JP6563185B2 - 透明導電フィルムの製造方法 - Google Patents

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本発明は、透明フィルム基材上に透明電極層が形成された透明導電フィルムの製造方法に関する。
タッチパネルやディスプレイなどの表示デバイス、LEDなどの発光デバイス、太陽電池などの受光デバイスに用いられる透明導電フィルムでは、シート抵抗として表される電気特性の制御が重要である。特に、透明電極薄膜層を熱処理し、結晶化促進によって透明電極薄膜層を低抵抗化する技術は重要であり、従来の研究開発は結晶化促進を追及し、低抵抗率を達成するものが大勢であった。
透明電極薄膜層の形成にはスパッタリング法が、生産面の観点から広く採用されている。スパッタリング法では、特許文献1に記載されているように真空系の中に一定圧力の水を導入することで、結晶粒径の拡大と物理的な耐久性の向上について記載されている。
特開2010−080290号公報 国際公開第2013/111681号 特開2012−172219号公報
ところで、最近、透明導電フィルムを常温常圧環境下で長期間保管した場合に電気特性が変化する場合があることを見出した。これは、非晶質な透明電極薄膜層が常温常圧環境下において熱力学的に安定な結晶質に転移し、意図せずに電気特性が変化する現象である。元々非晶質が結晶質に変化することは知られているが、このような常温常圧環境での結晶化は、その後のデバイス作製プロセスにおいて、透明電極薄膜層の応力の問題から、基板からの剥離や変形を引き起こす可能性があり、特に、基板がフィルムやプラスチックなどの軟質の材料の場合には課題が生じやすい。本来「熱処理時の結晶化促進」と「常温常圧時の結晶化抑制」は、相反する物性と考えられるが、より高性能な製品では同時に要求されるものと考えられる。なお、特許文献2にはITOの活性化エネルギーを小さくして結晶化を促進する技術が記載され、特許文献3にはITO製膜時の水分圧を制御して透過率と可撓性を確保する技術が記載されているが、いずれの文献を再現しても上記「熱処理時の結晶化促進」と「常温常圧時の結晶化抑制」を同時に達成することはできない。
そこで、上記課題に鑑み、本発明は、熱処理による結晶化促進と常温結晶化抑制を同時に達成する透明導電フィルムの製造方法を提供するものである。
本発明者らが鋭意検討した結果、透明電極薄膜層を形成する際に製膜チャンバー内の水分量を一定の範囲にすることで上記2つの物性を同時に解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の製造方法は、透明フィルム基板上にロール・トゥ・ロール方式で非晶質の透明導電層をスパッタリング製膜する透明導電フィルムの製造方法において、透明導電層は非晶質の下地層及び非晶質の透明電極薄膜層からなり、四重極質量分析で測定した水分圧の不活性ガス分圧に対する比(以下分圧比)が、下地層の製膜では2.0〜4.0×10−3、且つ透明電極薄膜層の製膜では0.5〜5.0×10−4となるように制御する。
透明導電層が製膜された後、上記下地層と上記透明電極薄膜層を120℃以上の熱で同時に加熱結晶化することが好ましく、また、上記分圧比は、18MΩ以上の抵抗を示す水を大気圧以下で加熱気化し、流量制御装置を介して気化した水を一定流量に制御した後、連続または間欠的にチャンバー内に導入することで制御することが好ましい。
好ましい形態の一つは、上記下地層及び上記透明電極薄膜層は共に酸化インジウムを主成分とする酸化物からなり、上記下地層の膜厚は2〜15nmであり、且つ上記透明導電層全体の膜厚は16〜50nmであり、上記ターゲット材料は全て同じ組成または異なる組成であり、各ターゲットの酸化錫ドーピング量の差が0〜10重量%である。
また、上記下地層と上記透明電極薄膜層は別個のチャンバー内で製膜され、各ターゲットはインジウム酸化物を主成分とする焼結体からなり、導電性添加剤として酸化錫が添加されており、その添加量は5重量%以上12.5重量%以下であり、上記下地層の膜厚は1〜7nmであり、上記透明電極薄膜層の膜厚は15〜28nmであることがさらに好ましい。
