以下、記録装置の実施形態について、図を参照して説明する。記録装置は、例えば媒体の一例である用紙に液体の一例であるインクを噴射することによって記録(印刷)を行うプリンターである。
図1に示すように、本実施形態の記録装置は、筐体部12の長手方向となる走査方向X(+X,−X)に沿って走査するキャリッジ15と、走査方向Xに延設されてキャリッジ15の走査を案内するガイドフレーム13,14とを備えている。
本実施形態では、走査方向Xと直交する筐体部12の短手方向を前後方向という。そして、ガイドフレーム13はキャリッジ15の前端側を支持している一方で、ガイドフレーム14はキャリッジ15の後端側を支持している。
キャリッジ15は、走査を行わないときには筐体部12内において長手方向の一端側に設定されたホーム位置(図1に示す位置)に配置される。なお、本実施形態においては、キャリッジ15の走査領域において、ホーム位置側となる走査方向Xの一端側を0桁側といい、走査方向Xの他端側を80桁側ということがある。
キャリッジ15は、ホーム位置から第1走査方向+Xに向かう往路走査と、80桁側から第1走査方向+Xの逆方向となる第2走査方向−Xに向かう復路走査とを交互に行うことで往復走査する。
ガイドフレーム14は、水平方向に延びてキャリッジ15を支持するガイドレール部14aと、ガイドレール部14aとの間に傾斜部14bを挟んで配置される段差部14cと、段差部14cの後端側から立設される後壁部14dと、ガイドレール部14aの前端側から立設される前壁部14eとを有している。前壁部14eの鉛直方向Gにおける上部には、後方に向けて屈曲した屈曲部14fが設けられている。
ガイドフレーム14において80桁側の端部付近には、ガイドレール部14aの途中から傾斜部14b及び段差部14cまで延びる切り欠き孔29が形成されている。走査方向Xにおいて切り欠き孔29とホーム位置との間には記録が行われる記録領域が設定される。記録領域には、鉛直方向Gにおいてキャリッジ15よりも下方となる位置に走査方向Xが長手方向となる板状の支持部材19が配置されている。
図2に示すように、記録装置は、キャリッジ15の下部に保持された記録ヘッド16と、媒体17の搬送機構18と、媒体17と記録ヘッド16との離間距離を調整するための調整機構20とを筐体部12内に備えている。
搬送機構18は、駆動源21と、駆動源21の駆動力を伝達するための動力伝達機構22と、動力伝達機構22を介して伝達される駆動力によって回転する搬送ローラー23とを備えている。駆動源21は、例えばモーターであり、動力伝達機構22は例えば歯車列である。
媒体17は、筐体部12の後側(図1では右側)の側壁12aに形成された導入口24を通じて筐体部12内に導入される。筐体部12内に導入された媒体17は、搬送機構18によって搬送方向Y(図1では左方向となる前方向)に搬送される。
キャリッジ15には、記録材であるインクを収容した液体収容体25が保持される。記録ヘッド16は、搬送機構18によって支持部材19上に搬送された媒体17に対して、液体収容体25に収容されたインクを噴射することで記録を行う。そして、記録が行われた媒体17は、筐体部12の前側(図1では左側)の側壁12bに形成された排出口27を通じて筐体部12外に排出される。
ところで、媒体17の厚さが変化すると、媒体17と記録ヘッド16との離間距離が変化して、噴射されたインクの着弾位置がずれて印刷品質が低下する虞がある。そのため、厚さの異なる媒体17が用いられる場合などには、調整機構20が媒体17と記録ヘッド16との離間距離を調整するために、キャリッジ15の高さ(鉛直方向Gにおける位置)を変化させる。
本実施形態では、記録ヘッド16と媒体17との離間距離をペーパーギャップPPGといい、記録ヘッド16と支持部材19との離間距離をプラテンギャップPLGという。なお、プラテンギャップPLGから媒体17の厚さを減算した値がペーパーギャップPPGに相当する。そして、調整機構20は、ペーパーギャップPPGを一定の値にするために、記録に用いられる媒体17の厚さに応じてプラテンギャップPLGを変化させる。
次に、調整機構20の構成を説明する。
調整機構20は、ガイドフレーム14に支持された第1機構31と、ガイドフレーム13に支持された第2機構32と、第1機構31と第2機構32とを連結する連結機構33と、ガイドフレーム14の下方に配置された切替機構34とを備えている。
