以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板としてφ300mmの円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、シャッター機構2と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、装置外部から半導体ウェハーWを受け取って水平姿勢に支持する支持機構10と、半導体ウェハーWの周縁部に当接する規制リング30と、を備える。さらに、熱処理装置1は、シャッター機構2、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、支持機構10によって支持される半導体ウェハーWの周囲を囲繞する。
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64のそれぞれとチャンバー側部61との間には図示省略のOリングが挟み込まれている。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖したときには、それらの間にもOリングが挟み込まれる。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖すると、チャンバー6内の熱処理空間65は装置外部に対してシールされることとなり、熱処理空間65を大気圧以上に加圧したり真空雰囲気にまで減圧することが可能となる。
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(例えば、窒素ガス(N2)やヘリウムガス(He)、アルゴンガス(Ar)等の不活性ガス、あるいは、酸素(O2)ガス等)を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。排気部190としては、例えば真空ポンプを用いることができる。排気部190を作動させつつ、バルブ89を開放すると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖して熱処理空間65を密閉空間とし、処理ガス供給源85からガス供給を行うことなく排気部190による排気を行うと、熱処理空間65を大気圧未満の減圧雰囲気とすることができる。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
図2は、支持機構10の平面図である。また、図3は、支持機構10の側面図である。支持機構10は、石英にて形成された2本の支持アーム11を備える。支持アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの支持アーム11には2本の石英製のリフトピン12が立設されている。各支持アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の支持アーム11を半導体ウェハーWの受け渡しを行う受渡動作位置(図5の実線位置)と処理を行わないときに退避する退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。一対の支持アーム11の退避位置は、チャンバー6の凹部62の内側となる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各支持アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の支持アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
また、一対の支持アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の支持アーム11を受渡動作位置にて昇降させると、それらに設けられた計4本のリフトピン12も鉛直方向に沿って昇降する。なお、支持機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、支持機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
熱処理装置1の外部の搬送ロボットが熱処理空間65に半導体ウェハーWを搬入し、支持機構10が一対の支持アーム11を受渡動作位置にて上昇させると、4本のリフトピン12が半導体ウェハーWを突き上げて受け取る。そして、支持機構10の昇降機構14が一対の支持アーム11を適当な高さ位置に昇降移動させることにより、半導体ウェハーWは4本のリフトピン12によってチャンバー6内にて所定の処理位置に水平姿勢で支持されることとなる。また、処理後に半導体ウェハーWを支持した一対の支持アーム11を上昇させ、上記の搬送ロボットが熱処理空間65内に進入した後、支持機構10が一対の支持アーム11を下降させると、4本のリフトピン12に支持されていた半導体ウェハーWが搬送ロボットに渡される。このように、熱処理装置1の支持機構10は、装置外部の搬送ロボットとの間で半導体ウェハーWを受け渡しを行うとともに、チャンバー6内にて半導体ウェハーWを支持する役割を担う。
また、チャンバー6の内部において、支持機構10よりも上側に規制リング30が設けられている。すなわち、規制リング30は半導体ウェハーWのフラッシュ光照射面側に設けられる。第1実施形態の規制リング30は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光に対して透明な石英にて形成された円環形状の部材である。第1実施形態では、支持機構10に支持された半導体ウェハーWの周縁部に規制リング30を当接させた状態にてフラッシュ光照射を実行する。
図4は、支持機構10および半導体ウェハーWに当接する規制リング30を模式的に示す図である。また、図5は、半導体ウェハーWの周縁部に当接する規制リング30の斜視図である。石英製の規制リング30は円環形状とされており、その内径は半導体ウェハーWの径(本実施形態ではφ300mm)よりも若干小さい。規制リング30の高さは、特に限定されるものではないが、本実施形態では例えば20mmとされる。
上述した通り、支持機構10は昇降機構14を備えており、半導体ウェハーWを支持する一対の支持アーム11を鉛直方向に沿って昇降させることができる。一方、規制リング30もチャンバー側部61に付設されたリング昇降部35によって鉛直方向に沿って昇降移動される。すなわち、昇降機構14およびリング昇降部35によって規制リング30は支持機構10に対して接近または離間するように相対移動される。