本発明の別の形態は、透明フィルム基板を搬送するフィルムロールからの繰出し工程と、真空加熱によるフィルム中の水分を除去する工程と、スパッタリングによる透明導電層形成工程と、上記透明フィルム基板表面の付着物を除去する工程と、製膜後のフィルムを巻き取る工程とを有する。また、上記下地層のスパッタ製膜は直流電源または交流電源によって実施され、その際の放電電圧が−100〜−350Vであることが好ましい。
本発明によれば、透明導電層製膜時の水分圧を一定の範囲内で制御し、さらにその水分圧を膜厚方向で変化させ、具体的には、透明フィルム基板近傍である下地層製膜時の水分圧比は高いのに対し、透明フィルム基板から遠い透明電極薄膜層の製膜では低くすることで、熱処理による結晶化促進と常温結晶化抑制を同時に達成する透明導電フィルムの製造が可能となる。
実施例1における透明導電フィルムの模式的断面図である。
[透明導電フィルムの構成]
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、透明フィルム基材100上に下地層200、さらにその上に透明電極薄膜層300を形成した透明導電フィルムを示している。透明電極薄膜層300は図1に示すように301と302のような複数層の構成で形成されていても良い。透明フィルム基材100と下地層200との間にコーティング層400が設けられている。コーティング層400は透明フィルム基材100の保護や、透明フィルム基材100中に含まれる低分子量成分の拡散抑制、光学膜厚調整を目的として設けられる。図1ではコーティング層400は透明フィルム基材100の片面にのみ形成されているが、両面に形成されていても良い。
透明フィルム基材100を構成する透明フィルムは、少なくとも可視光領域において無色透明であるものが好ましい。
下地層200は、インジウムを主成分とする酸化物からなる無機化合物であることが好ましい。透明導電フィルムに用いられる下地層としては、酸化珪素が一般的に用いられるが、珪素は酸素との結合が強く、スパッタリング製膜では、容易に酸素が過飽和な膜となりえ、その上に形成した透明電極薄膜層300の結晶化を過剰に促進し、常温結晶化が進行する虞があるので、例えば、特許文献3のように、無機化合物として珪素を主成分として含まないことが好ましい。
また、炭素や窒素元素も意図的に含有させないことが、透明電極薄膜層300の結晶化の観点からも重要である。このような条件に見合うドーピング材料としては、錫の酸化物が最も好ましい。錫酸化物を添加した酸化インジウムは、透明電極薄膜層としても使用することから、材料のマッチングには課題がなく、結晶化を阻害しない点で好ましい。ドーピング量は透明電極薄膜層のドーピング量と同じである必要はなく、下地層と透明電極薄膜層との酸化物としてのドーピング量(重量%)の差は、絶対値で0〜10重量%、好ましくは0〜7重量%、より好ましくは0〜3重量%であることが好ましい。特にドーピング量の差が無い場合には、下地層と透明電極薄膜層との密着性が最も高くなることが予想される。下地層200の膜厚は2〜15nmであることが好ましく、さらには2〜10nmが好ましい。特に好ましいのは2〜5nmである。
下地層200には透明フィルム基材100からの炭素原子、窒素原子などの透明電極薄膜層300の結晶化阻害成分の拡散抑制や、透明電極薄膜層300をスパッタリングで形成するときのプラズマからの透明フィルム基材100の保護、透明電極薄膜層300形成時の表面自由エネルギー制御などの役割があり、これらの役割を満たすためには上記膜厚範囲が好ましい。
下地層200の形成方法は、生産性の観点からスパッタリング法が好ましい。スパッタリング法では、マグネトロンスパッタリング法が特に好ましい。マグネトロンスパッタリング時のマグネットの強度は700〜1300ガウスが好ましく、これにより極端なエロージョンによるスパッタターゲットの利用効率低下を抑制し、かつ良質な下地層200の形成が可能となる。これは、磁場強度を大きくすることで、放電電圧を下げることが可能となるためであり、下地層200の形成を透明フィルム基材100に対して低ダメージで行うことができる利点がある。スパッタリングに用いる電源には制限が無く、直流電源や交流電源などをターゲット材料にあわせて選択できる。放電電圧は装置や電源の種類に依るが、−100〜−350V程度が良好な下地層200を形成するためには好ましく、さらには、−180〜−300V程度がより好ましい。
