JP6060882B2 - 断熱層形成用のAl合金製エンジン部品表面の処理方法 - Google Patents
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Description
上記エンジン部品の所定面にアルカリ性エッチング液を所定時間接触させるアルカリエッチング工程と、上記エッチング液を接触させた所定面を水洗し、乾燥させる工程と、しかる後に上記所定面の少なくとも一部に上記断熱層を形成する工程とを備え、
上記エッチング液を接触させる工程では、上記所定面が、上記乾燥工程後の表面粗さRzが12.8μm以上となり且つ水との見かけの接触角が30゜以下となるように、濃度が0.5質量%以上4質量%以下であるNaOH水溶液を用いて上記接触時間を30秒以上240秒以下とすることを特徴とする。
図1に示す直噴エンジンEにおいて、符号1はAl合金製のピストン、符号3はシリンダブロック、符号5はシリンダヘッド、符号7はシリンダヘッド5の吸気ポート9を開閉する吸気バルブ、符号11は排気ポート13を開閉する排気バルブ、符号15は燃料噴射弁である。エンジンの燃焼室は、ピストン1の頂面、シリンダブロック3、シリンダヘッド5、吸排気バルブ7,11のバルブヘッド面(燃焼室に臨む面)で形成される。ピストン1の頂面には、キャビティ17が形成されている。図1では、点火プラグ、及びシリンダライナの図示は省略している。
エンジンの熱効率は、理論的に幾何学的圧縮比を高めるほど、また、作動ガスの空気過剰率を大きくする(比熱比を高める)ほど、高くなることが知られている。しかし、実際には、圧縮比を大きくするほど、また、空気過剰率を大きくするほど、冷却損失が大きくなるため、圧縮比及び空気過剰率の増大による熱効率の改善は頭打ちになる。ここに、冷却損失は、作動ガスからエンジン燃焼室壁への熱伝達率、その伝熱面積、及びガス温と壁温との温度差に依存する。
図3は、鋳造後に粗加工、T6処理及び仕上げ加工がなされた表面処理前のピストン本体19の頂面の状態を模式的に示す。表面粗さRz(十点平均粗さ)は11μm以下であり、水との見かけの接触角θは55゜以上である。図4に示すように、見かけの接触角θ'は、水の自由表面と粗さ曲線の平均線Lとが接する点における自由表面の接線Tと当該平均線Lとのなす角度である。なお、見かけの接触角θ'と真の接触角θとの間には次のWenzelの式が成り立つ。
図5に示すように、上記ピストン本体頂面にアルカリエッチング、水洗・乾燥及び塗装の各工程によって上記断熱層21を形成する。必要に応じて、乾燥工程と塗装工程の間に水素結合性官能基を導入する工程を入れる。以下、当該表面処理方法を工程順に説明する。
仕上げ加工されたピストン本体頂面にアルカリエッチング液を所定時間接触させて、ピストン本体頂面の表面粗度を大きくするとともに、該頂面の濡れ性を高める。具体的には、上記水洗・乾燥工程後の表面粗さRzが12.8μm以上となり且つ水との接触角θ'が30゜以下になるように、アルカリエッチングをコントロールする。
水洗工程はピストン表面に残存するエッチング液を水で洗い流す工程であり、その方法は特に限定されるものではなく、アルカリエッチング液の除去に採用されている従来公知の方法を用いればよい。乾燥工程は、水洗後のピストンを乾燥する工程であり、その方法は特に限定されるものではなく、従来公知の乾燥方法を採用することができる。水洗工程の前に脱脂処理、酸洗処理を行なうようにしてもよい。
上記ピストン本体頂面に大気圧下でプラズマ照射を行なうことにより、水素結合性官能基を導入する。空気中でのプラズマ照射により、空気中の酸素分子の電離・解離により酸素ラジカルやオゾン等が生成され、それらが空気中の水分子と反応し、ピストン本体頂面に水素結合性官能基としてのOH基が導入される。
無機化合物よりなる中空粒子とバインダとしてのシリコーン系樹脂との混合物をピストン本体頂面に塗布し、乾燥及び焼成することによって断熱層21を形成する。
T6処理を施したAl合金(溶湯鍛造アルミニウム合金AC8A)製基板に、エッチング液のNaOH濃度及び接触時間を種々に変えてアルカリエッチングを行なった。このエッチングの浴温度は50℃とした。そうして、水洗及び乾燥を行なった後、その表面粗さRz及び水との接触角θ'を測定した。アルカリエッチング前のAl合金製基板は、表面粗さRz=10.66μmであり、接触角θ'=55°であった。
上記評価試験1のNaOH濃度0.50%、1.00%及び2.00%各々の接触時間が60秒のケースに関して、アルカリエッチング、水洗及び乾燥の各工程の後、大気圧プラズマ処理によって上記Al合金製基板に水素結合性官能基を導入し、しかる後に水との接触角θ'の測定を行なった。また、当該官能基の導入後のAl合金製基板に、評価試験1と同じ断熱層を形成し、その断熱層の密着性を同様のクロスカット試験により評価した。
19a 頂面(所定面)
21 断熱層
Claims (5)
- エンジンの燃焼室を形成するAl合金製エンジン部品の表面に、該エンジン部品よりも熱伝導率が低いシリコーン系樹脂膜よりなる厚みが50μm以上100μm以下である断熱層を設ける際の当該エンジン部品表面の処理方法であって、
上記エンジン部品の所定面にアルカリ性エッチング液を所定時間接触させるアルカリエッチング工程と、上記エッチング液を接触させた所定面を水洗し、乾燥させる工程と、しかる後に上記所定面の少なくとも一部に上記断熱層を形成する工程とを備え、
上記エッチング液を接触させる工程では、上記所定面が、上記乾燥工程後の表面粗さRzが12.8μm以上となり且つ水との見かけの接触角が30゜以下となるように、濃度が0.5質量%以上4質量%以下であるNaOH水溶液を用いて上記接触時間を30秒以上240秒以下とすることを特徴とする断熱層形成用のAl合金製エンジン部品表面の処理方法。 - 請求項1において、
上記エッチング液を接触させる工程では、濃度が0.5質量%以上1.0質量%以下であるNaOH水溶液を用いて上記接触時間を120秒以上とし、又は、濃度が2.0質量%以上であるNaOH水溶液を用いて上記接触時間を60秒以上とすることを特徴とする断熱層形成用のAl合金製エンジン部品表面の処理方法。 - 請求項1又は請求項2において、
上記乾燥工程の後上記断熱層形成工程の前に、上記所定面の少なくとも一部に水素結合性官能基を導入する工程を更に備えていることを特徴とする断熱層形成用のAl合金製エンジン部品表面の処理方法。 - 請求項3において、
上記水素結合性官能基を導入する工程が、上記所定面の少なくとも一部にプラズマを照射するプラズマ処理であることを特徴とする断熱層形成用のAl合金製エンジン部品表面の処理方法。 - 請求項4において、
上記プラズマ照射を大気圧で行なうことを特徴とする断熱層形成用のAl合金製エンジン部品表面の処理方法。
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