4本のリフトピン12に水平姿勢で半導体ウェハーWを支持した状態にて、昇降機構14が一対の支持アーム11を上昇させつつ、リング昇降部35が規制リング30を下降させると、規制リング30が半導体ウェハーWの周縁部に当接する。図6は、処理対象となる半導体ウェハーWの平面図である。熱処理装置1にて処理対象となる半導体ウェハーWの表面には、前工程にて半導体デバイスのパターンが形成されている。そのデバイスパターンにおけるソース・ドレイン領域に注入された不純物が熱処理装置1でのフラッシュ加熱によって活性化されるのである。通常、このようなデバイスパターンが半導体ウェハーWの全面に形成されることはない。図6に示すように、半導体ウェハーWの表面にはパターンが形成されていない周縁部WEとそれよりも内側のパターン形成部WPとが設けられる。デバイスパターンはパターン形成部WPのみに形成される。規制リング30は、半導体ウェハーWの周縁部WEに対応する円環形状とされている。
第1実施形態においては、半導体ウェハーWを支持する支持機構10と規制リング30とがフラッシュ光照射前に相対移動(接近)し、半導体ウェハーWの表面のうちパターンが形成されていない周縁部WEに規制リング30が当接する。従って、規制リング30によってデバイスパターンに損傷を与えるおそれは無い。
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が支持機構10に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし10ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4の内部には複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLが内蔵されている。複数のハロゲンランプHLはチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が支持機構10に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図7に示すように、上段、下段ともに支持機構10に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも端部側の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
また、図1に示すように、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4およびチャンバー6の側方にシャッター機構2を備える。シャッター機構2は、シャッター板21およびスライド駆動機構22を備える。シャッター板21は、ハロゲン光に対して不透明な板であり、例えばチタン(Ti)にて形成されている。スライド駆動機構22は、シャッター板21を水平方向に沿ってスライド移動させ、ハロゲン加熱部4と熱処理空間65との間の遮光位置にシャッター板21を挿脱する。スライド駆動機構22がシャッター板21を前進させると、チャンバー6とハロゲン加熱部4との間の遮光位置(図1の二点鎖線位置)にシャッター板21が挿入され、下側チャンバー窓64と複数のハロゲンランプHLとが遮断される。これによって、複数のハロゲンランプHLから熱処理空間65へと向かう光は遮光される。逆に、スライド駆動機構22がシャッター板21を後退させると、チャンバー6とハロゲン加熱部4との間の遮光位置からシャッター板21が退出して下側チャンバー窓64の下方が開放される。
また、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加されたシリコンの半導体基板である。図6に示すように、半導体ウェハーWにはパターン形成部WPと周縁部WEとが設けられており、パターン形成部WPに不純物が注入されている。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。図8は、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順を示すフローチャートである。以下に示す半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することによって進行する。
まず、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される(ステップS1)。ウェハー搬入のために搬送開口部66を開放するときには、給気のためのバルブ84を開いてガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガス等の不活性ガスを供給し、パーティクルを含む外気が熱処理空間65に流入するのを防止するようにしても良い。また、これとともに、排気用のバルブ89,192を開いて熱処理空間65の気体を排気するようにしても良い。
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは支持機構10の受渡動作位置の上方にまで進出して停止する。そして、支持機構10の一対の支持アーム11が退避位置から受渡動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が搬送ロボットから半導体ウェハーWを受け取る。半導体ウェハーWが支持機構10のリフトピン12に渡された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。この時点で半導体ウェハーWは支持機構10の4本のリフトピン12によって水平姿勢で支持されることとなる(ステップS2)。第1実施形態では、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として支持機構10に支持される。
次に、支持機構10に支持された半導体ウェハーWに対して規制リング30が接近するように相対移動して半導体ウェハーWの周縁部WEに当接する(ステップS3)。このときには、例えば、フラッシュランプFLおよびハロゲンランプHLからの半導体ウェハーWまでの照射距離が適切となる所定の処理位置にまで支持機構10が半導体ウェハーWを昇降させて位置決めする。その後、リング昇降部35が規制リング30を下降させて半導体ウェハーWの周縁部WEに当接させるようにすれば良い。なお、規制リング30の当接はこれに限定されるものではなく、半導体ウェハーWまたは規制リング30のいずれか一方が停止したまま残る一方が昇降移動して規制リング30が半導体ウェハーWの周縁部WEに当接するようにしても良い。図4および図5は、半導体ウェハーWの周縁部WEに規制リング30が当接した状態を示す。
