に好ましくは、0.2〜3質量%である。0.01質量%未満では紡糸工程での耐熱性が不十分となり、また5質量%を超えると生地編成時の編み針やガイドにスカムを発生させるので好ましくない。
又、本発明において、上記B成分即ち上記ジアミノ化合物に対する上記C成分即ち上記フェノール系酸化防止剤の重量部比率C/Bは0.03〜30の範囲であることが好ましい。さらに、好ましくは0.1〜20である。この比率が0.03未満では糸の耐熱性が低下するので好ましくない。逆に10を超えると染色性が低下するので好ましくない。
本発明に用いるジアミノ化合物は比較的低分子化合物である為、このことが良好な染色性を得られることでもあるが、一方では、編み針に対する金属摩擦性を低下させ、編み工程時に糸切れや生地品位の低下を起こしやすい傾向がある。この問題は、Mg、Al、Zn、Ca、TiおよびSiの中から選ばれた1種以上の金属からなる酸化物、炭酸化物または水酸化物で構成された無機化合物を添加することによって解決される。更に、これらの無機化合物を添加すると紡糸工程での糸切れも良好になる。
上記無機化合物の具体例としては、フンタイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウムと酸化亜鉛の固溶体、酸化亜鉛の結晶にアルミニウムが固溶した酸化亜鉛固溶体、亜鉛とアルミニウムの複合酸化物、酸化チタン、フンタイト及びハイドロマグネサイトの鉱物混合物、酸化チタン及びZnOを含む金属系固溶体、SiとZnの水酸化複合塩、並びにZnOを含む金属複合酸化物等が挙げられる。これらの中で好ましい無機化合物はハイドロタルサイト、酸化チタンおよびフンタイトである。これらの無機化合物は、ポリウレタン重合体に対して0.01〜8質量%用いることが好ましく、更に好ましくは、0.2〜6質量%である。0.01質量%未満では金属摩擦性の改良が不十分で、編み工程時に糸切れを起こしやすくなるので好ましくない。一方8質量%を超えると、紡糸工程中で紡糸原液フィルター詰まりを起こしたり、紡糸中に糸切れを起こしやすくなり生産が安定しないので好ましくない。
また、本発明において、上記ジアミノ化合物、フェノール系酸化防止剤および無機化合物の合計量はポリウレタン重合体の0.5〜15質量%であることが好ましく、さらに好ましくは1.0〜10質量%である。0.5質量%未満では、本発明の効果が乏しく、一方、20質量%を超えると、糸切れやフィルター詰まり等、長期の糸の安定生産に支障があるばかりでなく、高コストになり経済的な利点がなくなる
本発明に用いるポリウレタン重合体は、高分子ジオールとジイソシアネートとが反応して得られたプレポリマーに、活性水素含有化合物を反応させる公知の方法で得られる。
上記高分子ジオールとしてはポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールおよびポリエーテルジオール等を挙げることができる。好ましくはポリエーテルジオールであり、1種または2種以上の炭素数2〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基がエーテル結合しているポリアルキレンエーテルジオールが特に好ましい。
ポリアルキレンエーテルジオールとしては単一または共重合ポリアルキレンエーテルジオールが好ましい。本発明で使用されるポリアルキレンエーテルジオールの数平均分子量(Mn)は500〜6000が好ましく、さらに好ましくは1000〜3000である。Mnが500より小さい場合弾性回復性が低下し、6000より大きいと紡糸性が悪化する。
共重合ポリアルキレンエーテルジオールは、アルキレン基がブロック状またはランダム状にエーテル結合している。従来からポリウレタン弾性繊維の原料として広範に用いられている単一重合ポリアルキレンエーテルジオールであるPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)に比較して、2種類以上のアルキレン基からなる共重合ポリアルキレンエーテルジオールを用いたポリウレタン弾性繊維の場合、ポリウレタン成分の65wt%〜85wt%を占めるジオール成分が非晶性であるため、ポリウレタンポリマー中に染料が浸透しやすく、ポリウレタン弾性繊維中でジアミノ化合物と染料とが効率的に結合する為、一層染色性が良好で色相良好な鮮やかな発色が得られる。
さらに、共重合ジオールを用いた利点として、弾性機能がさらに改善され、その為、このポリウレタン弾性繊維は優れた弾性機能、即ち、高い破断伸度、伸長時の歪に対する小さな応力変動および伸長時の応力の小さなヒステリシス損失等を有する。従って、これを使用したパンティストッキングやアウターは、優れた弾性機能を有し、着用感にも優れ、審美性良好な繊維製品となる。共重合ポリアルキレンエーテルジオールの中でも、得られるポリウレタン弾性繊維の耐水性、耐光性、耐摩耗性および弾性機能等の観点から、ブチレン基、すなわちテトラメチレンエーテルユニットを含む共重合ポリアルキレンエーテルジオールが好ましく、更にはブチレン基、すなわちテトラメチレンエーテルユニットと2,2−ジメチルプロピレン基、すなわちネオペンチレンエーテルユニットとの組み合わせや、テトラメチレンエーテルユニットと2−メチルブチレン基との組み合わせが好ましい。
