JP2023177910A - バイオ医薬品の保存方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バイオ医薬品の変質・薬効低下や不純物混入を阻止し、また、保管後の容器の色調変化が小さく内容物視認性の良好な容器を用いた、バイオ医薬品の保存方法を提供すること。【解決手段】バイオ医薬品を容器に保存する方法であって、前記容器は、ポリエステル化合物(a)及び遷移金属触媒を含有する樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、前記層Aの両側に積層したポリオレフィン(b)を含有する樹脂層(層B)と、を含む、少なくとも3層を含有する多層構造の容器であり、 前記ポリエステル化合物(a)が、ポリエステル化合物(a)における式(1)、式(2)及び式(3)で表される構成単位の合計100モル%に対して、式(1)で表される構成単位を30~55モル%、式(2)で表される構成単位を15~40モル%、式(3)で表される構成単位を20~40モル%含有する、バイオ医薬品の保存方法。【選択図】なし

Description

本発明は、バイオ医薬品を、酸素バリア性能および酸素吸収性能を有する多層容器内に保存するバイオ医薬品の保存方法に関する。
従来、薬液を密閉状態で充填、保管する為の医療用包装容器として、ガラス製のアンプル、バイアル、プレフィルドシリンジ等が使用されてきた。しかしながら、ガラス製容器は、薬剤等が充填された状態での保管中に容器の内容液にナトリウムイオン等が溶出する、フレークスという微細な物質を発生する、着色した遮光性ガラス製容器を使用する場合に着色用の金属が内容物に混入する、割れやすい、などの問題があった。また、充填後の容器内部に残存する酸素により薬剤が劣化する問題があった。更に、比重が大きい為に医療用包装容器が重くなってしまうという問題点があり、代替材料の開発が期待されていた。
プラスチックは、ガラスに比べて軽量であり、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等が、医療用包装容器に用いるガラス代替のプラスチックとして検討されているが、酸素バリア性、水蒸気バリア性、薬液吸着性が要求を満たせず、代替が進んでいないのが現状である。プラスチックは、ガラス製及び金属製容器と異なり、酸素を透過する性質があり、薬液の保存性に問題がある。このようなプラスチックからなる容器にガスバリア性を付与するために、ガスバリア層を中間層として有する多層容器が提案されている。
特許文献1においては、バレルの最内層と最外層がポリオレフィン系樹脂からなり、中間層に酸素バリア性に優れた樹脂を使用し、酸素バリア性を向上させたプレフィルドシリンジが提示されている。
上記の他にも、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミド(以下、ナイロンMXD6と称することがある)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、アルミ箔、カーボンコート、無機酸化物蒸着等のガスバリア層を構成材料として積層する方法が知られている。
近年、ナイロンMXD6に少量の遷移金属化合物を添加、混合して、酸素吸収機能を付与し、これを容器や包装材料を構成する酸素バリア材料として利用することで、外部から透過する酸素や、容器内部に残存する酸素を吸収することにより、従来の酸素バリア性熱可塑性樹脂を利用した容器以上に内容物の保存性を高める方法が実用化されつつある(特許文献2参照)。
一方、容器内の酸素を除去するため、酸素吸収剤や酸素吸収性樹脂を使用することは従来から知られている。例えば、樹脂と遷移金属触媒からなり、酸素捕捉特性を有する酸素吸収性樹脂組成物が知られている。酸化可能有機成分としては、ポリアミド、特にキシリレン基含有ポリアミドと遷移金属触媒からなる樹脂組成物が知られており、さらに酸素捕捉機能を有する樹脂組成物やその樹脂組成物を成形して得られる酸素吸収剤、包装材料、包装用多層積層フィルム、多層容器の例示もある(特許文献3及び4参照)。
また、キシリレン基含有ポリアミドと遷移金属触媒からなる樹脂組成物以外の酸素吸収樹脂組成物として、炭素-炭素不飽和結合を有する樹脂と遷移金属触媒からなる酸素吸収樹脂組成物が知られている(特許文献5参照)。
さらに、酸素を捕集する組成物として、置換されたシクロヘキセン官能基を含むポリマーまたは該シクロヘキセン環が結合した低分子量物質と遷移金属とからなる組成物が知られている(特許文献6参照)。
本出願人はテトラリン環を有する酸素吸収性樹脂組成物を提案している(特許文献7参照)。
特開2004-229750号公報 特開平2-500846号公報 特開2001-252560号公報 特開2009-108153号公報 特開平05-115776号公報 特表2003-521552号公報 特許第6124114号
しかしながら、特許文献1のプレフィルドシリンジでは、酸素を完全に遮断するには酸素バリア性は不十分であり、また、容器の内容物の上部に存在するヘッドスペースの気体中の残存酸素を除去することは不可能であるという問題がある。
また、特許文献2や3の樹脂組成物は、遷移金属触媒を含有させてキシリレン基含有ポリアミド樹脂を酸化させることで酸素吸収機能を発現させるものであるため、樹脂の酸化劣化による強度低下が発生し、包装容器そのものの強度が低下するという問題や、多層容器の場合は層間剥離を発生するという問題を有している。特許文献4では層間剥離の改善方法が記載されているが、効果は限定的である。さらに、この樹脂組成物は、未だ酸素吸収性能が不十分であり、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、といった課題を有している。
さらに、特許文献5の酸素吸収樹脂組成物は、樹脂の酸化にともなう高分子鎖の切断により臭気成分となる低分子量化合物が生成し、酸素吸収後にこの低分子量化合物が容器内に溶出する可能性がある。
特許文献6の組成物は、シクロヘキセン官能基を含む特殊な材料を用いる必要があり、また、この材料は比較容易に低分子量化合物を生成するという問題がある。
特許文献7のテトラリン環を有する酸素吸収性樹脂組成物は酸素吸収後の臭気発生が無く、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下で優れた酸素吸収性能を有するが、酸素吸収後に黄色化し、包装材料として使用した際に外観が悪化するという課題がある。