さらに、下地層200形成時には、スパッタチャンバー内に導入する酸素量が重要であり、通常の透明導電性酸化インジウムを形成する際に導入する酸素量(いわゆるボトム酸素量)よりも3倍以上多い酸素を導入することで、本発明の下地層を形成することが可能となる。特に好ましいのは3〜8倍であり、多すぎる酸素量は製膜速度の低下や、大過剰な酸素により発生する酸素プラズマによる薄膜へのダメージがあることから好ましくない。
透明電極薄膜層300は酸化インジウムを、87.5重量%〜99.0重量%含有する。酸化インジウムの含有量は、90重量%〜95重量%であることがより好ましい。結晶質透明電極薄膜層は、膜中にキャリア密度を持たせて導電性を付与するためのドープ不純物を含有する。このようなドープ不純物としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン、酸化セリウムなどがあるが、酸化錫が好ましい。ドープ不純物が酸化錫である場合の透明電極薄膜層は酸化インジウム・錫(ITO)である。透明電極層中の前記ドープ不純物の含有量は、2.5重量%〜12.5重量%であることが好ましく、3.0重量%〜10.0重量%であることがより好ましく、特には5.0〜7.5重量%が好ましい。
透明電極薄膜層と下地層の膜厚の合計は、50nm未満が好ましく、16〜45nmがさらに好ましく、18〜30nmが最も好ましい。
透明電極薄膜層300は、結晶化度が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。結晶化度が上記範囲であれば、透明電極薄膜層による光吸収を小さくできるとともに、環境変化等による抵抗値の変化が抑制される。なお、結晶化度は、顕微鏡観察時において観察視野内で結晶粒が占める面積の割合から求められる。
透明電極薄膜層300は、抵抗率が3.5×10−4Ωcm以下であることが好ましい。また、結晶質透明電極薄膜層300の表面抵抗は、170Ω/□以下であることが好ましく、150Ω/□以下であることがより好ましい。透明電極薄膜層が低抵抗であれば、静電容量方式タッチパネルの応答速度向上や、有機EL照明の面内輝度の均一性向上、各種光学デバイスの省消費電力化等に寄与し得る。
透明電極薄膜層300のキャリア密度は、4×1020cm−3〜9×1020cm−3であることが好ましく、6×1020cm−3〜8×1020cm−3であることがより好ましい。キャリア密度が上記範囲内であれば、透明電極薄膜層300を低抵抗化できる。
透明電極薄膜層300の形成方法は、生産性の観点からスパッタリング法が好ましく、中でもマグネトロンスパッタリング法が好ましい。スパッタリングによる透明電極薄膜層300の形成は、1回の製膜で所望膜厚の全厚を形成しても良いが、複数回の積層により形成したほうが、生産処理速度や、透明フィルム基材100への熱履歴の観点から好ましい。複数回製膜を行う際には、以下の2つの手法により結晶性を制御することが可能である。1つは同じ組成のターゲットを用いて、各層毎の製膜条件を変える方法であり、もう1つは異なる組成のターゲットを用いて積層する方法である。
前者の手法としては、例えば下地層200上に製膜する場合には、入力電力を高めに設定することで結晶核形成を促すことや、逆に入力電圧を低めに設定することで、結晶化の活性化エネルギーを高くすることが可能である。さらに、最表面製膜時の入力電力や反応性ガス(酸素等)の分圧を調整することで、透明電極薄膜層に含まれるドーパントの、透明電極薄膜層300表面への偏析を抑制することができ、透明電極薄膜層中で均一な結晶化が可能となる。後者の手法としては、透明電極薄膜層を構成する材料やドーパントの組成・濃度を順次変更して形成する方法である。この手法の場合、透明電極薄膜層中のスムーズな電子輸送の観点から、ドーパントの材料は同一である方が好ましく、また濃度の変化は膜厚方向にのみ生じることが好ましい。
[透明導電フィルムの製造方法]
以下、本発明の好ましい実施の形態について、透明導電フィルムの製造方法に沿って説明する。本発明の製造方法では、透明フィルム上にハードコートなど透明誘電体層を備える透明フィルム基材100が用いられる(基材準備工程)。透明電極薄膜層はスパッタリング法により形成され(製膜工程)、その後、透明電極層が結晶化される(結晶化工程)。一般に、酸化インジウムを主成分とする非晶質の透明電極層を結晶化するためには、150℃程度の加熱処理を実施する。
(基材準備工程)