テトラメチレン基以外のアルキレンエーテルユニットは、4モル%以上且つ85モル%以下含むことが好ましい。アルキレンエーテルユニットが4モル%未満では、ポリウレタン弾性繊維の弾性機能改良効果が小さく、85モル%を越えると弾性繊維の強度または伸度の低下が大きい。
上記ジイソシアネートとしては、分子内に2個のイソシアネート基を有す公知の脂肪族、脂環族もしくは芳香族の有機ジイソシアネートが挙げられる。具体的には、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の有機ジイソシアネートが例示され、好ましくは、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートである。また、有機ジイソシアネートとして、遊離のイソシアネート基に変換される封鎖されたイソシアネート基を有する化合物を使用してもよい。
イソシアネート基と反応する上記活性水素含有化合物としては、ポリウレタンにおける常用の鎖伸長剤、即ち、イソシアネートと反応し得る水素原子を少なくとも2個含有する分子量500以下の低分子化合物を用いることが出来る。この具体例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、ジヒドラジド、ピペラジン等のジアミン類、及び特開平5−155841号公報で開示されたジアミン化合物類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のジオール類等が挙げられ、好ましくはエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、及び特開平5−155841号公報で開示されたジアミン化合物類が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いても良い。また場合により、イソシアネートと反応し得る活性水素を1個含有する化合物と併用しても良い。
ジイソシアネート、高分子ジオール及び活性水素含有化合物を用いてポリウレタンを製造する方法に関しては、公知のウレタン化反応の技術を採用することが出来る。また、本発明で用いられる各種化合物の化学量論的割合は、高分子ジオールの水酸基と活性水素含有化合物の活性水素の総和が、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基に対して1.00以上1.07当量未満が好ましい。
この様にして得られるポリウレタン重合体に、更に、ポリウレタン重合体に有用な公知の有機化合物又は無機化合物の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、黄変防止剤、熱変色防止剤および耐プール用殺菌塩素剤等を添加しても良い。
なお、本発明のポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタン重合体の比粘度(ηsp/c)は、1.1〜3.5dl/gが好ましい。この範囲とすることにより、弾性回復性に優れた弾性繊維となる。尚、ここで比粘度(ηsp/c)とは、N,N’−ジメチルアセトアミド溶媒中における(η/η−1)/Cで計算した値である(但し、Cはポリマー0.5g/DMAC99.5g(0.5wt%)の溶液粘度であり、ηはオストワルド粘度計による希薄溶液中の落下秒数であり、ηは同上粘度計によるDMACのみの落下秒数である)。
この様にして得られたポリウレタン重合体は、従来公知の乾式紡糸法、溶融紡糸法等で紡糸筒紡糸口金を経て繊維状や押し出し成型法により細長い扁平繊維状に成型された後に、筒に巻き取られて、ポリウレタン弾性繊維が得られる。好ましくは、乾式紡糸で得られるポリウレタン弾性繊維である。