図2及び図3に示すように、切替機構34は、対をなす支持フレーム35に回動自在に支持された回動軸36と、基端側が回動軸36に連結された切替レバー37と、駆動源21の駆動力を回動軸36に伝達する歯車機構38と、支持フレーム35と切替レバー37との間に配置された一対の付勢部材39とを備えている。
付勢部材39は、例えば付勢方向に沿って弾性変形可能なコイル状のばねである。図2においては、付勢部材39を図示するために、対をなす支持フレーム35のうち奥側の支持フレーム35のみを図示して、手前側の支持フレーム35の図示を省略している。
切替レバー37は、回動軸36との相対回転が規制されている一方、回動軸36に沿って走査方向Xに移動可能な構成になっている。そして、切替レバー37に走査方向Xに沿う外力が加えられた場合には、切替レバー37の走査方向Xへの移動に伴ってその両側に配置された付勢部材39が弾性変形する。また、切替レバー37への外力の付与が終了すると、切替レバー37は復元変形する付勢部材39の付勢力によって元の位置に戻る。
切替レバー37の基端側から延びるアーム部37aの先端には、移動体70が設けられている。移動体70は切替レバー37と一体形成してもよいし、別体として構成した移動体70を切替レバー37に固定してもよい。そして、駆動源21の駆動力が歯車機構38を介して回動軸36が伝達されて、その駆動力によって回動軸36が回動すると、移動体70が図2に実線で示す退避位置と、図2に二点鎖線で示す係合位置との間で進退移動する。
切替レバー37は、走査方向Xにおいて、ガイドフレーム14に形成された切り欠き孔29と重なる位置に配置されている。そして、移動体70は、切り欠き孔29を通じて、退避位置から係合位置に移動する。
例えば、記録装置が媒体17に対して記録を行っているときには、移動体70は退避位置に配置される。また、調整機構20がプラテンギャップPLGを調整するときには、回動軸36及び切替レバー37が図2における反時計方向に回転して、移動体70が退避位置から係合位置に移動する。さらに、調整機構20によるプラテンギャップPLGの調整が終了したときには、回動軸36及び切替レバー37が図2における時計方向に回転して、移動体70が係合位置から退避位置に移動する。
第1機構31は、ガイドフレーム14に摺接する摺接部41,42を有する摺接部材40と、走査方向Xと交差する方向(図2では右方となる後方)に突設された係合部51を有する係合部材50と、ガイドフレーム14と摺接部材40との間に配置される間隔制御部材60とを備えている。摺接部材40は、図示しない2つの付勢機構によって前方と上方とに付勢されることによって、キャリッジ15に連結されている。
キャリッジ15は、屈曲部14fより上方に配置された支承部28を有している。また、間隔制御部材60は、支承部28と摺接部材40とに挟持されるカム部61を有している。このカム部61は、走査方向Xに沿って階段状に厚さが変化している。そのため、キャリッジ15及び摺接部材40が間隔制御部材60に対して相対移動して、支承部28を支持するカム部61の厚さが変化すると、キャリッジ15の後端側の高さが変化する。
また、このように第1機構31がキャリッジ15の後端側の高さを変化させると、連結機構33が第1機構31の動きを第2機構32に伝達することによって、第2機構32が第1機構31の動きに連動してキャリッジ15の前端側の高さを変化させる。これにより、キャリッジ15及び記録ヘッド16の鉛直方向Gにおける位置が変化して、プラテンギャップPLGが変化する。
次に、第1機構31の構成を詳述する。
摺接部材40において、摺接部41はガイドレール部14aに当接している一方、摺接部42は前壁部14eに当接している。摺接部材40は、ガイドレール部14a及び屈曲部14fによって鉛直方向Gに沿う移動が規制されている。そして、キャリッジ15が走査方向Xに走査すると、摺接部材40は摺接部41,42がガイドフレーム14に摺接しながら、キャリッジ15と一緒に走査方向Xに移動する。
摺接部材40は、係合部材50側となる後方に向けて突出するガイドピン43と、上方に向けて突出する支持突部44と、間隔制御部材60と対向する後面にカム部61と対応する階段状に形成された案内溝部45とを有している。