透明フィルム基材100を構成する透明フィルムは、少なくとも可視光領域で無色透明であり、透明電極層形成温度における耐熱性を有していれば、その材料は特に限定されない。透明フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフテレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましく用いられる。
透明フィルム基材100の厚みは特に限定されないが、10μm〜400μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましい。厚みが上記範囲内であれば、透明フィルム基材10が耐久性と適度な柔軟性とを有し得るため、その上に各透明誘電体層および透明電極層をロール・トゥ・ロール方式により生産性高く製膜することが可能である。透明フィルム基材100としては、二軸延伸により分子を配向させることで、ヤング率などの機械的特性や耐熱性を向上させたものが好ましく用いられる。
一般に、延伸フィルムは、延伸による歪が分子鎖に残留するため、加熱された場合に熱収縮する性質を有している。このような熱収縮を低減させるために、延伸の条件調整や延伸後の加熱によって応力を緩和し、熱収縮率を0.2%程度あるいはそれ以下に低減させるとともに、熱収縮開始温度が高められた二軸延伸フィルム(低熱収縮フィルム)が知られている。透明導電フィルムの製造工程における基材の熱収縮による不具合を抑止する観点から、このような低熱収縮フィルムを基材として用いることも提案されている。
透明フィルム基材100の片面または両面にハードコート層等の機能性層400が形成されたものであってもよい。透明フィルム基材に適度な耐久性と柔軟性を持たせるためには、ハードコート層の厚みは1〜10μmが好ましく、3〜8μmがより好ましく、5〜8μmがさらに好ましい。ハードコート層の材料は特に制限されず、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等を、塗布・硬化させたもの等を適宜に用いることができる。具体的な例として、アクリル樹脂(商品名:ダイヤナールBR−102、三菱レイヨン製)をメチルセロソルブに固形分濃度30重量%となるように溶解した樹脂溶液に、酸化ジルコニウム(商品名:ジルコニア粒子TZ−3Y−E、東ソー製)を、アクリル樹脂に対して1重量%添加して十分に撹拌することで、中屈折率制御層塗布液を作製し、グラビアコーティングにより3マイクロメートルの厚みに塗布し、125℃で15分間乾燥させることで、1マイクロメートル厚の樹脂層を形成できる。この低屈折率層の屈折率は1.53であった。
(製膜工程)
透明フィルム基材100の下地層200上に、スパッタリング法により透明電極薄膜層300が形成される。
スパッタ製膜は、製膜室内に、アルゴンや窒素等の不活性ガスおよび酸素ガスを含むキャリアガスが導入されながら行われる。導入ガスは、アルゴンと酸素の混合ガスが好ましい。アルゴンと酸素は、所定の混合比のガスを予め用意しても良いし、それぞれのガスを流量制御装置(マスフローコントローラ)により流量を制御した後に混合しても良い。なお、混合ガスには、本発明の機能を損なわない限りにおいて、その他のガスが含まれていてもよい。製膜室内の圧力(全圧)は、0.1Pa〜1.0Paが好ましく、0.15Pa〜0.8Paがより好ましい。
本発明において、製膜チャンバー内の雰囲気の制御は重要であり、特に水分圧の制御は非常に重要である。分圧は、水分圧とキャリアガスとして導入するアルゴンなどの不活性ガスの比(以下、分圧比=水分圧÷不活性ガス分圧)で規定することで、チャンバー体積に依存しない設計が可能となる。またこのような分圧測定は、四重極質量分析装置を設置することで可能となる。本分析装置では、質量数mと電荷zの比(m/z)が18のものを水分圧として読み取り、40のものをアルゴン分圧として読み取ることで算出できる。
本発明では、分圧比は下地層と透明電極薄膜層で異なることが特徴であり、下地層では2.0〜4.0×10−3が好ましく、特には2.5〜3.5×10−3が好ましい。一方透明電極薄膜層は0.5〜5.0×10−4であり、さらには0.7〜2.5×10−4が好ましく、特には0.7〜1.3×10−4が好ましい。また、透明電極薄膜層が複数層で形成されている場合、それらの水分圧の範囲は透明電極薄膜層が単層の場合と同様である。下地層と透明電極薄膜層の分圧比を各々上記範囲で制御することで、熱処理による結晶化と常温結晶化抑制を同時に達成することができる。どちらも水分圧が高すぎる場合には、熱処理による結晶化が阻害されるために好ましくなく、特に透明電極薄膜層ではその傾向が顕著である。一方、水分圧が低すぎる場合には、常温結晶化抑制に効果が低い。