この際、更に、公知のポリウレタン弾性繊維用油剤を紡糸時に外部よりオイリング装置を用いて、油剤として付着させてもよい。ここで用いられる油剤成分は、エーテル変性シリコーンの他に、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリアミノ変性シリコーン、ポリオルガノシロキサン、鉱物油、タルク、シリカ、コロイダルアルミナ等の鉱物性微粒子、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、高級脂肪族アルコール、パラフィンポリエチレン等の常温で固体のワックスなど種々のものを組み合わせて使用して良い。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、本発明の効果を阻害しない程度であれば、必要に応じ各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などとして、チバガイギー社製“チヌビン”等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業(株)製の“スミライザー”P−16等のリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料、フッ素系樹脂粉体またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、また、シリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが添加され、また、ポリマーと反応して存在することが挙げられる。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、酸化窒素捕捉剤、例えば(株)日本ファインケム製のHN−150、熱酸化安定剤、光安定剤、例えば、住友化学工業(株)製の“スミソーブ”300#622などの光安定剤などを含有させることが好ましい。
この様にして得られたポリウレタン弾性繊維は、実用上は、そのまま裸糸として使用しても良く、また他の繊維、例えば、ポリアミド繊維、ウール、綿、再生繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維など、従来公知の繊維で被覆して被覆弾性繊維として使用することもできる。特に、ナイロン、エステル、アクリル、天然繊維およびセルロース誘導体からなる群から選ばれた繊維素材と組み合わせて用いることが好ましい。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、ファウンデーション、靴下留め、口ゴム、コルセット、外科用の包帯、製紐、織物及び編物の水着等に用いる事ができる。特に、インナー、アウター、レッグ、スポーツウェア、ジーンズ、水着および衛生材からなる群から選ばれた繊維製品に好ましく用いられる。
本発明のポリウレタン弾性繊維を染色する場合は、通常の合成繊維、天然繊維の染色法と同じ方法を用いてよい。すなわち、浸染法、パッドスチーム法、パッドサーモフィックス法、捺染法およびスプレー法等の染色法を適用できる。染色機としては、液流染色機、ウィンス染色機およびエアーフロー染色機等の通常の染色機を用いることができる。
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
各種評価は以下の方法にて行った。
(1)NMR装置は日本電子製 JNM GX 400型を用い、核磁気共鳴分光装置にはH−SGNONを用いた。積算は100回、溶媒はd化DMSO(20mg/0.8ml)、測定温度は50℃、パルスは45°とした。
(2)紡糸安定性の評価
以下の実施例記載の方法に準じて製造した各種添加剤を含んだ紡糸原液を、実施例記載の方法にて20時間紡糸してその糸切れ回数(回/時間)を測定した。回数が少ないほど生産性が安定しているといえる。
(3)乾熱セット率測定法
乾熱セット率は以下の測定および数式にて求めた。無緊張かつ直線状の状態の長さLd0の弾性糸を2.0倍の長さまで伸長固定後そのままの状態で、190±1℃に調整したテンターボックスを通過させ、テンターボックス通過時間を30秒とし、直ちに弾性糸を取り出し、Ld0以下の長さで曲がりくねらせて十分にリラックスし、室温で18時間放置する。再び、弾性糸を無緊張かつ直線状の状態にし、そのときの長さをLd1とした時、下記の数式でセット率を定義した。
乾熱セット率(%)=〔(Ld1−Ld0)/Ld0〕×100
(4)ポリウレタン弾性繊維の染色性評価
染色評価には2ウェイトリコット編地を用いた。すなわち、フロント筬に33dt/10fのナイロン繊維、ミドル筬とバック筬に44dtの本実施例または比較例のポリウレタン弾性繊維を用い、フロント筬の組織を10/23、ミドル筬の組織を10/01、バック筬の組織を12/10とした2ウェイトリコット編地を編成した。この生地のポリウレタン弾性繊維の混率は35%であり、拡布状態で連続精練機に投入した。この際、連続精練機は4つの液槽があるものを使用し、20℃、50℃、70℃、90℃と、反物が順次通過する際の温度を変えて、かつ、各液槽には、すべて精練剤(花王(株)製 スコアロールFC−250)2g/Lを投入した。連続精練機を通過した反物は、水洗浴の通過後、マングルにて脱水しピンテンターにて190℃で45秒間プレセットを行った。
ついで、液流染色機に投入し、精練もかねて液中で精練剤(花王(株)製 スコアロールFC−250)2g/Lを投入し、70℃で20分間酸性浴にて精練を行った。排液、すすぎ、再注水し、pH4に調整した黒色の酸性染料を投入し、95℃で60分間染色した。
