JP6048175B2 - 医療用多層容器 - Google Patents

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Description

本発明は、酸素バリア性能および酸素吸収機能を有する医療用容器に関する。
食品、飲料、医薬品、化粧品等に代表される、酸素の影響を受けて変質或いは劣化しやすい各種物品の酸素酸化を防止し、長期に保存する目的で、これらを収納した包装体内の酸素除去を行う酸素吸収剤が使用されている。
酸素吸収剤としては、酸素吸収能力、取り扱い易さ、安全性の点から、鉄粉を反応主剤とする酸素吸収剤が一般的に用いられている。しかし、この鉄系酸素吸収剤は、金属探知機に感応するために、異物検査に金属探知機を使用することが困難であった。また、鉄系酸素吸収剤を同封した包装体は、鉄粉の酸化反応には水分が必須であるため、被保存物が高水分系であるものでしか、酸素吸収の効果を発現することができなかった。
また、熱可塑性樹脂に鉄系酸素吸収剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層を配した多層材料で容器を構成することにより、容器のガスバリア性の向上を図るとともに容器自体に酸素吸収機能を付与した包装容器の開発が行われている(特許文献1参照)。具体的には、この多層材料は、ヒートシール層及びガスバリア層が積層された従来構成のガスバリア性多層フィルムの層間に、鉄系酸素吸収剤を分散した熱可塑性樹脂からなる酸素吸収層を設けた酸素吸収性多層フィルムであって、外部からの酸素透過を防ぐ機能に加えて、容器内の酸素を吸収する機能が付与されたものであり、押し出しラミネート、共押し出しラミネート、ドライラミネート等の従来公知の製造方法を利用して製造されている。しかし、これも同様に、食品等の異物検知に使用される金属探知機に検知される、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、といった課題を有している。さらに、不透明性の問題により内部視認性が不足するといった課題を有している。
上記のような事情から、有機系の物質を反応主剤とする酸素吸収剤が望まれている。有機系の物質を反応主剤とする酸素吸収剤としては、アスコルビン酸を主剤とする酸素吸収剤が知られている(特許文献2参照)。
一方、樹脂と遷移金属触媒からなる酸素吸収性樹脂組成物が知られている。例えば、酸化可能有機成分としてポリアミド、特にキシリレン基含有ポリアミドと遷移金属触媒からなる樹脂組成物が知られている(特許文献3および4参照)。さらに、この特許文献3および4には、この樹脂組成物を成形して得られる酸素吸収剤、包装材料、包装用多層積層フィルムも例示されている。
また、酸素吸収に水分を必要としない酸素吸収性樹脂組成物として、炭素−炭素不飽和結合を有する樹脂と遷移金属触媒からなる酸素吸収性樹脂組成物が知られている(特許文献5参照)。
さらに、酸素を捕集する組成物として、置換されたシクロヘキセン官能基を含むポリマーまたは該シクロヘキセン環が結合した低分子量物質と遷移金属とからなる組成物が知られている(特許文献6参照)。
他方、従来から、薬液を密閉状態で充填し保管するための医療用包装容器として、ガラス製のアンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ等が使用されている。しかしながら、これらのガラス製容器は、保管中に容器中の内容液にナトリウムイオン等が溶出する、フレークスという微細な物質が発生する、金属で着色した遮光性ガラス製容器を使用する場合には着色用の金属が内容物に混入する、落下等の衝撃により割れやすい、などの問題があった。また、比較的に比重が大きいため、医療用包装容器が重いという問題点もあった。そのため、代替材料の開発が期待されている。具体的には、ガラスに比べて軽量なプラスチック、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等が、ガラス代替として検討されている。
例えば、ポリエステル系樹脂材料からなる医療用容器が提示されている(特許文献7参照)。
一方、プラスチックからなる容器にガスバリア性を付与するために、ガスバリア層を中間層として有する多層容器の検討が行われている。具体的には、ポリオレフィン系樹脂からなる最内層および最外層と、酸素バリア性に優れた樹脂組成物からなる中間層と有する、酸素バリア性を向上させたプレフィルドシリンジが提示されている(特許文献8参照)。他にも、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミド(以下、「ナイロンMXD6」と称することがある。)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、アルミ箔、カーボンコート、無機酸化物蒸着等のガスバリア層を樹脂層に積層した多層容器も検討されている。
他方、近年においては、ナイロンMXD6に少量の遷移金属化合物を添加、混合して、酸素吸収機能を付与し、これを容器や包装材料を構成する酸素バリア材料として利用することが提案されている(特許文献9参照)。
また、医療用容器としてアンプル、バイアル、シリンジの他に人工腎臓血液透析器(ダイヤライザー)が挙げられる。ダイヤライザーのハウジングには、中身がよく見える透明性プラスチックとしてポリスチレンやポリカーボネートが用いられるが、落下その他の衝撃で破損することを避けるため、耐衝撃性のよいポリカーボネートがより好んで使用されている(特許文献10参照)。
特開平09−234832号公報 特開昭51−136845号公報 特開2001−252560号公報 特開2009−108153号公報 特開平05−115776号公報 特表2003−521552号公報 特開平08−127641号公報 特開2004−229750号公報 特開平02−500846号公報 特開平01−259870号公報
しかしながら、特許文献2の酸素吸収剤は、そもそも酸素吸収性能が低く、また、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、比較的に高価である、といった課題を有している。
また、特許文献3の樹脂組成物は、遷移金属触媒を含有させキシリレン基含有ポリアミド樹脂を酸化させることで酸素吸収機能を発現させるものであるため、酸素吸収後に樹脂の酸化劣化による高分子鎖の切断が発生し、包装容器そのものの強度が低下するという問題を有している。さらに、この樹脂組成物は、未だ酸素吸収性能が不十分であり、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、といった課題を有している。また、特許文献4では層間剥離の改善方法が記載されているが、効果は限定的である。さらに、この樹脂組成物は、未だ酸素吸収性能が不十分であり、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、といった課題を有している。
さらに、特許文献5の酸素吸収性樹脂組成物は、上記と同様に樹脂の酸化にともなう高分子鎖の切断により臭気成分となる低分子量の有機化合物が生成し、酸素吸収後に臭気が発生するという問題がある。
一方、特許文献6の組成物は、シクロヘキセン官能基を含む特殊な材料を用いる必要があり、また、この材料は比較的に臭気が発生しやすい、という課題が依然として存在する。
他方、上記従来の医療用多層容器は、酸素バリア性、水蒸気バリア性、薬液吸着性、容器の耐久性等の基本性能が十分ではなく、そのため、薬液等の内容物の保存性の観点から改善が求められている。
とりわけ、従来のガスバリア性多層容器を用いて薬液等を保存する場合、如何にガス置換操作を行ったとしても、包装容器内の酸素を完全に除去することは困難或いは極めて不経済であるという実情がある。すなわち、内容物の液中に溶存する酸素、内容物の混合時に発生し混入する気泡に含まれる酸素、水を添加する場合にはそれに溶存する酸素等を完全に排除することは困難である。原料の選別・調製条件や製造条件において高度な管理を行なって、酸素を可能な限り除去することは可能であるものの、このような経済性を無視した取り扱いは現実的ではない。しかも、上記のとおりガスバリア性多層容器の酸素バリア性が十分ではないため、容器の壁部を透過して外部から侵入してくる微量酸素を完全に排除することができない。
例えば、特許文献7のポリエステル系樹脂製の医療用容器は、比較的に優れた酸素バリア性を有するものの、酸素を完全に遮断するには酸素バリア性が不十分であり、また、ポリオレフィン系樹脂からなる容器と比較すると水蒸気バリア性にも劣る。しかも、このポリエステル系樹脂は、酸素吸収性能を有さない。そのため、外部から酸素が容器内に侵入した場合に、または、容器の内容物の上部に存在するヘッドスペースに酸素が残存している場合には、容器内の薬液の劣化を防げないという問題があった。
また、特許文献8のプレフィルドシリンジは、比較的に優れた酸素バリア性および水蒸気バリア性を有するものの、酸素を完全に遮断するには酸素バリア性が不十分である。しかも、中間層の酸素バリア性樹脂組成物は、酸素吸収性能を有さない。そのため、外部から酸素が容器内に侵入した場合に、または、容器の内容物の上部に存在するヘッドスペースに酸素が残存している場合には、容器内の薬液の劣化を防げないという問題があった。
一方、特許文献9の樹脂組成物は、上記の特許文献3および4と同様に、酸化吸収後に樹脂の酸化劣化による強度低下が発生し、包装容器そのものの強度が低下するという問題を有している。さらに、この樹脂組成物は、未だ酸素吸収性能が不十分であり、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、といった課題を有している。
