JP6059537B2 - 熱処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は、円板形状の半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に対してフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウェハー内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウェハーに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
そこで、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
このようなキセノンフラッシュランプを使用した熱処理装置として、特許文献1,2には、凹部を有する石英のサセプターに保持した半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射して加熱するものが開示されている。しかし、特許文献1,2に開示される装置においては、サセプターの載置面に半導体ウェハーの裏面が直接接触するように保持しているため、フラッシュ光照射前に予備加熱を行うときにウェハー面内の温度分布が不均一になりやすい。
一方、特許文献3には、平板状のサセプターの上面に複数のバンプ(支持ピン)を形成し、それらバンプによって点接触で支持した半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射する技術が開示されている。このようにすれば、半導体ウェハーの裏面がサセプターの上面と直接には接触しないため、予備加熱段階に半導体ウェハーの面内温度分布が不均一となるのを抑制することができる。
特開2004−179510号公報 特開2004−247339号公報 特開2009−164451号公報
しかしながら、フラッシュランプを使用した熱処理装置においては、極めて高いエネルギーを有するフラッシュ光を瞬間的に半導体ウェハーの表面に照射するため、一瞬で半導体ウェハーの表面温度が急速に上昇し、ウェハー表面に急激な熱膨張が生じて半導体ウェハーが反るように変形する。このとき、特許文献3に開示される発明のように、支持ピンによって半導体ウェハーの裏面とサセプターの上面との間に隙間が生じていると、熱膨張に起因した急激な変形によって半導体ウェハーがサセプターから跳躍する可能性がある。また、特許文献1,2のように、サセプターの載置面に半導体ウェハーを直接載置するようにしても、フラッシュ光照射時のウェハー表面の急激な熱膨張によって半導体ウェハーの位置ずれが生じることがある。
一般には、フラッシュ加熱処理の終了した半導体ウェハーに対しては次工程として冷却処理が行われる。このとき、フラッシュ加熱時に半導体ウェハーの位置ずれが生じていると、冷却処理を行うクールチャンバーの正規位置に半導体ウェハーを搬送することができなくなり、その結果、ウェハー割れや装置破損の問題が生じていた。
フラッシュ光照射時における半導体ウェハーの位置ずれを防止する方法として、半導体ウェハーを固定するチャックの使用も考えられるが、フラッシュ加熱される半導体ウェハーは瞬間的に高温に昇温されるため、チャックによって半導体ウェハーを機械的に固定するとウェハー割れや装置破損のおそれがあり、さらにはパーティクル発生の問題も生じることとなる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フラッシュ光照射時に基板の位置ずれが生じたとしても、次工程である冷却部の正規の受渡位置に基板を搬入することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、チャンバー内にてサセプターに保持された基板にフラッシュランプから出射されたフラッシュ光を照射して前記基板を加熱するフラッシュ加熱部と、前記フラッシュ加熱部にて加熱された前記基板を冷却する冷却部と、前記フラッシュ加熱部にて加熱された前記基板を搬送ハンドに載置して前記チャンバーから搬出し、前記搬送ハンドを旋回させて前記基板を前記冷却部に搬入する搬送ロボットと、前記搬送ロボットが前記搬送ハンドを旋回させるときに、前記搬送ハンドに載置された前記基板の位置ずれを検出する検出部と、前記検出部による検出結果に基づいて、前記冷却部に前記基板を搬入するときに前記搬送ハンドの受渡位置を補正する補正部と、を備え、前記検出部は、前記搬送ロボットが前記搬送ハンドを前記チャンバーから前記冷却部に移動させるときに、前記搬送ハンドが測定点を通過するタイミングを検出するハンドセンサーと、前記搬送ロボットが前記搬送ハンドを前記チャンバーから前記冷却部に移動させるときに、前記基板が測定点を通過するタイミングを検出する基板センサーと、を備え、前記ハンドセンサーおよび前記基板センサーは、前記搬送ハンドの旋回中心から見た同一半径上にて並ぶ位置に配置され、前記ハンドセンサーおよび前記基板センサーの検出結果に基づいて前記検出部が前記搬送ハンドに載置された前記基板の位置ずれを検出することを特徴とする。
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る熱処理装置において、前記搬送ハンドには、前記搬送ハンドの両端外縁から前記搬送ハンドに載置された前記基板の周縁部に対向する位置にかけて一対の切り欠きが形成され、前記搬送ロボットが前記搬送ハンドを前記チャンバーから前記冷却部に移動させるときに、前記基板センサーの測定点が前記一対の切り欠きを通過するとともに、前記ハンドセンサーの測定点が前記一対の切り欠きが形成されていない前記搬送ハンドの部位を通過するように、前記ハンドセンサーおよび前記基板センサーが設置されていることを特徴とする。
また、請求項の発明は、請求項または請求項の発明に係る熱処理装置において、前記検出部は、前記搬送ハンドが前記ハンドセンサーの測定点に到達した時点から前記基板が前記基板センサーの測定点に到達した時点までの第1の時間と、前記基板が前記基板センサーの測定点を通過するのに要する第2の時間と、前記基板が前記基板センサーの測定点を通過し終えた時点から前記搬送ハンドが前記ハンドセンサーの測定点を通過し終えた時点までの第3の時間と、に基づいて前記搬送ハンドに載置された前記基板の位置ずれを検出することを特徴とする。
請求項1から請求項の発明によれば、フラッシュ加熱部にて加熱された基板を搬送ハンドに載置してチャンバーから搬出して冷却部に搬入するときに、搬送ハンドに載置された基板の位置ずれを検出し、その検出結果に基づいて、冷却部に基板を搬入するときに搬送ハンドの受渡位置を補正するため、フラッシュ光照射時に基板の位置ずれが生じたとしても、次工程である冷却部の正規の受渡位置に基板を搬入することができる。
本発明に係る熱処理装置を示す平面図である。 図1の熱処理装置の正面図である。 フラッシュ加熱部の構成を示す縦断面図である。 保持部の全体外観を示す斜視図である。 保持部のサセプターを上面から見た平面図である。 保持部を側方から見た側面図である。 ガイドリングの設置部分を拡大した図である。 移載機構の平面図である。 移載機構の側面図である。 複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。 搬送ロボットの搬送ハンドを示す平面図である。 搬送ハンドに載置された半導体ウェハーの位置ずれを検出する機構を示す平面図である。 搬送ハンドに載置された半導体ウェハーの位置ずれを検出する機構を示す側面図である。 熱処理装置における処理手順を示すフローチャートである。 ウェハーセンサーおよびハンドセンサーの検出結果の一例を示す図である。 ウェハーセンサーおよびハンドセンサーの検出結果の一例を示す図である。 ウェハーセンサーおよびハンドセンサーの検出結果の一例を示す図である。 サセプターの他の例を示す図である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<1.熱処理装置の構成>
