以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<1.第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置100を示す平面図であり、図2はその正面図である。熱処理装置100は基板として略円形の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。なお、図1および図2においては適宜部分的に断面図としており、細部については適宜簡略化している。また、図1,2および図11においては、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を付している。
図1および図2に示すように、熱処理装置100は、未処理の半導体ウェハーWを装置内に搬入するとともに処理済みの半導体ウェハーWを装置外に搬出するためのインデクサ部101、未処理の半導体ウェハーWの位置決めを行うアライメント部130、加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却を行う冷却部140、半導体ウェハーWにフラッシュ加熱処理を施すフラッシュ加熱部160並びにアライメント部130、冷却部140およびフラッシュ加熱部160に対して半導体ウェハーWの搬送を行う搬送ロボット150を備える。また、熱処理装置100は、上記の各処理部に設けられた動作機構および搬送ロボット150を制御して半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を進行させる制御部3を備える。
インデクサ部101は、複数のキャリアC(本実施形態では2個)を並べて載置するロードポート110と、各キャリアCから未処理の半導体ウェハーWを取り出すとともに、各キャリアCに処理済みの半導体ウェハーWを収納する受渡ロボット120とを備えている。未処理の半導体ウェハーWを収容したキャリアCは無人搬送車(AGV)等によって搬送されてロードポート110に載置されるともに、処理済みの半導体ウェハーWを収容したキャリアCは当該無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。また、ロードポート110においては、受渡ロボット120がキャリアCに対して任意の半導体ウェハーWの出し入れを行うことができるように、キャリアCが図2の矢印CUにて示す如く昇降移動可能に構成されている。なお、キャリアCの形態としては、半導体ウェハーWを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した半導体ウェハーWを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
また、受渡ロボット120は、矢印120Sにて示すようなスライド移動、矢印120Rにて示すような旋回動作および昇降動作が可能とされている。これにより、受渡ロボット120は、2つのキャリアCに対して半導体ウェハーWの出し入れを行うとともに、アライメント部130および冷却部140に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う。受渡ロボット120によるキャリアCに対する半導体ウェハーWの出し入れは、ハンド121のスライド移動、および、キャリアCの昇降移動により行われる。また、受渡ロボット120とアライメント部130または冷却部140との半導体ウェハーWの受け渡しは、ハンド121のスライド移動、および、受渡ロボット120の昇降動作によって行われる。
アライメント部130は、半導体ウェハーWを回転させて続くフラッシュ加熱に適切な向きに向ける処理部である。受渡ロボット120からアライメント部130へはウェハー中心が所定の位置に位置するように半導体ウェハーWが渡される。アライメント部130では、インデクサ部101から受け取った半導体ウェハーWの中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで回転させノッチやオリフラ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの位置決めを行う。
熱処理装置100の主要部であるフラッシュ加熱部160は、予備加熱を行った半導体ウェハーWにキセノンフラッシュランプFLからの閃光(フラッシュ光)を照射してフラッシュ加熱処理を行う処理部である。フラッシュ加熱部160の構成については後に詳述する。
冷却部140は、金属製の冷却プレートの上面に石英板を載置して構成されている。フラッシュ加熱部160にてフラッシュ加熱処理が施された直後の半導体ウェハーWは温度が高いため、冷却部140にて上記石英板上に載置されて冷却される。
搬送ロボット150は、鉛直方向に沿った軸を中心に矢印150Rにて示すように旋回可能とされるとともに、複数のアームセグメントからなる2つのリンク機構を有し、それら2つのリンク機構の先端にはそれぞれ半導体ウェハーWを保持する搬送アーム151a,151bが設けられる。これらの搬送アーム151a,151bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、リンク機構によりそれぞれ独立して同一水平方向に直線的にスライド移動可能とされている。また、搬送ロボット150は、2つのリンク機構が設けられるベースを昇降移動することにより、所定のピッチだけ離れた状態のまま2つの搬送アーム151a,151bを昇降移動させる。
また、搬送ロボット150による半導体ウェハーWの搬送空間として搬送ロボット150を収容する搬送室170が設けられており、第1実施形態においてはアライメント部130、冷却部140およびフラッシュ加熱部160が搬送室170に連結されて配置されている。搬送ロボット150がアライメント部130、フラッシュ加熱部160または冷却部140を受け渡し相手として半導体ウェハーWの受け渡し(出し入れ)を行う際には、まず、両搬送アーム151a,151bが受け渡し相手と対向するように旋回し、その後(または旋回している間に)昇降移動していずれかの搬送アームが受け渡し相手と半導体ウェハーWを受け渡しする高さに位置する。そして、搬送アーム151a(151b)を水平方向に直線的にスライド移動させて受け渡し相手と半導体ウェハーWの受け渡しを行う。
