以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
[酸素吸収性医療用多層容器]
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器は、ポリエステルを含有する第1の樹脂層と、酸素吸収性組成物を含有する酸素吸収性層と、ポリエステルを含有する第2の樹脂層との少なくとも3層をこの順に有する、酸素吸収性医療用多層容器であって、前記酸素吸収性組成物が、下記一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物を少なくとも1種、遷移金属触媒、及び熱可塑性樹脂を含む、
(式中、R1〜R12は、それぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示し、前記一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、イミド基、下記一般式(1a)で表される置換基、及び下記一般式(1b)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよく、R1〜R12のうち2つの置換基が結合して環を形成していてもよい。テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。)
(一般式(1a)及び一般式(1b)中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、前記一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、及びイミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよく、Rのうち2つの置換基が結合して環を形成していてもよい。Wは、結合手又は二価の有機基であり、前記二価の有機基は、芳香族炭化水素基、飽和もしくは不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基及び複素環基、−C(=O)−、−OC(=O)−、−N(H)C(=O)−、及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1種である。mは0〜4の整数を示し、nは0〜7の整数を示し、pは0〜8の整数を示し、qは0〜3の整数を示す。)
酸素吸収性医療用多層容器である。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器は、例えば、内容物品(被保存物)を保存する医療用容器等として用いることができる。この場合、容器内の酸素を吸収して、容器外から容器壁面を透過する或いは侵入する酸素がわずかでもある場合にはこの透過或いは侵入する酸素をも吸収して、保存する内容物品(被保存物)の酸素による変質等を防止することができる。この酸素吸収性医療用多層容器は、被保存物の水分の有無によらず酸素吸収することができ、しかも酸素吸収後の低分子量化合物の生成が著しく抑制され、様々な医薬品や医療品に使用することができる。また、酸素吸収後も酸化等により強度低下が極めて小さく、長期の利用においても酸素吸収層の強度が維持されるため、層間剥離が生じにくい酸素吸収性医療用多層容器を実現することもできる。そのため、本発明の酸素吸収性医療用多層容器は、低酸素濃度下で保存が要求される医薬品、バイオ医薬、医療品等の保存において殊に有用である。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、ポリエステルを少なくとも含有する第1の樹脂層(層B)と、酸素吸収性組成物からなる酸素吸収層(層A)と、ポリエステルを少なくとも含有する第2の樹脂層(層B)との少なくとも3層をこの順に有する。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、容器内の酸素を吸収して、容器外から容器壁面を透過する或いは侵入する酸素がわずかでもある場合にはこの透過或いは侵入する酸素をも吸収して、保存する内容物品(被保存物)の酸素による変質等を防止することができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器における層構成は、これらの層がB/A/Bの順に配列されている限り、酸素吸収層(層A)及びポリエステルを含有する樹脂層(層B)の数や種類は特に限定されない。例えば、1つの層A、2つの層B1及び2つの層B2からなるB1/B2/A/B2/B1の5層構成であってもよく、1層の層A並びに層B1及び層B2の2種2層からなるB1/A/B2の3層構成であってもよい。また、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、必要に応じて接着層(層AD)等の任意の層を含んでもよく、例えば、B1/AD/B2/A/B2/AD/B1の7層構成であってもよい。
[酸素吸収層(層A)]
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器の酸素吸収層(層A)は、上記一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物(以下、単に「テトラリン化合物」ともいう。)を少なくとも1種、遷移金属触媒、及び熱可塑性樹脂を含有する酸素吸収性組成物を含む層である。
<テトラリン環を有する化合物>
上記一般式(1)において、R1〜R12で示す一価の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数が1〜15、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6の直鎖状、分岐状又は環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数が6〜16、より好ましくは炭素数が6〜10のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の5員環或いは6員環の芳香族又は非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる一価の基、例えば、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状又は環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基)、アシル基(ホルミル基を含む。好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキルカルボニル基、好ましくは炭素数が7〜12、より好ましくは炭素数が7〜9のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルアミノ基、好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアニリノ基、好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、チオール基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が4〜8のイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が例示されるが、これらに特に限定されない。
上記一般式(1)で表される化合物は、テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合されているものである。後述するが、テトラリン環のベンジル位に結合された水素原子と、後述する遷移金属触媒とが作用することによって、優れた酸素吸収能等を発現することができる。テトラリン環のベンジル位には少なくとも1つ以上の水素原子が結合されている化合物としては、例えば、一般式(1)のR1、R4、R9、及びR12のいずれか1つが水素原子である化合物等が挙げられる。
なお、上記の一価の置換基R1〜R12が水素原子を有する場合、その水素原子が置換基T(ここで、置換基Tは、上記の一価の置換基Rで説明したものと同義である。)でさらに置換されていてもよい。その具体例としては、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、第1級或いは第2級アミノ基で置換されたアルキル基(例えば、アミノエチル基)、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、上記の一価の置換基Rが一価の置換基Tを有する場合、上述した炭素数には、置換基Tの炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と看做し、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは看做さない。また、上記の一価の置換基Rが置換基Tを有する場合、その置換基Tは複数あってもよい。
また、一価の置換基R1〜R12のうちの2つが結合して環を形成していてもよい。その具体例としては、例えば、R1〜R12のうちの2つが縮合し、5〜8員環を形成した化合物が挙げられる。なお、ここでいう環とは、公知の環構造のいずれであっても構わず、特に限定されないが、好ましくは炭素数が4〜7の芳香族環又は脂肪族環或いはヘテロ環(より好ましくは、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、酸無水物環(例えば、コハク酸無水物環、グルタル酸無水物環、アジピン酸無水物環等)、ベンゼン環、ビシクロ環等)である。)である。
使用中の揮発による損失を抑制するとともに化合物単位質量当たりの酸素吸収量を大きくする観点から、上記の一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物は、R1〜R12のうち少なくとも1つが、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、置換又は無置換のエステル基、アルコキシ基、アシル基、置換もしくは無置換のアミド基及び置換もしくは無置換のイミド基からなる群(以下、単に「置換基群S」ともいう。)より選択される1種であるもの;2以上のRが縮合して5〜6員環を形成したものが好ましい。これら置換基群Sの中でも、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、置換又は無置換のエステル基、及び置換又は無置換のアミド基がより好ましい。
上記の一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物の好ましい第一の態様としては、以下に示す構造のものが挙げられる。
(一般式(1c)中、R1〜R8は、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基は上記において説明したR1〜R12と同義であり、但し、R1〜R8が2つ以上結合して環を形成していない。)