<1−1.全体構成>
まず、本発明に係る熱処理装置100の全体概略構成について簡単に説明する。図1は、本発明に係る熱処理装置100を示す平面図であり、図2はその正面図である。熱処理装置100は基板として円板形状の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。熱処理装置100に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置100による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
図1および図2に示すように、熱処理装置100は、未処理の半導体ウェハーWを外部から装置内に搬入するとともに処理済みの半導体ウェハーWを装置外に搬出するためのインデクサ部101、未処理の半導体ウェハーWの位置決めを行うアライメント部130、加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却を行う冷却部140、半導体ウェハーWにフラッシュ加熱処理を施すフラッシュ加熱部160並びにアライメント部130、冷却部140およびフラッシュ加熱部160に対して半導体ウェハーWの搬送を行う搬送ロボット150を備える。また、熱処理装置100は、上記の各処理部に設けられた動作機構および搬送ロボット150を制御して半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を進行させる制御部3を備える。
インデクサ部101は、複数のキャリアC(本実施形態では2個)を並べて載置するロードポート110と、各キャリアCから未処理の半導体ウェハーWを取り出すとともに、各キャリアCに処理済みの半導体ウェハーWを収納する受渡ロボット120とを備えている。未処理の半導体ウェハーWを収容したキャリアCは無人搬送車(AGV、OHT)等によって搬送されてロードポート110に載置されるともに、処理済みの半導体ウェハーWを収容したキャリアCは無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。また、ロードポート110においては、受渡ロボット120がキャリアCに対して任意の半導体ウェハーWの出し入れを行うことができるように、キャリアCが図2の矢印CUにて示す如く昇降移動可能に構成されている。なお、キャリアCの形態としては、半導体ウェハーWを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した半導体ウェハーWを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
また、受渡ロボット120は、図1の矢印120Sにて示すようなスライド移動、矢印120Rにて示すような旋回動作および昇降動作が可能とされている。これにより、受渡ロボット120は、2つのキャリアCに対して半導体ウェハーWの出し入れを行うとともに、アライメント部130および冷却部140に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う。受渡ロボット120によるキャリアCに対する半導体ウェハーWの出し入れは、ハンド121のスライド移動、および、キャリアCの昇降移動により行われる。また、受渡ロボット120とアライメント部130または冷却部140との半導体ウェハーWの受け渡しは、ハンド121のスライド移動、および、受渡ロボット120の昇降動作によって行われる。
アライメント部130は、半導体ウェハーWを回転させて続くフラッシュ加熱に適切な向きに向ける処理部である。アライメント部130は、アルミニウム合金製の筐体であるアライメントチャンバー131の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に支持して回転させる機構、および、半導体ウェハーWの周縁部に形成されたノッチやオリフラ等を光学的に検出する機構などを設けて構成される。受渡ロボット120からアライメントチャンバー131へはウェハー中心が所定の位置に位置するように半導体ウェハーWが渡される。アライメント部130では、インデクサ部101から受け取った半導体ウェハーWの中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの位置決めを行う。
熱処理装置100の主要部であるフラッシュ加熱部160は、予備加熱を行った半導体ウェハーWにキセノンフラッシュランプFLからの閃光(フラッシュ光)を照射してフラッシュ加熱処理を行う処理部である。フラッシュ加熱部160の構成については後に詳述する。
冷却部140は、アルミニウム合金製の筐体であるクールチャンバー141の内部に、金属製の冷却プレートの上面に石英板を載置して構成されている。フラッシュ加熱部160にてフラッシュ加熱処理が施された直後の半導体ウェハーWは温度が高いため、冷却部140にて上記石英板上に載置されて冷却される。
搬送ロボット150は、鉛直方向に沿った軸を中心に矢印150Rにて示すように旋回可能とされるとともに、複数のアームセグメントからなる2つのリンク機構を有し、それら2つのリンク機構の先端にはそれぞれ半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151a,151bが設けられる。これらの搬送ハンド151a,151bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、リンク機構によりそれぞれ独立して同一水平方向に直線的にスライド移動可能とされている。また、搬送ロボット150は、2つのリンク機構が設けられるベースを昇降移動することにより、所定のピッチだけ離れた状態のまま2つの搬送ハンド151a,151bを昇降移動させる。本実施形態においては、フラッシュ加熱後に下側の搬送ハンド151bによって保持された半導体ウェハーWの位置ずれを検出する機構を設けているが、これについてもさらに後述する。
また、搬送ロボット150による半導体ウェハーWの搬送空間として搬送ロボット150を収容する搬送チャンバー170が設けられており、アライメントチャンバー131、クールチャンバー141およびフラッシュ加熱部160の熱処理チャンバー6が搬送チャンバー170に連結されて配置されている。搬送ロボット150がアライメントチャンバー131、クールチャンバー141またはフラッシュ加熱部160の熱処理チャンバー6を受け渡し相手として半導体ウェハーWの受け渡し(出し入れ)を行う際には、まず、両搬送ハンド151a,151bが受け渡し相手と対向するように旋回し、その後(または旋回している間に)昇降移動していずれかの搬送ハンドが受け渡し相手と半導体ウェハーWを受け渡しする高さに位置する。そして、搬送ハンド151a(151b)を水平方向に直線的にスライド移動させて受け渡し相手と半導体ウェハーWの受け渡しを行う。
アライメント部130のアライメントチャンバー131および冷却部140のクールチャンバー141とインデクサ部101との間にはそれぞれゲートバルブ181,182が設けられている。また、搬送チャンバー170とアライメントチャンバー131、クールチャンバー141およびフラッシュ加熱部160の熱処理チャンバー6との間にはそれぞれゲートバルブ183,184,185が設けられる。熱処理装置100内にて半導体ウェハーWが搬送される際には、適宜これらのゲートバルブが開閉される。また、アライメントチャンバー131、クールチャンバー141および搬送チャンバー170の内部が清浄に維持されるようにそれぞれに窒素ガス供給部(図示省略)から高純度の窒素ガスが供給され、余剰の窒素ガスは適宜排気管から排気される。
また、制御部3は、熱処理装置100に設けられた種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置100における処理が進行する。なお、図1においては、インデクサ部101内に制御部3を示しているが、これに限定されるものではなく、制御部3は熱処理装置100内の任意の位置に配置することができる。