支持機構10に水平姿勢で支持された半導体ウェハーWの周縁部WEに規制リング30が当接した後、チャンバー6内を減圧する(ステップS4)。半導体ウェハーWのチャンバー6内への搬入が完了した時点でゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖され、熱処理空間65が密閉空間とされている。この状態で、排気部190を作動させつつバルブ89を開放すると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から排気され、チャンバー6内が大気圧未満の所定の目標気圧(例えば1Pa)にまで減圧される。なお、減圧時には、給気のためのバルブ84は閉止される。その一方、バルブ192を開いて搬送開口部66からもチャンバー6内の気体を排気するようにしても良い。
チャンバー6内が減圧されて所定の目標気圧にまで到達した後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される(ステップS5)。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64を透過して半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側のパターン形成がなされていない主面)から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、支持機構10の支持アーム11およびリフトピン12も透明な石英にて形成されているため、ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光はこれらの部材も透過して半導体ウェハーWの裏面に到達する。すなわち、半導体ウェハーWを裏面から支持する支持機構10が予備加熱の障害となることは無い。
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が図示しない温度センサによって測定されている。この温度センサとしては、例えば熱電対を使用した接触式温度計を用いることができる。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、温度センサによって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を制御して半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。さらに、チャンバー側部61に装着された反射リング69の内周面は鏡面とされているため、この反射リング69の内周面によって半導体ウェハーWの周縁部に向けて反射する光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布をより均一なものとすることができる。
続いて、フラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLから半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光が照射される(ステップS6)。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。第1実施形態においては、支持機構10に支持された半導体ウェハーWの周縁部WEに規制リング30を当接させた状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光が照射される。規制リング30はフラッシュ光に対して透明な石英にて形成されているため、フラッシュ光は規制リング30を透過して半導体ウェハーWの周縁部WEにも照射される。このため、規制リング30がフラッシュ光を遮光して半導体ウェハーWの面内温度分布を損なうことは防がれる。
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予め蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。また、減圧雰囲気下で半導体ウェハーWの表面を処理温度T2にまで加熱しているため、当該表面の分子レベルでの酸化も防止することができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する(ステップS7)。また、ハロゲンランプHLが消灯するのと同時に、シャッター機構2がシャッター板21をハロゲン加熱部4とチャンバー6との間の遮光位置に挿入する(ステップS8)。ハロゲンランプHLが消灯しても、すぐにフィラメントや管壁の温度が低下するものではなく、暫時高温のフィラメントおよび管壁から輻射熱が放射され続け、これが半導体ウェハーWの降温を妨げる。シャッター板21が挿入されることによって、消灯直後のハロゲンランプHLから熱処理空間65に放射される輻射熱が遮断されることとなり、半導体ウェハーWの降温速度を高めることができる。
また、半導体ウェハーWの降温と併せて、バルブ84を開いて熱処理空間65に窒素ガス等を供給し、チャンバー6内を復圧する(ステップS9)。さらに、リング昇降部35が規制リング30を上昇させて半導体ウェハーWから離間させる。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12に支持された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する(ステップS10)。
第1実施形態においては、支持機構10の4本のリフトピン12によって支持された半導体ウェハーWの周縁部WEに規制リング30を当接させた状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行っている。照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く、かつ、強度の強いフラッシュ光を半導体ウェハーWの表面に照射すると、瞬間的に半導体ウェハーWの表面温度が急上昇し、当該表面に急激な熱膨張が生じて半導体ウェハーWが変形しようとする。その結果、規制リング30が存在しない場合には、半導体ウェハーWが激しく振動してリフトピン12から跳躍することが判明している。