係合部材50は、摺接部材40のガイドピン43が遊挿されるガイド溝52と、ガイド溝52よりも上方に配置された長孔53とを有している。ガイド溝52は走査方向Xに延設されている。係合部材50は、ガイド溝52に遊挿されるガイドピン43によって鉛直方向Gに沿う移動が規制されている一方で、走査方向Xに沿う移動が許容されている。また、長孔53は走査方向X及び鉛直方向Gの両方に対して傾斜する方向に延設されている。
間隔制御部材60は、摺接部材40側となる前方に突設されて案内溝部45に遊挿される案内ピン62と、係合部材50側となる後方に突設されて長孔53に遊挿される係合ピン63と、キャリッジ15の支承部28を支持する支持面64とを有している。間隔制御部材60は、走査方向Xに移動しないときには、案内溝部45によって鉛直方向Gにおける変位が規制される。
間隔制御部材60のカム部61は、キャリッジ15の自重によって、支承部28と支持突部44との間に挟まれている。そして、カム部61と、支承部28及び支持突部44との間に生じる摩擦力の作用によって、間隔制御部材60はキャリッジ15の走査に伴って走査方向Xに移動することができる。また、間隔制御部材60が走査方向Xに移動すると、係合ピン63が長孔53に係合することによって、係合部材50にも走査方向Xに向かう推進力が付与される。
キャリッジ15の走査に伴って係合部材50が移動するときには、係合部材50に設けられた係合部51も走査方向Xに移動する。そして、移動体70の退避位置は係合部51が走査方向Xに移動するときの可動領域の外側に設定される一方で、移動体70の係合位置は係合部51の可動領域内に設定される。
そのため、移動体70が退避位置にあるときには、係合部材50はキャリッジ15の走査に伴って走査方向Xに移動する一方で、移動体70が係合位置にあるときには、移動体70が係合部51に係合することで、係合部材50の走査方向Xに沿う移動が規制される。
係合部51が係合位置に配置された移動体70と係合した状態でキャリッジ15が走査方向Xに走査すると、係合部材50とキャリッジ15とが相対移動する。すなわち、係合部材50はキャリッジ15に対して相対移動可能な状態でキャリッジ15に保持されている。
図3に示すように、切替レバー37の先端に設けられた移動体70は、第1走査方向+Xに向けて突設された突部71と、第2走査方向−Xに向けて突設された突部72とを有している。突部71は突部72よりも前側に配置されている。また、移動体70は平面視において点対称な形状を有している。
記録装置は、移動体70の移動範囲を規制する規制部81,82と、走査方向Xに延設されて移動体70の係合位置における位置決めを行う位置決め部83とを備えている。規制部81,82及び位置決め部83は、例えばガイドフレーム14に形成された切り欠き孔29の端部からなる。
本実施形態では、キャリッジ15が往路走査するときに移動体70の第1走査方向+Xへの移動範囲を規制する規制部81を第1規制部81とする一方、キャリッジ15が復路走査するときに移動体70の第2走査方向−Xへの移動範囲を規制する規制部82を第2規制部82とする。
第1規制部81は、係合位置において係合部51と係合した移動体70が係合部51を介してキャリッジ15の往路走査に伴う押圧力を受けた場合に、移動体70の第1走査方向+Xに向かう移動を規制するとともに、移動体70の退避位置に向かう移動を規制する。
一方、第2規制部82は、係合位置において係合部51と係合した移動体70が係合部51を介してキャリッジ15の復路走査に伴う押圧力を受けた場合に、移動体70の第2走査方向−Xに向かう移動を規制するとともに、移動体70の退避位置に向かう移動を規制する。
第2規制部82は、第1規制部81と対向する位置に配置される。そして、第1規制部81と第2規制部82との間には、退避位置から係合位置に向かう移動体70の移動を許容する隙間が設けられる。
本実施形態では、移動体70の移動方向D(+D,−D)において、退避位置から係合位置に向かう移動方向を進入方向+Dとし、係合位置から退避位置に向かう移動方向を退避方向−Dとする。移動方向D(進入方向+D及び退避方向−D)は、走査方向Xと直交する方向であるのが好ましいが、走査方向Xに対して傾斜するように交差する方向であってもよい。