特許文献10のダイヤライザーのハウジングは優れた透明性、耐衝撃性を有しているが、薬液を収容し保存する容器に適用するには、ポリカーボネートは酸素バリア性や水蒸気バリア性は不十分であり、内容物の長期保存性の面で課題を有している。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、酸素吸収後の低分子量化合物の生成が著しく抑制され、優れた酸素吸収性能を有し、好ましくは優れた水蒸気バリア性能をも有し、長期保存時でも強度が維持され、不純物の溶出量が極めて少なく、薬液低吸着性の新規な酸素吸収性医療用多層成形容器を提供することにある。また、本発明の他の別の目的は、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下で優れた酸素吸収性能を有する、酸素吸収性医療用多層成形容器を提供することにある。
本発明者らは、酸素吸収性医療用多層成形容器について鋭意検討を進めた結果、所定のテトラリン環を有する共重合ポリオレフィン化合物と遷移金属触媒とを用いた酸素吸収層、および、ポリエステルを用いた樹脂層を積層することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下<1>〜<10>を提供する。
<1> ポリエステルを少なくとも含有する第1の樹脂層と、共重合ポリオレフィン化合物および遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層と、ポリエステルを少なくとも含有する第2の樹脂層の少なくとも3層をこの順に有する、酸素吸収性医療用多層成形容器であって、
前記共重合ポリオレフィン化合物が、下記一般式(1)で表される構成単位;

(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または第1の一価の置換基を示し、前記第1の一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。)
からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位(a)と、
下記一般式(2)および(3)で表される構成単位;

(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または第2の一価の置換基を示し、R、R、R10およびR11は、それぞれ独立して第3の一価の置換基を示し、前記第2の一価の置換基および前記第3の一価の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよく、前記R、R、R10またはR11が複数存在する場合、複数の前記R、R、R10またはR11は、互いに同一であっても異なっていてもよい。mは0〜3、nは0〜7、pは0〜6、qは0〜4の整数をそれぞれ示し、テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つの水素原子が結合している。Xは−(C=O)O−、−(C=O)NH−、−O(C=O)−、−NH(C=O)−および−(CHR)s−からなる群より選択される二価の基を示し、sは0〜12の整数を示す。Yは−(CHR)t−であって、tは0〜12の整数を示す。Rは水素原子、メチル基およびエチル基からなる群より選択される一価の化学種を示す。)
からなる群より選択される少なくとも1種のテトラリン環を有する構成単位(b)と、を含有する共重合ポリオレフィン化合物である、酸素吸収性医療用多層成形容器。
<2> 前記遷移金属触媒が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選択される少なくとも1種以上の遷移金属を含むものである、上記<1>に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
<3> 前記遷移金属触媒が、前記共重合ポリオレフィン化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.001〜10質量部含まれる、上記<1>または<2>に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
<4> 前記共重合ポリオレフィン化合物に含まれる、前記構成単位(b)の含有割合に対する前記構成単位(a)の含有割合が、モル比で1/99〜99/1である、上記<1>〜<3>のいずれか一項に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
<5> 前記構成単位(a)が下記式(4)および(5)で表される構成単位;

からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位であり、
前記構成単位(b)が下記式(6)および(7)で表される構成単位;

からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位である、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
<6> 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の70モル%以上がテレフタル酸、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる1種以上のジカルボン酸に由来する<1>〜<5>のいずれか一項に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
<7> 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の70モル%以上がテレフタル酸に由来する<1>〜<5>のいずれか一項に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
<8> 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の90モル%以上がテレフタル酸に由来する<1>〜<5>いずれか一項に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
<9> 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の70モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する<1>〜<5>のいずれか一項に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
<10> 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の90モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸骨格である<1>〜<5>のいずれか一項に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
本発明によれば、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下で優れた酸素吸収性能を有し、酸素バリア性が良好で、好適な態様ではさらに水蒸気バリアに優れる、バイアルやプレフィルドシリンジ等の酸素吸収性医療用多層成形容器を実現することができる。そして、この酸素吸収性医療用多層成形容器は、被保存物の水分の有無によらず酸素吸収することができる。また、酸素吸収後も酸化による上記のテトラリン環を有する共重合ポリオレフィン化合物の強度低下が極めて小さく、長期の利用においても酸素吸収層の強度が維持されるため、層間剥離が生じにくい酸素吸収性医療用多層成形容器を実現することもできる。さらに、酸素吸収後の低分子有機化合物の生成が著しく抑制されているので、この低分子量有機化合物の内容物への混入が極めて少ない酸素吸収性医療用多層成形容器を実現することもできる。そのため、本発明の酸素吸収性医療用多層成形容器は、低酸素濃度下で保存が要求される医薬品、バイオ医薬、医療品等の保存において殊に有用である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
[酸素吸収性医療用多層成形容器]
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、ポリエステルを少なくとも含有する第1の樹脂層(層B)と、酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、ポリエステルを少なくとも含有する第2の樹脂層(層B)との少なくとも3層をこの順に有する。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、容器内の酸素を吸収して、容器外から容器壁面を透過する或いは侵入する酸素がわずかでもある場合にはこの透過或いは侵入する酸素をも吸収して、保存する内容物品(被保存物)の酸素による変質等を防止することができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器における層構成は、これらの層がB/A/Bの順に配列されている限り、酸素吸収層(層A)および樹脂層(層B)の数や種類は特に限定されない。例えば、1つの層A、2つの層B1および2つの層B2からなるB1/B2/A/B2/B1の5層構成であってもよい。また、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、必要に応じて接着層(層AD)等の任意の層を含んでもよく、例えば、B1/B2/AD/A/AD/B2/B1の7層構成であってもよい。