<1−2.フラッシュ加熱部の構成>
次に、フラッシュ加熱部160の構成について詳細に説明する。図3は、フラッシュ加熱部160の構成を示す縦断面図である。フラッシュ加熱部160は、半導体ウェハーWを収容する熱処理チャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュランプハウス5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲンランプハウス4と、を備える。熱処理チャンバー6の上側にフラッシュランプハウス5が設けられるとともに、下側にハロゲンランプハウス4が設けられている。また、フラッシュ加熱部160は、熱処理チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。
熱処理チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。熱処理チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理チャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、熱処理チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲンランプHLからの光を熱処理チャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。熱処理チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、熱処理チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、熱処理チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
また、チャンバー側部61には、熱処理チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖すると熱処理チャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
また、熱処理チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81は熱処理チャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83はガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。なお、処理ガスは窒素ガスに限定されるものではなく、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などの不活性ガス、または、酸素(O)、水素(H)、塩素(Cl)、塩化水素(HCl)、オゾン(O)、アンモニア(NH)などの反応性ガスであっても良い。
一方、熱処理チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86は熱処理チャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、熱処理チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置100に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置100が設置される工場のユーティリティであっても良い。
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介して熱処理チャンバー6内の気体が排気される。
図4は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。また、図5は保持部7のサセプター74を上面から見た平面図であり、図6は保持部7を側方から見た側面図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプター74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプター74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
基台リング71は円環形状の石英部材である。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、熱処理チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図3参照)。円環形状を有する基台リング71の上面に、その周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。なお、基台リング71の形状は、円環形状から一部が欠落した円弧状であっても良い。
サセプター74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。サセプター74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
保持プレート75の上面周縁部には、ガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、単にガイドリング76を保持プレート75の上面周縁部に載置するだけでも良い。
図7は、ガイドリング76の設置部分を拡大した図である。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面76aとされている。保持プレート75の上面のうちテーパ面76aの先端(下端)よりも内側の領域が半導体ウェハーWを載置する載置面75aとされる。保持プレート75の載置面75aに対するガイドリング76のテーパ面76aの勾配αは30°以上70°以下(本実施形態では45°)である。また、テーパ面76aの表面平均粗さ(Ra)は1.6μm以下とされている。
ガイドリング76の内径(テーパ面76aの先端の径)は、半導体ウェハーWの直径よりも10mm以上40mm以下大きい。従って、保持プレート75の載置面75aの中央に半導体ウェハーWが保持されたときには、当該半導体ウェハーWの外周端からテーパ面76aの先端までの距離は5mm以上20mm以下となる。本実施形態においては、φ300mmの半導体ウェハーWに対してガイドリング76の内径をφ320mmとしている(半導体ウェハーWの外周端からテーパ面76aの先端までの距離は10mm)。なお、ガイドリング76の外径は特に限定されるものではないが、例えば保持プレート75の直径と同じとすれば良い(本実施形態ではφ340mm)。
また、保持プレート75の載置面75aには、複数の支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、載置面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って60°毎に計6本の支持ピン77が立設されている。6本の支持ピン77を配置した円の径(対向する支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、本実施形態ではφ280mmである。それぞれの支持ピン77は石英にて形成されている。複数の支持ピン77は、保持プレート75の上面に穿設された凹部に嵌着して立設すれば良い。