第1規制部81は、係合部51の可動領域内において走査方向X及び退避方向−D(移動方向D)の両方に対して傾斜する方向に延設されている。一方、第2規制部82は、第1走査方向+Xに向けて開口する凹状をなして、移動方向Dに延びる第1端部82aと走査方向Xに延びる第2端部82bとを有している。
なお、退避方向−Dにおける突部71の長さは、第1規制部81の退避方向−Dにおける長さよりも短くするのが好ましい。また、退避方向−Dにおいて、突部72の長さは、第2規制部82の第1端部82aよりも短くするのが好ましい。
係合部材50の係合部51は、キャリッジ15が第1走査方向+Xに走査するときに、係合位置にある移動体70の突部72に当接する端部54と、キャリッジ15が第2走査方向−Xに走査するときに、係合位置にある移動体70の突部71に当接する端部55とを有している。
端部54,55は、延設方向が走査方向Xと直交するように直線状に形成されるのが好ましい。さらに、切り欠き孔29において第1規制部81の延設方向と位置決め部83の延設方向との交差角度をθ1とするとともに、係合部51において端部54の延設方向と走査方向Xとの交差角度をθ2とした場合に、90°>θ1>0°、かつ、θ2−θ1≧0となるのが好ましい。
次に、調整機構20によるプラテンギャップPLGの調整動作について説明する。
図4には、相対的に厚さの薄い媒体17Aに対応して、記録ヘッド16が最も低い位置に配置された状態を示している。このとき、キャリッジ15は、プラテンギャップPLGが最も短いPLG1となる第1位置に配置されている。
媒体17Aよりも厚い媒体17Bに対して記録を行う場合は、媒体17Bに対しても媒体17Aと同様のペーパーギャップPPGを確保するために、調整機構20がキャリッジ15を図5に示す第2位置に移動させて、プラテンギャップPLGをPLG1からPLG2(PLG2>PLG1)に変化させる。
キャリッジ15を第1位置から第2位置に移動させる場合には、まず、移動体70を退避位置に配置した状態で、キャリッジ15を第1走査方向+Xに往路走査させて、係合部51を移動体70よりも80桁側(図4では右側)に移動させる。キャリッジ15の走査に伴って係合部51が移動体70よりも80桁側に配置されると、キャリッジ15を停止させる。
続いて、駆動源21の駆動によって回動軸36を回転させて、移動体70を退避位置から係合位置に向けて移動させる。このとき、移動体70は位置決め部83に当接することで、係合位置に停止する。
移動体70が係合位置に配置されると、今度はキャリッジ15を第2走査方向−Xに復路走査させる。すると、係合位置に配置された移動体70が係合部51と係合することによって、係合部材50の第2走査方向−Xへの移動が規制される。
係合部材50の移動が移動体70によって規制された直後には、摺接部材40及び間隔制御部材60はキャリッジ15と一緒に第2走査方向−Xに移動する。そして、第2走査方向−Xに移動する間隔制御部材60は、移動しない係合部材50の長孔53の傾斜に係合ピン63が案内されることによって、鉛直方向G上方に移動する。
同時に、係合ピン63が走査方向Xと交差する方向に延びる長孔53から受ける反力がカム部61と支持突部44及び支承部28との間の摩擦力を上回ると、支持突部44及び支承部28がカム部61に対して摺動して、キャリッジ15及び摺接部材40が間隔制御部材60に対して第2走査方向−Xに相対移動する。
そして、図5に示すように、支持突部44が一段低い位置にあるカム部61の水平面に当接するところまで摺接部材40が移動すると、キャリッジ15は第2走査方向−Xへの走査を停止する。
支持突部44が一段低い位置にあるカム部61の水平面に当接すると、支承部28と支持突部44との間に挟持されるカム部61の厚さが一段階厚くなる。これにより、キャリッジ15は第1位置よりも一段階高い第2位置に配置されて、プラテンギャップPLGが媒体17Bに対応したPLG2になる。
なお、プラテンギャップPLGをPLG2よりも長くする場合には、支持突部44がカム部61のさらに低い位置にある水平面に当接するまで、キャリッジ15を第2走査方向−Xに移動させる。
続いて、キャリッジ15を第2位置から第1位置に移動させる場合の調整機構20の動作について説明する。