[酸素吸収層(層A)]
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器の酸素吸収層(A)は、上記一般式(1)で表わされる構成単位からなる群より選択される少なくとも1種のエチレンまたは置換エチレン構成単位である構成単位(a)、および、上記一般式(2)または(3)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種のテトラリン環を有する置換エチレン構成単位である構成単位(b)を含有する共重合ポリオレフィン化合物と遷移金属触媒とを含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる。
層A中のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物の含有割合は、特に限定されないが、層Aの総量に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。テトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物の含有割合が前記好ましい値以上にあると、そうでない場合に比べて、酸素吸収性能をより高めることができる。
<テトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物>
本実施形態のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物は、上記一般式(1)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種のエチレンまたは置換エチレン構成単位である構成単位(a)、および、上記一般式(2)または(3)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種のテトラリン環を有する置換エチレン構成単位である構成単位(b)を含有する。
また、上記一般式(1)で表される構成単位(a)は、上記式(4)および(5)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、上記一般式(2)で表される構成単位(b)は、上記式(6)および(7)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。ここで、「構成単位を含有する」とは、化合物中に当該構成単位を1以上有することを意味する。かかる構成単位は、テトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物中に繰り返し単位として含まれていることが好ましい。テトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物は、上記構成単位(a)と構成単位(b)とのランダムコポリマー、上記構成単位(a)と構成単位(b)とのブロックコポリマーのいずれであっても構わない。或いは、それらの構成単位の共重合の形態は、例えば、交互共重合、グラフト共重合などであってもよい。
また、テトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物は、構成単位(a)、構成単位(b)以外の他の構成単位を含有してもよく、上記構成単位(a)と構成単位(b)と他の構成単位とのランダムコポリマー、上記構成単位(a)と構成単位(b)と他の構成単位とのブロックコポリマーのいずれであっても構わない。或いは、それらの構成単位の共重合の形態は、例えば、交互共重合、グラフト共重合などであってもよい。
上記一般式(1)〜(3)で表される構成単位において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11(「R〜R11」と表記する。以下同様。)で示す一価の置換基(第1の一価の置換基、第2の一価の置換基、および第3の一価の置換基)としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数が1〜15、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状または環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6の直鎖状、分岐状または環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数が6〜16、より好ましくは炭素数が6〜10のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の5員環或いは6員環の芳香族または非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる一価の基、例えば、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状または環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基)、アシル基(ホルミル基を含む。好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキルカルボニル基、好ましくは炭素数が7〜12、より好ましくは炭素数が7〜9のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルアミノ基、好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアニリノ基、好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が4〜8のイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が例示されるが、これらに特に限定されない。
なお、上記の一価の置換基R〜R11が水素原子を有する場合、その水素原子が置換基T(ここで、置換基Tは、上記の一価の置換基R〜R11で説明したものと同義である。)でさらに置換されていてもよい。その具体例としては、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、第1級或いは第2級アミノ基で置換されたアルキル基(例えば、アミノエチル基)、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、上記の一価の置換基R〜R11が一価の置換基Tを有する場合、上述した炭素数には、置換基Tの炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と看做し、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは看做さない。また、上記の一価の置換基R〜R11が置換基Tを有する場合、その置換基Tは複数あってもよい。
上記一般式(2)または(3)で表される構成単位において、Xは、−(C=O)O−、−(C=O)NH−、−O(C=O)−、−NH(C=O)−および−(CHR)s−からなる群より選択される二価の基を示し、sは0〜12の整数を示す。Yは−(CHR)t−であって、tは0〜12の整数を示す。Rは水素原子(−H)、メチル基(−CH)、および−エチル基(C)からなる群より選択される一価の化学種を示す。
本実施形態のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物は、テトラリン環を有するビニル化合物(I)と、他のビニル化合物(II)とを共重合することで得られる。
本実施形態で用いられるテトラリン環を有するビニル化合物(I)としては、例えば、下記一般式(8)または(9)で表される化合物からなる群より選択されるビニル化合物が挙げられる。テトラリン環を有するビニル化合物(I)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子または第2の一価の置換基を示し、R〜R11は、それぞれ独立して第3の一価の置換基を示し、第2の一価の置換基および第3の一価の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよく、R、R、R10またはR11が複数存在する場合、複数のR、R、R10またはR11は、互いに同一であっても異なっていてもよい。mは0〜3、nは0〜7、pは0〜6、qは0〜4の整数をそれぞれ示し、テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つの水素原子が結合している。Xは−(C=O)O−、−(C=O)NH−、−O(C=O)−、−NH(C=O)−および−(CHR)s−からなる群より選択される二価の基を示し、sは0〜12の整数を示す。Yは−(CHR)t−であって、tは0〜12の整数を示す。Rは−H、−CH、および−Cからなる群より選択される一価の化学種を示す。)
