JP6051897B2 - アクリル酸エステルの製造方法 - Google Patents
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Description
アクリル酸エステルの製造方法としては、酸触媒の存在下、アクリル酸とアルコールとをエステル化反応させて製造する方法が一般に広く用いられている。中で、アクリル酸と炭素数4以上のアルコールからアクリル酸エステルを製造する工程では、エステル化反応生成水を、反応と同時に留去する反応蒸留が一般的に用いられ、反応速度を高める為、酸触媒が併用されることが知られている。
固体触媒の場合、反応液と触媒の分離は概して容易であるが、その単価が高いので再利用が必須である。しかしながら、破損した触媒片や触媒表面がアクリル酸やアクリル酸エステルのポリマーにより覆われて触媒活性を失ったものを分離・更新する操作は、連続してアクリル酸エステルの製造を行う工程において、特に困難である。また、触媒表面という限られた箇所に高濃度の酸が存在する為に副反応生成物を生じ易いこと、固体触媒がイオン交換樹脂などの場合はその耐熱温度により反応条件が制約を受けること、等々の問題も有している。
該硫酸モノエステルも酸触媒として働く為、これを水抽出して再利用する方法が知られている。残存する硫酸も水により抽出されるが、水による硫酸モノエステルの抽出効率を高める為、反応溶液中のアルコール濃度を低くすることも示唆されている(特開2001−504507号公報)。
しかしながら、硫酸モノエステルを水抽出して再利用するこれらの場合でも、基本的には、硫酸触媒を使用するため、高耐食性の材質は不可欠である。
である。アリールスルホン酸は、固体酸ほどではないが硫酸に比べれば高価であり、経済的観点から再利用が望ましいが、硫酸モノエステルに比べて容易に水で抽出可能なことが示されている(特開平6−287162号公報)。
また、反応液中の酸触媒が回収・再利用される一方、酸触媒の回収された粗アクリル酸エステルは、残存する酸触媒を除去した後、蒸留により精製される。この酸触媒除去として抽出装置による水洗が用いられた場合、装置内の界面付近にエマルジョンが発生し、抽出操作に支障をきたすことがあり、その対処法として、界面近傍の水層と有機層を抜き出す方法が知られている(特開2003−226672号公報)。
かかるエマルジョン発生の対処療法として、一定期間毎に、抽出回収されたアリールスルホン酸触媒の水溶液を破棄し、新規に調製されたアリールスルホン酸触媒の水溶液のみをエステル化反応工程に供給することで、洗浄工程におけるエマルジョン発生の緩和に至ったが、酸触媒の消費量が大幅に増大し、経済的に不利なものとなった。
[1]アクリル酸と2−エチルヘキサノールをアリールスルホン酸触媒の存在下、反応蒸留により連続的にアクリル酸エステルを製造する方法において、
(1)アクリル酸と2−エチルヘキサノールとを反応させてアクリル酸エステルを得る反応工程、(2)反応工程から排出された反応混合物から該酸触媒を回収する酸触媒回収工程、(3)反応混合物から酸触媒を除去して得られたアクリル酸エステル粗生成物を水又はアルカリ水洗浄する洗浄工程、及び、(4)回収された酸触媒を反応工程に循環させる
酸触媒循環工程を含み、
酸触媒回収工程が、反応混合物と水とを接触させて該酸触媒を含有する酸水溶液を得る工程と、該酸水溶液と2−エチルヘキサノールとを接触させて該酸触媒を含有する2−エチルヘキサノール溶液を得る工程を含み、
該2−エチルヘキサノール溶液を反応工程に循環し、2−エチルヘキサノールと接触後の酸水溶液を系外に排出することを特徴とするアクリル酸エステルの製造方法。
本発明のアクリル酸エステルの製造方法は、アクリル酸と2−エチルヘキサノールをアリールスルホン酸触媒の存在下、反応蒸留により連続的にアクリル酸エステルを製造する方法において、
(1)アクリル酸と2−エチルヘキサノールとを反応させてアクリル酸エステルを得る反応工程、(2)反応工程から排出された反応混合物から該酸触媒を回収する酸触媒回収工程、(3)反応混合物から酸触媒を除去して得られた粗生成物を水洗浄する洗浄工程及び及び(4)回収された酸触媒を反応工程に循環させる酸触媒循環工程を含み、