その後、すすぎを行い、フィックス処理(天然タンニンS 6%owf、吐酒石L 3%owf、80℃/40分間処理)後、反物を染色機から取り出し、柔軟樹脂加工、更にピンテンターにて170℃で仕上げセットを行った。
黒色に染めた際の染色性を下記の判定基準によって行なった。
5級 濃黒、
4級 黒、
3級 淡黒、
2級 灰色、
1級 薄灰色
(5)生地の洗濯堅牢度評価
JIS L0844変退色により評価を行った。
その際の使用洗剤は、花王(株)製 洗剤商品名「アタック」2g/L、洗濯液温度80℃の条件で各30分間洗濯後、30分間流水すすぎした後脱水し、室温(20℃、65%RH)にて、24時間乾燥後の色相の変化を測定した。
色相の変化(Δ級)=生地の洗濯前の級−生地の洗濯後の級
洗濯前の級数が大きく、且つ、Δ級の数値が小さいほど、色変化が少なく染色性と堅牢性が良好であるといえる。
(6)ポリウレタン弾性繊維の金属摩擦性評価(金属摩擦性評価試験)
図3に金属摩擦性評価装置を示す。得られた試験糸1(44dt/4フィラメント)を、25℃、65%RHの雰囲気で20日間放置後、図3の装置にかけ、送り速度100m/分、巻き取り速度200m/分の延伸倍率2倍で走行させ、編み針4の通過前後で試験糸条7の走行応力とその応力変動を測定した。測定結果の一例を図4に示す。摩擦係数μdは下記式(6)で与えられる。
μd=ln(T1/T2)/2.6376 (6)
ただし、T1、T2はそれぞれ、図4の例示において、編み針通過後の走行応力の中心値(g)、編み針通過前の走行応力の中心値(g)である。
(実施例1)
[本発明に使用するジアミノ化合物類の合成]
ジエチルアミノプロピルアミン52.5部をDMAc(ジメチルアセトアミド)200部に溶解した溶液に、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート50.0部をDMAc300部に溶解した溶液を徐々に滴下した。なお、滴下は温度10℃〜20℃に保つように冷却しながら攪拌して行なった。滴下終了後、更に1時間攪拌を続けた。
得られた反応溶液の一部を取り、水中に滴下して、白色沈殿物をろ過し、充分に水洗後、80℃で減圧乾燥させた。NMRの測定結果を図1に示す。この沈殿物は、目的とする分子量が510の末端基に第三級窒素基を有する化合物であると確認された。同様にして、ジエチルアミノプロピルアミンの代わりに、ジエチルアミノイソプロパノールを用いて合成反応を行なった。得られた沈殿物のNMRの測定結果を図2に示す。このものは分子量が381の目的とする末端基に第三級窒素基を有する化合物であると確認された。
各種のジアミノ化合物の合成は、ジエチルアミノプロピルアミンの代わりに、表1に記載の各種アミンと各種ジイソシアナートを用いて、上記と同様に製造し分子量が300以上2000未満の末端基に第三級窒素基を有する化合物を得た。
Figure 0006063210
(実施例2)
[ポリウレタンの重合及びポリウレタン弾性繊維の製造]
単一重合ジオールである数平均分子量1800のポリテトラメチレンエーテルジオール400gと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート91.7gとを乾燥窒素雰囲気下、80℃で3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温に冷却した後、乾燥したジメチルアセトアミド(DMAc)720gを加えて溶解し、ポリウレタンプレポリマー溶液を調整した。一方、エチレンジアミン8.11g及びジエチルアミン1.37gをジメチルアセトアミド390gに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温下で添加して、粘度3700ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液を得た。
次に、表1記載の各種ジアミノ化合物のDMAc溶液に表2記載のフェノール系酸化防止剤を撹拌により均一に分散した液を、ポリウレタン重合体固形物に対して表2に記載の質量%になるように得られたポリウレタン重合体溶液に加えて攪拌し、均一な紡糸用原液を得た。
このようにして得られた紡糸用原液を脱泡した後、16個の紡糸口金(各々の口金は4個の細孔を有す)の細孔から熱風約230℃の紡糸筒下部に押しだしてDMAc(ジメチルアセトアミド)溶剤を蒸発させた。乾燥された糸条を仮撚りし、ゴッデトローラを経てオイリングローラ上でジメチルシリコーンを主成分とする油剤を付与し、毎分850m/分の速度で紙管に巻き取り、44dt/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価結果を表2に記載した。
(比較例1〜6)