特にバイオ医薬品を保存する場合、バイオ医薬品の変質・薬効低下や不純物混入を阻止することが重要であり、また、内容物の視認性を確保するために容器の色調変化を抑えることも重要な課題である。
上記事情に鑑み、本発明は、バイオ医薬品の変質・薬効低下や不純物混入を阻止し、また、保管後の容器の色調変化が小さく内容物視認性の良好な容器を用いた、バイオ医薬品の保存方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、バイオ医薬品の保存方法について鋭意検討を進めた結果、バイオ医薬品を、所定の構造を有するポリエステル化合物と遷移金属触媒を含む多層構造容器に保存することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。

[1]
バイオ医薬品を容器に保存する方法であって、
前記容器は、ポリエステル化合物(a)及び遷移金属触媒を含有する樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、前記層Aの両側に積層したポリオレフィン(b)を含有する樹脂層(層B)と、を含む、少なくとも3層を含有する多層構造の容器であり、 前記ポリエステル化合物(a)が、ポリエステル化合物(a)における下記式(1)、式(2)及び式(3)で表される構成単位の合計100モル%に対して、下記式(1)で表される構成単位を30~55モル%、下記式(2)で表される構成単位を15~40モル%、下記式(3)で表される構成単位を20~40モル%含有する、
バイオ医薬品の保存方法。
Figure 2023177910000001
Figure 2023177910000002
Figure 2023177910000003
(上記式(1)~(3)中、nは繰り返し単位の量を表し、それぞれ、前記式(1)で表される構成単位、前記式(2)で表される構成単位及び前記式(3)で表される構成単位の組成比に対応する。)
[2]
前記ポリエステル化合物(a)が、(i)前記式(1)、式(2)及び式(3)で表される構成単位の合計100モル%に対して、前記式(1)で表される構成単位を40~50モル%、前記式(2)で表される構成単位を20~35モル%、前記式(3)で表される構成単位を25~35モル%含有し、かつ、(ii)前記ポリエステル化合物(a)の全構成単位100モル%に対して、前記式(1)~(3)で表される構成単位の合計が95モル%以上である、上記[1]記載のバイオ医薬品の保存方法。
[3]
前記遷移金属触媒が、コバルト、ニッケル及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属を含む触媒である、上記[1]又は[2]に記載のバイオ医薬品の保存方法。
[4]
前記遷移金属触媒が、前記ポリエステル化合物(a)の質量を基準として、遷移金属量として0.5~5ppm含まれる、上記[1]又は[2]に記載のバイオ医薬品の保存方法。
[5]
前記ポリオレフィン(b)が、シクロオレフィンコポリマー又はシクロオレフィンポリマーである、上記[1]又は[2]に記載のバイオ医薬品の保存方法。
本発明のバイオ医薬品の保存方法は、バイオ医薬品の変質・薬効低下や不純物混入を阻止し、また、保管後の容器の色調変化が小さく内容物視認性も良好であるという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。また、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。

本実施形態のバイオ医薬品の製造方法は、
バイオ医薬品を容器に保存する方法であって、
前記容器は、ポリエステル化合物(a)及び遷移金属触媒を含有する樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、前記層Aの両側に積層したポリオレフィン(b)を含有する樹脂層(層B)と、を含む、少なくとも3層を含有する多層構造の容器であり、 前記ポリエステル化合物(a)が、ポリエステル化合物(a)における下記式(1)、式(2)及び式(3)で表される構成単位の合計100モル%に対して、下記式(1)で表される構成単位を30~55モル%、下記式(2)で表される構成単位を15~40モル%、下記式(3)で表される構成単位を20~40モル%含有する、方法である。
Figure 2023177910000004
Figure 2023177910000005
Figure 2023177910000006
(上記式(1)~(3)中、nは繰り返し単位の量を表し、それぞれ、前記式(1)で表される構成単位、前記式(2)で表される構成単位及び前記式(3)で表される構成単位の組成比に対応する。)
本実施形態における保存方法によれば、バイオ医薬品を低酸素濃度下で保存できるため、バイオ医薬の変質や薬効の低下を抑制することができる。また、本実施形態で用いる容器は、酸素吸収後の低分子の有機物の発生が抑制されているため、内容物への不純物の混入を防止することが可能である。また、本実施形態における容器は酸素吸収後も酸化によるポリエステル化合物の劣化が極めて小さく、長期の利用においても容器の強度が維持されるため、バイオ医薬品を長期間保存することができる。また、保管後の容器の色調変化が小さいため内容物視認性も良好である。
[酸素吸収層(層A)]
本実施形態の容器を構成する酸素吸収層(層A)は、ポリエステル化合物(a)及び遷移金属触媒を含有する樹脂組成物からなる。
<ポリエステル化合物>
本実施形態の酸素吸収層(層A)を構成する樹脂組成物に含まれるポリエステル化合物(a)は、上記式(1)~(3)で表される構成単位を含有するものである。ここで「構成単位を含有する」とは、化合物中に当該構成単位を1以上有することを意味する。上記構成単位は上記構成単位と他の構成単位のランダムコポリマー、上記構成単位のブロックコポリマーのいずれであっても構わない。
ポリエステル化合物(a)は、ポリエステル化合物(a)における上記式(1)、式(2)及び式(3)で表される構成単位の合計100モル%に対して、上記式(1)で表される構成単位を30~55モル%、上記式(2)で表される構成単位を15~40モル%、上記式(3)で表される構成単位を20~40モル%含有する。前記範囲とすることで優れた酸素バリア性能を有し、容器の黄色化による外観悪化を抑制することができる。