上記の第一の態様においては、R1〜R8のうち少なくとも2以上が上述した置換基群Sより選択される1種であり、且つ、それ以外のR1〜R8は水素原子であることが好ましく、R1〜R8のうち2つが置換基群Sより選択される1種であり、且つ、R1〜R8のうち6が水素原子であることがより好ましい。
上記の第一の態様においては、種々の異性体が含まれ、例えば、下記一般式(1−1)で表されるテトラリンに2つの置換基を導入した場合、構造異性体としては下記一般式(1−2)〜(1−15)で表されるテトラリン誘導体が生じ得るが、置換基の導入位置(置換位置)は特に限定されない。
以下、この第一の態様に含まれる例を列挙するが、これらに特に限定されない。
(各式中、nは、0〜3の整数であり、Rは、それぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示し、一価の置換基は、芳香族炭化水素基、飽和或いは不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状或いは分岐状の飽和或いは不飽和の脂肪族炭化水素基、及びアシル基からなる群より選択される少なくとも1種である。)
ここで、芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、フルオレニル基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基や、シクロアルケニル基が挙げられるが、これらに特に限定されない。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、ラウリル基、ステアリル基、パルミチル基等の直鎖状、分枝鎖状アルキル基や、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、オクテニル基、ノナデセニル基、ペンタコセニル基等のアルケニル基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。アシル基としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、さらに置換基を有していてもよく、その具体例としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、アミノ基、アシル基、チオ基(例えば、アルキルチオ基、フェニルチオ基、トリルチオ基、ピリジルチオ基等)、アミノ基(例えば、非置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
また、上記の一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物の好ましい第二の態様としては、下記一般式(2−1)〜(2−5)で表される構造のものが挙げられる。
(各式中、R1〜R8は、それぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示し、一価の置換基R1〜R8は上記一般式(1)において説明したR1〜R12と同義であり、円弧Aは、置換又は無置換の炭素数が4〜7の芳香環、ヘテロ環又は酸無水物環である。)
上記の第二の態様においては、円弧Aは、炭素数が4〜7の芳香族環又は脂肪族環或いはヘテロ環であることが好ましい。その具体例としては、例えば、ベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、酸無水物環(コハク酸無水物環、グルタル酸無水物環、アジピン酸無水物環)等が挙げられる。
さらに、上記の一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物の好ましい第三の態様としては、2つ以上のカルボニル基を有するものが挙げられる。
上記の2以上のカルボニル基を有する第三の態様の例としては、一般式(1)のR1〜R12のうち、2つ以上が下記一般式(2)で表される一価の置換基であることが好ましい。
(式(1)中、R1〜R12は、それぞれ独立して、水素原子又は一価の置換基を示し、一価の置換基R1〜R12は上記において説明したものと同義であり、但し、R1〜R12が2以上結合して環を形成していない。)
−C(=O)X (2)
(式(2)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、モノアルキルアミノ基、及びジアルキルアミノ基からなる群より選ばれる1つであり、複数のXは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
さらに、上記の第三の態様においては、R1〜R12が以下の要件(A)〜(C);
(A)テトラリン環の芳香族環に上記一般式(2)で表される一価の置換基が1以上結合されており、テトラリン環の脂肪族環に上記一般式(2)で表される一価の置換基が1以上結合されている。
(B)テトラリン環の芳香族環に上記一般式(2)で表される一価の置換基が2以上結合されている。
(C)テトラリン環の脂肪族環に上記一般式(2)で表される一価の置換基が2以上結合されている。
の何れかを満たすものがより好ましい。
上記の一般式(2)で表される一価の置換基において、Xは、−O−Z基で表されるアルコキシ基、又はNH−Z基で表わされるモノアルキルアミノ基であることが好ましく、その−Zは、炭素数が1〜10の芳香族炭化水素基、飽和或いは不飽和の脂環式炭化水素基、又は、直鎖状或いは分岐状の飽和或いは不飽和の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。なお、これらの具体例は、上述した置換基Rにて説明したものと重複するため、ここでの説明は省略する。
以下、上記の要件(A)〜(C)を満たす第三の態様の例を列挙するが、これらに特に限定されない。
(各式中、Zは、上記一般式(2)において説明したものと同義である。)
上記の第三の態様のなかでも、下記一般式(3−10)〜(3−20)で表される化合物がより好ましい。
以下、上記の一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物の具体例を示すが、これらに特に限定されない。
(式中、nは、0〜3の整数である。)
さらに、上記の一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物の好ましい第四の態様としては、テトラリン環を2以上有するものが挙げられる。テトラリン環の上限は12以下であることが好ましく、入手容易性等の観点から、3以下であることが好ましい。特に、酸素吸収性能と耐熱性の効果及び入手容易性のバランスの観点から、テトラリン環の数は2であることがより好ましい。
上記のテトラリン環を2以上有する第四の態様の例としては、下記一般式(4−1)〜(4−6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物が好ましい。
(式中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基Rは上記において説明したR1〜R12と同義である。mは0〜7、nは0〜3、pは0〜4、qは0〜6の整数を表し、テトラリン環のベンジル位には1つ以上の水素原子が結合している。また、Xは芳香族炭化水素基、飽和もしくは不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基及び複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を表し、Yはエステル基又はアミド基を表し、tは0〜6の整数を表す。)
上記一般式(4−1)〜(4−6)においてRで表される置換基としては、上記においてR1〜R12として例示したものが例示される。それらの中でも、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、イミド基が好ましく、水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、アルコキシ基、エステル基、アシル基がより好ましく、水素原子、無置換のアルキル基、アルコキシ基、エステル基が特に好ましい。
一般式(4−1)〜(4−6)で表される化合物の分子量は、276〜1000が好ましく、300〜800がより好ましく、350〜600が特に好ましい。分子量が276以上の場合、分子量が276未満の場合に比べ、使用中の揮発による損失を抑制できるため好ましい。また、分子量が1000以下の場合、分子量が1000を超過する場合に比べ、化合物におけるテトラリン環部分の占める割合が高くなり、化合物の単位質量当たりの酸素吸収量が大きくなる為好ましい。
また、一般式(4−1)〜(4−6)で表される化合物は、沸点が高く、使用時の温度における蒸気圧が低いものが、使用時の揮発による損失を抑制できるため好ましい。また、前記化合物を後述する酸素吸収性組成物とする場合、熱可塑性樹脂との混練温度における蒸気圧が低く、3%重量減少温度が高いほど、酸素吸収性組成物製造時の揮発による損失を抑制できるため好ましい。3%重量減少温度としては、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上が特に好ましい。
上記の官能基の中で水素原子を有するものは更に上記の基で置換されていてもよく、例えば、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、アルキルで置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、官能基が更に置換されている場合、上述した炭素数には、更なる置換基の炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と見なし、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは見なさない。置換基を有したテトラリンの置換基は、複数の置換基を有していても良い。また、必ずしも単一物質である必要がなく、二種以上を混合して使用しても構わない。
一般式(4−1)〜(4−6)で表される化合物としては、下記一般式(4−7)〜(4−16)で表される化合物がより好ましく、下記一般式(4−7)、(4−10)、(4−13)又は(4−16)が特に好ましい。
(式中、Xは芳香族炭化水素基、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示す。)
上記一般式(4−7)の好ましい具体例を以下に示すが、本実施形態はこれらに限定されない。
上記一般式(4−10)の好ましい具体例を以下に示すが、本実施形態はこれらに限定されない。
上記一般式(4−13)の好ましい具体例を以下に示すが、本実施形態はこれらに限定されない。
上記一般式(4−16)の好ましい具体例を以下に示すが、本実施形態はこれらに限定されない。
一分子中にテトラリン環を2つ有している化合物として、上記一般式(4−1)〜(4−16)、及び、式(4−17)〜(4−33)を示したが、本実施形態においては3つ以上のテトラリン環を有する化合物も好ましく用いられる。