図6に示すように、媒体17Bに対応したプラテンギャップPLGであるPLG2をPLG1に変更する場合には、移動体70を退避位置に配置した状態で、係合部51を移動体70よりも0桁側(図6では左側)に位置するように、キャリッジ15を移動させる。
続いて、回動軸36を回転させて、移動体70を退避位置から係合位置に向けて移動させる。移動体70が係合位置に配置されると、キャリッジ15を第1走査方向+Xに往路走査させる。すると、係合位置に配置された移動体70が係合部51と係合することによって、係合部材50の第1走査方向+Xへの移動が規制される。
係合部材50の移動が移動体70によって規制された直後には、摺接部材40及び間隔制御部材60はキャリッジ15と一緒に第1走査方向+Xに移動する。そして、第1走査方向+Xに移動する間隔制御部材60は、移動しない係合部材50の長孔53の傾斜に係合ピン63が案内されることによって、鉛直方向G下方に移動する。
同時に、係合ピン63が長孔53から受ける反力がカム部61と支持突部44及び支承部28との間の摩擦力を上回ると、支持突部44及び支承部28がカム部61に対して摺動して、キャリッジ15及び摺接部材40が間隔制御部材60に対して第1走査方向+Xに相対移動する。
そして、図7に示すように、支持突部44が最も高い位置にあるカム部61の水平面に当接するところまで摺接部材40が移動すると、キャリッジ15は第1走査方向+Xへの走査を停止する。
支持突部44が最も高い位置にあるカム部61の水平面に当接すると、支承部28と支持突部44との間に挟持される間隔制御部材60の厚さが一段階薄くなる。これにより、キャリッジ15は第2位置よりも一段階低い第2位置に配置されて、プラテンギャップPLGが媒体17Aに対応したPLG1になる。
次に、以上のように構成された記録装置の作用について説明する。
係合位置にある移動体70が係合部51と係合した状態でキャリッジ15が走査方向Xに走査すると、移動体70は係合部51を介してキャリッジ15の走査に伴う押圧力を受ける。
このとき、第1規制部81と第2規制部82との間には移動体70の進入方向+Dへの移動を許容する隙間が設けられているので、その隙間の分、キャリッジ15の押圧力を受けた移動体70は走査方向Xに移動する。
例えば、図5に示すように、移動体70が係合部51を介してキャリッジ15の復路走査に伴う押圧力を受けた場合には、切替レバー37が付勢部材39を弾性変形させつつ回動軸36に沿って移動することによって、移動体70が第2走査方向−Xに移動する。そして、第2走査方向−Xへの移動体70の移動は、第2規制部82に当接することによって規制される。
このとき、図3に二点鎖線で示すように、係合部51において端部55の延設方向と走査方向Xとの交差角度θ3が90°>θ3>0°になっていると、キャリッジ15の押圧力の一部が退避方向−Dへの分力となって、移動体70に作用する。すると、移動体70が係合部51に押圧されることによって回動軸36が回動して、移動体70が移動方向Dに延びる第2規制部82に沿って退避方向−Dに移動してしまうことがある。
さらに、図3に二点鎖線で示すように、第2規制部82が移動方向Dに沿う直線状に形成されている場合には、移動体70が第2規制部82に沿って退避位置まで移動してしまう虞がある。
そして、移動体70が係合部51の可動領域外に設定された退避位置に移動すると、移動体70によって係合部材50の移動が規制されなくなるために、プラテンギャップPLGを適切に変更することができなくなる。
その点、第2規制部82は第1走査方向+Xに向けて開口する凹状をなしているので、移動体70が第2規制部82の移動方向Dに延びる第1端部82aに沿って退避方向−Dに移動した場合にも、その移動が走査方向Xに延びる第2端部82bによって規制される。そのため、移動体70は係合部51の可動領域内にとどまり、係合部材50の移動が規制される。
また、図7に示すように、移動体70が係合部51を介してキャリッジ15の往路走査に伴う押圧力を受けた場合には、切替レバー37が付勢部材39を弾性変形させつつ回動軸36に沿って移動することによって、移動体70が第1走査方向+Xに移動する。そして、第1走査方向+Xへの移動体70の移動は、第1規制部81に当接することによって規制される。