上記同様の観点から、ポリエステル化合物(a)は、(i)前記ポリエステル化合物(a)における上記式(1)、式(2)及び式(3)で表される構成単位の合計100モル%に対して、上記式(1)で表される構成単位が40~50モル%、上記式(2)で表される構成単位が20~35モル%、前記式(3)で表される構成単位が25~35モル%であることが好ましく、かつ、(ii)前記ポリエステル化合物(a)の全構成単位100モル%に対して、上記式(1)~(3)で表される構成単位の合計が95モル%以上であることが好ましい。
式(1)~(3)で表される構成単位の含有量は、重クロロホルム中、1H-NMRによって測定することができる。
上記式(1)の構成単位が30モル%未満であるとポリエステル化合物(a)の酸素バリア性が低下する。また、上記式(1)の構成単位が55モル%を超えるとポリエステル化合物の酸素吸収性能が低下する。
上記式(2)の構成単位が15モル%未満であるとポリエステル化合物(a)の酸素吸収性能が低下する。また、上記式(2)の構成単位が40モル%を超えると黄色化による外観悪化が促進される。
上記式(3)の構成単位が20モル%未満であるとポリエステル化合物(a)の酸素バリア性が低下する。また、上記式(3)の構成単位が40モル%を超えると低分子成分が増加し、成形時のブリードやモールドデポ発生の原因となる。
本実施形態における上記式(1)~(3)で表される構成単位を含有するポリエステル化合物(a)の製造方法は特に制限されず、従来公知のポリエステルの製造方法をいずれも適用することができる。ポリエステルの製造方法としては、例えば、エステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法、または溶液重合法等が挙げられる。これらの中でも、原料入手の容易さの点から、エステル交換法、または直接エステル化法が好適であり、2,6-ナフタレンジカルボン酸またはその誘導体(I)と、2,6-テトラリンジカルボン酸またはその誘導体(II)と、イソフタル酸またはその誘導体(III)と、エチレングリコールまたはその誘導体(IV)とを重縮合することによって得ることができる。
ポリエステル化合物(a)の製造時に用いるエステル交換触媒、エステル化触媒、重縮合触媒等の各種触媒、エーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等も従来公知のものをいずれも用いることができ、これらは反応速度やポリエステル化合物の色調、安全性、熱安定性、耐候性、自身の溶出性などに応じて適宜選択される。例えば上記各種触媒としては、亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタン、スズ等の金属の化合物(例えば、脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物、アルコキシド)や金属マグネシウムなどが挙げられ、これらは単独で用いることもできるし、複数のものを組み合わせて用いることもできる。
本実施形態のポリエステル化合物(a)の極限粘度(フェノールと1,1,2,2-テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒を用いた25℃での測定値)は特に限定されないが、ポリエステル化合物の成形性の面から、0.5~1.5dL/gが好ましく、0.8~1.2dL/gがより好ましい。
本実施形態におけるポリエステル化合物(a)は、その性能に影響しない程度であれば、上記式(1)~(3)で表される構成単位以外の任意の構成単位を含んでいてもよい。そのような任意の構成単位の具体例としては、以下に限定されないが、前述した単位以外のジカルボン酸又はその誘導体及びジオール又はその誘導体に由来する単位が挙げられる。ポリエステル化合物(a)における任意の構成単位の含有量としては、特に限定されないが、前記ポリエステル化合物(a)の全構成単位100モル%に対して、5モル%未満であることが好ましい。
任意の構成単位としてのジオール又はその誘導体としては、以下に限定されないが、例えば、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6-デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7-デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール等の脂環式ジオール類、又はこれらの誘導体等が挙げられる。上記ジオール又はその誘導体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
任意の構成単位としてのジカルボン酸又はその誘導体としては、以下に限定されないが、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸類、フタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸類、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類、又はこれらの誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸又はその誘導体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
<遷移金属触媒>
本実施形態の層Aを構成する樹脂組成物に含まれる遷移金属触媒としては、上記ポリエステル化合物(a)の酸化反応の触媒として機能し得るものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができる。ポリエステル化合物の酸化反応による酸素吸収を介して、酸素バリア性を向上させることができる。特に限定するものではないが、遷移金属触媒に含まれる遷移金属は、周期表の4及び8~11族の金属であることが好ましい。少量で効果を発揮するためには、周期表の8~11族の金属であることがより好ましい。