一般式(4−1)〜(4−6)で表される化合物の製造方法は何ら限定されず、公知の方法で製造することが出来る。例えば、2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸のエステル体と、ヒドロキシ基及びテトラリン環を有する化合物とのエステル交換反応、2以上のヒドロキシ基を有するポリオールと、カルボキシル基及びテトラリン環を有する化合物との反応、アルデヒドとテトラリン環を有する化合物との反応、が好ましく例示される。
また、上記のテトラリン環を2以上有する第四の態様における、別の好適な例としては、テトラリン環を2つ以上有し、テトラリン環の少なくとも1つは、そのベンジル位に水素原子が結合されており、かつイミド結合を2つ以上有する化合物が挙げられる。
テトラリン環を2つ以上有することで酸素との反応点を多く含むことができ、さらに、イミド結合を2つ以上有することにより、耐熱性を一層向上させることができる。このような化合物としては、例えば、下記一般式(4−34)〜(4−37)からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
(一般式(4−34)〜(4−37)中、Rは、それぞれ独立して、一価の置換基を示し、一価の置換基Rは上記において説明したR1〜R12と同義である。mは0〜6の整数、nは0〜3の整数、pは0〜7の整数、qは0〜2の整数、rは0〜4の整数、sは0〜5の整数を表し、少なくとも1つのテトラリン環において、そのベンジル位には1つ以上の水素原子が結合している。また、Xは、二価の置換基を表し、前記二価の置換基は、芳香族炭化水素基、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、及び複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。)
一般式(4−34)〜(4−37)で表される化合物の分子量は、特に限定されないが、414〜1000が好ましく、430〜800がより好ましく、450〜600がさらに好ましい。分子量が414以上であることにより、使用中の揮発による損失を一層抑制できる。分子量が1000以下であることにより、酸素吸収能が一層向上する。
一般式(4−34)〜(4−37)で表される化合物としては、沸点が高く、使用時の温度における蒸気圧が低いものが、使用時の揮発による損失を一層抑制できるため好ましい。また、これらの化合物としては、熱可塑性樹脂との混練温度における蒸気圧が低いことが好ましい。また、これらの化合物としては、3%重量減少温度が高いほど、好ましい。3%重量減少温度としては、特に限定されないが、150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましく、270℃以上がよりさらに好ましい。
一般式(4−34)〜(4−37)で表される化合物の製造方法としては、特に限定されず、例えば公知の方法によって製造することができる。例えば、ジアミン化合物と酸無水物化合物とを反応させることによって得ることができる。
上述した一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物は、いずれも、テトラリン環のベンジル位に水素を有するものであり、後述する遷移金属触媒と併用することでベンジル位の水素が引き抜かれ、これにより優れた酸素吸収能を発現する。
また、本実施形態の酸素吸収性組成物は、酸素吸収後の低分子量化合物の生成が著しく抑制されたものである。その理由は明らかではないが、例えば以下の酸化反応機構が推測される。すなわち、上記の一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物においては、まずテトラリン環のベンジル位にある水素が引き抜かれてラジカルが生成し、その後、ラジカルと酸素との反応によりベンジル位の炭素が酸化され、ヒドロキシ基又はケトン基が生成すると考えられる。そのため、酸素吸収性組成物としては、従来技術のような酸化反応による酸素吸収主剤の分子鎖の切断がなく、酸素吸収主剤(化合物)の構造が維持されるため、その結果、酸素吸収後の低分子量化合物の生成が著しく抑制されているものと推測される。
上述した一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物の分子量は、所望する特性や導入する置換基R1〜R8に応じて適宜調整でき、特に限定されない。使用中の揮発による損失を抑制するとともに化合物単位質量当たりの酸素吸収量を大きくする観点から、その分子量は190〜1500の範囲であることが好ましく、より好ましくは210〜1200、さらに好ましくは250〜1000である。なお、上述した一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物の中でも、使用時の揮発による損失を抑制する観点では、沸点が高い、すなわち使用時の温度における蒸気圧が低いものが好ましく用いられる。例えば、前記化合物としては、熱可塑性樹脂との混練温度における蒸気圧が低いものほど、酸素吸収性組成物の製造時の揮発による損失を抑制できるため好ましい。かかる揮発による損失の指標としては、例えば、3%重量減少温度を採用することができる。すなわち、前記化合物は、3%重量減少温度が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。なお、かかる3%重量減少温度の上限値は特に限定されない。
酸素吸収性組成物中の、一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物と後述する熱可塑性樹脂との総量に対する、一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物の割合は、1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜25質量%であり、さらに好ましくは2〜20質量%である。一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物の割合を、上記下限値以上とすることで、酸素吸収性能をより高めることができ、上記上限値以下とすることで、成形性をより高めることができる。
<遷移金属触媒>
本実施形態の酸素吸収性組成物において使用される遷移金属触媒としては、上記のテトラリン環を有する化合物の酸化反応の触媒として機能し得るものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
かかる遷移金属触媒の具体例としては、例えば、遷移金属の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。ここで、遷移金属触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好ましい。また、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタノイック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属触媒は、これらの遷移金属と有機酸とを組み合わせたものが好ましく、遷移金属がマンガン、鉄、コバルト、ニッケル又は銅であり、有機酸が酢酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸又はナフテン酸である組み合わせがより好ましい。なお、遷移金属触媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
遷移金属触媒の配合量は、使用する前記テトラリン環を有する化合物や熱可塑性樹脂や遷移金属触媒の種類及び所望の性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。酸素吸収性組成物の酸素吸収量の観点から、遷移金属触媒の配合量は、前記一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物と前記熱可塑性樹脂との総量100質量部に対し、遷移金属量として0.001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.005〜2質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部である。
前記化合物、遷移金属触媒及び熱可塑性樹脂は、公知の方法で混合する事が出来るが、好ましくは押出機により混練することにより、分散状態の良好な酸素吸収性組成物として使用することができる。また、例えば、前記化合物及び遷移金属触媒の混合物を、公知の造粒方法或いは成形方法等を適用して、粉体状、顆粒状、ペレット状又はその他の小片状に加工し、熱可塑性樹脂に配合して、層Aとすることもできる。
ここで、本実施形態で用いる酸素吸収性組成物は、必要に応じて、さらに担体物質を含有していてもよい。このとき、担体物質を含有する酸素吸収性組成物は、前記化合物と熱可塑性樹脂と遷移金属触媒と担体物質との混合物として、そのまま酸素吸収剤として用いることができる。また、上述した一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物を必要に応じて遷移金属触媒とともに担体物質に担持或いは含浸させることで、前記化合物が担体物質に担持或いは含浸された担持体(以下、「酸素吸収剤担持体」ともいう。)とすることができ、この担持体を酸素吸収剤として用いることもできる。このように前記化合物を担体物質に担持或いは含浸させることにより、酸素との接触面積を大きくし、酸素吸収速度又は酸素吸収量を増加させることができ、また、取り扱いを簡便にすることができる。
上記の担体物質としては、当業界で公知のものの中から適宜選択して用いることができる。その具体例としては、例えば、合成ケイ酸カルシウム、消石灰、活性炭、ゼオライト、パーライト、珪藻土、活性白土、シリカ、カオリン、タルク、ベントナイト、活性アルミナ、石膏、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、黒鉛、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、酸化鉄等の粉末が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、合成ケイ酸カルシウム、珪藻土、シリカ、活性炭が好ましく用いられる。なお、担体物質は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
担体物質の配合量は、使用する前記化合物や熱可塑性樹脂や遷移金属触媒の種類及び所望の性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物100質量部に対し、10〜1000質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜800質量部である。