このとき、図8に二点鎖線で示すように、係合部51において端部54の延設方向と走査方向Xとの交差角度θ2が90°>θ2>0°になっていると、キャリッジ15の押圧力の一部が退避方向−Dへの分力となって移動体70に作用する。このとき、図8に二点鎖線で示すように第1規制部81が移動方向Dに沿う直線状に形成されていると、移動体70が係合部51に押圧されることによって回動軸36が回動して、移動体70が第1規制部81に沿って退避方向−Dに移動してしまう虞がある。
そして、移動体70が係合部51の可動領域外に設定された退避位置に移動すると、移動体70によって係合部材50の移動が規制されなくなるために、プラテンギャップPLGを適切に変更することができなくなる。
これに対して、第1規制部81の延設方向と位置決め部83の延設方向との交差角度θ1が90°>θ1>0°、かつ、θ2−θ1≧0となっていると、移動体70が端部54よりも走査方向Xに対する傾斜角度が小さい第1規制部81に引っかかることによって、退避方向−Dへの移動が規制される。
なお、第2規制部82においては、第1端部82aが突部72よりも長い分、移動体70が可動領域内において退避方向−Dに移動する余地がある。これに対して、往路移動するキャリッジ15の押圧力によって移動体70が第1走査方向+Xに移動した場合には、移動体70の第1走査方向+Xへの移動が規制されるのと同時に退避方向−Dへの移動も規制される。したがって、押圧力を受けた移動体70の退避方向−Dへの移動範囲を小さくして、係合部材50の移動を確実に規制することが可能になる。
ちなみに、端部54,55の延設方向が走査方向Xに対して傾斜してしまう要因としては、係合部材50を製造する際の製造誤差や、移動体70との衝突等に起因して係合部51に傷がつくことなどが挙げられる。さらに、係合部材50はキャリッジ15に対して相対移動可能な状態になっているので、係合部51が移動体70と係合した状態でキャリッジ15が走査すると、移動体70から受ける反力によって係合部材50が傾動して、係合部51の突設方向が傾くことも要因と一つとして挙げられる。
したがって、例えば端部54,55が走査方向Xと直交する方向に延びるように設計された場合、すなわちθ2の設計値が90°である場合に、θ2の公差をθnとすると、(90°−θn)>θ1>0°とするのが好ましい。すなわち、θ1,θ2の好ましい条件であるθ2−θ1≧0におけるθ2は、記録装置の使用時における実測値とするのがよい。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)移動体70は係合位置においてキャリッジ15の走査に伴って移動する係合部51と係合すると、係合部51を介してキャリッジ15の走査に伴う押圧力を受けるが、この押圧力によって移動する移動体70の移動範囲は、規制部81,82によって規制される。そして、第1規制部81は係合部51の可動領域内において走査方向X及び退避方向−Dの両方に対して傾斜する方向に延設されているので、押圧力を受けた移動体70の移動範囲は、第1規制部81に当接することによって可動領域内に限定される。すなわち、第1規制部81によって、係合位置から退避位置に向かう移動体70の移動を規制することができる。したがって、キャリッジ15の走査に伴って移動する係合部51の可動領域内に進入して係合部51と係合した移動体70が、キャリッジ15の走査に伴う押圧力によって可動領域の外側に押し出されるのを抑制することができる。
(2)退避方向−Dにおける突部71の長さは、第1規制部81の退避方向−Dにおける長さよりも短いので、移動体70がキャリッジ15の押圧力を受けると、走査方向Xに向けて突設された突部71が第1規制部81に当接する。そして、第1規制部81は退避方向−Dと交差する方向に延設されているので、移動体70の退避位置に向かう移動を規制することができる。
(3)移動体70がキャリッジ15の往路走査に伴う押圧力を受けた場合には、第1規制部81によって移動体70の移動範囲を規制することができるのに加えて、移動体70がキャリッジ15の復路走査に伴う押圧力を受けた場合には、第2規制部82によって移動体70の移動範囲を規制することができる。そして、第1規制部81と第2規制部82との間に設けられた隙間を通じて、移動体70は退避位置から係合位置に移動することができる。