本発明のジアミノ化合物の無添加、本発明のフェノール系酸化防止剤の無添加、先行技術化合物添加、本発明のフェノール系酸化防止剤以外の化合物添加、本発明のC/Bの適正範囲外について、各々実施例2と同様にポリウレタン弾性繊維を紡糸し、その評価を行なった。得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価結果を表2に比較例として記載した。
Figure 0006063210
(実施例3)
ポリウレタン重合体に対して、表1の原料で合成したジアミノ化合物のDMAc溶液、フェノール系酸化防止剤及び無機化合物を表3に記載の各重量部添加し、撹拌により均一に分散した液を、実施例2で得られたポリウレタン溶液に加えて、均一な紡糸用原液を得た。実施例2と同様な方法で紡糸を行い44dt/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得、このポリウレタン弾性繊維の各種評価結果を表3に記載した。
Figure 0006063210
(実施例4および5)
無機化合物の無添加の例について、実施例3と同様にポリウレタン弾性繊維を紡糸し、その評価を行なった。得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価結果を表3に記載した。
(比較例7)
無機化合物は含有するがジアミノ化合物を含有しない例について、実施例3と同様にポリウレタン弾性繊維を紡糸し、その評価を行なった。得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価結果を表3に記載した。
本発明のポリウレタン弾性繊維は、優れた染色性、洗濯時の堅牢度、熱セット性および対金属(編み針)摩擦性を有し、インナー、アウター、レッグ、スポーツウェア、ジーンズ、水着および衛生材として有用である。
1 試験糸
2 送り出しローラー
3 テンションメーター
4 編み針
5 巻き取り部
6 巻き取りローラー
7 試験糸走行糸条
8 編み針にかかる糸条がなす角度=29°

Claims (4)

  1. ポリウレタン重合体(A成分)、末端基に第三級窒素基を有する下記式(1)で表わされる分子量が300以上2000未満の化合物(B成分)および下記(I)の群から選ばれるフェノール系酸化防止剤(C成分)からなり、B成分およびC成分の含有量がA成分に対してそれぞれ0.01〜8質量%および0.01〜5質量%であり、B成分に対するC成分の重量部比率C/Bが0.03〜10であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
    Figure 0006063210
    (但し、式中、R〜Rは炭素原子数が1〜5のアルキル基またはヒドロキシアルキレン基であるか、RとRおよびRとRがそれぞれ結合し、それらが結合した窒素原子と共に複素環基を形成しており、Rはジイソシアナート残基であり、RおよびRは炭素原子数が1〜5の直鎖又は分岐したアルキル基、エチレンオキシ繰り返し単位が1〜5の基またはプロピレンオキシ繰り返し単位が1〜5の基であり、XおよびYはウレタン結合及び又はウレア結合であり、nは1〜6の整数である。)
    (I):1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テロラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、ビス(3‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、片ヒンダードのヒドロキシフェニル基を少なくとも1個有する分子量が約300以上である片ヒンダードフェノール化合物、p―クレゾールとジビニルベンゼンの重合体、p―クレゾールとジシクロペンタジエンの重合体、p−クロロメチルスチレンとp−クレゾールの重合体
  2. Mg、Al、Zn、Ca、TiおよびSiの群から選ばれた1種以上の金属の酸化物、炭酸化物または水酸化物から構成された無機化合物(D成分)をさらに含有し、D成分の含有量がA成分に対して0.01〜8質量%であり、B成分、C成分およびD成分の合計がA成分に対して0.5〜15質量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン弾性繊維。
  3. 請求項1または2に記載のポリウレタン弾性繊維と、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、天然繊維およびセルロース誘導体繊維からなる群から選ばれた繊維とからなる繊維製品。
  4. インナー、アウター、レッグ、スポーツウェア、ジーンズ、水着および衛生材からなる群から選ばれた請求項3に記載の繊維製品。
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