第1実施形態では、規制リング30が半導体ウェハーWの周縁部WEに当接しつつフラッシュ光を照射しているため、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面温度が急速に上昇したとしても、半導体ウェハーWがリフトピン12から跳躍するのを規制リング30によって抑制することができる。その結果、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの跳躍に起因したウェハー割れを防止することができる。
また、規制リング30は、半導体ウェハーWの表面のうちパターンが形成されていない周縁部WEに当接している。従って、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの周縁部WEと規制リング30との間に摩擦が生じたとしてもデバイスパターンに損傷を与えるのを防止することができる。
また、規制リング30はフラッシュ光に対して透明な石英にて形成されているため、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面(特に、周縁部WE)に到達するフラッシュ光を遮光して面内温度分布が悪化するのを防ぐことができる。
また、支持機構10のリフトピン12に半導体ウェハーWを支持してフラッシュ加熱を行うことができるため、従来必要であったサセプタが不要となり、そのコストを削減することが可能となる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態では半導体ウェハーWの周縁部に当接する規制リング30を用いていたが、第2実施形態では規制リング30に代えて凹面レンズ130を用いている点で第1実施形態と相違する。
図9は、半導体ウェハーWに当接する凹面レンズ130を模式的に示す図である。第2実施形態の凹面レンズ130は、チャンバー6の内部において支持機構10よりも上側(つまり、半導体ウェハーWのフラッシュ光照射面側)に設けられている。凹面レンズ130は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光に対して透明な石英にて形成され、その下面(支持機構10に支持された半導体ウェハーWに対向する面)には凹面131が形成されている。凹面131は、上側を凸とする曲面、つまり支持機構10に支持された半導体ウェハーWの中心から周縁部に向けて半導体ウェハーWの表面との間隔が徐々に狭くなる曲面である。凹面131の径は、半導体ウェハーWの径よりも大きい。
また、第1実施形態と同様に、凹面レンズ130は、レンズ昇降部135によって鉛直方向に沿って昇降移動される。すなわち、支持機構10の昇降機構14およびレンズ昇降部135によって凹面レンズ130は支持機構10に対して接近または離間するように相対移動される。
第1実施形態と同様に、半導体ウェハーWは支持機構10の4本のリフトピン12によって水平姿勢で支持される。半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面としてリフトピン12に支持される。4本のリフトピン12に水平姿勢で半導体ウェハーWを支持した状態にて、凹面レンズ130が半導体ウェハーWに接近するように相対移動すると、凹面レンズ130の凹面131が半導体ウェハーWの周縁部WEに当接する。第2実施形態では、周縁部WEの最外周、すなわち半導体ウェハーWの端縁部に凹面レンズ130が接触する。そして、半導体ウェハーWの周縁部WEに凹面レンズ130を当接させた状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行うのである。規制リング30を凹面レンズ130としている以外の残余の点については第2実施形態は第1実施形態と同様である。
このように、第2実施形態においては、支持機構10の4本のリフトピン12によって支持された半導体ウェハーWの周縁部WEに凹面レンズ130を当接させた状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行っている。このため、第1実施形態と同様に、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面温度が急速に上昇したとしても、半導体ウェハーWがリフトピン12から跳躍するのを凹面レンズ130によって抑制することができる。その結果、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの跳躍に起因したウェハー割れを防止することができる。
また、凹面レンズ130の凹面131が半導体ウェハーWの周縁部WEに当接した状態において、半導体ウェハーWのパターン形成部WPと凹面131との間には比較的大きな隙間が形成されている。よって、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面が急激に熱膨張したとしても、パターン形成部WPが凹面131と接触することは無く、デバイスパターンの損傷を防止することができる。
さらに、第2実施形態においては、凹面レンズ130によってフラッシュランプFLからのフラッシュ光を半導体ウェハーWの周縁部WEに集光している。このため、フラッシュ光照射時に比較的温度低下の生じやすい半導体ウェハーWの周縁部WEを効果的に加熱することができ、面内温度分布の均一性を向上させることができる。なお、図9において凹面レンズ130の凹面131は曲面に形成されていたが、これに限られるものではなく、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面が急激に熱膨張したとしても、パターン形成部WPが凹面レンズ130の凹面131に接触しないだけの隙間が、半導体ウェハーWと凹面レンズ130の凹面131との間に形成されていれば良い。例えば、凹面レンズ130の凹面131が半導体ウェハーWの中心部と対向する領域では、半導体ウェハーWの表面と平行な平らな面に形成されていても良い。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態では半導体ウェハーWの周縁部WEの全周にわたって規制リング30が当接していたが、第3実施形態では周縁部WEの一部にのみ規制ブロック230が当接している点で第1実施形態と相違する。