なお、前記化合物の担体物質への担持は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、上述した一般式(1)で表されるテトラリン環を有する化合物を含有する混合液、又はこの化合物と遷移金属触媒とを含有する混合液を調製し、担体物質にこの混合液を塗布し、或いは、この混合液中に担体物質を浸漬させる等して、前記化合物(及び必要に応じて遷移金属触媒)が担体物質に担持(含浸)された酸素吸収剤担持体を得ることができる。なお、前記混合液の調製時には、さらに溶媒を含有させることができる。前記化合物や遷移金属触媒が固体である場合、溶媒を用いることでこれらを担体物質に効率的に担持させることができる。ここで使用する溶媒は、前記化合物や遷移金属触媒の溶解性等を考慮して公知のものの中から適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、例えば、メタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機溶媒が好ましく、メタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンがより好ましい。なお、溶媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
<熱可塑性樹脂>
本実施形態の酸素吸収性組成物は、熱可塑性樹脂を含有する。このとき、酸素吸収性組成物中における前記化合物と遷移金属触媒の含有形態は、特に限定されない。例えば、前記化合物及び遷移金属触媒が熱可塑性樹脂中にそのまま含有されていても、前記化合物及び遷移金属触媒が上述した担体物質に担持された状態で熱可塑性樹脂中に含有されていてもよい。
上記の酸素吸収性組成物の調製方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、前記化合物と遷移金属触媒と必要に応じて配合される担体物質とを、熱可塑性樹脂に混合又は混練することで、酸素吸収性組成物を得ることができる。
上記の熱可塑性樹脂としては、公知のものを適宜用いることができ、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、あるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム又はブロック共重合体等のポリオレフィン;無水マレイン酸グラフトポリエチレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル等あるいはこれらの混合物等が挙げられる。なお、熱可塑性樹脂は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物由来樹脂及び塩素系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。以下、これらの好ましい熱可塑性樹脂について詳述する。
<ポリオレフィン>
本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられるポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン単独重合体;エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のその他のエチレン共重合体;環状オレフィン類開環重合体及びその水素添加物;環状オレフィン類−エチレン共重合体;とこれらのポリオレフィンを無水マレイン酸等の酸無水物等でグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
<ポリエステル>
本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられるポリエステルとしては、例えば、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる1種又は2種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる1種又は2種以上とからなるもの、又はヒドロキシカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、又は環状エステルからなるもの等が挙げられる。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルは、エステル反復単位の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃、融点(Tm)が200〜275℃の範囲にあるものが好適である。エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートが耐圧性、耐熱性、耐熱圧性等の点で特に優れているが、エチレンテレフタレート単位以外にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸とプロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用できる。
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸等に例示される金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体等が挙げられる。
上記のジカルボン酸のなかでも、得られるポリエステルの物理特性等の観点から、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類の使用が好ましい。なお、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合してもよい。
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸の具体例としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール等に例示される芳香族グリコールが挙げられる。
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。
これらグリコール以外の多価アルコールの具体例としては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ−ル、ヘキサントリオール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
環状エステルの具体例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチド等が挙げられる。
多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体の具体例としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物等が挙げられる。
上述したものの中でも、主たる酸成分がテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸類又はそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
なお、主たる酸成分がテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体であるポリエステルは、全酸成分に対してテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。同様に、主たる酸成分がナフタレンジカルボン酸類又はそのエステル形成性誘導体であるポリエステルは、ナフタレンジカルボン酸類又はそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
上述したナフタレンジカルボン酸類又はそのエステル形成性誘導体の中でも、ジカルボン酸類において例示した1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
また、上述した主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。なお、ここでいうアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
上記テレフタル酸/エチレングリコール以外の共重合成分は、透明性と成形性とを両立する観点から、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール及び2−メチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましく、イソフタル酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることがより好ましい。
本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられるポリエステルの好ましい一例は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルである。より好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられるポリエステルの好ましい他の一例は、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステルである。より好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくはエチレン−2,6−ナフタレート単位を80モル%以上含む線状ポリエステルであり、特に好ましいのは、エチレン−2,6−ナフタレート単位を90モル%以上含む線状ポリエステルである。
また、本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、プロピレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、プロピレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、ブチレンナフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステル、又はブチレンテレフタレート単位を70モル%以上含む線状ポリエステルである。
透明性と成形性との両立の観点から、特に好適なポリエステルとしては、ポリエステル全体の組み合わせとして、テレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコールの組み合わせ、テレフタル酸/エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノールの組み合わせ、テレフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコールの組み合わせである。なお、当然ではあるが、上記のポリエステルは、エステル化(エステル交換)反応や重縮合反応中のエチレングリコールの二量化により生じるジエチレングリコールを少量(5モル%以下)含んでいてもよいことはいうまでもない。
また本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられるポリエステルの好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。なお、このポリグリコール酸は、ラクチド等の他成分が共重合されているものであってもよい。