下地層と透明電極薄膜層で制御範囲が異なる理由として、透明電極薄膜は「結晶化促進」を、下地層は「透明電極薄膜の常温結晶化抑制」をそれぞれ担っていることが挙げられる。本質的に透明電極材料は、結晶化が促進されればされるほど低抵抗になり、且つ安定するため、良質であると言われている。しかし、フィルム上に形成された透明電極材料は一般的に非晶質であり、熱処理をされることで結晶化するものであるが、透明電極材料に広く用いられる酸化物は、熱力学的に安定な相である結晶質に自然と(熱処理を施さなくても)転移するものである。産業上の利用の観点からすると、透明導電フィルムは、一定の長さのロールとして熱処理前の状態で保管されることが多い。このため、常温で結晶化が促進するものは、この保管期間中に結晶化が進行し、その後熱処理を施した際にフィルムからの応力に耐えられずに、透明電極材料にクラックが発生する可能性がある。このため、透明電極薄膜は常温付近で結晶化しないことが1つの品質となる場合がある。
本発明における結晶化促進と抑制という一見矛盾する概念を示す指標として、結晶化活性化エネルギーがある。一般的な透明電極材料は、1.3eV以下であれば結晶化が促進されるため良好といえるが、本発明では、活性化エネルギーの下限を0.6eVと制御することで、常温結晶化の抑制を達成した。活性化エネルギーは、例えば特許文献2に記載されている方法で求めることができるが、活性化エネルギーの上下限を同時に制御する技術は確立されていない。
分圧比の制御方法では、水分圧と不活性ガス分圧の両方を調整するより、水分圧のみを制御する方が簡便である。真空チャンバーの水分圧を制御することは、チャンバー内に水を気体で導入することで可能となる。導入には不活性ガス中に水を拡散させる方法もあるが、純度の高い水を効率よく導入するには、18MΩ以上の抵抗を示す水を大気圧以下で加熱することで気化する方法がある。本方法の利点として、水の原料の純度を極限まで上げる必要がないことがある。不活性ガス中への水の拡散は、室温で水を導入できるメリットがある反面、水中に含まれる不純物(特に金属イオン)も同時にチャンバー内に持ち込むことになり、透明導電層の電気・光学特性の低下や、設備劣化の原因ともなる可能性がある。本方法では、沸点まで温度を上げる(蒸留する)ことで、チャンバー供給前に超高純度の水とすることが可能となる。この手法により、特に金属イオンを効率よく除去することができる。
本発明においては、気化した水を流量制御装置を介してチャンバー内に導入した。水の導入は、あくまでもチャンバー内の分圧比を調整するためだけを目的としているので、連続であっても間欠であっても、透明導電フィルムの特性上問題はない。また、導入するチャンバーは、製膜チャンバーであることが直接制御可能である点で好ましいが、チャンバー内の水の偏析を抑制する目的から、製膜チャンバーよりも上流側にある非製膜チャンバー内に気化した水を導入することで、フィルム基材100表面に水を付着させることができる。これらの調整は、製膜チャンバー内の分圧比により適時制御することが可能である。
製膜時の基板温度は、透明フィルム基材が耐熱性を有する範囲であればよく、60℃以下であることが好ましい。基板温度は、−20℃〜40℃であることがより好ましい。
基板温度を60℃以下とすることで、透明フィルム基材からの水分や有機物質(例えばオリゴマー成分)の揮発等が起こり難くなり、酸化インジウムの結晶化が起こりやすくなるとともに、非晶質膜が結晶化された後の結晶質透明電極薄膜層の抵抗率の上昇を抑制することができる。また、基板温度を上記範囲とすることで、透明電極層の透過率の低下や、透明フィルム基材の脆化が抑制されるとともに、製膜工程においてフィルム基材が大幅な寸法変化を生じることがない。
本発明においては、巻取式スパッタリング装置を用いて、ロール・トゥ・ロール法により製膜が行われることが好ましい。ロール・トゥ・ロール法により製膜が行われることで、非晶質の透明電極層が形成された透明フィルム基材の長尺シートのロール状巻回体が得られる。透明フィルム基材100上への下地層200および透明電極薄膜層300の形成が巻取式スパッタリング装置を用いて連続して製膜されてもよい。