図10は、半導体ウェハーWの周縁部WEに当接する規制ブロック230を模式的に示す図である。第3実施形態においては、4つの規制ブロック230が支持機構10よりも上側(つまり、半導体ウェハーWのフラッシュ光照射面側)に設けられており、それぞれが周縁部WEに当接する。各規制ブロック230は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光に対して透明な石英にて形成された棒状部材(ロッド)である。4個の規制ブロック230は、第1,2実施形態と同様の昇降部によって昇降移動されても良いし、チャンバー6内に固定設置されていても良い。
第1実施形態と同様に、半導体ウェハーWは支持機構10の4本のリフトピン12によって水平姿勢で支持される。半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面としてリフトピン12に支持される。リフトピン12に水平姿勢で半導体ウェハーWを支持した状態にて、4個の規制ブロック230と半導体ウェハーWとが接近するように相対移動すると、4個の規制ブロック230のそれぞれが半導体ウェハーWの周縁部WEに当接する。第3実施形態においては、図10に示すように、半導体ウェハーWの周縁部WEの周方向に沿って90°毎の4箇所に4個の規制ブロック230が当接する。そして、半導体ウェハーWの周縁部WEに4個の規制ブロック230を当接させた状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行うのである。規制リング30を規制ブロック230としている以外の残余の点については第3実施形態は第1実施形態と同様である。
このように、第3実施形態においては、支持機構10の4本のリフトピン12によって支持された半導体ウェハーWの周縁部WEの4箇所に規制ブロック230を当接させた状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行っている。このため、第1実施形態と同様に、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面温度が急速に上昇したとしても、半導体ウェハーWがリフトピン12から跳躍するのを規制ブロック230によって抑制することができる。その結果、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの跳躍に起因したウェハー割れを防止することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態においては、半導体ウェハーWの裏面にフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を行い、その裏面の全面に当接する規制板330を設けている。
図11は、半導体ウェハーWの裏面に当接する規制板330を模式的に示す図である。第4実施形態では、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を下面として半導体ウェハーWが支持される。このため、チャンバー6に固定設置されたリング状のサセプタ339によって半導体ウェハーWの周縁部WEを支持する。なお、装置外部の搬送ロボットとサセプタ339との間の半導体ウェハーWの受け渡しは、例えば第1実施形態の支持機構10によって行えば良い。
規制板330は、サセプタ339よりも上側(つまり、フラッシュ光が照射される半導体ウェハーWの裏面側)に設けられている。規制板330は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光に対して透明な石英にて形成された円板形状の部材である。規制板330の径は、半導体ウェハーWの径よりも大きい。また、規制板330は、板昇降部335によって鉛直方向に沿って昇降移動される。
第4実施形態では、表面を下面に向けた状態で半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入され、その姿勢のままサセプタ339によって支持される。サセプタ339は、半導体ウェハーWの周縁部WEを支持するため、パターン形成部WPのデバイスパターンと接触することは無い。サセプタ339に水平姿勢で半導体ウェハーWを支持した状態にて、規制板330が半導体ウェハーWに接近するように相対移動すると、規制板330が半導体ウェハーWの裏面の全面に当接する。そして、この状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行う。フラッシュ光は石英の規制板330を透過して半導体ウェハーWの裏面に照射される。これにより、半導体ウェハーWの裏面が急速に昇温し、その熱が表面に伝導して表面の加熱が行われる。第4実施形態の残余の点については第1実施形態と同様である。
このように、第4実施形態においては、サセプタ339によって支持された半導体ウェハーWの裏面全面に規制板330を当接させた状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行っている。このため、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの裏面温度が急速に上昇したとしても、半導体ウェハーWがサセプタ339から跳躍するのを規制板330によって抑制することができる。その結果、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの跳躍に起因したウェハー割れを防止することができる。
特に、第4実施形態では、半導体ウェハーWの裏面全面に規制板330が当接しているため、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの振動を確実に抑制することができる。
また、第4実施形態では、パターンが形成されていないために光吸収率が均一な半導体ウェハーWの裏面にフラッシュ光が照射される。このため、フラッシュ光の吸収率にパターン依存性がなく、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態の熱処理装置の構成は、第1実施形態と全く同じである。第1実施形態では半導体ウェハーWの周縁部WEに規制リング30を当接させていたが、第5実施形態では周縁部WEに所定間隔を隔てて規制リング30を近接させている点で第1実施形態と相違する。