本実施形態で用いるビニル化合物(II)としては、例えば、下記一般式(10)で表される化合物からなる群より選択されるビニル化合物が挙げられる。ビニル化合物(II)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子または第1の1価の置換基を示し、第1の一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。)
上記一般式(10)で表されるビニル化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレンまたはα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテンなどのシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどのスチレン類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、エタクリロニトリル、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、α−クロロ(メタ)アクリルアミド、エタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、2−ニトロエチル(メタ)アクリレート、3−ニトロプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびそれに対応するメタクリル酸を意味する。
本実施形態のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物は、上記構成単位(a)と、下記一般式(11)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種のナフタレン環を有する置換基を含有する置換エチレン構成単位である構成単位(c)とを含有する共重合ポリオレフィン化合物を水素と反応させることによって得ることもできる。

(式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子または第2の一価の置換基を示し、RおよびRは、それぞれ独立して第3の一価の置換基を示し、第2の一価の置換基および第3の一価の置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基およびイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよく、RまたはRが複数存在する場合、複数のRまたはRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。mは0〜3、nは0〜4の整数をそれぞれ示し、Xは−(C=O)O−、−(C=O)NH−、−O(C=O)−、−NH(C=O)−および−(CHR)s−からなる群より選択される二価の基を示し、sは0〜12の整数を示す。Yは−(CHR)t−であって、tは0〜12の整数を示す。Rは−H、−CH、および−Cからなる群より選択される一価の化学種を示す。)
本実施形態のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物のさらに別の製造方法としては、側鎖に反応性官能基を有するポリオレフィン(III)と、テトラリン環を有する化合物(IV)とを反応させる方法が挙げられる。
上記側鎖に反応性官能基を有するポリオレフィン(III)としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸重合体;ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル重合体;ポリビニルアルコール、ポリビニル酢酸などのポリ酢酸ビニル誘導体;エチレン−不飽和カルボン酸共重合体;エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレン−ビニルアルコール共重合体;無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなどの無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記テトラリン環を有する化合物(IV)としては、上記側鎖に反応性官能基を有するポリオレフィン(III)と結合しやすい官能基を有する化合物が好ましく、テトラリン環を有する、アルコール化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、酸無水物化合物、エポキシド化合物を例示することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、上記側鎖に反応性官能基を有するポリオレフィン(III)として側鎖にエステル基を有するポリオレフィンを有機溶媒に溶解して得た溶液に、上記テトラリン環を有する化合物(IV)としてテトラリン環を有するアルコール化合物、およびエステル交換触媒を添加し、エステル交換反応により製造する方法が好ましい。
エステル交換反応は公知の方法で行うことができる。反応温度および反応時間はエステル交換反応が可能な範囲であれば特に限定されないが、反応温度は50〜300℃、反応時間は10分から24時間が好ましい。エステル交換反応に用いられる有機溶媒は、重合体を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく使用することができる。このような有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン等が挙げられる。
エステル交換反応の別の方法としては、例えば、上記側鎖に反応性官能基を有するポリオレフィン(III)として側鎖にエステル基を有するポリオレフィンと、上記テトラリン環を有する化合物(IV)としてテトラリン環を有するアルコール化合物と、エステル交換触媒とを、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどで溶融混練する方法が挙げられる。
エステル交換反応に用いられるエステル交換触媒としては、公知の物質を用いることが可能であり、例えば、ナトリウム−tert−ブトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化ナトリウム、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、酸化チタン、塩化チタン、塩化ジルコニウム、塩化ハフニウム、塩化錫、およびチタン、ジルコニウム、錫のメタロセン錯体触媒などが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種を組み合わせて用いることができる。
本実施形態のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物に含まれる、上記構成単位(b)の含有割合に対する上記構成単位(a)の含有割合((a)/(b))はモル比で1/99〜99/1とすることが好ましく、1/19〜19/1とすることがより好ましく、1/9〜9/1とすることが特に好ましい。
本実施形態のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物のMFR(JIS K7210に準拠して190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。)は特に限定されないが、成形性の面から、0.1〜500g/10分が好ましく、0.2〜100g/10分がより好ましい。
構成単位(a)の好ましい具体例としては、上記式(4)または(5)で表される構成単位が挙げられるが、これらに限定されない。
構成単位(b)の好ましい具体例としては、上記式(6)または(7)で表される構成単位、下記式(12)または(13)で表される構成単位が挙げられるが、これらに限定されない。
上記のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物の分子量は、所望する性能や取扱性などを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。一般的には、重量平均分子量(Mw)が1.0×10〜8.0×10であることが好ましく、より好ましくは5.0×10〜5.0×10である。また同様に、数平均分子量(Mn)が1.0×10〜1.0×10であることが好ましく、より好ましくは5.0×10〜1.0×10である。なお、ここでいう分子量は、いずれもポリスチレン換算の値を意味する。なお、上記のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上述したテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物は、いずれも、テトラリン環のベンジル位に水素を有するものであり、後に詳述する遷移金属触媒と併用することでベンジル位の水素が引き抜かれ、これにより優れた酸素吸収能を発現する。
