JP6048810B2 - エステルの製造方法 - Google Patents

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本発明は、エステルの製造方法に関する。本発明によれば、イソ酪酸を原料として使用する、冷凍機油などに好適なエステルを、高い効率で製造することができる。
オゾン層破壊の問題から、それまで冷蔵庫やエアコンなどの空調機器に用いられてきた塩素を含むフロン冷媒(塩素含有フロン冷媒)から、塩素を含まないフロン冷媒(代替フロン冷媒)への転換が図られてきた。冷媒の変更に伴い、これまで塩素含有フロン冷媒用の冷凍機油として使用されてきた鉱物油やアルキルベンゼンなどの合成炭化水素油を用いた潤滑油では、代替フロン冷媒に対する相溶性が低いことから、冷凍機油としての性能を十分に発揮することが困難となった。
このため、上記の課題を解決すべく、代替フロン冷媒と良好な相溶性を示す化合物の検討が行われた。その結果、ポリオールエステル化合物やポリアルキレングリコール化合物などが冷凍機油として見出され、従来の鉱物油や合成炭化水素油を用いた冷凍機油に代わって使用されるようになった。その中でも、ポリオールエステルは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびジペンタエリスリトール等のネオペンチルポリオールと脂肪族カルボン酸とのエステルであり、代替フロン冷媒との相溶性に優れるだけでなく、冷凍機油としての使用に適した電気絶縁性や熱安定性を有しているため、広く使用されるようになった。
近年、代替フロン冷媒はオゾン破壊係数が低い反面、地球温暖化係数が高いことから、その使用量を削減する検討が進められている。特に、エアコン用の冷媒として主に使用されているR−410A冷媒は、地球温暖化係数が高いことから、その代替となる冷媒について精力的に検討されている。
R−410A冷媒の代替冷媒として種々の候補があるが、中でもR−32冷媒が有力とされており、R−32冷媒と相溶性のあるエステルの開発が進められている。特許文献1、特許文献2では、このようなエステルとして、炭素数4の脂肪族モノカルボン酸である酪酸やイソ酪酸と炭素数7〜9の脂肪酸を使用したエステルが提案されている。
特許文献2では、ペンタエリスリトールとイソ酪酸およびイソノナン酸のエステルの製造方法が開示されており、触媒を用いたエステル化方法や、溶剤を使用したエステル化方法が記載されている。
WO2012/026214号公報 WO2012/026303号公報
しかしながら、イソ酪酸は水との親和性が高いことから、エステル化を行う際に長い時間を必要とするという課題がある。
この問題点を解決するために、溶剤を使用してエステル化反応を行う方法があるが、この方法では、溶剤の還流温度以上に反応温度を上げることができず、反応効率が低いため、反応に長時間を必要とし、かつ反応後に溶剤を除去する必要がある。また、特に冷凍機用潤滑油用途においては、エステル中に残存する溶媒が、使用する冷凍機器に不具合を生じる原因となる可能性がある。
このため、本発明者は、図1に示すような製造装置を使用して、酪酸やイソ酪酸を含む特定のエステルを製造することを検討した。
すなわち、反応器1、冷却器2、油水分離器3を準備し、反応器1に、炭素数5〜10のネオペンチルポリオール、イソ酪酸および炭素数7〜9の飽和脂肪酸を仕込み、加熱してエステル化反応させた。このエステル化反応の進行に伴い生成する水と未反応の脂肪酸を反応器1から矢印Aのように還流させて冷却器2に送る。水と脂肪酸とを冷却器2で凝縮させ、液体化して油水分離器3に送ることで、生成する水を除去しながらエステル化反応を進める。油水分離器3中には、冷却器2によって凝縮した脂肪酸と水が分離して溜まるので、下層の水層を矢印Dのように抜き取り、上層の油層を矢印Cのように反応器1に戻すことで、効率よくエステルが生成するはずである。
しかし、実際に試験してみると、エステルの製造に長い時間がかかり、製造効率が必ずしも上がらないことが判明してきた。また、生成したエステルの色相や水酸基価などの物性が低下する現象が見られた。こうした問題点はこれまで認識されてこなかった。
本発明の課題は、炭素数5〜10のネオペンチルポリオールと、イソ酪酸および炭素数7〜9の飽和脂肪酸とのエステルを製造するのに際して、エステル化反応をより短時間で進行させ、生産効率を向上させることである。
本発明は、炭素数5から10のネオペンチルポリオールと、イソ酪酸および炭素数7〜9の飽和脂肪酸とのエステルを製造する方法であって、
反応器、冷却器および油水分離器を使用し、前記ネオペンチルポリオールイソ酪酸および炭素数7〜9の飽和脂肪酸を反応器に仕込んでエステル化反応させることでエステルを生成させ、反応中に発生した気体を冷却器で凝縮して液体とし、この液体を油水分離器において油層と水層とに分離し、油層を反応器に戻しながらエステル化反応を継続し、更に油水分離器に炭素数7〜9の飽和脂肪酸を供給することを含む。
本発明者は、前記のような反応時間の長期化の原因を検討する過程で、イソ酪酸が水との親和性が高いことに着目した。イソ酪酸と水との親和性が高いということから、油水分離器3から反応器1に戻る脂肪酸と共に、エステル化反応によって生成した水も再び反応器に戻るものと考えられる。この結果、反応器内の水分量が増加すると、エステル化反応の効率が低下し、エステルの製造には長い反応時間を要したものと考えた。
