JP6057450B2 - Ito透明導電膜付き基板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
従来、ITO透明導電膜は、例えば、ガラス基板上に成膜されて用いられていた。ITO透明導電膜をガラス基板上に成膜する場合、抵抗値を低減させることに主眼をおき、基板温度を200〜300℃に設定することが多い。
ITO透明導電膜の構造については、基板温度を室温に保って成膜した場合、結晶質部と非晶質部が混在した状態のITO透明導電膜、あるいは、非晶質状態のITO透明導電膜が形成される。
また、ITO透明導電膜の電気的特性については、低温で成膜した場合、成膜直後にITO透明導電膜の抵抗値は著しく低減することがなく、一般に5〜7×10−4Ω・cmの比抵抗を示す。そして、上述のような応用用途においては、ITO透明導電膜の低抵抗化が求められている。
本発明のITO透明導電膜付き基板は、含水率を0.15質量%以下とした高分子フィルムを有する基板上に、イオンプレーティング法により少なくとも1層のITO透明導電膜が成膜されてなることを特徴とする。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態のITO透明導電膜付き基板は、高分子フィルムを有する基板と、高分子フィルムを有する基板の含水率を0.15質量%以下とした後、その高分子フィルムを有する基板の少なくとも一面に、イオンプレーティング法により成膜された少なくとも1層のITO透明導電膜とから概略構成されている。
この無機化合物層、有機化合物層、または、ハイブリッド層を設ける位置は、特に限定されるものではなく、例えば、ITO透明導電膜の表面、ITO透明導電膜と高分子フィルムを有する基板との中間位置、あるいは、高分子フィルムを有する基板におけるITO透明導電膜が成膜されていない面に設けることができる。
高分子フィルムを有する基板とITO透明導電膜との間に、無機化合物層、有機化合物層、または、ハイブリッド層が設けられた場合には、特に高度のガスバリア性を達成することができる。また、高分子フィルムを有する基板におけるITO透明導電膜が成膜されていない面に、無機化合物層、有機化合物層、または、ハイブリッド層が設けられた場合には、無機化合物層、有機化合物層、または、ハイブリッド層により脱ガスを抑える効果が得られるとともに、成膜時の応力による高分子フィルムを有する基板の変形を抑え、かつ、フレキシビリティを兼ね備えたものとすることができる。
さらに、ITO透明導電膜の脆弱性を改善するために、これら無機化合物層からなる層を積層してなる積層構造や、無機化合物層と有機化合物層からなる層を積層してなる積層構造をなす複合層が、高分子フィルムを有する基板に設けられていてもよい。無機化合物層と有機化合物層の積層順や積層回数については特に限定されるものではないが、無機化合物層と有機化合物層を交互に複数回積層させることが好ましい。また、無機化合物層において、ITO透明導電膜の脆弱性を改善するために、無機化合物層内の酸素、炭素、窒素等の濃度が膜厚方向に対して変化していてもよい。
無機化合物層の形成方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が用いられる。
スズの添加量が酸化物換算で3質量%未満であると、ITO透明導電膜中のキャリヤ濃度が低くなる。一方、スズの添加量が酸化物換算で10質量%を超えると、キャリヤの移動度が小さくなる。このように、スズの添加量が上記の範囲を満たさない場合、導電性が低下するので、酸化インジウムに対するスズの添加量は、酸化物換算で3〜10質量%であることが好ましい。
図1は、本実施形態のITO透明導電膜付き基板およびその製造方法に用いられる反応性イオンプレーティング装置の一例を示す模式図である。
反応性イオンプレーティング装置10は、真空チャンバー11と、真空チャンバー11内に配置されて、被成膜体である高分子フィルムを有する基板12を保持する基板フォルダ13と、基板フォルダ13の下方に、真空チャンバー11の中央部に設けられた開閉可能なシャッター14を介して配置され、成膜物質(ターゲット)30を収容するインナーハース15を有するハース16と、真空チャンバー11内にプラズマを発生させる圧力勾配型プラズマガン17と、プラズマ発生用電源18とから概略構成されている。