酸触媒回収工程が、反応混合物と水とを接触させて該酸触媒を含有する酸水溶液を得る工程と、該酸水溶液と2−エチルヘキサノールを接触させて該酸触媒を含有する2−エチルヘキサノール溶液を得る工程を含み、
該2−エチルヘキサノール溶液を反応工程に循環し、2−エチルヘキサノールと接触後の酸水溶液を系外に排出することを特徴とする。
原料のアクリル酸と2−エチルヘキサノールをアルールスルホン酸触媒の存在下、反応蒸留により対応するエステルを製造する場合は、通常原料であるアクリル酸とアルコールとをモル比1.0:1.2〜1.0:0.8の組成で反応器に供給される。アルールスルホン酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸等が挙げられ、中でもp−トルエンスルホン酸が好ましい。アリールスルホン酸触媒は反応液に対し、通常、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜2重量%の割合で添加される。反応は、通常、70〜120℃の温度で、蒸留によりエステル化反応で生成する反応水を除去しながら反応を完結する(反応蒸留方式)。反応水の除去を容易にするために、通常は不活性な共沸溶媒が添加される。用いられる共沸溶媒としては、ヘキサンやヘプタン、ヘプテンなどの脂肪族炭化水素、又はトルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
ル化合物、フェノチアジン、分子状酸素、等が挙げられる。分子状酸素としては、乾燥空気ないし該空気と窒素の混合ガスが適当である。これら重合防止剤は本反応蒸留のみならず、後述する蒸留工程でも適宜用いられることが望ましい。
本発明においては、酸触媒回収工程において、反応工程から排出された反応混合物から酸触媒を回収するが、酸触媒回収工程が、反応混合物と水とを接触させて該酸触媒を含有する酸水溶液を得る工程と、該酸水溶液と2−エチルヘキサノールを接触させて該酸触媒を含有する2−エチルヘキサノール溶液を得る工程を含む。
反応工程から排出された反応混合物は、好適には0から40℃まで冷却された後、本発明では、該反応混合物と水とを接触させて酸触媒を含有する酸水溶液を得る。
水接触されたエステル化反応混合物は、後述の水洗浄工程で洗浄されて触媒などを完全に除去し蒸留などの方法で精製され、アクリル酸エステルを得る。
本発明では、該酸水溶液と2−エチルヘキサノールを接触させて該酸触媒を含有する2−エチルヘキサノール溶液を得る。
2−エチルヘキサノールにより酸触媒を抽出する方法としては、多段の抽出塔で行うのが好ましく、その場合の理論段としては、3段以上である。尚、用いるアルコール量が増える程、製造プロセス内を循環する液量が増え、プロセス全体の熱負荷や機器容量が大型化する為、経済性の観点より、該抽出塔の理論段数は5段以上が更に望ましい。一方、段数の上限の制限はないが、経済性の観点より、通常、12段以下である。
該酸水溶液を2−エチルヘキサノールと接触させる温度は、通常、0℃〜40℃程度である。
上記酸触媒回収工程においては、反応混合物と水を接触させて該酸触媒を含有する酸水溶液を得る一方、残部として大半の触媒が除去されたアクリル酸エステル溶液(アクリル酸エステル粗生成物)が得られる。該アクリル酸エステル粗生成物は、水又はアルカリ水洗浄により、残存する酸触媒が除去される。アルカリ水洗浄の場合のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。アクリル酸エステル粗生成物中に微量の酸触媒が存在する場合には、アルカリ水洗浄により、酸触媒が中和され、除去されることとなる。水又はアルカリ水洗浄は、複数の理論段を有する抽出塔により行われる。但し塔内にてエマルジョンが発生し易い為、高い抽出効率は有していても、Sheibel抽出塔のような攪拌翼を有するタイプは適さない。
尚、水洗浄工程で得られた生成物は、通常、更に蒸留精製され、目的とするアクリル酸エステルが得られる。
本発明では、上記酸触媒回収工程で得られた酸触媒を含有する2−エチルヘキサノール溶液を、エステル化反応工程に循環し、2−エチルヘキサノールと接触後の酸水溶液を系外に排出する。酸触媒を含有する2−エチルヘキサノール溶液は、全量をエステル化反応工程に循環しても、その一部を循環してもよい。回収された酸触媒の利用及び回収に使用した2−エチルヘキサノールを原料として利用する点から、全量をエステル化反応工程に循環するのが好ましい。