かかる遷移金属触媒の具体例としては、例えば、遷移金属の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。ここで、遷移金属触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、遷移金属触媒は、コバルト、ニッケル及び銅からなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属触媒を含むことが好ましい。また、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタノイック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2-エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属触媒は、これらの遷移金属と有機酸とを組み合わせたものが好ましく、遷移金属がコバルト、ニッケル又は銅であり、有機酸が酢酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸又はナフテン酸である組み合わせがより好ましい。なお、遷移金属触媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
遷移金属触媒の配合量は、使用する前記ポリエステル化合物や遷移金属触媒の種類及び所望の性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。層Aの酸素吸収量及び外観の観点から、遷移金属触媒の遷移金属(好ましくは周期表の8~11族の金属、より好ましくはコバルト、ニッケル又は銅)の量(2種以上の遷移金属を使用する場合にはそれらの合計量)は、前記ポリエステル化合物(a)の質量を基準として、0.5~10ppmであることが好ましく、さらに好ましくは1~5ppm、特に好ましくは1.5~3ppmである。なお、ポリエステル化合物の製造に遷移金属触媒を使用し、これが樹脂組成物に残存している場合には、残存触媒に含まれる遷移金属の量も前記数値範囲に包含される。遷移金属の量及び種類は、誘導結合プラズマ質量分析法や蛍光X線分析法によって測定することができる。
遷移金属の量が0.5ppm以上であると、酸素吸収性能がより向上する傾向にある。遷移金属の量が10ppm以下であると、黄色化がより抑制される傾向にある。
ポリエステル化合物(a)及び遷移金属触媒は、公知の方法で混合することができるが、好ましくは押出機により混練することにより、分散性の良い樹脂組成物として使用することができる傾向にある。また、層Aを構成する樹脂組成物には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、乾燥剤、顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等を添加してもよいが、上記に示したものに限定されることなく、種々の材料を混合することができる。
なお、本実施形態の層Aを構成する樹脂組成物には、酸素吸収反応を促進させるために、必要に応じて、さらにラジカル発生剤や光開始剤を含有していてもよい。ラジカル発生剤の具体例としては、各種のN-ヒドロキシイミド化合物が挙げられ、例えば、N-ヒドロキシコハクイミド、N-ヒドロキシマレイミド、N,N’-ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N-ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N-ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、3-スルホニル-N-ヒドロキシフタルイミド、3-メトキシカルボニル-N-ヒドロキシフタルイミド、3-メチル-N-ヒドロキシフタルイミド、3-ヒドロキシ-N-ヒドロキシフタルイミド、4-ニトロ-N-ヒドロキシフタルイミド、4-クロロ-N-ヒドロキシフタルイミド、4-メトキシ-N-ヒドロキシフタルイミド、4-ジメチルアミノ-N-ヒドロキシフタルイミド、4-カルボキシ-N-ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4-メチル-N-ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N-ヒドロキシヘット酸イミド、N-ヒドロキシハイミック酸イミド、N-ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N-ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノンとその誘導体、チアジン染料、金属ポルフィリン誘導体、アントラキノン誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらのラジカル発生剤及び光開始剤は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本実施形態の層Aを構成する樹脂組成物は、本実施形態の目的を阻害しない範囲で、ポリエステル化合物(a)以外の他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、あるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムまたはブロック共重合体等のポリオレフィン、無水マレイン酸グラフトポリエチレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン-ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、α-メチルスチレン-スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル等あるいはこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも酸素吸収効果を効果的に発揮する観点からは、ポリエステル、ポリアミド及びエチレン-ビニルアルコール共重合体などの高酸素バリア性の樹脂がより好ましい。なお、層Aが、上述したポリオレフィンを含有する場合、後述する層Bとは、ポリエステル化合物(a)を含むか否かにより区別することができる。
酸素吸収層(層A)の厚みは特に制限はないが、10~1000μmが好ましく、50~700μmがより好ましく、100~500μmが特に好ましい。層Aの厚みを前記範囲とすることで、酸素を吸収する性能をより高めることができるとともに経済性が損なわれることを防止することが可能となる傾向にある。
[樹脂層(層B)]