これに加え、生成する水に脂肪酸が溶解して水と共に油水分離器から反応系外に除去されてしまうため、所望の物性を有するエステルを得られないという問題もある。
本発明者は、こうした想定に基づき、本来ならば反応器に加えるべき炭素数7〜9の飽和脂肪酸の一部を油水分離器3に導入することにより、上記のような課題を克服し、イソ酪酸を使用するエステル化反応が効率よく進行することを見出した。
本発明で用いるエステル化反応の設備を模式的に示す図である。 比較例1と実施例1における、時間−温度曲線を示す。
(エステル製造設備)
本願発明で使用するエステル化製造設備は、図1の模式図に示すように、反応器1、冷却器2、油水分離器3を備える。
反応器1は、内容液を加熱し、攪拌する装置を備えるものであり、内容液に窒素などの不活性ガスを供給する配管を備えるものである。
冷却器2は、反応器1から矢印Aのように揮発してくる水や脂肪酸などの揮発成分を収容し、冷却する機構を備えるものである。こうした冷却器構それ自体は公知である。
また、油水分離器3は、冷却器2によって冷却されて凝集した液体を、矢印Bのように送り、一時的に保管する容器であり、下層に水層、上層に油層が溜まる。油層の主成分は、未反応の脂肪酸や揮発性の油分である。油水分離器の上層に溜まった脂肪酸や揮発性の油分は、矢印Cのように反応器1へ戻す。また、油水分離器の下層に溜まった水層を、矢印Dのように系外に排出する。
ここで、イソ酪酸の水との親和性が高いことによって、油水分離器3内で油層中に水分が混じり、再び反応器1内に戻る傾向のあることがわかった。この結果、エステル化反応の効率が低下して反応時間が長くなった。さらには、イソ酪酸が水層に混じって系外に排出される結果、生成するエステルの脂肪酸組成が所望の組成から外れやすくなることがわかった。
本発明では、油水分離器3に対して、冷却器2を介することなく、炭素数7〜9の飽和脂肪酸を直接供給することによって、反応器内に戻る水量を減らし、炭素数7〜9の飽和脂肪酸の割合を増やすことで、必要な反応時間が著しく短縮されることを見いだした。
イソ酪酸
本発明ではイソ酪酸を用いる
(炭素数7〜9の飽和脂肪酸)
炭素数7〜9の飽和脂肪酸の炭素数は、8〜9が更に好ましい。また、例としては、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2−メチル−2−エチルブタン酸、2,2,3−トリメチルブタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、イソヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、イソオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、ネオノナン酸が挙げられる。これらの飽和脂肪酸は単独で用いても良く、2種以上を混合して使用することができる。分岐脂肪酸を用いるほうが好ましく、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸を用いるのがより好ましい。
炭素数5から10のネオペンチルポリオール
本発明では、炭素数5から10のネオペンチルポリオールを用いる。ネオペンチルポリオールとは、水酸基のβ位の炭素に水素原子を持たないネオペンチル骨格を有するアルコールであり、具体的にはネオペンチルグリコール、2−n―ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールなどが挙げられる。前記ネオペンチルポリオールは、それぞれ1種、または2種以上組み合わせて使用することができる。
(エステル化反応)
本発明におけるエステル化反応は、前記ネオペンチルポリオールと脂肪酸とを、アルコールの水酸基に対し、カルボン酸基が1.0から1.5モル当量になるように仕込み、反応温度200℃以上で行うことが好ましい。この脂肪酸のモル当量は、イソ酪酸のモル当量と炭素数7〜9の飽和脂肪酸のモル当量との合計値である。
イソ酪酸と炭素数7〜9の飽和脂肪酸のモル比は、80:20〜10:90が好ましく、60:40〜30:70が更に好ましい。
このエステル化反応は、エステルの酸化劣化を防ぐために窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、エステル化反応によって生成した水を効率よく反応器から除去するために、減圧条件で反応させることができる。減圧度に特に制限はないが、反応を効率よく進めるためには100Torr以下が好ましい。
また、反応を効率良く十分に進めるために、ブレンステッド酸触媒やルイス酸触媒などのエステル化触媒を使用してもよい。こうした触媒としては、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸などのブレンステッド酸触媒や、チタン、スズ、亜鉛、ゲルマニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどのルイス酸触媒を例示できる。
(炭素数7〜9の飽和脂肪酸の油水分離器への供給)
炭素数7〜9の飽和脂肪酸の油水分離器への導入方法としては、以下の方法がある。
(1) エステル化反応を開始する前に、油水分離器に炭素数7〜9の飽和脂肪酸を入れておく。
(1)の場合には、油水分離器に予め入れる炭素数7〜9の飽和脂肪酸の量は、油水分離器から反応器へ脂肪酸が戻るときに通過する配管の高さに油層が位置するようにすることが好ましい。