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収後の臭気発生が著しく抑制されたものである。その理由は明らかではないが、例えば以下の酸化反応機構が推測される。すなわち、上記のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物においては、まずテトラリン環のベンジル位にある水素が引き抜かれてラジカルが生成し、その後、ラジカルと酸素との反応によりベンジル位の炭素が酸化され、ヒドロキシ基またはケトン基が生成すると考えられる。そのため、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物においては、上記従来技術のような酸化反応による酸素吸収主剤の分子鎖の切断がなく、テトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物の構造が維持され、臭気の原因となる低分子量の有機化合物が酸素吸収後に生成され難いためと推測される。
<遷移金属触媒>
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物において用いられる遷移金属触媒としては、上記のテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物の酸化反応の触媒として機能し得るものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
かかる遷移金属触媒の具体例としては、遷移金属の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。ここで、遷移金属触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好ましい。また、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタノイック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属触媒は、上述した遷移金属と有機酸とを組み合わせたものが好ましく、遷移金属がマンガン、鉄、コバルト、ニッケルまたは銅であるとより好ましく、マンガン、鉄、コバルトであるとさらに好ましく、有機酸が酢酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸またはナフテン酸であるとより好ましく、酢酸またはステアリン酸であるとさらに好ましく、それらの遷移金属のいずれかと有機酸のいずれかとの組み合わせが特に好ましい。なお、遷移金属触媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物におけるテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物および遷移金属触媒の含有割合は、使用するテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物や遷移金属触媒の種類および所望の性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収量の点から、遷移金属触媒の含有量は、テトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.002〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1質量部、なおもさらに好ましくは0.008〜0.5質量部、特に好ましくは0.01〜0.2質量部である。
<他の熱可塑性樹脂>
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、必要に応じて、上記テトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物以外の、他の熱可塑性樹脂をさらに含有していてもよい。他の熱可塑性樹脂を併用することで、成形性や取扱性を高めることができる。
他の熱可塑性樹脂としては、公知のものを適宜用いることができる。低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムまたはブロック共重合体等のポリオレフィン;無水マレイン酸グラフトポリエチレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル等;環状オレフィンを使用したシクロオレフィンポリマーおよびシクロオレフィンコポリマー等の環状ポリオレフィン或いはこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
テトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物および遷移金属触媒並びに必要に応じて含有される他の熱可塑性樹脂は、公知の方法で混合することができる。また、押出機を用いてこれらを混練することにより、より高い分散性を有する酸素吸収性樹脂組成物を得ることもできる。
<各種添加剤>
ここで、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、上述した各成分以外に、本実施形態の効果を過度に損なわない範囲で、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。かかる任意の添加剤としては、例えば、乾燥剤、酸化チタン等の顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
さらに、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収反応を促進させるために、必要に応じて、さらにラジカル発生剤や光開始剤を含有していてもよい。ラジカル発生剤の具体例としては、各種のN−ヒドロキシイミド化合物が挙げられる。具体的には、N−ヒドロキシコハクイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノンとその誘導体、チアジン染料、金属ポルフィリン誘導体、アントラキノン誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらのラジカル発生剤および光開始剤は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器において、酸素吸収層(層A)の厚みは、用途や所望する性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、高い酸素吸収性能を有し、医療用多層成形容器に要求される諸物性を確保するという観点から、1〜1000μmが好ましく、より好ましくは50〜900μm、さらに好ましくは100〜800μmである。
[ポリエステルを含有する樹脂層(層B)]
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器において、樹脂層(層B)は、ポリエステルを含有する層である。層Bにおけるポリエステルの含有率は、適宜設定することができ、特に限定されないが、層Bの総量に対して、70〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。ポリエステル化合物(B)の含有率を70質量%以上とすることで薬液保存性、薬液低吸着性を高めることができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、層Bを複数有していてもよく、複数の層Bの構成は互いに同一であっても異なっていてもよい。層Bの厚みは、用途に応じて適宜決定することができ、特に限定されないが、医療用多層成形容器に要求される諸物性を確保するという観点から、50〜10000μmが好ましく、より好ましくは100〜7000μm、さらに好ましくは300〜5000μmである。
<ポリエステル>
この本実施形態の層Bで用いられるポリエステルの具体例としては、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種または二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種または二種以上とからなるもの、またはヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、または環状エステルからなるもの等が挙げられる。
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸等に例示される金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸またはそれらの低級アルキルエステル誘導体等が挙げられる。
上記のジカルボン酸のなかでも、得られるポリエステルの物理特性等の観点から、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類の使用が好ましい。なお、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合してもよい。
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸の具体例としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール等に例示される芳香族グリコールが挙げられる。
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。
これらグリコール以外の多価アルコールの具体例としては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ−ル、ヘキサントリオール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