基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプター74の保持プレート75の下面周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプター74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71が熱処理チャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7が熱処理チャンバー6に装着される。保持部7が熱処理チャンバー6に装着された状態においては、サセプター74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。熱処理チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、熱処理チャンバー6に装着された保持部7のサセプター74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された複数の支持ピン77によって点接触にて支持されてサセプター74に保持される。すなわち、半導体ウェハーWは複数の支持ピン77によって保持プレート75の載置面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。また、支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
また、図4および図5に示すように、サセプター74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計220がサセプター74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計220が開口部78を介してサセプター74に保持された半導体ウェハーWの裏面から放射された光を受光し、別置のディテクタによってその半導体ウェハーWの温度が測定される。さらに、サセプター74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
図8は、移載機構10の平面図である。また、図9は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図8の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図8の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプター74の保持プレート75に穿設された貫通孔79(図4,5参照)を通過し、リフトピン12の上端が保持プレート75の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気が熱処理チャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
図3に戻り、熱処理チャンバー6の上方に設けられたフラッシュランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュランプハウス5が熱処理チャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLは熱処理チャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
熱処理チャンバー6の下方に設けられたハロゲンランプハウス4の内部には複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLが内蔵されている。複数のハロゲンランプHLは熱処理チャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。図10は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図10に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲンランプHLからの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲンランプハウス4、フラッシュランプハウス5および熱処理チャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、熱処理チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲンランプハウス4およびフラッシュランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュランプハウス5および上側チャンバー窓63を冷却する。
<1−3.位置ずれ検出機構の構成>
次に、搬送ロボット150の下側の搬送ハンド151bに保持された半導体ウェハーWの位置ずれを検出する機構について説明する。図11は、搬送ロボット150の搬送ハンド151bを示す平面図である。搬送ハンド151bは、左右一対のフィンガー155a,155bを備える。フィンガー155aの内側からフィンガー155bの内側にかけて鍔部156が形成されている。鍔部156の外周は、円から一部が欠落した円弧形状となっている。鍔部156の外周の径は半導体ウェハーWの径よりも大きく、サセプター74上のガイドリング76の内径と同じである。本実施形態においては、φ300mmの半導体ウェハーWに対してガイドリング76の内径をφ320mmとしているため、鍔部156の外周の径も320mmとしている。また、鍔部156の内周は、フィンガー155a,155bを除く部位では円弧形状であり、フィンガー155a,155bでは他の部位よりもせり出している。鍔部156の内周の円弧形状の径は半導体ウェハーWの径よりも小さい。半導体ウェハーWは、鍔部156に載置されて搬送ハンド151bに保持されることとなる。
搬送ハンド151bの一対のフィンガー155aおよびフィンガー155bには切り欠き部157が形成されている。切り欠き部157は、フィンガー155aおよびフィンガー155bのそれぞれの外側端部から鍔部156にかけて形成されている。鍔部156には載置される半導体ウェハーWの周縁部が当接する。すなわち、搬送ハンド151bには、搬送ハンド151bの両端外縁から搬送ハンド151bに載置された半導体ウェハーWの周縁部に対向する位置にかけて一対の切り欠き部157が形成されている。なお、上側の搬送ハンド151aには切り欠き部157は形成されていない。
図12および図13はそれぞれ、搬送ハンド151bに載置された半導体ウェハーWの位置ずれを検出する機構を示す平面図および側面図である。搬送ロボット150が設置された搬送チャンバー170には、ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159が設けられている。ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159は、搬送ハンド151bよりも下側に設けられている。ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159は、レーザー光投射部と受光部とを備えたレーザーセンサーであり、レーザー光投射部から上方に向けて投射したレーザー光の反射光を受光して上方の物体の存在を検出する。ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159は、上方に物体が存在しているときには反射光を受光して”ON”の信号を出力し、上方に物体が存在していないときには反射光を受光できずに”OFF”の信号を出力する。
ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159は、搬送チャンバー170に固定設置されている。搬送ロボット150の搬送ハンド151a,151bは搬送チャンバー170内にて旋回移動される(図1参照)。ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159は、フラッシュ加熱部160から冷却部140に向けて図1の紙面で反時計回りに旋回する搬送ハンド151bが上方を通過する位置に設置されている。より詳細には、ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159は、搬送ハンド151bの旋回中心から見た同一半径上にて並ぶ位置に配置されている。図12に示す如く、フラッシュ加熱部160の熱処理チャンバー6から冷却部140に向けて矢印AR12にて示すように搬送ロボット150が搬送ハンド151bを旋回させるときに、ウェハーセンサー158の直上の測定点を一対の切り欠き部157が通過する位置にウェハーセンサー158は設置されている。また、同様に搬送ロボット150が搬送ハンド151bを旋回させるときに、ハンドセンサー159の直上の測定点を一対のフィンガー155a,155b(但し、切り欠き部157が形成されていない部位)が通過する位置にハンドセンサー159は設置されている。なお、ウェハーセンサー158とハンドセンサー159とはなるべく近い位置に設けるのが好ましい。