炭素数7〜9の飽和脂肪酸の油水分離器への仕込み量が多いほど、油水分離が促進されるので、好ましい。この観点からは、炭素数7〜9の飽和脂肪酸の油水分離器への仕込み量は、反応器に仕込む炭素数7〜9の飽和脂肪酸の1質量%以上が好ましく、5質量%以上が更に好ましい。
(2) 留出する飽和脂肪酸と水の量に合わせて、断続的に、油水分離器から炭素数7〜9の飽和脂肪酸を加えることができる。
本方法では、油水分離器に炭素数7〜9の飽和脂肪酸を直接加えることができる。あるいは、冷却器や、冷却器と油水分離器を繋ぐライン(図1のB)を介して炭素数7〜9の飽和脂肪酸を油水分離器中へと加えても良い。炭素数7〜9の飽和脂肪酸の添加量は、設備サイズにより異なるが、導入する量が多いほど油水分離が良い。具体的には、冷却器から矢印Bのように流出する水100質量部に対し、10質量部以上の炭素数7〜9の飽和脂肪酸を加えることが好ましい。また、反応の初期段階において、反応器内に炭素数7〜9の飽和脂肪酸を入れておく必要があるという観点から、冷却器から矢印Bのように流出する水100質量部に対し、50質量部以下の炭素数7〜9の飽和脂肪酸を加えることが好ましい。
この場合、炭素数7〜9の飽和脂肪酸の導入の期間については特に規定はないが、反応器内の温度を上げて行き、脂肪酸と水の還流が始まったところから導入を開始し、所定のエステル化温度に達するまでの間に加えるのが好ましい。
(エステル化反応後の処理)
反応後、過剰に存在する脂肪酸を減圧下で留去する工程を行うことができる。温度や減圧度は通常、150℃以上の温度において、100Torr以下の減圧度で実施する。また、エステルの酸化劣化をできるだけ防ぐため、窒素等の不活性ガスの気流下で行うのが好ましい。
また、過剰に残存する脂肪酸を、アルカリにより中和し、次いで水洗を行うことにより除去することができる。更に、活性白土、酸性白土および合成系の吸着剤を用いた吸着処理やスチーミングなどの操作を単独または組み合わせて行うことができる。
(エステルの使用)
本発明のエステルは、冷凍機油に特に適したものである。このエステルに対し、公知の添加剤、例えば、フェノール系の酸化防止剤、ベンゾトリアゾ−ル、チアジアゾールまたはジチオカーバメートなどの金属不活性化剤、エポキシ化合物またはカルボジイミドなどの酸補足剤、リン系の極圧剤などの添加剤を目的に応じて適宜配合することができる。
また、本発明により得られたエステルは、R−32冷媒を使用する冷凍機油として使用できるが、HFC−134a、HFC−125、HFC−32、HFO−1234yf等の非塩素系フロン冷媒や、R−407C、R−410A等の混合冷媒でも使用できる。また、炭素数1から5の炭化水素冷媒や二酸化炭素をはじめとする自然冷媒についても適用できる。
本実施例で行った各種測定は、以下の方法に従って実施した。

色相: JOCS 2.2.1.4−1996に準拠して測定した。
酸価: JIS K−0070に準拠して測定した。
全酸価: JIS C−2101に準拠して測定した。
動粘度: JIS K−2283に準拠して測定した。
水酸基価: JIS K−0070に準拠して測定した。
本発明で実施した合成例を以下に説明する。本発明の実施例と比較例は、以下の3つの合成例のいずれかに従って行った。
(合成例1)
温度計、窒素導入管、攪拌機およびジムロート冷却管と容量30mLの油水分離管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、所定量のアルコールを仕込み、所定量のイソ酪酸と炭素数7〜9の飽和脂肪酸を反応器に仕込んだ。必要に応じて触媒を仕込んだ後、窒素気流下、規定の温度で反応するため反応器をマントルヒーターで加熱した。規定の温度に達した後、エステルの水酸基が3以下となるまで反応した。
その後、反応器内を50Torrまで減圧して酸価が5mgKOH/g以下となるまで過剰の脂肪酸を留去した。85℃まで反応器を冷却した後、酸価から算出される水酸化カリウム量の1.5当量をイオン交換水で希釈して10%の水溶液を作成し、それを反応液に加えて1時間撹拌した。撹拌を止めた後、30分静置して下層に分離した水層を除去した。次に、反応液に対しての20質量%のイオン交換水を加えて85℃で10分撹拌して、15分静置した後、分離した水層を除去する操作を5回繰り返した。その後、100℃、30Torrで1時間撹拌することで脱水した。最後に、反応液に対して2質量%の活性白土を加え、80℃、30Torrの条件で1時間撹拌し、ろ過して吸着剤を除去することで所望のエステルを得た。
(合成例2)
温度計、窒素導入管、攪拌機およびジムロート冷却管と容量30mLの油水分離管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、所定量のアルコールを仕込み、所定量のイソ酪酸と炭素数7〜9の飽和脂肪酸を反応器に仕込んだ。その後、所定量の炭素数7〜9の飽和脂肪酸を油水分離器に仕込み、必要に応じて触媒を仕込んでから、窒素気流下、規定の温度で反応するため反応器をマントルヒーターで加熱した。規定の温度に達した後、エステルの水酸基価が3以下となるまで反応した。
その後の精製は合成例1に従って行った。
(合成例3)