図12は、半導体ウェハーWに近接する規制リング30を模式的に示す図である。第1実施形態と同様に、半導体ウェハーWは支持機構10の4本のリフトピン12によって水平姿勢で支持される。半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面としてリフトピン12に支持される。4本のリフトピン12に水平姿勢で半導体ウェハーWを支持した状態にて、規制リング30が半導体ウェハーWの周縁部WEから所定間隔dを隔てる位置にまで接近するように相対移動する。すなわち、第5実施形態においては、規制リング30が半導体ウェハーWの周縁部WEと接触することはなく、所定間隔dを隔てて近接する。そして、半導体ウェハーWの周縁部WEに規制リング30を近接させた状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行うのである。規制リング30を半導体ウェハーWの周縁部WEに近接させている以外の残余の点については第5実施形態は第1実施形態と同様である。
このように、第5実施形態においては、支持機構10の4本のリフトピン12によって支持された半導体ウェハーWの周縁部WEに規制リング30を近接させた状態にてフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行っている。このような近接状態であっても、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面温度が急速に上昇したときに、半導体ウェハーWがリフトピン12から跳躍するのを規制リング30によって抑制することができる。その結果、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの跳躍に起因したウェハー割れを防止することができる。このような半導体ウェハーWの跳躍を抑制する効果を得るために、規制リング30と半導体ウェハーWの周縁部WEとを近接させる間隔dは1.5mm以下とする必要があり、0.3mm以上0.5mm以下とするのが好ましい。その理由は、間隔dが1.5mmより大きいと、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWが規制リング30に衝突して割れるおそれがあるためである。
また、第5実施形態においては、規制リング30が半導体ウェハーWに接触していないため、予備加熱によって昇温した半導体ウェハーWから規制リング30への熱伝導が生じない。このため、半導体ウェハーWの面内温度分布を比較的容易に均一にすることができる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1実施形態では規制リング30を半導体ウェハーWの周縁部WEに当接させていたのを第5実施形態では近接させていたが、第2実施形態から第4実施形態についてもこれと同様に近接させても良い。すなわち、第2実施形態の凹面レンズ130、第3実施形態の規制ブロック230および第4実施形態の規制板330のそれぞれを半導体ウェハーWに所定間隔を隔てて近接させるようにしても良い。このようにしても、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面温度が急速に上昇したときに、半導体ウェハーWの跳躍を抑制してウェハー割れを防止することができる。
要するに、半導体ウェハーWのフラッシュ光照射面側に、そのフラッシュ光照射面に当接または近接してフラッシュ光照射時における半導体ウェハーWの跳躍を規制する規制部材を設ける形態であれば良い。そのような規制部材としては、石英のリング、凹面レンズ、円板、ロッドなどを用いることができる。このような規制部材を設けることによって、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの跳躍に起因したウェハー割れを防止することができる。
また、第1実施形態においては、リング昇降部35によって規制リング30が昇降移動させるように構成されていたが、規制リング30はチャンバー6内に固定設置されていても良い。規制リング30を固定設置する場合には、チャンバー6内にフレームを組み込み、そのフレームに取り付けるようにしても良いし、石英の上側チャンバー窓63に直接溶着するようにしても良い。規制リング30を固定設置した場合には、支持機構10によって半導体ウェハーWを昇降させることによって規制リング30を半導体ウェハーWに当接または近接させる。同様に、第2実施形態の凹面レンズ130、第3実施形態の規制ブロック230および第4実施形態の規制板330についても、チャンバー6内に固定設置するようにしても良い。
また、第3実施形態においては、半導体ウェハーWの周方向に沿って90°毎に4個の規制ブロック230を設けていたが、これに限定されるものではなく、規制ブロック230の個数は複数であれば良い。但し、半導体ウェハーWの跳躍を確実に規制するためには3個以上の規制ブロック230を設けておくのが好ましい。
また、上記各実施形態においては、チャンバー6内を減圧雰囲気にしてフラッシュ加熱を行っていたが、常圧雰囲気にてフラッシュ加熱を行うようにしても良い。もっとも、常圧雰囲気であれば半導体ウェハーWの上下に気圧差を生じさせて跳躍を抑制することもできるが、上記各実施形態のような減圧雰囲気下では気圧差を利用することができないため、本発明に係る技術が有効となる。
また、上記各実施形態では、規制リング30、凹面レンズ130、規制ブロック230、規制板330を石英で構成するようにしていたが、これに限られるものではなく、例えばサファイアなどフラッシュランプFLからの照射光を透過させて半導体ウェハーWに導ける透明な部材であれば良い。
また、かかる規制リング30、凹面レンズ130、規制ブロック230、規制板330の保持の仕方に関して、半導体ウェハーWへのフラッシュ光照射時に半導体ウェハーWが跳躍しようとする力を吸収できるように、上下方向に多少の遊びを有するように保持するようにしても良い。
また、上記各実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
また、上記各実施形態においては、ハロゲンランプHLからのハロゲン光照射によって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしていたが、予備加熱の手法はこれに限定されるものではなく、ホットプレートに載置することによって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしても良い。ホットプレートに載置された半導体ウェハーWのフラッシュ光照射面に当接または近接してフラッシュ光照射時における半導体ウェハーWの跳躍を規制する規制部材を設けるようにすれば、上記各実施形態と同様に、半導体ウェハーWの跳躍に起因したウェハー割れを防止することができる。
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。