ウェハーセンサー158は、搬送ロボット150が搬送ハンド151bをフラッシュ加熱部160の熱処理チャンバー6から冷却部140に向けて旋回させるときに、搬送ハンド151bに載置された半導体ウェハーWを切り欠き部157を介して検出する。ウェハーセンサー158は、直上の測定点を搬送ハンド151bに載置された半導体ウェハーWが通過するタイミングを検出する。より具体的には、ウェハーセンサー158は、直上の測定点を搬送ハンド151bに載置された半導体ウェハーWが通過している間は、上方に向けて投射したレーザー光の反射光を受光して”ON”の信号を出力する。
一方、ハンドセンサー159は、搬送ロボット150が搬送ハンド151bをフラッシュ加熱部160の熱処理チャンバー6から冷却部140に向けて旋回させるときに、直上の測定点を搬送ハンド151bのフィンガー155aおよびフィンガー155aが通過するタイミングを検出する。より具体的には、ハンドセンサー159は、直上の測定点を搬送ハンド151bが通過している間は、上方に向けて投射したレーザー光の反射光を受光して”ON”の信号を出力する。
ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159から出力された信号は制御部3に伝達される。制御部3は、ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159の検出結果に基づいて搬送ハンド151bに保持された半導体ウェハーWの位置ずれを検出し、さらにその位置ずれ検出結果に基づいて冷却部140のクールチャンバー141に対する搬送ハンド151bの受渡位置を補正するように搬送ロボット150を制御する。本明細書において、半導体ウェハーWの位置ずれを検出する検出部は、ウェハーセンサー158、ハンドセンサー159および制御部3が所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部を備えるものである。また、その位置ずれを補正する補正部は、制御部3が所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。
<2.熱処理装置の動作>
次に、本発明に係る熱処理装置100による半導体ウェハーWの処理動作について説明する。この熱処理装置100において処理対象となる半導体ウェハーWは、パターン形成後にイオン注入法により不純物(イオン)が添加されたシリコンの半導体基板である。その不純物の活性化がフラッシュ加熱部160によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置100の処理手順は、制御部3が熱処理装置100の各動作機構を制御することにより進行する。
図14は、熱処理装置100における処理手順を示すフローチャートである。熱処理装置100では、まず、不純物注入後の半導体ウェハーWがキャリアCに複数枚収容された状態でインデクサ部101のロードポート110に載置される。そして、受渡ロボット120がキャリアCから半導体ウェハーWを1枚ずつ取り出し、アライメント部130のアライメントチャンバー131に搬入する。アライメントチャンバー131に半導体ウェハーWが搬入された時点で、ゲートバルブ181がアライメントチャンバー131とインデクサ部101との間を閉鎖する。アライメント部130では、半導体ウェハーWをその中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの位置決めを行う(ステップS1)。
次に、ゲートバルブ183がアライメントチャンバー131と搬送チャンバー170との間を開放し、搬送ロボット150が上側の搬送ハンド151aによってアライメントチャンバー131から位置決めが行われた半導体ウェハーWを搬出する。半導体ウェハーWを取り出した搬送ロボット150はフラッシュ加熱部160を向くように旋回する。また、半導体ウェハーWの搬出後に、ゲートバルブ183がアライメントチャンバー131と搬送チャンバー170との間を閉鎖する。
続いて、ゲートバルブ185が熱処理チャンバー6と搬送チャンバー170との間を開放し、搬送ロボット150が半導体ウェハーWを熱処理チャンバー6に搬入する(ステップS2)。このときに、先行する加熱処理済みの半導体ウェハーWが熱処理チャンバー6に存在している場合には、下側の搬送ハンド151bによって当該加熱処理済みの半導体ウェハーWを取り出してから上側の搬送ハンド151aによって未処理の半導体ウェハーWを熱処理チャンバー6に搬入してウェハー入れ替えを行う。
熱処理チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWにはフラッシュ加熱処理が行われる(ステップS3)。以下、フラッシュ加熱部160におけるフラッシュ加熱処理について説明する。
熱処理チャンバー6への半導体ウェハーWの搬入に先立って、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されて熱処理チャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86から熱処理チャンバー6内の気体が排気される。これにより、熱処理チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からも熱処理チャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、フラッシュ加熱部160における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150により搬送開口部66を介して未処理の半導体ウェハーWが熱処理チャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボット150は、半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151aを保持部7の直上位置まで進出させて停止させる。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプター74の上面から突き出て搬送ハンド151aから半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12はサセプター74の支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボット150が搬送ハンド151aを熱処理空間65から退出させ、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプター74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。
半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の支持ピン77によって点接触にて支持されてサセプター74に保持される。半導体ウェハーWは、その中心が保持プレート75の載置面75aの中心軸と一致するように(つまり、載置面75aの中央に)、複数の支持ピン77によって支持される。よって、半導体ウェハーWは複数の支持ピン77によってガイドリング76内周のテーパ面76aよりも内側に一定間隔を隔てて支持されることとなる。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面としてサセプター74に保持される。複数の支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の載置面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプター74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