(4)第1規制部81は走査方向Xに延びる位置決め部83に対して鋭角をなすので、移動体70の退避位置に向かう移動を規制するとともに、移動体70の第1走査方向+Xに向かう移動を規制することができる。なお、係合部51の移動体70に当接する端部54と走査方向Xとが鋭角をなす場合には、係合部51が移動体70と係合した場合に移動体70を退避方向−Dに押圧する虞がある。この場合にも、第1規制部81と位置決め部83との交差角度θ1を係合部51の端部54と走査方向Xとの交差角度θ2と同じか、または交差角度θ2よりも小さくすることによって、第1規制部81によって移動体70の退避位置に向かう移動を規制することができる。
(5)係合部材50はキャリッジ15に対して相対移動可能な状態でキャリッジ15に保持されているので、係合部51が移動体70と係合した状態でキャリッジ15が走査すると、移動体70から受ける反力によって係合部材50が傾動して、係合部51の突設方向が傾く虞がある。そして、このように係合部51が傾いた状態で移動体70と係合すると、係合位置にある移動体70を退避方向−Dに押圧してしまうが、第1規制部81は退避方向−Dに対して傾斜しているので、移動体70の退避位置に向かう方向への移動を規制することができる。
(6)規制部81,82及び位置決め部83はガイドフレーム14に形成された切り欠き孔29の端部からなるので、規制部81,82及び位置決め部83をそれぞれ別部材によって形成する場合よりも、容易かつ正確に交差角度θ1を設定することができる。また、規制部81,82及び位置決め部83を設けるために別部材を備える必要がないので、部品点数の増加を抑制することができる。
(7)移動体70は上方からの平面視において点対称な形状を有しているので、取り付け向きが前後方向で逆になってもよい。したがって、切替レバー37の組付作業を容易にすることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。また、上記実施形態及び下記変更例は、任意に組み合わせることができる。
・搬送機構18の駆動源21とは別の駆動源によって切替レバー37を回動させてもよい。
・第1規制部81と位置決め部83との間に、移動方向Dに延びる直線状の端部を配置してもよい。この場合にも、走査方向X及び退避方向−Dの両方に対して傾斜する第1規制部81を係合位置にある移動体70よりも退避方向−Dの先端側に配置することで、移動体70の退避方向−Dへの移動を規制することができる。また、この場合には、退避方向−D(移動方向D)において突部71が第1規制部81より長くてもよい。
・第1規制部81の一部が係合部51の可動領域の外側に配置されていてもよい。
・規制部81,82及び位置決め部83は、それぞれ別部材によって構成してもよい。
・位置決め部83を備えない構成としてもよい。
・第2規制部82は、第1規制部81と同様に、係合部51の可動領域内において走査方向X及び退避方向−Dの両方に対して傾斜する方向に延設してもよい。
・移動体70に設ける突部71,72の形状は任意に変更することができる。
・移動体70は、突部71,72を備えない任意の形状に変更することができる。
・移動体70は、例えば移動方向Dに延びる案内部に沿って係合位置と退避位置との間でスライド移動するようにしてもよいし、移動方向Dに沿って弾性変形可能な弾性部材の先端に移動体70を設けてもよい。そして、このような構成を採用した場合には、切替レバー37を備えなくてもよい。
・移動体70と係合した係合部材は、キャリッジ15に対して相対移動しなくてもよい。例えば、移動体70と係合した場合に回動する回動レバーを係合部材としてキャリッジ15に設け、キャリッジ15の走査に伴って回動レバーが回動することによって、プラテンギャップPLGを変化させるようにしてもよい。
・移動体70との係合によって実行される動作はプラテンギャップPLGの調整に限らない。例えば、移動体70と係合した係合部材50によって記録装置に設けられた駆動源の駆動力の伝達先を切り替えたり、インク流路の開閉状態を切り替えたりすることもできる。
・図9及び図10に示す変形例の記録装置11Aのように、筐体部12に対して反重力方向に連結して搭載された画像読取装置の一例であるスキャナーユニット90を備える構成にしてもよい。このスキャナーユニット90は、記録装置11Aに対して連結されたスキャナー本体部91と、スキャナー本体部91の上方に配置された蓋部92とを備えている。