環状エステルの具体例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチド等が挙げられる。
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体の具体例としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物等が挙げられる。
上述したものの中でも、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸類またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
なお、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。同様に、主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸類またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルは、ナフタレンジカルボン酸類またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
上述したナフタレンジカルボン酸類またはそのエステル形成性誘導体の中でも、ジカルボン酸類において例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
また本実施形態の酸素吸収性多層体の層Bに用いるポリエステルの好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。なお、このポリグリコール酸は、ラクチド等の他成分が共重合されているものであってもよい。
とりわけ、本実施形態の層Bで用いるポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸類もしくはそのエステル形成性誘導体、または、ナフタレンジカルボン酸類もしくはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。また、アルキレングリコールを70モル%以上含むことが物理特性等の点で好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。そして、上述したジカルボン酸のなかでも、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸の使用が、得られるポリエステルの物理特性等の点で好ましく、これらを70モル%以上含むことが好ましい。これらジカルボン酸の中でも、特にテレフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。また、テレフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸を70モル%以上含むことが物理特性等の点で好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。必要に応じて他のジカルボン酸を共重合してもよい。さらに、イソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の共重合成分の使用が、透明性と成形性とを両立する上で好ましく、特にイソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上がより好ましい。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、所望する性能等に応じて、上述した酸素吸収層(層A)およびポリエステルを含有する樹脂層(層B)の他に、任意の層を含んでいてもよい。そのような任意の層としては、例えば、接着層等が挙げられる。
例えば、隣接する2つの層の間の層間接着強度をより高める観点から、当該2つの層の間に接着層(層AD)を設けることが好ましい。接着層は、接着性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂;ポリエステル系ブロック共重合体を主成分としたポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なお、接着層の厚みは、特に限定されないが、実用的な接着強度を発揮しつつ成形加工性を確保するという観点から、2〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜90μm、さらに好ましくは10〜80μmである。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器の製造方法は、各種材料の性状や目的とする形状等に応じて、公知の方法を適用することができ、特に限定されない。例えば、各種の射出成形法を適用して、多層成形容器を製造することができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器の厚みは、特に限定されないが、酸素吸収性能を高めるとともに医療用多層成形容器に要求される諸物性を確保するという観点から、3〜5000μmが好ましく、より好ましくは5〜4500μmであり、さらに好ましくは10〜4000μmである。
また、射出成形法以外の方法としては、例えば、圧縮成形法により多層成形体を得ることができ、得られた多層成形体に上述した二次加工を施すことにより、所望の容器形状に成形することもできる。例えば、ポリエステル溶融物中に酸素吸収性樹脂組成物を設け、その溶融塊を雄型に供給するとともに、雌型により圧縮し、圧縮成形物を冷却固化することにより多層成形体を得ることができる。また、二次加工としては、例えば押出成形、圧縮成形(シート成形、ブロー成形)等が適用可能である。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器の使用態様としては、特に限定されず、種々の用途および形態で用いることができる。好ましい使用態様としては、例えば、バイアル、アンプル、プレフィルドシリンジ、真空採血管等が挙げられるが、これらに特に限定されない。以下、好ましい使用態様について詳述する。
〔バイアル〕
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、バイアルとして使用することができる。一般的には、バイアルは、ボトル、ゴム栓、キャップから構成され、薬液をボトルに充填後、ゴム栓をして、さらにその上からキャップを巻締めることで、ボトル内が密閉されている。このバイアルのボトル部分に、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器を用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器をバイアルのボトル部分に成形する方法としては、例えば、射出ブロー成形、押出しブロー成形等が好適である。その具体例として、射出ブロー成形方法を以下に示す。例えば、2台以上の射出機を備えた成形機および射出用金型を用いて、層Aを構成する材料および層Bを構成する材料をそれぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、射出用金型のキャビティー内に射出することにより、射出用金型のキャビティー形状に対応した形状を有する、3層構造B/A/Bの多層インジェクション成形体を製造することができる。また、先ず、層Bを構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層Aを構成する材料を別の射出シリンダーから、層Bを構成する樹脂と同時に射出し、次に層Bを構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより、3層構造B/A/Bの多層インジェクション成形体を製造することができる。さらに、先ず、層Bを構成する材料を射出し、次いで層Aを構成する材料を単独で射出し、最後に層Bを構成する材料を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより、5層構造B/A/B/A/Bの多層インジェクション成形体を製造することができる。またさらに、先ず、層B1を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層B2を構成する材料を別の射出シリンダーから、層B1を構成する樹脂と同時に射出し、次に層Aを構成する樹脂を層B1、層B2を構成する樹脂と同時に射出し、次に層B1を構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより、5層構造B1/B2/A/B2/B1の多層インジェクション成形体を製造することができる。そして、この射出ブロー成形では、上記方法により得られた多層インジェクション成形体をある程度加熱された状態を保ったまま最終形状金型(ブロー金型)に嵌め、空気を吹込み、膨らませて金型に密着させ、冷却固化させることで、ボトル状に成形することができる。
〔アンプル〕