<ポリアミド>
本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられるポリアミドとしては、例えば、ラクタムもしくはアミノカルボン酸から誘導される単位を主構成単位とするポリアミドや、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから誘導される単位を主構成単位とする脂肪族ポリアミド、脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから誘導される単位を主構成単位とする部分芳香族ポリアミド等が挙げられる。なお、ここでいうポリアミドは、必要に応じて、主構成単位以外のモノマー単位が共重合されたものであってもよい。
ラクタムもしくはアミノカルボン酸の具体例としては、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、炭素数2〜12の脂肪族ジアミン或いはその機能的誘導体、脂環族のジアミン等が挙げられる。なお、脂肪族ジアミンは、直鎖状の脂肪族ジアミンであっても分岐を有する鎖状の脂肪族ジアミンであってもよい。このような直鎖状の脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。また、脂環族ジアミンの具体例としては、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。とりわけ、炭素数4〜12のアルキレン基を有する直鎖状脂肪族ジカルボン酸が好ましい。直鎖状脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸及びこれらの機能的誘導体等が挙げられる。また、脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等が挙げられる。
また、芳香族ジアミンの具体例としては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、パラ−ビス(2−アミノエチル)ベンゼン等が挙げられる。
また、芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
具体的なポリアミドとしては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド6IT、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、イソフタル酸共重合ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6I)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカナミド(ポリアミドMXD12)、ポリ1,3−ビスアミノシクロヘキサンアジパミド(ポリアミドBAC6)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)等がある。より好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD6Iが挙げられる。
また、前記ポリアミドに共重合されていてもよい共重合成分としては、少なくとも一つの末端アミノ基、もしくは末端カルボキシル基を有する数平均分子量が2000〜20000のポリエーテル、又は前記末端アミノ基を有するポリエーテルの有機カルボン酸塩、又は前記末端カルボキシル基を有するポリエーテルのアミノ塩を用いることもできる。その具体例としては、ビス(アミノプロピル)ポリ(エチレンオキシド)(数平均分子量が2000〜20000のポリエチレングリコール)が挙げられる。
また、前記部分芳香族ポリアミドは、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3塩基以上の多価カルボン酸から誘導される構成単位を実質的に線状である範囲内で含有していてもよい。
<エチレン−ビニルアルコール共重合体>
本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられるエチレンビニルアルコール共重合体としては、エチレン含量が15〜60モル%であり、且つ、酢酸ビニル成分のケン化度が90モル%以上のものが好適である。エチレン含量は、好ましくは20〜55モル%であり、より好ましくは29〜44モル%である。また、酢酸ビニル成分のケン化度は、好ましくは95モル%以上である。なお、エチレンビニルアルコール共重合体は、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、不飽和カルボン酸又はその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド、無水物、不飽和スルホン酸又はその塩等の少量のコモノマーをさらに含んでいてもよい。
<植物由来樹脂>
本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられる植物由来樹脂としては、原料として植物由来物質を含む樹脂であればよく、その原料となる植物は特に限定されない。植物由来樹脂の具体例としては、脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂が挙げられる。また、脂肪族ポリエステル系生分解性樹脂としては、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)等のポリ(α−ヒドロキシ酸);ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)等のポリアルキレンアルカノエート等が挙げられる。
<塩素系樹脂>
本実施形態の酸素吸収性組成物に用いられる塩素系樹脂としては、構成単位に塩素を含む樹脂であればよく、公知の樹脂を用いることができる。塩素系樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及び、これらと酢酸ビニル、マレイン酸誘導体、高級アルキルビニルエーテル等との共重合体等が挙げられる。
上記の例示した熱可塑性樹脂の中でも、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン6(PA6)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)が、食品用包装材料として好ましく用いられる。
なお、本実施形態の酸素吸収性組成物は、酸素吸収反応を促進させるために、必要に応じて、さらにラジカル発生剤や光開始剤を含有していてもよい。ラジカル発生剤の具体例としては、各種のN−ヒドロキシイミド化合物が挙げられ、例えば、N−ヒドロキシコハクイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノンとその誘導体、チアジン染料、金属ポルフィリン誘導体、アントラキノン誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらのラジカル発生剤及び光開始剤は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記の酸素吸収性組成物は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。かかる任意成分としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、乾燥剤、顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、消臭剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
[ポリエステルを含有する樹脂層(層B)]
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器において樹脂層(層B)は、ポリエステルを含有する層である。
本実施形態の酸素吸収性多層体の層Bで用いるポリエステルの具体例としては、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種又は二種以上と、グリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上とからなるもの;ヒドロキシカルボン酸及びこれらのエステル形成性誘導体からなるもの;環状エステルからなるもの等が挙げられる。
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等に例示される芳香族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホテレフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホテレフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸等に例示される金属スルホネート基含有芳香族ジカルボン酸又はそれらの低級アルキルエステル誘導体等が挙げられる。
上記のジカルボン酸のなかでも、得られるポリエステルの物理特性等の観点から、特に、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類、及びこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。具体的には、ポリエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体からなる群より選ばれる1種以上のジカルボン酸に由来する単位を有することがより好ましい。なお、必要に応じて他のジカルボン酸を共重合してもよい。上記したこれらの繰り返し単位は、総量で、ポリエステルのジカルボン酸単位の70モル%であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸の具体例としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノ−ル、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加されたグリコール等に例示される芳香族グリコールが挙げられる。
上記のグリコールのなかでも、特に、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを主成分として使用することが好適である。
これらグリコール以外の多価アルコールの具体例としては、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロ−ル、ヘキサントリオール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、又はこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
環状エステルの具体例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチド等が挙げられる。