アリールスルホン酸触媒を回収した水溶液を反応工程に循環することと、該共重合体との関係は明らかではないが、該水溶液が循環する過程で水溶性のアクリル酸重合体が蓄積し、より高分子の共重合体形成に関わっているのではないかと推測される。
該水溶液の一部を蒸留し、残部を反応工程に循環してもエマルジョン形成は助長されな
い(後述の参考例6参照)ことから、高沸点化合物ないし不揮発性化合物(以下、高沸点
化合物等と略する)が関与していると考える。
以下、本発明のプロセスの1例を、原料としてアクリル酸及び2−エチルヘキサノール
を用いる場合を例に、図1により説明する。
原料のアクリル酸、2−エチルヘキサノール、アリールスルホン酸の水ないし2−エチルヘキサノール溶液が、各々(1)、(2)、(3)から、反応蒸留装置Iに供給される。エステル化反応により生じた反応生成水は、塔頂(5)より供給される共沸溶媒により、これら共沸溶媒と共に塔頂より留出する。留出した水は排水として系外に除かれ、共沸溶媒は塔頂(5)に循環される。
アクリル酸及びエステル化反応により生成するアクリル酸エステルは易重合性化合物であり、特に加熱条件下にて重合性が高まる為、上述のような重合防止剤を添加する事が望ましい。これら重合防止剤は本反応蒸留のみならず、後述する蒸留工程でも適宜用いられる事が望ましい。
上が好ましい。一方、理論段数の増加と共に抽出装置の設備費も増大するので、建設や保全を含めた経済性の点から、通常、10以下である。
完全に酸触媒の除去された粗アクリル酸エステル溶液(12)は軽沸分離塔IVに供給され、原料アルコールやアクリル酸、共沸溶媒や水などが塔頂より留去され(15)、該留出液は前工程に循環される。該蒸留塔の運転は、アクリル酸やエステルによる重合を防ぐ為、減圧して塔内温度を下げた状態で行われる。
第二酸触媒回収塔VIの塔頂から得られた酸触媒を含有する2−エチルヘキサノール溶液(4)は、反応工程に循環され、一方、塔底からは、抽残水が抜き出され、系外に排出される。
(エステル化反応)
アクリル酸200g、 2-エチルヘキサノール390g, アクリル酸-2-エチルヘキシル60g, p-
トルエンスルホン酸の10wt%水溶液80g、及びフェノチアジン0.3gをフラスコに入れ、5mm
のコイルパックを充填したカラムを上部につなぎ、15kPaに減圧し、カラム上部からフェ
ノチアジン20wtppmを含むトルエンの滴下を始め、次いでフラスコの油浴による加熱を開
始した。フラスコ内の温度が90℃を保つよう、トルエンの滴下量と油浴の加熱を調整した。共沸により留出した反応生成水とトルエンは冷却して凝縮させた後、抜き出した。フラスコ内の液温が90℃に到達してから3.5時間、反応蒸留を継続した。
3mmのコイルパックを充填したカラムを用い、カラム下部より全ての反応生成液670gを
、カラム上部より55gの水を供給し、p-トルエンスルホン酸の抽出を行った。抽出により7.4gのp-トルエンスルホン酸を含む水溶液62.4gが回収された。
(界面形成の度合い評価)
酸触媒回収後の反応液、及び、該反応液に対して1/5重量量の水を内径30mmのサンプル
瓶に入れて蓋をし、振幅数3回/秒、振幅10cmで一分間垂直に振った後に静置し、界面が
形成され、液滴の消失した界面がサンプル瓶内径の2/3以上に拡大するまでの時間を測定
したところ、1分50秒であった。
参考例1と同様にして、p-トルエンスルホン酸水溶液として、参考例1で抽出回収した水溶液の一部(p-トルエンスルホン酸を4.0g含有)に、新たに水とp-トルエンスルホン酸を加えて調製したp-トルエンスルホン酸の10wt%水溶液80gを用いた以外、参考例1と同様に反応及び酸触媒の水抽出を行った。
参考例1と同様、界面が形成され、液滴の消失した界面がサンプル瓶内径の2/3以上に
拡大するまでの時間を測定したところ、3分10秒であった。
参考例1で抽出回収した水溶液の一部の代わりに、参考例2で抽出回収した水溶液の一部(p-トルエンスルホン酸を4.0g含有)に、新たに水とp-トルエンスルホン酸を加えて調製したp-トルエンスルホン酸の10wt%水溶液80gを用いた以外、参考例1と同様に反応及び酸触媒の水抽出を行った。