プロセスガス導入口19には、マスフローコントローラ(図示略)を介して、真空チャンバー11内に酸素ガスが供給される。また、調圧ガス導入口20には、マスフローコントローラ(図示略)を介して、真空チャンバー11内に調圧用のアルゴン(Ar)ガスが供給される。また、排気口21には、真空排気装置が接続され、真空計の値をもとに真空排気装置を稼働し、真空チャンバー11内が所定の圧力(真空度)に維持される。
また、真空チャンバー11内における基板フォルダ13の裏面側(基板12を保持する面とは反対の面側)には、基板フォルダ13の温度を調節するランプヒーター23が配置されている。
ランプヒーター23は、高分子フィルムを有する基板12を所定温度に保持するために設けられている。ランプヒーター23は、温度計22の測定値をもとに出力が制御されている。
ハース16には、永久磁石24が設けられている。また、ハース16は、プラズマ発生用電源18に電気的に接続されている。
また、カソードマウント25、第一電極27および第二電極28は、プラズマ発生用電源18に電気的に接続されている。
タンタル製のパイプの内部に放電用アルゴンガスを導入した際、加熱されたタンタル製のパイプと六ホウ化ランタン製の円盤から熱電子が放出され、真空チャンバー11内にプラズマ流を形成する。
圧力勾配型プラズマガン17の内部は、真空チャンバー11より常に圧力が高く保たれており、高温に曝されたタンタル製のパイプや六ホウ化ランタン製の円盤が、酸素ガスや蒸発ガスによる酸化等の劣化を防ぐ構造になっている。
成膜物質30としては、スズをドープした酸化インジウムが挙げられる。
成膜物質30は、ハース16に入れるため粒状であることが好ましいが、その形状は特に限定されるものではない。
真空チャンバー11の排気では、真空チャンバー11内の圧力が2×10−4Pa以下になるまで排気することが好ましく、真空チャンバー11内の圧力が1×10−4Pa以下になるまで排気することがより好ましい。
この場合、真空チャンバー11や高分子フィルムを有する基板12を加熱する温度は、高分子フィルムの耐熱温度以下であり、40〜150℃であることが好ましい。
また、真空チャンバー11や高分子フィルムを有する基板12を加熱する時間は、0.1時間〜6.0時間であることが好ましい。
成膜にかかるコストの観点からは、乾燥が不要となる0.15質量%以下の含水率を有し、かつその他の用途に応じた要求特性を満たす高分子フィルムを選定することが好ましいが、予め調湿された環境下や高温オーブン中、真空オーブン中などで高分子フィルムを保持することにより、その含水率を低減することもできるし、成膜装置を用いて乾燥することもできる。
なお、高分子フィルムを有する基板12の乾燥条件は、高分子フィルムのガラス転移点以下の温度で加熱することがフィルムの結晶化や変形による各種特性の変化の防止の面から好ましく、さらに、減圧下で乾燥させることが、乾燥温度の低温化、乾燥速度の高速化の面で好ましい。
ITO透明導電膜付き基板の引張り時に、ITO透明導電膜に発生するクラックサイズが1000μm以下であれば、ロール・ツー・ロール法において、高分子フィルムを有する基板12に加えられる張力によって、実用不可能な程にITO透明導電膜の特性が低下することがない。
また、本実施形態のITO透明導電膜付き基板の製造方法によれば、1.0%引っ張った後のシート抵抗の変化率が1500%以内のITO透明導電膜付き基板が得られる。
なお、特に断りがない限り、得られたITO透明導電膜の電気的特性、結晶構造、表面粗さ、ITOの粒子の平均粒径、引張り試験については、次の評価により行った。
JIS K7149に記載の4探針法による抵抗率試験法に準拠して、表面抵抗測定器(製品名「Lresta GP MCP−T610」、三菱化学社製) を用いて、ITO透明導電膜の表面抵抗率(単位:Ω/□) を測定した。
結晶構造の評価は、粉末X線回折測定装置(RINT2500TTR型、リガク社製)を用いて、ITO透明導電膜にCuKα線を照射し、得られるX線回折図形において、ITO層の(222)面に相当する2θピーク(30.00°以上、31.00°以下)が見られた場合を○、見られなかった場合を×とした。
原子間力顕微鏡(AFM、SPA400、セイコーインスツル社製)を用いて、ITO透明導電膜の平均的な表面形状を測定した。その測定結果から、ITO透明導電膜において、局所的な突起部または陥没部のない箇所について、1μm角視野における算術平均粗さRaを算出した。