本実施形態の樹脂層(層B)は、ポリオレフィン(b)を含有する層である。層Bにおけるポリオレフィン(b)の含有率は特に限定されないが、層Bの総量に対するポリオレフィン(b)の含有率が、70~100質量%であることが好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が特に好ましい。層Bにおけるポリオレフィン(b)の含有率を前記範囲とすることで、層Bの透明性、成形性、水蒸気バリア性を高めることができる傾向にある。
<ポリオレフィン(b)>
層Bに含まれるポリオレフィン(b)としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン等の、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1等のオレフィン単独重合体;エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレン-ポリブテン-1共重合体、エチレン-環状オレフィン共重合体等のエチレンとα-オレフィンとの共重合体;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等のエチレン-α,β-不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン-α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン-α,β-不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のその他のエチレン共重合体;環状オレフィン類開環重合体及びその水素添加物;環状オレフィン類-エチレン共重合体;および、これらのポリオレフィンを無水マレイン酸等の酸無水物等でグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン等を挙げることができる。
ポリオレフィン(b)として特に好ましいのは、ノルボルネンとエチレン等のオレフィンを原料とした共重合体、およびテトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンを原料とした共重合体であるシクロオレフィンコポリマー(COC)であり、また、ノルボルネンを開環重合し、水素添加した重合物であるシクロオレフィンポリマー(COP)も好ましい。このようなCOCおよびCOPは、例えば特開平5-300939号公報あるいは特開平5-317411号公報に記載されたものを用いることができる。
COCおよびCOPとしては市販品を用いることもでき、COCは、例えば三井化学株式会社製、アペル(登録商標)として市販されており、COPは、例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオネックス(登録商標)又はゼオノア(登録商標)や、株式会社大協精工製、Daikyo Resin CZ(登録商標)として市販されている。
COCおよびCOPは、耐熱性や耐光性などの化学的性質や耐薬品性はポリオレフィン樹脂としての特徴を示し、機械特性、溶融、流動特性、寸法精度などの物理的性質は非晶性樹脂としての特徴を示すことから好ましい材料である。
本実施形態の容器は層Bを複数有しており、複数の層Bの構成は互いに同一であっても異なっていてもよい。層Bの厚みは、用途に応じて適宜決定することができ、容器に要求される落下耐性等の強度や柔軟性等の諸物性を確保するという観点からは、好ましくは30~1500μm、より好ましくは50~1000μm、特に好ましくは100~700μmである。
[容器]
本実施形態におけるバイオ医薬品保存方法に用いる容器は、ポリエステル化合物(a)及び遷移金属触媒を含有する樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、前記層Aの両側に積層したポリオレフィン(b)を含有する樹脂層(層B)と、を含む、少なくとも3層を含有する多層構造の容器である。
本実施形態におけるバイオ医薬品を保存するための容器は、酸素吸収層(層A)及びポリオレフィンを含有する樹脂層(層B)に加えて、所望する性能等に応じてその他の任意の層を含んでいてもよい。その他層は、容器において、層A及び層Bと区別できるように積層されていれば、層A及び層Bの組成と同一であっても異なっていてもよい。そのような任意の層としては、例えば、接着層等が挙げられる。
本実施形態における容器において、隣接する2つの層の間で実用的な層間接着強度が得られない場合には、当該2つの層の間(例えば、層Aと層Bの間)に接着剤層(AD)を設けることが好ましい。接着層は、接着性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル系ブロック共重合体を主成分としたポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。接着層としては、接着性の観点から、層Bとして用いられているポリオレフィン(b)と同種の樹脂を変性したものを用いることが好ましい。接着層の厚さは、実用的な接着強度を発揮しつつ成形加工性を確保するという観点から、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~90μm、更に好ましくは10~80μmである。
本実施形態の容器の製造方法及び層構成については、層Aの両側に層Bが積層されていれば特に限定されず、通常の射出成形法により製造することができる。例えば、2台以上の射出機を備えた成形機及び射出用金型を用いて、層Aを構成する材料及び層Bを構成する材料をそれぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通してキャビティー内に射出して、射出用金型の形状に対応した容器を製造することができる。また、先ず、層Bを構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層Aを構成する材料を別の射出シリンダーから、層Bを構成する材料と同時に射出し、次に層Bを構成する材料を必要量射出してキャビティーを満たすことにより3層構成B/A/Bの容器が製造できる。
また、先ず、層Bを構成する材料を射出し、次いで層Aを構成する材料を単独で射出し、最後に層Bを構成する材料を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより、5層構成B/A/B/A/Bの容器が製造できる。