また、インデクサ部101とアライメント部130および冷却部140との間にはそれぞれゲートバルブ181,182が設けられ、搬送室170とアライメント部130、冷却部140およびフラッシュ加熱部160との間にはそれぞれゲートバルブ183,184,185が設けられる。そして、アライメント部130、冷却部140および搬送室170の内部が清浄に維持されるようにそれぞれに窒素ガス供給部(図示省略)から高純度の窒素ガスが供給され、余剰の窒素ガスは適宜排気管から排気される。なお、半導体ウェハーWが搬送される際に適宜これらのゲートバルブが開閉される。
また、アライメント部130および冷却部140は、インデクサ部101と搬送ロボット150との間のウェハー搬送経路の往路および復路にそれぞれ位置し、アライメント部130では半導体ウェハーWの位置決めを行うために半導体ウェハーWが一時的に載置され、冷却部140では加熱処理後の半導体ウェハーWを冷却するために半導体ウェハーWが一時的に載置される。
また、制御部3は、熱処理装置100に設けられた種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。
次に、フラッシュ加熱部160の構成について詳細に説明する。図3は、フラッシュ加熱部160の構成を示す縦断面図である。フラッシュ加熱部160は、半導体ウェハーWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、を備える。
チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒状の内壁を有するチャンバー側部63、および、チャンバー側部63の下部を覆うチャンバー底部62によって構成される。また、チャンバー側部63およびチャンバー底部62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の上方は上部開口60とされており、上部開口60にはチャンバー窓61が装着されて閉塞されている。
チャンバー6の天井部を構成するチャンバー窓61は、石英により形成された円板形状部材であり、ランプハウス5から出射されたフラッシュ光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。チャンバー6の本体を構成するチャンバー底部62およびチャンバー側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されており、チャンバー側部63の内側面の上部のリング631は、光照射による劣化に対してステンレススチールより優れた耐久性を有するアルミニウム(Al)合金等で形成されている。
また、熱処理空間65の気密性を維持するために、チャンバー窓61とチャンバー側部63とはOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間にOリングを挟み込むとともに、クランプリング90をチャンバー窓61の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング90をチャンバー側部63にネジ止めすることによって、チャンバー窓61をOリングに押し付けている。
チャンバー底部62には、保持部7を貫通して半導体ウェハーWをその下面(ランプハウス5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数(本実施の形態では3本)の支持ピン70が立設されている。支持ピン70は、例えば石英により形成されており、チャンバー6の外部から固定されているため、容易に取り替えることができる。
チャンバー側部63は、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部66を有し、搬送開口部66は、軸662を中心に回動するゲートバルブ185により開閉可能とされる。チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には熱処理空間65に処理ガス(例えば、窒素(N2)ガスやヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス、あるいは、酸素(02)ガス等)を導入する導入路81が形成され、その一端は弁82を介して図示省略の給気機構に接続され、他端はチャンバー側部63の内部に形成されるガス導入バッファ83に接続される。また、搬送開口部66には熱処理空間65内の気体を排出する排出路86が形成され、弁87を介して図示省略の排気機構に接続される。
図4は、チャンバー6をガス導入バッファ83の位置にて水平面で切断した断面図である。図4に示すように、ガス導入バッファ83は、図3に示す搬送開口部66の反対側においてチャンバー側部63の内周の約1/3に亘って形成されており、導入路81を介してガス導入バッファ83に導かれた処理ガスは、複数のガス供給孔84から熱処理空間65内へと供給される。
また、フラッシュ加熱部160は、チャンバー6の内部において半導体ウェハーWを水平姿勢にて保持しつつフラッシュ光照射前にその保持する半導体ウェハーWの予備加熱を行う略円板状の保持部7と、保持部7をチャンバー6の底面であるチャンバー底部62に対して昇降させる保持部昇降機構4と、を備える。図3に示す保持部昇降機構4は、略円筒状のシャフト41、移動板42、ガイド部材43(本実施の形態ではシャフト41の周りに3本配置される)、固定板44、ボールネジ45、ナット46およびモータ40を有する。チャンバー6の下部であるチャンバー底部62には保持部7よりも小さい直径を有する略円形の下部開口64が形成されており、ステンレススチール製のシャフト41は、下部開口64を挿通して、保持部7(厳密には保持部7のホットプレート71)の下面に接続されて保持部7を支持する。