上記のエステル形成性誘導体の具体例としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物等が挙げられる。
上述したものの中でも、主たる酸成分がテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸類又はそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルが好ましい。
ポリエステルのジカルボン酸単位中の、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上が、テレフタル酸に由来する単位である。かかるポリエステルは、線状ポリエステルであることが好ましい。
ポリエステルのジカルボン酸単位中の、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上が、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する単位である。かかるポリエステルは、線状ポリエステルであることが好ましい。
また、上述した主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。なお、ここで言うアルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいてもよい。
また本実施形態の酸素吸収性多層体の層Bに用いるポリエステルの好ましいその他の例としては、グリコール酸やグリコール酸メチルの重縮合もしくは、グリコリドの開環重縮合にて得られるポリグリコール酸が挙げられる。なお、このポリグリコール酸は、ラクチド等の他成分が共重合されているものであってもよい。
さらに、ポリエステルを含有する樹脂層(層B)は、ポリエステル以外の他の熱可塑性樹脂を更に含有してもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、上述した層Aで使用する、ポリエステル以外の熱可塑性樹脂を用いることができる。他の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、植物由来樹脂、及び塩素系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、本実施形態の層Bに用いる熱可塑性樹脂は、層Bの総量に対して50〜100質量%含むものが好ましく、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器の層Bは、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器において、層Bの厚みは、用途や所望する性能に応じて適宜決定することができ、特に限定されないが、医療用多層容器に要求される落下耐性等の強度や柔軟性等の諸物性を確保するという観点から、50〜10000μmが好ましく、より好ましくは100〜7000μm、さらに好ましくは300〜5000μmである。
また、本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器の層Bは、上記のポリエステル及び熱可塑性樹脂以外に、当業界で公知の各種添加剤を含有していてもよい。かかる任意成分としては、例えば、乾燥剤、酸化チタン等の着色顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、可塑剤、安定剤、滑剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。特に、製造中に発生した端材をリサイクルして再加工する観点から、層Bに酸化防止剤を配合することが好ましい。
[他の層]
本実施形態の酸素吸収性医療用多層体は、所望する性能等に応じて、上述した酸素吸収層(層A)及びポリエステルを含有する樹脂層(層B)の他に、任意の層をさらに含んでいてもよい。そのような任意の層としては、例えば、接着層、金属蒸着層及び有機−無機膜等が挙げられる。
例えば、隣接する2つの層の間の層間接着強度をより高める観点から、当該2つの層の間に接着層(層AD)を設けることが好ましい。接着層は、接着性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂;ポリエステル系ブロック共重合体を主成分としたポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、上述したポリエステルを含有する樹脂層(層B)との接着性を高める観点からは、層Bに用いられている熱可塑性樹脂と同種の樹脂を変性したものが好ましい。なお、接着層の厚みは、特に限定されないが、実用的な接着強度を発揮しつつ成形加工性を確保するという観点から、2〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜90μm、さらに好ましくは10〜80μmである。
また、ガスバリア性をより高める観点からは、上述した層Bの一方の面に金属蒸着層又は有機−無機膜等を設けることが好ましい。金属蒸着層としては、特に限定されないが、内容物視認性を確保するためシリカやアルミナ等の透明蒸着膜が好ましい。なお、蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD等の化学蒸着法等が挙げられるが、これらに特に限定されず、公知の方法を適用可能である。また、蒸着膜の厚みは、ガスバリア性の観点から、5〜500nmが好ましく、より好ましくは5〜200nmである。他方、有機−無機膜層としては、特に限定されないが、ゾルゲル法等から作成されるシリカ−ポリビニルアルコールハイブリッド膜等が好ましい。また、コーティング膜の厚みは、ガスバリア性、遮光性及び耐屈曲性等の観点から、100nm〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜15μmである。
[製造方法等]
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器の製造方法は、各種材料の性状や目的とする形状等に応じて、公知の方法を適用することができ、特に限定されない。各種の射出成形法を適用して、酸素吸収性医療用多層容器を製造することができる。
多層の射出成形法と体を製造することができる。さらに、先ず、層Bを構成する材料を射出し、次いで層Aを構成する材料を単独で射出し、最後に層Bを構成する材料を必要量射出してキャビティーを満たすことにより、5層構造B/A/B/A/Bの多層インジェクション成形体を製造することができる。またさらに、先ず、層B1を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層B2を構成する材料を別の射出シリンダーから、層B1を構成する樹脂と同時に射出し、次に層Aを構成する樹脂を層B1、層B2を構成する樹脂と同時に射出し、次に層B1を構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより、5層構造B1/B2/A/B2/B1の多層インジェクション成形体を製造することができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器の厚みについては、特に限定されないが、酸素吸収性能を高めるとともに医療用容器に要求される諸物性を確保するという観点から、500〜5000μmが好ましく、より好ましくは700〜4000μmであり、さらに好ましくは800〜3000μmである。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器を密封用容器の構成部品の一部として使用することにより、容器内の酸素を吸収して、容器外から容器壁面を透過する或いは侵入する酸素がわずかでもある場合にはこの透過或いは侵入する酸素をも吸収して、保存する内容物品(被保存物)の酸素による変質等を防止することができる。このとき、本実施形態の射出成形体は、それ自体が容器形状に成形されていてもよい。また、得られた射出成形体に二次加工を施すことにより、所望の容器形状に成形することもできる。二次加工としてはブロー成形等が適用可能である。本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器が酸素吸収性能を発現することを考慮すると、アンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ等の保存容器であることが好ましい。
また、射出成形法以外の方法としては、例えば、圧縮成形法により多層成形体を得ることができ、例えば、熱可塑性樹脂溶融物中に酸素吸収性組成物を設け、その溶融塊を雄型に供給するとともに、雌型により圧縮し、圧縮成形物を冷却固化することにより多層成形体を得ることができる。
また、射出成形法、圧縮成形法以外の方法としては、押出ブロー成形法により、多層成形体を得ることができ、例えば、複数の押出機と円筒ダイからなる押出ブロー装置を用いて円筒状パリソンを形成し、該パリソンをチューブ状に押出し、該パリソンを金型で挟み、パリソン下部をピンチオフするとともに融着させ、冷却しないうちに高圧の空気等によってブローして、該パリソンを膨ませることにより多層成形体を得ることができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器の使用態様としては、特に限定されず、種々の用途及び形態で用いることができる。好ましい使用態様としては、例えば、バイアル、アンプル、プレフィルドシリンジ、真空採血管等が挙げられるが、これらに特に限定されない。以下、好ましい使用態様について詳述する。
〔バイアル〕
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、バイアルとして使用することができる。一般的には、バイアルは、ボトル、ゴム栓、キャップから構成され、薬液をボトルに充填後、ゴム栓をして、さらにその上からキャップを巻締めることで、ボトル内が密閉されている。このバイアルのボトル部分に、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器を用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器をバイアルのボトル部分に成形する方法としては、例えば、射出ブロー成形、押出しブロー成形等が好適である。その具体例として、射出ブロー成形方法を以下に示す。例えば、2台以上の射出機を備えた成形機及び射出用金型を用いて、層Aを構成する材料及び層Bを構成する材料をそれぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、射出用金型のキャビティー内に射出することにより、射出用金型のキャビティー形状に対応した形状を有する、3層構造B/A/Bの多層インジェクション成形体を製造することができる。また、先ず、層Bを構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層Aを構成する材料を別の射出シリンダーから、層Bを構成する樹脂と同時に射出し、次に層Bを構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより、3層構造B/A/Bの多層インジェクション成形体を製造することができる。さらに、先ず、層Bを構成する材料を射出し、次いで層Aを構成する材料を単独で射出し、最後に層Bを構成する材料を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより、5層構造B/A/B/A/Bの多層インジェクション成形体を製造することができる。またさらに、先ず、層B1を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層B2を構成する材料を別の射出シリンダーから、層B1を構成する樹脂と同時に射出し、次に層Aを構成する樹脂を層B1、層B2を構成する樹脂と同時に射出し、次に層B1を構成する樹脂を必要量射出してキャビティーを満たすことにより、5層構造B1/B2/A/B2/B1の多層インジェクション成形体を製造することができる。そして、この射出ブロー成形では、上記方法により得られた多層インジェクション成形体をある程度加熱された状態を保ったまま最終形状金型(ブロー金型)に嵌め、空気を吹込み、膨らませて金型に密着させ、冷却固化させることで、ボトル状に成形することができる。