スキャナーユニット90は、後端側に設けられたヒンジなどの回転機構93を介して筐体部12に対して開閉可能に取り付けられている。また、記録装置11Aは、前面側に設けられた操作パネル部94と、開閉蓋95とを備えている。
図10に示すように、記録装置11Aには、複数の媒体17を収容可能な収容カセット96が装着される。そして、搬送機構18が収容カセット96に収容された媒体17を連続的に支持部材19上に搬送することで、複数枚の媒体17に対する記録を連続的に行うことができる。
・記録ヘッド16から噴射される液体であるインクの供給源は、キャリッジ15に搭載される液体収容体25の一例であるカートリッジでもよいし、キャリッジ15に搭載されるのではなく、筐体部12内に配置された装着部に固定される液体タンクであってもよい。なお、液体収容体25をキャリッジ15に搭載しないタイプにした場合には、キャリッジ15の大きさ等による液体容量の制約がなくなるために、カートリッジタイプに比べて、途中で液体を補給することなく、より多くの記録を連続して行うことができる。
・図11に示すように、記録装置11Aの筐体部12の外側に配置した液体収容体25から、供給チューブ97を介して記録ヘッド16(図10参照)にインクを供給するようにしてもよい。この場合には、筐体部12とスキャナーユニット90との間に供給チューブ97を通す隙間を確保するための隙間形成部材98を配置してもよいし、筐体部12から突設したボスによって隙間を確保してもよい。あるいは、筐体部12に孔や切り欠きを設けて、その孔や切り欠きを通じて供給チューブ97を筐体部12の外側から内側に導入することもできる。
このような構成にすれば、筐体部12の外側に配置した液体収容体25から筐体部12の内部に収容された記録ヘッド16に向けてインクを供給することができる。そして、液体収容体25を筐体部12の外側に配置する場合には、筐体部12の大きさによる液体容量の制約がなくなるため、途中で液体を補給することなく、さらに多くの記録を連続して行うことができる。
・上記各実施形態において、記録装置は、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して噴射できる固体を含む)を噴射したり吐出したりして記録を行う流体噴射装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う液状体噴射装置であってもよい。また、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体(粉粒体)を例とする固体を噴射する粉粒体噴射装置(例えばトナージェット式記録装置)であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体、粉粒体(粒体、粉体を含む)などが含まれる。
さらに、上記実施形態及び各変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記キャリッジの走査を案内するガイドフレームと、
前記走査方向に延設されて前記移動体の前記係合位置における位置決めを行う位置決め部と、を備え、
前記規制部及び前記位置決め部は、前記ガイドフレームに形成された切り欠き孔の端部からなり、
前記切り欠き孔において前記規制部の延設方向と前記位置決め部の延設方向との交差角度をθ1とするとともに、前記係合部の前記移動体に当接する端部の延設方向と前記走査方向との交差角度をθ2とした場合に、90°>θ1>0°、かつ、θ2−θ1≧0となることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の記録装置。
この構成によれば、規制部は走査方向に延びる位置決め部に対して鋭角をなすので、移動体の退避位置に向かう移動を規制するとともに、移動体の走査方向に向かう移動を規制することができる。なお、係合部の移動体に当接する端部と走査方向とが鋭角をなす場合には、係合部が移動体と係合した場合に移動体を退避方向に押圧する虞がある。この場合にも、規制部と位置決め部との交差角度θ1は係合部の端部と走査方向との交差角度θ2と同じか、または交差角度θ2よりも小さいので、規制部によって移動体の退避位置に向かう移動を規制することができる。