移動板42にはボールネジ45と螺合するナット46が固定されている。また、移動板42は、チャンバー底部62に固定されて下方へと伸びるガイド部材43により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。また、移動板42は、シャフト41を介して保持部7に連結される。
モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44に設置され、タイミングベルト401を介してボールネジ45に接続される。保持部昇降機構4により保持部7が昇降する際には、駆動部であるモータ40が制御部3の制御によりボールネジ45を回転し、ナット46が固定された移動板42がガイド部材43に沿って鉛直方向に移動する。この結果、移動板42に固定されたシャフト41が鉛直方向に沿って移動し、シャフト41に接続された保持部7が図3に示す半導体ウェハーWの受渡位置と図7に示す半導体ウェハーWの処理位置との間で滑らかに昇降する。
移動板42の上面には略半円筒状(円筒を長手方向に沿って半分に切断した形状)のメカストッパ451がボールネジ45に沿うように立設されており、仮に何らかの異常により移動板42が所定の上昇限界を超えて上昇しようとしても、メカストッパ451の上端がボールネジ45の端部に設けられた端板452に突き当たることによって移動板42の異常上昇が防止される。これにより、保持部7がチャンバー窓61の下方の所定位置以上に上昇することはなく、保持部7とチャンバー窓61との衝突が防止される。
また、保持部昇降機構4は、チャンバー6の内部のメンテナンスを行う際に保持部7を手動にて昇降させる手動昇降部49を有する。手動昇降部49はハンドル491および回転軸492を有し、ハンドル491を介して回転軸492を回転することより、タイミングベルト495を介して回転軸492に接続されるボールネジ45を回転して保持部7の昇降を行うことができる。
チャンバー底部62の下側には、シャフト41の周囲を囲み下方へと伸びる伸縮自在のベローズ47が設けられ、その上端はチャンバー底部62の下面に接続される。一方、ベローズ47の下端はベローズ下端板471に取り付けられている。べローズ下端板471は、鍔状部材411によってシャフト41にネジ止めされて取り付けられている。保持部昇降機構4により保持部7がチャンバー底部62に対して上昇する際にはベローズ47が収縮され、下降する際にはべローズ47が伸張される。そして、保持部7が昇降する際にも、ベローズ47が伸縮することによって熱処理空間65内の気密状態が維持される。
図5は、保持部7の構成を示す断面図である。保持部7は、半導体ウェハーWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)するホットプレート(加熱プレート)71、および、ホットプレート71の上面(保持部7が半導体ウェハーWを保持する側の面)に設置されるサセプタ72を有する。保持部7の下面には、既述のように保持部7を昇降するシャフト41が接続される。サセプタ72は石英(あるいは、窒化アルミニウム(AIN)等であってもよい)により形成され、その上面には半導体ウェハーWの位置ずれを防止するピン75が設けられる。サセプタ72は、その下面をホットプレート71の上面に面接触させてホットプレート71上に設置される。これにより、サセプタ72は、ホットプレート71からの熱エネルギーを拡散してサセプタ72上面に載置された半導体ウェハーWに伝達するとともに、メンテナンス時にはホットプレート71から取り外して洗浄可能とされる。
ホットプレート71は、ステンレススチール製の上部プレート73および下部プレート74にて構成される。上部プレート73と下部プレート74との間には、ホットプレート71を加熱するニクロム線等の抵抗加熱線76が配設され、導電性のニッケル(Ni)ロウが充填されて封止されている。また、上部プレート73および下部プレート74の端部はロウ付けにより接着されている。
図6は、ホットプレート71を示す平面図である。図6に示すように、ホットプレート71は、保持される半導体ウェハーWと対向する領域の中央部に同心円状に配置される円板状のゾーン711および円環状のゾーン712、並びに、ゾーン712の周囲の略円環状の領域を周方向に4等分割した4つのゾーン713〜716を備え、各ゾーン間には若干の間隙が形成されている。また、ホットプレート71には、支持ピン70が挿通される3つの貫通孔77が、ゾーン711とゾーン712との隙間の周上に120°毎に設けられる。
6つのゾーン711〜716のそれぞれには、相互に独立した抵抗加熱線76が周回するように配設されてヒータが個別に形成されており、各ゾーンに内蔵されたヒータにより各ゾーンが個別に加熱される。保持部7に保持された半導体ウェハーWは、6つのゾーン711〜716に内蔵されたヒータにより加熱される。また、ゾーン711〜716のそれぞれには、熱電対を用いて各ゾーンの温度を計測するセンサ710が設けられている。各センサ710は略円筒状のシャフト41の内部を通り制御部3に接続される。
ホットプレート71が加熱される際には、センサ710により計測される6つのゾーン711〜716のそれぞれの温度が予め設定された所定の温度になるように、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が制御部3により制御される。制御部3による各ゾーンの温度制御はPID(Proportional,Integral,Derivative)制御により行われる。ホットプレート71では、半導体ウェハーWの熱処理(複数の半導体ウェハーWを連続的に処理する場合は、全ての半導体ウェハーWの熱処理)が終了するまでゾーン711〜716のそれぞれの温度が継続的に計測され、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が個別に制御されて、すなわち、各ゾーンに内蔵されたヒータの温度が個別に制御されて各ゾーンの温度が設定温度に維持される。なお、各ゾーンの設定温度は、基準となる温度から個別に設定されたオフセット値だけ変更することが可能とされる。