また、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、アンプルとして使用することができる。一般的には、アンプルは、頸部が細く形成された小容器から構成され、薬液を容器内に充填後、頸部の先を熔封することで、容器内が密閉されている。このアンプル(小容器)に本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器を用いることができる。本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器をアンプルに成形する方法としては、例えば、射出ブロー成形、押出しブロー成形等が好適である。
〔プレフィルドシリンジ〕
さらに、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、プレフィルドシリンジとして使用することができる。一般的には、プレフィルドシリンジは、少なくとも薬液を充填するためのバレル、バレルの一端に注射針を接合するための接合部および使用時に薬液を押し出すためのプランジャーから構成され、予めバレル内に薬剤を密封状態に収容しておき、使用時に前記バレルの先端側を開封して注射針を装着するように構成された注射器であり、その使用簡便性のために広く用いられている。このバレルに本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器を用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器をプレフィルドシリンジのバレルに成形する方法としては、例えば、射出成形法が好適である。具体的には、先ず層Bを構成する樹脂を射出用金型のキャビティー内に一定量射出し、次いで層Aを構成する樹脂を一定量射出し、再び層Bを構成する樹脂を一定量射出することにより、多層インジェクション成形体としてバレルを製造することができる。なお、バレルと接合部は一体のものとして成形してもよいいし、別々に成形したものを接合してもよい。また、薬液を充填後、接合部の先端は封をする必要があるが、その方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、接合部先端の樹脂を溶融状態に加熱し、ペンチ等で挟み込んで融着させる等すればよい。
プレフィルドシリンジのバレルの容器の厚さは、使用目的や大きさに応じて適宜設定することができ、特に限定されない。一般的には、薬液の長期保存安定性、成型性およびシリンジの操作性の観点から、0.5〜20mm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜5mm程度である。また、厚さは均一であっても、厚さを変えたものであってもいずれでもよい。またバレル表面には、長期保存安定の目的で、他のガスバリア膜や遮光膜がさらに形成されていてもよい。これらの任意の膜およびその形成方法については、例えば、特開2004−323058号公報などに記載されている。
〔真空採血管〕
また、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、真空採血管として使用することができる。一般的には、真空採血管は、管状体および栓体から構成されている。この管状体に、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器を用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器を真空採血管の管状体に成形する方法としては、例えば、射出成形法が好適である。具体的には、先ず層Bを構成する樹脂を射出用金型のキャビティー内に一定量射出し、次いで層Aを構成する樹脂を一定量射出し、再び層Bを構成する樹脂を一定量射出することにより、多層インジェクション成形体として管状体を製造することができる。
〔被保存物〕
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器に充填される被保存物(充填物)は、特に限定されない。例えば、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどのビタミン剤、アトロピンなどのアルカロイド、アドレナリン、インシュリンなどのホルモン剤、ブドウ糖、マルトースなどの糖類、セフトリアキソン、セファロスポリン、シクロスポリンなどの抗生物質、オキサゾラム、フルニトラゼパム、クロチアゼパム、クロバザムなどのベンゾジアゼピン系薬剤等、任意の天然物や化合物を充填可能である。本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、これらの天然物や化合物を充填した場合、これらの天然物や化合物の吸着量が少なく、またこれらの酸化による変質を抑制することができ、また、溶媒(例えば水分)の蒸散を抑制することもできる。
なお、これらの被保存物の充填前後に、被保存物に適した形で、医療用多層容器や被保存物の殺菌処理を施すことができる。殺菌方法としては、例えば、100℃以下での熱水処理、100℃以上の加圧熱水処理、121℃以上の高温加熱処理等の加熱殺菌、紫外線、マイクロ波、ガンマ線等の電磁波殺菌、エチレンオキサイド等のガス処理、過酸化水素や次亜塩素酸等の薬剤殺菌等が挙げられる。
以下に実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下の実施例ではバイアルを例に挙げて実証しているが、本願明細書に示したとおり、アンプル、プレフィルドシリンジ、真空採血管に対する要求特性はバイアルに対するものと同様であるため、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(合成例1)
内容積1000mLの4つ口セパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル含有量が25質量%のエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(製品名;住友化学株式会社製「アクリフトWK402」)100g、6−ヒドロキシルメチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン81g、デカリン160g、エステル交換触媒としてテトラブチルチタネート0.2gを仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で反応液温を210℃まで昇温し、メタノールを留去しながら、3時間反応を行った。メタノールが留出しなくなった後、減圧を徐々に行い、未反応の6−ヒドロキシルメチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、およびデカリンを留去した。その後、常圧に戻し、冷却して固形状の反応粗生成物を得た。次いで、得られた反応粗生成物に、その濃度が3〜4質量%になるようトルエンを加え、80℃に加熱し溶解させた後、この溶液を40℃程度まで冷却しメタノールを加え、再沈殿したテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物(1)を濾過により回収した。
得られたテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物(1)の重量平均分子量と数平均分子量をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した結果、ポリスチレン換算の重量平均分子量は9.5×10、数平均分子量は3.1×10であった。融点をDSCにより測定を行った結果、融点は71℃であった。
(合成例2)
合成例1の6−ヒドロキシルメチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンに代えて1,5−ジメチル−8−ヒドロキシルメチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンを用い、その質量を95.0gとした以外は、合成例1と同様にしてテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物(2)を合成した。このテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物(2)の、ポリスチレン換算の重量平均分子量は9.1×10、数平均分子量は3.0×10、融点は71℃であった。
(合成例3)
合成例1のメタクリル酸メチル含有量が25質量%のエチレン−メタクリル酸メチル共重合体に代えてメタクリル酸メチル含有量が5質量%のエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(製品名;住友化学株式会社製「アクリフトWD203−1」)を用い、6−ヒドロキシルメチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンの量を81gから16.2gに変更した以外は、合成例1と同様にしてテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物(3)を合成した。このテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物(3)の、ポリスチレン換算の重量平均分子量は9.6×10、数平均分子量は3.0×10、融点は98℃であった。
(合成例4)