また、先ず、層B1を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層B2を構成する材料を別の射出シリンダーから、層B1を構成する材料と同時に射出し、次に層Aを構成する材料を層B1、層B2を構成する材料と同時に射出し、次に層B1を構成する材料を必要量射出してキャビティーを満たすことにより5層構成B1/B2/A/B2/B1の容器が製造できる。得られた成形体の口頸部に耐熱性を与えるため、この段階で口頸部を熱処理により結晶化させてもよい。結晶化度は好ましくは30~50%、より好ましくは35~45%である。なお、結晶化は後述する二次加工を施した後に実施してもよい。
本実施形態のバイオ医薬品を保存するための容器の形状は特に限定されるものではないが、例えば、バイアル、アンプル、プレフィル用シリンジが挙げられる。
<バイアル>
本実施形態のバイアルの構成は、一般的なバイアルと同様であり、ボトル、ゴム栓、キャップから構成されていてもよい。薬液をボトルに充填後、ゴム栓をして、更にその上からキャップを巻締めることで密閉して用いられる。前記ボトル部分が、本実施形態で用いられる容器であって、中間層の少なくとも一層が酸素吸収層(層A)であり、最内層及び最外層がポリオレフィンを含有する樹脂層(層B)である。
本実施形態のバイアルのボトル部分は、例えば、射出ブロー成形、押出しブロー成形にて製造される。例として射出ブロー成形方法を以下に示す。
例えば、2台以上の射出機を備えた成形機及び射出用金型を用いて、層Aを構成する材料及び層Bを構成する材料をそれぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、キャビティー内に射出して、射出用金型の形状に対応した多層成形体を製造することができる。また、先ず、層Bを構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層Aを構成する材料を別の射出シリンダーから、層Bを構成する材料と同時に射出し、次に層Bを構成する材料を必要量射出してキャビティーを満たすことにより3層構成B/A/Bの成形体が製造できる。
また、先ず、層Bを構成する材料を射出し、次いで層Aを構成する材料を単独で射出し、最後に層Bを構成する材料を必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより、5層構成B/A/B/A/Bの多層成形体が製造できる。
また、先ず、層B1を構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層B2を構成する材料を別の射出シリンダーから、層B1を構成する材料と同時に射出し、次に層Aを構成する材料を層B1、層B2を構成する材料と同時に射出し、次に層B1を構成する材料を必要量射出してキャビティーを満たすことにより5層構成B1/B2/A/B2/B1の多層成形体が製造できる。
射出ブロー成形では上記方法により得られた多層成形体をある程度加熱された状態を保ったまま最終形状金型(ブロー金型)に嵌め、空気を吹込み、膨らませて金型に密着させ、冷却固化させることでボトル状に成形することができる。
<アンプル>
本実施形態のアンプルの構成は、一般的なアンプルと同様であり、頸部を細くした小容器であってもよい。薬液を充填後、頸部の先を熔封する事で密閉して用いられる。前記アンプルが本実施形態における容器であって、中間層の少なくとも一層が酸素吸収層(層A)であり、最内層、最外層がポリオレフィンを含有する樹脂層(層B)である。本実施形態のアンプルの成形方法は、例えば、射出ブロー成形、押出しブロー成形にて製造することができる。
<プレフィル用シリンジ>
本実施形態のプレフィル用シリンジの構成は、一般的なプレフィル用シリンジと同様であり、少なくとも薬液を充填する為のバレル、バレルの一端に注射針を接合する為の接合部及び使用時に薬液を押出す為のプランジャーから構成されていてもよい。前記バレルが本実施形態における容器であって、中間層の少なくとも一層が酸素吸収層(層A)であり、最内層、最外層がポリオレフィンを含有する樹脂層(層B)である。
本実施形態におけるプレフィル用シリンジは、例えば、射出成形法にて製造される。多層成形体となるバレルは、先ず層Bを構成する材料をキャビティー内に一定量射出し、次いで層Aを構成する材料を一定量射出し、再び層Bを構成する材料を一定量射出することにより製造される。バレルと接合部は一体のものとして成形しても良いし、別々に成形した物を接合しても良い。接合部の先端は封をする必要があるが、その方法は接合部先端の樹脂を溶融状態に加熱、ペンチ等で挟み込んで融着させる等すればよい。
容器の厚さは、使用目的や大きさによるが0.5~5mm程度のものであればよい。また、厚さは均一であっても、厚さを変えたものであってもいずれでもよい。また表面(処理されない)に長期保存安定の目的で、別のガスバリア膜や遮光膜が形成されていてもよい。かかる膜およびその形成方法としては、特開2004-323058号公報に記載された方法などを採用できる。
[バイオ医薬品]
本実施形態の保存方法によって保存されるバイオ医薬品としては特に制限はなく、当業者に公知のバイオ医薬品を広く用いることができる。例えば、抗体、ホルモン、酵素、およびこれらを含む複合体からなる群より選ばれるバイオ医薬品を例示できる。バイオ医薬品の具体例としては、アドレナリン拮抗薬、鎮痛薬、麻酔薬、アンジオテンシン拮抗薬、抗炎症薬、抗不安薬、抗不整脈薬、抗コリン薬、抗凝固薬、抗てんかん薬、止瀉薬、抗ヒスタミン薬、抗新生物薬および代謝拮抗薬、抗新生物薬および代謝拮抗薬、抗塑性薬、抗潰瘍薬、ビスホスホネート、気管支拡張薬、強心薬、心臓血管薬、中枢作用α2刺激薬、造影剤、変換酵素阻害薬、外皮用薬、利尿薬、勃起不全用薬物、乱用薬物、エンドセリン拮抗薬、ホルモン薬およびサイトカイン、血糖降下薬、尿酸排泄促進薬および痛風に用いられる薬物、免疫抑制薬、脂質降下薬、種々の薬品、精神治療薬、レニン阻害薬、セロトニン拮抗薬、ステロイド、交感神経興奮薬、甲状腺薬および抗甲状腺薬、および血管拡張薬、バソペプチダーゼ阻害薬、インスリン、血液因子、血栓溶解薬、ホルモン、造血成長因子、インターフェロン、インターロイキン系生成物、ワクチン、モノクローナル抗体、腫瘍壊死因子、治療用酵素、抗体-薬物複合体、バイオシミラー、エリスロポエチン、免疫グロブリン、体細胞、遺伝子治療、組織、および治療用組換タンパク質などが挙げられる。