6つのゾーン711〜716にそれぞれ配設される抵抗加熱線76は、シャフト41の内部を通る電力線を介して電力供給源(図示省略)に接続されている。電力供給源から各ゾーンに至る経路途中において、電力供給源からの電力線は、マグネシア(マグネシウム酸化物)等の絶縁体を充填したステンレスチューブの内部に互いに電気的に絶縁状態となるように配置される。なお、シャフト41の内部は大気開放されている。
次に、ランプハウス5は、チャンバー6内の保持部7の上方に設けられている。ランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなるフラッシュ光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53がチャンバー窓61と相対向することとなる。ランプハウス5は、チャンバー6内にて保持部7に保持される半導体ウェハーWにランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することにより半導体ウェハーWを加熱する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし10ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。このような粗面化加工を施しているのは、リフレクタ52の表面が完全な鏡面であると、複数のフラッシュランプFLからの反射光の強度に規則パターンが生じて半導体ウェハーWの表面温度分布の均一性が低下するためである。
上記の構成以外にもフラッシュ加熱部160は、半導体ウェハーWの熱処理時にフラッシュランプFLおよびホットプレート71から発生する熱エネルギーによるチャンバー6およびランプハウス5の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6のチャンバー側部63およびチャンバー底部62には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱するための気体供給管55および排気管56が設けられて空冷構造とされている(図3参照)。また、チャンバー窓61とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、ランプハウス5およびチャンバー窓61を冷却する。
フラッシュ加熱部160への半導体ウェハーWの搬入出は搬送ロボット150によって行われる。すなわち、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放された状態にて、搬送ロボット150は、処理前の半導体ウェハーWを搬送アーム151aで保持してチャンバー6内に搬入するとともに、処理後の半導体ウェハーWを搬送アーム151bで受け取ってチャンバー6から搬出する。
図8は、搬送ロボット150の搬送アーム151bの平面図である。ここでは、搬送アーム151bについて説明するが、搬送アーム151aについても全く同様である。搬送アーム151bは汚染が少なく耐熱性に優れた石英にて形成されている。図8に示すように、搬送アーム151bの先端は、半導体ウェハーWの外周よりも若干大きな円弧状の切り欠きが形成されてC字形状とされている。そして、搬送アーム151bの円弧状部分の内側から内方に突き出るように3箇所の支持部155が設けられている。搬送アーム151bが半導体ウェハーWを保持するときには、3箇所の支持部155によって半導体ウェハーWの端縁部下側を支持する。
図9は、支持部155の一例を示す斜視図である。図10は、半導体ウェハーWを支持する支持部155の側面図である。第1実施形態の支持部155は三角錐台形状に形成されている。半導体ウェハーWは3箇所の支持部155それぞれの三角錐台の上側稜線によって支持されることにより、搬送アーム151bに保持される。三角錐台の上側稜線は水平面に対して所定の角度(本実施形態では8°)を有するように傾斜されている。従って、3箇所の支持部155のそれぞれは半導体ウェハーWの端縁部を点接触にて支持することとなる。
また、3箇所の支持部155は、搬送アーム151bのアーム本体部と同じ材質の石英にて形成されている。支持部155は、搬送アーム151bのアーム本体部と一体に加工するようにしても良いし、別体として加工してアーム本体部に取り付けるようにしても良い。
次に、本発明に係る熱処理装置100における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板であり、添加された不純物の活性化が熱処理装置100による光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置100の処理手順は、制御部3が熱処理装置100の各動作機構を制御することにより進行する。
熱処理装置100では、まず、イオン注入後の半導体ウェハーWがキャリアCに複数枚収容された状態でインデクサ部101のロードポート110に載置される。そして、受渡ロボット120がキャリアCから半導体ウェハーWを1枚ずつ取り出し、アライメント部130に載置する。アライメント部130では、半導体ウェハーWを回転させてノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの位置決めを行う。
アライメント部130にて位置決めが行われた半導体ウェハーWは搬送ロボット150の上側の搬送アーム151aにより搬送室170内へと取り出され、搬送ロボット150がフラッシュ加熱部160を向くように旋回する。搬送ロボット150がフラッシュ加熱部160に向くと、下側の搬送アーム151bがフラッシュ加熱部160から先行するフラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを取り出し、上側の搬送アーム151aが未処理の半導体ウェハーWをフラッシュ加熱部160へと搬入する。このときに搬送ロボット150は、フラッシュランプFLの長手方向と垂直に搬送アーム151a,151bをスライド移動させる。