〔アンプル〕
また、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、アンプルとして使用することができる。一般的には、アンプルは、頸部が細く形成された小容器から構成され、薬液を容器内に充填後、頸部の先を熔封することで、容器内が密閉されている。このアンプル(小容器)に本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器を用いることができる。本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器をアンプルに成形する方法としては、例えば、射出ブロー成形、押出しブロー成形等が好適である。
〔プレフィルドシリンジ〕
さらに、本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、プレフィルドシリンジのバレルとして使用することができる。一般的なプレフィルドシリンジバレルの形状は、注射針を接続することができるオス型ルアーテーパのノズル、ノズル基端から円筒部にかけて肩部が形成され、円筒部基端にフランジが形成されたものである。薬剤収容時には前記ノズルをキャップにより封止し、前記円筒部内にはプランジャーが接続されたガスケットを挿入する。このバレルに本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器を用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器をプレフィルドシリンジのバレルに成形する方法としては、例えば、射出成形法が好適である。具体的には、キャビティーのバレルのノズル先端部に設けたゲートから層Bを構成する樹脂をキャビティー内に一定量射出し、次いで層Aを構成する樹脂を一定量射出する。先に射出した層Bを構成する樹脂はキャビティー及びコア金型の壁面により冷却されスキン層を形成し、層Aを構成する樹脂はコア層となりスキン層の間に形成される。その後再び層Bを構成する樹脂を一定量射出することにより、多層インジェクション成形体としてバレルを製造することができる。ここで先に射出する層Bを構成する樹脂の射出量は層Aがバレル内に挿入されるガスケットの挿入予定位置よりも円筒部基端寄りに形成されるように調整されていることが好ましい。ガスケットの挿入予定位置まで酸素吸収層(層A)を形成することによりバレルのバリア性の確保が一層確実になる。また、層Aを構成する樹脂の射出量はキャップ封止予定位置よりもノズル先端寄りに形成されるように調整されていることが好ましい。キャップ封止予定位置まで酸素吸収層(層A)を形成することによりバレルのバリア性の確保が一層確実になる。
プレフィルドシリンジのバレルの容器の厚さは、使用目的や大きさに応じて適宜設定することができ、特に限定されない。一般的には、薬液の長期保存安定性、成型性及びシリンジの操作性の観点から、0.5〜20mm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜5mm程度である。また、厚さは均一であっても、厚さを変えたものであってもいずれでもよい。またバレル表面には、長期保存安定の目的で、他のガスバリア膜や遮光膜がさらに形成されていてもよい。これらの任意の膜及びその形成方法については、例えば、特開2004−323058号公報等に記載されている。
〔真空採血管〕
また、本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器は、真空採血管として使用することができる。一般的には、真空採血管は、管状体及び栓体から構成されている。この管状体に、本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器を用いることができる。
本実施形態の酸素吸収性医療用多層容器を真空採血管の管状体に成形する方法としては、例えば、射出成形法が好適である。具体的には、先ず層Bを構成する樹脂を射出用金型のキャビティー内に一定量射出し、次いで層Aを構成する樹脂を一定量射出し、再び層Bを構成する樹脂を一定量射出することにより、多層インジェクション成形体として管状体を製造することができる。
〔被保存物〕
本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器に充填される被保存物(充填物)は、特に限定されない。例えば、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等のビタミン剤、アトロピン等のアルカロイド、アドレナリン、インシュリン等のホルモン剤、ブドウ糖、マルトース等の糖類、セフトリアキソン、セファロスポリン、シクロスポリン等の抗生物質、オキサゾラム、フルニトラゼパム、クロチアゼパム、クロバザム等のベンゾジアゼピン系薬剤等、任意の天然物や化合物を充填可能である。本実施形態の酸素吸収性医療用多層成形容器は、これらの天然物や化合物を充填した場合、これらの天然物や化合物の吸着量が少なく、またこれらの酸化による変質を抑制することができる。
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、特に記載が無い限り、NMR測定は室温で行った。
(合成例1)テトラリン環を有するジエステル化合物A
温度計、分縮器、全縮器、撹拌装置を備えた反応器に、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル248g(1.0mol)、n−ヘキシルアルコール409g(4.0mol)、テトラブチルチタネート0.34gを仕込み、窒素雰囲気下で150℃まで昇温し、生成するメタノールを系外へ除きながら反応を行った。メタノールの生成が止まった後、室温まで冷却し、未反応のn−ヘキシルアルコールを減圧除去することにより、ジエステル化合物Aを得た。示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「DTG―60」)を用いて、得られた化合物の3%重量減少温度を測定した。得られた化合物の構造式及び分子量、3%重量減少温度を表1に示す。なお、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CDCl3)δ7.73−7.79(2H m)、7.16(1H d)、4.29(2H t)、4.10(2H t)、3.01−3.08(2H m)、2.82−2.97(2H m)、2.70−2.78(1H m)、2.18−2.24(1H m)、1.84−1.94(1H m)、1.71−1.79(2H m)、1.58−1.68(2H m)、1.25−1.48(12H m)、0.90(6H t)。
(合成例2)テトラリン環を有するジエステル化合物B
n−ヘキシルアルコールに代えてn−オクチルアルコールを用い、その配合量を521g(4.0mol)とし、反応温度を190℃とすること以外は、合成例1と同様の操作を行い、ジエステル化合物Bを得た。示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「DTG―60」)を用いて、得られた化合物の3%重量減少温度を測定した。得られた化合物の構造式及び分子量、3%重量減少温度を表1に示す。なお、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CDCl3)δ7.68−7.74(2H m)、7.10(1H d)、4.23(2H t)、4.04(2H t)、2.92−3.00(2H m)、2.72−2.89(2H m)、2.63−2.70(1H m)、2.10−2.18(1H m)、1.76−1.85(1H m)、1.63−1.72(2H m)、1.50−1.59(2H m)、1.09−1.40(20H m)、0.90(6H t)。
(合成例3)テトラリン環を有するジエステル化合物C
1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチルに代えて1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,8−ジカルボン酸ジメチルを用いた以外は、合成2と同様の操作を行い、ジエステル化合物Cを得た。示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「DTG―60」)を用いて、得られた化合物の3%重量減少温度を測定した。得られた化合物の構造式及び分子量、3%重量減少温度を表1に示す。なお、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CDCl3)δ7.78(1H d)、7.17−7.29(2H m)、4.50(1H t)、4.22(2H t)、3.98−4.12(2H m)、2.76−2.93(2H m)、2.21−2.30(1H m)、1.89−1.99(1H m)、1.67−1.83(4H m)、1.50−1.63(3H m)、1.18−1.44(19H m)、0.89(6H t)。
(合成例4)テトラリン環を有するジエステル化合物D
合成例1で使用した反応器に、アジピン酸ジメチル108g(0.62mmol)、6−ヒドロキシメチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン300g(1.85mmol)を仕込み、130℃まで昇温した。チタンテトラブトキシド0.58gを添加した後に、200℃まで昇温し、生成するメタノールを系外へ除きながら反応を行った。メタノールの生成が止まった後、室温まで冷却し、未反応の6−ヒドロキシメチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンを減圧除去した後に、再結晶により、ジエステル化合物Dを得た。示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「DTG―60」)を用いて、得られた化合物の3%重量減少温度を測定した。得られた化合物の構造式及び分子量、3%重量減少温度を表1に示す。なお、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CDCl3)δ7.00(6H m)、5.02(4H s)、2.70−2.79(8H m)、2.34(4H t)、1.74−1.83(8H m)、1.64−1.70(4H m)。
