JP6053435B2 - ブタジエン及びその製造方法 - Google Patents
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Description
〔1〕
カルボン酸亜鉛化合物を、0<x≦0.1wt%(xは亜鉛の濃度である。)含有する、ブタジエン含有組成物。
〔2〕
前記カルボン酸亜鉛化合物が二酢酸亜鉛である、〔1〕に記載のブタジエン含有組成物。
〔3〕
カルボン酸亜鉛化合物を含む溶液と、液化ブタジエンとを接触させる接触工程と、
前記溶液と、前記カルボン酸亜鉛化合物を含有するブタジエン含有組成物とを分離する分離工程と、を有する、ブタジエン含有組成物の製造方法。
〔4〕
前記溶液が水溶液である、〔3〕に記載のブタジエン含有組成物の製造方法。
本実施形態におけるブタジエン(以下、「ブタジエン含有組成物」という場合もある。)は、亜鉛を、0<x≦0.1wt%(xは亜鉛の濃度である。)含有する。
本実施形態におけるブタジエン含有組成物を用いることにより、分子量分布が狭く、特に低分子量領域においても均質なブタジエン重合体を得ることが可能である。ブタジエン含有組成物に含まれる亜鉛の濃度xは、0<x≦0.1wt%であり、好ましくは10wtppb≦x≦0.02wt%であり、より好ましくは20wtppb≦x≦0.01wt%である。亜鉛の濃度が0.1wt%よりも多いと塩が析出する場合がある。亜鉛の濃度は、極めて微量であっても効果を有する。亜鉛の濃度の下限値は、特に限定されないが、具体的には、後述する測定方法における検出下限(1wtppb)を超えることが好ましい。このような極めて微量の亜鉛であれば、亜鉛が連鎖反応に関与するメカニズムが働くため、分子量分布が狭く、均質なブタジエン重合体を得ることができるブタジエンとなると考えられる。分子量分布が均一な重合体が得られるメカニズムについては、明確ではないが、亜鉛の添加量は極めて少なくても効果があることから、原子レベルで高分散された亜鉛が重合触媒の分散と、失活の防止に効果があり、重合の開始点を増やすと共に、重合開始時と終了時を均一にする効果もあるものと発明者は推測している。
本実施形態において、亜鉛を添加するタイミングは特に限定されないが、ブタジエンの精製工程において添加されることが好ましい。また、添加方法は、特に限定されないが、ブタジエンに対して金属亜鉛、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、硫化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、よう化亜鉛、硝酸亜鉛、水酸化亜鉛、フッ化亜鉛や、カルボン酸亜鉛化合物、フェニル亜鉛化合物、スルホン酸亜鉛化合物、アルキル亜鉛化合物、アルコキシド亜鉛化合物等の有機亜鉛化合物を、直接又は間接的な方法で添加することができる。亜鉛の添加量は極微量であるため、間接的な方法で添加することが好ましい。
間接的な添加方法としては、亜鉛を含む溶液と、液化ブタジエンとを接触させる接触工程により、当該溶液中の亜鉛をブタジエンに移動させる方法が好ましい。
溶液としては、特に限定されないが、ブタジエンと容易に混合しないものが好ましく、具体的には、水溶液、アルコール溶液、エーテル溶液等が挙げられる。このなかでも、溶液が水溶液であることが好ましい。亜鉛を含む水溶液を溶液とする場合には、水に対してカルボン酸亜鉛化合物を添加することが好ましい。カルボン酸亜鉛化合物としては、特に限定されないが、酢酸亜鉛が好ましい。上記水溶液を用いることにより、より効率よく所定量の亜鉛をブタジエン中に高分散状態で添加できる傾向にある。
本実施形態のブタジエンの製造方法では、接触工程のあと溶液とブタジエンとを分離する分離工程をさらに有することが好ましい。分離工程では、図1に示したように、亜鉛添加装置5の最上部5aから抜き出した溶液と液化ブタジエンとを一時保管タンク6に一時保管した後、溶液を分離する為に溶媒分離塔8の上部8aに供給する。溶液として水溶液を用いた場合、塔頂部8bから水を排溶媒タンク9に分離し、塔底部8cからブタジエンを亜鉛添加ブタジエンタンク10に抜き出すことができる。この分離の際の圧力は0.3〜0.7MPa/Gが好ましく、0.4〜0.6MPa/Gがより好ましい。溶媒に水を用いた場合には、塔頂部温度は40〜60℃、塔底部温度は45〜65℃で操作することが好ましい。分離工程には、その他、充填塔、段塔等の塔を用いることができる。この時、重合防止剤を添加してもよい。このような分離工程により、不純物や余剰な亜鉛を除去することができる。
ブタジエンに対して、亜鉛を直接添加することもできる。この場合に、亜鉛は、金属亜鉛、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、硫化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、よう化亜鉛、硝酸亜鉛、水酸化亜鉛、フッ化亜鉛や、カルボン酸亜鉛化合物、フェニル亜鉛化合物、スルホン酸亜鉛化合物、アルキル亜鉛化合物、アルコキシド亜鉛化合物等の有機亜鉛化合物等としてブタジエンに直接添加することができる。直接添加する場合は、添加する物質の粒子径は小さいほど好ましい。好ましい粒子径は200nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。このような範囲であることにより、亜鉛がブタジエン中により均一に混ざりやすくなる傾向にある。また、直接添加する場合において、重合反応直前に亜鉛を添加しても、均一に混ざりきらないため、分子量分布を狭くする効果は期待できない。予め亜鉛を添加して均一に混合しておくことが好ましい。