参考例1と同様、界面が形成され、液滴の消失した界面がサンプル瓶内径の2/3以上に
拡大するまでの時間を測定したところ、6分5秒であった。
参考例1で抽出回収した水溶液の一部の代わりに、参考例3で抽出回収した水溶液の一部(p-トルエンスルホン酸を4.0g含有)に、新たに水とp-トルエンスルホン酸を加えて調製したp-トルエンスルホン酸の10wt%水溶液80gを用いた以外、参考例1と同様に反応及び酸触媒の水抽出を行った。
参考例1と同様、界面が形成され、液滴の消失した界面がサンプル瓶内径の2/3以上に
拡大するまでの時間を測定したところ、8分10秒であった。
参考例1で抽出回収した水溶液の一部の代わりに、参考例4で抽出回収した水溶液の一部(p-トルエンスルホン酸を3.2g含有)に、新たに水とp-トルエンスルホン酸を加え
て調製したp-トルエンスルホン酸の10wt%水溶液80gを用いた以外、参考例1と同様に反応及び酸触媒の水抽出を行った。
参考例1と同様、界面が形成され、液滴の消失した界面がサンプル瓶内径の2/3以上に
拡大するまでの時間を測定したところ、35分であった。
(アルコールによる抽出)
参考例5で得られたp-トルエンスルホン酸水溶液33g(p-トルエンスルホン酸を4.0g含
有)に対して、2−エチルヘキサノール200gを用いて3mmのコイルパックを充填したカラ
ムを用いて抽出を行い、p-トルエンスルホン酸3.4gを含む2−エチルヘキサノール溶液212gを得た。
(エステル化反応及び酸触媒の水抽出)
参考例1の反応原料に代えて、上記の2−エチルヘキサノール溶液212g(p-トルエンスルホン酸3.4gを含有)と新規の2−エチルヘキサノール190g、p-トルエンスルホン酸5.6g, 水64g、アクリル酸200g、アクリル酸−2-エチルヘキシル60g、フェノチアジン0.3gをフラスコに入れた以外参考例1と同様に反応及び酸触媒の水抽出を行った。
(界面形成の度合い評価)
参考例1と同様に、界面が形成され、液滴の消失した界面がサンプル瓶内径の2/3以上
に拡大するまでの時間を測定したところ、2分05秒であった。
参考例4で得られたp-トルエンスルホン酸水溶液25gを蒸留し、留出分20gに水及びp-トルエンスルホン酸を加えて、10wt%p-トルエンスルホン酸水溶液80gを調製し、これを用いて参考例1と同様に反応及び酸触媒の水抽出を行った。
(界面形成の度合い評価)
参考例1と同様に、界面が形成され、液滴の消失した界面がサンプル瓶内径の2/3以上
に拡大するまでの時間を測定したところ、1分30秒であった。
II 第一酸触媒回収塔
III 洗浄塔
IV 軽沸分離塔
V 精製塔
VI 第二酸触媒回収塔
Claims (3)
- アクリル酸と2−エチルヘキサノールをアリールスルホン酸触媒の存在下、反応蒸留により連続的にアクリル酸エステルを製造する方法において、
(1)アクリル酸と2−エチルヘキサノールとを反応させてアクリル酸エステルを得る反応工程、(2)反応工程から排出された反応混合物から該酸触媒を回収する酸触媒回収工程、(3)反応混合物から酸触媒を除去して得られたアクリル酸エステル粗生成物を水又はアルカリ水洗浄する洗浄工程、及び、(4)回収された酸触媒を反応工程に循環させる酸触媒循環工程を含み、
酸触媒回収工程が、反応混合物と水とを接触させて該酸触媒を含有する酸水溶液を得る工程と、該酸水溶液と2−エチルヘキサノールとを接触させて該酸触媒を含有する2−エチルヘキサノール溶液を得る工程を含み、
該2−エチルヘキサノール溶液を反応工程に循環し、2−エチルヘキサノールと接触後の酸水溶液を系外に排出することを特徴とするアクリル酸エステルの製造方法。 - 反応混合物に接触させる水の量が、反応混合物に対して1/20重量倍以上、1/10重量倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のアクリル酸エステルの製造方法。
- 酸水溶液に接触させる2−エチルヘキサノールの量が、酸水溶液に対して5重量倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクリル酸エステルの製造方法。
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