(合成例5)テトラリン環を有するジアミド化合物E
温度計、撹拌装置を備えた2000mLオートクレーブに1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル248g(1.0mol)、n−ヘキシルアミン607g(6.0mol)を仕込み、窒素置換した後、220℃まで昇温し5時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、ろ過し、再結晶によりジアミド化合物Eを得た。示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「DTG―60」)を用いて、得られた化合物の3%重量減少温度を測定した。得られた化合物の構造式及び分子量、3%重量減少温度を表1に示す。なお、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CDCl3)δ7.42(1H s)、7.37(1H d)、7.04(1H d)、5.99(1H m)、5.53(1H m)、3.32−3.41(2H m)、3.15−3.24(2H m)、2.68−3.03(4H m)、2.35−2.43(1H m)、1.97−2.05(1H m)、1.76−1.87(1H m)、1.17−1.58(12H m)、0.83(6H t)。
(合成例6)テトラリン環を有する酸無水物F
内容積18Lオートクレーブに、1,8−ナフタル酸無水物1.8kg、5重量%パラジウムを活性炭に担持させた触媒(乾燥品)300g、酢酸エチル7.5kgを仕込んだ。室温で、オートクレーブ内を窒素1MPaで2回置換し、次いで水素1MPaで2回置換した。その後常圧まで落圧した後、内温80℃に昇温し、水素で5MPaまで加圧し、同温度、同圧力で500rpmで2時間攪拌した。反応後、室温まで冷却し、水素を放出し、窒素1MPaで2回置換した後、触媒を濾別し、触媒をアセトン1.0kgで3回洗浄した。得られた母液から溶媒をエバポレーターにより減圧除去して、粗生成物を得た。得られた組成生物を再結晶することにより酸無水物Fを得た。示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製、商品名「DTG―60」)を用いて、得られた化合物の3%重量減少温度を測定した。得られた化合物の構造式及び分子量、3%重量減少温度を表1に示す。なお、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CDCl3)δ7.98(1H d)、7.47(1H d)、7.38(1H dd)、3.93(1H t)、2.80−3.00(2H m)、2.55−2.64(1H m)、2.14−2.24(1H m)、1.77−1.94(2H m)。
(実施例1)
直径37mmのスクリューを2本有する2軸押出機を用いて、エチレン−ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製、商品名「エバールL171B」、以下、「EVOH」とも略する。)95質量部に対し、ジエステル化合物A5質量部、及び、コバルト量が0.05質量部となるようステアリン酸コバルト(II)を220℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることで酸素吸収性組成物(1)を得た。次いで、下記に示すとおり、この酸素吸収性組成物(1)を用いて、酸素吸収性医療用多層成形体であるバイアルを製造した。その後、得られたバイアルの性能評価を、以下に示すとおりに行った。評価結果を表2に示す。
[バイアルの製造]
下記の条件により、ポリエステルを含有する樹脂層(層B)を構成するポリエステルを射出シリンダーから射出し、次いで酸素吸収層(層A)を構成する酸素吸収性組成物(1)を別の射出シリンダーから、層Bを構成するポリエステルと同時に射出し、次に層Bを構成するポリエステルを必要量射出して射出金型内キャビティーを満たすことにより、B/A/Bの3層構成の射出成形体を得た。その後、得られた射出成形体を所定の温度まで冷却し、ブロー金型へ移行し、ブロー成形を行うことで、バイアル(ボトル部)を製造した。ここで、バイアルの総質量は24gとし、層Aの質量はバイアルの総質量の30質量%とした。また、層Bを構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本ユニペット株式会社製、商品名「RT−553C」、以下「PET」とも略する。)を使用した。
(バイアルの形状)
全長89mm、外径40mmφ、肉厚1.8mmとした。なお、バイアルの製造には、射出ブロー一体型成形機(UNILOY製、型式:IBS 85、4個取り)を使用した。
(バイアルの成形条件)
層A用の射出シリンダー温度:220℃
層B用の射出シリンダー温度:280℃
射出金型内樹脂流路温度 :280℃
ブロー温度 :150℃
ブロー金型冷却水温度 : 15℃
[バイアルの性能評価]
得られたバイアルの酸素透過率の測定、成形後の外観評価、落下試験、溶出試験について、以下の方法及び基準にしたがって測定し、評価した。
(1)バイアルの酸素透過率(OTR)
23℃、成形体外部の相対湿度50%、成形体内部の相対湿度100%の雰囲気下にて、測定開始から30日目の酸素透過率を測定した。測定は、酸素透過率測定装置(MOCON社製、商品名「OX−TRAN 2−21 ML」)を使用した。測定値が低いほど、酸素バリア性が良好であることを示す。なお、測定の検出下限界は酸素透過率5×10−5mL/(0.21atm・day・package)である。
(2)成形後の外観
バイアルの内容物視認性を目視にて観察した。視認性に問題ないものを合格とした。
(3)落下試験
バイアルを40℃、90%RH下にて1カ月保存した後、純水50mLを満杯充填し、その後、ゴム栓及びアルミキャップにて密封した。このようにして得られた密封容器を2mの高さから落下させ、そのときの容器外観を調査した。なお、落下試験は、20個の容器を用意し、これらについて同様の条件で試験した。
(4)溶出試験
バイアルを40℃、90%RH下にて1カ月保存した後、純水50mLを満杯充填し、その後、ゴム栓及びアルミキャップにて密封した。このようにして得られた密封容器を40℃、60%RH下にて4カ月保存し、その後、純水中のトータルカーボン量(以下、TOC)を測定した。
(TOC測定)
装置 ;株式会社島津製作所製 TOC−VCPH
燃焼炉温度 ;720℃
ガス・流量 ;高純度空気、TOC計部150mL/min
注入量 ;150μL
検出限界 ;1μg/mL
(実施例2)
ジエステル化合物Aをジエステル化合物Bに代えた以外は、実施例1と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例3)
ジエステル化合物Aをジエステル化合物Cに代えた以外は、実施例1と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例4)
ジエステル化合物Aをジエステル化合物Dに代えた以外は、実施例1と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例5)
ジエステル化合物Aをジアミド化合物Eに代えた以外は、実施例1と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例6)
ジエステル化合物Aを酸無水物Fに代えた以外は、実施例1と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例7)
EVOHを非晶ポリアミド(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、商品名「NOVAMID X21−F07」、以下、「6IT」とも略する。)に代え、層A用の射出シリンダー温度を260℃とした以外は、実施例1と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例8)
ジエステル化合物Aをジエステル化合物Bに代えた以外は、実施例7と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例9)
ジエステル化合物Aをジエステル化合物Cに代えた以外は、実施例7と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例10)
ジエステル化合物Aをジエステル化合物Dに代えた以外は、実施例7と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例11)
ジエステル化合物Aをジアミド化合物Eに代えた以外は、実施例7と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例12)
ジエステル化合物Aを酸無水物Fに代えた以外は、実施例7と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例1)
ジエステル化合物A及びステアリン酸コバルトを用いなかった以外は、実施例1と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。これらの結果を表2に示す。
(比較例2)
ジエステル化合物A及びステアリン酸コバルトを用いなかった以外は、実施例7と同様にして多層バイアルを作製して、実施例1と同様の評価を行った。これらの結果を表2に示す。
(比較例3)
ナイロンMXD6(三菱ガス化学株式会社製、商品名「S7007」)100質量部に対し、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量が0.04質量部となるようドライブレンドして得られた混合物を、直径37mmのスクリューを2本有する2軸押出機に15kg/hの速度で供給し、シリンダー温度280℃の条件にて溶融混練を行い、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、酸素吸収性組成物(M)を得た。酸素吸収性組成物(1)に代えてこの酸素吸収性組成物(M)を用い、層B用の射出シリンダー温度を260℃とした以外は、実施例1と同様に行い、バイアルを製造した。得られたバイアルの性能評価を実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例1〜12のバイアルは、比較例1〜3に対し、酸素透過率を低減することができ、容器内部の視認性が確保され、長期保存後も良好な強度を維持し、容器から内容物への溶出量も低いことが確認された。さらに、実施例1〜6、11、12のバイアルは、透明性に優れ、内容物視認性が非常に良好であることが確認された。