半導体ウェハーWが保持部7のサセプター74によって水平姿勢にて下方より保持された後、40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプター74を透過して半導体ウェハーWの裏面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計220によって測定されている。すなわち、サセプター74に保持された半導体ウェハーWの裏面から開口部78を介して放射された赤外光を放射温度計220が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度に到達したか否かを監視する。その予備加熱温度は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度に暫時維持する。具体的には、放射温度計220によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御して半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度に維持している。
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲンランプハウス4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。さらに、チャンバー側部61に装着された反射リング69の内周面は鏡面とされているため、この反射リング69の内周面によって半導体ウェハーWの周縁部に向けて反射する光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一なものとすることができる。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接に熱処理チャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてから熱処理チャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
ところで、このフラッシュ光照射によって、半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に1000℃以上の処理温度にまで上昇する一方、その瞬間の裏面温度は予備加熱温度からさほどには上昇しない。すなわち、半導体ウェハーWの表面と裏面とに瞬間的に温度差が発生するのである。その結果、半導体ウェハーWの表面のみに急激な熱膨張が生じ、裏面はほとんど熱膨張しないために、半導体ウェハーWが表面を凸面とするように瞬間的に反る。このような表面を凸面とする瞬間的な反りが発生することによって、半導体ウェハーWがサセプター74から跳躍して浮上する。
サセプター74から跳躍して浮上した半導体ウェハーWは、その直後にサセプター74に向けて落下してくる。このときに、薄板状の半導体ウェハーWは鉛直方向に沿って上方に跳躍し、そのまま鉛直方向下方に落下するとは限らず、むしろ水平方向の位置がずれて落下してくることが多い。その結果、フラッシュ光照射後の半導体ウェハーWは、その中心が保持プレート75の載置面75aの中心軸からずれて複数の支持ピン77に保持されることとなる。すなわち、フラッシュ光照射により、サセプター74上にて半導体ウェハーWの位置ずれが生じるのである。なお、浮上した半導体ウェハーWの外周端がガイドリング76に落下してきたとしても、テーパ面76aに沿って当該外周端が滑ることにより、半導体ウェハーWはガイドリング76よりも内側には保持されることとなる。
フラッシュ光照射によって跳躍した半導体ウェハーWが落下して複数の支持ピン77によって支持された後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度も放射温度計220によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプター74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプター74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置されたフラッシュ加熱後の半導体ウェハーWが搬送ロボット150の下側の搬送ハンド151bにより搬出される(ステップS4)。搬送ロボット150は、下側の搬送ハンド151bをリフトピン12によって突き上げられた半導体ウェハーWの直下位置にまで進出させて停止させる。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、フラッシュ加熱後の半導体ウェハーWが搬送ハンド151bに渡されて載置される。その後、搬送ロボット150が搬送ハンド151bを熱処理チャンバー6から退出させて半導体ウェハーWを搬出する。
このとき、フラッシュ光照射によって半導体ウェハーWの位置ずれが生じているが、半導体ウェハーWが複数の支持ピン77によって支持されている状態であれば、移載機構10のリフトピン12によって半導体ウェハーWを受け取ることができる。また、搬送ハンド151bの鍔部156の外周は半導体ウェハーWの径よりも大きく、ガイドリング76の内径と同じであるため、フラッシュ光照射後にガイドリング76よりも内側に保持されている半導体ウェハーWであれば、搬送ハンド151bに載置して熱処理チャンバー6から搬出することができる。但し、フラッシュ光照射によって生じた位置ずれがそのまま保存されて搬送ハンド151bに半導体ウェハーWが載置されることとなる。
搬送ハンド151bにてフラッシュ加熱後の半導体ウェハーWを受け取った搬送ロボット150は、熱処理チャンバー6から冷却部140に向くように図1の紙面で反時計回りに旋回する。また、ゲートバルブ185が熱処理チャンバー6と搬送チャンバー170との間を閉鎖するとともに、ゲートバルブ184がクールチャンバー141と搬送チャンバー170との間を開放する。
搬送ロボット150が搬送ハンド151bを熱処理チャンバー6から冷却部140に旋回移動させるときに、ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159の上方を搬送ハンド151bが通過する。このとき、上述したように、搬送ハンド151bの切り欠き部157がウェハーセンサー158の直上の測定点を通過し、搬送ハンド151bの切り欠き部157が形成されていない部位がハンドセンサー159の直上の測定点を通過する。ウェハーセンサー158は、直上の測定点を搬送ハンド151bに載置された半導体ウェハーWが通過するタイミングを検出する。また、ハンドセンサー159は、直上の測定点を搬送ハンド151b自体が通過するタイミングを検出する。
図15〜図17は、ウェハーセンサー158およびハンドセンサー159の検出結果の一例を示す図である。図15に示すのは、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの位置ずれが生じることなく、搬送ハンド151bの正規位置に半導体ウェハーWが載置された場合の例である。この場合、搬送ロボット150が搬送ハンド151bを熱処理チャンバー6から冷却部140に旋回移動させると、まず、搬送ハンド151bがハンドセンサー159の直上の測定点に到達したことが検出され、ハンドセンサー159が”ON”信号を出力する。続いて、搬送ハンド151bに載置された半導体ウェハーWの端縁部がウェハーセンサー158の直上の測定点に到達したことが検出され、ウェハーセンサー158が”ON”信号を出力する。搬送ハンド151bがハンドセンサー159の測定点に到達した時点から半導体ウェハーWがウェハーセンサー158の測定点に到達した時点まで、つまりハンドセンサー159が”ON”信号を出力してからウェハーセンサー158が”ON”信号を出力するまでの時間が初期遅延時間T1(第1の時間)である。