(結晶化工程)
本発明に係る下地層および透明電極薄膜層は、熱処理による結晶化が施されていない製膜直後においては非晶質であり、その後の熱処理後に同時に結晶化することが重要である。ITO層に熱処理を施した際、透明電極付きフィルム基板はフィルム基板によって熱収縮されるが、この熱収縮に追従して下地層および透明電極薄膜層が同時に、変形し、結晶化する必要があり、これらが同時に生じない場合には、下地層および/または透明電極薄膜層に歪みやクラックが入ることがあり、透明導電フィルムとしての機能を充分には達成できない場合がある。
非晶質の下地層および透明電極薄膜層が形成された基材は、結晶化工程に供される。結晶化工程では、当該基材が120〜170℃に加熱される。
膜中に酸素を十分に取り込み、結晶化時間を短縮するためには、結晶化は大気中等の酸素含有雰囲気下で行われることが好ましい。真空中や不活性ガス雰囲気下でも結晶化は進行するが、低酸素濃度雰囲気下では、酸素雰囲気下に比べて結晶化に長時間を要する傾向がある。
長尺シートのロール状巻回体が結晶化工程に供される場合、巻回体のままで結晶化が行われてもよく、ロール・トゥ・ロールでフィルムが搬送されながら結晶化が行われてもよく、フィルムが所定サイズに切り出されて結晶化が行われてもよい。
巻回体のまま結晶化が行われる場合は、透明電極層形成後の基材をそのまま常温・常圧環境に置くか、加熱室等で養生(静置)すればよい。ロール・トゥ・ロールで結晶化が行われる場合、基材が搬送されながら加熱炉内に導入されて加熱が行われた後、再びロール状に巻回される。なお、室温で結晶化が行われる場合も、透明電極層を酸素と接触させて結晶化を促進させる等の目的で、ロール・トゥ・ロール法が採用されてもよい。
[透明導電フィルムの用途]
本発明の透明導電フィルムは、ディスプレイや発光素子、光電変換素子等の透明電極として用いることができ、タッチパネル用の透明電極として好適に用いられる。中でも、透明電極層が低抵抗であることから、静電容量方式タッチパネルに好ましく用いられる。
タッチパネルの形成においては、透明導電フィルム上に、導電性インクやペーストが塗布されて、熱処理されることで、引き廻し回路用配線としての集電極が形成される。加熱処理の方法は特に限定されず、オーブンやIRヒータ等による加熱方法が挙げられる。加熱処理の温度や時間は、導電性ペーストが透明電極に付着する温度・時間を考慮して適宜に設定される。例えば、オーブンによる加熱であれば120〜150℃で30〜60分、IRヒータによる加熱であれば150℃で5分等の例が挙げられる。なお、引き回し回路用配線の形成方法は、上記に限定されず、ドライコーティング法によって形成されてもよい。また、フォトリソグラフィによって引き廻し回路用配線が形成されることで、配線の細線化が可能である。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各下地層および透明電極薄膜層の膜厚は、透明導電フィルムの断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた値を使用した。透明電極層の表面抵抗は、低抵抗率計ロレスタGP(MCP‐T710、三菱化学社製)を用いて四探針圧接測定により測定した。
[実施例1]
(下地層200の製膜)
酸化インジウム・錫(酸化錫含量10重量%)をターゲットとして用い、酸素とアルゴンの混合ガスを装置内に導入しながら、酸素分圧5.0×10−2Pa、製膜室内圧力0.2Pa、基板温度0℃パワー密度2kWの条件で行った。
(透明電極薄膜層300の製膜)
連続して、酸化インジウム・錫(酸化錫含量10重量%)をターゲットとして用い、酸素とアルゴンの混合ガスを装置内に導入しながら、酸素分圧3.3×10−2Pa、製膜室内圧力0.2Pa、基板温度0℃、パワー密度12kWの条件で行った。
今回作製した下地層200および透明電極薄膜層300は、いずれも非晶質であった。結晶性の評価はX線回折装置(RINT2000、リガク社製)を用い、2θ/θ測定および、0.5°入射の小角2θ測定を行い、酸化インジウムの回折に帰属されるピークの有無により評価した。
(結晶化(熱処理))