温度計、窒素導入管、攪拌機およびジムロート冷却管と容量30mLの油水分離管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、所定量のアルコールを仕込み、所定量のイソ酪酸と炭素数7〜9の飽和脂肪酸を反応器に仕込んだ。必要に応じて触媒を仕込んだ後、窒素気流下、規定の温度で反応するため反応器をマントルヒーターで加熱した。昇温の途中、水と脂肪酸の留出が始まったところから、10g/hrの流速で規定量の炭素数7〜9の飽和脂肪酸を油水分離器に導入した。規定の温度に達した後、エステルの水酸基が3以下となるまで反応した。
その後の精製は合成例1と同じ方法で行った。
以下に、それぞれの実施例と比較例で行った実験結果を説明する。
(比較例1)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで165℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は15時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.9mgKOH/gであった。
(実施例1−1)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器にイソノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から3時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は12時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は50(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.5mgKOH/gであった。
(実施例1−2)
合成例3に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、イソノナン酸を規定の流量で油水分離器に導入した。反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から2.5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は11.5時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は40(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.6mgKOH/gであった。
(比較例2)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、2−エチルヘキサン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで164℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から6時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は18時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は70(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.7mgKOH/gであった。
(実施例2)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、2−エチルヘキサン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器に2−エチルヘキサン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から4時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は14時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.0mgKOH/gであった。
(比較例3)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、n−ノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで165℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は14時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.0mgKOH/gであった。
(実施例3)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、n−ノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器にn−ノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から3.5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は11.5時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は50(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.8mgKOH/gであった。