フラッシュ加熱部160においては、半導体ウェハーWに予備加熱を行ってからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を行う。フラッシュ加熱が終了した後、半導体ウェハーWは搬送ロボット150の下側の搬送アーム151bによって受け取られて搬出される。次に、搬送ロボット150は冷却部140に向くように旋回し、下側の搬送アーム151bがフラッシュ加熱処理済の半導体ウェハーWを冷却部140内に載置する。冷却部140にて冷却された半導体ウェハーWは受渡ロボット120によりキャリアCへと返却される。
フラッシュ加熱部160での半導体ウェハーWの熱処理および搬送ロボット150による半導体ウェハーWの搬入出動作についてさらに説明を続ける。まず、搬送ロボット150が未処理の半導体ウェハーWをフラッシュ加熱部160に搬入するのに先立って、保持部7が図7に示す処理位置から図3に示す受渡位置に下降する。「処理位置」とは、フラッシュランプFLから半導体ウェハーWに光照射が行われるときの保持部7の位置であり、図7に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。また、「受渡位置」とは、チャンバー6に半導体ウェハーWの搬出入が行われるときの保持部7の位置であり、図3に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。フラッシュ加熱部160における保持部7の基準位置は処理位置であり、処理前にあっては保持部7は処理位置に位置しており、これが処理開始に際して受渡位置に下降するのである。図3に示すように、保持部7が受渡位置にまで下降するとチャンバー底部62に近接し、支持ピン70の先端が保持部7を貫通して保持部7の上方に突出する。
次に、保持部7が受渡位置に下降したときに、弁82および弁87が開かれてチャンバー6の熱処理空間65内に常温の窒素ガスが導入される。続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放される。そして、搬送ロボット150が未処理の半導体ウェハーWを保持する搬送アーム151aを搬送開口部66からチャンバー6内に進入させる。搬送ロボット150は、3本の支持ピン70の上方にまで搬送アーム151aを進出させた後、搬送アーム151aを若干下降させる。このときに、搬送アーム151aに保持されていた半導体ウェハーWは3本の支持ピン70に受け渡される。
半導体ウェハーWの搬入時におけるチャンバー6への窒素ガスのパージ量は約40リットル/分とされ、供給された窒素ガスはチャンバー6内においてガス導入バッファ83から図4中に示す矢印AR4の方向へと流れ、図3に示す排出路86および弁87を介してユーティリティ排気により排気される。また、チャンバー6に供給された窒素ガスの一部は、べローズ47の内側に設けられる排出口(図示省略)からも排出される。なお、以下で説明する各ステップにおいて、チャンバー6には常に窒素ガスが供給および排気され続けており、窒素ガスの供給量は半導体ウェハーWの処理工程に合わせて様々に変更される。
半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入されて3本の支持ピン70に載置されると、搬送ロボット150が搬送アーム151aをチャンバー6から退出させる。そして、ゲートバルブ185により搬送開口部66が閉鎖された後、保持部昇降機構4により保持部7が受渡位置からチャンバー窓61に近接した処理位置にまで上昇する。保持部7が受渡位置から上昇する過程において、半導体ウェハーWは支持ピン70から保持部7のサセプタ72へと渡され、サセプタ72の上面に載置・保持される。保持部7が処理位置にまで上昇するとサセプタ72に保持された半導体ウェハーWも処理位置に保持されることとなる。
ホットプレート71の6つのゾーン711〜716のそれぞれは、各ゾーンの内部(上部プレート73と下部プレート74との間)に個別に内蔵されたヒータ(抵抗加熱線76)により所定の温度まで加熱されている。保持部7が処理位置まで上昇して半導体ウェハーWが保持部7と接触することにより、その半導体ウェハーWはホットプレート71に内蔵されたヒータによって予備加熱されて温度が次第に上昇する。
この処理位置にて約60秒間の予備加熱が行われ、半導体ウェハーWの温度が予め設定された予備加熱温度T1まで上昇する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし550℃程度とされる。
約60秒間の予備加熱時間が経過した後、保持部7が処理位置に位置したまま制御部3の制御によりランプハウス5のフラッシュランプFLから半導体ウェハーWへ向けてフラッシュ光が照射される。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内の保持部7へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからの閃光照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。