亜鉛を添加したブタジエン含有組成物の一部を耐圧ボンベにサンプリングする。さらに、その耐圧ボンベからシリンジを用いて少量(約50g)のサンプルを抜き出し、すぐに重量を測定する。テフロン(登録商標)製の圧力容器にサンプリングした試料を全量入れ、95℃のウォーターバス中で揮発成分を蒸発させ、除去する。この残渣成分に王水を加え、180〜230℃に加熱し、残渣成分を分解、溶解した後、超純水で適当な濃度になるように希釈する。この液を誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)により分析することで、添加された亜鉛の定量分析を行うことができる。当該測定方法の検出限界は通常1wtppb程度である。
本実施形態におけるブタジエンの製造方法は、亜鉛を含む溶液と液化ブタジエンとを接触させる装置と、当該溶液と液化ブタジエンを分離する装置、及び必要に応じてその他の装置等を備えた設備において実施することができる。その他の装置等としては、特に限定されないが、例えば、圧縮機及び熱交換器などのブタジエンを含むガスを圧縮して液化する装置、放散塔や高沸点物分離塔等不純物を除去する装置等が挙げられる。
(亜鉛添加工程)
亜鉛添加工程に用いた装置を図1に示した。ブタジエンタンク1中のブタジエンガスを圧縮機2で0.5MPaに圧縮し、熱交換器3で5℃に冷却し、液化ブタジエンとした。一方で、超純水を溶媒として、Znが0.2mol%になるように、二酢酸亜鉛を溶解し、亜鉛添加溶液(Zn添加水)を作製して、亜鉛添加溶液タンク4に貯蔵した。液化ブタジエンへの亜鉛の添加には、管径2インチ(5.08cm)、高さ1,500mmのSUS304製の管(亜鉛添加装置5)を用いた。亜鉛添加装置5の内部にはSUS304製のカスケードミニリングを充填した。この亜鉛添加装置5内の温度は5℃、圧力は0.5MPaとした。亜鉛添加装置5の底部より200mmの位置から液化ブタジエンを100g/hrで装置内に供給し、底部より1,300mmの位置からZn添加水を100g/hrで装置内に供給し、最上部5aからは水を僅かに含んだ含水Zn添加ブタジエンを100g/hrで抜いて一時保管タンク6に移動させ、管底部5bからは水と余剰のZnを含んだ液を100g/hrで抜いて溶媒排出タンク7に移動させた。
亜鉛添加ブタジエンタンク10より、シリンジに約50gのZn添加ブタジエンを抜き出し、正確な重量を測定したところ50.010gであった。この抜き出したZn添加ブタジエンをテフロン(登録商標)製の圧力容器に全量入れた。この容器を25℃のウォーターバスで加熱し、圧力を抜きながら揮発成分を蒸発させ、その後、95℃のウォーターバスで加熱し、揮発成分を全て蒸発させた。その残渣に王水8mL(超高純度品30%HCl:6mL+超高純度品68%HNO3:2mL)加え、210℃、50分間マイクロウェーブ分解装置で溶解し、超純水をさらに加えて100gにした。この液を用いてICP−MS(サーモフィッシャーサイエンティフィックス社製XシリーズII:装置名)によってブタジエン中のZn濃度を測定したところ、15.6wtppmであった。
内部の直径12cm、高さ40cmの円筒形で、ジャケットと攪拌機のついたSUS304製の反応器を、底部に入り口、頂部を出口として直列で2基連結して、1基目を重合反応器、2基目を変成反応器とした。
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により、実施例1の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めた。さらに、この重量平均分子量と数平均分子量の比から分子量分布(Mw/Mn)を求めた。溶離剤にはテトラヒドロフランを用いた。カラムは、ガードカラム(東ソー製TSKguradcolumn HHR−H)と3本のカラム(東ソー製TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHR)とを連結して使用した。
亜鉛添加水にZnを0.01mol%溶解させたものを用い、亜鉛添加工程における液化ブタジエンの供給速度を1000g/hrとし、Zn添加水の供給速度を100g/hrとし、最上部5aから水を僅かに含んだZn添加ブタジエンを1000g/hrで抜き、管底部5bから水と余剰のZnを含んだ液を100g/hrで抜いたこと以外は、実施例1と同じ条件で亜鉛添加工程を行って、実施例2の亜鉛添加ブタジエンを得た。また、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.15mmol/min添加したこと以外は、実施例1と同じ条件で重合工程を行い、実施例2の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体を得た。実施例2の亜鉛添加ブタジエンを分析した結果、ブタジエンのZn濃度は20.1wtppbであった。また、実施例3の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体の重量平均分子量Mwは131,000、数平均分子量Mnは68,000であり、Mw/Mnは1.93であった。