ITO透明導電膜の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて反射電子像観察を行うことにより得られた観察像から、ITO透明導電膜を構成するITOの粒子を任意に10個選択し、画像処理の手法を用いて、10個それぞれの粒子について、その面積およびその面積に相当する円相当径を計測して、それらの平均値を算出することにより、ITO透明導電膜を構成するITOの粒子の平均粒径を求めた。
なお、観察像を得るために用いた走査型電子顕微鏡は、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(型式S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)である。観察条件としては、加速電圧を5kV、プローブ電流値を1×10−10A〜1×10−11Aとした。検出器としては、YAG反射電子検出器を用い、作動距離を8.5mmとした。
引張り試験機としてオートグラフ(AG−5000D、島津製作所製)を用いて、ITO透明導電膜付き基板の引張り試験を実施した。
ITO透明導電膜付き基板を、1.67cm×5.00cmの短冊状に加工し、引張り試験機に設置後、荷重が検出されてから、ITO透明導電膜付き基板に0.3%の歪みが加えられた点をゼロ点とし、1.0%歪むまで荷重を加えた。その後、ITO透明導電膜付き基板を回収し、表面抵抗率の測定を行った。
TG測定装置として、示差熱熱重量同時測定装置(商品名:TG−DTA6300、セイコーインスツル社製)を用いて、高分子フィルム基板のTG測定を実施した。
基板として用いたポリエチレンナフタレートフィルムを2mm角に裁断後、測定セルに20mg仕込み、昇温速度2℃/分、乾燥空気流量200ml/分の条件下、200℃まで昇温したときの重量の変化を測定した。
図1に示す圧力勾配型プラズマガンを備えた反応性イオンプレーティング装置を用いた。
反応性イオンプレーティング装置のハースに、ITOターゲット(In2O3:SnO2=95:5、99.99%)を充填した。
真空チャンバー内の基板フォルダに、温度23℃、湿度34%で1週間保管したポリエチレンナフタレートフィルム(Q65−FA、A4サイズ、厚さ125μm、帝人デュポン社製)を設置した。
次に、真空排気装置により、真空チャンバー内の圧力が3.0×10−5Paに達するまで、真空チャンバー内のガスを排気した。
その後、ランプヒーターにより、温度計の指示温度が150℃となるように基板フォルダを加熱し、1時間保持後、ランプヒーターの出力を停止した。
4時間後、温度計の指示温度は23℃、真空チャンバー内の圧力は5.0×10−5Paであった。また、ポリエチレンナフタレートフィルムの含水率を測定したところ、0.01質量%であった。
得られたITO透明導電膜付き基板について、上記の各特性を評価した。結果を表1に示す。
また、ITO透明導電膜付き基板のITO透明導電膜の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて反射電子像観察を行うことにより得られた観察像を図2に示す。
(成膜条件)
基板:ポリエチレンナフタレートフィルム(Q65−FA、A4サイズ、厚さ125μm、帝人デュポン社製、温度23℃、湿度34%で1週間保管)
成膜物質(ターゲット):ITO焼結体ペレット(In2O3:SnO2=95:5、99.99%)
成膜全圧:0.06Pa
放電電力:5kW
ガンAr:20sccm
O2流量:13.7sccm
基板加熱:室温
蒸発レート:20Å/sec
成膜時間:75秒
成膜時における基板加熱温度を100℃とした以外は実施例1と同様にして、実施例2のITO透明導電膜付き基板を作製した。
なお、真空チャンバー内の排気および基板フォルダの加熱後において、温度計の指示温度は23℃、真空チャンバー内の圧力は6.5×10−5Paであった。また、ポリエチレンナフタレートフィルムの含水率を測定したところ、0.01質量%であった。
得られたITO透明導電膜付き基板について、上記の各特性を評価した。結果を表1に示す。
また、ITO透明導電膜付き基板のITO透明導電膜の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて反射電子像観察を行うことにより得られた観察像を図3に示す。
図1に示す圧力勾配型プラズマガンを備えた反応性イオンプレーティング装置を用いた。