すなわち、ランプハウス5のフラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予め蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリ秒ないし10ミリ秒程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからの閃光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃ないし1100℃程度の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに添加された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置100では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに添加された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、添加不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
また、フラッシュ加熱の前に保持部7により半導体ウェハーWを予備加熱しておくことにより、フラッシュランプFLからの閃光照射によって半導体ウェハーWの表面温度を処理温度T2まで速やかに上昇させることができる。
フラッシュ加熱が終了し、処理位置における約10秒間の待機の後、保持部7が保持部昇降機構4により再び図3に示す受渡位置まで下降し、半導体ウェハーWが保持部7から支持ピン70へと渡される。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150が搬送アーム151bを搬送開口部66からチャンバー6内に進入させる。搬送ロボット150は、3本の支持ピン70によって支持される半導体ウェハーWの下方にまで搬送アーム151bを進出させた後、搬送アーム151bを上昇させる。これにより、支持ピン70に載置されていた半導体ウェハーWは搬送アーム151bの3箇所の支持部155に受け渡される。その後、搬送ロボット150は、3箇所の支持部155によって処理後の半導体ウェハーWを支持した搬送アーム151bをチャンバー6から退出させる。
既述のように、フラッシュ加熱部160における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスがチャンバー6に継続的に供給されており、その供給量は、保持部7が処理位置に位置するときには約30リットル/分とされ、保持部7が処理位置以外の位置に位置するときには約40リットル/分とされる。
ところで、上述の如く、フラッシュ加熱部160は半導体ウェハーWを予備加熱温度T1にまで予備加熱した後、フラッシュ光を照射してフラッシュ加熱処理を行っている。フラッシュランプFLからフラッシュ光照射は一瞬であるため、半導体ウェハーWの表面温度は極めて短時間で大きく昇降するものの、半導体ウェハーW全体の温度はほとんど上昇しない。よって、フラッシュ加熱が終了して保持部7が受渡位置にまで下降する時点での半導体ウェハーWの温度は概ね予備加熱温度T1のままである。
保持部7が受渡位置にまで下降して、半導体ウェハーWが支持ピン70に渡されることによって加熱源であるホットプレート71からは離間されるものの、支持ピン70に載置された処理後の半導体ウェハーWはホットプレート71の直上にて待機することとなるため、その温度は予備加熱温度T1からすぐには降下しない。
一方、搬送ロボット150の搬送アーム151bは常温であるものの、第1実施形態においては搬送アーム151bに3箇所の支持部155を設けており、それらによって半導体ウェハーWの端縁部を点接触にて支持する。このため、フラッシュ加熱処理が終了した後、支持ピン70から半導体ウェハーWを受け取るときにも搬送アーム151bと半導体ウェハーWとの接触面積は非常に小さい。従って、常温の搬送アーム151bによって予備加熱温度T1近傍の半導体ウェハーWを受け取るときにも半導体ウェハーWの周縁部全体が急激に温度低下することは防がれ、半導体ウェハーWに与える熱的衝撃を緩和することができる。その結果、フラッシュ加熱終了後のチャンバー6からの搬出時に半導体ウェハーWが割れる現象を防止することができる。
また、フラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを3箇所の支持部155によって受け取った結果、それら支持部155の近傍のみに温度低下が生じてウェハー面内の温度分布が不均一となることも懸念される。しかしながら、3箇所の支持部155は断熱性の高い石英にて形成されており、伝熱速度は遅い。その一方、半導体ウェハーWの素材はシリコンであるため熱伝導率は高い。その結果、接触部分から支持部155に熱が伝導するよりも早く半導体ウェハーWの面内での熱伝達がなされ、ウェハー面内の温度分布が不均一となることが防止される。
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図11は、第2実施形態の熱処理装置200を示す平面図である。第2実施形態の熱処理装置200が第1実施形態の熱処理装置100と相違するのは、搬送アーム151a,151bの形状および搬送室170にアーム加熱部190を設けている点である。
図12は、第2実施形態の搬送アームの平面図である。第1実施形態と同じく、下側の搬送アーム151bについて説明するが、上側の搬送アーム151aについても全く同様である。第1実施形態と同様に、搬送アーム151bは、汚染が少なく耐熱性に優れた石英にて形成され、その先端は平面視で円弧状の切り欠きが形成されてC字形状とされている。そして、第2実施形態においては、搬送アーム151bのC字形状の内側部分に沿って円弧状に支持部159が設けられている。搬送アーム151bが半導体ウェハーWを保持するときには、円弧状の支持部159によって半導体ウェハーWの端縁部下側を支持する。
円弧状の支持部159の径は半導体ウェハーWの径と概ね等しい。また、支持部159の上面は水平面に対して所定の角度を有するテーパ面とされている。従って、搬送アーム151bに保持される半導体ウェハーWは、その外周端縁部の過半が支持部159によって線接触にて支持されることとなる。