この透明導電フィルムを、150℃で1時間熱処理を行った。顕微鏡観察によってほぼ完全に結晶化されていることが確認された(結晶化度100%)。
(常温結晶化の評価)
製膜したフィルムを、25℃・50%RHの環境に1週間放置し、その時のシート抵抗を測定することで評価した。良否の基準は結晶化が50%進行したかどうかとし、
(常温結晶化)=(製膜後のシート抵抗)−{(製膜後のシート抵抗)−(熱処理後のシート抵抗)}÷2
の値よりも大きいものを良とし、小さいものを否とした(表中には試験後のシート抵抗値を記載した)。
各層の構成、結果、各水準の特性を表1に示す。ここで、ターゲット材料は下記のものを用いた。nITO(n=3,5,7,10)は、酸化錫をn重量%含有する酸化インジウムを用いた。
表1の結果より、水分圧を制御することによって、熱処理後のシート抵抗と常温結晶化試験後のシート抵抗に大きな差を生じさせることがわかった。従来の報告にあるように、分圧比が小さい、即ち水分圧が小さい製膜条件では、熱処理後の結晶化が進行しやすいことは知られているが、同時に常温結晶化特性も悪化することが新たにわかった。
実施例では、熱処理後のシート抵抗は低下していながらも、常温結晶化は起きておらず、良好な透明導電フィルムを作製できた。一方、比較例では、熱処理シート抵抗が低下するが常温結晶化を抑制できない、または常温結晶化しないが熱処理によってもシート抵抗が低下しないという結果となった。
本発明のようなことが可能となった理由として、下地層が「結晶化を阻害しない程度の、フィルムからの遅延または阻害物質拡散抑制(バリア性)・フィルムへの耐プラズマダメージ性」と「結晶化を積極的に促進しない程度の結晶化遅延または阻害(弱バリア性)能力」を非常に高い次元でバランスしていることが考えられる。このような現象は、例えば、透明電極薄膜層形成時のプラズマから透明フィルム基材を保護し、且つ熱拡散等によるフィルムからの結晶化遅延物質拡散を抑制しない場合には起こりうるものであり、そのような特殊な機能を有するものが、本発明における下地層の役割と考えられる。
100:透明フィルム基材
200:下地層
300:透明電極薄膜層
301、302:透明電極薄膜層を構成する層
400:コーティング層

Claims (4)

  1. 透明フィルム基板上にロール・トゥ・ロール方式で非晶質の透明導電層をスパッタリング製膜した後、加熱して透明導電層を結晶化する透明導電フィルムの製造方法において、
    記透明導電層のスパッタリング製膜は、透明フィルム基板を搬送するフィルムロールからの繰出し工程と、真空加熱によりフィルム中の水分を除去する工程と、スパッタリングにより非晶質の下地層及び非晶質の透明電極薄膜層からなる透明導電層を形成する透明導電層形成工程と、前記透明フィルム基板表面の付着物を除去する工程と、製膜後のフィルムを巻き取る工程とを有し、
    前記下地層及び前記透明電極薄膜層は共に酸化インジウムを主成分とする酸化物からなり、前記下地層の膜厚は2〜15nmであり、且つ前記透明導電層全体の膜厚は16〜50nmであり、
    前記透明導電層形成工程において、基板温度が60℃以下であり、四重極質量分析で測定した水分圧の不活性ガス分圧に対する比が、前記下地層の製膜では2.0〜4.0×10−3、且つ前記透明電極薄膜層の製膜では0.5〜5.0×10−4であり、
    透明導電層の結晶化において、前記下地層と前記透明電極薄膜層を120℃以上の熱で同時に加熱して結晶化し、表面抵抗が170Ω/□以下の結晶質の透明導電層を得る、透明導電フィルムの製造方法。
  2. 18MΩ以上の抵抗を示す水を大気圧以下で加熱気化し、流量制御装置を介して気化した水を一定流量に制御した後、連続または間欠的にチャンバー内に導入することを特徴とする、請求項1に記載の透明導電フィルムの製造方法。
  3. 前記下地層及び前記透明電極薄膜層は全て同じ組成または異なる組成からなり、酸化錫のドーピング量の差が0〜10重量%である請求項1または2に記載の透明導電フィルムの製造方法。
  4. 前記下地層のスパッタ製膜は直流電源または交流電源によって実施され、その際の放電電圧が−100〜−350Vである請求項1〜のいずれかに記載の透明導電フィルムの製造方法。
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