次に、搬送ハンド151bに載置された半導体ウェハーWがウェハーセンサー158の直上の測定点を通過し終えたことが検出され、ウェハーセンサー158が”OFF”信号を出力する。さらに、続いて、搬送ハンド151bがハンドセンサー159の直上の測定点を通過し終えたことが検出され、ハンドセンサー159が”OFF”信号を出力する。ハンドセンサー159の測定点が一対のフィンガー155a,155bの間に位置しているときは、半導体ウェハーWが検出されるため、ハンドセンサー159は”ON”信号を出力する。
半導体ウェハーWがウェハーセンサー158の測定点に到達した時点から測定点を通過し終えた時点まで、つまりウェハーセンサー158が”ON”信号を出力してから”OFF”信号を出力するまでの時間が半導体ウェハーWがウェハーセンサー158の測定点を通過するのに要するウェハー通過時間T2(第2の時間)である。そして、半導体ウェハーWがウェハーセンサー158の測定点を通過し終えた時点から搬送ハンド151bがハンドセンサー159の測定点を通過し終えた時点まで、つまりウェハーセンサー158が”OFF”信号を出力してからハンドセンサー159が”OFF”信号を出力するまでの時間が終期遅延時間T3(第3の時間)である。半導体ウェハーWが搬送ハンド151bの正規位置に位置ずれを生じることなく載置されている場合、初期遅延時間T1と終期遅延時間T3とは等しくなる。
また、ハンドセンサー159が”ON”信号を出力してから”OFF”信号を出力するまでの時間、すなわち搬送ハンド151bがハンドセンサー159の測定点に到達した時点から測定点を通過し終える時点までの時間が搬送ハンド151bがハンドセンサー159の測定点を通過するのに要するハンド通過時間T0である。このハンド通過時間T0は、半導体ウェハーWの位置ずれの有無に関わらず、常に一定の値となる。ハンド通過時間T0は、初期遅延時間T1と、ウェハー通過時間T2と、終期遅延時間T3と、の総和である。半導体ウェハーWが搬送ハンド151bの正規位置に位置ずれを生じることなく載置されている場合の、初期遅延時間T1、ウェハー通過時間T2および終期遅延時間T3は基準値として制御部3の記憶部に格納されている。なお、このような初期遅延時間T1、ウェハー通過時間T2および終期遅延時間T3は基準値は、熱処理装置100のメンテナンス時等に、搬送ハンド151bの正規位置に半導体ウェハーWを載置しての実測によ求めるようにすれば良い。或いは、予め計算によって基準値を求めるようにしても良い。

図16には、半導体ウェハーWが図11のX軸方向に位置ずれして搬送ハンド151bに載置された場合の例を示す。半導体ウェハーWが図11のX軸方向、つまり搬送ハンド151bの幅方向に位置ずれしていた場合、半導体ウェハーWがウェハーセンサー158の測定点を通過するのに要するウェハー通過時間T2は位置ずれが生じていない場合のウェハー通過時間T2の基準値と同じになる。そして、初期遅延時間T1および終期遅延時間T3が位置ずれが生じていない場合の基準値から変化する。図16の例では、初期遅延時間T1が基準値よりも短くなり、終期遅延時間T3が基準値よりも長くなっている。
制御部3は、初期遅延時間T1の基準値(図15の初期遅延時間T1)と図16の位置ずれが生じているときの初期遅延時間T1との差分を算定する。そして、制御部3は、初期遅延時間T1についての差分からフラッシュ光照射によって生じた半導体ウェハーWのX軸方向の位置ずれ量を算定する。なお、半導体ウェハーWがX軸方向に位置ずれしている場合、ウェハー通過時間T2は基準値と同じになるため、終期遅延時間T3の基準値と図16の終期遅延時間T3との差分は初期遅延時間T1についての差分と等しくなる。
一方、図17には、半導体ウェハーWが図11のY軸方向に位置ずれして搬送ハンド151bに載置された場合の例を示す。半導体ウェハーWが図11のY軸方向、つまり搬送ハンド151bの長手方向に位置ずれしていた場合、半導体ウェハーWがウェハーセンサー158の測定点を通過するのに要するウェハー通過時間T2が基準値から変化する。半導体ウェハーWが搬送ハンド151bの先端側に位置ずれしていた場合、ウェハー通過時間T2は位置ずれを生じていない場合の基準値よりも長くなる。逆に、半導体ウェハーWが搬送ハンド151bの基端側に位置ずれしていた場合、ウェハー通過時間T2は基準値よりも短くなる。図17の例では、ウェハー通過時間T2は基準値よりも短くなっている。
また、図17の例では、初期遅延時間T1および終期遅延時間T3が位置ずれが生じていない場合の基準値よりも大きくなっている。半導体ウェハーWがX軸方向に位置ずれせずにY軸方向のみに位置ずれしている場合には、初期遅延時間T1と終期遅延時間T3とは等しくなる。制御部3は、ウェハー通過時間T2の基準値(図15のウェハー通過時間T2)と図17の位置ずれが生じているときのウェハー通過時間T2との差分を算定する。そして、制御部3は、ウェハー通過時間T2についての差分からフラッシュ光照射によって生じた半導体ウェハーWのY軸方向の位置ずれ量を算定する。
実際には、半導体ウェハーWの位置ずれはX軸方向およびY軸方向の双方について生じることが多い。制御部3は、半導体ウェハーWがウェハーセンサー158の測定点を通過するのに要するウェハー通過時間T2の実測値と基準値との差分を算定し、その差分から位置ずれのY軸方向成分の長さを算定する。また、制御部3は、初期遅延時間T1および終期遅延時間T3の実測値と基準値との差分を算定し、その差分から位置ずれのX軸方向成分の長さを算定する。
このようにして、制御部3は、初期遅延時間T1、ウェハー通過時間T2および終期遅延時間T3に基づいて搬送ハンド151bに載置されている半導体ウェハーWの位置ずれを検出し、図11のX軸方向およびY軸方向のそれぞれについて位置ずれ量を算定する(ステップS5)。算定された位置ずれ量は制御部3の記憶部に格納される。
その後、搬送ロボット150が冷却部140のクールチャンバー141に対向するように旋回した後、搬送ハンド151bを前進させてフラッシュ加熱直後の半導体ウェハーWをクールチャンバー141に搬入する(ステップS6)。このときに、上述した半導体ウェハーWの位置ずれ検出結果に基づいて、その位置ずれを補正してクールチャンバー141に半導体ウェハーWを搬入するように制御部3が搬送ロボット150を制御する。
具体的には、搬送ハンド151bに載置されている半導体ウェハーWのX軸方向およびY軸方向のそれぞれについて位置ずれ量が算定されて制御部3の記憶部に格納されている。制御部3は、半導体ウェハーWのX軸方向(搬送ハンド151bの幅方向)の位置ずれ量に基づいて、搬送ハンド151bの旋回角度を補正する。また、制御部3は、半導体ウェハーWのY軸方向(搬送ハンド151bの長手方向)の位置ずれ量に基づいて、搬送ハンド151bを前進させるストローク量を補正する。これにより、半導体ウェハーWの位置ずれ検出結果に基づいて、冷却部140のクールチャンバー141に半導体ウェハーWを搬入するときの搬送ハンド151bの受渡位置が補正され、クールチャンバー141内の正規の受渡位置に半導体ウェハーWを正確に搬入することができる。
冷却部140のクールチャンバー141にフラッシュ加熱後の半導体ウェハーWが搬入された後、ゲートバルブ184がクールチャンバー141と搬送チャンバー170との間を閉鎖する。冷却部140では、フラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却処理が行われる(ステップS7)。熱処理チャンバー6から搬出された時点での半導体ウェハーW全体の温度は比較的高温であるため、これを冷却部140にて常温近傍にまで冷却するのである。所定の冷却処理時間が経過した後、ゲートバルブ182がクールチャンバー141とインデクサ部101との間を開放し、受渡ロボット120が冷却後の半導体ウェハーWをクールチャンバー141から搬出し、キャリアCへと返却する。キャリアCに所定枚数の処理済み半導体ウェハーWが収容されると、そのキャリアCはインデクサ部101のロードポート110から搬出される。