図13は、アーム加熱部190の構成を示す断面図である。アーム加熱部190は筐体192の内部に抵抗加熱式のヒータ191を備えている。搬送ロボット150が、筐体192の開口部からアーム加熱部190の内部に搬送アーム151bを進入させてヒータ191に近接させることにより、搬送アーム151bがヒータ191からの輻射熱によって加熱されることとなる。第2実施形態の残余の構成については第1実施形態と同じであり、同一の要素には同一の符合を付して説明を省略する。
第2実施形態の熱処理装置200における半導体ウェハーWの処理手順は第1実施形態と概ね同じである。但し、第2実施形態においては、搬送ロボット150が未処理の半導体ウェハーWをフラッシュ加熱部160に搬入した後、フラッシュ加熱部160にてその半導体ウェハーWの処理が行われているときに搬送アーム151bをアーム加熱部190にて加熱するようにしている。
そして、フラッシュ加熱部160でのフラッシュ加熱が終了した後、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150が加熱された搬送アーム151bを搬送開口部66からチャンバー6内に進入させる。搬送ロボット150は、3本の支持ピン70によって支持される半導体ウェハーWの下方にまで搬送アーム151bを進出させた後、搬送アーム151bを上昇させる。これにより、支持ピン70に載置されていた半導体ウェハーWは搬送アーム151bの円弧状の支持部159に受け渡される。その後、搬送ロボット150は、支持部159によって処理後の半導体ウェハーWを支持した搬送アーム151bをチャンバー6から退出させる。
第2実施形態においては、搬送アーム151bの支持部159は半導体ウェハーWの外周端縁部の過半を線接触にて支持するため、搬送アーム151bと半導体ウェハーWとの接触面積は第1実施形態よりも大きい。ところが、第2実施形態ではヒータ191によって加熱された搬送アーム151bによって処理後の半導体ウェハーWを受け取っている。このため、処理後の半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1近傍であったとしても、加熱によって昇温した搬送アーム151bとの温度差は第1実施形態よりも小さい。従って、搬送アーム151bによって処理後の半導体ウェハーWを受け取るときにも半導体ウェハーWの周縁部全体が急激に温度低下することは防がれ、半導体ウェハーWに与える熱的衝撃を緩和することができる。その結果、フラッシュ加熱終了後に半導体ウェハーWを割ることなくチャンバー6から搬出することができる。
また、加熱されて昇温した搬送アーム151bによってフラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを受け取れば、半導体ウェハーWの端縁部のみが急速に冷却されることに起因したウェハー面内の温度分布不均一を緩和することができる。
第2実施形態においては、アーム加熱部190によって搬送アーム151bは50℃〜80℃に加熱される。これは、搬送アーム151bの温度が50℃未満であると半導体ウェハーWに与える熱的衝撃を十分に緩和することができず、また80℃を超えると搬送ロボット150自体の駆動機構等に熱的ダメージを与えるからである。
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置の構成は第1実施形態の熱処理装置100と全く同じである。但し、搬送アーム151a,151bの形状は、第1実施形態のように3箇所の支持部155であっても第2実施形態のように円弧状の支持部159であっても良い。
第3実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と概ね同じである。但し、第3実施形態においては、フラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを搬送アーム151bで受け取る前に搬送アーム151bをフラッシュ加熱部160のホットプレート71によって加熱している。図14は、第3実施形態における搬送アーム151bの加熱の様子を示す図である。具体的には、第1および第2実施形態と同じように、フラッシュ加熱部160でのフラッシュ加熱が終了した後、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150が搬送アーム151bを搬送開口部66からチャンバー6内に進入させて保持部7のホットプレート71の上方に位置させる。
制御部3の制御によって搬送ロボット150がフラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを受け取る前に図14の状態にて搬送アーム151bを動作させることなく所定時間待機させれば、ホットプレート71からの輻射熱によって搬送アーム151bが加熱されて昇温する。そして、所定時間の待機の後、搬送ロボット150が加熱された搬送アーム151bを上昇させる。これにより、支持ピン70に載置されていた半導体ウェハーWは搬送アーム151bに受け渡される。その後、搬送ロボット150は、処理後の半導体ウェハーWを支持した搬送アーム151bをチャンバー6から退出させる。
第3実施形態においては、ホットプレート71によって加熱された搬送アーム151bによって処理後の半導体ウェハーWを受け取っているため、第2実施形態と同様に、半導体ウェハーWの周縁部全体が急激に温度低下することは防がれ、半導体ウェハーWに与える熱的衝撃を緩和することができる。その結果、フラッシュ加熱終了後に半導体ウェハーWを割ることなくチャンバー6から搬出することができる。また、受け取り時に生じる半導体ウェハーWの面内温度分布の不均一を緩和することができる。
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1実施形態においては、3箇所の支持部155が上側稜線によって半導体ウェハーWを点接触にて支持していたが、3箇所の支持部155のそれぞれが面によって半導体ウェハーWを線接触にて支持するようにしても良い。それぞれの支持部155は、接触長さ5mm以下の線接触にて半導体ウェハーWの端部を支持する。すなわち、3箇所の短い線接触によって半導体ウェハーWを支持する。