亜鉛添加水にZnを1mol%溶解させたものを用い、亜鉛添加工程における液化ブタジエンの供給速度を10g/hrとし、Zn添加水の供給速度を90g/hrとし、最上部5aから水を僅かに含んだ含水Zn添加ブタジエンを10g/hrで抜き、管底部5bから水と余剰のZnを含んだ液を90g/hrで抜いたこと以外は、実施例1と同じ条件で亜鉛添加工程を行って、実施例3の亜鉛添加ブタジエンを得た。また、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.05mmol/min添加したこと以外は実施例1と同じ条件で重合工程を行い、実施例3の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体を得た。実施例3の亜鉛添加ブタジエンを分析した結果、ブタジエンのZn添加量は807wtppmであった。また実施例3の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体の重量平均分子量Mwは195,000、数平均分子量Mnは102,000であり、Mw/Mnは1.91であった。
亜鉛を添加していないブタジエンを用いて、実施例1と同じ条件で重合工程を行い、比較例1の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体を得た。原料ブタジエンを分析した結果、原料ブタジエン中の亜鉛は検出されなかった。また、比較例1の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体の重量平均分子量Mwは149,000、数平均分子量Mnは37,000であり、Mw/Mnは4.03であった。
日立ハイテクノロジー社製の電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)「SU−70」(商品名)により200個以上の粒子を撮影し、得られたSEM像を用いて粒子径を測定した粒子径が200nm以下になるように、十分粉砕した酸化亜鉛をn−ヘキサンに混ぜ、濃度22.4wtppmになるように調整した。添加した酸化亜鉛が沈降しないように500rpmで攪拌しながら保持した。亜鉛を添加していないブタジエンと、前述の酸化亜鉛添加n−ヘキサンを用いたこと以外は実施例1と同じ条件で重合工程を行い、比較例2の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体を得た。原料ブタジエンを分析した結果、原料ブタジエン中の亜鉛はいずれも検出されなかった。また、比較例2の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体の重量平均分子量Mwは141,000、数平均分子量Mnは28,000であり、Mw/Mnは5.04であった。これにより、重合反応直前に亜鉛(酸化亜鉛添加n−ヘキサン)を系内に添加しても、分子量分布を狭くする効果はないことがわかった。
亜鉛添加水にZnを5mol%溶解させたものを用い、亜鉛添加工程における液化ブタジエンの供給速度を0.5g/hrとし、Zn添加水の供給速度を99.5g/hrとし、最上部5aから水を僅かに含んだ含水Zn添加ブタジエンを0.5g/hrで抜き、管底部5bから水と余剰のZnを含んだ液を99.5g/hrで抜いたこと以外は、実施例1と同じ条件で亜鉛添加工程を行って、比較例3の亜鉛添加ブタジエンを得た。また、重合開始剤としてn−ブチルリチウムを0.05mmol/min添加したこと以外は実施例1と同じ条件で重合工程を行い、比較例3の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体を得た。比較例3の亜鉛添加ブタジエンを分析した結果、ブタジエンのZn添加量はそれぞれ、6,832wtppmであった。また比較例3の油展変性スチレン−ブタジエン共重合体の重量平均分子量Mwは276,000、数平均分子量Mnは53,000であり、Mw/Mnは5.21であった。
2… 圧縮機
3… 熱交換器
4… 亜鉛添加溶液タンク
5… 亜鉛添加装置
5a…最上部
5b…管底部
6… 一時保管タンク
7… 溶媒排出タンク
8… 溶媒分離塔
8a…上部
8b…塔頂部
8c…塔底部
9… 排溶媒タンク
10…亜鉛添加ブタジエンタンク
Claims (4)
- カルボン酸亜鉛化合物を、0<x≦0.1wt%(xは亜鉛の濃度である。)含有する、ブタジエン含有組成物。
- 前記カルボン酸亜鉛化合物が二酢酸亜鉛である、請求項1に記載のブタジエン含有組成物。
- カルボン酸亜鉛化合物を含む溶液と、液化ブタジエンとを接触させる接触工程と、
前記溶液と、前記カルボン酸亜鉛化合物を含有するブタジエン含有組成物とを分離する分離工程と、を有する、ブタジエン含有組成物の製造方法。 - 前記溶液が水溶液である、請求項3に記載のブタジエン含有組成物の製造方法。
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