また、これらの被保存物の充填前後に、被保存物に適した形で、多層容器や被保存物の殺菌を施すことができる。殺菌方法としては、100℃以下での熱水処理、100℃以上の加圧熱水処理、121℃以上の高温加熱処理等の加熱殺菌、紫外線、マイクロ波、ガンマ線等の電磁波殺菌、エチレンオキサイド等のガス処理、過酸化水素や次亜塩素酸等の薬剤殺菌等が挙げられる。
以下に実施例と比較例を用いて本実施形態をさらに詳しく説明するが、本実施形態はこれによって限定されるものではない。
<評価方法>
(1)抗体活性保持率
(保管試験)
後述の方法によって得られたバイアルに、50μMに調整した和光純薬工業株式会社製ANTI FGF1, Monoclonal Antibody (mAb1)を1cc充填し、8℃50%RH条件下で180日保管した。溶媒にはインビロジェン製リン酸バッファー(PBSpH7.4)を使用した。保管試験前及び180日保管後の抗体溶液の結合比を下記の方法で測定し、保管前後での抗体活性保持率を次の式で求めた。

抗体活性保持率(%)
=(180日保管後の抗体溶液の結合比/保管前の抗体溶液の結合比)×100

(結合比測定方法)
等温滴定型熱量計を用い、5μMの抗原溶液(BIOLOGICAL Industries Ltd.社製FGF1-Mouse)をセル側に充填し、抗体溶液を10μLずつセルに滴下しながら、25℃で結合比を測定した。
(2)溶出試験
後述の方法によって得られたバイアルを40℃、90%RH下にて1ヵ月保管した後、10ccの超純水を充填してゴム栓及びアルミシールにより密栓した容器を40℃、60%RH下に4ヵ月保管し、その後、超純水中のトータルカーボン量(以下、TOC)を下記の条件で測定した。

(TOC測定)
装置;株式会社島津製作所製 TOC-VCPH
燃焼炉温度;720℃
ガス・流量;高純度空気、TOC計部150ml/min
注入量;150μL
検出限界;1μg/mL
(3)容器の色調変化(ΔYI)
容器の色調変化(ΔYI)は、後述の方法によって得られたバイアルに10ccの蒸留水を充填してゴム栓及びアルミシールにより密栓したサンプルを測定用試料とし、日本電色工業株式会社製色差濁度測定器COH-300Aを使用して測定した初期の黄色度(YI)と40℃20%RHの保管条件で3ヵ月保管した後の黄色度(YI)の差から算出した。ΔYIが2を超えないものを色調変化が小さいと判断した。
<バイアルの製造>
下記の条件により、ISO8362-1に従った形状の内容積10cc、全高45mm、外径24mmφ、肉厚1mmの、外側から層B/層A/層Bの3層構成のバイアルを得た。
2機の射出シリンダーを備えた射出ブロー一体型成形機(日精エー・エス・ビー機械社製、型式「ASB12N―10T」を使用し、層Bを構成する材料を射出シリンダーから射出し、次いで層Aを構成する材料を別の射出シリンダーから、層Bを構成する樹脂と同時に射出し、次に層Bを構成する樹脂を必要量射出して射出金型内キャビティーを満たすことにより、容器内層(層B)の厚みが200μm、中間層(層A)の厚みが300μm、容器外層(層B)の厚みが500μmのB/A/Bの3層構成の射出成形体を得た。得られた射出成形体を所定の温度まで冷却し、ブロー金型へ移行した後にブロー成形を行うことでバイアル(ボトル部)を製造した。
なお、層Aには実施例及び比較例の酸素吸収性樹脂組成物、層Bにはシクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製、製品名:「ZEONEX(登録商標)690R」)を使用した。

(射出及びブロー条件)
層(B)用の射出シリンダー温度:325℃
層(A)用の射出シリンダー温度:220℃
射出金型内樹脂流路温度:285℃
射出金型温度:80℃
ブロー金型温度:20℃
1次ブロー圧力:1.0MPa
2次ブロー圧力:3.0MPa
[ポリエステル化合物(a)の製造例]
(製造例1)
充填塔式精留塔、分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置及び窒素導入管を備えた容積30Lのポリエステル樹脂製造装置に、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル8668.9g、テトラリン-2,6-ジカルボン酸ジメチル4895.5g、イソフタル酸ジメチル4594.6g、エチレングリコール8811.8g、シュウ酸チタンカリウム二水和物0.559g、酢酸亜鉛1.519gを仕込み、窒素雰囲気で230℃まで昇温してエステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を95%以上とした後、酸化ゲルマニウム0.5wt%エチレングリコール溶液1039.6g、リン酸エチレングリコール溶液154.6gを添加し、昇温と減圧を徐々に行い、270℃、133Pa以下で重縮合を行い、所定トルクに達した後に製造装置底部からストランド状で取出し、ペレタイザーでカットしたペレット形状のポリエステル化合物(1)を得た。
なお、表1に示す式(1)~(3)で表される構成単位のモル%は、対応するモノマーの仕込み量から計算した値である。
(製造例2)
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル6730.6g、テトラリン-2,6-ジカルボン酸ジメチル6841.7g、イソフタル酸ジメチル4586.5g、エチレングリコール8796.2gとした以外は製造例1と同様にしてポリエステル化合物(2)を得た。
(製造例3)
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル4025.9g、テトラリン-2,6-ジカルボン酸ジメチル6138.6g、イソフタル酸ジメチル8001.6g、エチレングリコール9207.7gとした以外は製造例1と同様にしてポリエステル化合物(3)を得た。
(製造例4)
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル3835.9g、テトラリン-2,6-ジカルボン酸ジメチル9748.0g、イソフタル酸ジメチル4574.4g、エチレングリコール8773.0gとした以外は製造例1と同様にしてポリエステル化合物(4)を得た。
(製造例5)
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル11589.2g、テトラリン-2,6-ジカルボン酸ジメチル1963.4g、イソフタル酸ジメチル4606.8g、エチレングリコール8835.2gとした以外は製造例1と同様にしてポリエステル化合物(5)を得た。
(製造例6)