このようにしても、点接触にて半導体ウェハーWを支持するのと同様に、フラッシュ加熱処理が終了した後、支持ピン70から半導体ウェハーWを受け取るときの搬送アーム151bと半導体ウェハーWとの接触面積は非常に小さい。従って、常温の搬送アーム151bによって予備加熱温度T1近傍の半導体ウェハーWを受け取るときにも半導体ウェハーWの周縁部全体が急激に温度低下することは防がれ、半導体ウェハーWに与える熱的衝撃を緩和することができる。その結果、第1実施形態と同様に、フラッシュ加熱終了後のチャンバー6からの搬出時に半導体ウェハーWが割れる現象を防止することができる。また、搬送アーム151bが半導体ウェハーWを受け取るときにウェハー面内の温度分布が不均一となることも防止される。
また、第1実施形態においては、搬送アーム151a,151bに3箇所の支持部155を設けるようにしていたが、支持部155を4箇所以上設けるようにしても良い。支持部155の設置数が多い方が安定して半導体ウェハーWを保持することができるものの、搬送アーム151bと半導体ウェハーWとの接触面積も多くなるため、それらのバランスを考慮して支持部155の設置数を決定するのが好ましい。
また、第2実施形態においては、アーム加熱部190に抵抗加熱式のヒータ191を備えるようにしていたが、これに代えてハロゲンランプを備えるようにしても良い。アーム加熱部190内にてハロゲンランプによって搬送アーム151bを加熱することにより第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、第2実施形態において、処理するロットとロットと合間の待機中や連続搬送の合間に搬送ロボット150が搬送アーム151bをアーム加熱部190にて加熱するようにしても良い。搬送ロボット150の動作待機中に搬送アーム151bを加熱するようにすればスループットの低下を防止することができる。
また、第2実施形態において、搬送アーム151a,151bに第1実施形態と同様の点接触にて半導体ウェハーWの端縁部を支持する3箇所の支持部155を設けるようにしても良い。搬送アーム151bと半導体ウェハーWとの接触面積を小さくし、なおかつ搬送アーム151bをアーム加熱部190にて加熱するようにすれば、搬出時に半導体ウェハーWに与える熱的衝撃をさらに緩和することができる。
また、第2実施形態において、アーム加熱部190を設けるのに代えて、搬送アーム151a,151b自体にヒータを取り付けるようにしても良い。この場合も、フラッシュ加熱部160にて半導体ウェハーWの処理が行われているときに搬送アーム151bを当該ヒータによって加熱すれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、第3実施形態において、搬送アーム151bを所定時間待機させるのに代えて、フラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを受け取るときに搬送アーム151bを低速で上昇させるようにしても良い。具体的には、図14の状態から制御部3の制御により搬送ロボット150が搬送アーム151bを15mm/秒以下の速度にて上昇させて3本の支持ピン70から半導体ウェハーWを受け取る。15mm/秒以下の低速度にて搬送アーム151bを半導体ウェハーWに向けて移動させて接触させるようにすれば、搬送アーム151bは半導体ウェハーWを受け取る前にホットプレート71によって加熱されることとなる。その結果、第3実施形態実施形態と同様に、搬送アーム151bが半導体ウェハーWを受け取るときに半導体ウェハーWに与える熱的衝撃を緩和することができる。また、低速度にて搬送アーム151bが半導体ウェハーWに接触すれば、半導体ウェハーWに与える機械的衝撃をも緩和することができ、フラッシュ加熱終了後のチャンバー6からの搬出時に半導体ウェハーWが割れる現象をより効果的に防止することができる。
また、上記実施形態においては、保持部7のホットプレート71によって半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに代えてチャンバー6の下部にハロゲンランプを備え、そのハロゲンランプによって半導体ウェハーWの予備加熱を行い、フラッシュランプFLからのフラッシュ加熱を行うようにしても良い。第3実施形態にてかかる予備加熱方式を採用する場合には、フラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを搬送アーム151bで受け取る前に搬送アーム151bをハロゲンランプによって加熱する。
また、上記各実施形態において、処理前の半導体ウェハーWを下側の搬送アーム151bで保持してチャンバー6内に搬入するとともに、処理後の半導体ウェハーWを上側の搬送アーム151aで受け取ってチャンバー6から搬出するようにしても良い。この場合、第1実施形態では搬送アーム151aに3箇所以上の支持部155を設け、第2および第3実施形態においては搬送アーム151aを加熱する。さらに、搬送ロボット150に1つのみの搬送アームを設けるようにしても良い。この場合、第1実施形態では当該搬送アームに3箇所以上の支持部155を設け、第2および第3実施形態においては当該搬送アームを加熱する。
また、上記各実施形態においては、ランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。
また、上記各実施形態では、インデクサ部101にキャリアCが2つ載置されるが、キャリアCが1つだけ載置されてもよく、3つ以上であってもよい。また、受渡ロボット120が2つのキャリアC間を移動するようになっているが、受渡ロボット120が2つ設けられてもよい。
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などに用いるガラス基板であっても良い。