合成例1のメタクリル酸メチル含有量が25質量%のエチレン−メタクリル酸メチル共重合体に代えてメタクリル酸メチル含有量が10質量%のエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(製品名;住友化学株式会社製「アクリフトWD201−F」)を用い、6−ヒドロキシルメチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンの量を81gから32.4gに変更した以外は、合成例1と同様にしてテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物(4)を合成した。このテトラリン環含有共重合ポリオレフィン化合物(4)の、ポリスチレン換算の重量平均分子量は9.3×10、数平均分子量は3.1×10、融点は92℃であった。
(実施例1)
共重合ポリオレフィン化合物(1)100質量部に対し、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量が0.05質量部となるようドライブレンドして得られた混合物を、直径37mmのスクリューを2本有する2軸押出機に30kg/hの速度で供給し、シリンダー温度220℃の条件にて溶融混練を行い、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、酸素吸収性樹脂組成物(1)を得た。次いで、下記に示すとおり、この酸素吸収性樹脂組成物(1)を用いて、多層インジェクション成形容器であるバイアルを製造した。その後、得られたバイアルの性能評価を、以下に示すとおりに行った。評価結果を表1に示す。
[バイアルの製造]
下記の条件により、樹脂層(層B)を構成するポリエステルを射出シリンダーから射出し、次いで酸素吸収層(層A)を構成する酸素吸収性樹脂組成物(1)を別の射出シリンダーから、層Bを構成するポリエステルと同時に射出し、次に層Bを構成するポリエステルを必要量射出して射出金型内キャビティーを満たすことにより、B/A/Bの3層構成の射出成形体を得た。その後、得られた射出成形体を所定の温度まで冷却し、ブロー金型へ移行し、ブロー成形を行うことで、バイアル(ボトル部)を製造した。ここで、バイアルの総質量は24gとし、層Aの質量はバイアルの総質量の30質量%とした。また、層Bを構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット株式会社製、商品名:RT−553C、以下PETとも略する。)を使用した。
(バイアルの形状)
全長89mm、外径40mmφ、肉厚1.8mmとした。なお、バイアルの製造には、射出ブロー一体型成形機(UNILOY製、型式:IBS 85、4個取り)を使用した。
(バイアルの成形条件)
層A用の射出シリンダー温度:220℃
層B用の射出シリンダー温度:280℃
射出金型内樹脂流路温度 :280℃
ブロー温度 :150℃
ブロー金型冷却水温度 : 15℃
[バイアルの性能評価]
得られたバイアルの酸素透過率の測定、成形後の外観評価、落下試験、溶出試験について、以下の方法および基準にしたがって測定し、評価した。
(1)バイアル内の酸素濃度
バイアルに純水50mLを充填し、ゴム栓及びアルミキャップにて密封した。23℃60%RHにて保存し、3日後及び1ヶ月後のヘッドスペースの酸素濃度を酸素濃度測定装置(東レエンジニアリング株式会社製LC−750F)にて測定した。
(2)成形後の外観
成形後のバイアルの白化の有無を、目視にて観察した。
(3)落下試験
バイアルを40℃、90%RHにて1カ月保存した後、純水50mLを満杯充填し、その後、ゴム栓およびアルミキャップにて密封した。このようにして得られた密封容器を2mの高さから落下させ、そのときの容器外観を調査した。
(4)溶出試験
バイアルを40℃、90%RHにて1カ月保存した後、純水50mLを満杯充填し、その後、ゴム栓およびアルミキャップにて密封した。このようにして得られた密封容器を40℃、60%RHにて4カ月保存し、その後、純水中のトータルカーボン量(以下、TOC)を測定した。
(TOC測定)
装置 ;株式会社島津製作所製 TOC−VCPH
燃焼炉温度 ;720℃
ガス・流量 ;高純度空気、TOC計部150mL/min
注入量 ;150μL
検出限界 ;1μg/mL
(実施例2〜4)
共重合ポリオレフィン化合物(1)に代えて、表2に示す共重合ポリオレフィン化合物をそれぞれ用いること以外は、実施例1と同様に行い、酸素吸収性樹脂組成物およびバイアルをそれぞれ製造した。得られたバイアルの性能評価を実施例1と同様にそれぞれ行った。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
酸素吸収性樹脂組成物(1)に代えてポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット株式会社製、商品名:RT−553C、以下PETとも略する。)100質量部を用い、層A用のシリンダー温度を280℃とした以外は、実施例1と同様に行い、実施例1と同形状の単層のバイアルを製造した。得られたバイアルの性能評価を実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
ナイロンMXD6(三菱ガス化学株式会社製S7007)100質量部に対し、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量が0.04質量部となるようドライブレンドして得られた混合物を、直径37mmのスクリューを2本有する2軸押出機に30kg/hの速度で供給し、シリンダー温度280℃の条件にて溶融混練を行い、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、酸素吸収性樹脂組成物(M)を得た。酸素吸収性樹脂組成物(1)に代えてこの酸素吸収性樹脂組成物(M)を用い、層A用のシリンダー温度を280℃とした以外は、実施例1と同様に行い、バイアルを製造した。得られたバイアルの性能評価を実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜4のバイアルは、良好な酸素吸収性を有し、長期保存後も良好な強度を維持し、容器から内容物への溶出量も低いことが確認された。さらに、実施例1〜4のバイアルは、容器内部の視認性が確保され、透明性に優れていることが確認された。

Claims (7)

  1. ポリエステルを少なくとも含有する第1の樹脂層と、共重合ポリオレフィン化合物および遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層と、ポリエステルを少なくとも含有する第2の樹脂層の少なくとも3層をこの順に有する、酸素吸収性医療用多層成形容器であって、
    前記共重合ポリオレフィン化合物が、下記式(4)および(5)で表される構成単位;
    からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位(a)と、
    下記式(6)および(7)で表される構成単位;
    からなる群より選択される少なくとも1種のテトラリン環を有する構成単位(b)と、を含有する共重合ポリオレフィン化合物であり、
    前記遷移金属触媒が、コバルトのステアリン酸塩であり、
    前記遷移金属触媒が、前記共重合ポリオレフィン化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.01〜0.2質量部含まれる、
    酸素吸収性医療用多層成形容器。
  2. 前記共重合ポリオレフィン化合物に含まれる、前記構成単位(b)の含有割合に対する前記構成単位(a)の含有割合が、モル比で1/99〜99/1である、請求項1に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
  3. 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の70モル%以上がテレフタル酸、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる1種以上のジカルボン酸に由来する請求項1又は2に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
  4. 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の70モル%以上がテレフタル酸に由来する請求項1又は2に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
  5. 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の90モル%以上がテレフタル酸に由来する請求項1又は2に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
  6. 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の70モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する請求項1又は2に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
  7. 前記ポリエステルが、ジカルボン酸単位中の90モル%以上が2,6−ナフタレンジカルボン酸骨格である請求項1又は2に記載の酸素吸収性医療用多層成形容器。
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