本実施形態においては、フラッシュ加熱処理後に半導体ウェハーWを搬送ハンド151bに載置してフラッシュ加熱部160の熱処理チャンバー6から冷却部140のクールチャンバー141に搬送するときに、フラッシュ光照射に起因して生じた半導体ウェハーWの位置ずれを検出している。そして、その検出結果に基づいて、冷却部140のクールチャンバー141に半導体ウェハーWを搬入するときに搬送ハンド151bの受渡位置を補正している。このため、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの位置ずれが生じたとしても、次工程である冷却部140の正規の受渡位置に半導体ウェハーWを正確に搬入することができる。その結果、搬送不良に起因した半導体ウェハーWの割れや熱処理装置100の破損を防止することもできる。また、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWを機械的に固定していないため、パーティクルが発生することもない。さらに、搬送ハンド151bに載置された半導体ウェハーWの位置ずれ量を測定することによって、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射条件と位置ずれ量との相関関係を把握することもできる。
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部160のサセプター74に複数の支持ピン77を設け、それら複数の支持ピン77によって半導体ウェハーWを支持するようにしていたが、これに限定されるものではなく、支持ピン77を設けていないサセプターを用いるようにしても良い。例えば、特許文献1,2に開示されるような凹部を有するサセプターの載置面に半導体ウェハーWを直接載置してフラッシュ光を照射するようにしても良い。また、図18に示すような、凹面状の凹部275を形成したサセプター274に半導体ウェハーWを保持してフラッシュ光照射を行うようにしても良い。これら支持ピンを設けていないサセプターに半導体ウェハーWを保持した場合であっても、フラッシュ光照射時のウェハー表面の急激な熱膨張によって半導体ウェハーWの位置ずれが生じることがある。フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの位置ずれが生じたとしても、上記実施形態と同様にして半導体ウェハーWの位置ずれを検出し、その検出結果に基づいて搬送ハンド151bの受渡位置を補正することにより、冷却部140の正規の受渡位置に半導体ウェハーWを正確に搬入することができる。
また、上記実施形態においては、搬送ロボット150に2本の搬送ハンド151a,151bを備えるようにしていたが、1本の搬送ハンドを備えるようにしても良い。搬送ロボット150に1本の搬送ハンドを設けた場合には、その搬送ハンドを上記実施形態の搬送ハンド151bと同様のものとすることにより、上記実施形態と同様にしてフラッシュ加熱後の半導体ウェハーWの位置ずれを検出することができる。もっとも、搬送ハンドが1本であると、半導体ウェハーWの入れ替えを行うことができないため、搬送効率は低下せざるを得ない。
また、上記実施形態においては、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWの予備加熱を行うようにしていたが、これに代えて半導体ウェハーWを保持するサセプターをホットプレート上に載置し、そのホットプレートからの熱伝導によって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしても良い。
また、上記実施形態においては、フラッシュランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲンランプハウス4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。
3 制御部
4 ハロゲンランプハウス
5 フラッシュランプハウス
6 熱処理チャンバー
7 保持部
74 サセプター
76 ガイドリング
77 支持ピン
100 熱処理装置
101 インデクサ部
130 アライメント部
131 アライメントチャンバー
140 冷却部
141 クールチャンバー
150 搬送ロボット
151a,151b 搬送ハンド
155a,155b フィンガー
156 鍔部
157 切り欠き部
158 ウェハーセンサー
159 ハンドセンサー
160 フラッシュ加熱部
170 搬送チャンバー
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー

Claims (3)

  1. 円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
    チャンバー内にてサセプターに保持された基板にフラッシュランプから出射されたフラッシュ光を照射して前記基板を加熱するフラッシュ加熱部と、
    前記フラッシュ加熱部にて加熱された前記基板を冷却する冷却部と、
    前記フラッシュ加熱部にて加熱された前記基板を搬送ハンドに載置して前記チャンバーから搬出し、前記搬送ハンドを旋回させて前記基板を前記冷却部に搬入する搬送ロボットと、
    前記搬送ロボットが前記搬送ハンドを旋回させるときに、前記搬送ハンドに載置された前記基板の位置ずれを検出する検出部と、
    前記検出部による検出結果に基づいて、前記冷却部に前記基板を搬入するときに前記搬送ハンドの受渡位置を補正する補正部と、
    を備え
    前記検出部は、
    前記搬送ロボットが前記搬送ハンドを前記チャンバーから前記冷却部に移動させるときに、前記搬送ハンドが測定点を通過するタイミングを検出するハンドセンサーと、
    前記搬送ロボットが前記搬送ハンドを前記チャンバーから前記冷却部に移動させるときに、前記基板が測定点を通過するタイミングを検出する基板センサーと、
    を備え、
    前記ハンドセンサーおよび前記基板センサーは、前記搬送ハンドの旋回中心から見た同一半径上にて並ぶ位置に配置され、
    前記ハンドセンサーおよび前記基板センサーの検出結果に基づいて前記検出部が前記搬送ハンドに載置された前記基板の位置ずれを検出することを特徴とする熱処理装置。
  2. 請求項記載の熱処理装置において、
    前記搬送ハンドには、前記搬送ハンドの両端外縁から前記搬送ハンドに載置された前記基板の周縁部に対向する位置にかけて一対の切り欠きが形成され、
    前記搬送ロボットが前記搬送ハンドを前記チャンバーから前記冷却部に移動させるときに、前記基板センサーの測定点が前記一対の切り欠きを通過するとともに、前記ハンドセンサーの測定点が前記一対の切り欠きが形成されていない前記搬送ハンドの部位を通過するように、前記ハンドセンサーおよび前記基板センサーが設置されていることを特徴とする熱処理装置。
  3. 請求項または請求項に記載の熱処理装置において、
    前記検出部は、
    前記搬送ハンドが前記ハンドセンサーの測定点に到達した時点から前記基板が前記基板センサーの測定点に到達した時点までの第1の時間と、
    前記基板が前記基板センサーの測定点を通過するのに要する第2の時間と、
    前記基板が前記基板センサーの測定点を通過し終えた時点から前記搬送ハンドが前記ハンドセンサーの測定点を通過し終えた時点までの第3の時間と、
    に基づいて前記搬送ハンドに載置された前記基板の位置ずれを検出することを特徴とする熱処理装置。
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