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチルを不使用、テトラリン-2,6-ジカルボン酸ジメチル18147.3g、エチレングリコール8166.1gとした以外は製造例1と同様にしてポリエステル化合物(6)を得た。
(実施例1)
ポリエステル化合物(1)に対して、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量換算で2.5ppmとなるようブレンドし、得られた酸素吸収性樹脂組成物を、直径20mmのスクリューを2本有する2軸押出機を用いて、押出温度280℃、スクリュー回転数50rpmの条件にてストランド状で押出し、ペレタイザーでカットしたペレット形状の酸素吸収性樹脂組成物(1)を得た。得られた酸素吸収性樹脂組成物について前述の方法でバイアルを成形し、抗体活性保持率、溶出試験、容器の色調変化の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
ポリエステル化合物(1)に変えてポリエステル化合物(2)を使用した以外は実施例1と同様にしてバイアルを得た。得られたバイアルについて前述の方法で抗体活性保持率、溶出試験、容器の色調変化の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量換算で20ppmとなるようブレンドした以外は実施例1と同様にして酸素吸収性樹脂組成物(3)を得た。得られた酸素吸収性樹脂組成物について前述の方法でバイアルを成形し、得られたバイアルについて前述の方法で抗体活性保持率、溶出試験、容器の色調変化の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリエステル化合物(1)に変えてポリエステル化合物(3)を使用した以外は実施例1と同様にしてバイアルを得た。得られたバイアルについて前述の方法で抗体活性保持率、溶出試験、容器の色調変化の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
ポリエステル化合物(1)に変えてポリエステル化合物(4)を使用した以外は実施例1と同様にしてバイアルを得た。得られたバイアルについて前述の方法で抗体活性保持率、溶出試験、容器の色調変化の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
ポリエステル化合物(1)に変えてポリエステル化合物(5)を使用した以外は実施例1と同様にしてバイアルを得た。得られたバイアルについて前述の方法で抗体活性保持率、溶出試験、容器の色調変化の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
(比較例4)
ポリエステル化合物(1)に変えてポリエステル化合物(6)を使用した以外は実施例1と同様にしてバイアルを得た。得られたバイアルついて前述の方法で抗体活性保持率、溶出試験、容器の色調変化の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
(比較例5)
ポリエステル化合物(1)に変えてナイロンMXD6(三菱ガス化学株式会社製、商品名:MXナイロンS7007)を使用し、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量換算で20ppmとなるようブレンドした以外は実施例1と同様にして酸素吸収性樹脂組成物(6)を得た。得られた酸素吸収性樹脂組成物について層(A)用の射出シリンダー温度を260℃とした以外は実施例1と同様にしてバイアルを得た。得られたバイアルついて前述の方法で抗体活性保持率、溶出試験、容器の色調変化の評価を実施した。評価結果を表1に示す。
Figure 2023177910000007
実施例1~3から明らかなように、本発明の保存方法により保存されたバイオ医薬品は活性保持率が高く、容器からの溶出が少なく、また、保管後の容器の色調変化が小さいため内容物視認性も良好であることが確認された。

Claims (5)

  1. バイオ医薬品を容器に保存する方法であって、
    前記容器は、ポリエステル化合物(a)及び遷移金属触媒を含有する樹脂組成物からなる酸素吸収層(層A)と、前記層Aの両側に積層したポリオレフィン(b)を含有する樹脂層(層B)と、を含む、少なくとも3層を含有する多層構造の容器であり、 前記ポリエステル化合物(a)が、ポリエステル化合物(a)における下記式(1)、式(2)及び式(3)で表される構成単位の合計100モル%に対して、下記式(1)で表される構成単位を30~55モル%、下記式(2)で表される構成単位を15~40モル%、下記式(3)で表される構成単位を20~40モル%含有する、
    バイオ医薬品の保存方法。
    Figure 2023177910000008
    Figure 2023177910000009
    Figure 2023177910000010
    (上記式(1)~(3)中、nは繰り返し単位の量を表し、それぞれ、前記式(1)で表される構成単位、前記式(2)で表される構成単位及び前記式(3)で表される構成単位の組成比に対応する。)
  2. 前記ポリエステル化合物(a)が、(i)前記式(1)、式(2)及び式(3)で表される構成単位の合計100モル%に対して、前記式(1)で表される構成単位を40~50モル%、前記式(2)で表される構成単位を20~35モル%、前記式(3)で表される構成単位を25~35モル%含有し、かつ、(ii)前記ポリエステル化合物(a)の全構成単位100モル%に対して、前記式(1)~(3)で表される構成単位の合計が95モル%以上である、請求項1記載のバイオ医薬品の保存方法。
  3. 前記遷移金属触媒が、コバルト、ニッケル及び銅からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属を含む触媒である、請求項1又は2に記載のバイオ医薬品の保存方法。
  4. 前記遷移金属触媒が、前記ポリエステル化合物(a)の質量を基準として、遷移金属量として0.5~5ppm含まれる、請求項1又は2に記載のバイオ医薬品の保存方法。
  5. 前記ポリオレフィン(b)が、シクロオレフィンコポリマー又はシクロオレフィンポリマーである、請求項1又は2に記載のバイオ医薬品の保存方法。
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