反応性イオンプレーティング装置のハースに、ITOターゲット(In2O3:SnO2=95:5、99.99%)を充填した。
真空チャンバー内の基板フォルダに、温度23℃、湿度34%で1週間保管したポリエチレンナフタレートフィルム(Q65−FA、A4サイズ、厚さ125μm、帝人デュポン社製)を設置した。
次に、真空排気装置により、真空チャンバー内の圧力が1.0×10−4Paに達するまで、真空チャンバー内のガスを排気した。
以下、実施例1と同様にして、比較例1のITO透明導電膜付き基板を作製した。
なお、真空チャンバー内の排気後において、温度計の指示温度は23℃、真空チャンバー内の圧力は1.1×10−4Paであった。また、ポリエチレンナフタレートフィルムの含水率を測定したところ、0.4質量%であった。
得られたITO透明導電膜付き基板について、上記の各特性を評価した。結果を表1に示す。
また、ITO透明導電膜付き基板のITO透明導電膜の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて反射電子像観察を行うことにより得られた観察像を図4に示す。
DCマグネトロンスパッタリング装置に、ITOターゲット(In2O3:SnO2=90:10、99.99%)を装着した。
真空チャンバー内の基板フォルダに、温度23℃、湿度34%で1週間保管したポリエチレンナフタレートフィルム(Q65−FA、5cm×5cm、厚さ125μm、帝人デュポン社製)を設置した。
次に、真空排気装置により、真空チャンバー内の圧力が9.0×10−5Paに達するまで、真空チャンバー内のガスを排気した。
その後、ヒーターにより、温度計の指示温度が150℃となるように基板フォルダを加熱し、1時間保持後、ヒーターの出力を停止した。
4時間後、温度計の指示温度は23℃、真空チャンバー内の圧力は1.8×10−4Paであった。また、ポリエチレンナフタレートフィルムの含水率を測定したところ、0.01質量%であった。
得られたITO透明導電膜付き基板について、上記の各特性を評価した。結果を表1に示す。
また、ITO透明導電膜付き基板のITO透明導電膜の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて反射電子像観察を行うことにより得られた観察像を図5に示す。
(成膜条件)
基板:ポリエチレンナフタレートフィルム(Q65−FA、5cm×5cm、厚さ125μm、帝人デュポン社製、温度23℃、湿度34%で1週間保管)
成膜物質(ターゲット):ITO焼結体ペレット(In2O3:SnO2=90:10、99.99%)
成膜全圧:0.4Pa
放電電力:120W
O2流量:1sccm
基板加熱:なし
蒸発レート:5Å/sec
成膜時間:900秒
Claims (5)
- ロール・ツー・ロール法に適用可能なITO透明導電膜付き基板であって、
高分子フィルムを有する基板と、
前記基板上に設けられたITO透明導電膜と、を備え、
前記ITO透明導電膜を構成するITOの粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた反射電子像観察において、0.05μm以上であり、
前記ITO透明導電膜は、1.0%引っ張った後のシート抵抗の変化率が1500%以内であるITO透明導電膜付き基板。 - 前記ITO透明導電膜の引張り時に発生するクラックサイズが1000μm以下である、請求項1に記載のITO透明導電膜付き基板。
- 前記ITO透明導電膜の比抵抗は、0.8×10−4〜3.5×10−4Ωcmの範囲である、請求項1または2に記載のITO透明導電膜付き基板。
- ロール・ツー・ロール法に適用可能なITO透明導電膜付き基板の製造方法であって、
高分子フィルムを有する基板に対し減圧処理および加熱処理のいずれか一方または両方を施し、前記基板の含水率を0.15質量%以下とする調湿工程と、
前記基板上に、イオンプレーティング法により少なくとも1層のITO透明導電膜を成膜する成膜工程と、を有し、
前記調湿工程と前記成膜工程とは、共通する真空チャンバー内で連続的に行うことを特徴とするITO透明導電膜付き基板の製造方法。 - 前記イオンプレーティング法は、圧力勾配型プラズマガンを用いた反応性イオンプレーティング法である、請求項4に記載のITO透明導電膜付き基板の製造方法。
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