(比較例4)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで165℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から7時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は16時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は70(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.0mgKOH/gであった。
(実施例4−1)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器にイソノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から4時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は12時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は50(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.8mgKOH/gであった。
(実施例4−2)
合成例2に対し表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、触媒としてテトライソプロポキシチタネートを仕込んだ後に、油水分離器にイソノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から4.5時間後に反応器の温度が220℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は12.5時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は1.9mgKOH/gであった。
(比較例5)
合成例1に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、脂肪酸が反応器に戻り始めたところで165℃まで反応器の温度が低下した。その後、約1時間165℃から170℃の範囲で推移した後、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から8時間後に反応器の温度が240℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は19時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は80(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.7mgKOH/gであった。
(実施例5)
合成例2に対し、表1に示すアルコール、イソ酪酸、イソノナン酸を反応器に仕込み、油水分離器にイソノナン酸を仕込んで反応を開始した。反応器の温度が170℃に達したところから水と脂肪酸の留出が始まり、反応の進行に伴い徐々に反応器の温度が上昇し、反応開始から4.5時間後に反応器の温度が240℃に達した。そのままの温度で反応を行い、トータルの反応時間は15.5時間であった。
その後、精製を行い、得られたエステルの色相は60(APHA)であった。全酸価は0.01mgKOH/g以下、水酸基価は2.5mgKOH/gであった。
Figure 0006048810

Figure 0006048810

表2には、各実験例における反応開始から規定の反応温度に達するまでの時間と、反応開始から反応終了までにかかった時間をまとめた。また、図2には比較例1と実施例1における、時間−温度曲線を示した。
実施例においては、対応する比較例に比べて、必要な反応時間が短くなり、更に色相、水酸基価も改善されていた。
このように、本法によれば、エステル化反応の反応時に速やかに所望の反応温度に到達し、反応時間を短縮することで効率よくエステルを製造できる。

Claims (3)

  1. 炭素数5から10のネオペンチルポリオールと、イソ酪酸および炭素数7〜9の飽和脂肪酸とのエステルを製造する方法であって、
    反応器、冷却器および油水分離器を使用し、前記ネオペンチルポリオール、前記イソ酪酸および前記炭素数7〜9の飽和脂肪酸を前記反応器に仕込んでエステル化反応させることで前記エステルを生成させ、前記反応中に発生した気体を前記冷却器で凝縮して液体とし、この液体を前記油水分離器において油層と水層とに分離し、前記油層を前記反応器に戻しながら前記エステル化反応を継続し、更に前記油水分離器に前記炭素数7〜9の飽和脂肪酸を供給することを含む、エステルの製造方法。
  2. 前記エステル化反応を行う前に、前記油水分離器に前記炭素数7〜9の飽和脂肪酸を供給することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 少なくとも還流開始後に前記油水分離器に前記炭素数7〜9の飽和脂肪酸を供給することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
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